2017年12月3日日曜日

グレッグ・ルッカ Queen & Countryシリーズ -第3回

またしてもずいぶん遅れてしまいましたが、グレッグ・ルッカ Queen & Countryの第3回です。なんだよ前回やってから1年過ぎてるじゃん。トホホ…。ここのところ度重なる遅れで月一ペースに落ちてしまっているのですが、今回こんなに遅れたのは他にも少し言い訳があります。って、前の見たらそっちもこんな感じで言い訳してるじゃん!しょーがねえなあ…。まあそんなこんなの言い訳は後ほどということにして、とにかくまずは進めるであります。Queen & Countryの第3回です。

今回はThe Definitive Edition Vol.3に収録の作品。間に翻訳のある小説版『A Gentleman's Game』(邦題『天使は容赦なく殺す』)を挟み、コミック版Queen & Countryのタラ・チェイスのストーリーはこれで終わりとなります。

●Operation: Saddlebags 作画:Steve Rolston/Mike Norton

ここで"Operation"に属さないSteve Rolston画によるストーリーが1号挟まれ、その後Mike Norton画による「Operation: Saddlebags」が始まります。単行本ではこの「Operation: Saddlebags」に収録され、「Prologue」とタイトルが付けられています。
これまでのストーリーでは、マインダー3キタリングの死亡後、候補生も最初の作戦で死亡し、SIS特務課はしばらくトム・ウォレス、チェイスの2人体制でしたが、SASの元軍人ニック・プールがマインダー3として加わり、やっと本来の3人体制に戻ります。しかし、ウォレスは特務課を引退し、指導官の職に就くつもりであることを表明している、というところから話は続きます。

[Prologue]:帰宅後、届いていた郵便を見たチェイスは、特務課に休暇届を出し、バイクで母親の住むスイスへと向かう。母親の住む大邸宅では放蕩な若い男女がたむろし、乱痴気騒ぎを繰り広げていた。そんな中、母親と会ったチェイスは、彼女がスイスで出会った若い男性と結婚するつもりであることを告げられる。
チェイスがイギリス富裕層の出身であることは、第2回のThe Definitive Edition Vol.2収録のOperation Blackwallで学生時代の友人Rachelとのエピソードで少し語られています。両親は離婚しており、まだ登場していない父親は実業家らしい。常に会話の中からの断片的な情報なので、もしかして読み間違えや見落としがあったらごめん。少し自信が無くなってきたり…。母親との確執は解消はされないものの、お互いへの愛情から曖昧な和解をみてチェイスはロンドンへ戻る。SIS本部へ出勤したチェイスを待っていたのは、マインダー1への昇進だった。別れを告げることもなく特務課を去ったウォレスに、チェイスは涙する。

家族との関係という形で、チェイスの一面が描かれるワンショット。作画Steve RolstonはQueen & Country最初のストーリー「Operation : Broken Ground」を描いた人。この人についてはちょっと後ほど。

[Operation: Saddlebags]:チェイスがマインダー1となった特務課に新たにクリス・ランクフォードがマインダー3として配属される。そんな中、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクに政府の高官McMillanが極秘裏に滞在していることが現地の駐在員から報告される。国益に反する何らかの不正取引が進行していると察せられるが、C:フランシス・バークリーからは慎重に動くよう指示が下る。相手の政治的立場から、確実な証拠を掴まない限り糾弾は不可能だ。しかし、現地駐在員の監視が察知され、身動きが取れなくなり、特務課からマインダーの派遣が決定される。本部長ポール・クロッカーは、不穏なイラク情勢を鑑み、プールを本部に待機させ、チェイスを新人ランクフォードとともにサンクトペテルブルクへ向かわせる。現地に着いた2人はMcMillanの滞在するホテルへ向かい、彼が外出した隙を窺いチェイスが部屋に侵入し、捜索を始める。ところが、McMillanは客を迎えに出ただけですぐにエレベーターに乗り、部屋に戻ってしまう。外で見張っていたランクフォードはチェイスに連絡を試みるが、応答はなく、捜索中のチェイスは彼らと鉢合わせしてしまうことになる…。
チェイスはMcMillanのラップトップを奪い辛くも脱出するが、決定的な証拠はつかめず、取引自体は破綻させたがMcMillanを糾弾することはできず、作戦は失敗に終わる。だが、クロッカーはランクフォードをそのままマインダー3として遺留、そしてチェイスに今回の失敗はお前の責任だと告げ、語った言葉はチェイスを打ちのめす。普通の人である私とかが普通に読むと、不慣れなランクフォードによる失敗として読んでしまうのだけど、クロッカーがチェイスにあの時お前はこうするべきだったと語る言葉は、プロフェッショナルの厳しさ、非情さを改めて突き付ける。さすがルッカ先生!

作画Mike Nortonは、以前に書いたImage Comicsの『Revival』のアーティストで、Webコミック『Battlepug』でも有名な人。画力についても何の問題もないのだけど、ちょっと引っかかるところがあり、この間2000ADの『Kingdom』Richard Elsonのことを書いた後に改めて見てやっと気付いた。この人もElson同様線を前に出してカラーを使うタイプの画で、Queen & Country通例の白黒画では少し線が強すぎるのだ。この人も日本のマンガと共通するタイプのタッチで、と言ってもその説明も少し雑かと気付いたのでもう少し詳しく言うと、海外から見た日本のマンガと言ってイメージされる日本のアニメーション的な画ではなく、人物のプロポーションなどはリアルなのだけど写実的というよりはもっと線が整理された感じで、例えば北条司あたりをイメージしてもらうとよいかと。で、その画でカラー前提の強すぎる線を使ってしまっているので、全体的に色がなく白いという印象が強くなってしまうのである。実際に画は大変上手い人なので、ちょっとその辺が残念だったかも。まあこのくらいの腕の人なら印刷されてきたのを見て自分でも気づいて次に白黒でやる時は何か考えてくるところなのだろうけどね。以前から言ってるように、結局は物事を自分の考えに都合のいいような型にはめ込むような動き方をしてしまいがちな「論」みたいなものを形作ることは私の嫌うところなのだけど、それでもやっぱり一つの傾向みたいなものを考え方の基準にすることが役に立つときもあるわけですね。まあそれが絶対的なものではないと常に自分に戒めなければならんのだけど。ちょっとNorton氏の画の話からは外れてしまうのだけど、最近アメリカのコミックで基本的にはかなりの画力のリアルな画を白黒2階調のコントラストを強めにしたタッチで仕上げカラーを乗せるというタイプの画をよく見かけるようになっていて、例えばこのルッカの『Lazarus』を描いているMichael Larkとかもそうなのだけど、とかくまあまずいい画だよね、と見とれてしまうのだけど、この辺も一つの傾向的な見方で考えるともう少し流れみたいなものが見えてくるのかもしれないな、というようなことも考えているのですよね。まあその辺についてはいずれもう少し例を並べられるようになってから考えるです。で、もう最後に近くなったところで初めて知ったのだけど、このQueen & Countryはアーティストを公募のような形で集めたそうで、実はNortonはそれに一番乗りで手を挙げたらしいのですが、スケジュールの都合で実際に作品を手掛けるのはこの最後に近いところになってしまったそうです。このThe Definitive Edition Vol.3には巻末にその時のNortonのスケッチが掲載されていて、そこにはこの回にはもう出てこないキタリングの画なんかもあります。

●A Gentleman's Game(邦題『天使は容赦なく殺す』)

そしてここで唯一翻訳のある小説版第1作『A Gentleman's Game』の登場となります。あっ、今更で悪いんですがこの作品に関しては完全にネタバレしちまいます。そうでないと話がつながらないもので。未読の方はご注意を。
ロンドンでイスラム系組織によるテロ事件が勃発する。その応酬にチェイスはイエメンに派遣され、潜伏していたテログループの要人をモスクで暗殺する。しかし、その場に居合わせたテロ組織を支援するサウジアラビア王族の人物をも殺害せざるを得なくなる。結果、作戦そのものは成功するも、チェイスは政治的に危険な立場に追い込まれる。サウジ国内のテロリストキャンプの対策を交渉中のアメリカ。王族殺害の犯人を求めるサウジ。そして政治的にチェイスのサウジへの引き渡しが決定される。立場上決定には従わざるを得ないクロッカーは、極秘裏にマインダー2,3に援護させ、チェイスを逃亡させる。お前が生き残る手段は、渦中のテロリストキャンプそのものを消滅させる以外にない。孤立無援となったチェイスは、教官となっていたウォレスに救援を求め、2人はイギリスを脱出する。エジプトに到着した彼らはモサドの接触を受ける。利害の一致するモサドから非公式の援助を受け、チェイスとウォレスはサウジに潜入、テロリストキャンプを襲撃する。襲撃は成功しキャンプは殲滅される。しかし、その時帰還したグループのメンバーの銃弾を受け、ウォレスは斃れる…。

日本では「キャラクターや設定を使った」ぐらいの雑な紹介のされ方で翻訳された本作ですが、繰り返し言うようにこれは完全にコミック版に連続して書かれた作品で、ここまでに主人公タラ・チェイスがどのくらいのものを背負い、そして失っていったか少しでも伝われば幸いです。しかしケレン味とか書いてあるけどいまいちピンとこないけどねえ。前回に書いたように、この時点でこの作品をもう一度読み返してみました。とりあえず確認のためにざっと読むぐらいのつもりだったけど、かなりがっつり読んでしまった、というか読まされたよ。話を忘れるほど前に読んでから時間がたっていたわけではないけど、それでもキャラクターなど色々なことがその前からの流れでわかっていると、ちょっと違う没入感で再読出来ました。やっぱりこの作品、単体で読むにはキャラクター、設定などの物量が少し多すぎたのだと思う。プールやランクフォードなんてあのくらいの登場では人となりを把握するのはかなり困難だしね。実際のところ、本国アメリカでもどのくらいの人がコミック版から繋いでこの作品を読んだのかはわからない。まあアメリカではコミックなんて読むのは子供だけなのでほとんどの人は読んでないってことにしたい人は勝手にそう言ってれば。少なくとも私はこれをルッカの意図した形できちんとつなげて読めて本当に良かったし、そうする価値のあったシリーズ・作品だと思っています。
21世紀のジェームズ・ボンドは…などというカビの生えた講釈をしてくれなくても、我々はその後のル・カレを始めとするすぐれた作品を数多く読んできているし、現実の世界の動きも見ているのだ。国際政治の裏側で動くのが正義や悪などという単純な概念ではないばかりか、敵味方という区別すら曖昧なものであることぐらいわかっている。あっ、念のために言っておくが私はイアン・フレミングにカビが生えてるなどという意見は一切持っていない。21世紀の偏屈者は決まり文句で話をまとめようとするやつがなんか嫌いなのだ。そしてその自国をも含む各国の「国益」の軋轢の中、チェイスは犠牲として差し出されることになる。この『A Gentleman's Game』のストーリーはコミック版Queen & Countryの最初のストーリー「Operation : Broken Ground」に呼応している。そちらでは同様にチェイスが作戦行動により実行した暗殺の結果、彼女個人が報復の対象となり、イギリス国内において各省庁の権限争いの末、チェイスは武器を持つことも禁じられたまま、囮として使われることとなる。そして今回は同じ形で、更に大きな力同士の中の軋轢にさらされるのである。そこから抜け出すためにチェイスの行った行為は、やはり一つの虐殺としか言いようのない行動であり、その結果としてシリーズの中でも最大の犠牲が支払われることとなる。ルッカは主人公に単純な「正義」の立場を与えないばかりでなく、敵をも同様の単純な「悪」として読ませることを許さない。トム・ウォレスに死をもたらす銃弾は、物語の序盤から用意されており、そして遂にその銃弾が放たれた時、その敵は既に物語を通じて見知ったその痛みをも理解できる人物となっていて、決して物語の最後に報復を受けることを読者の誰もが待ち望む凶悪な悪意でも、顔の見えない抽象的な敵意ですらもないのだ。一見、大きな国同士の意志に翻弄される無力な個人の悲劇という定型の物語に見えるが、ルッカの描こうとするところはそこではない。この世界の憎悪/怒り/矛盾を何か運動エネルギーや運命のように曖昧化することなく、具体的で手を触れ感じられるような人間の痛みとして集約させることである。ま、国際謀略小説を読んで遥かな高みから国際間の動きを見下ろしエグゼクティブ気分にでもなってるスケール小さいクレーマーみたいな連中にはルッカは向いてないんじゃねーの?はあ?いろんな国が出てきて楽しかったすか?そりゃよかったねえ。そして、主人公チェイスは、とにかく目下の問題は解決したことに胸をなでおろすこともできず、また虐殺の惨状を見下ろし自分をここに追い込んだ世界の矛盾に怒りを燃やすエクスキューズも与えられず、はたまたそこで自分の人生を悲劇の一部として終わらすことすら許されず、ただあまりにも深い傷と重荷を負わされたまま生き続けなければならない。この世界がそうであると同じように。
まだ物語の途上であるし、この時点でそういうことを言うとどっかのピーク先生みたいに自説を組み立てるためにシリーズを形にはめる方向になってしまいそうな気もするのだけど、あくまでこの時点の私の感想の一部として言わせてもらえば、このトム・ウォレスの死によって終わる『A Gentleman's Game』はコミック版から続いたQueen & Countryの一つの区切りであり、第1部終了というところではないかと思う。そして同時に、前述のようにこのストーリーがコミック版の最初にストーリーとシンクロしていることからも明らかなように、新たなQueen & Countryの始まりの物語でもあるのだ。とかちょいと言ってみたものの、そこは私なんぞのはるかに上をいくルッカ先生である。チンケな「自説」なんぞ木っ端微塵に打ち砕かれ、前回はすみませんでした…ってことになるのでは、という予感もある。まあそうなればそうなったときのことで、恥をかく「覚悟」なんてマイナス思考のものではなく、前向きな「期待」をもってこの先も進んで行きたい。このタラ・チェイスの傷だらけの闘い、見届けずにはおれるものか!あっ、まだ続きあるのになんかまとめちまったよ。まあ、現時点での私の「第1部終了説」の一部ってことで。

●Operation Red Panda 作画:Chris Samnee

というわけで、ここでコミック版Queen & Country最終章にして、第2部序章でもある(と現時点では考える)「Operation Red Panda」です。こちらは全編Chris Samneeによる作画になるのですが、「Operation: Saddlebags」同様に最初の1号が[Prologue]と題され、その後[Operation Red Panda]全3話が続きます。

[Prologue]:チェイはイギリスへと帰国する。季節外れのTシャツ姿で荷物も持たず空港に現れた彼女をクロッカーが迎える。チェイスは情報部の施設へと連行され、尋問、医師の診断を受けた後、監視状態でそこに留め置かれる。ウォレスの死の記憶に苛まれながら酒浸りになるチェイス。だが、クロッカーは彼女がその任務を果たせなかった場合は、上層部の望む人物をマインダー1の地位に差し替えることを条件に強引にチェイスを特務課に復帰させる…。

[Operation Red Panda]:戦後イラクの新政権の要人の一人がイランに機密情報を流しているらしいと掴んだCIAだったが、その人物には以前からDIAの息がかかっており、CIAが動くことはできない。そしてアンジェラ・チェンからクロッカーに依頼が来る。その人物の暗殺と確実な証拠の確保。クロッカーは、復帰したばかりのマインダー1チェイスとマインダー2プールを上層部には別件を装いイラクに派遣する。記者を装ったチェイスが要人の邸宅に入り込み証拠を探索し、その間にプールが路上に仕掛けた爆弾で要人を暗殺。作戦は無事に成功を収める。しかし、帰国直前に彼女らの正体も知らない犯罪組織に捕まり、身代金目当ての人質とされてしまう。虚脱したように黙り込むチェイスを前に、プールは脱出計画を練ることもできない。現地にランクフォードが送られ、捜索を試みるが、二人の居所は掴めない。しかし、もはや最期と思われた時、チェイスが目の前の男の腰の山刀を奪い取り、狂気のように敵に襲い掛かり、命乞いをする男をも射殺する…。

イギリスに戻ったチェイスは髪を切っているのだけど、『A Gentleman's Game』にその記述はなかったと思うので、サウジでの作戦後、帰国する前のことか。この最終話では、チェイスが悪夢に襲われるような回想という形でウォレスの死の場面が繰り返し描かれるのだけど、その一方でチェイスの内面は少し人格が変わってしまったようにうかがい知ることができない。最終的な反撃もすきを窺っていたのか、衝動的な行動なのかも定かではない。作画のChris Samneeはかなり画も上手い人なので、おそらくはルッカの細かい指示に忠実にその意図通り描かれたれたものなのだろう。CIAが動けずクロッカーに非公式に頼んでくるというのは、やはり第2部開始に際し、最初の「Operation : Broken Ground」のチェイスの暗殺作戦の背景とシンクロしている、とこじつけておこう。チェイス復帰の条件の上層部の希望するマインダー1候補はおそらく次に続く伏線かと。最後にチェイスに関するある重要な情報が明らかにされるけど、それは多分今後の展開の核となって行くところと思うので、小説版第2作の時までとっときます。
作画Chris Samneeは現在はマーベルDCで活躍し、あちこちで受賞歴やノミネート歴もある人だけど、これを描いた時点では出世作となる、『冷血』直前のトルーマン・カポーティを描いた『Capote In Kansas』(ライター:Ande Parks)をOni Pressから出したところで、それ以前は色々な職を転々として結構苦労してコミックへの道に進んだ人らしい。『Capote In Kansas』も白黒の作品で、白と線・ベタの黒のコントラストを強調した画風。単に影だけの表現を越えたベタの使い方が本当に素晴らしい。[Prologue]冒頭、明るい空港から外に踏み出すと冷たく暗い雨の降りしきる夜のロンドンの路上、と一切のセリフ文字情報なしで平和ともいえる日常風景と彼らのいる世界とを対比して見せる流れは見事。異物感はあってもなんとなくその中で守られてる雰囲気から一気に切り離される感じ。実写でも相当腕が良くないとこれ出来ないよ。あえて内面を見せないチェイスの「感情」も巧みに描き出しています。

というわけで、コミック版最終話「Operation Red Panda」は、『A Gentleman's Game』後のチェイスのSIS特務課復帰を描くストーリーだったわけですが、ここでご覧の通り、この『Queen & Country』コミック版単体ではきちんとした完結は描かれず、明らかに小説版第2作『Private Wars』に続く、という形で終わっています。続きは小説を読んでね!ってとこなのだが、実はグレッグ・ルッカがコミック版から小説版へと続くシリーズを作ったのは日本のメディアミックス亡者が考えるような理由だけではない!それについては続く最後のパートで考察して参ろうではないか!

●Queen & Country Scriptbook

で、この「Queen & Country Scriptbook」となるのだが、こちら一応単体プリント版で出版されたようだけど、Comixologyなど電子書籍版は出ていないようです。こちらはコミック版の第1シリーズ「Operation : Broken Ground」全4号のルッカのシナリオを全て収録したもの。で、ここからが言い訳になるのだけど、実は今回のコミック版本編と、一緒にやろうと思ってた次回のアレは確か5月ぐらいに読み終わっていたのだけど、まあこちらをコミック版と照らし合わせながら読むというのに途方もなく時間がかかってしまったわけなのでした…。最初は無計画に、帰宅後のコミックを読む時間の枠の中で1ページ分読んだり読まなかったり、みたいな感じだったのだけど、あんまり埒が明かないので毎日2~3ページずつノルマにして、最終的には結構集中して8月ぐらいにやっと読み終わったのだけど、そこから2000ADやらまたしても無計画の結果やらでここまで遅れてしまったという次第です。申し訳ない…。あんまり時間がかかるので、とりあえず第1号の分を読んだあたりでルッカのコミックのシナリオの作り方は見えてきた感じだしあとはいいか、と一旦は思ったりもしたのだけど、後に書かれたキャプションに作品作りのあれこれや、キャラクターについての考えなど色々と興味深いことも書かれていたので、やっぱり頑張って全部読んでみたわけなのでした。
ではまずはそのキャプションからキャラクターがらみのネタをいくつか拾っていってみましょう。まず序盤のチェイスが狙撃のために廃墟のビルに待機しているときのモノローグ。「前にこんな寒い思いをしたのは南極点に派遣された時だった…。」というのがあって、実はルッカは当初はこのQueen & Countryを映画化もされた『Whiteout』の主人公リリー・シャープでやるつもりだったそうで、これはそのつもりで書いてたシナリオから残ってしまったものだそうです。実は私、この映画もコミック版を読んでからと思ってまだ観てないのだけど…、あっちもこっちもなかなか進まんなあ…。そして、そこから新たに作られたタラ・チェイスなのですが、実はこの名前はルッカのハイスクール時代のガールフレンド(恋人関係というところまではいかなかったらしい)で、一緒にこのシリーズをインスパイアされたというイギリスのTVシリーズ『The Sandbaggers』とかを観てた人からいただいたものだそうです。現実のタラ・チェイスさんは現在はシアトル在住で通訳として活躍されている才女ということです。そして、第2号の結構後半あたりでクロッカーが秘書のケイトに「アメリカ大使館に電話して、フランクに昼は空いているか聞いてくれ。」というようなことを頼む場面があるのですが、実はこの時点ではCIAのロンドン支局長をそういう名前の男性にすることを漠然と考えていたのだけど、後におなじみになる中国系アメリカ女性アンジェラ・チェンに変えたということ。ちなみにアンジェラ・チェンというのはルッカの作品の映像方面を担当するエージェントの名前らしい。とりあえずキャラクター方面のわかりやすいところではそんなところか。あとは戦闘、アクション方面をサポートしてくれる人から教わった色々な考えとか、色々と面白いことが結構沢山書き込まれています。

そしてルッカのコミックのシナリオのスタイルなのですが、まず大雑把に言うと、コマ/パネルそれぞれに情景とセリフ、モノローグなどを記述して行くもの。ちょっとこれがコミックの一般的なシナリオのスタイルなのか不明なのですが、こういうコマごとの指定が続くという形は、例えば今読んでるこっちは既にコミックの形を見ているからすぐにわかるけど、全くイメージなしで渡されたアーティストの立場だと全体が掴みにくいのではないかとも思ったりするけど。口頭や短い文章とかの形で大まかなあらすじとか事前に説明するのかな?そしてルッカのそのコマごとの記述はかなり綿密で、ボンド映画のアレみたいな具体的な例を示した説明もあったり、カメラアングルも細かく指摘してあったりします。そういう時ルッカの頭の中にあったのは映画のワンカットのような映像なのでしょうか。これを読んでみて、グレッグ・ルッカというのはかなり画的なことも考えて話を作れる、コミックのライターとしても優れた作家なのだな、と確認できたのでした。ただし、このくらい細かく説明されしまうと、もしかするとあまりシナリオのある作品の経験がないアーティストだと、それを再現することに集中してしまい、全体的に見ると少し説明的で勢いの弱い画を作ってしまうことになるのかもしれないな、と中のいくつかの作品を思い出しながら思ったりもしました。ある程度慣れたアーティストならそこのところは考えながら描けるのだろうけど。そして前述のキャプションの中にもルッカのコミックを作る上での考えも書かれていて、コミックというのは絵で表現されているものなのだからあまり文字表現の方に頼るべきではないとし、序盤モノローグを使いすぎたのではないか、と反省したりしています。

そしてこの「Operation : Broken Ground」を描いたのが今回の「Operation: Saddlebags」のプロローグも手掛けたSteve Rolston。以前雑にやっちゃったので少し経歴など足すと、カナダのアーティストで、アニメーションのストーリーボードの仕事から転身し、コミックのアーティストになった人だそうです。で、やっぱり個人的にはこの人の画あんまり好きになれなくて、それはチェイスがあんまり美人に見えないとか、服を着てるときの方がオッパイが垂れて見えるとかいう些末なことではなく、どうもこの人ページ全体を考えたメリハリのある画面作りとかができなくて、曖昧なミドルショットの人物が並ぶようなコマをダラダラっと続けちゃうようなところなのですが。今回また改めて照らし合わせていた時も、特に中間の会話シーンが続くあたりではうーんと思うところも多かったり。ただね、主人公のタラ・チェイスというキャラクターに絞って考えるとそこはちょっと事情が違うような気がする。今回の画のない小説版『A Gentleman's Game』を読み返していた時のことなのだけど、それは私に限ったことかもしれないが、例えばこのRolston画によるちょっとむくんだような顔でうつむき加減で憂鬱に何か考え込むようなチェイスが頭に浮かんだようなシーンがいくつもあったりする。何かはうまくは言えないのだけど、この人だけが描けた一般的な評価では他のもっと絵が達者なアーティストが描きえなかったチェイスの内面というようなものがあるように思える。それは前述のキャプションの内容にもあるように、最初はかなりあいまいだったチェイスのキャラクターをルッカがこの人の画とともに作り上げたからかもしれない。でもそれがあることは確実で、それゆえにルッカは家族というプライベートな形でチェイスの内面が描かれる「Operation: Saddlebags」のプロローグにもう一度この人を起用したのではないか。
そこでちょっと改めてこれまでのシリーズ作品をタラ・チェイスというキャラクターだけに絞ってどう描かれていたか考えてみる。すると、個人的には一番印象に残っているのは『The Definitive Edition Vol.2』収録の全体的にはちょっと実力をうまく出し切れていないのではないかと感想を書いたCarla Speed McNeil描く「Operation Storm Front」の終盤、新人マインダー3候補を失い公式の応援もなく敵意の潜む地にただ一人残され、女性ならではの凶暴さをむき出しにして戦い続けるチェイスだったりする。そしてそこで気付くのである。奴の狙いはこれか!自分にはコミックのライターなどというような経験はないが、それでもシナリオがアーティストの手を経てコミックとして完成された時、そのシナリオを書いたライターは多少なりとも自分の意図したものとの違和感を感じるのだろうということは想像できる。人によってはそれを自分の考えたものがうまく表現されていないと考えるのだろうが、ルッカはそこを肯定的に考えるのだ。これはアーティストの手を通じてキャラクターに自分の意図しなかった要素が追加されたものだ、と。そして彼がこのコミック版『Queen & Country』で狙ったのは、そのアーティストからのフィードバックだったのだ。一人の人間が考えるキャラクターにはどうしても限界がある。しかし、このフィードバックを加えれば、自分が考えた以上の豊かなキャラクターを作り上げることができるはずだ。そしてルッカはより多くのフィードバックを得られるように、シリーズごとに交代するという形でより多くのアーティストを集める。出来上がった作品は単純に見ればずいぶんと画にばらつきがあるように見えるが、アーティストの背景をよく調べると、ウェブコミックを自作して出てきたなど、個性的なアーティストが多い。つまりルッカのアーティストを選んだ基準はデッサン力などの一般的なものではなく、自らも作家であるような強い個性を持ったアーティストで、そしてそこからより強いフィードバックを引き出すことだったのだ。そしてそのすべてのフィードバックを手に入れた後、単独作品である小説版を書く。これこそがコミック版から小説版へと連動する形でこの『Queen & Country』シリーズが作られた真相だったのである!…と大仰に語ってはみたものの、このくらいのことどっかでルッカ自身がインタビューとかで話してるのかもね。割と出たばかりの作品だったりするとウロウロしてるうちにそんなものも引っかかってくるものだけど、これ結構前の作品だし、自分もそこまでいろいろと探索していなかったりするのですよ。もしかするとウィキペディアとかにも書かれてたのかもしれないけど、ネタバレ怖くてあんまりじっくりと読んでないしね。まあそんなレベルなんで、これを自分の大発見のように威張るつもりは毛頭ないのだけど、とりあえず自分にはこれが真相であるとの絶対の確信があるし、自力でたどり着いたぐらいのことは誇ってもいいんじゃないですかねえ。どうっすか、ルッカ先生。
例えばこれが日本の作家が思いついたことだったとしたら、まずやってみるのはキャラクターだけ作ってあとは何人かの漫画家に全面的に任せて、その後に自分もそのキャラクターを主人公にした小説を書くということだろう。「日本の」と言ったのは別になんかの揶揄や悪意ではない(日頃の行儀が悪いのでそう思われがちだろうが…。)。これは実はアメリカのコミックでは日常的にやられていることだからである。つまりマーベルやDCなんかがそれ。そちらでの経験も多いルッカには、その方法では同じキャラクターを自分なりに解釈しただけの、また別の作品ができてしまうだけだということに気付いていたのだろう。だからこそルッカは、アメリカのオリジナルのシリーズとしてはそこそこロングランになる全32号に亘る『Queen & Country』のストーリーを全て自分で書き、自分自身でもキャラクターを育てながらそこからさらに拡げられるチェイスを始めとするキャラクターの可能性を探っていったのである。ルッカがそのキャリアのかなり初期から小説家とコミックのライターの2足の草鞋を履き続けてきた特殊な作家であることはこれの第1回で書いたと思う。これはそんな小説もコミックも深く理解したルッカだからこそ実行できたアイデアで、作品なのである。
しかし、こういう書き方をすると、まるでコミック版『Queen & Country』が小説としての完成品を作るための実験の場であったように聞こえてしまうかもしれないが、もちろんそんなことはない!まずそのストーリーにしても、このコミック版をそこまでの28号を呼んだ後改めて唯一の翻訳作品である『A Gentleman's Game』を読み返してみると、その結末の重さは全く違って見える。小説版第1作のみを読んだ時点では、これがシリーズとして続くのであれば主人公のタラ・チェイスはどういう形にせよ、元のSAS特務課という職に戻って行くのだろうと思えるのだが、コミック版の続きとして読んでみると、もはや帰る場所を完全に失ってしまったように見える。ここから話を進めるならば、これまでとは全く違った新しい話が語られなければならない。そんな印象が私にここまでが『Queen & Country』シリーズ第1部である、という現時点の意見を言わしめたのだ。つまりそれだけの重みのある、決して「キャラクターや設定を使った」だけの作品ではない、ということである。ここまでのストーリーがあってこその結末であり、そしてここから続けられるストーリーなのだ。そして、ライターのそのような意図によって(その内容自体は少なくとも事前には伝えられていないだろうが)集められた、その後の活躍も多い異色作家による競作というようなコミックにも意味がないわけがない。もう少し早くわかっていたならそのような読み方もできたのだが…。本当はちょっとその考えで読み返してみたいところなのだけど、あまりにも遅れてきた者ゆえに膨大な未読のルッカ作品が聳えていて、今のところは前に進むしかないのだが。どこかの時点でいつか再読して、うむむそうだったか、と一人納得してみたいもんすね。そして更に!今回の『A Gentleman's Game』は、発行時期とルッカの執筆ペースを考えると、おそらくはそれほどのフィードバックを取得し消化はし切れておらず、本格的にその成果が発揮されるのは次の作品からになると考える。そんなわけで、続く『Queen & Country』小説版第2作『Private Wars』に、期待は大いに高まるのでした。いやもう今読んでんの読み終わったらすぐに読むですよ!

そして続くグレッグ・ルッカ Queen & Countryシリーズ -第4回はDeclassifiedシリーズ3作を収録した『The Definitive Edition Vol.4』となります。実はこちらのコレクション、巻末にグレッグ・ルッカと数人のアーティストとの対談インタビューが掲載されていて、もしかしたら今回私が言っていたようなことか、もしくは私の考えが完全に勘違いであるかわかるようなことが書いてあるのかもしれないと思ったのだけど、なんかカンニングになりそうな気がして今んところは未読。次回にはその内容もご紹介します。そしてそのまま第5回『Private Wars』へと続く予定です。とりあえず次は、んまあ私自身が書くのが色々と甚だしく遅れてる以外には、あまり遅れる要素も見当たらないので、今度こそはなるべく早く登場の予定です。そして次回は、以前予告しました通り(えっと、確か予告したよね…)グレッグ・ルッカ小説作品現時点での最新作Jad Bellシリーズ第2作『Bravo』の登場となります!

えーっと、なんで今回こんな長くなっちまったんだろう…。喉元まで出かかっていた色んな方面への罵倒も長くなりすぎる要素としてずいぶん飲み込んだのですが。これでも。今回と次のJad Bellで2週ずつで行けると思ってたんだけど…。もう12月じゃん。にゃんかもう話がやたら長くなるのはとどめようがないようなんですが、何とか少しでも多くの作品を紹介できるようにちょっと考慮中です。とりあえず考えてみてはいます…。また12月ともなりますと法事なんかもあったりするのですが、次回Jad Bellなるべく早くまあクリスマス前を目標に頑張るであります。ホッホッホッ、暴力読書サンタからのクリスマスプレゼントじゃよ。そんなのいらねえよ…。


【その他おしらせの類】
いつもはコミックの方ではやらないのだけど、今回は小説の方しか読まない人も読んでくれてると思うし、早く伝えなければと思うので一つだけ。
おい!マルホの本のKindle版日本からも買えるようになってるじゃん!いつからだよ?つーわけでなんだかぼんやりして気付かないでいるうちに、ことあるごとに日本からKindle版が買えねえ、と苦情を言ってなんかもうそれが当たり前みたいな気分になっていたMulholland BooksのKindle版が日本からも買えるようになっていました!これは一大事だよ!まず次回予定のルッカのJad Bellシリーズ2作も日本からも簡単に購入可能!そしてあの一昨年私が時々持ち出して来る読書スケジュールなるものを粉微塵に砕き、私としてはかなりの短期間に全作をひたすら読み続けさせた驚異の大傑作ドゥエイン・スウィアジンスキーのCharlie Hardie三部作がなんと600円台で今すぐ読み始められるのですよ!あっ、この三部作に関しては成り行き上かなり重要な秘密をばらしているので(ストーリー上のネタバレではない)そっちの私のブログの方も未読の人は絶対に読まないようにね。スウィアジンスキーのその後の作品『Canary』『Revolver』も買えます。その他にもダニエル・ウッドレルの『The Bayou Trilogy』や、大御所ランズデールのハプレナシリーズ、Malcolm Mackayのグラスゴー三部作(ああ、早く読まねば…)など、ほら、みんな読みたかったやつだろう!オレもだよ!ああ、Charlie Hardie三部作Kindle版も買っちゃおうかな。あっ、忘れてた!昨年翻訳された犯罪小説の大傑作クリス・ホルム『殺し屋を殺せ』のマイクル・ヘンドリクス第2作『RED RIGHT HAND』も!どーせ翻訳出す気ないんだろうし早く続き読みたいのでそろそろこれ買おうと思って気付いたのだった。来年には必ず読んで書くよー!以上です。



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●Queen & Countryシリーズ
○コミック版

■The Definitive Edition(TPB)


■Kindle版



○小説版




●日本からも買えるぞ!Mulholland Books Kindle版!







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2017年11月2日木曜日

今回は色々

ちょっと前にぼやいてたのだけど、どうもここんところ割と有名どころに偏ってしまってる感じで、まあ最近上げるペースが遅くなってるというのも原因なのだけど、そんなわけで今回はあんまり有名じゃないどころだったりもするのだけど、気になってるのをいくつか読んでまとめて紹介することにしました。とりあえずは読んだ順番で特に並びに意味はありません。気取ったヌケ作が誰かの猿真似で、不可能犯罪でも国際的陰謀でもないので「よくある話」とかレッテルを貼ってみせる類いの、イカスチープな犯罪ストーリーが目白押しですぞ。

■The Black-Hearted Beat: Book 1/Jason Michel

まず最初に登場は、以前英国犯罪小説アンソロジー『True Brit Grit』で紹介しました(True Brit Grit -最新英国犯罪小説アンソロジー- 第3回)ウェブジンPulp Metal Magazineの主催者Jason Michelの作品です。

○あらすじ
子供の頃、俺の左目数センチメートルのところを銃弾がかすめた。
こんな話をするのは、別に同情やら驚きを求めてるとかいうわけじゃない。単なる自己紹介さ。あんたにこの話をしているのがどういうやつか知っておいてもらいたいだけのことだ。
その日、俺の頭をそれた銃弾は俺の耳の上を削り取って行った。もちろん、耳はまた生えてきたりはしていないさ。
そしてこのどん底の吹き溜まりで俺の周りを囲んだ奴らはわめきたてる。早く引き金を引きやがれ。

俺は死んだ男だ。空っぽの薬莢。遠く離れたどこかの村で銃弾を放った後の。

そして俺は頭に押し当てた銃の引き金を引き、そしてハンマーが空の薬室をたたく音を聞く。

俺の向かいに座っている男は時間を無駄にせず、ただちに引き金を引いた。閃光。銃声。そしてダーク・レッド。俺は飛び散った奴の脳髄を頬に感じる。

目の前の金をかき集めながら、束の間、世界は何故俺をこんなに長く生かしているのか、と考える。

そして俺は取り囲んだ人込みをかき分け、Brysonが近づいてくるのに気づく。
「奴を見つけたぞ、Jude。」

「奴はここにいる。」

主人公Jude Mortimerは、かつて戦場カメラマンで、アフリカの戦場を取材中にOdongo少佐という男の何か後ろ暗い秘密を目撃してしまったらしい。そして現在、そのOdongoが彼と同じくこのロンドンにいることを知る。そしてその直後、Judeは逮捕される。もちろんOdongoによる密告だ。奴は自分の秘密が明るみに出る前に俺をつぶす気だ。留置場からJudeを救い出したのは唯一の肉親である姉のNell。子供の頃、両親を亡くした自動車事故から生き残った二人だが、Nellはその後車椅子での生活を余儀なくされている。車内で目の前に突き付けられたスマートフォンにはいつの間にかネット上にアップロードされた映像。そこでは彼自身が頭に押し当てた銃の引き金を引いていた。
視聴数は98000から更に上り続ける。
Shit.
俺は有名人だ。

ちょっと何も把握しないままとにかく読み始めたのですが、こちらBook 1は30ページほどで、現在Book 4まで刊行されており、それで1本の長編(中編?)を構成するようです。その第1巻は以上の通り。このJason Michelという人、『True Brit Grit』で読んだ時も感じたのだけど、ちょっと独特のダークな感覚を持ってる人で結構気になっていました。そっちのはかなりホラーに近いやつだったのだけど、もっと犯罪小説方向のこの作品でも、妙に血なまぐさいざらざらしたような独特の、ちょっと人によっては「嫌な」と表現するかもしれないぐらいの独特の感触がある。この第1巻ではまずキャラクターと設定を揃えたところで、物語はこれからという感じです。30ページぐらいの全4巻なので、全部読み終わってからやるべきかと思ったけど、とりあえずどんどん多くのを紹介しなければ、と進めてしまったのだけど、やっぱりちゃんと最後まで読むべきだったかなあと思い直してたりもするなかなかの先に期待の作品です。いや、いずれは最後まで読んで何らかの形でちゃんとやりますです。ちなみにこの作品、カルト的なネオノワールポッドキャストがベースになっている、と解説に書いてあったりするのだけど、ちょっと調べてみたのだけどその辺はわかりませんでした。
作者Jason Michelは、前述しました英国のウェブジンPulp Metal Magazineの主催者。なんでも「自主的追放」というのでヨーロッパ方面を放浪しているようで、この作品はイタリアで書いたそうです。変人です!(キッパリ!)この作品の他には現在のところ『The Death Of Three Colours』がそこそこの長さのホラーであと中編やアンソロジーの参加といったところで、なかなか本格的に作家活動に乗り出してくれないようには見えるのですが、今後に大いに期待。これの続きも早く読むよー。
こちらKindle版の発行がちゃんと書いてなくて自費出版のように見えるのですが、実はNear To The Knuckleからの出版で、巻末には広告も載っています。Near To The Knuckleは英国のウェブジンベースのパブリッシャーで、昨年から今年にかけては英国犯罪小説リーグのドンPaul D. Brazill大将の中編3本をはじめとするコアな犯罪小説作品を立て続けに発行し、英国のこのジャンルで強面な存在感を放っているところ。ホームページを見ても出版リストが無くて、この作品のように発行元が掲載されてないのもあるのではとちょっと不安なのだが、とりあえず見つかる限りのを載せときました。

Pulp Metal Magazine

Near To The Knuckle


●Jason Michel




●Near To The Knuckle





■Double Tap: Two Shots of Central California Noir /Christopher Davis/Todd Morr

続きましては、新進気鋭の10th Rule Booksからの中編2本立て。最初に言っとくけど、この本Kindleで開いてみると、なぜかページ数が128ページまでしかカウントされない。128ページを過ぎるとあとは最後までずっと128ページ!事情は分からんけどなんか128ページまでしかカウントできないフリーソフトとかでKindleに変換したとか?まあ、手作り感あっていいじゃん。アマゾンの販売ページで見てみたらちゃんと172ページになっていました。80ページぐらいの中編の2本立てです。

Setup/Christopher Davis

○あらすじ
ボスからの指示で、ヴェガスからカリフォルニアへやってきた組織の荒事師MarzanoとValentini。組織の一人De La Rosaとの待ち合わせの積み下ろし所に着いてみると、取引の話し合いのはずがいきなり銃撃戦に。敵は逃したが見せしめに火を放ちその場を去り、地元を仕切るFrankieと合流した3人。最近メキシコの連中がカリフォルニアの縄張りに入り込み、好き放題してやがる。ちょいと叩いて国境の向かうに送り返してやらなきゃならねえから力を貸してくれ。そして縄張り内のメキシコ人の拠点にお礼参りを仕掛ける4人。ちょいと熱くなりすぎてきちまったからしばらく町を出る。サリナスの奴らのでかい金づるをつぶしに行くぜ。しかし、敵のでかい拠点を襲撃し、バカンス気分になったところから雲行きが怪しくなり始める…。

男の世界!!暑苦しい感じの男ばかり出てくる!お礼参りを重ねる前半あたりではアメリカ版仁義なき戦いみたいかなとか考えていて、その一方で出てくる人は「ザ・ソプラノズ」みたいなのを思い浮かべていたり。そういやまだ「ザ・ソプラノズ」半分も観れてないや…。それぞれにそんな感じでお好きなギャング映画を思い浮かべながら読むのもいいんじゃないでしょうかという作品。終盤の決闘シーンではウエスタン風味もあるかな、と思っていたら、やっぱりウエスタンも書いてる人でした。タフな悪党が丁々発止の男の世界でやんした。
作者Christopher Davisはこれが読むのが初めてで、あまり情報がないのですが、米Amazon.comの作者自己紹介を読むと(日本のアマゾンでは表示されず)、孫が3人とか書いてあるので、リタイア後好きな小説を書き始めたという感じかも。あ、ところでCentral Californiaっていうのは中部カリフォルニアぐらいの解釈で良いのだよね?とにかくそこに在住とのこと。10th Rule Booksからもう1冊中編が出ている他には、Solstice Publishingというところからもいくつか作品が出ています。その他、Dead Gun Pressのアンソロジーや、あのAlec Cizakの「Pulp Modern」にも作品を発表しています。

Fiero/Todd Morr

○あらすじ
1980年代後半。中部カリフォルニアサリナスでガソリンスタンドで働きながらドラッグ商売にも励むAndy。だがこんな田舎町で商売していても、来るのはハッパ目当てのガキばかり。高校時代の親友でハリウッドでポルノ男優になったLanceから預かったコカインもさっぱりさばけやしねえ。俺もいつかマイアミ・バイスに出てくるみたいなフェラーリに乗れる身分になれないもんか。さもなきゃポンティアック・フィエロ。あれなら結構フェラーリに似てるからなあ。だが、そのLanceのコカインは付き合ってる彼女が元カレの売人からくすねたものだった。そしてその売人Gordonは大口径の銃を片手にLanceのハリウッドのアパートに乗り込み、コカインの在り処を聞き出し、縛り上げたLanceをバスタブに残し、サリナスへと向かう。ダチを片付けてコカインを取り戻したら、次はおめえの番だ。一方サリナスでは地元のバイク・ギャングEddieとHackが、こちらも自分たちが精製したコカインを預けたもののさっぱり金にできないAndyに業を煮やし、居所を探し始める。更に売人Andyを与し易きとみた地元の不良も家から銃を持ち出し…。そんな火中の栗となっていることにも全く気付かないAndyの運命は?

こちらはちょいと脱力系の2流3流の悪党チンピラがひしめき合うスラップスティック風味もあるクライムストーリー。タイトルFieroの意味もお分かりいただけたでしょう。バイク・ギャングらの作ってるのが「hillbilly version of cocaine」!「ブレイキング・バッド」とか好きな人は雰囲気わかるよね。そういや「ブレイキング・バッド」もまだシーズン2までしか…。とか考えてるとまたしばらく休んでひたすらそういうの観て暮らそうか、みたいな気分になっちまうよ。トホホ…。中部カリフォルニアでハリウッドからも車で4時間ぐらいというところだけど、コカイン買うやつがいないという田舎町が舞台。前American Monstersの時にブツブツ言ってたノワールは田舎へ向かっているので「ブレイキング・バッド」辺りまでカントリー・ノワールに入れる、というような流れの作品の一つでしょう。そっちでも書いたのだけど、コミックの方なので読んでない人もいるかもしれないので、この辺の考えについては旧All Due Respectのサイトで読んだMatt Phillipsによる映画『ディア・ハンター』はノワール的なものの土壌となっているアメリカの地方の底辺層の若者を描いたノワール作品であるという考察「The Deer Hunter: American Noir in a Classic Film」が大変役に立つので再度お勧めします。
作者Todd Morrはあの280 Steps残党の一人。絶版になってしまっていた『If You're Not One Percent』がつい先日Fahrenheit Pressの救出作戦により再版されました!よかったね。しかしこのTodd Morrさん、実はかのSnubnose Pressの残党でもあったのです。そちらからの『Captain Cooker』も今年この10th Rule Booksより再版され、更に続編『Best Laid Plan of Idiots and Fuck-Ups: A Cooke Novel』も出版されています。他にSpanking Pulp Pressというところから長編も2冊あり。実力はあるのに運がなく今ひとつ大きい波に乗れないでいるところなのかもしれないが、今後に期待のノワールジャンル注目作家の一人です。

そんな感じのそれぞれに個性的でなかなかに読みごたえもあるお得な中編2本立て。カバーがショボいとか、ページカウントが変とかなんて一切問題なし。要は中身ですぜ。

さてその10th Rule Booksについてですが、新進気鋭!とか盛り上げてみたが、昨年の発足以来今回の2人ともう一人の作品をボチボチ出しているというところで気鋭というよりは、まあマイペースという感じかも。で、そのもう一人がBodie Myersという人でどうもこの人が自分の本を出すために俺レーベルとして立ち上げたものらしい。最初のリリースが昨年7月のこの人の『The Walking Funeral: Hell - Book 1』という作品で、この時点ではアメリカ国内のみのオプションで販売。そしてその後、多分みんな中部カリフォルニアの車で行けるぐらいのご近所作家Davis、Morr両氏が加わり、おそらくは作品の出版経験も多いMorrさんが「いや、もっと世界中から買えるようにした方がいいよ!例えば日本とかにだって変わり者もいるし。俺の出した本みんな日本から買ってくれたやつもいるよー。」というような助言をしたのか10月リリースのDavis、Myers両氏の作品からは日本からも購入可能に。続いて12月にはこの2本立て。今年に入り、Morrの旧作新作の刊行を果たし、遂にMyers『Hell』シリーズ第2作も今月刊行となっております。実はhard boiled supernatural action horrorなるいかにも面白そうな肩書の『Hell - Book 1』もここでちゃんと日本からも買えるようにしてくれよー、とクレームをつけるつもりでいたのだが、つい先日の第2作刊行に合わせ日本からも購入できるようになっていました。よっしゃ、いずれは読むからね。ところでこのMyersとMorr、中部カリフォルニアご近所以外にもメタル好き仲間らしく、どっちのプロフィールにもギター、って入ってたり、10th Rule Booksのホームページにも「No, you're wrong - These are the Five Best Guitar Solos of the 80's」なんて記事もあったり。Morrの作品の設定が1980年代になっているのは、これ携帯のある現在にするとすれ違い的なストーリーが成り立たなくなるという理由かと思っていたのだけど、好きな80年代メタルへの思い入れというのもあるのでしょうね。(作品中にも言及あり。)こんな愉快な連中(お前殊更愉快に仕立て上げてないか?)の10th Rule Books、今後も期待して注目して行きたいものですね。

10th Rule Books


●10th Rule Books



●Christopher Davis



●Todd Morr



■HIRED GUN (Culvert City Crime Files Book 1)/James R. Tuck

少し前にAnthony Neil Smith先生がこの人の近作『Kill The Children, Save The Food: Deliciously Weird Fiction』を高く評価していて、Smith先生が薦めるならチェックせねば、と調べてみたら結構前にTuck氏のこっちのを無料で出ていた時に入手していたのに気付き、ならばこちらから先にという感じで読んでみたのでした。
こちらはタイトルにもあるように架空の悪徳の街Culvert Cityを共通の舞台とした短編集。まず収録作品のタイトルは以下の通り。

  • Big Tony Likes A Show
  • Respect
  • Cancerstick
  • Caught
  • Security Check
  • Teachable Moment
  • Boots On
  • Treatment

全72ページの短編集で、前書きあとがきの他、各作品の前に軽い解説もあったりして8本の作品が収録されているというわけで、それぞれの作品はかなり短い。2、4、6番目の作品は各1ページ。1、3、5、8には共通のキャラクターである小指のない男が登場する。殺人も含めたヤバい仕事を独りでこなすギャングで、請負のようにもどこかの組織に属しているようにも見える。全体的な印象を一言で言うなら非情。結構描写も緻密という感じで、少しクラシックな雰囲気もある。全体的によくできた話で良く書けていて文句のつけようはないのだけど、ただ読む側として言わせてもらえるなら残念ながらちょっと短すぎる。長くてもフラッシュ・フィクションというサイズで、基本的にワンシーンの一幕劇で、全体読み終わってちょっと食い足りなかった感じになってしまう。その中で、7のみが自分の過去の経験をもとにしたという話で、ちょっと異色。トレーラーハウスに住む主人公がある事情でたちの悪い近所のドラッグの売人の住むハウスのドアを蹴破るという話。長さとしては変わらないのだけど、いろんな意味でこのくらい動きがある作品がもうちょっとあったらよかったのだけどね。しかし作者の写真やらこの作品の内容を見ると、結構この人強面だったんじゃないかな、みたいな想像もされたり。
作者James R. Tuckは代表作がオカルト・バウンティ・ハンターDeacon Chalkシリーズということ。あんまり私には関係ない方面かな、と思ったのだけど、本を見てみたら銃を片手のスキンヘッドのマッチョが!(下リスト参照のこと。)いや、こういうやつなら大いに関係あるじゃん!他にもいくつか著作はあり、やはり主にホラー、ファンタジー傾向か。何かそっち方面ではベストセラーらしいDebbie Viguieという人との共作で「Robin Hood: Demon Bane」シリーズというのを英大手Titan Booksからも出しています。前述のDeacon ChalkシリーズはKensingtonというところから出ていて、この『HIRED GUN』はBlammo! Booksから出版されている。どうもTuck氏の個人出版社らしく、Smith先生推薦の『Kill The Children, Save The Food: Deliciously Weird Fiction』やDeacon Chalkの中・短編集なんかもこのBlammo! Booksから出ています。メインワークとはちょっと違うものを自分で出してるというところなのでしょう。いかにも力有り余っている感じだしねえ。このCulvert City Crime Files Bookは今のところ残念ながらこの1冊だけ。もっと長いのが読めるといいなあ。とりあえずはSmith先生推薦のをなるべく早く読んで、できれば筋肉オカルト・バウンティ・ハンターの方も読んでみたいというところです。今米Amazon.comの著者ページの自己紹介をよく読んでみたら、プロのタトゥー・アーティストとも書いてありました。Tuckさんがどのくらい強そうか見てみたい人は以下のホームページへのリンクから!

James R. Tuckホームページ


●James R. Tuck
○Deacon Chalkシリーズ




○Robin Hood: Demon Baneシリーズ



○Blammo! Books



○その他



■Crime Factory Issue 19

これについては随分前に第1集を読んでそのことも随分前にちょろっと書いたのだけど、以来全然進んでなくてごめんなさい。やっと最新第19集を読みました。オーストラリア発犯罪小説アンソロジー!えーっと、ホントは1作ずつちゃんと書くべきなのだけど、ちょっと余力もないので概観という形のさせてもらいます。また、作者についてもそれぞれに自発的追放者や80年代メタル好きともだち趣味ギターや筋肉オカルト・バウンティ・ハンターといった特筆すべき個性的な作風性癖をお持ちかもしれないが、その辺についてはいずれまたお会いした時に、ということで。ではまず収録作品と作家を。

  • 'Open The Evil Window Of Death' Revisiting An Unsolved Crime/Benjamin Welton
  • Life by the Sword/Kathryn Hore
  • A Golden Yellow Cage/J. J. Sinisi
  • Eroll de la Vars Discovers the Equilibrium of Water/Robb White
  • Coyotes/Adam Matson
  • A Ticket to Paradise/James Breeden
  • Work Away/Rob Pierce
  • Open Carry/Tony Knighton
  • The Repulsion Box/Tom Leins
  • The Dilemma/Mike Penn
  • If You're Looking For A Murder Land, Go To Maryland/Benjamin Welton

最初と最後にBenjamin Weltonという人が書いているのだが、これはエッセイ。最初の方は実録犯罪レポートみたいなものかと思ったのだけど、後半の方はハメット、ケインを産み出したメリーランドがいかに暗黒地帯かという話になる。1つのエッセイを前半と後半に分けたもので、内容は興味深いのだけど、分けられちゃったせいで前半後半のつながりがいまいち掴みにくく、まとめ載っけてくれた方が良かったかなと思う。
続くショートストーリーは最初から。オーストラリアの作家Kathryn Horeの作品は、昔街を仕切っていたが裏切りで殺されかけたタフな女が妹分にけじめをつけに帰ってくるという、現代劇だけどマカロニ・ウェスタン風の香りもする話。エンニオ・モリコーネが聞こえてくるぜ。
続くJ. J. Sinisiはニューヨーク在住。フットボールのスターにスキャンダルを仕掛けて強請ろうという計画に安易に乗ったストリッパーの女性だったが…。チープな悪党の末路。
次のRobb Whiteはオハイオ在住で私立探偵Thomas Haftmannシリーズを何冊か出してる人。ちょっとこれ主人公が何の仕事をしてるのかよくわからなくてそれが最後まで引っかかってしまった。手段を選ばずライバルとなる同僚を汚い手段で次々と蹴落とし、会社のトップに近づいた男だったが…という話。会計士のようにも見えるのだけど。内容はそんなに悪くないのだけど、ちょっと残念。
続くAdam Matsonはこちらもアメリカ、メイン州出身。著作は現在のところ短編集1冊あり。舞台はメイン州の田舎町。母親と娘と3人で農業を営む痛めつけられ続けた女性がどん底で見せる反撃!このアンソロジーの中で個人的には一番強く印象を受けたカントリー・ノワール。人と人との嫌なつながりとか、単純な感情移入とはまた別の説得力で、等身大、という感じのキャラクターが見えてくる。多分このアンソロジーの中では一番長い作品だと思うけど。とりあえずはちょっと名前を憶えておきたい人。
次はノースカロライナの作家James Breeden。だらけたどん底生活を送るカップルの部屋にいつものように現れたダチが放り出してあった新聞を何気なく見ると、彼の買ったロトが大当たりだったのだが…。現代ノワール定番のチープな奴らのチープな末路はいつだって私の好物だよ。
そしてAll Due Respectから4冊の著作のあるカリフォルニア、オークランド在住のRob Pierce。新興ギャングに押される老ボスの配下である主人公が、知り合いの女性を使い敵のトップの首を狙うが…。独特の抑えられたリズムで抑えられた感情が語られ、それがかすれるように終わるエンディング。早くAll Dueの方もちゃんと読まなくては。
続くはフィラデルフィア出身で、前に名前だけ出したけど全然進んでなくてごめんの香港にベースを置くCrime Waveからの著作もあるTony Knighton。上司に注意されながらも身の安全のために拳銃を手放さない駐車場で働く男。だが危険は思いがけない方向からやってくる。そしてそれは時に幸運に見える時も…。読み終わってみるとファム・ファタールばっか重視の連中の言ってるようなタイプのノワール定型のような構造が隠されていたり。いや作品の方の批判じゃないっすよ。
次は英国ペイントンのTom Leins。俺はどんなヤバい仕事でも引き受ける仕事屋だ。今度のは書類の入った箱を届けてくれっていう簡単な仕事だ。だが、俺にもルールってもんがある。そしてその箱の中身は…。若干シンプルだけど、小手先の組み立てよりもキャラクターや動きを重視してる感じは買う。今後に期待っす。
最後はMike Penn。ちょっとこの人だけ出身地わからず。あっちこっちのアンソロジーに作品を出して編集などもやっているそうなのだけど。新居で新しい生活が遅れると思っていたが、夫の留守中変質者の家主に嫌がらせを受け続ける妻の堪忍袋の緒が遂に切れ…。案外ノワールとか以外のミステリ・ファンの人だとこの中で一番読みやすいやつかも。CSIとかで捜査を進めて行くうちに逆向きにこの真相が見えるとかね。

というわけで、ヴァラエティに富んだなかなかに読み応えのあるアンソロジーでした。さすがのCrime Factory。で、こちら最初に最新と紹介したのだけど、実は出たのは昨年10月。前にも17と18の間が1年ぐらい空いたりということもあったのだが、今はホームページの方も閉鎖されていてどうなのかな、という感じ。しかしさあ、これで終わりかどうこうなんて、Issue2から18までの17冊未読で残してる奴の言うことじゃないよね。とにかく奴らはこの号で終わりなどという宣言は一切しておらん!未読のをなるべく早く読みつつ次を期待するですよ。サンキュー、Crime Factory!
あと一つ、これでちょっとオーストラリア方面の動きが見えるかな、と期待していたのだけど、ご覧の通りとりあえずオーストラリア作家は1名という感じで、そこは残念。まあ当初からワールドワイドで活動していたCrime Factoryだからね。で、私同様オーストラリアの動きも気になるという人にお勧めは、AustCrimeFictionというオーストラリア-ニュージーランド圏のミステリのレビューをやってるサイト。ちょっと日本からだと見えにくいネッド・ケリー賞やナイオ・マーシュ賞なんかの情報も詳しくわかります。とりあえずはこちらで選んだ2016年のオーストラリア-ニュージーランド圏ベスト・ミステリTop Books of 2016 on AustCrimeFictionあたりから気になる本を探してみては?そしてハードボイルド好きにおススメは、前にも名前を出したこのCrime Factory一味の一人、オーストラリアの作家Andrew Nette氏がLos Angeles Review of Booksに寄稿した「Empty Beaches: In Search of Australia’s Fictional Private Eyes」というエッセイ。オーストラリアの映画化もされた私立探偵Cliff Hardyシリーズを中心にオーストラリア・ハードボイルド・シーンについて語る大変優れたもので勉強になりました。必読!あとオーストラリア方面ではNetteさんも関わってるらしいオーストラリアの作家のみによる犯罪小説アンソロジー『Crime Scenes』というのが出たそうで、そっちもいずれ読んでみたいと思ってます。更にAndrew Netteさん大ニュース!あの280 Stepsから発行され現在絶版中の『Gunshine State』が遂に来年Down & Out Booksから再版!公開されたばかりのしびれるジャケットを見たい人はすぐにNetteさんのホームページへ!

Andrew NetteホームページPulp Curry

AustCrimeFiction


●Crime Factory





●Crime Scenes



■Switchblade (Issue One Book 1)

最後に登場がコイツ!最近度々プッシュしてまいりましたL. A.発最新犯罪小説アンソロジーSwitchblade第1集であります!いや、最後になっちゃったのだけど、実は読み始めたのはこれが一番早かったり…。前にも書いたのだけどこの第1集、Kindleの普通の活字の本の形式ではなくマンガ/コミックのようにプリント版の1ページがそのまま1ページとして表示されるようになっている。タイミング的にもKindleに採用されたComixologyのシステムを使うつもりだったようだが、実はそれが全く機能していなくて、普通に拡大することもできず、ほぼスマホなどでは読むのが不可能といった状態。いや、アンタこの小さいのが読めるんならそれでいいよ。どうせワシャ老眼なんじゃろ。そんなわけで自宅のみで使っているiPadで帰宅後少ない時間の中で2~3から5ページぐらいずつ読めたり読めなかったりみたいな感じでえらく時間がかかってしまって結局読み終わったのは最後という話なのである。まあ、色々と言いたいことは多いのだが、とにかく内容の方に行きましょう。ではまず収録作品と作家から。

  • Flash Fiction
    • Getting Away With It/Paul D. Brazill
    • Get Wrenching/Jim Wilsky
    • Re-Election/Fred Zackel
    • Primed/Scotch Rutherford
    • Urban Legend#223/Susan Cornford
  • Short Fiction
    • The Stooge/Tom Leins
    • Rats/Liam Sweeny
    • That's Alright Mama/Steve Liskow
    • Taste for Danger/Lawrence kelter
    • The Apex Predator/William Dylan Powell
    • North Creek Brown/Preston Lang
    • Stranger in a Bar/Travis Richardson
    • Killing Time so I Can Dig Myself a Deeper Grave/Jack Bates

まず申し訳ないのだが、Flash Fictionについては今回は省略させてもらいます。いや短いからどうでもよいというものではないのだが、さすがに今回長くなりすぎてて余力がない…。やっぱ5つは多すぎたか…。まあ毎度のことながら計画性と見通しの雑な奴のやることってこうなるのだよね。反省します。ちなみにトップを切るのは言わずと知れたBrazill大将。確か大将からの情報でこれを知って、他に情報なかったので、最初はてっきり英国発と思い込んでそう書いてしまったのだよね。Scotch RutherfordはこのSwitchbladeの首謀者。かの必読アンソロジー『All Due Respect』にも参加してる人です。
Short FictionトップはCrime Factoryの方にも登場のTom Leins。犯罪組織に潜り込んでいたアンダーカバーの焦燥が行き止まりで暴発する!読んでた時は気付かなかったのだけど、今回やっとCrime Factoryのと同じ人と気付いて照らし合わせてみると、作者の方向性が見える感じ。粗削りにも見えるが、小手先の話のまとまりにこだわらずこのまま突っ走ってもらいたい。英国期待の星!
続いてニューヨーク在住のLiam Sweeny。ホームレスになってしまった男と彼にホームレス指南をする友人との話。犯罪要素は無かったり。ホームレスといわゆる普通の生活の段差みたいなものを見る主人公の心の動きが切々と描かれる。ホームレスになり切れない、みたいな表現が頭に浮かんだけど、ホームレスになり切れる人なんて本当にいるのだろうか。結構心に残る作品。長編、短編集が1冊ずつあり、長編『Welcome Back, Jack』はケン・ブルーウン、Joe Cliffordなどからも高く評価されているのでいずれ読んでみるつもり。
次はコネチカット州在住の作家Steve Liskow。かつてはジャズ・ギタリストとして鳴らしたが、現在は金持ちの息子にうんざりしながらギターのレッスンをつける男。だが、彼の目的はそれだけではない…。まあ予想通りの展開と言ってしまえばそれまでなのだけど、ミュージシャン的な独特の物の見方は面白かったり。受賞・ノミネート歴も多数ありハードボイルド方面らしき著作も結構ある。こーゆー人に気付かん辺りは私もまだまだ甘い。
ニューヨーク、ブルックリンのLawrence kelter。Down & Outからの著作もあり名前は知ってたのだけど、今調べたらなんだよ、結構ベストセラーぐらいの人気作家じゃん。ってことでちょっと悩んでたのだけどここでは容赦なく行く。この作品主人公の視点からあるパーティー会場での地域を仕切るならず者二人組の傍若無人ぶりが前半延々と書かれるのだけど、そこが長すぎてちょっとバランスが悪い。主人公が何者かが見えるあたりからがポイントなのだと思うので、敢えてあらすじは書かない。Down & Outからのといっぱいある女性刑事ものらしきのとかのどれかとか読んで話はそれからだ!どーすっかな、この場合とりあえず100円とかになってるのを適当にひっつかんで読んでみるかな。とっかかりと時間さえあればこの手のどんどん読んでみたいんっすよね。Lawrence kelterでアマゾン検索してみるべし!
次はテキサスのWilliam Dylan Powell。警察からの委託で川に沈んだ犯罪に関わる車の引き揚げのダイバーを仕事とする主人公は、車中に大金を見つけるが…。設定も話の流れも面白いと思ったのだけど、落ちがひねりすぎて逆にひねらなすぎのものになってしまったようにも見えるのだけど。結構ユーモアみたいなのも作風にしているようなので、これも持ち味なのかも。第2集にも登場しているのでまた読んで考えてみます。
続いてまたもニューヨークからのPreston Lang。All Due Respect、Crime Waveからの長編と短編集1冊あり。父からの仕事を引き継ぎ塗料屋の店を営むアラブ系の男。父の代からの地元のギャングが今月もみかじめ料を受け取りに現れる。「来月は別の男が来る。そいつをぶちのめしたら当分月の払いは優遇してやるぜ。」ギャングの言葉をどう受け取ればいいかわからない男だったが、翌月その通り初めて見る男が現れる…。背景に色々なものを含む重層的な話を独特の目線で短編にまとめるなかなかの腕前。
次のTravis RichardsonはL. A.から。バーにはいつもの面子の酔っ払いたちに最近来るようになった新顔が一人。そこにいかにもトラブルを引き起こしそうなバカップルが現れるが…。日常的な風景から二転三転するバイオレンスなストーリー。結構受賞・ノミネート歴もあるようだけど、少し休業して最近復帰したようにも見える。第2中編『Keeping The Record』のカバーはさっき見てモロに私のツボにはまった。ぜひ読んでみたい。とにかくアマゾンで見てみるべし!
最後はデトロイト在住の作家Jack Bates。短編小説での活躍は長く、それほどまとまった本はないのだけど、受賞・ノミネート歴も多い人。ギャングからの借金もギャンブルで使い果たし、もはや後のない男の前に現れた大金を持った老人は、起死回生のチャンスなのか?定番の犯罪小説ネタのようだが、何か夢の断片のような歪んで手掛かりの乏しいような奇妙な風味が全編に付きまとう作品。

例えばミステリの短編というのを体操の競技のようにきれいに着地が決まるのが正しいように考える人もいるが、ジャッカスのバカ川飛び込み大会みたいにどんだけ無様に痛く着水したかの方が点が高かったりというのの方が好きな人だっているわけで、はたまたスピードも順位も関係なくどんな面でゴールに駆け込んだかだけに意味がある陸上競技だって考えられる。つまりこのアンソロジーは後者のような方向のものなのだ。読んでるときはやたら粗削りな感じがしてたけど、調べてみると結構錚々たるメンバーだったり。技量不足ではなくそちらの方向に刃を研いできた作家も多いのだろう。まさに名前とカバーの見た目通りの「悪い」本を堪能させてもらったよ。まだまだ知らないいい作家は沢山いるね。また読みたい本も増えたっすよ。このどちらのアンソロジーも苦戦している時期、今年4月にL. A.より立ち上がったこの『Switchblade』。勢いは止まず、今月早くも第3集を刊行し、初のライブイベントも開催されたとのこと。えーとナイフをぶん回したりする流血沙汰ではなく多分朗読会だろう。この勢いで更に突っ走ってくれることを期待しています。だがしかし…。最初にも言ったこの仕様は本当に読みづらかった…。時間がかかりすぎて読み間違えたところもあったのではと心配になったり。前にも言ったけど装丁にもこだわりプリント版の本の形のまま読ませたいという心意気は買うので、せめてちゃんと拡大できるようにだけはして欲しい。次はちゃんとなってるよね?また絶対読むからさあ。頼むよ!

Switchblade


●Switchblade



というわけでやっと終わりなんだけど、ついでに最後にもう一つおススメ!発売したばかりのこちらのアンソロジー『The Blood Red Experiment (Series Book 1)』。今回アンソロジーに参加している色々な作家を軽く調べる時、まずアマゾンで検索してみるのが便利だったりするのでそれぞれやってみていたところ、やたら引っかかってくるのがこれ。で、気になって調べてみたところ、まずこちら編集がCraig Douglas。ちょっとよくわからないのだけどNear To The Knuckleの本であちこちで編集としてクレジットされているので、多分そこの人だろう。登場するのも今回紹介のを含むノワールの強者面々。そして更に何が注目かというと、こちらのプリント・レプリカKindle版なる表示。しかし、こちらは実は過去にプリント版で出たものというわけではない。紹介文によると、これはイタリアのGialloというジャンルのものを目指したもの。その説明によるとGialloというのは粗悪な紙に印刷された犯罪小説などの掲載されたイタリア版パルプかもっと悪い本らしい。あっ、Jason Michelの名前もあると思ってたら、よく見たら編集だ!さてはアンタが密輸してきたんか?奴らが何を始めたかというと、つまり見かけまで悪く作り上げた悪い本をKindleで出してやるぜ、ということなのである。プリント・レプリカ版と銘打たれてはいても、実はプリントのオリジナル版などないのである。ご理解いただけましたでしょうか?これはつまり今回の『Switchblade』とも共通する発想(あちらはプリント版もあるが)。もしかしたらどこかにこいつらのお手本になったスゲーのがあるのではないかと思うが、今のところ不明。しかし今後も一部の悪者共の間になるべく粗悪で汚い悪い本を作ってやるぜ、という動きは高まって行くものと予想される。わーベーシック・チャンネルとか思い起こされるなあ、とか言ってもあんまりよくわかんないだろうけど説明する余力なし…。テクノ。詳細についてはいずれまた!とにかくこのブームに乗った!と思う人はまず手に取るべし!…とは言ってみたもののちゃんとこれ拡大ぐらいできるんだろうな…。頼むよ!あっ、拡大できるじゃん。わー、スゲーかっけー!読むべし!

いやはや…、今回はにゃんか途方もなく長くなってしまったよ。思いついてじゃあれ読もー、これもー、そんなにやれるわけないじゃん!5つぐらいに絞れよ!とやってみた結果がこの始末…。アマゾンのリンクも最初のNear To The Knuckle並べたあたりでこれはまずいかも、ってちょっと思ったけど、えーい、ワシはこんなに面白そうなのがいっぱい出てるんだよー、って見せたいんじゃ!とゴリ押し。画像もでかいのゴリ押しで…。なんだか読み込みがすごい遅くなったりして迷惑してる人がいたらごめん…。でも今回はちょっと個人的にはプチ達成感あるっすよ。やっぱりこういうのをやらなくてはね。別に誰もまだ注目してない実力作家をいち早く見つけるみたいなダサい目的じゃなくてさ、おらあっ!出したぞ!読んでみやがれっ!って感じのをよっしゃあっ!って読むのは変人読書バカの快感じゃあないすか。別に誰も同意してくれなくたっていいよっ!まあここからはまたどーしてもこれはやらなきゃ、の有名どころが少し続いたり、Down & OutやPolisの活きのいいとこどんどん読まなくちゃ、とか早急に読まねばならんあれとあれとかあるけどさ、でもまたこーゆーの必ずやるよ!近日中に!えと…、次は3冊ぐらいで…。今回最後に『The Blood Red Experiment』なんて楽しみなの見つけたし、『Switchblade』はちゃんと追って行きたいし、あーそうだ!通りすがりに『Crime Syndicate Magazine』の第3集出てたの見つけちまったよ。今度こそは必ず読むからねー、ごめーん。あとAlec Cizakさんのリニューアルした『Pulp Modern』もあるし、早く『Crime Scenes』読んでオーストラリアへのとっかかり掴みたいしなあ、って既に3冊越えてるじゃん!バカじゃん!いや、とにかく頑張るっす。苦労して読んでくれた人いたらありがとさんでした。


【その他おしらせの類】
いや、もうずいぶん長くなってるし、余力もないのだが、どうしても伝えねばならんことがいくつかあるので少し手短に。
まずはあのAll Due RespectがDown & Out傘下に。ちょっとここんところ元気がなくなりリリースも少なく、そろそろ終わってしまうのでは、と心配していたAll Due Respectだったのだが、随分色々と遅れてていまいち曖昧になっちゃってるのだけど、確か9月にDown & Out傘下に入ることが発表された。自分が見たのはAll Dueのサイトから(All Due Respect : Down & Out Books Acquires All Due Respect)。Chris Rhatigan氏によると、相棒Mike Monsonが共同経営から降り、以来一人での運営は難しくなり、今回の決定に至ったとのこと。いやさ、ここで毎回毎回何回Down & Outって言ってるか知れないぐらいに肩入れしてるDown & Outだしさ、それに大きいものに独立系が呑まれたような構図に不満を感じてるとかいうことでもない。しかしAll Due Respectをウェブジンから立ち上げ、ここまで独立独歩で頑張り、犯罪小説ジャンルに一石を投じてきたRhatigan氏の心中を思うとここはこのくらいのテンションで語るしかない。Monsonさんも辛いところだったのだろうね。本当にこのジャンルを愛している人だったもの。とりあえず今までのAll DueタイトルはすべてDown & Outから再リリースされるということ。同傘下のShotgun Honeyもそのポジションで息を吹き返し、独自のリリースを続けているところでもあるし、またAll Due Respectもそこで新たにエッジのきいた作品群を世に出し続けてくれることには心配はないだろう。新たなAll Due Respectの再開は2018年からということ。まあここで私がちょいと遅れてしんみりしているところで、精力的なRhatigan氏はもう次に向けて大忙しになっていることでしょう。頑張れAll Due Respect!私はいつでもAll Dueの信奉者だよっ!
(追記:とか言ってたら本日12月にAll Dueの新刊Matt Phillipsの『ACCIDENTAL OUTLAWS』が発行されることが発表されました!さすがRhatiganさん!)

で、そのDown & OutからやっとAnthony Neil Smith先生の旧作が一挙にリリース!あのBilly Lafitteから永らく入手困難だったRed Hammond名義の『XXX Shamus』まで!いや、こっちも対応が遅れててすんません…。これ終わったらすぐに前の『Baddest Ass』のところ更新しますので…。えっと、明日…。

最後に、今回Todd Morr、Andrew Nette両氏の再版について文中でお知らせしたが、まだまだあるぞ280 Steps復刊情報!前にShotgun HoneyからRusty Barnesの新刊が出るよー、とお伝えしたと思うのだが、そろそろ出た頃やなと思って先日アマゾンに見に行ったらなんと!新作『Knuckledragger』に加え、280 Stepsより発行されていた『Ridgerunner』も同Shotgun Honeyより復刊されているではないか!以前にも書いたがこれについては280 Steps版を既に読んでいて、復刊された暁にはとも書いたので、近日中には必ず書くであります。しかしこれこのShotgun Honey版でも「Killer from the Hills Book 1」となってるんだけど、あのラストでホントに続きあるんだろうか?とりあえず『Knuckledragger』は続きじゃないようだけど。いや、語るべき本が復刊されて本当にうれしいよ。そして更に!そういやEryk PruittもPolisから新作出るって話だったよな、とチェックしに行ったら、こちらもなんと!新作『What We Reckon』にプラス、こちらもPolisから280 Stepsからのあの『Dirtbags』と『Hashtag』が復刊されてるではないか!あっEryk Pruittについて書くのは初めてだったか。280 Stepsもまだ初期に近いころ『Dirtbags』で長編デビューを果たし、それが一部でかなり話題となり、Eric Beetnerの『Leadfoot』などとともに世に280 Stepsの名を知らしめた立役者の一人なのである。私もその辺で280 Stepsというのを知ったのだったり。いや、あれが復刊されて本当に良かったよ。このまま終わるはずはないと思ってたけど。つーか私も早くその辺ぐらいちゃんと読まねば…。Eric Beetnerさんの名前も出たところだが、やはり『Leadfoot』などのMcGrawシリーズに続き、280 Stepsでは予約受付まで始まっていたのに第3部が日の目を見ずに終わってしまっていたあのLars and Shaineシリーズ3部作が来年2月にDown & Outから発行されるそうです。良かったね。そして更に!あの280 Steps作品救出作戦を進める英fahrenheitからはSeth Lynchの『The Paris Ripper』も復刊!Seth Lynchさんは新作『A Citizen Of Nowhere』もfahrenheitから出版!いやあ280 Stepsの突然ぐらいに近い終結には本当にがっくりさせられたが、意外と早くかなりの作品が復刊されているのは本当に喜ばしいことです。やっぱり奴らは出すべき本を出していたのだな、と再確認。それにしても、再販されたものはどれも文句のつけようのない格好いいカバーで出てくるのだけど、それらとも違う異彩を放つ280 Stepsのアートワークは本当に素晴らしかったな、などと思い出していて、いや、あれがこのまま失われてしまうのはあまりにも惜しいと思い立ち、まだわずかに残っているプリント版のカバー画像をアマゾン他からかき集め、カバーギャラリーを作成しました。うわ、小っちゃ。まあこーなると思ったけど…。元は1600x1280pxあるのでなんか拡大したりして見て下さい。あー、結局連休直前まで引っ張っちまったよ。今週なんかずいぶん頑張ったのだが…。とりあえず私もここまでです。あとは寝てまた明日からボチボチ頑張るです。ぐー。



●Rusty Barnes



●Eryk Pruitt



●Seth Lynch



●これも読むべし!



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