Translate

2014年12月6日土曜日

you don't exist -ADR Books第1弾!-

このブログでは度々ひっぱり出してきてお馴染みの必読アンソロジー『All Due Respect』なのですが、ウェブジンのベスト選アンソロジーから定期刊行オリジナルアンソロジーへと進化したことは以前に書きました。そちらも早く読まねばと思いつつなかなか手が付けられないでいるうちに、All Due Respect Booksなどというものの刊行まで始めてしまいました。8月発行のこの作品を皮切りにすでに6冊が刊行され、All Due Respectのホームページでは代表のChris Rhatigan氏があれも出すぞ!これも出すぞ!と意気盛んです。私の英語読書力では到底追いつけない勢いですが、とにかく乗っておかねば!と、この第1弾『you don't exist』を読んでみました。

この『you don't exist』ですが、実は同一テーマの別の作家2人の2本の中編の競作という形になっています。そのテーマはというと、一人の男が旅行中、見知らぬ土地で明らかに犯罪にかかわると思われる大金を偶然手にしてしまい、それをいかに自分のものにするかと考えながら、孤立無援の中次第に強まって行く強迫観念にとらわれて行くというものです。

bleed the ghost empty/Pablo D'Stair

私はハイウェイを車で走っていた。もう何日もろくに眠っていない。いくつもの出口を示す知らない町の名が書かれた標識を通り過ぎる。だが、一向に出口など現れず、また新しい知らない町の名の標識が現れるばかりだ。どうなっているんだ?やっとさびれた小さなダイナーが付いたガソリンスタンドを見つけた。だが閉まっている。一体いつから閉まっているのかもわからない。ガソリンポンプには錠が掛かっている。自販機には見たこともない煙草が並んでいる。金を入れたら出てくるのかもわからない。待っていれば誰か来るのだろうか?だがもうガソリンも乏しい。このままではどこにも行けない。そして日が暮れて行く…。
…あそこに車が停まっている。いつから停まっているのか?中には人がいるようだ。灯りがついていて微かにラジオの音も聞こえてくる。何をしているのだ?なぜずっと停まっている?意を決して近付いてみる。道に迷った害のない旅行者を装って…。そして、車の中にあったのは男の死体と、その足元には現金の詰まったバッグだった…。

何とも、とにかくすさまじい作品でした。冒頭から延々と一人の男の語りで、なぜずっと車を走らせているのかもわからない。最初からある種の強迫観念にとらわれている語りで、むちゃくちゃに文章をつなげていくような文体で少し読むのに苦労しました。後半の方まで誰かと会話することもないので、名前もわからないし、その時に言っていることが本当なのかもわからない。現実と妄想の境も曖昧な感じ。米Amazon.comのレビューを見ていたらデヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』を引き合いに出している人がいて、なるほどと思いました。ちょっと文学寄りの圧倒的な読み応えのあるノワール作品でした。
作者Pablo D'Stairはノワール系では初登場のようですが、いくつかの著作のある作家で、Amazon Kindleでもいくつかの作品を見ることができました。いずれも文学寄りの作品のようですが、なかなか面白そうで余裕があったら読んでみたいところ。(なかなか無いのだが…。)作者紹介によると、イギリスの方で映画業界にも関わっているようです。実力のある作家なのは確かなので、このジャンルで今後活躍して行かなくてもいずれ作品を読んでみたくなる時が来るかも。


Pessimist/Chris Rhatigan

Pullmanはダラスのモンロー空港に降り立った。ダヴェンポートで行われるコンヴェンションの会議に出席するため、ニューヨークの都市開発コンサルタント会社から派遣されてきた。彼のこれまでの人生は常に今よりも少しでも良い収入を得られる仕事に付けるよう地道な努力を続ける毎日だった。気に入らない上司にこき使われる現在のアシスタントの仕事もそのワンステップだ。いつか来る日を夢見て…。だが、まだ大学の学資ローンすらも払い終える見込みが立っていない。空港で荷物を受け取り、明日のコンベンションに備えてモーテルにチェックインする。ベッドの上に投げ出したバッグを開けてみると、そこに入っていたのは見たこともない現金の束だった…。

とことん小市民的な主人公が、空港で荷物を間違えられ手にした明らかに犯罪にかかわると思われる大金をなんとか自分のものにしようと悪戦苦闘するストーリー。姿も見えない追手に追跡されているとの疑心暗鬼に捕われながら、金を小分けにしてあちこちの金融機関に預けようとしたり。前のPablo D'Stairの作品があまりに読みにくかったのでずいぶんスラスラ読めた印象があります。一方で前の作品がかなりすごかったので少し損をしているような感じもありますが、なかなかよくできた良質なノワール作品でした。
作者Chris Rhatiganは前述の通りこのAll Due RespectのWeb時代からの代表・パブリッシャーです。その立場からAll Due Respectでは作家としてあまり前に出ることはありませんが、他のアンソロジーに作品を発表していたり、今年9月にはBeat Up Pulpから中編『Waku Up, Time to Die』を出版したりもしています。その他にも彼の以前の中編『The Kind of Friends Who Murder Each Other』が彼自身のブログDeath by Killing経由でインディー系eBookショップSmashwordsからフリーでダウンロードできます。
このような作家兼編集者・パブリッシャーというのは今のこのジャンルで多く見られます。ThuglitのTodd Robinson、Blood & TacosのJohnny Shaw、PWGのAnthony Neil Smithなど。少し前に書いたTom PittもOut of the Gutterのエディターだったり、Chris氏の盟友でAll Due Respectからの作品集の出版も予定されているAlec CizakもアンソロジーPulp Modernのエディターだったりします。その辺も私がこのあたりの動きに注目し、期待する要因の一つで、これからも可能な限り頑張ってこの動きを追っかけて行きたいと思います。


というわけで、このAll Due Respect Books第1弾『you don't exist』、なかなか手応えのある作品で、今後のこのシリーズにもかなり期待を持たせてくれるものでした。All Due Respectではこの形の競作シリーズを今後も展開して行くようで、早くも再び代表Chris Rhatigan氏の参加した『Two Bullets Solve Everything』が発表されています。また、アンソロジー『All Due Respect』もIssue 4まで発行中。早くそちらも読まねば。この辺のムーブメントの中でも特に勢いのあるパブリッシャーの一つで今後も要注目です。 


All Due Respect

Death by Killing      

●関連記事 

ハードボイルド/ノワール系アンソロジーとインディー・パブリッシャー

●All Due Respect Books


●All Due Respect


'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2014年11月23日日曜日

Terry Moore's Echo -スヌーピーの血を受け継ぐSFアクション・コミック!-

今回は自身のAbstract Studioから作品を発表し続けているインディペンデント系コミック作家Terry Mooreについて、私が読んでいる『Terry Moore's Echo』を中心に少し書いてみようと思います。

Terry Moore's Echo

民間核研究所HeNRIの科学者Annie Trotterは関わるPhiプロジェクトで開発中の水銀をベースに核を利用したベータスーツを着用し、ジェットパックを背に自らテスト飛行を行っていた。その最中、彼女研究方向で対立する同研究所のFoster教授により、スーツの耐久度テストを兼ね、戦闘機からミサイルを撃ち込まれ殺害される。

その時、Julie Martinは直下に拡がる砂漠で植物の撮影をしていて、頭上での大規模な空中爆発を目撃する。直後、微小な金属の粒が雨の様にJulieの上に降りそそぐ。なぜかその粒は落下しても跳ね返ることなくJulieの身体や衣服、ピックアップトラックに張り付き剥がれなくなる。危険を感じその場から逃げるJulie。帰宅してみるとピックアップの荷台には同金属の大きめの破片が落ちていた。女性の胸部に当てられていたように見えるその破片を何気なく自分の体に当ててみると、それはJulieの胸に張り付き剥がれなくなる。そして、他の部分やピックアップに張り付いていた粒までもそこに集まって行く。

ERに駆けつけ、自分の症状を医師に話すJulie。医師が検査しようとその金属に触れると途端にスパークが走り、医師の手袋を破き、爪を破損させる。悪質なイタズラと誤解され、Julieは病院から追い出されてしまう。

パークレンジャーのDillonは自らの管轄区域で起こった爆発事件ながら軍隊によって封鎖され、調査もできず当惑している。彼は科学者Annieとも恋人関係にあったのだが、事件以来連絡が取れずにいる。次第に彼はHeNRIを中心に何かが起こっているとの疑いを抱き始める。

意に沿わない突然の離婚に悩み、光熱費の支払いにも困っている上に襲い掛かった突然の災難に途方に暮れるJulie。帰宅しようと砂漠を横切っていると運転中のピックアップを軍隊に止められる。HeNRIは事件の映像からそこにJulieがいたことを突き止めその身柄を拘束しようと迫ってきていたのだった。銃を突きつける兵士に、事態が理解できず困惑するJulie。だが、その胸を覆った金属に触れた途端、再び大きなスパークが走り、兵士に向かってゆく。Julieを取り押さえようと攻撃してくる兵士たちも次々と打ち倒 されて行く。たまたまその場を通りかかったDillonに助けられ、Julieはその場から逃走する。

しかし、爆心地の下にいたのはJulieだけではなかった。片手その金属をまとった謎の老人が、それを神の啓示と解釈し、異常な行動をとり始め、徐々にJulieに近付いて来る。一方、HeNRIも優秀な女性エージェントIvyを呼び寄せ、Julieの追跡にかかる…。


というストーリー。インディペンデント系というのから想像されるのとはちょっと違ったエンタテインメント作品で、こんな感じの海外TVドラマあったらボックスセット買っちゃうかも、というぐらい面白いです。画の方はというと、白黒で線は細めで、ベタの影で立体感を出すという手法はあまり使わないというアメコミでは異色の画ではありますが、確かなデッサン力で、特に女性の画が優れていて、細かい動作を柔らかく描くというとても達者な画です。実際、自分でキャラクターの描き方の本を出しているくらいの画力。つまり自分で考えた話を自分で描き、基本は白黒という日本では普通のコミック作家ではあるけど、アメコミ界では異色というのがTerry Mooreなのです。

Terry Mooreは1993年から自らのAbstract Studioから『Strangers in Paradise』をアメコミでは一般的な30ページ弱のIssueという形で出版し始め、1996年にはアイズナー賞のBest Serialized Story部門で受賞しています。その後、マーベルDCなどの大手コミック出版社で短期のシリーズ物を手掛けたりもしていますが、基本的には自らのAbstract Studioから作品を発表し続けていて、2人の女性の友情関係を描いた『Strangers in Paradise』は2007年に100話以上を持って完結し、2008~2011年にはこのSFアクション作品『Terry Moore's Echo』、続いて2011年から現在進行中の異色ホラー作品『Rachel Rising』が出版されています。

主に会話を中心に進められる手法や、絵柄、コマの運びなど、私から見るとTerry Mooreの作品は他のアメコミより結構読みやすい印象があります。これは日本のマンガと描かれ方が近いからではないかと思っていたのですが、やはりそう断言するには少し異質なものもあります。どう説明したものかと考えながら色々調べていると、以前は読み流していたスヌーピーなどが登場するピーナッツ・コミックのチャールズ・M・シュルツから影響を受けた、との記述が目に留まりました。そう考えながら見てみると、なるほど、技法や間の取り方、ユーモアなど、随所にシュルツの影響が見られます。この独特の読みやすさもそこから来ているものだろうと思います。スヌーピーの血を受け継ぐSFアクション?そう聞いてこの作品に興味をもたれる人もいるのではないでしょうか。「異質」とは書きましたが、かなり表現の幅が広い日本のマンガの中にあってもおかしくないような作品です。

実は私はTerry Mooreの作品は後発の『Rachel Rising』の方から、まだ始まって間もないころComixologyで知りました。森の中に埋められていて土を掘り返して現れた主人公Rachelが自分を殺した人を探し始める、というストーリーを何か不思議な静かな感じで描くこの作品にすぐにハマり、2話まで読んでこれは単行本でまとめられたものを読もう、と続きを読まずにいたのですが、しばらくたって調べてみると、やはりそこは個人出版ということで部数も少なくTPB版の入手はかなり困難と判明しました。どうしようかと思っているところでComixologyでこの『Echo』のセールがあり、全作買い込み、まあいつものようにモタモタとやっと半分3巻まで読んだという状況です。このように日本のマンガ読者にも親和性が高いと思われるTerry Mooreの作品なのですが、少し日本からは手に入りにくくなっている状況で、今は彼の作品がすべてそろっているComixologyで読むのが一番簡単なようです。Andoroid、Kindleの事はよくわからないのですが、iOSからは撤退してしまいWebから購入するしかないComixologyですが、私はプリペイド式のVプリカをPaypalアカウントに登録して購入するという方法を使っています。クレジットカードをWebで使うのが不安な人や、私のように放っておくとどのくらいマンガを買ってしまうかわからない幼稚な大人(JACKASS!)の人にとっては比較的安全な方法だと思います。詳しくはこんなボンクラよりももっとまともなところで調べてみてください。リストには比較的手に入りやすそうなこの『Terry Moore's Echo』全30話コンプリート版のみを載せておきました。


Terry Mooreオフィシャルサイト             

●Terry Moore's Echo


'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2014年11月9日日曜日

Magdalen Martyrs -ジャック・テイラー第3作!-

そもそも洋書を読もうと思うきっかけは、日本では出ないあれやこれの続きが読みたい、ということだったのですが、いざ売り場に行ってみると、うわっ、100円とか300円とかで知らない面白そうなのいっぱいあるじゃん!、とハの字バカが暴走しあちこち目移りして、本来の目的になかなか戻ってこられなかったりしていたのですが、しかし、ケン・ブルーウンぐらい読まんと始まらんだろう、と一念発起し、ジャック・テイラー・シリーズ第3作『Magdalen Martyrs』をやっと読んだのでありました。

前作「ティンカー連続殺人事件」の結果からテイラーはもらった家を返し、再びベイリーズ・ホテルに居を構えています。酒とも適度に(?)つきあい本を読む毎日。そして、第2作に登場したギャング、ビル・カッセルから連絡が来ます。「借りを返してもらおう。」

お前はマグダレンは知っているな。俺の母親はそこにいたんだ。あの地獄から脱走するのを手助けしてくれた女性がいる。Rita Monroe。彼女を探せ。お前は人探しが上手いらしいからな。お前には二つ貸しがあるな。このひとつでその二つを帳消しにしてやる。いい話だろう。

マグダレンとは近年までアイルランドにあった未婚で妊娠した女性が収容されていた修道施設のこと。収容者はかなり劣悪な環境で洗濯所で労働を強いられていたということです。この本のことを調べていて知って、まだ私は未見なのですがそのことについて描いた『マグダレンの祈り』という映画もあるそうです。原作であるジューン・ゴールディングの回想録も翻訳が出ているようです。

調査を始めたもののすぐに行き詰ってしまったジャックは今や一児の母となった元パンク少女キャシーと元警官のブレンダンに助けを求める。そして二人の調査を待つ間、彼のうわさを聞きつけてきた青年の、彼の父を殺した犯人が若い後妻であることを証明して欲しい、という依頼も引き受けてしまう。その女性の様子を探りに行ったものの、ずさんな調査の仕方からすぐに目的に気付かれ、逆に徐々に籠絡され始めるジャック。一方元警官を巻き込むなどの調査のやり方に不満を持ったカッセルは、ジャックの頭に銃を突きつけ脅しをかける。ジャックは再び酒とドラッグに溺れ始めるようになってしまう。そして、友人2人の協力によってRita Monroeの行方はつきとめられたのだが…。


素晴らしい。傑作です。別に翻訳が無く読む人の少ないこの第3作が跳びぬけた傑作だと言っているのではなく、前2作同様の傑作だという話です。なぜケン・ブルーウンの翻訳が出ないのかと考えると色々腹が立ってきて罵詈雑言を書き散らしそうなので自粛しますが、ケン・ブルーウンがこのジャンルにおける現代のもっとも優れた継承者のひとりであることは確実で、彼の作品が翻訳されないのはジェームズ・クラムリー、デニス・ルへインクラスの作家の翻訳が出ないのと同等の損失で、大変不幸なことだと言わざるを得ません。まあ、出版社側でもそのくらいはある程度は分かっていて、なんとかケン・ブルーウンを日本で売ろうとは試みたもののあまり売れず、というのが今の状況でしょう。『ブリッツ』に至っては映画も公開されたのに原作の翻訳は出ない始末。とにかく今は時代が悪いのでしょう。しかし、これほどの作家がこのまま放って置かれるはずはなく、いずれまた翻訳の機会は来るだろうと思われますが、そうはなっても不幸なことに彼の全作品が翻訳される望みは薄い事でしょう。とりあえず今はケン・ブルーウンの著作は片っ端から原書で読んでおくしかないでしょう。つーかフラフラしてないで読むのはまずこれだろうが、オレ。

このジャック・テイラーシリーズには色々言いたい事があるので少し書いておきます。まずこのシリーズは「主人公が酒ばっかり飲んでいる間に周りの人間がいろいろ調べてくれて、事件の方が勝手に解決する」というようなものではありません。このシリーズはジャック・テイラーという元警官の本好きの酒飲みでかなりひねくれたオッサンの手記という形で書かれています。したがってこの本の中には彼が重要と思ったことしか書かれていません。どこでどうやって捜査してどのくらいの時間を使ったなどということは細かく書かれず、数行上手くいかなかったことが書かれるだけ。また、キャシーとブレンダンの調査に関しては自分ができない方法で調査をしてくれるので、そのことについては何も書いてありません。自分がわかることなら自分でやればいいことですから。そしてこのジャック・テイラーという人は事件についてあまり考えません。今作の2番目の事件については途中で完全に忘れてしまっていたりします。作者ケン・ブルーウンはジャック・テイラーという人物をそういう風に設定していて、極端な例では今作中後半で留守中にホテルのジャックの部屋がメチャメチャに荒らされ、その際誰がどんな目的でやったのかと考える記述はほとんどなく、ただ服や本が駄目にされたことに落ち込み買い直しに行き、またホテルの所有者であるミセス・ベイリーに対して申し訳ないという思いが延々とつづられます。ただ、この人は本当にひねくれた人なので色々と考えても書いてない、という場合もあります。前2作で面倒だから返さないという体を装っていた度々返却要請のある警察用外套ですが、今作のあるシーンでそれや警察官であったことに対する思いがけないほどの深い思いがうっかり吐露されたりします。
そして、解決について。例えば人は誰かがこっそり自分に不正を働いていたり、何かをごまかし続けられていたり、また、自分自身でごまかして目をそらし続けていても何時かの時点ではそれに気付き直面しなければならなくなります。このシリーズではそのように「解決」し、大変苦い形で決着がつけられます。これが「事件の方が勝手に解決する」などというのほほんとしたものではないのは当然です。
つまりこのジャック・テイラーシリーズは捜査や推理といった記述がほとんどなく、また本の最後に設定された「解決」というゴールに向けて主人公が行動しないミステリなのです。「ミステリ」好きの人がこれは「ミステリ」ではないと言うのは勝手ですが、ケン・ブルーウンはミステリ・ジャンルで高い評価を受けていてそのジャンルで作品を発表し続けている作家なので、私はあくまでもミステリとして読みます。

そしてそれらの替りにこの本に何が書かれているかというと、例えばミセス・ベイリーとの会話です。ジャックが外出するとき、帰ってきたときミセス・ベイリーは大抵フロントにいて、彼に声をかけます。様々なことが書かれていないこの手記の中ではあまり必要でないことも多くあります。しかし、”この善良な老婦人はどうして自分のような人間にこうまで優しくしてくれるのだろう”という感謝の想いがこの手記の中にその会話を記させるのです。そしてお馴染みの酒と酔っ払いと本のこと。この作品にもなかなかいい酔っ払い格言が引用されていたりもします。同じ(元)アル中探偵マット・スカダーについても言及していて、ジャックはアル中時代のスカダーの方が好きだということです。日本で誰かがこれを書いていると、ちょいわる親爺の「俺は甘いもの苦手だから」宣言ぐらいうんざりするのですが、ジャックなら許すよ。そしてそれらの中で最も胸を打つのは”存在しない二人の人物”の話です。ジャックはこの作品中で二人の人物に出会い、その会話でどん底にあった心情が癒されます。しかし、あとで人に聞いてもそんな人はいなかったと言われるばかりです。私は作品中のトリックや、ともすると犯人まですぐ忘れてしまうボンクラですが、こういうところは生涯忘れません。

さて、ご存知の通りこのシリーズには2作の邦訳がありますが、私はこの邦題が心底嫌いです。まず『酔いどれに悪人なし』ですが、この作品を読み進むにつれタイトルに違和感を感じ始め、なぜこんなタイトルが付いているのだろうと原題を見てみると、全く関係ない『The Guards』。そして最後まで読み通しても決して「酔いどれに悪人なし」などという感想は得られませんでした。原題の『The Guards』はアイルランドやその地方の慣用なのかまではわかりませんが、このシリーズ中では警察を示す言葉として常に登場します。主人公が警官ではないのにこのタイトルで、そのまま付けにくかったのは分かります。しかし、この邦題は酔いどれ探偵好きはこんな感じが好きだろう、というだけで付けられた内容を示していないばかりか、人によっては全く逆の感想を持ってしまうような本当にひどいタイトルです。そして2作目の『酔いどれ故郷にかえる』。1作目の邦題にかなり頭に来ていた私は、”酔いどれシリーズで行くつもりかよっ!”との怒りからしばらく書店でこの作品に手を付けられませんでした。やっとのことで”前作には書いてなかった気がするけど、ジャックには別に故郷があって、グリーンリーフの『探偵の帰郷』みたいな話になるのだろうか”と思いながら読み始めたところ、前作の最後にロンドンに行くと言っていたジャックが本当にロンドンにしばらく行っていて冒頭でゴールウェイに帰ってくるという状況を示しただけのものでした。この間ロンドン編が書かれたわけではありません。2兆歩譲って『酔いどれ』と『かえる』はありとしても、『故郷に』!?この『故郷に』はただ「語呂がいい」だけで入れられ、下の『かえる』を不必要な方向に誘導・強調するだけの安物Jポップの歌詞レベルのひどい語句の並べ方の見本のようなタイトルです。しかし、思い返してみると1作目を読み始めた時、このタイトルにはいささかの期待もあったように思います。酔いどれシリーズでもそんなに悪くなかったのかもしれない。でもこの2作の邦題はそれに続く下の句があまりにひどすぎます。原題と全く違うタイトルが付けられるのが日本だけの事ではないことも理解しています。でも、こんなものがありだと思うんなら今度「父と子の物語」テーマのマッチョ説教探偵シリーズを見つけたら「痛快ビッグダディ」シリーズとでもつけて出しゃあいいんじゃないですか?きっとバカ売れですよ。上にも書いた通り、ケン・ブルーウンの作品は必ずいずれ再評価されて再び翻訳が始まります。その時この2作が再版されるなら『バス男』→『ナポレオン・ダイナマイト』ぐらいの反省をして、まともなタイトルに直して出版されることを切に望みます。ちなみに今回の作品、邦題を付けるなら『酔いどれ借りを返す』は断固却下!原題通り『マグダレンの殉教者』で決定。

うむむ…。自粛するつもりが結局ずいぶん荒れてしまった…。これもひとえにケン・ブルーウン/ジャック・テイラー愛の強さゆえということで今回は見逃してください。しかしここのところ失敗続きでもしかしたら『酔いどれ借りを返す』がもう出てるんじゃないかと不安になってしまいますが、…大丈夫ですよね?私としては今後はこのケン・ブルーウンの作品を最優先で読んでいくつもりで…あっ、今頭の中で読もうと思ってる本が上にドサッと山積みされた…が、なんとか上の方に持ってきて、ジャック・テイラーシリーズや他の作品にも手を拡げてこのブログ上で感想を書いて行くつもりです。ジャック・テイラーシリーズはアメリカ制作でTVムービー化されたものもあるようなので、そちらもそのうち観てみたいなと思っています。         


●Max Fisher and Angela Petrakosシリーズ

'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2014年11月3日月曜日

Judge Dredd / Day of Chaos -ジャッジ・ドレッド、近年最大の問題作-

Judge Dredd/Day of Chaosは2011~2012年に1年近くに渡り2000ADに掲載された近年のJudge Dreddの中でも最大のシリーズです。これはJudge Dreddの舞台となっているMega-City Oneの人口の80%が失われるという大惨事で、その後ずいぶん復興してきましたが、現在に至っても「Day of Chaos以後」という状況が続いています。
かなりの大作・問題作であり、「どう書くべきか」などとしばらく悩んでいたりしたのですが、まあ所詮オレごときが、と思い至り、少し気楽に軽く概要や感想を書いて、少し詳しくストーリーの方を書くという感じでやってみます。

これだけ長く続いているシリーズを途中から読むのは、色々な事情が把握し辛く大変なのですが、この事件の発端はそれから更に30年ほどさかのぼってしまいます。ちなみに、Judge Dreddの年月の流れは現実の時間と同じなので、30年ほど前の2000ADに掲載されていたストーリーとなります。The Apocalypse Warという一連のストーリーで、対立状態にあった東側Sovsとの抗争が激化し、Mega City Oneは危機に陥り、こちらに向けられ発射状態にあった核ミサイルを発見したドレッドはそれを逆に向けて東側East Mega-City Oneを地上から消し去ります。掲載当時もこのジャッジ・ドレッドの行動はかなり物議を呼んだそうです。この辺りのストーリーは現在は『Judge Dredd Complete Case File』の04~05あたりで読めるそうなのですが、私はまだ02まで読んでその先は手付かずという状態なので、未読で冒頭の説明を読んだだけです。なるべく早くそこまで届きたいなあと思うばかり。

そして、その後30年の経緯はわかりませんが、その東側East Mega-City Oneの生き残りが、Mega-City one及びジャッジ・ドレッドに最大の報復を仕掛ける、というのが「Day of Chaose」のストーリーです。

そして、この『Day of Chaos:The Fourth Faction』、『Day of Chaos:Endgame』の2冊に渡るストーリーなのですが、実はまたあまり事情の分からない(またかよっ!)前のストーリーの後日談から始まります。それはPJ Maybeというバットマンで言えばジョーカーに当たるのではないかと思われる度々登場しているらしい犯罪者が、Mega-City Oneの市長と顔を変えて入れ替わっていたという話のようです。『The Fourth Faction』の前半は、逮捕されたPJ Maybeが再び逃亡するストーリーが、市長不在となり混乱するMega-City Oneの情勢や次の市長選挙に向けた動きなどと並行して語られます。まあこの辺も「Day of Chaos」につながる流れだったりするのですが。ちなみにこの「Chaos Day」はテロリストたちにより、Cityの人の動きが大きくなる市長選挙の日に向けて行われます。

『The Fourth Function』後半からは「Day of Chaos」本編に入ります。まず、謎の女性テロリストNadiaがMega-City Oneに潜入し、現地のシンパ組織とともになんらかの作戦行動に入ります。一方、Justice Departmentでは、予知能力を持った女性候補生がその能力で見た様々なビジョンの断片から大事件を予感するのですが、あまりに曖昧なビジョンゆえに他のジャッジは対処せず、唯一ドレッドだけが不穏なものを感じ、彼女に報告を続けさせます。シンパ組織の脆弱ゆえの粛清などのテロリスト側の綻びがビジョンと符合し始め、ドレッドはテロリストたちのバックが東側の生き残りであり、その目的がMega-City Oneに在住の細菌学者Elmore Yurgesの誘拐であることをつきとめます。しかし、常にテロリストたちに後れを取っていたジャッジたちは、その誘拐を止められず、細菌学者家族は国外に連れ去られてしまいます。強力なNadiaは倒しましたが、結果ドレッドも深手を負います。   

各地の潜入工作員、衛星画像からJustice DepartmentはYurges一家が連行されたテロリストの本拠、そしてリーダーが30年前の核攻撃で盲目になった元軍人Yevgeny Borisenkoであることをつきとめます。ドレッドは地上からの攻撃を主張しますが、多くのジャッジは予想される結果の重大性から衛星兵器の使用によりYurges一家もろともテロリストの本拠を壊滅すべきという考えに傾き、その作戦は実行されます。しかし、実際にはそれらもテロリストたちの計画による偽装で、Yurges一家とBorisenkoはすでに別の場所に移動していたのでした。

そして、これからは『Endgame』に移ります。テロリストの本拠壊滅により、事件は解決したと思われていましたが、依然続く女性候補生のビジョンから、ドレッドは調査を続けます。一方、Borisenkoは家族を使った脅迫によりYurgesに目的のウィルスの開発を進めさせます。そのウィルスとは、感染した人間を狂乱状態にし、強迫観念から周囲に無差別な暴力・破壊行動を起こさせ、死に至る、という恐ろしいもの。ドレッドは微かな手がかりからテロリストたちの真の潜伏先を突き止め、自ら部隊を率いて攻撃にかかります。火を放たれた建物の中に飛び込み、ドレッドが見たものは恐るべき研究の結果でした。そして、炎の中からドレッドが運び出したYurgesの息子の死体が彼の主張の正しさを証明するのでした。一方、ドレッド不在のJustice Departmentでは、ジャッジ内に潜伏していた裏切り者の手により、予知能力を持った候補生が殺害されます。そして、すでにウィルスは完成しており、それを持った工作員たちもすでに本拠を去り、Mega-City Oneへ向かっていました。

Justice DepartmentはMega-City Oneを封鎖しますが、工作員たちは様々な手段を使い侵入し、カオス・ウィルスの感染者は徐々に増えて行きます。ウィルスに対する研究も進められますが、とても間に合わず、かなりの被害が予想されます。唯一の救いはYugesがこっそり忍び込まさせた世代と時間の経過につれてカオス・ウィルスが無力化する因子。Justice Departmentはそれが致命的なものであることは隠し、重病の感染が広まっていることを発表し、Cityに戒厳令を布きます。感染者の隔離、外出の制限などにより被害を最小限にとどめられるか、と思った時、再びジャッジ内の裏切り者が動きます。ジャッジ幹部の一人が感染者対策として考案した、感染者たちを移送の名目でエア・シップに乗せ船室内でガスによる安楽死をさせCity外に掘られた穴に投棄するという計画の映像がマスコミにリークされます。City中に拡がる暴動。その中で裏切り者は3体のDark Judge(クリスタルに封印された悪霊的なもので、ちょっとまだよくわかりません)を開放し、混乱に拍車をかけます。Justice Departmentも甚大な被害を受け、ジャッジたちも部分的な対応をしながらウィルスの鎮静化を待つしかなくMega-City Oneは壊滅的な打撃を受けるのでした。


以上が「Judge Dredd / Day of Chaos」のストーリーです。この長期に渡るストーリーはジャッジ・ドレッドの生みの親のひとりでもあるライターJohn Wagner一人によって書かれています。意図的なものか、それとも一回8ページ前後でこの長大なストーリーを進めた結果なのかはわかりませんが、このストーリーはセミ・ドキュメンタリー・タッチというべき形で書かれています。状況のみを見せるような短いシーンがめまぐるしく入れ替わり、そこに『Strontium Dog』(2000AD 2014年冬期参照)でも見られたWagner得意の手法と思われるニュース報道を挟み込み圧縮された膨大な情報で異様な迫力とサスペンス、リアリズムを産み出してゆきます。
作画は数人が交代で担当しますが、やはり特筆すべきはHenry Flintでしょう。物理的な重力さえ感じさせる重い線による迫力のある画がこの重いストーリーを実現させていると思います。「Day of Chaos」のラストでは、あのジャッジ・ドレッドがあまりの惨状を前に肩を落としうつむいて立ち尽くす、という胸を打つシーンが描かれます。

というわけでこの作品の本当の凄さがきちんと伝えられたのかは不安ですが、最近Judge Dreddを読み始めたものの度々言及されて引っかかってしまうという人には「Chaose Day」の内容をなんとなくわかってもらうぐらいには役に立ったのではないかなと思います。私的には一つわからなかったことを解明できたものの、PJ MaybeやDark Judgeというような宿題が増えてしまった感じではあります。まあその辺も頑張っていずれ解明して書いて行きたいと思います。勉強中のレポートぐらいに思って読んでもらえれば幸いです。
ちなみに「Day of Chaos」ではもう一冊Chaos Day以後を描いた『Day of Chaos:Fallout』が今年TPB版で出版されています。一部の作品を2000AD誌上で読んでいたりすることもあってまだ未読なのですがいずれそちらも読んで「Day of Chaos」を補完するつもりです。


今回は少し長かったこともあるのですが、先週は少し仕事が忙しく週末へこたれて2日ほとんど寝込んでしまって休んでしまいました。これから年末にかけてはやはり世間並みに少し忙しくなったりもするのですが、なんとか気合いを入れて頑張って行く所存でありますので、よろしくお願いします。あっ、12月の初めは法事があるので多分休みます。(何の連絡事項だか…。)     

●Judge Dredd/Day of Chaos


'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2014年10月19日日曜日

The Wheelman - ケイパー小説の傑作! -

Wheelmanとは銀行強盗の逃走車の運転手の事である。Lennonはその道のプロだ。彼が今座っている車の前の銀行では時間をかけて綿密に計画した強盗が進行中だ。

警報が鳴り響く。何かが上手くいかなかったようだ。仲間たちが出口に向かって突進して来るが、ガラスのドアに阻まれる。

Lennonは車を回す。この建物のガラスは防弾だ。銃を撃っても脱出できない。車は柱のないガラスの広い部分へ向かう。そう、このガラスは防弾だ。だが向かって来るのが車なら?

ガラスを突き破り、脱出路を作り、仲間と金を回収。大丈夫だ。問題ない。車は逃走路に向かう。だがその進路にベビーカーを押した母親が通りかかる。避けるのは不可能だ。どうする?母親か?ベビーカーか?

問題はあったが、追手を振り切り、車は計画通り駐車場に滑り込む。駐車してあった車に金を移し、三人はスーツに着替える。そして更に別の車に乗り換え空港に向かう。収穫の65万ドルは駐車場の車の中だ。三人はこのまま空港からそれぞれ別にバカンスへ。そして、ほとぼりが冷めたころ回収に来る。その時、突如横道から現れた黒いヴァンが彼らの車にクラッシュする!鋼鉄で補強されたバンパー。彼らの車は6回以上横転する。Lennonは自らの服が焼ける匂いの中、意識を失う…。


えーと、この本の翻訳は出ていませんよね。読み始めてから気になってずいぶん調べてみたのだけど。私がこの作者の名前の正しい読み方をいまだに把握していなくて探し出せないのではなく、やはりこの本が翻訳されていないとしたら、これは問題だ!そのくらいこの本はバカ面白いのだ!

このストーリーの印象を簡単に言うなら、リチャード・スターク+エルモア・レナード!おいおい、それは足せないだろう、と仰る人もいるかもしれません。その通り、通常は足せません。これは例えて言うなら戦車+戦車です。飛行機に戦車は足せる。戦艦にも戦車は足せる。ティラノサウルスにだって足せるかもしれない。だが、戦車に戦車は足せない。出来上がるのはどちらかの戦車をベースに残りの戦車の機能を加えパワーアップしただけのもので、それは直接的に戦車+戦車にはならないからです。でもこの作品はその不可能事を見事に成立させています。サイズがでかすぎるなら2で割ってもいい。だがこれは確実に戦車戦車なのだ!

Duane Swierczynskiの優れている点を挙げるなら、構成が巧みで文章の切れが良くキャラクターに魅力があるところ…って、それって小説家として優れてるってだけであまり説明になってないじゃん!というわけで、この作品でどれかを挙げるとすれば、私的にはその構成の卓越した上手さです。とにかくスピーディーにそこら中で二転三転するストーリー。こうかと思わせて実はこう、と思ったらそれをまたひっくり返し、という展開で最後まで、それこそゴッサム名物バットマン焼きのマントの先まで餡子が詰まっているぐらい。(そんなの見たことないけど)うーん、『Bloodshot』面白いわけだよねえ、と唸ってしまう。

ただし、この作品の主人公は犯罪者で悪党です。モラル的に問題がある事態に直面した時、必然的にモラル的に問題のある行動に出ます。そして、この作者は読者がキャラクターに感情移入しやすいようにそういう場面を都合よく回避するようなことをしないだけでなく、それを拒否するようにあえてそういう場面を加えたりもします。フィクション上でもそういう行動を不快に思う方にはあまりお勧めできません。また、逆にキャラクターに肩入れしすぎて、「○○が○○○してしまったのが嫌だった」などという感想を持ってしまう方にも。この作品の主人公、登場人物の多くは悪党なので、その末路にどんな運命が待っていてもそれは必然というものです。

そしてストーリーは、退職悪徳刑事、地元老舗マフィア、新興ロシアマフィアなどクセのある人物が次々と登場し、もつれ絡み合いながら突進していきます。最後に生き残るのは?そして65万ドルを手にするのは誰なのか?


……などと、また大騒ぎして今、作者の経歴を確認しようとして検索したら普通に読み方もわかったよ…。ドゥエイン・スゥイアジンスキーだって…。なんだろう、前ずいぶん探しても見つからなかったのに。グーグルの陰謀か?しかも翻訳が2冊も出ています。『メアリー・ケイト』と『解雇手当』。おかしいなあ、早川の新刊は常に全部チェックしているはずなのに…。ただちに注文したので届き次第読んでみますが…。うむむ、それにしても翻訳が他にあるなら読んでから別の書き方をしたのに…。俺がバカだから悪いのか…。ぐすん。
というわけで最後に思いっきりテンションが下がってしまいましたが、前2作の評価は分かりませんが、この作品は紛れもなく傑作です!別に未訳で読む人が少ないから下駄を履かせているわけではありません。こういうものをバカみたいに読んでる馬鹿者の言うことです。(ハイ、ちゃんと検索できなかった馬鹿者です。しょぼん)しかし、まだ前のは読んでないけどちょっとジェイソン・スターと同様に売る方向を間違えている気がするのだが。前の翻訳から5年経っていて、どうも紹介がストップしているようですが、この作品は紛れもなく傑作で翻訳が出ないのはもったいないですよ。ほんっとに面白いんだからねー!むー 

と、まあ相変わらず情報の詰めが甘くて済みません。しかし、自分的に見ると、むしろ若干微妙な香りのする翻訳2作に気付かず、彼の真の傑作『The Wheelman』を読めたことは結果的に良かったのかもしれません。もしこの2作が微妙だったらそこでドゥエイン・スゥイアジンスキー(翻訳あるならちゃんと日本語で書くよっ)という作家を判断していたかもしれませんから。これもきっとグーグル神のお導きなのかもしれませんね。とにかく着いたらすぐ読もうっと。
コミック方面でのドゥエイン・スゥイアジンスキーの『Bloodshot』以外の仕事としては、マーベルでは『Cable』、『Immortal Iron Fist』、『Punisher』やデッドプール関連の作品など。DCでは『Birds of Prey』。他にIDWの『Judge Dredd』、Darkhorseの『X』などがあります。他にも日本では翻訳の止まってしまっている優れた犯罪小説系の作家がコミックのライターに進出しているケースはあって、『拳銃猿』のヴィクター・ギシュラーは『デッドプール』が日本でも翻訳が出ましたね。その他に『あんな上司は死ねばいい』、『嘘つき男は地獄に堕ちろ』の書店でとても手に取る気の起きないひどい邦題でおなじみのジェイソン・スターもマーベル系MAXで『Wloverine Max』などを手掛けています。グレッグ・ルッカは小説でもコミックでも活躍中。最近はOni Press『Stumptown』などのオリジナル作がメインのようです。

なんだか妙にテンションが高かったりへこんだりでお騒がせしましたが、まあこの手の失敗にはへこたれず今後も続けて行くつもりですのでまたよろしく。オフィシャルブログの方は1年以上前に終わっているものですが過去のものでも色々と興味深いのでリンクを張っておきました。リストの方は邦訳作が原題が分かりにくいかもしれないので、一応下に記しておきます。

メアリー・ケイト 原題:The Blonde
解雇手当 原題:Severance Package


ドゥエイン・スゥイアジンスキー オフィシャルブログ      

●ドゥエイン・スゥイアジンスキーの著作



●The Charlie Hardie trilogy


'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。