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2014年6月21日土曜日

Yellow Medicine -Billy Lafitteシリーズ第1作!-

2週間、同じような監房から同じような訊問室に連れ出され、同じようなお定まりの質問を繰り返し浴びせかけれ、そしてついにRome捜査官の登場だ。
「Lafitte保安官代理、そろそろ本当のことを話してもらおうじゃないか。そうすりゃ外の連中も納得し、俺たちもここを引き上げ、あんたも外に出られるんだ。」
すべて嘘だ。そして奴は俺に彼らの死を突きつける。そうだ、みんな俺のせいで死んだんだ。
そして最後に突き付けられた五千ボルトのスタンガンで床に倒れ伏した俺に奴がこう告げる。
「それじゃあ帰ろうか。裏切り者のお前を待っているYellow Medicineへ。」 

Billy Lafitteは、ミネソタ州イエローメディスン郡の保安官代理。かつてはミシシッピ州で同職に勤めていたが、ハリケーン・カタリナの災害時に人助けのために行った脱法行為が大きく報道されてしまう。もともとクリーンなわけではなかった彼だが、そのために職を失い、家庭も崩壊する。最後のチャンスとして得たのが、元妻の兄が保安官を務めるこのイエローメディスン郡の保安官代理の座だったが…。

-3週間前-

いつものようにお気に入りのサイコビリーバンド、エルビス・アンチクライストが演奏するバーにたむろするBilly。演奏が終わると、ボーカルのDrewが近寄ってきて、相談を持ちかけてくる。ろくでなしの彼氏のIanがドラッグ商売でヘマをやらかし、二人組の男に脅されているらしい。なるほど。その二人組はBillyにはおなじみの地元で商売を仕切っている連中だろう。どうやら連中商売を拡げようとしているらしい。BillyはDrewの頼みを引き受ける。だが、もちろん無料ってわけじゃない。報酬は可愛いDrewの身体。そしてもちろん奴らがでかくした商売からも儲けさせてもらう。

しかし、大学の寮の女のところに隠れていたろくでなしのIanを探し出し、問い詰めてみるとことは思ったより厄介なようだ。二人組の見たこともないマレーシア人?Ianのケツには妙なマークの焼き印が見せしめに押し付けられている。姿の見つからない地元の連中は多分もう始末されている。イスラムのテロリストがこの田舎町で資金稼ぎにドラッグ商売だと?ヤバイ連中だ。話してわかる相手じゃない。そして、輪はどんどん狭められて行き、Billyは追いつめられて行く!

Anthony Neil SmithのBilly Lafitteシリーズ第1作『Yellow Medicine』!オレはどこかにあるかもしれないこういうものを読むために大して読めるわけでもないのに英語の本をモタモタと読んでいるんだよ!という作品!…なのだけど…いざそういう作品に巡り合って書こう、と思うと…なんかやっぱりあんまり同意してもらえないだろうなあと思ってしまう。それが通用してればこの本だってとっくに翻訳されててどこの書店でも手に入って私もこんな珍妙なブログなんてやっていなくて彼女もいただろうに。いや、それはないか…。まあ、とにかく万人におススメとはいかないが、これが気に入る人もきっといるはずなので、そういう人が読んでください。合わない人もまた面白そうなのを見つけてきますので見捨てないでください。

私の見立てでは、この『Yellow Medicine』はハードボイルド風味強めのノワールというところ。ジャンルなんて本当はどうでもいいけど、やっぱり目印はあった方が分かり易いですから。この小説は全編Billy Lafitteの一人称で書かれていて、彼は常に自分のことをチンケな悪党だと言い続ける。魂?「それも(カタリナに)一緒に持って行かれたよ」なんて言ってみせる。この小説には、「男の誇り」についてのマッチョ説教も、「父と子の物語」もない。追いつめられ、叩きのめされるBillyには、本当は一つ抜け道がある。それは奴らの言いなりになること。だが、この男にはそんな選択肢はない。そもそも無いものにものについて「男の誇り」などを使って語る必要も無いのだ。話の通じない相手に暴力で脅されたら、暴力で返すしかないのか。このくらいやれば諦めるのか?でもこいつらには無駄なんじゃないか。そう思いながら暴力で押し返す。この主人公はマックイーン、イーストウッドからジェイソン・ステイサムあたりまで誰が演じてもはまりそうなタイプ。少しひねくれたタフな男。だが、その内面は軋み続ける。俺はただ、元の生活に帰りたいだけなんだ!と心の内で叫ぶ。そしてBillyはどこにたどり着くのか。

作者Anthony Neil Smithはミシシッピ出身で、現在はSouthwest Minnesota State UniversityのEnglish Professor(英語教授?国語教授?)だそうです。ウェブジン”Plots with Guns”のパブリッシャーでもあり、以前に書いたアンソロジー/インディー・パブリッシャーあたりとも人脈や共通の読者も多く、私もその辺から知りました。Billy Lafitteシリーズは現在3作までで、最初の2作は他の出版社から出ていたようですが、一旦は個人出版になり、シリーズ3作目以降の作品はBlasted Heathから出版されています。シリーズ3作目の後、Mustafa&Ademシリーズを2作出版している他、単発作品数作、短編集などの著作があり、ほかにもあのヴィクター・ギシュラーとの共作や、少し前に書いた『The Dead Man』シリーズでも1本作品があります。この本の序文を書いている人がBilly Lafitteシリーズを3部作と書いていたのでもう終わってしまったのかな、と思っていたら、本人のホームページによると、現在4作目を執筆中で、それが最終作になるそうです。また、同ホームページによると、Smithさんこの春先に心臓発作を起こしたそうで、大丈夫かなあ。サンドウィッチマンのふたりを転送中事故で合体してこんなのが出てきました、みたいな冴えないルックスに以前から親近感を抱いていたのですが、最近明らかにあの著者写真より太ってるし!アンタの作品必ず全部読むし、今後にも大いに期待しているのでお身体は大切にね!

というわけでこの作品、私的には近年ベスト級の小説ですが、趣味は人それぞれですので敢えて強くはおススメしません。ちなみにこの本、Kindle版はたったの0.97ドル!(米国内では常時無料のようですが…)もし興味を持たれたなら、ちらっと読んでみて、そして合わないな、と思ったら100円落としたと思って忘れてください…じゃ駄目ですか?


Anthony Neil Smith ホームページ

Plots with Guns

Blasted Heath

●Mustafa & Ademシリーズ

●Slow Bearシリーズ

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2014年6月14日土曜日

Valiant その1 -X-O ManowarとHarbinger-


 なんだかまあ、こんな感じでブログを始めて4か月になるのですが、コミックに関してはいまだにオレが書くことなんかなあ、と思ってしまうのです。やっぱりコミック、特にアメリカのは詳しい人がいっぱいいるわけだし。まあ、結局私なんてデジタルで手軽に読めるようになった最近になって本格的に読み始めたぐらいでまだ日も浅いわけだし。それでもやってみようかなあと思うのは、自分の経験から、なんか面白そうだなと思っても情報が全然見つからなかったり、自分が読んで面白かった物について誰か書いていてくれていたら嬉しかったりしたという事があったりというようなことで、やっぱりどんなのでも少しでも情報が沢山あった方がいいだろうなと思うからなのですよね。あと情報があるところと無いところの格差も大きいように思えて、そんなところをいくらかでも埋められたらなあなどと、微々々々力ながら考えたりもするわけです。まあ結局はなんか中途半端なものを書いてる言い訳でしかないのかもしれませんが。とにかく知ったかぶりにはならないようなるべくちゃんと調べて書いていくように努めていこうと思います。
というわけで今回はヴァリアントについてです。ヴァリアントなんてオレが語るべきものなのかなあと自信がなくなってつい言い訳が長くなってしまいました。でもまあ、ヴァリアント好きだし面白いから書いてしまえ、ということでやってみます。今回はその第1回です。例によって例の如くまだあまり読んでいませんが、まあさわりの辺りを新旧作比較しながら書いてみます。

●ヴァリアントの歴史

こういうことを書くのはあまり得意ではないのでかなり大雑把になりますが、とりあえずはまずヴァリアントの現在までの歴史から書いてみようと思います。ヴァリアントは、まず1989年、マーベル・コミックの元writer/editorであるJim ShooterとBob LaytonによりValiant Comicsとして設立されます。数々のシリーズタイトルを作り出した後、Valiant Comicsは、1994年ゲーム会社であるAcclaim Entertainmentに売却され、Acclaim Comicsとして再スタートします。多くのシリーズがリランチされ、ゲーム化されたタイトルもありましたが、2004年Acclaim Entertainmentはコミックの出版から撤退、翌2005年から現在の形であるValiant Entertainmentとして再々スタートしました。しばらくは旧作の出版と著作権管理として雌伏していたヴァリアントですが、2011年マーベル・コミックのCEO兼副社長のPeter Cuneoが社長として就任してから再始動が始まり、翌2012年4つのリランチタイトルをスタート。いずれも好評を持って迎えられ、現在の快進撃に至るというわけです!…という感じで大体あっていると思うのですが…。

Jim Shooterというのもいろいろある人のようだな、とか80~90年代あたりのアメコミ状況に関しては知識不足でまだ色々勉強せねば、などと思いつつとりあえず進めます。このような経緯を経て現在に至るヴァリアントで、現在出ているものは以前のリランチ作品です。しかし、リランチとは言ってもそういう形で一旦は終わってしまったもので、また新しい作品として読み始めることができるし、一方で過去のはどんなのだったのかな、と読み返して比較してみるような楽しみ方もできます。また、ヴァリアントの良いところは、2012年リランチとまだ日も浅く、まだ楽に追いつけるところ。アメコミを読み始めたものの、マーベルDCの山の大きさに途方に暮れているという人(私)も道に迷う心配なく楽しめます。(とか言いつつこちらにもかなり遅れてきている私ですが…)まあこういうのも読みながら少しずつあちらの大山を探索していくのもいいのではないでしょうか。

現在Valiant Entertainmentから発行されているのは以下の作品です。
 1. X-O Manowar
 2. Harbinger
 3. Bloodshot (Bloodshot and H.A.R.D. Corps)
 4. Archer & Armstrong
 5. Shadowman
 6. Quantum and Woody
 7. Eternal Warrior
 8. Unity
 9. Rai
 (リランチ順)
1989年の発足当初から"Valiant Universe"として、マーベルDCのようにすべての作品が共通の世界に存在しているという構想で作られていて、現在もその設定で進められています。昨年は初のコミック・イベントとして『Harbinger Wars』が発行され、今年もこれから『Armor Hunters』が始まるところ。他にも複数のシリーズのキャラクターが共闘する『Unity』も始まっています。いずれの作品も実力派のライター、アーティストを起用し読み応えのあるものになっており、最近ではanあのMatt Kindtもライターとして参入しています。
最初は全部まとめてやろうかと思っていたのですが、これまでの経験からグダグダになるのが目に見えているので少しずつやってくことにしました。というわけで今回はその第1回、X-O ManowarとHarbingerについて書いてみます。旧作はAcclaim Comics版もあるのですがそちらはまだ手を付けてないので、最初のValiant Comics版との比較になります。

●X-O Manowar

紀元402年、ローマ帝国と闘う西ゴート族の戦士Aricは、ある日野営地の近くに巨大な見たこともない物体が降りているのを目撃する。ローマ帝国の新兵器だと思い攻撃を仕掛けるAric達。だがそれは異星人Vineの宇宙船だった。勇猛に戦うもはるかに進んだ兵器の前には敵わず、Aricと仲間たちは異星人に捕獲されてしまう。見たこともない土地に降ろされたAricはただちに逃亡を謀る。宇宙船の中を逃げるうちにAricは異星人達が謎のアーマーを神聖な儀式のように崇めている光景を目撃する。逃亡はすぐに阻止され、Aric達は異星人の農場で奴隷として使役される。あきらめず逃亡を試み続けるAricだったが、遂には片腕を切断されてしまう。しかし、Aricは逃亡をあきらめない。その胸に去来するのは以前に見た光景だった。

”あのアーマーを手に入れれば奴らと戦える!”

不屈の意志で再度逃亡を試み、遂にAricはそのアーマーの許にたどり着く。数々の異星人兵士達を拒み続けたアーマーだったが、まるでAricを待っていたかのように受け入れ、その身体を覆う。そして、失われた片腕までもそのアーマーの中で再生される。
強力なアーマーを手に入れたものの、敵の圧倒的な数と火力の前、仲間たちは次々と倒れて行く。追い詰められ船外に脱出するAric。そこはAricが初めて目にする宇宙空間だった。宇宙艦からの更に強力な火力がAricを襲う!

”駄目だ!俺はこんなところで死ぬわけにはいかない!ローマへ行って戦うのだ!
               ローマへ!”

そして、そのAricの想いに応え、彼を包んだアーマーは瞬間移動する。地球へ!ローマへ!Aricの姿はローマ、コロッセオ上空に出現する!
だが、そこはAricの生きた時代から1600年を経た現代のローマだった…。

盗まれたアーマーを取り戻すため、Vineの戦艦が地球へ向かって発進する。一方、地球での前進基地であるVineとの混血グループも、その命を受け、ニンジャアサシンNinjakを雇い、Aric討伐とアーマー奪還のために送り込む…。

[過去作との比較 ]
1992年発行のValiant Comics版では、話はまず宇宙船内で逃亡したAricがアーマーを手に入れるところから始まります。(1年半後に出た前日譚の#0もあります。)まずは南米ペルーに到着し、Vineとの闘争の後、舞台はニューヨークに移りそちらのVineの本拠を壊滅、という感じでとりあえずVineの話は2話まででひと段落します。ちなみに現行版では私の読んだ9話あたりでやっとVineへの反撃が始まったあたりです。旧版もまだ5話までですが、その後はHarbingerのToyo Haradaと会い、その次はアーマーを狙う男が現れるという展開です。旧版のAricは本当に誇り高い蛮族という感じで、全裸が普通、周りの風景が自分の時代と著しく変わっていても一切動ぜず、その一方で自分が冷凍保存され1600年過ぎているという事情はあまり理解していない様子。深夜のセントラルパークでストリートギャングの一団に襲われると、これこそが自分の望んでいた戦闘だ!と嬉々として皆殺しにするという蛮族ぶり。Vineの下で働いていたKenというゲイの青年が、のちにAricの協力者となるのですが、そのゲイ青年の見慣れないふるまいから”こいつは魔術師だ。魔術師を味方にすれば有利になる”と考え行動を共にしたりします。現行版ではその辺のAricの個性が少し薄めかなという感じです。

現行版のライターは、映画化された『サロゲート』(Top Shelf刊)のライターでもあるRobert Venditti。ヴァリアント・ユニバースの中でも中心をなすシリーズという事もあるのか、少し順当にストーリーを進めていてあまり作家の個性は発揮されていない観もありますが、まあ、問題は無いし、その辺に関しては今後に期待という感じです。作画は、Dark HorseのConanシリーズのCary Nordやイギリス出身のLee Garbettなどが交代で担当していますが、最初はペンシラーというクレジットなのですが今ではアートになっています。インカーの人省略か?ちょっと良くないなあ。いずれの人もとても迫力のある達者な絵です。
ちなみに最後の方で名前の出たNinjakですが、以前は自分のシリーズを持っていたキャラですが今のところはそちらは始まっていません。一応予定はある雰囲気ですが。この後もX-O Manowarとはなにかと深く関わっていくようです。


●Harbinger

雑踏の中を歩く少年。彼の頭の中に周囲の通行人の考えていることが飛び込んでくる。テレパシー能力。その強力な能力により、周囲の人間の思考は勝手にどんどん彼の頭の中に侵入してくる。彼はそれを遮るようにジャケットのフードを深くかぶる。少年は薬局に入る。彼の目が怪しく光ると店主は処方箋なしでは販売できない強力な向精神薬を代金もとらずに手渡す。だが、彼にはそれが必要なのだ。絶えず頭の中に侵入してくる声を締め出すために…。

彼の名はPeter Stanchek。相棒の統合失調症の少年Joeと、収容されていた施設を脱走して空き家に寝泊まりしている。Joeは彼の能力が一切通じない世界で唯一の友達なのだ。

その能力ゆえに施設に収容されていた少年Peterの数少ない外界の思い出と言えば、幼少時近所で仲良く遊んだ少女Krisの事。彼は彼女に会うためにこの町へ戻ってきたのだ。だが再会した成長したKrisは迷惑そうに彼を突っぱねる。追いつめられた孤独感からPeterは自分の能力を彼女に使ってしまう。

”俺と恋に落ちるんだ、Kris。”

夜、空き家の中でKrisと抱き合って眠るPeterは自分を呼ぶ声に気付く。外に出てみると、そこにいたのは一匹の犬。多くの犬に襲われるという幻覚を見た瞬間、Peterは庭園の中で見知らぬ男と向き合っていた。男の名はToyo Harada。彼はPeterにその能力を生かすため、自分のHarbinger Foundationに加わるよう促す。

現実に戻ったPeterは、Joeが犬と話している自分を呆れて見ているのに気付く。Joeは彼がKrisと会っている間に警察に保護されていたのだった。釈放され戻ったJoeは当然尾行されていて、Peterを収容していた施設の組織の追手が、まさにその頭上、ヘリコプターの一団として現れる!

ヘリコプターからは重武装の兵士達が降り立ち、電磁波とストロボを組み合わせた装置でPeterの能力を抑え込み、制圧を図る。”お前自身の力を使い脱出するのだ!”犬を通じて呼びかけるHarada。だが、自らの能力を怖れるPeterはそれを使うことができない。しかし、Krisに危機が及ぶのを見た瞬間、Peterの本当の力が爆発する!

周囲を取り囲む兵士たちが念動力で一気に弾き飛ばされる。危険を感じた兵士たちは発砲を始めるが、弾丸はすべてPeterの身体を逸れて行く。強力なテレパシー能力で兵士全員を戦闘不能にするPeter。隠されていた指揮車が引き寄せられ破壊される。指揮者と向かい合うPeter。

「俺を殺す気か?Peter!」
「いや、あんたを痛めつけるにはもっといい方法がある」

”忘れるんだ。あんたが今までに知った全ての事を。あんたが愛したすべてのものを。あんたを作り上げてきた全てを!”

破壊の跡、Haradaからの迎えのHarbingerの車が到着する。だが、KrisとJoeは連れては行けない。別れの時。能力から解放されたKrisは、殺してやる!とPeterを罵る。またすぐに会えるから、と手差し伸べるPeterに向かってJoeは「お前みたいに恐ろしい奴は初めて見たよ」と、つぶやく…。

そして、Peterを乗せた車はHarbinger Foundationへと向かう。

[過去作との比較]
同じく1992年発行の第1話は、Harbingerと決別したPeterがKrisとともに逃亡しながら、Renegadesとなる3人の仲間と出会っていくところから始まります。あらすじもそこまで書こうかと思ったのですが、あとのいきさつはできれば読んでいただきたいなと。旧版ではこちらも後から#0が発行され、それまでの話が語られます。そちらではPeterは、普通のハイスクールの生徒。まずはアメリカの映画やTVドラマでよく見る感じのハイスクールのヒエラルキーみたいなところから始まり、その中ではパッとしないPeterなのですが、自分に特殊な能力があることには気づいていて、雑誌の広告で見たHarbinger Foundationに手紙を送り迎え入れられるという展開。Peterは学校に通いながらHarbingerでも訓練を受け、力を増して行き、その能力でずっと高嶺の花だったKrisもモノにします。そんなPeterの様子を心配する、同級生で親友のJoe。一旦は有頂天になっていたPeterも悩みはじめ、遂にはKrisへの能力を解き、真実を告白してフラれてしまう。苦悩を深め、能力の伸びが滞るPeterの様子を見て、Harbingerは障害になっていると思われるJoeを殺害する。ショックを受け、無能に陥るPeterを見て、Harbingerは彼の処分をも謀るが、遂にPeterの怒りが爆発する。そして、自分の本当の気持ちがPeterに向かっていることに気付いたKrisも、Peterの許へ向かう…。 
という感じで、こちらの『Harbinger』は、基本的なキャラクター名、配置以外はかなり大きく変わっています。いかにもアメリカのティーンエイジドラマの典型のノリと雰囲気の旧作に対し、現行作は結構日本のマンガ読者にも馴染みやすいものではないでしょうか。日本のマンガが海外に出てからもうかなり長く、今更その影響をあげつらうのも野暮だとは思いますが。
キャラクターの見た目の変更も大きく、ロングの赤毛をなびかせていたKrisは、現行作ではショートの黒髪に赤いふちの眼鏡、唇にピアスとかなり個性的でクールな感じ。旧作ではもみあげを工夫したニッポンのシャチョー的だったToyo Haradaも、現行作ではトニー・スターク風の髭を生やして謎の大富豪感を強めています。

現行版のライターは、アイズナー賞にもノミネートされたVertigoの『Unknown Soldier』などの著作のあるJoshua Dysart。はみ出し者対エリートという構図の強調された、ナイーブでときにバイオレンスなストーリー展開は今後も期待できそうです。作画は、こちらも数人が交代でということになっていますが、中でも注目は序盤5話を主に担当した『Carbon Grey』(Image Comics刊)などのKhari Evans。特に女性のキャラクターが美しくその辺でも日本のマンガ読者に受ける要素は多いのではないかと。詳しい経歴などはあまりわからなかったのですが要注目のアーティストです。ちなみに旧版の1話のペンシラーは現代アメコミ重要作家のひとりであるDavid Laphamだったりします。

というわけで、Variant その1、『X-O Manowar』と『Harbinger』について書いてみました。またずいぶん長くなってしまった割にはいまいち中途半端な感じも…。まあ、なんとか回を重ねながら別の作品を紹介しつつ、前の物の情報も充実していければいいかなと思っています。ヴァリアント・ユニバースについては、とりあえずは今回の2作と、あと『Bloodshot』を読んでいれば当分は大丈夫だと思います。それなら『Bloodshot』までやれよ、という話ですが…。
 次回、いつになるかは不明ですが、その2は、そんなわけでヴァリアントの中でも私が一番好きな『Bloodshot』の登場です。なんとかその辺までにライターで犯罪小説作家でもあるDuane Swierczynskiの小説も1冊ぐらい読んでおきたいなと思っています。


言い訳も含めて、今回はずいぶん長くなってしまったのですが、私がコミックについて書いていきたいなという考えは上で述べた通りです。私の場合一方でかなり重度のハードボイルドバカだったりもするので、コミックとの知識の格差でためらってしまう部分もあるのですが、まあ恥をかくつもりで、もしかしたら誰かの役に立つといいなと思いながら好きなことを書いていこうと思います。今回文中にちらっと登場したMatt Kindtについては近日中に、David Laphamについても近いうちに書く予定ですので(もし、楽しみにしてくれる方がいるなら)お楽しみに。

 ヴァリアントの出版物に関しては、過去作は少し手に入りにくくなっているようですが、デジタル版ではComixologyにかなりそろっていて、現在も追加されているようなので、そちらに興味のある方はComixologyで探してみてください。

Valiant Entertainment 


●X-O Manowar


●Harbinger


●その他のValiant作品


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2014年5月25日日曜日

The Dead Man -連続テレビドラマ風ホラーシリーズ-

The Dead Manとはなんともありがちなタイトルですね。世界中に一体どのくらいのDead Manがいるやら。もしかしたら世界中のDead Manを集めているコレクターの人もいるかも。そんなDead Manマニアの皆さんに朗報!新たなDead Manの登場です!

さて、ではこのDead Man、どういう作品かというと、Lee GoldbergとWilliam Rabkinという二人の作家が企画し、プロデューサーというような立場で、ホラー、ミステリ、SFなど様々なジャンルの作家を招き、1話ごとにそれぞれ個性的なストーリーで続いてゆくテレビドラマのような小説を目指して作られたというものなのです。どんな内容なのかもっと知りたい、という方は下のあらすじを読んでいただきたいのですが、ここで注意!実はこの第1話あらすじは最後まで全部書いてあります。というのはこの第1話がドラマで言えば第1回で、設定という事になっているのでこれを書かないと次に進めないのです。ですのでこの辺までで面白そうだと思った方は飛ばして先に進んでください。

第1話 Face of Evil あらすじ
2011年2月、アメリカ北西部のリゾートで凍結した死体が見つかる。その死体は3か月前雪崩にのまれ行方不明になり死亡したと思われていた男のものだった。警察の死体安置所に運ばれ、溶けるのを待って検死解剖が始まる。だがその時、監察医はその男が蘇生し始めているのに気付く!

男の名は、Matthew Cahill。妻に先立たれ、独り暮らしの彼の日課は毎朝祖父の形見の斧で薪を割ること。そして、トラックで親友のAndyとともに勤め先の製材所に向かって行く。彼の勤める製材所にもリストラの波は押し寄せてきていた。優秀な作業員である彼自身はまだしばらくはその心配はなかったのだが、親友Andyを庇い、自身も解雇されてしまう。先の見通しの立たなくなったMattだが、一旦は忘れ、以前から計画していた同じ製材所に勤める友人以上恋人未満の女性Rachelとのスキー旅行に出掛ける。この旅行をきっかけに二人の仲は急接近して行く。そして、Mattの死も…。

運命の日の前夜、Mattは奇妙な悪夢にうなされる。癌で余命残り少ない妻とともにいるMatt。気が付くとベッドに横たわる妻のそばに見覚えのない奇妙な医師が立っている。医師が手を触れるとそこから美しい妻の身体がみるみる腐り始める。悲鳴を上げるMatt。そして彼はその男が医師ではなく、道化師であることに気付く!

”ぼくらには、この先もっとたくさんのお楽しみが待っているよ、Matt” 

翌日、MattとRacheiの姿はスキー場にあった。スキー上級者であるRachelに遅れながらも楽しく時を過ごすMatt。この先また訪れるかもしれない幸福を予感したとき、突如襲い掛かってきた雪崩にMattは飲み込まれて行く…。

そして3か月後、完全に凍死状態にあったはずのMattは、蘇生し、何事もなかったかのような健康体に戻る。研究対象として興味を寄せる医師たちを振り切り、強引に退院したMattは、Rachelと再会する。

事故から3か月、Mattはすでに死亡したと見做され、葬儀も済み、用意してあった遺言書通り、住んでいた家も親友Andyの手に渡っていた。RachelとともにMattはAndyの許を訪れる。久しぶりに再会した親友の顔を見てMattは驚愕する。Andyの顔には周囲が腐り始めている大穴があいていたのだ!だが、その穴はMattのみにしか見えず、Rachelはもとより、本人Andyすらも気付いていない…。

Andyの様子に不安を覚えながら、MattはRachelと新しい生活を始める。だが、その幸せも長くは続かなかった。食事に出掛けた二人はハンバーガー・ショップで、そこで働くAndyと出会う。Mattの目に映るAndyの顔面はさらに腐食が進んでいた。いたたまれずMattがその場を立ち去った後、Andyは突如狂ったように周囲に陰惨な暴力を振るい始めるのだった…。

一旦は立ち去ったが、不安を感じ店に引き返したMatt。だが惨劇の場からはすでにAndyは姿を消していた。Andyを追うMatt。そして、やっと行方をつきとめたがすでにAndyの暴走を止めることはできず、遂にはMatt自身の手でAndyを殺さざるを得なくなる。

やむを得ず、緊急避難だったとはいえ親友をその手にかけてしまったことで呆然と座り込むMatt。そんな彼の許に事件現場処理中の警官のひとりが歩み寄り、話しかけてくる。奇妙な話しぶりに警官をよく見てみると、その男は夢で出会った道化師だった!Mattの目にしか見えていない様子のその男は自らMr.Darkと名乗る。そしてMr.Darkが近くにいた医師の顔に指を触れると、そこからMattにしか見えない腐食が拡がっていき、そしてその医師もAndy同様突然狂ったように暴れはじめるのだった…。

一連の悲劇の原因が、自らの不可解な蘇生に関係があると確信したMattは、これ以上周りの愛する人を巻き込まないために、そしてその謎を解くために故郷の町を出ることを決意する。果たして彼は何故死から蘇ったのか?そして、Mr.Darkとは何者なのか?

Dead Man、Matt Cahillの旅が始まる!

---第2話へ続く---

ちなみにこちらオムニバスVol.1には続く第2,3話も収録されています。
第2話 Ring of Knives
精神病理学ジャーナル誌で自分と同様の症例を見つけたMattは、その患者が収容されている施設に向かう。だが、着いてみるとその施設は荒廃していた。原因を探るうちにMattは恐ろしい事態に巻き込まれて行く…。
第3話 Hell in Heaven
バイクでハイウェイを当てもなく進んでいたMattは、『天国』と記された出口看板に目を引かれ、その町に立ち寄ってみることにする。歴史から取り残されたようなその町、Heavenのメインストリートには「お帰り!Matt」と書かれた横断幕が掲げられていた…。

第2話はアサイラム物、第3話は田舎町物といったホラージャンルの1話完結のストーリーとして続いていきます。いわゆる放浪型のシリーズで、古くは『逃亡者』、『超人ハルク』、最近では『スーパーナチュラル』あたりが近いのではないでしょうか。1話約100ページぐらいのストーリーで、あまり読むのが早くない私でも1時間物のアメリカのTVドラマのような感じで楽しめました。

Lee Goldbergはハードボイルド系などで多くのベストセラー著作のあるミステリー作家で、TVの脚本も多く手掛けているようです。未読ですが、日本でも『名探偵モンク』シリーズのノベライゼーションが翻訳されているようです。
William Rabkinは『Psych』シリーズでエドガー賞のノミネート経験のあるミステリー作家で、スタジオ・コンサルタントというような形でTVの仕事にも多く関わっているそうです。何をする人なのかよくわからないけど…。
TV業界にも関係の深いこの二人だからこそTVドラマのような小説シリーズを作ろうと考えたのでしょう。思惑通り(かどうかはわからないけど)このシリーズ米Amazon Kindleではなかなかの成功を収めているようです。
このシリーズ、常に二人の名前が表記されているのでわかりにくいのですが、クレジットの順番から見て、第1話がLee Goldberg、第3話がWilliam Rabkinによるものと思われます。
第2話は、James Danielsという人が作者で、二人の知り合いの作家のようですが、今のところ他の著作は見当たりません。自作のハードボイルド小説、Ghost Brideが出版予定とのことです。

こちらのシリーズ1話ごとでも買えるのですが、やはり3話収録のオムニバス版がお得です。21話までがVol.7までにまとめられています。このシリーズ 21話で一旦区切りとなり、現在はReborn(The Dead Man Adventure)が始まっています。こちらは第3シーズンとなるそうで、主人公は女性とか。ということは第2シーズンでも主人公が変わるのかな。Mattはどうなるのでしょう?

このシリーズ、私はKindleハードボイルド・ベストセラー・リストでよく名前を見かけるLee Goldbergから知り、他にも興味を持っている何人かの作家が参加していることから読み始めました。それらの作家の作品も楽しみですが、他にもあまり私には馴染のないジャンルでも面白い作品を書く作家に出会えるのではないかと期待しています。

ちなみにこのシリーズ、TVドラマ風シリーズを目指しているだけあって、なかなか格好いいテーマソングもあります!ホームページ、Amazon内のThe Dead Manページからのどちらからでも聴けるので、ぜひ一度のぞいてみてください。


The Dead Man ホームページ

Amazon.com The Dead Man ページ


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2014年5月18日日曜日

2000AD 2013年秋期 [Prog1850-1861,2014]

とは言ってみたものの、もう2014年5月と大幅に遅れているのですが、あまり単行本化のない2000ADなので、まあ自分の覚書というのも含めて、これから読んだ四半期ごとにこういうのをやって行こうかと思っています。ホント、自分のことながら、もう少ししっかりした人がやってるブログならよかったですね。

というわけで、2000ADの2013年9月~12月に発行されたProg1850からProg1861までと、クリスマス年末スペシャル号(だと思う)2014についてです。この2014は100ページの特大号(通常は36ページ)なのですが、それから年末2週間は2000ADはお休みです。レギュラーの連載はProg1861で一旦終わり、2014は次からの連載の第1回と読み切り作品という構成になっているので、今回はその読み切り作品あたりまでについて書いていきます。

まずは、Prog1850-1861のラインナップから。
 1.Judge Dredd
 2.Brass Sun
 3.Flesh
 4.Aquila
 5.Damnation Station
以前書いた通り(ZOMBOの回参照)、まず巻頭にジャッジ・ドレッド、そして他の連載が続くという形です。今期の並びは大体この順番でした。

Judge Dredd
 1.New Tricks : Michael Carroll/Paul Davidson (part1-5)
 2.Prey : T.C.Eglington/Karl Richardson (part1-3)
 3.Ferails : Emma Beeby/John Burns (part1-4)
今期のジャッジ・ドレッドは以上の3シリーズでした。
現在のジャッジ・ドレッドは2011~2012年頃に掲載されていた「Day of Chaos」というMega City1の人口の80%が失われるという大惨事以後の世界で、どの話も廃墟のようなところで展開して行きます。ちなみにこの「Day of Chaos」については話の端々で断片的に語られるのですが、やはり現物を読まないことにはよくわからないのでTPB2冊をもたもたと読んでいるところなのですが、これがまたすさまじい問題作なので、読了次第こちらで書いていくつもりです。とりあえず今のところはそういうことがあったということで。
1は、「Day of Chaos」の混乱に乗じ、The Goblin Kingを名乗る犯罪者一派が地下世界で奪ったジャッジの兵器を使い勢力を伸ばしているとの情報を受け、ドレッド達が乗り込んでいくという話。半年前に別のシティから移籍したクールな女性ジャッジ、Caterina Tanechka Paxが語り手。
2は、ボランティアで被災者の治療にあたる少し変わり者の医師が実は外惑星で見つけた凶暴な生物から薬を作るため患者を餌食にしていたという話。
3は、廃墟で暮らす孤児グループで仲間が何者かに次々とさらわれるという事件が起き、自警団を結成したリーダーのミュータント少年とドレッドの交流という話。John Burnsの絵が素晴らしい。
1で今後も重要になりそうなキャラクターの登場などがありましたが、今期はメインライターともいうべきJohn Wagnerによる話もなく、全体的にはそれほど大きな動きはなかった印象です。

Brass Sun
 Ian Edginton/Inj Culbard
星同士がパイプでつながっていてそこを通って移動するというような不思議な世界での少年と少女の冒険を描くファンタジーSFジュブナイルの第2シーズン。
前のシーズンを読んでいないので設定などいろいろわからないのですが、とりあえず今回のストーリーを。
祖父の遺した本を求め、少女Wrenは相棒の少年Septimusとともに独裁者の統治する星へやって来る。時を同じくし謎のエイリアン(?)の星への侵略が始まる。大混乱の中危機に陥りながらも2人は本を手に入れ、星を脱出する。着いた星は過去の動乱の後連絡が途絶え状勢もわからない空ばかりで地面の見えないところ。いきなり襲いかかってきた飛行船に拉致されるが、一緒に捕獲されていた女海賊とともに脱出し、新たな冒険へ!第3シーズンに続く!途中からその侵略の陰謀にも関わっていたようだが切り捨てられた大人が加わるのですが、文句ばかりで全く役に立たないのもいい感じ。
まだ設定や以前の話などよくわかっていないのだけど今期の2000ADの中では一番楽しめた作品でした。早川から出ているスコット・ウェスターフェルドの3部作(最終巻未読)というのもあるようにイギリスではこういう良質のジュブナイル的な話の伝統があるのでしょうね。
…ですが…えーと…、実はこの主人公少年少女の見た目が…。いや、キャラクターを実にうまく表現していますし、今では私もこの二人が大好きになっていますが…。まあ、この二人の間で恋愛関係がどう発展していくのかさほど興味が持てないというか…。ハヤオ・ミヤザキがカムバックしてジブリで映画化すれば大ヒット間違いなしのはずですが…。
とは言ってもInj Culbardの作画は、この不思議な世界をとても魅力的に表現していて、本当にこの物語にぴったりの素晴らしい画だと思います。主人公があまり可愛くないのもきっとコンセプトでしょうね。
この作品本国でも人気なようで、2000ADとしても異例の速さという感じで今年中に発表されるであろう第3シーズンを加え、本年12月にハードカバー版が出版されることが決定しています。まだAmazonにも画像がなかったので、上の画像はまだこちらも仮のカバー画だそうですが、Rebellion社のカタログからお借りしてきました。ちゃんと画像つきのリンクができたら差し替える予定です。

Flesh
 Pat Mills/James McKay
イギリスではJohn Wagnerと並ぶ巨匠ライターPat Millsによる恐竜ウェスタン!
未来世界。ヨーロッパで大飢饉が起こり、その解決のためTrans-Time Corporationによって開発された時間操作技術によりカウボーイが働く恐竜牧場が作られる。飢餓問題は解決したがTrans-Time Corporationは数々の問題を抱えながら大企業として拡大を続け、裏で世界を支配している。その支配に対抗すべく美女Vegas  Carver率いる半人半竜のテロリストグループが、凶暴なティラノサウルスを連れ、恐竜ロデオ大会が開催されるNew New Yorkに乗り込んで行く。
このシリーズ、実は1977年の2000ADの創刊号から始まっているそうです。ですが、70年代に終了し、90年代に時間を置いて復活、その後10年ほど経ってまた再開されたのが現行のシリーズのようで、第何シリーズになるのかは不明です。リランチ、リブートなどもはや流行のようになっている昨今ですが、このFleshに関してはちょっと違います。なんと70年代の物と一緒の本に収録されてもあまり違和感のないような白黒の大変荒い画!序盤設定などについてあまり説明がないのと、その画とで大変読みにくく、さっぱり状況のつかめないまま、それなりに色っぽいVegas姐さんがNew New Yorkに行くゾ!とあまりキャラの判別がつかないカウボーイたちと、恐竜が闊歩する 荒野を進んでいくのをぼんやり見ていて、最後の最後になって上に書いたストーリーがやっとわかった、という次第でした。ストーリー展開から、なんとなく最終回っぽいのですが、わかればそれなりに面白そうな話だし、また再開することがあればもっと楽しめるのではないかなあと思います。

Aquila
 Gordon Rennie/Patrick Goddard
スパルタカスの反乱に加わり、共に磔になり処刑されながら超自然的な何者かの力により復活した戦士Aquilaはなにかに導かれるようにローマへ現れる。下水道を支配する巨大な狼の魔物Wolfmotherとの邂逅、そして、魔術的な力で造られたローマの守護者、花嫁姿の女戦士Veiled Virginを死闘の末倒すが、皇帝ネロに捕獲されてしまう。
この作品に関しては2000ADのサンプラーに第1話が載っていたので初期設定ぐらいはなんとなくわかったのですが、あとの話はやはり不明。ちょっと資料も見つからず、第何シーズンかも不明です。ただ、今回は新章スタートという感じだったので他の作品よりはすんなり乗れたのですが、この作品のみ5話で終了。続く盛り上がりが期待される次シーズンの序章といったところでしょうか。まあ次は最初から乗れて楽しめそうな次シーズンに期待です。

Damnation Station
 Al Ewing/Mark Harrison
ZOMBOのライターAl Ewingによるもうひとつのシリーズ!…ということで個人的にもかなり期待していたのですが…えー、これに関しては設定や以前のストーリーもほとんどわからず、しかも今シーズンでファイナルという様子で、完全にお手上げでした。Joe Nowhereの衝撃の正体!とかあってもそのへんでやっとこいつが主人公なのかな、と把握したぐらいで言われても…。さっぱり状況を飲み込めない怒涛の最終回を書いても仕方ないのであらすじは割愛します。ちゃんと読めればかなり面白そうなSFなのですが。残念。これまでの話もまとめられておらず、前述のRebellion社のカタログを見てもとりあえず単行本化の予定も無いようです。今後のAl Ewingのアメリカでの活躍によってはその可能性もあるかも、と期待しつつ、この作品に関してはその時にという事で。シリーズ全体の担当ということではなかったようですが、Mark Harrisonの半透明のレイヤーを上に重ねていって異星や異世界の空気感まで現す美しい作画はとても素晴らしかったです。

というわけで2000AD 2013年秋期 Prog1850-1861を読んでの私の感想は、6年生の3学期に転校してきて、よく知り合えないままみんな卒業して行ってしまったり、仲良くなれそうだなと思ったやつが一足先にお休みになってしまったり、でもBrass Sunちゃんとはこの先もまた会えて、もしかしたら恋に落ちるかも!あまり可愛くないけど…。という感じ、あれっ?これでいいのか? 

えー、では残るProg2014を。100ページの中、各10ページ前後で9本の作品が載っています。
 1.Judge Dredd/The Right Thing
  Michael Carroll/Leigh Gallager
 2.Ulyses Sweet Maniac for Hire/Centred
  Guy Adams/Paul Marshall
 3.The Ten-Seconders/Haris's Quest for the Perfect Xmas Pint
  Bob Williams/Edmund Bagwell
 4.ABC Warriors/Return toMars
  Pat Mills/Clint Langley
 5.Sinster Dexter/Room Only
  Dan Abnett/PJ Holden
 6Absalom/Old Pal's Act
  Gordon Rennie/Tiernen Trevallion
 7.Grey Area/Something to Declare
  Dan Abnett/Patrick Goddard
 8.Tharg the Mighty/Building a Better Comic
  T. M. O/Anthony Williams
 9.Strontium Dog/Dogs of War
  John Wagner/Carlos Ezaquerra 

1のジャッジ・ドレッド。盗むものもなくなって廃墟の施設のフェンスの金網をはがして売っているようなジリ貧の盗賊団が、偶然地中に埋めて隠してあった大金を見つける。大喜びするグループだが、中の一人がこれは自分の通っている教会から盗まれたものだ、と言いそれを持って走り出す。銃を乱射しながら追跡する一団は年末パレードで賑わうメインストリートに乱入。それを見たパトロール中のドレッドも一団の追跡にかかる。逃げる男がたどり着いたのは年末の募金を募る教会のシスターたちの前。盗まれたお金が見つかったと大喜びするシスターたちだったが、「そのような盗難届は出ておらん。寄付であれ収入を申告しないのは犯罪である!」と盗賊団、シスターを全員逮捕してしまうという話。スペシャルらしいワンショット。こんな話初期のジャッジ・ドレッドではあったなあという感じです。そういえば『Judge Dredd Complete Case File』もやっと1,2巻ですが読んでいるのでそちらもそのうちに。

3のThe Ten-Secondersは、夏期にファイナルを迎えたSFシリーズの後日譚。ある日地球にスーパーヒーローのような宇宙人が現れ、人々は神が降臨したと思うのだが、彼らはただ出鱈目に暴れ地球を壊滅寸前に追い込んでしまう。しかし、さらに高位の父と呼ばれる宇宙人がいて、彼らはその父たちの放蕩息子だった。責任を感じた父たちは地球人の一人に神に等しい力を与え、自分の望む解決をするように言うのだが…。今回の話はそこから唯一人生き残ったHarisのその後。とても壮大な物語ながら、最終シーズントータルでも70ページ弱というところで、これは『ハイぺリオン』のようなSF大叙事詩ぐらいにした方が楽しめたのでは、と思った作品でした。

5のSinster Dexterは2000ADでも長く続いている、SinsterとDexterの二人組のガンマン(ガンシャーク!)が活躍する未来世界が舞台のアクションシリーズです。二人のモデルは映画『パルプ・フィクション』のトラボルタ/ジャクソンコンビだそうです。こちらも夏期に連載がありました。また以前の話はわからないのですが、その結果二人は証人保護プログラムに入ることになり別々に違った名前で新しい人生を始めることになったのですが、Sinsterがその証人保護プログラムのリストの中に放っておけば宇宙を破滅させる悪党の名前を見つけてしまい、プログラムと街から脱出しDexterと合流するまでの話でした。今回は逃亡中の彼らに、Sinsterが街を出る前にもめた地元のボスから依頼された殺し屋が襲いかかるという話。夏期のシリーズはジャッジ・ドレッドのところでふれたJohn Burnsがアートを担当していて良かったのですが、今回はまたずいぶん絵柄も変わってしまった。長いシリーズでよく作画も変わっているようなので、ストーリーに合わせてというところもあるのかもしれませんね。次シーズンも年内に登場の予定。もしかするともう始まっているかも。ちなみに最近知ったのですが、このSinster Dexterはアメリカでも、同じくアメリカ版ジャッジ・ドレッドを出しているIDWから現在issue6まで発行中です。

6のAbsalomは2000ADのサンプラーの第1話とこのワンショットだけでシリーズの方は未読です。どうも超自然的なものを操作し、取り締まる警察的な組織(警察の部局かもしれない)の話のようで、Absalomはそのリーダーの老人です。今回の話は刑務所にいるらしい昔の同僚にAbsalomが会いに行き、地獄(?)に捕われているらしい自分の孫の救出に協力を頼む、という話。どうやら次シーズンの予告的な感じだと思います。絵柄も話の雰囲気もとても私好みの作品なので、次シーズンを楽しみに待って、その時じっくり書こうと思います。

8は2000ADの宇宙人編集長Thargが、いかにして宇宙一面白いコミックを創るか、というまあご想像通りのアレですね。虚弱な地球人に生のままのスリルを与えると廃人になってしまうそうで、適度な濃度に薄めてから我々に与えてくださるというTharg閣下のご配慮に深く感謝いたします。

2,4,7,9は2014年冬期の連載陣。4,9はジャッジ・ドレッドに次ぐ2000ADの看板的2大シリーズという事で気合を入れて臨まねばと思っております。


なんとか2000ADを読む人がもっと増えればいいなあ、とも思いながらやってみたのですが、よくわからないの連発で、却って「一見さんお断り」感を強めてしまったのではないかと…。なんにしても「わからない」などというのは感想にならないなあと深く反省しております。ただDamnation Stationに関しては個人的にかなり楽しみにしていたのにこの結果というのが残念で、ということでご勘弁ください。いつかちゃんと読めるといいなあ。でもこの毎週出て続きが読める、というスタイルは日本の週刊マンガ誌で育ってきた我々にも馴染み深く、楽しめる人も多いのではないかなあと思うのですよね。ちょっとわかりにくくてもすぐについていけるようになりますから。たぶん…。まだiOSのみですが、iPhoneやiPadをお持ちなら是非一度のぞいてみてください。
というわけで、この人見知りの激しい転校生のボクもなるべく早く馴染んできちんとしたガイドが務められるよう努力してまいりますので、次回3か月後…ぐらい…、いやいや必ず3か月後の2000AD 冬期レポートにご期待ください。


Brass Sunハードカバー版のカバー画がようやく決定し、Amazon.jpでも画像が出たので変更しました。(2014 8/13) 

●関連記事 

ZOMBO -2000ADのSFホラーコメディコミック- 

2014年5月6日火曜日

Comics Unmasked -英コミックカタログ-

先日、『Chew』について書いた中で、Comixologyや連動するイメージコミックスのアプリからフリーで沢山コミックが読めますよー、などと調子いいことを書いたら、その日にComixologyのショップがiOSからなくなってしまいました。トホホ…。まあ30%も持って行かれるとなると仕方ないか、とも思いますが、iOSは今後はあまりアメコミを読むのに向かないということになってしまうのかなあと残念です。

ただ、その一方でイギリスのコミック関係のアプリはiOSのみの物が多く、2000AD(iPhone、iPadともに可)や、気にはなっているのだけどなかなかそちらまで手が回らない子供向け週刊コミック誌The Phoenix Comics(iPadのみ)、そしてSEQUENTIAL(iPadのみ)などがあります。

このSEQUENTIALというところは最近知ったばかりでまだあまりよくわからないのですが、主にインディペント系の物を扱っているようで、イギリスの物だけでなくアメリカのFantagraphicsや、Top Shelfのコミックも販売しています。今年5月から8月まで大英図書館でかなり大規模なコミックの展覧会が行われているそうで、その期間に合わせてこのSEQUENTIALから画像の『Comics Unmasked -Art and Anarchy in the UK』という150ページほどのカタログ(Panel Nine発行)がフリーでダウンロードできます。内容は、クラシック、インディペント系の物から、アラン・ムーア作品、ジャッジ・ドレッド、Sláineなどまでが数ページずつ紹介されていてイギリスのコミックのとても良いサンプルではないかなと思います。Webからでも見られないかと調べてみたのですが、残念ながらどうもiPadのみのようですが、もしiPadをお持ちでイギリスのコミックに興味があるならダウンロードしてみてはいかがでしょうか。

また、SEQUENTIALからは同じくPanel Nine発行で『INFINITY』というフリーマガジンも発行されていていろいろレビューも載っているのでまた面白いものが見つかったら書いていきたいなと思います。

今回、せっかくなので早く書いた方がいいかなと思って急ぎ足で、若干調査不足の観がありすみません。またなにかあったら追記していきます。


SEQUENTIAL

SEQUENTIAL iPad APP  

2014年5月5日月曜日

First Case -警察ハードボイルドMcRyanシリーズ-

Michael McKenzie "Mac" McRyanは、ミネソタ州セント・ポール警察の殺人課の刑事である。彼の家系は代々の警察官一家。亡くなった彼の父親も、有能な殺人課の刑事だった。彼自身は、ハイスクール時代のホッケー選手としての活躍が認められミネソタ大学に進学しさらにロースクールへ、と弁護士への道を進む。同じく弁護士を目指す大学時代の恋人とも結婚、大手弁護士事務所への就職も決まったある日、やはり警察官になっていた2人のいとこの殉職の悲報が届く。Macは自分の進むべき道に気付き、弁護士への道を捨て、故郷セント・ポールに戻り警察官への道を進み始める。
そして、今日がMacの殺人課刑事としての初日。自ら出資し、成功し始めているコーヒースタンドのコーヒーを持ち、パートナーのベテラン刑事Lichとともに最初の事件現場へ向かうのであった。

現場は、とあるバーの裏の路地。被害者は店を出た後、その路地で殴打されて殺害され、ゴミ箱のそばに駐車した自身の車に入れられていた。財布などが手付かずで残されていたことから強盗の犯行とは思われない。被害者は大手弁護士事務所の有能な若手弁護士。精力的に仕事はするが女癖が悪く、そちらで恨みを持つ者の犯行と思われるのだが…。そして、Macの最初の事件の捜査が始まる。

New York Times Ebooks Bestsellerにも選ばれている、米Amazon.com Kindleベストセラーハードボイルド部門常連のRoger StelljesのMcRyanシリーズ第1作…と言いたいところなのですが、実はこれは長編2作が書かれた後にさかのぼって書かれた前日譚です。一応その辺の事情は分かっていたのですが、私はこの本をその長編2作とセットになった『First Deadly Conspiracy』というボックスセットで買って、この作品が一番最初になっており、やはりここは作者の意図に沿って読むべきだろうと思い、この作品から読み始めました。ですが、読み始めてからこれが80ページ弱ぐらいの中編だと気付いたり(他の長編は350ページ前後)、なんだか典型的なアメリカ勝ち組若者みたいなMacの経歴が軽く紹介された後、現場検証、弁護士事務所への聞き込み、とどんどん進んでいく展開に、やはり本当の1作目長編から読むべきだったかなあ、と一旦は少し不安になってきてしまいました。しかし、中盤から少しずつMacの内面が描き出され始め、弁護士の道を断念し警察官になったというMac自身の経歴とシンクロする部分や、弁護士になった妻との夫婦関係などに進むにつれ、物語は深みを増して行き、実はこの事件の犯人像は見かけと違うのではないかという推理、そして最終的に明らかにされる真犯人、読み終わってみるとこの長さでも充分わかる実力のある作家によって書かれた警察ハードボイルド・ミステリだな、という感想の作品でした。
作者Roger Stelljeは、ミネソタ州在住の本業は弁護士で、大のホッケーファンということです。この作品には登場しませんでしたが、Macの経歴から考えてもこの後の作品にはホッケーの試合場面なども登場してきそうですね。執筆は本業とホッケー観戦以外の休みの時間、ということであまり早くはなさそうですが、今年中にはMcRyanシリーズの長編第4作も発表予定ということです。このシリーズ、前述したように米Amazon.comでも評価の高いベストセラー作品なのですが、最初の2長編はハードカバー版も出たそうですが、現在はe-Bookのみで、個人出版というかたちで出版されています。そういう新しいタイプの作家のひとりという事でしょうか。
ちなみに前述しました『First Deadly Conspiracy』というボックスセットですが、この作品と初期2長編を合わせたもので、3.81ドルという破格の値段です。興味を持たれた方は買ってみて絶対損のないものだと思いますよ。舞台はミネソタ州の政治の中心であるセント・ポールで、Conspiracyとタイトルにも入っていることから次からはスケールの大きなストーリーが展開することを期待しつつ、私もなるべく早く読んでまた感想を書こうと思っています。


●McRyanシリーズ 
1. FIRST CASE - prequel novella (2012)
2.THE ST. PAUL CONSPIRACY (2006)
3.DEADLY STILLWATER (2009)
4.ELECTING TO MURDER (2013)

Roger Stelljes公式ホームページ


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