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2021年9月24日金曜日

Moonshine -『100 Bullets』のレジェンドチーム最新作!-

なんかアメリカのコミックについて書く時には、ここんとこ毎回こんなこと言ってる気もするのだが、今回もレジェンドコンビによる作品の登場である。誰もが知ってるあの伝説作品 『100 Bullets』のBrian Azzarello、Eduardo Rissoによる最新現在進行中作品『Moonshine』!
いや、なんというかさ、しばらく前のエド・ブルりんのときに書いたように、貧乏性克服で結構とっといたいいの優先で読んでるとこもあるのだが、アメリカのコミックが 電子書籍化と映画・映像配信等方面のバブルからの後退で勢いが低下している状況となると、日本にもいまいち情報とか伝わりにくくなってるという感じもあるのかと思い、 そうなるとやっぱり有名作家の現行作や近年の作品を取り上げることで、まあワシ程度のところでも少し現状の大枠を伝えられて、先に続く道になるのではと思ってやってるところもあるのだよね。 とかくこういう状況の時は、特にちょっと縁遠い日本からだと、次に動きがあった時へのつながりとかが失われやすいんで、その辺見失わないようにしっかり見て伝えて行ければな、とあんまり柄にもなく思っていたりするのです。まあワシのペースではどの程度役に立つか…というところなのだが…。
そんなわけで今回の『Moonshine』。発行はまたしてもなのだけどImage Comics。開始が2016年10月と結構前なのだが、現在までに26話、TPBが4巻まで発行中とかなりスローペースながら 現在も進行中のシリーズで、Comixologyでは続く28号までが発行予定となっている。とりあえず自分が読んでるのはTPB2巻までなのだが、シリーズの方向性などを伝えるにはそのくらいまで 書いた方がいいかなと思うので、今回ちょっとネタバレありかもという感じで進めて行きます。あんまり知りたくないという人はご注意を。

【Moonshine】
1929年 ウェストヴァージニア Spine Ridge。
深夜、ランタンの明かりを頼りに森を抜けて行く三人のスーツ姿の男達。ショットガンと手斧で武装した彼らは、禁酒法時代のアメリカの密造酒醸造所を捜索する政府の捜査官だ。
「午後にこのあたりから煙が上がっているのを見た。間違いなくこの近くにあるはずだ。」
そして彼らは森の中に小さな小屋を見つける。小屋の中にある醸造用の設備用具をランタンが照らし出す。
「思った通りだ、Holtの道具だな。」
設備を破壊すべく手斧が降りあげられると同時に、野獣の唸り声が響き渡る。慌てて銃を構える男達!だが、目にもとまらぬ動きの黒い影に男たちは成す術もなく、あたりに血しぶきが吹き上がる…。

「Pirloさん、電話があったよ。長距離の。」
ニューヨークからこの地を訪れているLou Pirloに宿の娘が声を掛ける。伊達男Louは、ニューヨークのギャングJoe "The Boss" Masseriaの配下。ボスの命令でこの地で作られている極上の酒の買い付けに 来ている。ボスが何としても渡りをつけたいと望んでいるその酒の作り手の名はHiram Holt。電話はもちろんボスからの催促だ。
「なあ、ボス、もうちょっと待ってくださいよ。ここは全くひでえとこなんだ。おまけにHoltはこの先の山ん中に住んでいて、こっちには降りて来もしねえ。ああ、わかりましたよ。今日には Holtに会いに行きますんで。」
山に登る前に腹ごしらえだ。Louは宿に近くの食堂に寄る。いい女を見つけたがやけにツンケンしてやがる。Holt?ひょっとして奴の娘か何かか?

そしてLouは山道を車で登り、Hiram Holtの住居を訪れる。山の中のあばら家の前には、銃を持った男たちがたむろし、威嚇するように見知らぬ来訪者を睨みつける。 中にはまだ少年と思われる者も。Holtの家族か?
「何の用だ?」その中の年嵩の男が口を開く。
「ニューヨークのJoe Masseriaの使いで来た。ここで作られてる酒についてHiram Holtと話したい。」
「ここで待ってろ。」男はLouをそこに残し、家の中へ入って行く。

家の前で待つLouは、近くの森の中から全裸の男がよろめき出てくるのを目にする。血まみれ…だが奴の血ではなさそうだが?
家の中から出てきた女がよろめくその男を抱きとめる。食堂で見た女だ。家の前にいた少年も気付き、彼女を助け男を家の中へ連れて行く。
まったく。都会に暮らしてると忘れちまうが、田舎っていうのはわけがわからず、業が深い…。

「よう、待たせたな。」先ほどの男が家から出てきて、Louに声を掛ける。
「俺がHiram Holtだ。」まったく、食えない野郎だ。
ようやく家へ招き入れられたLou。だが、Hiramは敵対する様子はないが、Louの申し出に乗り気でもない。要するにニューヨークのギャングの配下として酒を造るつもりはないということだ。
「親父、丘の醸造所が厄介なことになった。」会談の途中に家の外から声が掛かる。

家屋から離れたところに隠してある醸造所へ向かうHiramと家族の男たちに、Louも同行して山道を登る。
「まあ、せっかく来たんだ。俺の醸造所も見てってくれや。」
そして到着したのは、冒頭のシーンで登場した山の中の密造酒醸造のための小屋。中は血まみれで手足、胴体を引きちぎられた男たちの遺体が散乱している。あまりの凄惨さに声も出ないLou。 「ここはお前らの街じゃない。山だ。俺の山だ。」そしてHiramは散乱した遺体の中から何かを拾い上げる。血まみれのバッジ。FBI。
「ニューヨークにはこれを持って帰れ。そして俺の商売に手を出せばどうなるかをお前のボスに話すんだ。」

すっかり日も暮れ、夜の山道を逃げるように車を走らせるLou。道も定かではない闇の中でタイヤがパンク。立ち往生する。
途方に暮れているところにどこかから音楽が聞こえてくる。音をたどって木々の間を抜けて行くと、黒人たちが住居の前で焚火を囲み宴を開いていた。
中で踊る美しい一人の女に目を奪われるLou。そして黒人たちもLouに気付く。
「何の用だい?だんな。」
「まずは酒をくれ。」

[Comixology 『Moonshine』#1 プレビューより]

というところまでが『Moonshine』第1話のあらすじです。ちなみにComixology及びアマゾンKindleでは、この第1話は現在無料で読めます。
で、ここからはちょいとネタバレになりますので、ここまで聞いたら後は自分で読みたいという人は続きは読まず、本編の方へ。 かなり大雑把ではあるけどTPB2巻前半ぐらいまでの展開は紹介しちまいますので。

まず『Moonshine』というタイトルから。
まあ知ってる人も多いとは思うけど、ムーンシャインというのはアメリカの禁酒法時代の密造酒に関する隠語。月の光しかない夜闇の山道、裏道に隠れて運搬したことから、主にその運搬を 指すのに使われていたが、密造酒そのものを呼ぶというケースもある。
都市ニューヨークから遠く離れた山奥で作られる密造酒をめぐる物語に、もっともなタイトルである。
だがこの作品の『Moonshine』にはもう一つ別な意味が隠されている。
ムーンシャイン-月の輝き、光。そこから連想されるよく知られるまた別の物語とは、月の光で変身する人狼の物語だ。
ちょっと文章だけのあらすじでは気付かなかったかもしれないけど、画像の方と併せてみればこの辺を察した人も多いだろう。

第1話後半で出てくる血まみれの全裸の男が、人狼に変身し密造酒の取り締まりに来たFBI捜査官を惨殺したのだ、ということは言うまでもあるまい、というところなんだが、うーん、 やっぱこれ書いたらネタバレかなとも思ったんで、一応注意しておきました。
つまり、この密造酒を作っているHolt一家というのは、その商売を護るための武器として、身内に人狼を隠していたのだ。
ニューヨークのギャングから交渉役として派遣された伊達男、Louは、それを探索するというよりは様々な状況に巻き込まれ、翻弄されているうちにその秘密へ近づいて行くことになる。
また一方で、Louのもたつきに業を煮やしたニューヨークのボスは、武力行使・脅迫のためのチームを派遣。それらはただちに返り討ちにされ、という形でHolt一家とギャングとの争いは激化して行く。

主人公Louの前には、まあノワール的に言えばファム・ファタールというべき二人の女が現れる。
一人はHolt一家の謎の金髪美女Tempest。人狼に変身する男Enosの姉としてとりわけ弟を気遣う彼女には、人狼にまつわるある秘密がある。
そしてLouが第一話の最後で出会う美しい黒人の娘Delia。呪術的な力で見た予知夢から、Louにこの先に恐るべき運命が待っていると告げる。
Louにはかつて妹がいたが、少年時代ある過失から川で溺れさせて死なせてしまう。常に心のどこかにその罪悪感を抱えるLou。そしてその妹は、幻覚として度々幼い姿のままでLouの前に現れ、 あるときは彼を導いて行きもする。

そして、Louを待っていた恐るべき運命。
主人公Louは、TPB第1巻の後半、終盤辺りである方法で彼自身が人狼に変えられてしまう。人狼となってしまうと通常の意識思考が吹っ飛び、Louは彼自身の味方であるはずのニューヨークからの ギャングの増援に牙を向けることとなる。
ここまで書いちゃうとさすがにネタバレしすぎかとも思うんだけど、やっぱこの物語は主人公が人狼となってしまうところからが本編じゃないかと思うのだよね。うーん、色々やってみて最近は特にコミックの あらすじ紹介は小説より難しいと感じることが多い。画と一体となったコミックではストーリーの進め方や展開がより複雑になり、分量的にこの辺かな、というような判断が付けにくいのだよね。 ちょっとバラされ過ぎたと思った人いたならごめん。

自らの意思に反し人狼にされてしまったLou。TPB第2巻では抗争の場である田舎町から貨車に隠れて逃亡する。だが、列車が停車し、貨車から降りたところで警官に捕まり、刑務所へ送られることになる。
また一方のSpine Ridgeでは、更にニューヨークからの増援が送り込まれ、人狼に対抗しうる凶悪狡猾なギャングが現れる。
そして、Holt一家の側でも徐々に人狼の秘密が明かされて行く…。

しばらく前のエド・ブルベイカー-ショーン・フィリップスと並ぶ、現代アメリカン・コミックのレジェンド・チーム、Brian Azzarello-Eduardo Rissoによる謎が謎を呼ぶホラー・ノワールコミック。
要チェック、つーかもうこれ必読でしょう!

[Comixology 『Moonshine』#3 プレビューより]

ではこのレジェンド作者チームについて。Brian Azzarelloに関しては、以前Aftershock Comicsの『American Monster』について書いたのだが、見返してみたら経歴とかは全然書いてないので、ここで改めて。
1962年オハイオ州クリーブランド生まれ。子供時代にはモンスターや戦争物のコミックを読んで育ち、ヒーロー物はあまり好きでなかったそうだ。クリーブランドのアートスクールで学び、卒業後はいくつかの ブルーカラー仕事を転々とした後、1989年、27歳か?シカゴへ移り住む。そこでかのブラックリザードの出版物に強く惹かれることとなる。

えーっと、ハードボイルド/ノワール方面では一般常識ぐらいなんだが、コミック方面では知らない人も多いかと思うんで、ブラックリザードについてちょっと説明しとこう。
1984年、映画化された『ワイルド・アット・ハート』などで知られる作家バリー・ギフォードによって設立され、主に50~60年代のジム・トンプスン、デイヴィッド・グーディスらの忘れられた ペーパーバックオリジナルの名作を数多く発掘し現代によみがえらせたハードボイルド/ノワールの伝説的パブリッシャーである。
その後、1990年にブラックリザードは米大手ランダムハウス傘下に入り、ヴィンテージ・クライム/ブラックリザードと名前も変わる。この辺どのような事情があったのかはよく知らんが、まあアメリカの インディー・パブリッシャーというのは、そのまま力尽きるかこういう形になるよね。ヴィンテージ・クライム/ブラックリザードになって以後は、そういった過去の忘れられた名作の発掘というよりは、 クラシック・クライムというようなブランドに方向転換し、ハメット、チャンドラーなどの作品も加わり、出版形態も初期のマスマーケット・ペーパーバックからトレード・ペーパーバックへと変わる。 日本的に言ってみれば、文庫・新書からソフトカバー・ムックというような変化ね。その後、ヴィンテージ・クライム/ブラックリザードはクラシック作品だけではなく、現行の作品にも手を拡げ、 ランズデール、ヴァクスらハードボイルド/ノワールの実力派人気作家の作品を数多く出版し、一時期は新旧合わせたハードボイルド/ノワールの頂点に君臨することとなる。しかし、なんか事情は知らんが 近年になり急に衰退し、ホント一時期はあーもうこりゃ終わるな、という感じだったのだが何とか生き延びなんかかなり細々といった感じで続いているようだ。まあこの辺の流れでウィンズロウの 『犬の力』『ザ・カルテル』に続く3部作が最終作に至ってハーパーに移籍となり、日本でも出版社が角川からハーパーに変わったわけね。なんかこの辺の事情というのも単純に出版物が売れなくなったとかじゃなく、 多分上のまた上の大手ニューヨークのビッグ5とやらの方針や事情とかでめんどくさい。まあ将来についてはわからんけど、現時点ではあのイェンス・ラピドゥスのストックホルム三部作の翻訳刊行が 最後の輝きだったように思われたりする。
ブラックリザードについては初期のバリー・ギフォード時代について思い入れの深いファンがアメリカにも多く、その後のヴィンテージ・クライム/ブラックリザードと分けて語られることも多く、 Wikiも別に作られていたりもする。ブラックリザードというのは、ハードボイルドジャンルに留まらない広くミステリ全体にとって一つの事件、そして伝説であり、その意思を受け継ぐ動きはその後も 続いている。その中でも有名なものが2004年に設立され、現在は英国大手タイタンブックスの傘下となっているハードケイスクライム。50~60年代のペーパーバックを思わせるペインティングのカバーで 数々の新旧作品を送り出し続けている。有名どころではスティーブン・キング、ローレンス・ブロック、マックス・アラン・コリンズなどなど。あー、ハードケイスクライムについてはもっと読んで 語らねばならんもんが山ほどあるんだが…。しかし旧作の発掘という面では現在はスタークハウスの方が注目か。また一方ではかのゴールドコンビによるブラッシュブックスがラルフ・デニス、ディック・ロクティ といった70~90年代の絶版名作シリーズを次々と発掘…、あっ、つい長々と書いてしまったが今回コミックの方じゃん、Brian Azzarelloの。つーかAzzarelloまだコミックのライターにすら成ってないし。 いや、ワシハードボイルドの話始めたらパンツでも見せない限り一生話し続けるからね。そもそもAzzarelloがブラックリザードなんかに話を振るから。みんなAzzarelloが悪いんだからね!あとシャミ子。

えーと、この時期に出会ったブラックリザードからの作品群はAzzarelloに大きな衝撃を与えたようで、後にも影響を受けた作家としてトンプソン、グーディスの名を挙げている。なんかヘラヘラ評論家の間じゃ こういうのを○○ショックとか適当にぬかすのが流行ってるようなんで、ブラックリザードショックとか言っとこうかね。
そしてこの時期、後に結婚してまた離婚することになる、コミックのライターのみならず 児童書、映画やテレビの脚本などマルチな活動を展開する作家Jill Thompsonと出会い、それがきっかけでDC傘下Vertigoでコミックのライターとしての活動を始めることとなる。実際にはVertigo以前の 作品もあるようなのだが、その前年、前々年に数作程度なのでほとんどVertigoからキャリアを始めたというところなのではないかと思う。

いくつかの単発作品の後、1998年にEduardo Rissoとのタッグによる4話のミニシリーズ『Jonny Double』を経て、1999年より伝説の『100 Bullets』を開始。この伝説作品は2009年までにタイトル通りという感じで 100話、100発の銃弾を放って終わる。
言わずと知れた『100 Bullets』ってとこなのだけど、結局のところ日本では翻訳も出ていない有様で、一般常識ぐらいに思っている層とさっぱりわからない層とのギャップは大きい。で、ネットで情報を 探してみようと思っても、日本語で書かれたものはなかなか見つからない状況。ないなら自分で何とかしなくてはと思っても、なんかまた貧乏性をこじらせて途中まで読んで放置してしまっている時間が あまりに長くいずれ最初から読み直そうと思っているぐらいの始末でいまいちちゃんと説明できなかったり。まあ自分ぐらいじゃすぐに見つかるというほどにはなかなか成れんけど、それでも日本の 海外のコミックを読む層の拡大のために、何とかそういう情報をきちんと増やしていかんとなあ、と思う。そういう時に、まあこのくらい一般常識だと思ってる人日本でも結構いるんだろうからなあ、 とか考えずにやること!ほら、一般常識だと思ってるアンタも言われればそう思うっしょ。ほら、昔やったウォーレン・エリスの『Transmetropolitan』みたいにさあ。あ、そういやアイツもうさすがに 再起不能かな?人格はともかくとして語らねばならん作品いっぱいあるのにな…。まあ日本だと旧作も各社発売中止だろうけど、アメリカだとどこでもちゃんと売ってるけどな。
なんかさあウィキペディアとかにちゃんと情報ページを作るのが最善なのだろうけど、あんまり向いてないしなあ。適当に話逸れてパンツ見せないとやめないとか開き直れないじゃん。とにかくいくらかでも 情報のある者はなるべく色んな人が見やすいところに出す義務があるくらいに思っているのだよ。海外コミック読者の拡大振興のために。えーと、何を長々と書いてるんだか、と思うんだが、要するに 『100 Bullets』あんまりちゃんと説明できなくてごめん…。ホントに好きなんだけど…。

『100 Bullets』を書いてる10年間、Azzarelloは主にDCのメインストリームの方にも手を拡げ、そちらでもいくつかのシリーズで語り継がれるような作品を創る。そっちに関しても放っといていいものでもないんだが、いい加減長くなってるんで機会があればいずれまた。どっちにしても『100 Bullets』のAzzarelloっていうのがまず正しい認識。ちなみにマーベルの方でもいくらか作品はあるが、そっちメインストリーム方面ではDCでの活躍が主になる。
『100 Bullets』進行中のオリジナル作品としてはVertigoの『Loveless』(2005-2008)というウェスタン作品があり、こちらは以前にBrian Woodとの『Starve』について書いたDanijel Žeželjも作画に参加している。 Žeželjとはそれ以前にVertigoからのミニシリーズ全4話の『El Diablo』(2001)でもタッグを組んでいる。こちらもオリジナル作品かと思ったらDCのキャラらしい。この辺何故かComixologyのDCのショップでは 単行本形式にまとめられずバラ売りしかしてなくてどうも見落としがちになるんだよね。『Loveless』なんて24話もあるのに。

『100 Bullets』以後には、まずVertigoでは同じくRissoとのSFミニシリーズ『Spaceman』(2011-2012)。そして『100 Bullets』のスピンオフ作品『100 Bullets: Brother Lono』(2013-2014)全8話を同じくRissoと。
Image Comicsでは2016年からのこの『Moonshine』と同時期に始まった2016~17年のミニシリーズ『3 Floyds: Alpha King』というファンタジー作品らしきものもあるのだが、現在Comixologyで販売されておらず、 詳細はいまいちわからん。かの2000ADのレジェンド的アーティストSimon Bisleyも作画に参加してるのだが。ところでSimon Bisleyのウィキをちょっとついでに見てみたら、アメリカで書かれたものらしく 2000AD時代のことがあんまり書かれていなかったり。BisleyのSláine「The Horned God」なんていつか絶対読まなきゃと思ってるレジェンド作品なのに!
そして同じく2016年から以前に書いた『American Monster』をAfterShock Comicsから。2016年からのが多いのはDCとの契約が終わったとかなのだろうか?で、『American Monster』なのだが、実は以前に書いたあたりで ストップしており現在に至るまで進展はない…。これ多分AfterShockの方が色々出資関連が手を引いたりとかでAzzarelloにギャラが払えなくなったとかなんだろうな。まあ推測だけど。結構バブルの勢いに乗って 登場した感じだったしね。やはり以前ほどの勢いはなくなってるのだけど、まだ出版は続いているので頑張ってくださいね。『American Monster』の続きもいつか何らかの形で見られるといいのだけどね。
そして、これが今回調べるまで気付かなかったんだが、Boom! Studiosより2019年と2020年に『Faithless』、『Faithless II』という作品がそれぞれ全6話で出ていた。ちょっと見に行ってみたらオカルトジャンルの ようだが、作画のMaría LlovetやカバーのPaul Popeとかもかなり気になるんで今回は保留。なるべく早期にちゃんと読んだり調べたりしたい。あー、なんかまだ知らない読むべき作家やアーティスト山ほどおるな。 ホント。Paul Popeの方なんて以前気になっていくらか作品も入手しといたのにすっかり忘れとるし…。とりあえずAzzarelloのオリジナル作品はこれくらいか。

Azzarelloがずいぶん長くなってしまったのですが、ここからやっと作画Eduardo Rissoです。まーどこから始めるか。とにかく素晴らしい作画。強弱はあまり強調されないが、なんだかどこまでも伸びて行くような 生きた線。それが人物のみならず風景や小物までに生き生きとした表情を与える。そして独特の人物のポーズにそれが収まる構図。それは一つのコマ=パネルに限定されず、常にページ全体でデザインされる。 そして一つ目立つ特徴として挙げられることの多い影=ベタと線の組み合わせ。どちらかといえばイラスト的な手法で、場合によってはシーンをストップさせてしまう画法だが、Rissoの手にかかると 省略による加速の効果さえ生まれる。いやもうこんな素晴らしい画、一枚前においてこことここがすごいとか言い始めたらもうパンツでも見せなきゃ止まんないよう!
Eduardo Rissoは1959年生まれのアルゼンチンのコミック・アーティスト。やっぱ日本からだと全然わからないけどアルゼンチンにもちゃんと独自のコミックのシーンがあるようだ。1981年、22歳からアーティストとしての キャリアを始める。彼の作画は、自国以外ではまずイタリア、スペイン、フランスなどのヨーロッパのコミックシーンで注目を集め始める。1988年からは地元アルゼンチンを代表するぐらいのライター、 Carlos Trilloとのコンビで様々な作品を発表し、ヨーロッパ各国でも数多く出版される。Carlos Trilloというのは、自分は未見なのだけど日本とカナダの合同製作として主に日本のトムス・エンタテインメントの スタッフによって製作されたテレビアニメ『サイバーシックス』の原作者でもある(原作コミックの作画はCarlos Meglia)。そして1997年にはアメリカ上陸。Dark Horse ComicsやHeavy Metalでいくつかの仕事をした後、 1999年Azzarelloとの『100 Bullets』が開始される。
以前にもヨーロッパからの優れたアーティストについては色々書いたのだけど、アメリカ上陸前の作品については入手困難というのがほとんど。しかしEduardo Rissoについては1作のみだがComixologyからでも 入手することができる。1996年に前述のCarlos Trilloとのコンビの『Borderline』という作品が、かの『ザ・ボーイズ』や現行ヴァンピレラを出版しているDynamite Entertainmentから全4巻で英訳出版されている。

[Comixology 『Borderline』#1 プレビューより]

ジャンルはディストピアSFアクションという感じか。ずいぶん前に買ったけど、いまだに読んでなかったり。今回これを書くためにもったいないけど最初の方少しだけパラパラ見てみた。あーもったいない。 1999年に開始となる『100 Bullets』とそれほど開きのある初期作品というわけではないが、若干丸みが少なくスピードのある線で描かれている。またページ全体を使った構成というのもあまり見られないが、 空間を活かした構図・画面構成は秀逸。これらはもしかするとカラーと白黒作品の違いなのかもしれないけど。そして特徴の一つである影=ベタの使い方は既に完成の域にある。ヨーロッパやその他の国々からの 優れたアーティストのアメリカへの進出は大変多く、こういう形で過去作品に手軽に触れられるのは非常に有り難い。もっと増えるといいんだけどねえ。Comixologyでは常時販売中だが、他はどうなのだろうか と思って見たところKindle版も販売されており、プリント版TPBも現在はそれほど法外な価格にもならず入手できるようである。

この『Moonshine』については個人的な感想かもしれんけど、結構早く読める気がした。やっぱり結構長い付き合いになってるAzzarelloとRissoゆえどのように表現されるかもツーカーでわかっており、 Rissoの作画に任される部分も多く、より動きで表現される読みやすい作品になってるのかもな、と思ったりした。
さてこのシリーズだが、モタモタ書いているうちに書き始めた時はプレオーダーだった最新の27話もすでに販売されていたり。現在28話までの発行がアナウンス中とか書いたが、その後その28話までを収めた TPB第5巻にて完結という情報も伝わって来た。まったくしっかりしろよ…。今後の動向もまた注目されるこのレジェンドチームだが、とりあえず私同様結構長編の『100 Bullets』にもたついてる人も、全5巻と 比較的お手頃めなこの新必読シリーズを先に読んでみるのもいいんじゃないすか。

なんだか諸般の事情で中断ぐらいの感じで遅れまくっている今回なのだが、ちょこまか言ってる最近の米コミックのバブル後の状況などについてこっちから見えるぐらいのところを少しまとめておこうかと思います。
なんか文章の端々では書いてるんだが、アメリカのコミック界の昨今のデジタル書籍化や映画・映像関連のバブルからの落ち込みはかなり大きなものになってきているようですね。 まあここで何々が何パーセント下落的なことでも書くと説得力もあるんだろうが、そもそも柄じゃないし、それ調べるのに長い時間費やして自分の読みたいもん読む時間減らすのももったいないしなんで そういうデータは無いんですが。まあそういうのはそれやってお金がもらえる人がやればいいんじゃないかな。今どきそんな人がいればだけど。
なんかもはやこっちの視点がずれすぎていて日本国内の一般的な見方の方がよくわかんなくなってきているのだけど、色々映画とかは入ってくるんでマーベルやDCは安泰とか思ってる人もいるのかもしれないけど、 ああいうのそもそもがもっと調子のいい時代に企画されたもんやしね。大きなところでは、今年になりDCのアプリショップが遂に撤退。これでComixology系のアプリはちょっと他と違ってシステムのみ使い 自社経営のマーベルのみになってしまったわけです。そしてそれより少し前には、かなり多くのパブリッシャーのコミックを扱っていた Madefireも結構急激にぐらいの感じで撤退。そちらでアプリショップをやってたIDWとArchieはかなり困った様子だったり。IDWはしばらくたって別のを何とか立ち上げたけどArchieはどうもなんないみたいだし。
実際Comixologyでの全体的なリリースも減っているんだろうけど、やっぱ顕著に目立ってしまうのはマーベル、DCの方だろう。もうしばらく色んなシリーズを統合したような大きなコミックイベントっつーのか? そういうのやってないし。ほら、マーベルのインフィニティとかDCのマルチヴァースみたいなやつ。別に毎週の出版が途切れるようなことはないのだろうが、今目玉的にこれやってますよー、みたいのが いまいち見えにくくなってきていたり。
そんな中で最近の大きいのか地味なのかよくわかんないけどのニュースとして、かのブライアン・マイケル・ベンディスのオリジナル作品レーベル的なものであるJinxworldがDCからDark Horseへ移籍という のがあった。元のマーベルからDCへ、そしてDark Horseへと移って来たJinxworldなのだが、これは結構現在のアメリカのコミックの状況を表してるのかもしれない。 マーベルのIconがなくなり、オリジナル作品の発表の場がなくなり、DCへ移籍したベンディスだが、ここに来てDCもVertigoなどの伝統はあってももはやオリジナル作品に注力する余裕がなくなり、 その結果としてのDark Horseへの移籍ということなのだろう。もちろんこのそもそものベンディスのDCへの移籍がビッグ2を含むコミック全体の落ち込みからの影響であり、またちょっとうがった推測をすれば、 現在苦しい状況にあるビッグ2でもベンディスクラスの大物に以前のようなギャラを払えなくなってきており、それならばここはちゃんと自分のものとして残るオリジナル作品に注力したいというのが ベンディスの考えなのかもしれない。
実際このくらいになるともはや単なる大手出版社でないビッグ2ともなると、シーンにおける出資者としての役割も大きく、それだけにこのバブル以後の状況は単なる自社出版物の売り上げ落ち込み以上の 打撃となっているのだろう。拡大時には集めた金やらも色々あるだろうしな。現在は両社とも既存のメイン出版物のシリーズのみの出版に撤退し立て直しに専念し、オリジナル作品にかまけている余裕など 無いというところだろう。DCのアプリショップからの撤退もそういう縮小再編の動きの一つなのだろう。 そんな中でちょっと意外ぐらいに思ったKurt Busiekの『Astro City』のシリーズ丸ごとのDCからImageへの移籍も、やはりこういった流れの中の一つなのだろう。 また今回のAzzarello-RissoでもDCからの『Spaceman』が現在Comixologyで販売されてなくて、これも今後の移籍の過程かとも思われたり。 現在は『Batman』や『Vision』で一躍メインストリームのトップライターのTom Kingにしても、2015-16年のオリジナル作『Sheriff of Babylon』が終了後、『Sheriff of ???』という続編が アナウンスされていながらVertigoの改編などで棚上げとなったままの状況が続いていたりで、いずれは何らかの動きがあるのかもしれない。
まあ実際のところ、これでアメリカのコミックが潰れてしまうなどというわけもないし、投資してるわけでもないんでどこが沈むなんてどうでもいいし、ましてやどこの景気が悪いだの ビジネス観測じみた話で格好つける気もないんだが、やっぱ少しはそんな視点もあった方が今後又あるかもしれない色々な動きにも理解しやすいんだろうってとこ。 バブル後の落ち込みはあっても電子書籍化で市場は広がってるんだし、未来は明るいんじゃない?まあ自分なんぞはひたすら良い作品が 読みたいだけが目的なんで、最前線の動きが少なめな現状は、山ほどある過去の必読作品を少しでも減らすいい機会かもしれない。とかのんびりしたこと言ってられるのもただ読んでる一方でのことで、 きっといるのだろうこれでチャンスを失い足踏みになっちゃってるクリエイター諸氏には本当に気の毒なところなのだけど。
最前線いま一番動いていると言えば、やっぱりJeff Lemire君か。かのJockとの組み合わせで驚いた進行中のComixology Originaiの『Snow Angels』も注目なのだが、今月になりあの『Gideon Falls』の Andrea Sorrentinoとのチームで全6話のミニシリーズ『Primordial』がImageで始まり、Dark Horseでは作画もLemireによる『Mazebook』が開始している。『Black Hammmer』ワールドも拡大の一途を たどっている感じで早く追いつかねばと思うばかり。読むべき作品は次々に作られており、またこっちの目の行き届かないところで新たな作家・アーティストが台頭してきているんではないかと不安になるばかりだよ。

ここでちょっと日本の方に目を向けてみれば、まあ最前から言っとるように日本の状況には疎い私でも、翻訳コミックに関しては、結局一昔前のマーベルDC作品のみが出るぐらいの状態に戻っているんだろうなというのはわかる。なんかShoProのホームページとか久しぶりに見に行ってみたりすると、まあ毎月何点かの出版はあるようだけど、映画とかの方も今後減って行くようならさらに先細りの一昔前の前ぐらいに戻っちまうのかも。なんか日本で出るのをメインに楽しみにして買い支えている人たちに、水を差すようなこと言うの悪いかも、とも思うけど、やっぱ日本もバブル後の収縮過程というところなんじゃないんでしょうか。
日本でいかにすれば海外のコミックが広まるか、というのは過去どこかでも度々言われてきたことだと思う。まあ、美少女が出てくれば、とかいう笑いも取れない与太は別にしてさ。 日本のマンガ及びアニメーションというのは日本で作られるものの中でほぼ唯一といっていいぐらい、突出した個人が例外的に国際的に活躍するという形ではなく、国内で商業的にも成功しているものがかなりの部分でそのまま海外で通用しているクオリティのものである。価格的にも流通量的にも海外からの作品がこれら国内産のマンガとまともに勝負するのはほぼ不可能といってよい状況だろう。国産のTVドラマがひどすぎて観る気も起こらないので 海外ドラマに流れるのと同様のケースを期待するのも無理な話。日本では海外のコミックは「売れない」と断言する向きも多いだろう。
だが、このあたかも作品の価値を規定しているようにさえ使われる「売れない」という言葉は常に出版社の利益になるかという意味でしかない。そして海外のコミックはこの「売れない」と作品のクオリティとの不一致を表す最も顕著な例といえるだろう。なんで出版社の儲けのために作品の価値下げられなきゃならんの、ぐらいの話じゃないの?もう日本で翻訳されるのを待ってたって海外のいい作品なんて絶対出会えないんだよ。「売れない」から。
だが売れようが売れなかろうが良い作品は良いのだ。ましてこれらのものは日本以外じゃ高く評価され、米国以外でも翻訳も数多く出ている。だが日本国内で利益を出せないものについては、翻訳はおろかまとまった情報すらも見つけるのが困難な現状だ。そこでこういった一文にもならなくてもいい作品・作家について伝えたいというような少々頭のおかしい奴が頑張らねばならんのだよ。お金儲けようと思ってる人はこんな「売れない」もんに絶対手を出さんからねえ。なんだかさあ、基本的には海外でもベストセラーでもない偏ったジャンルでこれが面白いんだよ!読みやがれ!と小説の方でやってる一方で、コミックの方で単に日本の状況的に出版されないだけのこんなに当たり前ぐらいの人気作品のことをやってるとこれで大丈夫なん?といつも思ってしまうぐらいではあるのだが…。
実際Comixologyのデジタル版なら、常時やってるセールで待てばアメリカのTPBだって日本のマンガの単行本とさして変わらない7~800円前後で買えるんだぞ。価格的にだって問題ないだろう。 国内的にも海外的にもバブルが弾けても、あれもこれも買ったのにいつまで経っても読めんぐらいに積み重なり、日々発見され山に追加されてこちとらの頭の中は常時バブル状態だよ。 別にさあ、オレ英語読めマス恰好いいっしょ文脈でやってるわけじゃないんだよ。こんなんちょっと最初頑張れば誰でも読めるようになるんだって。当たり前にいいのを当たり前に紹介している只の親切な変人なんだよ。 これからだっていくらでもいいの教えてやるよ。オレは世界中の面白いマンガを全部集めてマンガ海賊王になる男だからな!絶対読めよ!まずはこの『Moonshine』からだ!

とかテンション上げて終わってみたものの、この遅れ、この体たらく…。なんかね、今回基本夏バテなんだが、ワクチン接種とかもあったしね。一回目は自主的に安静にゴロゴロしてて結局腕痛くなっただけだったけど、 二回目油断してたらリンパ腺腫れて体中の悪いところが全部痛くなって仕事3日休んだり。それ以外にもなんかちょこちょこ市役所の休日窓口に行かなきゃならない用事が続いたり、そんで最後にはスマホの機種変更とかも あったりな。なんか日常あるあるぐらいのものだけど、時間なし体力なしの身からすると結構大イベントになっちまうのだよね。それらの間に夏バテでへばってでこの遅れという次第です。トホホ…。 こんなんで日本の海外コミック読者の増加に貢献するなどとはとても言えないペースなんだが、まあやらないよりはいいんじゃない、ぐらいでできるだけ頑張っているのだよ。しかしな、ホントにこんなに優れたものが山ほどみたいないい方では足りないぐらいにいくらでもあるのに、このマンガの国である日本の読者にほとんど届かないという状況はどうしても色々考えてしまって、いつものように余計な事書いて面倒くさくなって書き直したり、なんかこのまま書いてると果てしなく長くなりそうで途中で捨てたりと、また最後で余計な時間を喰っちまったな。なんか少しでも役に立った人がいるなら、んーまあどうでもいいか。
なんか少しずつしか進まん中で あれやっとかなきゃこれやっとかなきゃでImage Comicsものばかり続いてしまったんだが、次アメリカのコミックについて書く時には結構今はオリジナル作品のもう一つの極となっているDark Horse作品について 今度こそやらなければとも思ったりしております。あとマンガ海賊王への道の一環として、昨日Kindle版『ワル【完全版】』セールになってんの見つけて全巻買ったな。入手困難だった続編の「新書」「正伝」「最終章」 まで初めて一つにまとめたやつやろ?まあいつ読めるかわからんけど…。あ、古いのばかりじゃなくて新しいのも読んどるよ。一番最近買ったのは『何度、時をくりかえしても本能寺が燃えるんじゃが!?』かな。 いや、しょーもないボクの最近買ったマンガ報告しとる場合じゃない!次やらねばならんことが山積みなのに!今回はこれで終わり!
あ、またこちらが著しく停滞している間に、戸梶圭太先生の作品が2作も出てしまいました…。それについては次回に。

■Brian Azzarello オリジナル作品著作リスト (※作画担当が空白のものはEduardo Risso)
  • Jonny Double #1–4 1998年 Vertigo
  • 100 Bullets #1-100 1998-2009年 Vertigo
  • Loveless (作画:Marcelo Frusin、Danijel Žeželj、他)#1-24 2005-08年 Vertigo
  • Spaceman #1–9 2011-12年 Vertigo
  • 100 Bullets: Brother Lono #1–8 2013-14年 Vertigo
  • American Monster #1–6 (作画:Juan Doe) 2016-17年 Aftershock
  • 3 Floyds: Alpha King #1–5 (Nick Floydと共作 作画:Simon Bisley) 2016-17年 Image Comics
  • Moonshine #1-28 2016-21年 Image Comics
  • Faithless #1–6 (作画:María Llovet) 2019年 Boom! Studios
  • Faithless II #1–6 (作画:María Llovet) 2020年 Boom! Studios


●関連記事

American Monster Vol. 1 -Brian Azzarelloが描く現代アメリカの”怪物”!-

■Brian Azzarello / Eduardo Risso
●Moonshine



●100 Bullets



●100 Bullets: Brother Lono



●その他



■Brian Azzarello
●Loveless



●Faithless



●その他



■Eduardo Risso
●Borderline



■戸梶圭太最新作!KIndleにて絶賛発売中!



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2021年4月10日土曜日

Kill or Be Killed -最強コンビが放つ、異色ヴィジランテアクション!-

今回は遂にあの黄金コンビが登場!エド・ブルベイカー&ショーン・フィリップスによるわりと新作の『Kill or Be Killed』!この黄金コンビ、このブログには初登場ですが、実は私にとっても この作品『Kill or Be Killed』が初めて読むこのコンビの作品となります。えー?ホントにー?ではこれからなんでそんなことになってしまったのかを説明するが、くれぐれも 「お前バカだろ」と言わないように!

まずあの『Criminal』である。2006年よりマーベル傘下Icon Comicsから発行され、現在は版権をImage Comicsに移し、そちらよりシリーズ全作品が出版されている。まず私はこれを見て、 まあ当然ながら、これはスゴイ!と思ったわけである。これはスゴイ!これは本当にハードボイルドが書ける作家と、本当にハードボイルドが描けるアーティストが組んだ、私が夢にまで見た 理想のコミックだ!これは私のようなハードボイルド+マンガ=コミック狂にとっての奇跡だ!こんな作品が生まれることこそ天文学的な確立の奇跡に間違いない!こんな作品をうっかり読めるものか! …うん、おなじみの貧乏性なのやけど…。その後、Image Comicsから2012年に『Fatale』が始まり、2014年からの『The Fade Out』に進むにつれ、あれ?この天文学的奇跡、わりとがっちり タッグを組んで精力的に作品を作ってきてるんじゃないのか、とさすがに私も気付いてきた。こ、これは普通に読んじゃって大丈夫ぐらいなんじゃないか?いや、そろそろ 読まんとまずいのではないか状態がその後もしばらく続いた後、やっと意を決し、かなり遅ればせながらこの『Kill or Be Killed』を手に取ったというわけである。
お前バカだろ。もう自分で言っちゃうよ、ホントに。しかしまあ、私がなんでこれほど重度の貧乏性になってしまったかといううと、いやそもそも日本の基準から言っても私なんぞ充分貧乏人層なんだが、 それは別としてだ。私のこの極端ともいえる貧乏性の原因は、この国でハードボイルドファンでいるという苦行を長年にわたって続けてきた故である。もうハードボイルド小説の翻訳なんてもんは、 年にせいぜい二つぐらいとかいう状態が続き、それが四冊も出た日にゃ、喜ぶより先にこれから先しばらく恐るべき凶作が続くんじゃ、と不安になる始末。慢性的な飢餓状態から常に備蓄を 怠らず、少しでも食べられるものを増やそうと、怪しげなものに手を出しては毒に倒れ、日本のそのジャンルについてはファブルの猫舌的状態になっているのは、7周年の際にもぼやいた通りである。 こんな奴にこんないいのを見せたら、当然取っておく!なにか本当にあるのかは不明な、なんかスペシャルなオレ個人祭りフェスティバル的な日のために!とか言う名目とかで! しかし、デジタルの発達により海外のコミック、小説の入手が容易になった今、私も貧乏人は解消できなくとも、貧乏性ぐらいは解消するべきではないかと思い始めている。あと、本はごはんと違って、 一度読んだのもまた読めるというのも最近薄々と勘付き始めてもいる。読めるものが幾らでもあるのみならず、読みたいものが本当に全部読めるのかも不安になる昨今じゃないか! 大丈夫!読んでもまた次にそういういいのが出るから!今こそ貧乏性でない貧乏人へと生まれ変わる時だ!という流れで小説の方ではずっととっといたマッキンティDead三部作とRay Banks:Cal Inns四部作を 年内に読むぞ!と宣言し、コミックの方では最も好きなジャンルゆえに超スローペースでちびちび読んでいたクライムジャンルの、David Lapham『Stray Bullets』やJason Aaron/R. M. Guéraの あの『Scalped』などをきちんと読み始め、その流れで遂にエド・ブルベイカー&ショーン・フィリップス作品にも手を出した、というわけなのであった。
…大げさに言うほどバカっぽさが増すのだが…。しかしエド・ブルベイカー&ショーン・フィリップスぐらいになれば、さすがに日本でもある程度は知られた作家だし、まあかなり今更感も あるとは思えるよね。そんなわけで今回は、今現在も注目作を続々発表し続けているこのコンビについて、今後きちんと語って行けるようにするための第1回という感じで、エド・ブルりん達と 少しでもお近づきになろう回としてちょっとゆるくやってみようかな、と思っております。いや、最初から力抜け過ぎやないの?

まあそんなわけで、また例のごとく前置きが長くなりすぎてんだが、今回はこの『Kill or Be Killed』。2016年から2018年に渡ってImage Comicsより発行され、TPB4巻にて完結しております。ホントは全部読んでからやろうかな と考えていたんですが、なんかそうやって引き伸ばしているといつまで経っても始まらんので、2巻まで読んだところで見切り発車です。いや、どうせネタバレになるから最後までは書かんし。 では私のエド・ブルベイカー&ショーン・フィリップスシリーズ開幕の第1回となります『Kill or Be Killed』、始まるよ~。

【Kill or Be Killed】

これは、それまで僕が思う僕の人生に起るとも思っていなかったことだ。
だが往々にして、そんなところに選択の余地などないものだろう?

「ま、待て…!」
すくみ上りながら降参するように半ば両手を挙げたスーツ姿の厳つい男。
スキーマスクで顔を覆った上にフードを被った謎の男が、容赦なくショットガンを発射する。
音に驚き部屋をのぞき込んだ銃を手にしたスキンヘッドもためらいなく射殺される。

いずれにせよ、僕は上達した。
人を殺すことに。
殺されるべき連中を殺すことに。

フードの男は部屋から通路に出る。薄暗い通路を進む彼をあちこちのドアの隙間から窺う女たち。その様子からビルのこのフロアは、ある種の売春施設として使われていると想像される。
フードの男はショットガンを装填しつつ進む。
フロアにエレベーターが到着する。銃を手にした厳つい男が2人、用心しながら進み出る。
陰に潜み、やり過ごしたフードの男が、2人に後ろから忍び寄り、ショットガンを発射する。
2人を射殺し、気を抜いたところで、背後のドアが開き、飛び出してきた男がフードの男に殴りかかる。
銃を取り落とし、フロアに倒れる。だが、それを拾い上げ襲撃者の顔面に叩きつける。
2発、3発…。動かなくなった男を残し、その場を去るフードの男。
階段を下りながらスキーマスクを脱ぎ、ポケットに押し込む。その下から現れたのは”ごく普通の”という形容詞がぴったりのような青年の顔だった。
建物を出ると、何食わぬ顔で雑踏に紛れ込み、自分のアパートへ帰る。部屋をシェアする友人と軽く挨拶を交わし、自室に戻る。
そして彼はここから、これまでに至る経緯を語り始める。

[Comixology 『Kill or Be Killed』#1カバー プレビューより]

青年の名はDylan。ニューヨーク在住の学生。
メンタル的な問題を抱え、かつて自殺未遂を起こし、一旦は大学をドロップアウトしていたため、現在は28歳だがまだ卒業には至っていない。
あらすじのシーンの間に挟んだモノローグだが、実はその後もここに至るまでも延々続いている。行動中の思考というよりは、映像につけられたナレーションという形。 そういったDylanによる一人称の語りで物語は進められて行く。
帰宅途中もしばらく前の、黒人のガールフレンドとバスに乗っていた際、後部座席の男たちから彼女に野卑な言葉を投げかけられながら、何もすることができなかったという回想が語られ、 そもそも自分は暴力や争いごととは無縁な人間だったことが示される。

そして、Dylanによる事の起こりの回想。
それはある雪の降る夜。彼は自分の住むアパートの屋上にいた。自分の人生を終わらせるために。

その引き金となったのはKiraという女性。Dylanは現在の住居に友人Masonとルームシェアを始める以前からKiraとは友人で、彼を理解してくれる数少ない一人として密かに恋心も抱いていた。 だが、このアパートで暮らし始め、Kiraもそこを訪れるようになるうちに、彼女はMasonと恋仲になってしまう。毎日、苦々しい思いを噛みしめながら2人を横目で眺めるDylan。 だが内心では、いつか2人に破局が訪れ、Kiraを自分の恋人にするチャンスが来ることを期待していた。
だが、彼はその日聞いてしまった。Masonの部屋のドアの隙間から漏れ出てきたKiraの声の断片。
-Dylanは可哀そうな人だと思う…
僕は彼女からそんな風に見られていたのか!
打ちのめされたDylanは、いたたまれず部屋を出て、6階建てのアパートの屋上へ向かい、衝動的にそこから足を踏み出す。

次の瞬間、彼は我に返る。なんて馬鹿なことをしちまったんだ!だが彼の身体はすでに屋上から落下を始めている。
そしてその時になって、自分がどれ程生きていたいかを悟る。どんなみじめな人生だって生きている方が遥かにましだ!

そんな彼の心の声になにかが応えたように、彼は建物の間に渡された洗濯ロープに引っかかり、いつ頃から引っ掛かっていたのかもわからない襤褸切れにからめとられ、…やがて雪の積もった路上に落下する。

生きている!?
身体はそこらじゅう打ち身だらけだが、どこも損なうことなく着地し、Dylanは自分が救われたことを知る。

今更ながらに寒さに気付き、震えながら部屋に戻るDylan。だが、奇跡的に生を拾ったことから、なにか生まれ変わったような喜びを感じながら、ベッドに入る。
-朝になれば、きっと新しい僕の人生が始まる。
その考えは間違ってはいなかったが、それは彼が思うようなものではなかった…。

そして、それはすぐに起こる。Dylanがベッドに入り、そんなことを考えながら眠りに就こうとしたときに。
明かりを落とした部屋の隅、影になっているところが膨れ上がり、形を成して来る。そこに目、口が浮かび上がり、頭から巨大なバッファローのような角を突き出した漆黒の悪魔となり、 Dylanに覆いかぶさりながら話し始める。
「よう、Dylan、まずは落ち着いて俺の話を聞け。」
パニックを起こしたDylanの首を押さえつけ、悪魔は話し続ける。
「第二のチャンスは安くはないぞ。お前の命の代償を払うときだ。」
「簡単な話だ。命には命。」
「お前はこれから俺のために人を殺す。悪人だ。死ぬべき奴ら。月に一人ずつ。」
「お前が放り出そうとした命のレンタル料金というわけだ。」
そんなバカな話…、イカレてる…、悪いやつ?僕にどうしてそんなものがわかるっていうんだ?
「目を開いてよく見てみろ。お前の周りの世界。そんなに難しいことじゃあない。」
ウソだ、こんなことがあるはずがない!お前は幻覚だ!現実じゃない!
「いいや、俺は現実さ。」
言い終えた悪魔は、押さえ込んでいたDylanの左腕をあっさりとへし折る。

何か異変を察知し、様子を見に来たKiraに助けられ、Dylanは病院のERにて骨折を治療してもらう。医者とKiraにはベッドから落ちて腕を折ったと嘘の言い訳をする。
あんなことが現実に起きたはずはない。あれは何かの幻覚か悪夢だ。多分屋上から落ちて、着地するまでのどこかの時点で骨折していたのだが、興奮か何かで部屋へ戻るまでそれを自覚しなかっただけのことだ。
なんとか道理付け、自分を納得させようとするDylan。

だがその月が残り一週間を切ったところで、Dylanは正体不明の体調不良に苦しめられ始める。
そんなはずはない。そんなことがあるはずはない。
日が経つにつれ症状は悪化し、彼はあちこちにその悪魔の姿を見るようになってくる。部屋の隅の物陰、窓に映った光の反射…、それらがあの悪魔の形となり、Dylanを追い詰めてくる。 あまりの苦痛に耐えかね、病院のERへ向かうべく、雪の中部屋を出て歩き出したDylanに、数人のホームレスの男たちが意味もなく襲いかかってくる。袋叩きにされ雪の路上に倒れ込むDylan。 中の一人が彼に拳銃を突き付けてくる…。
そして、その男はあの漆黒の悪魔へと姿を変える!
「あと一日だ、Dylan。お前に残されたのはそれだけだ。」
銃身でもう一度Dylanを殴りつけ、男たちは去って行く。

雪の中倒れ、Dylanは考える。
自分がいかに死を恐れるかを。
そのためなら殺人も辞さないことを。
さあ、これから僕がやらなければならないことは死ぬべき誰かを見つけ、そいつを殺すことだ。
それがどれ程難しいことだというんだ?

[Comixology 『Kill or Be Killed』#1 プレビューより]

結構長くなっちまったけど、以上が『Kill or Be Killed』第1話のあらすじ。48ページのダブルサイズなんで少々長めになりました。ちなみにさっき見たところ、この第1話はKindle及びComixologyで、無料で読めます。

Dylanの実家は、ニューヨーク州郊外のウェストチェスターにあり、今は老いた母が一人で暮らしている。
彼の父はアーティストだった。だが、その仕事は安手のパルプ雑誌のカバーやイラスト。醜怪なモンスターや宇宙生物と裸の美女が絡み合う画が、今は大量の段ボール箱におさめられ、 実家の一室で山積みとなっている。
その父は、Dylanが子供の頃、自殺しこの世を去っている。

こういう感じで話をまとめて行くと、改めてエド・ブルベイカーの話の作り方や構成の巧みさに気付かされる。第1話に続く第2話では、まず冒頭でDylanがある人物を殺害すべく車で待ち伏せているところから 始まる。最前に述べたようにこの作品は全編を通じて主人公Dylanによる語りで進められて行くのだが、この第2話でも第1話同様に緊迫感のあるシーンから始まり、そこから一旦戻りなぜそういうことになったのかを Dylanが回想しながら語って行くというスタイルがとられる。
そこから、まず前回のラストの翌日、KiraとMasonにもう体調は良くなったからと告げ、アパートから出て行くところから始まり、列車に乗り実家のあるウェストチェスターへ戻って行く、という風に ちょっと話を逸らされたように感じるようなペースで続いて行く。実家に戻り、彼の両親について語られた後、子供時代友人たちと母に隠れて父が遺したエロチックなイラストを盗み見るという回想が 入り、その時その遺品の中に見つけて驚いたリボルバー拳銃が、彼が実家に戻ってきた理由だと分かる。
語り手であるDylanの、ちょっと回りくどいような説明に見えるのだが、実はその時の子供時代の友人の一人に大きく関わる人物が、彼の第一のターゲットであることが続いて説明され、更にここで 言及された家族関係、特に亡くなっている父親に関する事が物語が進んで行くにつれ大きな伏線となって行くのである。一見不慣れな語り手による冗長な説明に見せかけた巧みな構成。
第1話、2話で使われた、最初のシーンから一旦過去に戻ってそこまでの経緯を説明するという手法はこの後も度々現れるのだが、これは映像作品、特にアメリカのTVドラマシリーズの中で よく見られるものだと思う。大体1時間のサイズの決まった中で、少し遡って語られるストーリーがどの時点でこの最初のシーンにつながるのかという形で視聴者の興味を引き付ける、 TVシリーズに合った手法であり、それはまたTVシリーズと同様に決まったサイズで定期的に出版され話が連続して行くコミックでも同様なのかもしれない。ブルベイカーがこの時期から TVシリーズ作品の脚本も多く手掛けるようになってくるのも、なんとなく納得される気がする。

TPB1巻では、その後、悪魔については半信半疑のまま、ヴィジランテ活動にのめり込んで行くDylanの姿が描かれる。1巻の後半では、ロシアンマフィアの経営するストリップクラブに標的を定め、 かなりまずい手際ながらやり遂げるのだが、当然そこで組織の恨みを買い、2巻ではその捜索の手が彼自身に迫ってくる。また2巻では彼による一連の殺人が同一犯によるものであることが警察に察知され、 ニューヨークに警戒態勢が敷かれる展開にもなってくる。
その一方で彼の自殺未遂の原因ともなったKiraとの関係は、彼女とMasonの関係を曖昧にしたまま、接近したり距離を離したりと微妙な関係となって行く。2巻では全編彼女視点による回もあり、 ストーリーの中では重要な位置を持つキャラクターとなってくる。
そして、第1巻の最後には、Dylanが見たものと全く同じ漆黒の悪魔が、実は父の遺したカバーイラストの中に描かれていることが示され、それがどこかの時点でそれを見たDylanの記憶による 妄想なのではないか、という可能性も示される。しかし、それがその通りの意味での真相であるのかは、まだ定かではない。
エド・ブルベイカー、ショーン・フィリップスという鉄壁の黄金コンビによる異色ヴィジランテアクション!果たして主人公Dylanの運命や如何に?
…いやまあ、TPB4巻でもう完結してるので、そこまで読めばわかるんだが途中で書いちまったので、ホントに結末分かってなくてスマン…。私もこの続きは楽しみに読むです。

[Comixology 『Kill or Be Killed』#2 プレビューより]

ショーン・フィリップスの素晴らしい作画について、なんか今更言うこともないんだが、今回この作品を見ていてちょっと気が付いたのは、これって結構日本でマンガ描く人にとっても 参考になる部分多いのかもな、ということ。もちろん日本のマンガは劣っているのでコレを見て勉強しなさい、とか言うバカげた意味じゃないよ。写真などから起こした精密で静的な背景を 使ったリアリスティックな情景描写というのがこの作品で多く見られるフィリップスのスタイルだが、それは日本のマンガに於いても非常に多く見られる手法である。そういう共通したものから 違いを見出して行くことから多くの物が得られるものである。例えば、以前から言っているけど、日本のマンガがその演出やコマ運びが直接発せられてはいなくてもセリフやナレーションなどの 「音」に連動して行く形でそのタイミングなどが決められて行くのは、アメリカのコミックでも同様である。だが言葉が強調される部分やタイミングが異なる違う言語ではそれは当然異なる。また、 構図と言うようなところからも、例えば日本のものよりページ数が少なくなることの多いアメリカのコミックでは、ミドルサイズの縦長コマの使い方が違っていたり少なかったりすることから、 動きの少ない画では下半身、足先まで入る画を使うことが少ない傾向があり、そうなるとカメラ位置なども変わってくるものだろう。まあ自分くらいでもこのくらいは思い付くし、もっと多くの発見ができる人も 沢山いるものと思う。なんかさ、どっちがエライとかエラくないとかいうしょーもないことじゃなくてさ、まず同じものとして違いを見出して行くことから多くの事が見えるもんだよねえ。 まあもう当然そういうことをやってる人だって多くいるだろうけどさ。

エド・ブルベイカーに関しても、翻訳作品もいくつかあるんで今更経歴を紹介することもないかと思うんだが、ちょっとどれも持ってないんで知らないんだが、まあ日本だと割とDC、マーベルの ところからばっかりでそれ以前の初期のところは端折られてそうなのでそこんとこ少し。エド・ブルベイカーという人は、実は絵描きの方からコミックのキャリアを始めたそうで、初期には ストーリー作画を両方担当した作品も結構あるようだ。かのインディーの雄Caliber Comicsからは半自伝の『Lowlife』という作品があり、その他かのFantagraphicsやらDrawn & Quarterlyやら、 そのものズバリのAlternative Comicsなんかからも作品があり、実は初期エド・ブルベイカーってバリバリのオルタナティブコミックやったんやなあとこの度知ったわけである。 しかしながら、現在はこれらの作品を上記のパブリッシャー作品も販売しているComixologyで読むことはできない。ブルベイカーが俺の昔のやつはもー絶対誰にも見せん!という意図なのか、 版権をひとまとめにしていつかエド・ブルベイカー初期作品集を出すつもりなのかは不明であるが、できれば後者でいつか読めるといいよねえ。

さてこの黄金コンビの近況なのだが、今回の『Kill or Be Killed』が2018年に終了した以後は、2019年より『Criminal』新シリーズを開始し、現在までに2冊の単行本にまとめられている。…ようなんだけど どうもシリーズと単行本が同じ内容なのかはよくわからない。これはどっちも読む必要があるな。続いて昨年2020年に グラフィックノベル単独作品『Pulp』、そして更に昨年末からはグラフィックノベル形式のシリーズ作品『Reckless』の発行が開始され、 現在3巻までの発行がアナウンスされている。なんかよう、もうもったいないとか言ってる場合じゃないよなあ。いや、遥か昔からそうなんだけど…。これからは、アメリカの、いやもはや世界の コミックシーンのトップランナーである、この黄金コンビ、ブルベイカー/フィリップ作品を全力で読んでくことをここに誓うでやんす。またすぐ登場するぞ!絶対だ!

というわけで今回は『Kill or Be Killed』エド・ブルベイカー/ショーン・フィリップス作品本ブログにやっと登場の巻でした。うーん、いくらかブルりん達とお近づきに成れたんでしょうか? まだまだかい?そんなわけで最初に書いた通り、ちょっと貧乏性でもたもた読んでたあたりを優先的に読み始めている昨今なのですが、最もこだわりのあるハードボイルド、クライムジャンルのほかにも、 こちらも以前からこだわっているかのグラント・モリスンのカルト作『The Invisible』や、当然のJeff Lemire作品、グレッグ・ルッカ作品など、気が付けばもはやとっといてる場合じゃない作品を 精力的に読み進めております。うわ、慣用句っぽくうっかり書いちゃったけど、オレ「精力的」要素なんてあったためしないじゃん。いや、まあとにかく頑張って色々いいの読んでるんよ。あと、今回 色々調べてるうちにやっと気付いたんだけど、ショーン・フィリップスの息子ジェイコブ・フィリップスが作画担当の『That Texas Blood』なんていうのもかなり気になるなあ。やっぱり一時期の 電子書籍バブルみたいのからコミックの方も後退し、Image ComicsとVertigoのアプリショップが終了してしまったりという状況だが、新旧含めて読まねばならんものは山ほどあります。 貧乏性振り回してる場合じゃないよ、ホント。これからも頑張って色々いい作品を読んで、このブログにも頑張って書いて行きます。精力的に…???

ちょっといつものアマゾンのリストだけだと分かりにくいかと思ったので、今回はエド・ブルベイカーのオリジナル作品の著作リストを作成しました。多分ヌケはないと思うのですが、 色々間違ってたりしたらごめん。ちなみにIcon Comicsからの『Incognito』は、2017年にImage Comicsから新装版が出ているので、版権は移行していると思われるのですが、プリント版ハードカバー のみで電子版は未発売です。事情は不明。『Incognito: Bad Influences』のKindle版がまだIcon Comicsからの販売で残っているようなので、版権の期限がまだ終わってないということなのかな?それから『My Heroes Have Always Been Junkies』、『Bad Weekend』の2作はImage Comics版『Criminal』シリーズに属する作品ですが、前者はグラフィックノベル 単独で、後者はシリーズ#2、3に大幅に加筆修正したものということで作品リストでは別にしてあります。また、現在Image ComicsからのIcon Comics版『Criminal』のシリーズ単行本Vol.7 Wrong Time, Wrong Placeは、2016年にImage Comicsから出た『Criminal Special Edition One Shots #1-2』をまとめたもので、Image Comics版『Criminal』に属する作品です。この3作を含むシリーズ全作品は『Criminal:Deluxe Edition vol 3』と『Cruel Summer』の 2冊の単行本に収録されています。が、こちらもプリント版ハードカバーのみ発売中、となんか最近のブルりん出版事情ややこしいなあ。Image Comics版『Criminal』についてはアマゾンのリンクの方で、シリーズ一覧も作っときました。 あと、今回ちょっと手が回らなくてショーン・フィリップスさんお座なりっぽかったらごめん。次はもっと頑張るからね。

■エド・ブルベイカー オリジナル作品著作リスト (※作画担当が空白のものはショーン・フィリップス)
  • Scene of the Crime #1-4 1999年 Vertigo→Image comics
  • Deadenders #1-16 (作画: Warren Pleece、他) 2000~2001年 Vertigo
  • Criminal (vol. 1) #1-10 2006~2007年 Icon Comics→Image Comics
  • Criminal (vol. 2) #1-7 2008年 Icon Comics→Image Comics
  • Incognito #1-6 2008~2009年 Icon Comics→Image Comics
  • Criminal: The Sinners #1-5 2009~2010年 Icon Comics→Image Comics
  • Incognito: Bad Influences #1-5 2010~2011年 Icon Comics→Image Comics
  • Criminal: The Last of the Innocent #1-4 2011年 Icon Comics→Image Comics
  • Fatale #1-24 2012~2014年 Image Comics
  • Velvet #1-15 (作画:Steve Epting) 2013~2016年 Image Comics
  • The Fade Out #1-12 2014~2016年 Image Comics
  • Kill or Be Killed #1-20 2016~2018年 Image Comics
  • My Heroes Have Always Been Junkies 2018年 Image Comics
  • Criminal (Image Comics) #1-12 2019~2020年 Image Comics
  • Bad Weekend 2019年 Image Comics
  • Pulp 2020年 Image Comics
  • Reckless 2020年~ Image Comics


■The Scene of the Crime



■Deadenders



■Criminal



■Incognito



■Fatale



■Velvet



■The Fade Out



■Kill or Be Killed



■Criminal (Image Comics)



●シリーズ作品一覧




■Pulp



■Reckless




■戸梶圭太最新作!KIndleにて絶賛発売中!



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2020年9月22日火曜日

Gideon Falls -コミック表現は進化し続ける-

小説の方でかなりの大作に取り組んでいたもので、コミックの方がずいぶんご無沙汰になってしまってすんませんでした。今回は今アメリカのコミックで最も語っておかねばならぬ、Image Comics発行の、またしても超強力コンビであるJeff Lemire / Andrea Sorrentinoによるホラー/オカルト作品『Gideon Falls』!
2019年のアイズナー賞ニュー・シリーズ部門を受賞し、現在TVシリーズ制作進行中、また昨年から今年、話題になったDCでのミニシリーズ『Joker: Killer Smile』の コンビによる作品ということで、日本で気にしてる人も結構いるのではないでしょうか。
当方現在のところTPB3巻まで既読というところですが、今回はその導入部分とネタバレしない程度の概要、そしてこの製作チームについて、まあわかる限りでのところでお伝えいたします。

【Gideon Falls】
タイトルとなっているGideon Fallsとは、この物語の舞台となっている架空の町の名前。そしてそのGideon Fallsの二人の人物から物語は始まります。

一人はNorton Sinclair。都市Gideon Fallsに住む、20代前半と思われる青年。常時、マスクを着用している。精神病歴があり、ごく最近まで施設に収容されていたが、現在は独りでアパートを借りて暮らしながら、通院している。
子供の頃、記憶を失くし彷徨っているところを発見され、孤児院に収容されそこで育つ。Norton Sinclairという名前は、そこでつけられたもので、現在に至るまで、発見される以前の記憶は戻っていない。
彼の日課は、街のゴミ捨て場に行き、そこで小さな木片や釘を拾ってくること。それらは彼の部屋でラベルを貼った瓶に保存されている。ゴミ捨て場以外でも街のあちこちでそれらを見つけてくる。
彼をそんな謎の行動に駆り立てるのは、彼の中で強迫観念となっているイメージ。”黒い納屋”。
イメージの中でどことも知れぬ地に立つその姿は、禍々しく、明らかに悪意を持つものだ。
そして、彼が集めている木片、釘は、彼によってその”黒い納屋”の一部として認識されたものなのだ。
それは彼の失われた記憶の中で見たものなのか?
Gideon Fallsの路上で、Nortonの奇妙な探索は続く…。

もう一人の人物は、Wilfred神父。最近前任者が亡くなった、農業地帯に囲まれるGideon Fallsの教会に派遣されてくる。
過去のとある事件がきっかけで、一時期アルコールの問題を抱え、以来神学校で教鞭をとっていたWilfred。 神学校司祭の指示でこの地の教会に派遣されてきたが、彼自身はなぜ自分が選ばれたのか、果たして自分にその任が務まるのかを疑問に思っている。 温かく迎えてくれる教区民にも戸惑いを覚えるばかりだ…。
赴任したその夜、眠りに就いていたWilfred神父は、彼を呼ぶ声で目を覚ます。
そこにいたのは亡くなったはずの前任者、Tom神父だった。
意味の分からぬことを言いながら、出て行くTom神父を追って、外に出るWilfred。教会の前に拡がる麦畑を横切って行く姿を追い続ける彼の前に、突如巨大な”黒い納屋”が出現する。
だが、目を疑った次の瞬間、その異様な建物も、Tom神父の姿も消えていた。幻覚だったのか?
そして、それらと入れ替わるように、近くの地面に現れた血痕を追って行くと、そこには昼間Wilfredを迎えてくれた老婦人が、胸に自らの義手を突き立てられた死体となって横たわっていた…。

[Comixology 『Gideon Falls』#1 プレビューより]

現場に居合わせたWilfred神父が容疑者として拘留されているうちに、事件は不可解で意外な結末を迎える。神父は、その事件がきっかけで知り合った町の女性保安官Claraと、その奇矯な行動から彼女とは疎遠になっている ”黒い納屋”を巡るGideon Fallsの謎を調べる彼女の父Suttonらとともに、その地に隠された理解不能な暗黒に巻き込まれて行く。

また一方のNortonは、唯一の信用できる相手、担当の女医Angie Xuに、彼が脅かされ、逃れられない”黒い納屋”の強迫観念について打ち明けるが、彼女からは症状の悪化と受け止められてしまう。 落胆して帰宅したNortonは、留守中に侵入した何者かに部屋を荒らされ、集めた破片を破壊されていることに気付く。彼の探索を妨害する敵がいるのか? そして、女医Angieもまた、街中に不意に出現した”黒い納屋”を目撃し、その謎に巻き込まれて行くことになる。

ここで、これはネタバレになる恐れもあるのだが書いてしまうと、実はこの二つのGideon Fallsはそれぞれ別のGideon Fallsである。ちょっと言い方が微妙になるんだが…。あえてバラしちまうのは、 これもしかしたら日本人だから少し混乱してるだけで、お国柄的な事情でアチラでは最初から自明のことかもしれんと思われるので。
一方のGideon Fallsは大きな建物の立ち並ぶ市街地で、もう一方は麦畑の拡がる農業地帯なのだが、 日本だとこれが車で2~30分隔てたぐらいで同じ市の中にあるようなところざらにあるでしょ。実際ワシの実家のある市(関東地方)だって駅前このくらいにビル建ってるけど、通ってた中学なんていまだに 周りぐるっと田んぼに囲まれてるもん。
そんな日本在住の私は、この二つ同時進行のキャラクターたちは、同じ市に住んでるのだからいつか遭遇するのかな、と思って読んでいたのだが、 本国アメリカの読者は、この二つの土地がそんな近くにあることはありえないので、最初から同じ名前の別のところだと思って読んでたのかもしれないということなのだ。
物語が進み、彼らの間のつながりらしきものも見えてくるにつれ、この二つのグループはどこで出会うのだろうか、という思いも強まる。 そして、TPB第2巻の終わりには、遂にその二つのGideon Fallsが交差し、そこで我々はこの二つが駅前と石井君の家のご近所のような関係ではなかったことを知るのである! だが、これらが別々のものであったのだ、という衝撃はあまり描かれている印象が無いんで、作者チームは当初からそのつもりで描いてて、アメリカン読者もそのつもりで読んでたんではないかな、 と想像されたりもするので、ちょっとしたご注意半分でネタばらしをしてしまいました。
そして、物語はさらに広がり、更に大枠の謎で囲われ、その陰に謎に包まれた「敵」や味方?の姿も垣間見えてくる。謎が謎を呼ぶ『Gideon Falls』!現在も進行中!

[Comixology 『Gideon Falls』#5 プレビューより]

ここで作者チームの経歴について。
ライターJeff Lemireについては、まだまだ到底足りないぐらいなんだけどこのブログで少しは取り上げて来てるんだが、ここで改めて。
1976年カナダのオンタリオ州エセックス郡に生まれ、同地で育つ。映画学校に通っていたが、自身の資質はそちら向きだと考え転身してコミックの世界を目指す。
2005年に自費出版で『Lost Dogs』を出版し、個人出版のコミックに贈られるXeric Awardを受賞。それがきっかけで、現在はIDW傘下にあるTop Shelf Productionsに自作の発表の場を得る。 2008年から2009年にかけて、自身の生まれ故郷を舞台としたかの名作『Essex County』を出版し、広く注目を浴びることになる。
そして2009年より、Vertigoからこちらも自身によるストーリー/作画の『Sweet Tooth』を開始。もちろんそれも高く評価されていて、現在Netflixでシリーズ作成進行中というところなのだが、 彼の評価をより広いところで決定的にしたのは、2011年からDCコミックスでTravel Foremanとのチームで開始された『Animal Man』だろう。
かのグラント・モリソンの有名なやつからしばらく続いた後、、お蔵に入ってたのをThe New 52で引っ張り出し、またしても新設定を加えて作られた作品。 Lemireの作品に共通する家族や「帰属」というテーマを持っている、DCのヒーロー物であっても彼の作品リスト中においても重要作品である。
Travel Foremanについては、序盤の数話のみであとはカバーとかぐらいの参加になるのだが、それだけでもシリーズ全体を通したアート・コンセプトというべきポジションにある。いや、Travel Foremanつーのももっとちゃんと語らねばならないすさまじいぐらいのアーティストなんだが。
そしてLemireは、その後はDC・マーベルに於いて多数の作品を手掛けて行くことになる。とりあえず今回はそちらは省略。
オリジナル作品としては、Top Shelf『The Underwater Welder』(2012)、Vertigo『Trillium』(2013-2014)と続き、その後、2015年頃からは主にライターのみの担当で、注目作を次々と繰り出して来る。
その一つがImage Comicsの『Descender』シリーズで、こちらは2018年に完結した後、続編『Ascender』が開始されている。
もう一つがDark Horse Comicsからの『Black Hammer』シリーズで、こちらは続編やらスピンオフやらで壮大な「The World of Black Hammer」を構成しているらしい。
この二つも到底放っておいてよい作品ではないのだが、なかなかに追いつけず内容不明のままで申し訳ない。 だがまあ、私のこのブログで内容不明とか言ってるのは、いつか必ず読むのを楽しみにしててそれまでは一切あらすじすらも見ないようにしてるものなので、いつの日かは書けるときも来るかもしれません。
現在まで続くそれらと並行し、ミニシリーズ『Plutona』(2015-2016)や、『American Vampire』などで知られるScott Snyderとのタッグで、作画の方を担当した『A.D. After Death』(2016-2017)などの 話題作を次々と発表。そして久々に作画も担当した『Royal City』(2017-2018)に続き、2018年より開始されたのがこの『Gideon Falls』というわけである。
Jeff Lemireの重要作がかなり未読のままこういうのを言うのもちょっと強引かもしれないのだけど、彼の作品のテーマや鍵となるのは、前述の「帰属」というものなのだろうと思う。 初期『Essex County』の家族・土地、そして『Animal Man』の「赤の生存領域(血肉・生命を司り、腐食・死の「黒」と対立する)」のように、個がその帰属に組み込まれる、認識することで、 個の物語が拡大されさらに大きな物語が語られて行く。 この『Gideon Falls』でもそれは同様で、Norton、Wilfred神父らもまた、その帰属が明らかになるにつれ、さらに大きな物語へとつながって行くことになる。
ここでこれまでJeff Lemireについて書いてきたとき必ずぐらい言ってたことを注意のために今一度繰り返しておくのだが、Lemireのオリジナル作品の、あまりにも素晴らしい作画を、 「いわゆるヘタウマ」みたいな雑で適当な分類をするのは絶対禁止だからね!大体そもそもが「ヘタウマ」なんていうのが80年代ごろのガロとかを中心としたアート戦略みたいなもんの呼称で、 何らかの作画スタイルを指す言葉じゃねーんだよ。もしそんなん見つけたら比較的行儀良くやってるコミックの方でもブチ切れて暴れるかんね!

[Comixology 『Gideon Falls』#4 プレビューより]

作画担当のAndrea Sorrentinoは、1982年生まれのイタリア出身のアーティスト。2010年、DC傘下で出版社としては終了する最後の年にWildStormから同名ゲームのコミカライズ『God of War』でアメリカデビュー。 翌2011年のDC The New 52の『I,Vampire』(ストーリー:Joshua Hale Fialkov 2011-2012)が出世作となる。同じThe New 52出身でLemireとは同級生感あるのかも。
『I,Vampire』というのは、DCの『House of Mystery』で1981年に登場し、1983年まで続いたシリーズの主人公Andrew Bennettがリバイバルされたものということらしい。 The New 52ではジョン・コンスタンティンがリーダーの『Justice League Dark』の一員として登場しており、こちらはそのグループではない個人のストーリーとなるシリーズ。 ほら、ややこしい。だからDCマーベルあたりのシリーズ作について書くの面倒なんだよ。あっ、でも今よく見たら『Justice League Dark』、ライターピーター・ミリガンやん!あー、これも読まなきゃなあ…。
最初にイタリア出身と書いたのだが、ちょっと今のところイタリアでのキャリアについては情報なし。『I,Vampire』を見ると、おなじみのペンシラー-インカーみたいなシステムに組み込まれずに、 カラーまで含めた全面的なアートを担当しているので、それなりのイタリアでの実績を持った上でのアメリカ上陸だろうということは想像できるのだが。
そして『I,Vampire』終了の2012年からは『Green Arrow』の作画を担当し、ここで初のJeff Lemireとのチームの作品となる。 2015年からはマーベルと専属契約を結び、そこからしばらくは『All New Xmen』などでブライアン・マイケル・ベンディスとチームを組む。 全5回の限定シリーズでのベンディスとの『Old Man Logan』の後、本格シリーズ化された同作品で、再びLemireとのタッグとなる。 で、この『Old Man Logan』なのだが申し訳ないが内容不明…。とりあえず『I,Vampire』の方は2話ぐらい読んでみたのだが、こっちはLemireとの作品でもあるし、 なんか急いで読むのもったいなくてパラパラッと画を見ただけなんす。まあ、この『Gideon Falls』に先立つLemire-Sorrentino作品ということで、 重要作なのは間違いないですな。24号までをLemireが手掛けた『Old Man Logan』だが、Sorrentinoは一足早く13号で離れ、2017年はマーベルのコミックイベントである『Secret Empire』の作画を手掛ける。 こっちについてもまだそこまで届いていなくて内容不明なんだが、Sorrentinoの作画はメインストーリーの半分ぐらい。そして次に続く作品がこの『Gideon Falls』となる。
Andrea Sorrentinoの作画についてどう説明しようかと考えながらウィキペディアを見てたら、彼の特徴をヘビィ・インクとクリエイティブなレイアウトと説明していた。なるほどヘビィ・インクというのか。 このヘビィ・インクというのは、なんかもう度々言ってるけど、近年のアメリカのコミックのアートで一つのトレンドとなっているスタイル。 光と影の大きいコントラストや、強弱の激しい線などが特徴。少し前にやった『Starve』のDanijel Zezeljもこれに属するし、『Scalped』のR. M. Gueraやらルッカの『Lazarus』のMichael Larkやら 書いてたらきりないくらい。
Sorrentinoの特徴としては、画像を見ると分かると思うが、ベタ部分が線を重ねたタッチになっているが、これは『I,Vampire』や『Old Man Logan』の序盤を少し見たあたりでは やってなかったので、この『Gideon Falls』からか、少なくともその少し前からかに始めたスタイルらしい。見るからに手間暇かけた手描きのタッチに見えるけど、今どきはもう見ただけでは 紙にインクで描かれたものなのかデジタルなのか、かなり判別付きにくくなってるからなあ。もう上手い奴ほどそうやからねえ。
とにかく個性的で優れた画力のAndrea Sorrentinoなのだが、彼について更に特筆すべきは、後半のクリエイティブなレイアウトというやつ。 ここで言うレイアウトとは、ページの中のコマ割りを含めた全体的な画面構成である。 まあ大抵は1話の中でもストーリーが盛り上がってくる後半にかけてすごくなるのだが、こういうプレビューというのは最初の数ページだったりするので、 なかなかホントにスゴイところが紹介できなくてもどかしい。このくらいの画像でもその片鱗ぐらいは垣間見えると思うのだが。 円などの変形コマは当たり前ぐらいで、紹介できた画像にあるようなページを等分のコマに割り、複数に渡る画や断片的に見える画などを組み合わせたカットバックに近いような効果の表現を見せたり、 右が天、左が地になる横向きの画像を縦に並べ、描かれた人物が下に落ちて行くようなイメージのページ構成をやったり、 そこまでに描かれた数々のシーンの断片を無数に背景に配置し記憶があふれ出る様を表現したり、と独創的なレイアウトを見せてくれる。 ホントはもっとすごいのがあるんだが、そこまで書いちゃうとちょっとネタバレかも。このくらいになってくると画でもネタバレ注意っすよ。 まあ特にTPB2巻最後の、二つのGideon Fallsが文字通り交差するシーンは本当にエキサイティングである。必見ナリ!

[画像はすべてComixology より]

上は『Gideon Falls』1~3号のカバー。それぞれが、具体的には作中の登場人物なのだが、人物の顔が航空写真的な地形の上に浮かび上がるデザインとなっている。 このようにあちこちに独創的でコンセプチュアルという感じのアート的な試みが見られる本作なのだが、これらを全て作画Andrea Sorrentino個人の仕事と見るべきだろうか?
以前にも書いたのだが、私はこの『Gideon Falls』の第1号はJeff Lemireがテキストのみのシナリオだけではなく、コマ割りもされた絵コンテであるネーム原作ぐらいまでのものを創り上げたうえで 描かれた作品だと思っている。まあ実際にそういう過程を経て作られたとどこかに発表されているわけでもなく、単にこれまでいくらかLemireオリジナル作品を見てきたうえでの、独特の 間やコマ運びのクセみたいなのが見えるというようなほぼ直感ぐらいのレベルで言ってることなのだけどね。
で、何故にそれにこだわっているかというと、おそらくこのコンビは、この作品を開始するにあたりまずお互いのイメージをより一致させるためにこれをやったのではないか、と思っているからなのである。
この作品は単純にこちらにライターの考えたストーリー=シナリオがあり、アーティストがそれを読んでそこからビジュアル的なイメージを創り上げた、という作品ではない。 これは明らかに、ストーリーを組み立てる時点でLemireの頭にはイメージがあり、それを合わせて伝えられたSorrentinoが具体的なイメージとして作画し、完成させたものである。 だが私はSorrentinoの独創的なレイアウトがすべてLemireのアイデアだ、というようなことを言っているわけではない。 Lemireからのイメージはおそらくは曖昧だったり、流動的だったり、ある時は画的な形を持っていないものだったりもするのではないかと思う。 それを具体的で整合性のあるビジュアルイメージとしてアウトプットできるのが、このAndrea Sorrentinoというアーティストの能力・手腕なのである。 そして、そのようなビジュアル的なイメージを伴ったストーリー作りができるのがこの作画も自らが手掛ける作品を創れるJeff Lemireという作家だ。 そんな二人のイメージをより一致させるためのワンステップとして、Lemireがテキストのみのシナリオではなく、簡単なラフの形であれコミックの形で描いたネーム原作を、Sorrentinoが自分の画でなぞるという手法で、この第1号は作られたのではないのか、というのが私の考えである。

まあそれの基となっているのは学校教育内の美術の授業における単純化なのだろうけど、アートの一般的な評価基準として、「この画はこれこれこういうことを表現している」という馬鹿気たものがある。 この方法は、作品がより抽象的になるにつれ困難になり、それほど単純に短い文章で表現できないものになる。そして頭の悪すぎる連中の間では、そのような単純な解釈ができないものを、 わけがわからない自己満足的な作品として嘲笑するような傾向が高まっている。
馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
人間の感覚・知覚認識において、目からのビジュアルイメージが言語によるコミュニケーションより遥かに上位にあるのは自明のことである。 より複雑な認識、イメージの拡張など常に高みを目指して進化して行くアートが、四則演算レベルまで単純化した形で言語表現できなくなるなどというのは当然のことだ。 そもそもが、単純な言語で表現できるものを越えたイメージを目指して創り上げたものが、なぜその低次元の方法で解釈できないと言って嘲笑されねばならんのか? そういうレベルの俗物にわかりやすい例えで言うなら、「とにかく時間が分かればいいんだし、そもそもスマホに時間が表示されるんだから高い腕時計なんて買う意味がない」というぐらいのレベルの談義でアートを嘲笑しているわけだよ。どうだい?お利口でカッコいいかい? 岡本太郎が児戯に等しい?じゃあせいぜい床の間の富士山の油絵でも愛でて暮らせや。
そしてこの作者チームは、コミック表現において画がストーリーをわかりやすく表現するだけではなく、そのようなビジュアルイメージの進化洗練こそが、より高次の物語を語れると知る者たちである。
あらゆる表現はそれぞれにそれ自体の限界を持っている。コミック=マンガは常に一枚の決まった大きさの中に静止画で描かれなくてはならない。 そして物語を語るためには、ただ一つの大きな画だけではなく、その一枚の中にいくつものシーンを描き構成しなければならない。ページを切り替えなければならない。 最大横並びの2枚が一度に見せられる限界であり、そこからはそれまでのイメージをワイプする形で、次の横並びの2枚へと進ませなければならない。
それらの制約の中で試行錯誤を繰り返し、ある時はその制約を逆手に取り演出手段に変換するなどの形で、コミック=マンガは進化を続けてきたのだ。 そして、現在その最前線でコミック=マンガ表現の限界に挑んでいるのが、この作者チームJeff Lemire-Andrea Sorrentinoの二人であり、この作品『Gideon Falls』なのだ。 これがいかに重要な作品であるか、お分かりいただけただろうか?わかんなかったらひとえに私個人の言語表現力の至らなさと、限界である。 作品は常にこんな言い草を越えて行くのだ。もはやこの力不足からは繰り返しこう言うしかできない。この作品は必読である!

現在TPB4巻まで発行中の『Gideon Falls』は、本年10月発行の26号までを収めた5巻の後、12月に発行される80ページの27号を持って完結の予定とのこと。何度でも繰り返す! 必読作品である!日本で翻訳されるかもー、なんて半端な期待を持たず、必ず読むべし!


うーまた遅れた…。なんかこの時期は仕方ないのか?お盆明けぐらいから疲れたまってきて、去年は坐骨神経痛で倒れた時期やし、とにかく慎重になるべく休まなければ、でなかなか進まなかった感じ。 なんかSorrentinoの経歴辺りから延々牛歩ペースになっちまって、一日二行ぐらい書けたり書けなかったりが続いてしまった。とにかく前年の坐骨神経痛は完全に疲労のみが原因なので、慎重にならざるを得んのだけど。 まあこれを休んでいるからってその時間オールスリーピングぐーぐーなわけではなくて、ひたすら読書に充ててるんで、書かねばならんことは増えるばかりなのでけど。 ただそういう生活を続けていると、それが生活パターンになってしまい、体力的に戻っても書く時間を作るのが難しくなってしまうという、あんまり物考えずに反射と習慣反復で生きてる人間にありがちな 弊害が発生しがちなので、その辺はしっかり自戒していかなければと思うところであります。
とにかくコミックについても、書かなければと思うことは山ほどあり、今回の『Gideon Falls』なんていうのは、その中でも最低限このくらいは書いとかなきゃいかんだろ、ぐらいのものであり、 ホントなら間にもう一つぐらいマイナーなのやヘンなのを挟みたかったところなのですが、どうにも力不足でなかなか思うように拡がらんのがもどかしい。自分も画は好きで、コミックを語る上では常に 画とストーリーを別々のものとしてではなく同じ比重で語って行かねばならんとは思っているのだけど、日本の海外のコミックの読まれ方としては言葉の問題もあるのだろうけど、どうしても画の比重が 高くて、それがなかなか海外のコミックが定着しない原因の一つなのではないかな、と思っているのです。結局そういう読まれ方というのは常に点にしかならず、それを横なり縦なりにつなげて拡げて行くには もっと系統的でそれがどこに位置するのかという視点も必要であり、そのためには作家と読み物としてのコミックの紹介というような方法がもっと必要なのだろうと思うわけです。 ただまあ、そういうことを考えてみると、今回のストーリーの紹介の仕方とかこれでわかったんかな?ちょっとネタバレにこだわりすぎてて、ホントはTPB1巻分ぐらい書いちゃった方が作品の方向性を 掴みやすかったんじゃないのかな?なども色々と考えたりもします。まあ色々と悩みつつ、それでも何とか微力ながらも日本の海外のコミックの読者層の拡大へといささかなりとも寄与して行ければと。 しかし微力にもほどがあるな…。なんだかんだ言ってもそろそろ時期的にも体力的に落ち着いてくるところでしょうから、ここからまた何とか少しでも頑張って行ければと。
最後に今月の悪態。最近というか前からだけど、マンガアプリとかのコメント欄見てて、とにかく一番イラつくコメント。実写化希望。今の世の中で最も迷惑千万な希望ナリ! なんだよ悪態終わりって…。ではまたね。

下のリストについて:一応通例通り基本的にはオリジナル作品に絞って載せていますが、Lemire『Animal Man』は、それに準ずるぐらいのもんかと思うので入れときました。あと、『Gideon Falls』直前の Lemire-Sorrentino作品である『Old Man Logan』もおそらくは重要作かと。ただ、Lemireに関しては近作でリスト作ってて初めてこんなんあるんだと知ったのもあり、きちんと説明できてないまま入ってるのもあって、 そこんところはすみません。つーか、Image最新作の『Family Tree』も全然内容把握しとらんし…。Lemire作品はマーベルDCも含めていつか読むから、と若干いい加減にしとったが、この量見るとそんな 悠長なこと言ってられんな。『Black Hammer』とか今日から読み始めんといかんと思ってるし。なんかLemireに関しては、いつも中途半端にしか書けていない気がしてて、今回こそはきっちり書こうと 思ってたけど、また少し中途半端に終わってしまった感じ。次こそは頑張る。Lemireについてはまだまだ書かなきゃならんこと多いからな。
言及出来てないところで唯一少しわかるのは、『Secret Path』という作品。カナダでは国民的バンドと言われたザ・トラジカリー・ヒップのフロントマンのゴード・ダウニーが亡くなる前年の2016年に Lemireとのコラボレーションで出したソロ・アルバム。アナログLP盤とサイズを合わせたLemireのグラフィックノベルとのセットという形で販売され、ちょっと欲しいなと思った。 現在ではグラフィックノベル単体やKindle版でも購入できます。ザ・トラジカリー・ヒップやゴード・ダウニーについてはよく知らなかったのだけど、よく知りたい人は検索すればすぐに日本語の情報がみつかりますので。 このコラボレーションについては日本語の情報はちょっと見つからなかったのだけど、Secret Pathというのは寄宿学校から脱走して餓死した先住民の少年チェイニー・ウェンジャックを歌った曲ということで、 その物語がLemireによって描かれているのでしょう。カナダ史の暗部に光を当てた曲で2017年のジュノー賞でも高く評価されたそうです。やっぱ読むなら音源の方も手に入れんとね。なんか注釈ぐらいのところが 思いのほか長くなってしまったな。今度こそホントに終わりです。ではまた。

Jeff Lemireホームページ


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Essex County -Jeff Lemireの感動作-

Image Comics 最近の注目作



■Jeff Lemire / Andrea Sorrentino
●Gideon Falls



●Wolverine: Old Man Logan



●Joker: Killer Smile



■Jeff Lemire



●Sweet Tooth



●Animal Man



●Descender




●Black Hammer



●Plutona



●A.D. After Death(Scott Snyder原作)



●Royal City



●Family Tree



■Andrea Sorrentino
●I, Vampire



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