2016年11月30日水曜日

Happy! -重量級コンビによる異色ノワール・コミック-

あのグラント・モリソンと『Transmetropolitan』、『The Boys』などで知られる名アーティストDarick Robertsonのタッグによる2013年Image Comicsからの作品『Happy!』です。少し前の作品ではありますが、最近パイロット版の製作が発表され、再び少し注目も集まってきているところではないかな、と思われます。


【あらすじ】

クリスマスが近づく雪の夜。元刑事のNick Saxは仕事へ向かう。職を失い、堕ちるところまで堕ちた彼の現在の仕事はヒット・マンである。
今回の仕事はFratelli兄弟の暗殺。依頼の兄弟3人を殺害したところで、4人目が撃ってくる。Fratelli兄弟は3人じゃなかったのか?
兄弟最後の一人を追い詰め、銃を突きつけるNick。
「待ってくれ!助けてくれ!隠し金のパスワードを教えるよ!今じゃ兄弟最後の生き残りの俺しか知らないパスワードだ!」
そしてNickは兄弟最後の一人を射殺する。

殺害現場を後にするNick。だが、予定外の男の銃弾を受けた彼も、そのまま雪の中に倒れる…。

しかし、その男はNickが殺すべき男ではなかった。依頼者であるギャングのボスは、駆けつけた警察により逮捕され病院へと運ばれたNickへ向け、彼が兄弟最後の一人から聞き出したと思われるパスワードを聞き出すべく配下に指令を下す。

生死の境をさまよい、救急車で病院に運ばれるNickは、目の前に自分に呼びかける不細工なアニメキャラのような羽の生えた青いユニコーンの姿を見る…。
そして病院で意識を取り戻したNick。そしてそいつはまだ彼の目の前にいた。しかもそいつは彼の目にしか見えていないようだ。そいつはHappyと名乗り、自分と一緒にHaileyを助けて欲しいと言う。
しかし、その前にまずやらなければならないのは、パスワードを聞き出すためにボスが送り込んだ配下と警察を振り切り、この病院から抜け出すことだ!


そしてNickとHappyの珍道中が始まる、という展開。
まあ、まずこのあらすじを読んで誰もが思ったであろうことは、まるでディズニーのファミリー向けクリスマス・ムービーみたいじゃん、てとこでしょうがこれはちょっと違う。これはモリソンが稀代のダーティーでバイオレンスな迫力のある画を描けるアーティストDarick Robertsonと組み、その画から作り出される思い切りダークなノワール世界でそれをやったという異色作なのである。実際これはComixologyのAge Ratingでも17歳以上になっていて全く子供向けではありません。HappyというのはHaileyという女の子のイマジナリー・フレンドで、その女の子を助けて欲しいと、自分の姿が唯一見えるNickに頼むのですが、Nickの方はそんなもん知るか、俺は今自分で精いっぱいなのだ、他のやつを探せ、と手段を選ばない逃走劇を繰り広げます。Robertsonの素晴らしい画もあり、そちらの方にはかなりうるさい私でも品質保証のノワール作品です。そして最後はちょっと泣けるクリスマス・ストーリー。でも彼女にクリスマス・プレゼントで贈ったら100パーセント怒られるだろうね。
最初に書いた通り、パイロット版の製作も発表された本作ですが、ちょっと詳細についてはあまりわかりません。たぶんケーブルTVや映像配信系でのシリーズ化を目指しているのだろうけど、それでもこの血とゲロと小便の嵐のこの作品がそのまま映像化されるのは無理だろうとは思いますが、ダーティーでタフなNickのキャラクターをうまく生かしたものでめでたくシリーズ化されていつか観ることができたらいいですね。ポシャってもパイロット版だけでも観る機会があるといいなあ。

作者コンビについては、まずグラント・モリソンについては特に今更言うこともないか。と言いつつもこのブログではモリソン初登場なのですが…。ただ、ビッグネームではあってもオリジナル作品については『We3』ぐらいしか翻訳もないモリソンでありますし、何かいろいろ紹介していければなと思っております。とりあえずあの超異色問題作『The Invisibles』の研究本『Our Sentence is Up: Seeing Grant Morrison's The Invisibles』というのを割とお手頃価格でKindleで見つけたりしましたので、その辺に取り組んでみようかと。これ(現在\594)とモリソンのDC初期あたりの作品についての本『Grant Morrison: The Early Years』(現在\368)はこの手の本にしてはずいぶん安いのでセールなのかも。一応下のリストの方に入れときます。
Darick Robertsonは私の最も好きなアメリカのコミック・アーティストの一人です。『The Boys』の時に散々言ったので、もう何も思いつかん。代表作の一つであるウォーレン・エリスとの『Transmetropolitan』については超有名作なのでちょっと気が引けるのですが、日本的にはあまり資料もないようなので近日中にちょっと書いてみる予定です。最近の仕事としては、なんとValiantの遂に再開される『Harbinger Renegade』がRobertsonの画で!…いや、中断になるところまでも進んでいないのですが…。Valiantについても続きを早くやります…。なんか宿題ばっかりじゃん…。

というわけで、今回はまた少し遅れてしまったのだけど、ちょいと頑張って2本書いてみました。何とかなるべくたくさんの作品を紹介したいといつも思っていて、2本立てみたいのも考えてみたのだけど後々検索とかしにくくなるだろうなと思い、少し短めな感じで一度に2本という方向でやってみました。全く根性とかとは無縁で1つ書くとすぐ気が緩んでしまう私ゆえ、2本並行して書くという手段により何とか達成することができました。結局遅れたけど…。ここしばらくは2000ADにかかりっきりで手が回らなかったり、いつ終わるのかわかんねーほど長くなってしまったものをダラダラ書いてたり、寒くなるとすぐに体調を崩したりやる気をなくしたりする私ですが、何とか一方では数を目指し、なるべく沢山の作品について書いていきたいと思う次第です。


●関連記事

ガース・エニス『The Boys』全解説


●Happy!


●グラント・モリソン研究本



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2016年11月29日火曜日

Revival 1: You're Among Friends -Image Comics人気のホラーコミック・シリーズ-

近年のImage Comicsのヒット・シリーズ…と思っていたら第1号が出たのは2012年だったりするのですが、現在も進行中の(44号が今月発売)人気シリーズであるホラー/カントリー・ノワール作品です。少し前に書いたけど、TPB第1巻の序文ではあのJeff Lemirieが僕もこういうRural Noir書きたかったんだよなあ、と言っている作品です。


【あらすじ】

ウィスコンシン州の田舎町Wausauで、新年明けて二日目の月曜日の未明、それは始まった。

火葬中の遺体が蘇生し、炉から這い出し、葬儀を待つ少女の遺体が起き上がり家に帰りたいと告げる。病院では死亡を宣告されたばかりの老人が目覚め、警察の死体保管庫では死体袋に入れられた死体が起き上がる。

この小さな田舎町で、原因もわからないまま突如死者が蘇り始める。生き返った者たちはゾンビのようなものではなく、死亡前の記憶も持ち、それまでと何ら変わらない人間に見える。

この原因不明の事態は、さしあたっては何か感染性の病に類するものとの危険性を考えられ、町は閉鎖され、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の職員も派遣されてくる。
警察署長の娘であり、自らも警官の一人であるDana Cypressは、父からこの事態に対する渉外担当の任を与えられ、CDC職員のIbrahaim Raminとともに事態の調査にあたる。

そして、一見生前と何ら変わらないように見えた生き返った人々の中に、少しずつ小さな歪みが現れ始める…。


というところがあらすじというか大まかな設定ぐらいのところで、実はこの作品かなり登場人物も多く入り組んでいて、最初の5号分を収録したTPB1巻ではまだあまり話も進んでいない状態だったりします。例えばかなり登場人物が多いタイプのアメリカのTVシリーズとか観て、まだ第2話が終わったぐらいのところで主人公周辺以外の人物関係などもあまり把握できてないような感じ。しかし何とか新しめの現在進行中の作品をなるべく多く伝えて行きたいなという思いで、とりあえず何とか頑張ってみます。

とりあえずその沢山いる登場人物から。まず主人公であるDana Cypressは離婚歴があると思われるシングル・マザーで、小学生ぐらいの年齢の息子と二人暮らし。シングル・マザーとなっている経緯などについてはまだ詳しくは語られていません。息子についても眼鏡をかけた母親思いの性格の良い子というぐらい。父親の警察署長は厳格な人物のようで、Danaは常にその期待に応えたいというのが少し強迫観念となっているようです。Danaにはさらに大学生の妹Marthがおり、実はこの妹第1話である事件に巻き込まれ死亡した後、蘇生しています。その後の彼女の行動がストーリーの一つの軸となって行く感じ。CDCのIbrahaim Raminについてもまだあまり詳しくは語られていませんが、基本的には知的で温厚そうな人物で、地元警察との対立はなさそうな感じ。お互いにちゃんと紹介される前にDanaとバーで出会い、行きずりの相手同士としてカーセックスまで行きかけており、ちょっと二人の関係は複雑な様子。その他にフリーランスで新聞などの記事を書いているらしいMay Taoという女性(中国系かな?)もストーリーの中では重要な役割を果たして行く様子。歪んだ思想の持ち主でイカサマ臭い悪魔払いの神父Abel。閉鎖された町の中で唯一のTVリポーターである女性Jamieなど。その他にもまだまだ増えそうな感じ。
全体の雰囲気で言えば、例えで出したようにアメリカの小さな町を舞台にして多くの登場人物が交差するTVシリーズという感じで、やっぱりホラー・サスペンスという傾向で有名なところではツイン・ピークスとかでしょうか。最近のでは未見なのだけどスティーヴン・キングのアンダー・ザ・ドームとかも近いのかも。未見のを例えに出すとまずいかな?TPB第1巻の時点では、まだ閉鎖された町から出るの出ないのという騒ぎには至っていません。少し人物関係が複雑だったりしますが、死者が限定された地域で蘇るというとても明確で興味を引く謎を中心とした物語で、ちょっと挙げたようなTVシリーズとかが好きな人にはおススメのシリーズです。

こちらのシリーズ作者はライターTim SeeleyとアーティストMike Nortonのコンビ。Tim Seeleyは2000年代に入ってから活躍中のライターで、アーティストとしてのの仕事もいくつかあるようです。マーベル、DCの仕事も多く、最近ので有名なところはDCの『Grayson』あたりか。代表作は『Hack/Slash』。こちらはそもそもはDevil's Dueというところで始まったシリーズなのですが、同社が経営難に陥り、現在はImage Comicsに移籍し続いているシリーズです。Devil's Dueの最後のころは原稿料が支払われなかったらしい。カバーなどを見るとカッコイイ色っぽいお姉さんが主人公で、ジャンルはホラー/ゴア/マチュアなどとなっており、そういう作品はぜひとも私の読みたいところなので、例によって例のごとく詳しい内容は調べておりません。初期のDevil's Due版についてはImage Comicsからプリント版でオムニバスが出ているようですが、Comixologyでは扱っていないようです。デジタル版はiVerse MediaというところのやっているComics Plusというショップで、Devil's Dueから買えるようです。Comics Plusはアプリ・ショップもあり、Comixologyに出していないような小さい怪しげなパブリッシャーも沢山あり気にはなっているのだけどなかなかそこまで手が回らないところです。とりあえず『Hack/Slash』についてはなるべく早く読んで詳しく書く予定です。
アーティストMike Nortonはキャリアが2001年のDevil's Dueのアート・ディレクターから始まっているので、Seeleyとも長い付き合いなのでしょう。その後、やはりマーベル、DCなどでも色々な仕事をして、ルッカの『Queen & Country』にも参加しています(Vol. 7: Operation: Saddlebags)。『Queen & Country』の方については次の第3回の時に詳しく。彼の作品として最も知られるのは、アイズナー、ハーベイ両賞を受賞した2011年から始まったウェブ・コミック『Battlepug』でしょう。こちらはDarkhorseから単行本も出ているようですが、ウェブの方でも読むことができます。基本的にはくっきりとした滑らかな線を主体とする日本的にも見やすいきれいな画で、作品によって多少タッチは微妙に変わるようですが、この作品に関してはあまり誇張のないリアルなタッチで描かれています。

Tim Seeleyホームページ

Mike Nortonホームページ

Battlepug

こちらのシリーズ、前述のように現在44号まで発行され、その後も継続中。TPBは7巻まで出ています。2014年にはあの『Chew』とのコラボレーション作もありました。ちょっと設定とキャラクター紹介ぐらいで終わってしまいましたが、次回登場の時にはもう少し話の方向性なども詳しくお伝えできると思います。



●Revival



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2016年11月17日木曜日

Anonymous-9 / Hard Bite -車椅子のヴィジランテ登場!相棒は猿!-

あまりにも遅ればせながら、やっとAnonymous-9作『Hard Bite』が登場です!
少し前(と思っていたらもう5か月前…)のDave Zeltserman / The Julius Katz Collectionの時にちょっと触れた、随分前にフリーで手に入れた短編を2本読んでみるというのをやった時のもう1本がこのAnonymous-9の短編3本が収録された『Just so You Know I'm not Dead』だったわけなのですが、一読しそのアノ9姐さんの筆力とでもいうものに圧倒され、何とかこれを早く読まねばと思いつつやっと今回たどり着いたのがこの『Hard Bite』であります。

ではその『Hard Bite』とはいかなる作品なのか?


男の名はDean Drayhart。轢き逃げ事件に遭い愛する妻と娘を失い、そして自らも両足、片腕、腸の一部を失い車椅子での生活を送っている。もはやそれほど長くは生きられないだろう。だが、轢き逃げ犯への怒りは消えない。全ての轢き逃げ犯への!そして彼は療養生活の陰で様々な手段を使い逃げ延びている轢き逃げ犯を割り出し、そして暗殺する。残り少ない命が燃え尽きるまで!それがこの物語の主人公である。
そんな彼を支える相棒が介護猿のSidである。介護猿の需要は多く、待っていてもなかなか手に入らないという状況で違法に入手されたこのSidは他の介護猿にはない鋭い牙が残されている。体の自由が利かない主人を様々な局面で助けつつ、ある時はその命令一下敵の首筋にその牙を突き立てる!Hard Bite!
そしてもう一人、彼が車椅子生活になってから出会った恋人である娼婦のCinda。彼女もDeanの秘密の顔を知る人物である。彼のヴィジランテ行動には直接は関わらないものの、何かとDeanを助けてくれる。

Doug Coltson刑事は積み重なる未解決殺人事件に頭を悩ませていた。そして今夜もまた事件だ。Lakewood Parkの駐車場の植え込みの中で倒れていた被害者の首には死因となった謎の傷。吸血鬼?不穏な考えがColtsonの頭をよぎる。そしてすぐ近くでは闘犬場で負け犬を屠殺する係りの男が逃げた闘犬に噛み殺される。意味もつかめないうちにまた次の事件…。しかしColtsonは優秀な鑑識課員や相棒の女刑事Leoneらの助けもあり、次第にその中につながりを見出して行く…。

そして、警察の目をもかいくぐるようにDeanに殺害された一人の男の遺体がメキシコへと運ばれる。その男は偽装された身元でアメリカで暮らしていたメキシカン・マフィアの息子だった。刑務所で夫が亡くなった後、代わってトップとして組織を動かしてきた母親Orellaは激怒する。自身の探索のためアンダーグラウンド社会とも関係を持っていたDeanは、そのつながりからマフィアに身元を特定される。そしてDeanに死の手が迫る!


物語はまず主人公Deanの一人称から始まります。このような境遇にある主人公ではあるのだけど、その語りは悲壮というよりはユーモラスな感じで、自分の今の状態を笑い飛ばす感じ。そしてその後、刑事やマフィアの視点による3人称のパートが加わり、入れ替わりながら物語は進んで行きます。
そしてこれがどのような作品かというと、何の但し書きの必要もなくあのマック・ボランにも連なる良質のヴィジランテ・アクション・ノベルというところです。冒頭から続く探り当てた轢き逃げ犯の暗殺、そして次第に迫ってくるマフィアと警察による追跡がスピーディーで迫力あるタッチで描かれる。なぜこのような設定でそんなことが可能なのか。それこそがアノ9姐さんの「筆力」というものではないかと思うのです。
基本的には自分は筆力だとか言霊だとかなーんか定義が曖昧かついかがわしいにおいのするもので作品を語るのは好きではないのですが、このアノ9姐さんには自分の能力ではそんな風にしか説明できないものがある。『Just so You Know I'm not Dead』収録の「Dreaming Deep」ではラブクラフトとは全く異なるスタイルでありながら完璧に現代にクトゥルフ世界を再現し、このような特異な設定でアクション・エンタテインメント作品を作り上げる。そこにはもはや小手先のテクニックを超えた能力があるとしか言いようがない。そんなわけでここではとりあえず仮にでもこれを姐さんの「筆力」と呼ばせてもらいます。更に今回の作品中でも警察パートだけ抜き出してもかなりよくできていて、捜査物の警察小説とか書いても凄いのができるんじゃないか、とかまだまだアノ9姐さんの実力・「筆力」は計り知れない。恐るべしアノ9姐さん!絶対に読むべし!

というもはや現在のこのシーンでは必読作家の一人であるアノ9姐さんなのですが、ちょっとここのところ活動休止状態…。前述のクトゥルフ短編を中編化したらしいUncanny Booksからの『Dreaming Deep』が昨年4月に出たのが現在のところ最新作。(Uncanny Booksでは他の作家も加えてこちらを新クトゥルフ物としてシリーズ化する意図だったようだが、その後は不明。アマゾンでUncanny Booksとか検索してみてもマーベルのUncannyナントカが山のように出てわからん!)ホームページもそこまでで、まあ作家のホームページなどは放置状態のものが多いけど、ツイッターも今年お正月ごろのが最後となっていたり。もしかしてどこか身体を悪くしてしまったのでは、と心配しております。今年になってからの活動がDown & Outへの移籍だけというところなのだが、しかしそれは今後の作家活動継続への意志と見るべきでしょう。こちら極東辺境の一介のチンピラ・ファンで御座いやすが、姐さんの一日も早いご復帰を末席で心からお待ちしておりやす!

ちょっと順番が後になってしまった感じですが、作品についてもう少し。こちらの作品どうも原型となる短編があるそうで、そちらは短編集『The 1st Short Story Collection』に収録されているそうです。色々な描写から、多分轢き逃げ被害者かどうかは別としても、作者の身近にこういう大変な境遇の人がいるのだろうと思います。主人公Dean Drayhartについては、どこかに寄りすぎることもなく読者が好感を持ち、共感するところも多いような一人の普通の人物として描かれています。そしてこの作品シリーズとして第2作『Bite Harder』が2014年に発表されています。まだそれほど多くはないが、その他の作品についても必読!あっしもなるべく早く読むでやんす!

そしてこの作品の版元についてですが、またしてもまず訂正。以前こちらのデジタル版は英版がBlasted Heathで米版がDown & Outとか書いてしまったのですが、そちらは間違いで現在はデジタル版はBlasted Heathのみの販売となっています。Down & Outの方にデジタル版の表記があったのでそちらからも出てるのだと思い込んでしまったのですが、よく見たらリンクは張ってなかったので、そちらの販売ではないがデジタル版もあるというだけの表記だったのでしょう。Blasted Heathについてはもう散々書いてきているのですが、こういう形になるのもやっぱりAllan Guthrieさんの人望の厚さなのでしょうね。Down & Out Booksについてももう結構おなじみだと思いますが、ここで一応ちゃんと書いておくと、2011年フロリダ タンパにて設立。最初はCrimespree Magazineのデジタル販売から始め、アンソロジーなどを経て最近急成長、とちょっと雑ですがこんな感じです。現在は気鋭の作家を次々と集め、注目作を出版中。日本でも文春文庫から翻訳の出たロノ・ウェイウェイオールも最近参入の一人です。とにかくこのDown & Out BooksとかPolis Booksとか280 Stepsとかについてはもう片っ端から読まねば、と思っている次第なのですが、まだほとんど手を付けられていない状態で…。何とか努力いたしますです。

Anonymous-9ホームページ

Blasted Hearh

Down & Out Books


【その他おしらせの類】
なんと早くもアンソニー賞受賞のクリス・ホルム『The Killing Kind』の翻訳が!邦題『殺し屋を殺せ』。まあ昨年9月に出てた本なので版権を取得した後ノミネートされ、賞をとるか?と期待して待っていたところなのでしょうね。よかったね早川さん。そろそろ原書を買おうかと思っていたタイミングだったので助かったっすよ。どうも雑読み雑感想で通気取りが横行しがちなこのジャンル、期待の新作家遂に上陸!を保護するためにも最優先で読んで感想を書くつもりであります。
えーと、それから以前にタイトルを上げた『ガール・セヴン』なんですが、「女子の女子のうるさい」とか書いちゃってごめんなさい。ほんとに女子の女子ので私に関係ない本でした。キャラで動く話なので、女子の他にもアニメやラノベを楽しめる人ならいけるかな、というところでしょうか。まあブリティッシュ・ノワールへの待望の気持ちもあって勢いでタイトルを載せてしまったので一応書いときました。以後責任持てるかわからない本についてはやみくもに書かないように気を付けていきます。載せられた方も妙な事かかれりゃ迷惑するだけなんだし。結局自分に合わない本を読んじゃったなどというのは自己責任の事故ですので、不必要にこき下ろすような下品なことは控えますが、ただ翻訳については、原文にあるのかも怪しい特定の人たちへの明白な差別表現とも考えられる「バーコード頭」というような言葉が無造作に使われているのを見ると、その存在ゆえに世界から負のエネルギーを被るのは女性だけではないのではないかなという印象を持ちました。べ、別に自分の頭髪に危機を感じてるから言ってるわけじゃないんだからねっ!どーせ人間見た目が70%で残りはタンパク質やミネラルなんだろっ!ちぇっ。
まあなんだかんだで『熊と踊れ』はまだ少しなんですが、途中でも明らかに傑作。こーゆーのに関しては色々権威も信用もある人たちが誉めるだろうし、空気読みの「である系」もそこに従うところでしょうから別に私がどうこういうものでもないでしょう。でもそーゆー先生がスルーしちゃって適当な悪評ばかりが横行しそうな『殺し屋を殺せ』、『オーファンX 反逆の暗殺者』といったあたりには、この一切空気もバーコードも読まない誰にでも見境なく吠える犬が熱く語って行くつもりであります。わんわん。ああ、『カルテル』読めるの来年かも…。

ドゥエイン・スウィアジンスキーKindle版が少しお得セール開催中!この間までペーパーバック定価並みの1800円ぐらいだった未訳作品『The Wheelman』、『Expiration Date』の2作を含むスウィアジンスキーKindle版が800円台ぐらいで販売中です。まあ800円台ではそれほど安くもないんだが。でももしかするとこれは現在のMinotaur Booksの版権切れ前セールという可能性もあるので、このチャンスを逃すとKindle版が手に入らなくなる恐れもあります。Mulhollandに移ったとしてもあそこは日本ではKindle売ってくれないし。そうでなくても少ししたらまた元の値段に戻るだけ。スウィアジンスキーをKindle版でとお考えの人はこの機会に買っておくべし。何百回でも言うけど『The Wheelman』はケイパー小説近年の大傑作で読まないと損するよっ!『Expiration Date』もいずれ読んで書きますが、絶対面白いのは間違いなし!

最後にまた読書系アプリの紹介です。まずはMystery Weekly Magazine。実はこれアマゾンのKindleのおススメで来て、どういうところなのだろうと調べてみたらアプリもあるということなのでインストールしてみました。まだ創刊されて1年と少しというところのようです。Weeklyとはいうものの現在のところは月刊で発行中です。Weeklyは目標なのか?こちら前に書いたEllery Queen Mystery Magazineと形が同じじゃん、と思ったら、どちらも単体のアプリは出ているけど大手BookstandのMAGZTER傘下で販売されているということでした。Ellery Queen Mystery Magazineと違ってこちらは日本でもKindle版が買えるので、辞書も使えるしそっちで読めばいいかと思うけど、とりあえずあるとなんかうれしいのでインストールしてみてはいかがでしょうか。
続いてJonesin’- Daily short fiction。というのがアプリの名前だと思うのだけど、Great Jones Streetというところがやっています。Spotifyで音楽を聴いたり、Netflixを観たりというように手軽に新しい優れた短編を見つける、というのがコンセプトだそうです。まだ始まったばかりで現在出ているのはまだベータ版で、ただ作品が並んでいるだけで特別な機能などは何もありませんが、作品にはそれぞれカバーがつけられて、結構たくさんあって日々追加されている様子です。とりあえずは現在のところはとてもシンプルで、カバーをタッチすると特にダウンロードなどもなく作品のページに移動し、下にスクロールしながら読むというものです。ジャンルは幅広く何でもあるようですが、現段階では整理されておらず、カバーで推測するしかないようです。今後どういう形で有料化されていくのかも不明ですが、ベータ版の現在のところは全部の作品が無料で読めます。まだまだ分からないことばかりで、自分の興味ある作家を見つけるのも難しいかという状況ですが、とりあえずは期待して行きたいところですので、なるべくは目を離さず何か続報がありましたらお伝えいたします。
あとOolipoの方については相変わらずなかなか読めるものが増えてきません。頑張れ!

Mystery Weekly Magazine

Great Jones Street


またしても少々遅れてしまいましたが、とりあえずは何とか頑張って続いております。11月も半ば過ぎでそろそろ年間ランキングとかも決まってきたのだろうな、と思ったりしますが、今年出たジョニー・ショーの『負け犬たち』はどうなったのでしょうか。私も原書Kindle版をせっかく持っているのでまずそちらを読みたいという事情で未読ですが、ジョニー・ショーの作品が面白くないなどということは100パーセントありえないので、ランキングに影も形もなくても絶対読んでねっ!では世界から被る負のエネルギーにも負けず、また頑張りますです。


●関連記事

Mind Prison / Just so You Know I'm not Dead -短篇(集)2本立て-


●Anonymous-9
■Hard Biteシリーズ


■中編


■短編集



●ドゥエイン・スウィアジンスキー未訳



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2016年11月7日月曜日

2000AD 2016年夏期 [Prog 1988-1999] 後編

とりあえずやり始めたことはきちんと決着を付けねば、ということで少し戻って2000号直前の2000AD 2016年 夏期後編です。ではまず今回のラインナップからです。

 Judge Dredd [Prog 1991-1999]
 Scarlet Traces [Prog 1988-1999]
 Outlier [Prog 1990-1999]
 Anderson Psi Division [Prog 1993-1999]
 Jaegir [Prog 1996-1999]

そして今回のトップ画像はIan Edginton/D'IsraeliのコンビによるScarlet Tracesです!こちら実は新シリーズではなく、色々な経緯を経て遂に本誌2000ADに登場ということらしいのですが、詳しいことは後ほど。

Judge Dredd
 1. Ladykiller : John Wagner/Carlos Ezquerra (Part1-8)
 2. Well Gel : T. C. Eglington/Paul Marshall

1. 巨匠コンビによる今回のシリーズは2015年秋期から続くMega-City Oneの天才的犯罪者P J Maybeが登場するストーリーです。
P J Maybeを追い続けるドレッドは、メディアを使いMaybeが潜伏中に装っていた名前や顔写真などを公開し、市民に情報を呼びかける。それに応えたのはMaybeが気まぐれで付き合っていた入院中の男性だった。彼は自分の痕跡を常に消そうと企むMaybeにより毒を盛られ瀕死の状態で生き延びていた。面会したドレッド達は断片的な手掛かりを得たが、のちにナースに女装して現れたMaybeによりその男は殺害されてしまう。わずかな手掛かりをもとにドレッドは遂にMaybeの現在の潜伏先を突き止め包囲するが、またしてもその網を潜り抜けMaybeは逃亡する。追われ続けることに業を煮やしたMaybeは、これ以上自分を追い続けるならドレッド自身に重大なダメージを与える殺人を実行する、と宣告する。そして、ドレッドに縁の深いMrs. Gudersonに魔の手が迫る…。
シリーズタイトルのLadykillerは女性を狙う犯罪者の意ではなく、Maybeが女装のまま逃げ続け、犯行を重ねるところから。2014年秋期以来久々にMrs. Guderson(この人については依然不明。すみません)とともにあのロボットWalterが登場するのですが、ここで大変尊敬するEzquerra師匠ではありますが、今回はちょっと苦言。せっかく久々の登場となるWalterなのに、コマの端っこで半分切れてるとかゆー画が多いじゃないですか!ちゃんと真ん中に描いてあげてくださいよー。あと師匠の描くWalterあんまり可愛くないです…。そして、実はこのMrs. Guderson襲撃はMaybeの陽動作戦であり、ドレッド達がそちらに動いた隙を突き本当の狙いであるドレッドの唯一の血縁である姪のViennaを襲う。しかし、ドレッドもMaybeの意図は最初から読んでいた!そして遂に追い詰めたMaybeを射殺!こうして長年にわたる因縁に決着がつけられるのでした。
画像はその最終話が掲載されたProg 1998のカバーです。春先ぐらいにJohn Wagnerが発言した「重要なキャラクターが死ぬ」というのは実はこのことだったのですね。まああれは明らかにタイミング的に春期の「The Grindstone Cowboys」の最後で本当にドレッドが死んだのか?という疑いを持たせるためのミスリードだったのですけど。こうして遂に退場となったP J Maybeなのですが、私的には近年の「Day of Chaos」辺り以降しか知らないわけなので、過去の作品で改めて再会できるのを楽しみにしています。
ここでドレッドの唯一の血縁である姪Viennaについてですが、なぜクローンであるドレッドに血縁があるかというと、この人実はスタローン主演の映画『ジャッジ・ドレッド』にも登場したドレッドのクローンの双子であるリコの娘なのです。「Day of Chaos」にも登場していたように、ドレッドはこの人だけは何が何でも助けます。映画の元になっているリコが登場するストーリーはかなり初期のもので、Complete Case File Vol. 1に掲載されています。

2. 筋肉の代用として動かせるプラスティックを開発した技術者。実験の最終段階に恐竜の骨格にそれをかぶせ、動かして見せる。だが実験開発に熱中するあまり、父親に無視されていると感じていたその息子が、友人の少年とともに深夜その恐竜を動かし、Cityを暴走させてしまう。
今期最終シーズンであるSF作『Outlier』のT. C. Eglingtonによるワンショット。作画は最近の合間に入るワンショットではおなじみのPaul Marshall。一時期この人の画についてずいぶん文句を言ったけど、ちゃんと自分の画の欠点をわかっていて努力している人なので、今は好感を持っています。カラーも今回は合っている感じ。

Scarlet Traces : Cold War
 Ian Edginton/D'Israeli

このシリーズ、そもそもは2002年にCool Beans Worldというところでウェブコミックとして始まったもの。Cool Beans Worldというのはかなり意欲的なところだったようで、2001年にPat Mills、Simon Bisleyなどの英国コミックの有名なクリエイターの他に、クライブ・バーカーらの協力も得て立ち上げられたウェブサイトで、アニメーションや一部アニメーションのコミックを配信していたそうです。この『Scarlet Traces』も一部アニメーションだったらしい。しかし、Cool Beans Worldは短命で2002年に終了し、『Scarlet Traces』も最初の5ページで中断してしまったということ。それを「Judge Dredd Megazine」が引き継ぎ、普通のコミックの形で描かれたものが2002年に掲載され、2003年には米Darkhorseからハードカバー版が出版。その後はDarkhorseの方で続編『The Great Game』が4号のミニシリーズとして発行され、2006年に単行本としてまとめられ、同年に『H. G. Wells The War of the Worlds』もDarkuhorseから出版。これらはすべてIan Edginton/D'Israeliコンビによって描かれていますが、Darkhorse版については現在絶版であまり詳しいことが分かりませんでした。そして10年のブランクの後、今期再開されたのが第4シリーズにあたる『Cold War』となります。
さすがにそれだけのブランクもあり、現在は前シリーズも入手困難ということもあり、連載開始のProg 1988では冒頭の目次ページであるTharg's Nerve Centreにこれまでのあらすじが掲載されています。そもそものこのシリーズは、あの有名なH・G・ウェルズの『宇宙戦争』に続く話として作られたものです。火星人による地球侵略戦争が失敗に終わった後、イギリス政府は密かにその残された技術を接収し強力な軍隊を作り上げていた。そしてその軍隊をもって逆に火星への侵略を謀る。長期化した火星への侵略戦争が悪化する中、一人のジャーナリストが数多くの火星に派遣されたまま帰還しない兵士の取材を始めたところ、それらが地球に潜入していた火星人によって作られた人造人間だったことを知る。そして、敵がそもそも火星人ではなく、自分たちの星を失い火星に侵略してきた異星人であることも明らかになる。そして敵異星人により月に設置された超火力砲が地球に向け発射準備に入る。その試みは阻止されたものの、イギリスはイングランド南部殲滅という被害を被るのだった。
というのがこれまでのあらすじ。そして、新たな設定として、その異星人たちは火星のみならず金星をも侵略しており、その手を逃れ地球に脱出した金星人難民が地球には存在し、差別を受けながら金星人街で暮らしているというものがあります。ストーリーの中で説明されているのだけどややこしくなりそうなので先に書いておきます。

金星より地球に向け謎の飛行物体が飛来しているのを月面基地が発見。ただちに緊急警報が発令され、軍により撃墜されるが、発射された脱出カプセルは地球に着陸する。中から現れたのは異星人により作られた人造人間の男Iykarusだった。彼の告げるところによると、彼は反逆者として異星人の元を逃れてきたということ。そして異星人たちはもはや侵略を放棄し、この太陽系全体を破壊するという計画に入ったという。半信半疑ながらも政府は彼のその異星人による目論見を阻止するための彼の計画の実行を許可する。金星人難民の息子として育ちながら、地球人との融和を目指し軍隊で整備工として働くAhronがIykarusにより指名され計画に参加することとなる。そして、Iykarus、Ahronを乗せた宇宙船が金星を目指し旅立つ…。

あの『Stickleback』に続き、昨年夏期には新シリーズ『Helium』を立ち上げたばかりの人気コンビによる過去のシリーズの復活なのですが、まあこれももう新シリーズという感じで今後の人気シリーズになって行くのは間違いないでしょう。時代的には違う歴史をたどったまだ20世紀で、何かをひねくったりこじつけたりすることなく普通にレトロな味わいのSFなのもいい。後半次に続く感じで物語も大きく展開するのですが、それについては次シーズン登場の時に。できれば現物を読んでもらうのが一番だけど。しかしこのコンビ、多分次シーズン最終回と思われる『Stickleback』も気になるし、『Helium』の続きも早く読みたいのだが今後のスケジュールはどうなるのだろうか?Edgintonの方はもう一人の相棒I. N. J. Cullbardとの人気作『Brass Sun』が次はいつ登場なのかとか、Cullbardの方もDan Abnettとの新シリーズ『Brink』の続きが一刻も早く読みたいとか、今後の展開がかなり気になるこの辺の人脈なのです。

Outlier : Survivor Guilt
 T. C. Eglington/Karl Richardson

2015年夏期に続く、SFアクション作の第3シーズンにして最終回。今回はカバー画像はナシ。ちょっとアレステア・レナルズ風だったりもして結構気に入ってたのだけどあまり人気なかったのかな…。前シーズンでは後半、Hurdeの基地に真意を隠し収容されたCaulとCarcerは、計画通り恋人JessとCarcerの両親の救出には成功したものの、CarcerはHurdeの元に取り残されてしまうという結末を迎え、この第3シーズンに続きます。
Caulの行動をHurdeは敵対的な攻撃とみなし、その名目の元地球への攻撃を開始する。その先頭に立ち、攻撃を宣告してきたのは完全にHurdeの支配下となったCarcerだった。密かに接収したHurdeの技術を応用した兵器を使いSornel将軍はその攻撃を迎え撃つ。一方、救出されたJessの証言によると、Hurdeの中にも分裂があり、Caulの行動はその過激派による地球攻撃のための口実として仕組まれたものらしいことが明らかとなる。勝利と栄光のためにはいかなる兵士たちの犠牲をもいとわないSornel将軍に反感を持つ女性大佐Luthraは、僅かな対話の可能性に賭け、Jess、Caulを同行しHurdeの許へ向かうのだが…。
もしかしたらもう少し構想あったのかもな、とも思わせる最終シーズンでした。もちろん言うまでもなく上のEdgintonらを中心とする方向のSFも大好きな私ですが、こういうハードSF寄りミリタリー方向というのにも頑張ってもらいたいと思うところです。イギリスあたりの最近のSF傾向もレナルズ辺りとは違うのかな、と思ったりして同じRebellion社のSolaris Booksあたりを読んでみると見えてくるかな、と思ったりもするのだがなかなかそこまでの余裕はナシ。T. C. Eglingtonさん期待しているのでまたこんなの書いてくださいね。

Anderson Psi Division : The Candidate
 Emma Beeny/Nick Dyer/Ben Willsher

近年の映画にも登場しおなじみの、普段は『Judge Dredd Megazine』の方に掲載されているジャッジ・アンダーソンのシリーズが2000号を前に2000ADにも登場です。
市長選挙が近づく中、アンダーソンは新人PsiジャッジFlowersとともに、過激派組織Citizens' Armyに脅迫されている女性候補Smartの護衛に就く。演説会の最中、Smartへの襲撃が起こるが、ごく短時間ではあるが未来を予知できるFlowersの能力により、候補の身は守られる。襲撃者を逮捕したアンダーソンは、その男が正体不明の能力者に心理操作されていたことに気付く。調査を進めるうち、アンダーソンは孤児として育ったSmart候補とその兄の過去に隠された秘密があることに行き当たる。一方、Smart候補は市民の立場に立つというスタンスから攻撃者を擁護し、Citizens' Armyすらも自らの側に取り込み、やがて攻撃の矛先をジャッジ・システムに向け始める…。
Survival Geeks』『The Ailienist』などでGordon Rennieとの共作で最近の2000ADに登場していたEmmma Beeny単独によるストーリー。いえ、話は面白かったです。なぜ2000号の時ちょっと口ごもった感じになったかというと…、うむむ、夏期前編DreddのP. J. Holdenによる女装した武井壮風チーフ・ジャッジHersheyに続き、今回Nick Dyerによるアンダーソンがガイル少佐の母親か姉にしか見えないのだが…。(カバー画は別の人、Christian Wardによるもの)いや、Nick Dyer自体は陰影の強いクールな感じと暑苦しさを同居させた感じのいいアーティストではあるのだけど、どうも女性が…。イギリス人にはこれがガイル少佐の親族に見えないのだろうか、と思っていたら、なぜか最終回のみ作画がDreddなどでよく見るBen Willsherに交代し、美しいアンダーソンが描かれていました…。

Jaegir : Warchild
 Gordon Rennie/Simon Coleby

前回登場が2015年夏期で1年ぶりになる人気シリーズの最新シーズンですが、今回は4話と少し短め。えーっと、まずJaegirの父親のことなのですが、前回戦死した、と書いてしまったのですが、実は生きていました。実は前シーズンの最後に登場しています。何らかの事情により軍隊を追放になり、現在は引退の身であることが今回の冒頭に明かされます。実は前回の最後に登場したのを見たとき、これは死んだと思われていたのが実は生きていたのだ、と思い込んだ私の早とちりによってそんな書き方になってしまいました。で、今回になる次の時には「戦死したと思われていたJaegirの父親は実は生きていた!」みたいに書こうと思ってたわけ。でもこれは単純な早とちりというよりは、作者の意図的なミスリードにまんまと私が引っかかっちゃったという不始末です。結果的にちょっと混乱するような書き方になってしまってすみませんでした。
引退中の父から連絡せよ、という伝言が伝えられるが、Jaegirにはなかなか父親と話す決心がつかない。そんな中、Jaegirは昔からの知り合いで、大勢の戦災孤児を養っている女性の退役軍人Markhaを訪ねる。かつての父親の部下でもあったMarkhaから父親の話を聞くことで何らかの決心を付けようという考えもあったJaegir。だが再び食料を持ってMarkhaの許を訪れたとき、MarkhaはStorigoiが発症した子供の手により殺害されていた。そして獣人化した子供はJaegirにも襲い掛かる!一方、引退の身である彼女の父にも、その命を狙う刺客が迫る…。
今回も面白かったけど、またしても大きな秘密の一部がちょっとだけ明かされたけどなかなか本編にたどり着かないような感じがもどかしいところ。次はまた来年かー。さて2000号では『Rogue Trooper』を手掛け、現在のNu-Earthサーガを任された感じのGordon Rennieなのですが、2000号の時はこの『Jaegir』が『Rogue Trooper』の話につながると思ったのは私の早とちり(またかいっ!)でしたー、と書きましたが、その後もしかしたら?という展開が!そちらについては次の2000AD 2016年秋期に!いや、でもまた早とちりかも…。

2000AD Summer Special 2016

前回予告しました通り、やっと追いついたことで手も届くようになった7月発売の増刊「Summer Special」についてもその内容をざっとお伝えします。

Judge Dedd : Night Zoom
 John Wagner/Brendan McCarthy
Cityを走る列車内で悪妻からの通話に怒りを募らせる男が、奇妙な人物から交換殺人を持ち掛けられるのだが…。ドレッドも少ししか登場しない、Cityの設定を使ったSFサスペンスという感じの作品。イギリスの有名なアーティストBrendan McCarthyのコミック作品は初見だけど、やっぱスゴイという感想です。
Ace Trucking Co : The Banned Brand Stand
 Eddie Robinson/Nigel Dobbyn
1980年代前半頃、John Wagner、Alan Grantらによって作られた宇宙の運搬人を主人公とするコメディ・シリーズのワンショット。積み荷を運搬中の彼らが通過しようとした星系では宇宙オリンピックが開催中で、スポンサー・ブランド以外の商品の持ち込みが禁止されており通過だけが目的の彼らも立ち入りを禁止されてしまうのだが…。ちょうどオリンピック開催時に発売された号で、何を皮肉っているかは説明するまでもないでしょう。
Sinister Dexter : Shady As Funt
 Dan Abnett/Tom Foster
猛暑の中、何度やってもすぐにまた故障するエアコン修理業者に業を煮やしたギャングのボスの依頼で、二人はその業者の許を訪れるのだが…。まあとにかくまず新鋭Tom Fosterの画が素晴らしいワンショット。
Robo-Hunter : Droid Dilemma
 Alec Worley/Mark simmons
こちらもJohn Wagnerにより、1978~85年のあたりで2000ADに連載され、その後も時々リバイバルされている人気シリーズのワンショット。ロボット専門の賞金稼ぎSam Sladeを主人公とする、やはりコメディ・テイストも強いシリーズらしい。大企業Nebulous Industriesの依頼でお尋ね者のドロイドを回収してきたものの、ドロイドが持ち去ったデータが無いということで賞金の支払いを拒否されてしまうSladeだったが…。助手らしきドロイドのキャラクターも面白く、もっと読んでみたいシリーズです。ところでSam Sladeってもしかしてあのサム・スペードから?
Rogue trooper : Shore Leave
 Guy Adams/Jimmy Broxton
汚染された海岸のNortの基地にある情報を求め潜入するRogue Trooper。ちょっとあまり情報がないのですが多分まだこちらも新鋭というところらしいアーティストJimmy Broxtonのダークに描かれたNu-Earthが素晴らしい。結構地道にコミック方面でも頑張ってる感じのGuy Adamsのシナリオも良し。

時々は新シリーズが開始されることもあるらしい増刊ですが、今回はご覧のように人気作『Sinister Dexter』の他は過去作のリバイバル・ワンショットというところでした。好評のものは本格的にリバイバルシリーズが再開ということもあるのでしょうが、とりあえず過去のやつの単行本とかも読んでね、という宣伝目的もあるのでしょうね。『Rogue Trooper』は本当に好きで過去のを読んでいるのだが、読んでいる「Tales of Nu-Earth 01」が1話5ページぐらいで400ページというようなものなのでなかなか終わらず、まだここに書くまでに至っていないというところです。なるべく急ぐであります。どういうものかさえ把握できれば、全体的にとても楽しく読めた1冊でした。とりあえず出る時には年2回夏冬あたりに出る増刊ですので、また出るようでしたらその時にはお伝えします。


というわけで、2000AD 2016年夏期後編でした。続く2001号より現在進行中の秋期は、ミリガン新シリーズに加え、なんと巨匠Millsの代表作2本立てとGordon Rennieによるアレ!という恐るべき内容です。とりあえずは秋期終了後の年明けぐらいにこちらには登場の予定であります。
まあ結局立て続けに2000ADばかりで他のコミックのことが全然書けなくなってしまっていたのですが、何とかここで落ち着きましたので、またなるべくいろいろなものについて書いていくようにしたいと思っております。なんか腰痛でオレレゴみたいに下半身のパーツ取れちゃうんじゃないかみたいになってしばらく寝てたり急用が入ったりで今回はずいぶん遅れてしまいましたが、また何とか頑張って行くつもりではありますのでよろしくね「:-)ー<。


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2000AD 2000号達成!



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