2017年11月2日木曜日

今回は色々

ちょっと前にぼやいてたのだけど、どうもここんところ割と有名どころに偏ってしまってる感じで、まあ最近上げるペースが遅くなってるというのも原因なのだけど、そんなわけで今回はあんまり有名じゃないどころだったりもするのだけど、気になってるのをいくつか読んでまとめて紹介することにしました。とりあえずは読んだ順番で特に並びに意味はありません。気取ったヌケ作が誰かの猿真似で、不可能犯罪でも国際的陰謀でもないので「よくある話」とかレッテルを貼ってみせる類いの、イカスチープな犯罪ストーリーが目白押しですぞ。

■The Black-Hearted Beat: Book 1/Jason Michel

まず最初に登場は、以前英国犯罪小説アンソロジー『True Brit Grit』で紹介しました(True Brit Grit -最新英国犯罪小説アンソロジー- 第3回)ウェブジンPulp Metal Magazineの主催者Jason Michelの作品です。

○あらすじ
子供の頃、俺の左目数センチメートルのところを銃弾がかすめた。
こんな話をするのは、別に同情やら驚きを求めてるとかいうわけじゃない。単なる自己紹介さ。あんたにこの話をしているのがどういうやつか知っておいてもらいたいだけのことだ。
その日、俺の頭をそれた銃弾は俺の耳の上を削り取って行った。もちろん、耳はまた生えてきたりはしていないさ。
そしてこのどん底の吹き溜まりで俺の周りを囲んだ奴らはわめきたてる。早く引き金を引きやがれ。

俺は死んだ男だ。空っぽの薬莢。遠く離れたどこかの村で銃弾を放った後の。

そして俺は頭に押し当てた銃の引き金を引き、そしてハンマーが空の薬室をたたく音を聞く。

俺の向かいに座っている男は時間を無駄にせず、ただちに引き金を引いた。閃光。銃声。そしてダーク・レッド。俺は飛び散った奴の脳髄を頬に感じる。

目の前の金をかき集めながら、束の間、世界は何故俺をこんなに長く生かしているのか、と考える。

そして俺は取り囲んだ人込みをかき分け、Brysonが近づいてくるのに気づく。
「奴を見つけたぞ、Jude。」

「奴はここにいる。」

主人公Jude Mortimerは、かつて戦場カメラマンで、アフリカの戦場を取材中にOdongo少佐という男の何か後ろ暗い秘密を目撃してしまったらしい。そして現在、そのOdongoが彼と同じくこのロンドンにいることを知る。そしてその直後、Judeは逮捕される。もちろんOdongoによる密告だ。奴は自分の秘密が明るみに出る前に俺をつぶす気だ。留置場からJudeを救い出したのは唯一の肉親である姉のNell。子供の頃、両親を亡くした自動車事故から生き残った二人だが、Nellはその後車椅子での生活を余儀なくされている。車内で目の前に突き付けられたスマートフォンにはいつの間にかネット上にアップロードされた映像。そこでは彼自身が頭に押し当てた銃の引き金を引いていた。
視聴数は98000から更に上り続ける。
Shit.
俺は有名人だ。

ちょっと何も把握しないままとにかく読み始めたのですが、こちらBook 1は30ページほどで、現在Book 4まで刊行されており、それで1本の長編(中編?)を構成するようです。その第1巻は以上の通り。このJason Michelという人、『True Brit Grit』で読んだ時も感じたのだけど、ちょっと独特のダークな感覚を持ってる人で結構気になっていました。そっちのはかなりホラーに近いやつだったのだけど、もっと犯罪小説方向のこの作品でも、妙に血なまぐさいざらざらしたような独特の、ちょっと人によっては「嫌な」と表現するかもしれないぐらいの独特の感触がある。この第1巻ではまずキャラクターと設定を揃えたところで、物語はこれからという感じです。30ページぐらいの全4巻なので、全部読み終わってからやるべきかと思ったけど、とりあえずどんどん多くのを紹介しなければ、と進めてしまったのだけど、やっぱりちゃんと最後まで読むべきだったかなあと思い直してたりもするなかなかの先に期待の作品です。いや、いずれは最後まで読んで何らかの形でちゃんとやりますです。ちなみにこの作品、カルト的なネオノワールポッドキャストがベースになっている、と解説に書いてあったりするのだけど、ちょっと調べてみたのだけどその辺はわかりませんでした。
作者Jason Michelは、前述しました英国のウェブジンPulp Metal Magazineの主催者。なんでも「自主的追放」というのでヨーロッパ方面を放浪しているようで、この作品はイタリアで書いたそうです。変人です!(キッパリ!)この作品の他には現在のところ『The Death Of Three Colours』がそこそこの長さのホラーであと中編やアンソロジーの参加といったところで、なかなか本格的に作家活動に乗り出してくれないようには見えるのですが、今後に大いに期待。これの続きも早く読むよー。
こちらKindle版の発行がちゃんと書いてなくて自費出版のように見えるのですが、実はNear To The Knuckleからの出版で、巻末には広告も載っています。Near To The Knuckleは英国のウェブジンベースのパブリッシャーで、昨年から今年にかけては英国犯罪小説リーグのドンPaul D. Brazill大将の中編3本をはじめとするコアな犯罪小説作品を立て続けに発行し、英国のこのジャンルで強面な存在感を放っているところ。ホームページを見ても出版リストが無くて、この作品のように発行元が掲載されてないのもあるのではとちょっと不安なのだが、とりあえず見つかる限りのを載せときました。

Pulp Metal Magazine

Near To The Knuckle


●Jason Michel




●Near To The Knuckle





■Double Tap: Two Shots of Central California Noir /Christopher Davis/Todd Morr

続きましては、新進気鋭の10th Rule Booksからの中編2本立て。最初に言っとくけど、この本Kindleで開いてみると、なぜかページ数が128ページまでしかカウントされない。128ページを過ぎるとあとは最後までずっと128ページ!事情は分からんけどなんか128ページまでしかカウントできないフリーソフトとかでKindleに変換したとか?まあ、手作り感あっていいじゃん。アマゾンの販売ページで見てみたらちゃんと172ページになっていました。80ページぐらいの中編の2本立てです。

Setup/Christopher Davis

○あらすじ
ボスからの指示で、ヴェガスからカリフォルニアへやってきた組織の荒事師MarzanoとValentini。組織の一人De La Rosaとの待ち合わせの積み下ろし所に着いてみると、取引の話し合いのはずがいきなり銃撃戦に。敵は逃したが見せしめに火を放ちその場を去り、地元を仕切るFrankieと合流した3人。最近メキシコの連中がカリフォルニアの縄張りに入り込み、好き放題してやがる。ちょいと叩いて国境の向かうに送り返してやらなきゃならねえから力を貸してくれ。そして縄張り内のメキシコ人の拠点にお礼参りを仕掛ける4人。ちょいと熱くなりすぎてきちまったからしばらく町を出る。サリナスの奴らのでかい金づるをつぶしに行くぜ。しかし、敵のでかい拠点を襲撃し、バカンス気分になったところから雲行きが怪しくなり始める…。

男の世界!!暑苦しい感じの男ばかり出てくる!お礼参りを重ねる前半あたりではアメリカ版仁義なき戦いみたいかなとか考えていて、その一方で出てくる人は「ザ・ソプラノズ」みたいなのを思い浮かべていたり。そういやまだ「ザ・ソプラノズ」半分も観れてないや…。それぞれにそんな感じでお好きなギャング映画を思い浮かべながら読むのもいいんじゃないでしょうかという作品。終盤の決闘シーンではウエスタン風味もあるかな、と思っていたら、やっぱりウエスタンも書いてる人でした。タフな悪党が丁々発止の男の世界でやんした。
作者Christopher Davisはこれが読むのが初めてで、あまり情報がないのですが、米Amazon.comの作者自己紹介を読むと(日本のアマゾンでは表示されず)、孫が3人とか書いてあるので、リタイア後好きな小説を書き始めたという感じかも。あ、ところでCentral Californiaっていうのは中部カリフォルニアぐらいの解釈で良いのだよね?とにかくそこに在住とのこと。10th Rule Booksからもう1冊中編が出ている他には、Solstice Publishingというところからもいくつか作品が出ています。その他、Dead Gun Pressのアンソロジーや、あのAlec Cizakの「Pulp Modern」にも作品を発表しています。

Fiero/Todd Morr

○あらすじ
1980年代後半。中部カリフォルニアサリナスでガソリンスタンドで働きながらドラッグ商売にも励むAndy。だがこんな田舎町で商売していても、来るのはハッパ目当てのガキばかり。高校時代の親友でハリウッドでポルノ男優になったLanceから預かったコカインもさっぱりさばけやしねえ。俺もいつかマイアミ・バイスに出てくるみたいなフェラーリに乗れる身分になれないもんか。さもなきゃポンティアック・フィエロ。あれなら結構フェラーリに似てるからなあ。だが、そのLanceのコカインは付き合ってる彼女が元カレの売人からくすねたものだった。そしてその売人Gordonは大口径の銃を片手にLanceのハリウッドのアパートに乗り込み、コカインの在り処を聞き出し、縛り上げたLanceをバスタブに残し、サリナスへと向かう。ダチを片付けてコカインを取り戻したら、次はおめえの番だ。一方サリナスでは地元のバイク・ギャングEddieとHackが、こちらも自分たちが精製したコカインを預けたもののさっぱり金にできないAndyに業を煮やし、居所を探し始める。更に売人Andyを与し易きとみた地元の不良も家から銃を持ち出し…。そんな火中の栗となっていることにも全く気付かないAndyの運命は?

こちらはちょいと脱力系の2流3流の悪党チンピラがひしめき合うスラップスティック風味もあるクライムストーリー。タイトルFieroの意味もお分かりいただけたでしょう。バイク・ギャングらの作ってるのが「hillbilly version of cocaine」!「ブレイキング・バッド」とか好きな人は雰囲気わかるよね。そういや「ブレイキング・バッド」もまだシーズン2までしか…。とか考えてるとまたしばらく休んでひたすらそういうの観て暮らそうか、みたいな気分になっちまうよ。トホホ…。中部カリフォルニアでハリウッドからも車で4時間ぐらいというところだけど、コカイン買うやつがいないという田舎町が舞台。前American Monstersの時にブツブツ言ってたノワールは田舎へ向かっているので「ブレイキング・バッド」辺りまでカントリー・ノワールに入れる、というような流れの作品の一つでしょう。そっちでも書いたのだけど、コミックの方なので読んでない人もいるかもしれないので、この辺の考えについては旧All Due Respectのサイトで読んだMatt Phillipsによる映画『ディア・ハンター』はノワール的なものの土壌となっているアメリカの地方の底辺層の若者を描いたノワール作品であるという考察「The Deer Hunter: American Noir in a Classic Film」が大変役に立つので再度お勧めします。
作者Todd Morrはあの280 Steps残党の一人。絶版になってしまっていた『If You're Not One Percent』がつい先日Fahrenheit Pressの救出作戦により再版されました!よかったね。しかしこのTodd Morrさん、実はかのSnubnose Pressの残党でもあったのです。そちらからの『Captain Cooker』も今年この10th Rule Booksより再版され、更に続編『Best Laid Plan of Idiots and Fuck-Ups: A Cooke Novel』も出版されています。他にSpanking Pulp Pressというところから長編も2冊あり。実力はあるのに運がなく今ひとつ大きい波に乗れないでいるところなのかもしれないが、今後に期待のノワールジャンル注目作家の一人です。

そんな感じのそれぞれに個性的でなかなかに読みごたえもあるお得な中編2本立て。カバーがショボいとか、ページカウントが変とかなんて一切問題なし。要は中身ですぜ。

さてその10th Rule Booksについてですが、新進気鋭!とか盛り上げてみたが、昨年の発足以来今回の2人ともう一人の作品をボチボチ出しているというところで気鋭というよりは、まあマイペースという感じかも。で、そのもう一人がBodie Myersという人でどうもこの人が自分の本を出すために俺レーベルとして立ち上げたものらしい。最初のリリースが昨年7月のこの人の『The Walking Funeral: Hell - Book 1』という作品で、この時点ではアメリカ国内のみのオプションで販売。そしてその後、多分みんな中部カリフォルニアの車で行けるぐらいのご近所作家Davis、Morr両氏が加わり、おそらくは作品の出版経験も多いMorrさんが「いや、もっと世界中から買えるようにした方がいいよ!例えば日本とかにだって変わり者もいるし。俺の出した本みんな日本から買ってくれたやつもいるよー。」というような助言をしたのか10月リリースのDavis、Myers両氏の作品からは日本からも購入可能に。続いて12月にはこの2本立て。今年に入り、Morrの旧作新作の刊行を果たし、遂にMyers『Hell』シリーズ第2作も今月刊行となっております。実はhard boiled supernatural action horrorなるいかにも面白そうな肩書の『Hell - Book 1』もここでちゃんと日本からも買えるようにしてくれよー、とクレームをつけるつもりでいたのだが、つい先日の第2作刊行に合わせ日本からも購入できるようになっていました。よっしゃ、いずれは読むからね。ところでこのMyersとMorr、中部カリフォルニアご近所以外にもメタル好き仲間らしく、どっちのプロフィールにもギター、って入ってたり、10th Rule Booksのホームページにも「No, you're wrong - These are the Five Best Guitar Solos of the 80's」なんて記事もあったり。Morrの作品の設定が1980年代になっているのは、これ携帯のある現在にするとすれ違い的なストーリーが成り立たなくなるという理由かと思っていたのだけど、好きな80年代メタルへの思い入れというのもあるのでしょうね。(作品中にも言及あり。)こんな愉快な連中(お前殊更愉快に仕立て上げてないか?)の10th Rule Books、今後も期待して注目して行きたいものですね。

10th Rule Books


●10th Rule Books



●Christopher Davis



●Todd Morr



■HIRED GUN (Culvert City Crime Files Book 1)/James R. Tuck

少し前にAnthony Neil Smith先生がこの人の近作『Kill The Children, Save The Food: Deliciously Weird Fiction』を高く評価していて、Smith先生が薦めるならチェックせねば、と調べてみたら結構前にTuck氏のこっちのを無料で出ていた時に入手していたのに気付き、ならばこちらから先にという感じで読んでみたのでした。
こちらはタイトルにもあるように架空の悪徳の街Culvert Cityを共通の舞台とした短編集。まず収録作品のタイトルは以下の通り。

  • Big Tony Likes A Show
  • Respect
  • Cancerstick
  • Caught
  • Security Check
  • Teachable Moment
  • Boots On
  • Treatment

全72ページの短編集で、前書きあとがきの他、各作品の前に軽い解説もあったりして8本の作品が収録されているというわけで、それぞれの作品はかなり短い。2、4、6番目の作品は各1ページ。1、3、5、8には共通のキャラクターである小指のない男が登場する。殺人も含めたヤバい仕事を独りでこなすギャングで、請負のようにもどこかの組織に属しているようにも見える。全体的な印象を一言で言うなら非情。結構描写も緻密という感じで、少しクラシックな雰囲気もある。全体的によくできた話で良く書けていて文句のつけようはないのだけど、ただ読む側として言わせてもらえるなら残念ながらちょっと短すぎる。長くてもフラッシュ・フィクションというサイズで、基本的にワンシーンの一幕劇で、全体読み終わってちょっと食い足りなかった感じになってしまう。その中で、7のみが自分の過去の経験をもとにしたという話で、ちょっと異色。トレーラーハウスに住む主人公がある事情でたちの悪い近所のドラッグの売人の住むハウスのドアを蹴破るという話。長さとしては変わらないのだけど、いろんな意味でこのくらい動きがある作品がもうちょっとあったらよかったのだけどね。しかし作者の写真やらこの作品の内容を見ると、結構この人強面だったんじゃないかな、みたいな想像もされたり。
作者James R. Tuckは代表作がオカルト・バウンティ・ハンターDeacon Chalkシリーズということ。あんまり私には関係ない方面かな、と思ったのだけど、本を見てみたら銃を片手のスキンヘッドのマッチョが!(下リスト参照のこと。)いや、こういうやつなら大いに関係あるじゃん!他にもいくつか著作はあり、やはり主にホラー、ファンタジー傾向か。何かそっち方面ではベストセラーらしいDebbie Viguieという人との共作で「Robin Hood: Demon Bane」シリーズというのを英大手Titan Booksからも出しています。前述のDeacon ChalkシリーズはKensingtonというところから出ていて、この『HIRED GUN』はBlammo! Booksから出版されている。どうもTuck氏の個人出版社らしく、Smith先生推薦の『Kill The Children, Save The Food: Deliciously Weird Fiction』やDeacon Chalkの中・短編集なんかもこのBlammo! Booksから出ています。メインワークとはちょっと違うものを自分で出してるというところなのでしょう。いかにも力有り余っている感じだしねえ。このCulvert City Crime Files Bookは今のところ残念ながらこの1冊だけ。もっと長いのが読めるといいなあ。とりあえずはSmith先生推薦のをなるべく早く読んで、できれば筋肉オカルト・バウンティ・ハンターの方も読んでみたいというところです。今米Amazon.comの著者ページの自己紹介をよく読んでみたら、プロのタトゥー・アーティストとも書いてありました。Tuckさんがどのくらい強そうか見てみたい人は以下のホームページへのリンクから!

James R. Tuckホームページ


●James R. Tuck
○Deacon Chalkシリーズ




○Robin Hood: Demon Baneシリーズ



○Blammo! Books



○その他



■Crime Factory Issue 19

これについては随分前に第1集を読んでそのことも随分前にちょろっと書いたのだけど、以来全然進んでなくてごめんなさい。やっと最新第19集を読みました。オーストラリア発犯罪小説アンソロジー!えーっと、ホントは1作ずつちゃんと書くべきなのだけど、ちょっと余力もないので概観という形のさせてもらいます。また、作者についてもそれぞれに自発的追放者や80年代メタル好きともだち趣味ギターや筋肉オカルト・バウンティ・ハンターといった特筆すべき個性的な作風性癖をお持ちかもしれないが、その辺についてはいずれまたお会いした時に、ということで。ではまず収録作品と作家を。

  • 'Open The Evil Window Of Death' Revisiting An Unsolved Crime/Benjamin Welton
  • Life by the Sword/Kathryn Hore
  • A Golden Yellow Cage/J. J. Sinisi
  • Eroll de la Vars Discovers the Equilibrium of Water/Robb White
  • Coyotes/Adam Matson
  • A Ticket to Paradise/James Breeden
  • Work Away/Rob Pierce
  • Open Carry/Tony Knighton
  • The Repulsion Box/Tom Leins
  • The Dilemma/Mike Penn
  • If You're Looking For A Murder Land, Go To Maryland/Benjamin Welton

最初と最後にBenjamin Weltonという人が書いているのだが、これはエッセイ。最初の方は実録犯罪レポートみたいなものかと思ったのだけど、後半の方はハメット、ケインを産み出したメリーランドがいかに暗黒地帯かという話になる。1つのエッセイを前半と後半に分けたもので、内容は興味深いのだけど、分けられちゃったせいで前半後半のつながりがいまいち掴みにくく、まとめ載っけてくれた方が良かったかなと思う。
続くショートストーリーは最初から。オーストラリアの作家Kathryn Horeの作品は、昔街を仕切っていたが裏切りで殺されかけたタフな女が妹分にけじめをつけに帰ってくるという、現代劇だけどマカロニ・ウェスタン風の香りもする話。エンニオ・モリコーネが聞こえてくるぜ。
続くJ. J. Sinisiはニューヨーク在住。フットボールのスターにスキャンダルを仕掛けて強請ろうという計画に安易に乗ったストリッパーの女性だったが…。チープな悪党の末路。
次のRobb Whiteはオハイオ在住で私立探偵Thomas Haftmannシリーズを何冊か出してる人。ちょっとこれ主人公が何の仕事をしてるのかよくわからなくてそれが最後まで引っかかってしまった。手段を選ばずライバルとなる同僚を汚い手段で次々と蹴落とし、会社のトップに近づいた男だったが…という話。会計士のようにも見えるのだけど。内容はそんなに悪くないのだけど、ちょっと残念。
続くAdam Matsonはこちらもアメリカ、メイン州出身。著作は現在のところ短編集1冊あり。舞台はメイン州の田舎町。母親と娘と3人で農業を営む痛めつけられ続けた女性がどん底で見せる反撃!このアンソロジーの中で個人的には一番強く印象を受けたカントリー・ノワール。人と人との嫌なつながりとか、単純な感情移入とはまた別の説得力で、等身大、という感じのキャラクターが見えてくる。多分このアンソロジーの中では一番長い作品だと思うけど。とりあえずはちょっと名前を憶えておきたい人。
次はノースカロライナの作家James Breeden。だらけたどん底生活を送るカップルの部屋にいつものように現れたダチが放り出してあった新聞を何気なく見ると、彼の買ったロトが大当たりだったのだが…。現代ノワール定番のチープな奴らのチープな末路はいつだって私の好物だよ。
そしてAll Due Respectから4冊の著作のあるカリフォルニア、オークランド在住のRob Pierce。新興ギャングに押される老ボスの配下である主人公が、知り合いの女性を使い敵のトップの首を狙うが…。独特の抑えられたリズムで抑えられた感情が語られ、それがかすれるように終わるエンディング。早くAll Dueの方もちゃんと読まなくては。
続くはフィラデルフィア出身で、前に名前だけ出したけど全然進んでなくてごめんの香港にベースを置くCrime Waveからの著作もあるTony Knighton。上司に注意されながらも身の安全のために拳銃を手放さない駐車場で働く男。だが危険は思いがけない方向からやってくる。そしてそれは時に幸運に見える時も…。読み終わってみるとファム・ファタールばっか重視の連中の言ってるようなタイプのノワール定型のような構造が隠されていたり。いや作品の方の批判じゃないっすよ。
次は英国ペイントンのTom Leins。俺はどんなヤバい仕事でも引き受ける仕事屋だ。今度のは書類の入った箱を届けてくれっていう簡単な仕事だ。だが、俺にもルールってもんがある。そしてその箱の中身は…。若干シンプルだけど、小手先の組み立てよりもキャラクターや動きを重視してる感じは買う。今後に期待っす。
最後はMike Penn。ちょっとこの人だけ出身地わからず。あっちこっちのアンソロジーに作品を出して編集などもやっているそうなのだけど。新居で新しい生活が遅れると思っていたが、夫の留守中変質者の家主に嫌がらせを受け続ける妻の堪忍袋の緒が遂に切れ…。案外ノワールとか以外のミステリ・ファンの人だとこの中で一番読みやすいやつかも。CSIとかで捜査を進めて行くうちに逆向きにこの真相が見えるとかね。

というわけで、ヴァラエティに富んだなかなかに読み応えのあるアンソロジーでした。さすがのCrime Factory。で、こちら最初に最新と紹介したのだけど、実は出たのは昨年10月。前にも17と18の間が1年ぐらい空いたりということもあったのだが、今はホームページの方も閉鎖されていてどうなのかな、という感じ。しかしさあ、これで終わりかどうこうなんて、Issue2から18までの17冊未読で残してる奴の言うことじゃないよね。とにかく奴らはこの号で終わりなどという宣言は一切しておらん!未読のをなるべく早く読みつつ次を期待するですよ。サンキュー、Crime Factory!
あと一つ、これでちょっとオーストラリア方面の動きが見えるかな、と期待していたのだけど、ご覧の通りとりあえずオーストラリア作家は1名という感じで、そこは残念。まあ当初からワールドワイドで活動していたCrime Factoryだからね。で、私同様オーストラリアの動きも気になるという人にお勧めは、AustCrimeFictionというオーストラリア-ニュージーランド圏のミステリのレビューをやってるサイト。ちょっと日本からだと見えにくいネッド・ケリー賞やナイオ・マーシュ賞なんかの情報も詳しくわかります。とりあえずはこちらで選んだ2016年のオーストラリア-ニュージーランド圏ベスト・ミステリTop Books of 2016 on AustCrimeFictionあたりから気になる本を探してみては?そしてハードボイルド好きにおススメは、前にも名前を出したこのCrime Factory一味の一人、オーストラリアの作家Andrew Nette氏がLos Angeles Review of Booksに寄稿した「Empty Beaches: In Search of Australia’s Fictional Private Eyes」というエッセイ。オーストラリアの映画化もされた私立探偵Cliff Hardyシリーズを中心にオーストラリア・ハードボイルド・シーンについて語る大変優れたもので勉強になりました。必読!あとオーストラリア方面ではNetteさんも関わってるらしいオーストラリアの作家のみによる犯罪小説アンソロジー『Crime Scenes』というのが出たそうで、そっちもいずれ読んでみたいと思ってます。更にAndrew Netteさん大ニュース!あの280 Stepsから発行され現在絶版中の『Gunshine State』が遂に来年Down & Out Booksから再版!公開されたばかりのしびれるジャケットを見たい人はすぐにNetteさんのホームページへ!

Andrew NetteホームページPulp Curry

AustCrimeFiction


●Crime Factory





●Crime Scenes



■Switchblade (Issue One Book 1)

最後に登場がコイツ!最近度々プッシュしてまいりましたL. A.発最新犯罪小説アンソロジーSwitchblade第1集であります!いや、最後になっちゃったのだけど、実は読み始めたのはこれが一番早かったり…。前にも書いたのだけどこの第1集、Kindleの普通の活字の本の形式ではなくマンガ/コミックのようにプリント版の1ページがそのまま1ページとして表示されるようになっている。タイミング的にもKindleに採用されたComixologyのシステムを使うつもりだったようだが、実はそれが全く機能していなくて、普通に拡大することもできず、ほぼスマホなどでは読むのが不可能といった状態。いや、アンタこの小さいのが読めるんならそれでいいよ。どうせワシャ老眼なんじゃろ。そんなわけで自宅のみで使っているiPadで帰宅後少ない時間の中で2~3から5ページぐらいずつ読めたり読めなかったりみたいな感じでえらく時間がかかってしまって結局読み終わったのは最後という話なのである。まあ、色々と言いたいことは多いのだが、とにかく内容の方に行きましょう。ではまず収録作品と作家から。

  • Flash Fiction
    • Getting Away With It/Paul D. Brazill
    • Get Wrenching/Jim Wilsky
    • Re-Election/Fred Zackel
    • Primed/Scotch Rutherford
    • Urban Legend#223/Susan Cornford
  • Short Fiction
    • The Stooge/Tom Leins
    • Rats/Liam Sweeny
    • That's Alright Mama/Steve Liskow
    • Taste for Danger/Lawrence kelter
    • The Apex Predator/William Dylan Powell
    • North Creek Brown/Preston Lang
    • Stranger in a Bar/Travis Richardson
    • Killing Time so I Can Dig Myself a Deeper Grave/Jack Bates

まず申し訳ないのだが、Flash Fictionについては今回は省略させてもらいます。いや短いからどうでもよいというものではないのだが、さすがに今回長くなりすぎてて余力がない…。やっぱ5つは多すぎたか…。まあ毎度のことながら計画性と見通しの雑な奴のやることってこうなるのだよね。反省します。ちなみにトップを切るのは言わずと知れたBrazill大将。確か大将からの情報でこれを知って、他に情報なかったので、最初はてっきり英国発と思い込んでそう書いてしまったのだよね。Scotch RutherfordはこのSwitchbladeの首謀者。かの必読アンソロジー『All Due Respect』にも参加してる人です。
Short FictionトップはCrime Factoryの方にも登場のTom Leins。犯罪組織に潜り込んでいたアンダーカバーの焦燥が行き止まりで暴発する!読んでた時は気付かなかったのだけど、今回やっとCrime Factoryのと同じ人と気付いて照らし合わせてみると、作者の方向性が見える感じ。粗削りにも見えるが、小手先の話のまとまりにこだわらずこのまま突っ走ってもらいたい。英国期待の星!
続いてニューヨーク在住のLiam Sweeny。ホームレスになってしまった男と彼にホームレス指南をする友人との話。犯罪要素は無かったり。ホームレスといわゆる普通の生活の段差みたいなものを見る主人公の心の動きが切々と描かれる。ホームレスになり切れない、みたいな表現が頭に浮かんだけど、ホームレスになり切れる人なんて本当にいるのだろうか。結構心に残る作品。長編、短編集が1冊ずつあり、長編『Welcome Back, Jack』はケン・ブルーウン、Joe Cliffordなどからも高く評価されているのでいずれ読んでみるつもり。
次はコネチカット州在住の作家Steve Liskow。かつてはジャズ・ギタリストとして鳴らしたが、現在は金持ちの息子にうんざりしながらギターのレッスンをつける男。だが、彼の目的はそれだけではない…。まあ予想通りの展開と言ってしまえばそれまでなのだけど、ミュージシャン的な独特の物の見方は面白かったり。受賞・ノミネート歴も多数ありハードボイルド方面らしき著作も結構ある。こーゆー人に気付かん辺りは私もまだまだ甘い。
ニューヨーク、ブルックリンのLawrence kelter。Down & Outからの著作もあり名前は知ってたのだけど、今調べたらなんだよ、結構ベストセラーぐらいの人気作家じゃん。ってことでちょっと悩んでたのだけどここでは容赦なく行く。この作品主人公の視点からあるパーティー会場での地域を仕切るならず者二人組の傍若無人ぶりが前半延々と書かれるのだけど、そこが長すぎてちょっとバランスが悪い。主人公が何者かが見えるあたりからがポイントなのだと思うので、敢えてあらすじは書かない。Down & Outからのといっぱいある女性刑事ものらしきのとかのどれかとか読んで話はそれからだ!どーすっかな、この場合とりあえず100円とかになってるのを適当にひっつかんで読んでみるかな。とっかかりと時間さえあればこの手のどんどん読んでみたいんっすよね。Lawrence kelterでアマゾン検索してみるべし!
次はテキサスのWilliam Dylan Powell。警察からの委託で川に沈んだ犯罪に関わる車の引き揚げのダイバーを仕事とする主人公は、車中に大金を見つけるが…。設定も話の流れも面白いと思ったのだけど、落ちがひねりすぎて逆にひねらなすぎのものになってしまったようにも見えるのだけど。結構ユーモアみたいなのも作風にしているようなので、これも持ち味なのかも。第2集にも登場しているのでまた読んで考えてみます。
続いてまたもニューヨークからのPreston Lang。All Due Respect、Crime Waveからの長編と短編集1冊あり。父からの仕事を引き継ぎ塗料屋の店を営むアラブ系の男。父の代からの地元のギャングが今月もみかじめ料を受け取りに現れる。「来月は別の男が来る。そいつをぶちのめしたら当分月の払いは優遇してやるぜ。」ギャングの言葉をどう受け取ればいいかわからない男だったが、翌月その通り初めて見る男が現れる…。背景に色々なものを含む重層的な話を独特の目線で短編にまとめるなかなかの腕前。
次のTravis RichardsonはL. A.から。バーにはいつもの面子の酔っ払いたちに最近来るようになった新顔が一人。そこにいかにもトラブルを引き起こしそうなバカップルが現れるが…。日常的な風景から二転三転するバイオレンスなストーリー。結構受賞・ノミネート歴もあるようだけど、少し休業して最近復帰したようにも見える。第2中編『Keeping The Record』のカバーはさっき見てモロに私のツボにはまった。ぜひ読んでみたい。とにかくアマゾンで見てみるべし!
最後はデトロイト在住の作家Jack Bates。短編小説での活躍は長く、それほどまとまった本はないのだけど、受賞・ノミネート歴も多い人。ギャングからの借金もギャンブルで使い果たし、もはや後のない男の前に現れた大金を持った老人は、起死回生のチャンスなのか?定番の犯罪小説ネタのようだが、何か夢の断片のような歪んで手掛かりの乏しいような奇妙な風味が全編に付きまとう作品。

例えばミステリの短編というのを体操の競技のようにきれいに着地が決まるのが正しいように考える人もいるが、ジャッカスのバカ川飛び込み大会みたいにどんだけ無様に痛く着水したかの方が点が高かったりというのの方が好きな人だっているわけで、はたまたスピードも順位も関係なくどんな面でゴールに駆け込んだかだけに意味がある陸上競技だって考えられる。つまりこのアンソロジーは後者のような方向のものなのだ。読んでるときはやたら粗削りな感じがしてたけど、調べてみると結構錚々たるメンバーだったり。技量不足ではなくそちらの方向に刃を研いできた作家も多いのだろう。まさに名前とカバーの見た目通りの「悪い」本を堪能させてもらったよ。まだまだ知らないいい作家は沢山いるね。また読みたい本も増えたっすよ。このどちらのアンソロジーも苦戦している時期、今年4月にL. A.より立ち上がったこの『Switchblade』。勢いは止まず、今月早くも第3集を刊行し、初のライブイベントも開催されたとのこと。えーとナイフをぶん回したりする流血沙汰ではなく多分朗読会だろう。この勢いで更に突っ走ってくれることを期待しています。だがしかし…。最初にも言ったこの仕様は本当に読みづらかった…。時間がかかりすぎて読み間違えたところもあったのではと心配になったり。前にも言ったけど装丁にもこだわりプリント版の本の形のまま読ませたいという心意気は買うので、せめてちゃんと拡大できるようにだけはして欲しい。次はちゃんとなってるよね?また絶対読むからさあ。頼むよ!

Switchblade


●Switchblade



というわけでやっと終わりなんだけど、ついでに最後にもう一つおススメ!発売したばかりのこちらのアンソロジー『The Blood Red Experiment (Series Book 1)』。今回アンソロジーに参加している色々な作家を軽く調べる時、まずアマゾンで検索してみるのが便利だったりするのでそれぞれやってみていたところ、やたら引っかかってくるのがこれ。で、気になって調べてみたところ、まずこちら編集がCraig Douglas。ちょっとよくわからないのだけどNear To The Knuckleの本であちこちで編集としてクレジットされているので、多分そこの人だろう。登場するのも今回紹介のを含むノワールの強者面々。そして更に何が注目かというと、こちらのプリント・レプリカKindle版なる表示。しかし、こちらは実は過去にプリント版で出たものというわけではない。紹介文によると、これはイタリアのGialloというジャンルのものを目指したもの。その説明によるとGialloというのは粗悪な紙に印刷された犯罪小説などの掲載されたイタリア版パルプかもっと悪い本らしい。あっ、Jason Michelの名前もあると思ってたら、よく見たら編集だ!さてはアンタが密輸してきたんか?奴らが何を始めたかというと、つまり見かけまで悪く作り上げた悪い本をKindleで出してやるぜ、ということなのである。プリント・レプリカ版と銘打たれてはいても、実はプリントのオリジナル版などないのである。ご理解いただけましたでしょうか?これはつまり今回の『Switchblade』とも共通する発想(あちらはプリント版もあるが)。もしかしたらどこかにこいつらのお手本になったスゲーのがあるのではないかと思うが、今のところ不明。しかし今後も一部の悪者共の間になるべく粗悪で汚い悪い本を作ってやるぜ、という動きは高まって行くものと予想される。わーベーシック・チャンネルとか思い起こされるなあ、とか言ってもあんまりよくわかんないだろうけど説明する余力なし…。テクノ。詳細についてはいずれまた!とにかくこのブームに乗った!と思う人はまず手に取るべし!…とは言ってみたもののちゃんとこれ拡大ぐらいできるんだろうな…。頼むよ!あっ、拡大できるじゃん。わー、スゲーかっけー!読むべし!

いやはや…、今回はにゃんか途方もなく長くなってしまったよ。思いついてじゃあれ読もー、これもー、そんなにやれるわけないじゃん!5つぐらいに絞れよ!とやってみた結果がこの始末…。アマゾンのリンクも最初のNear To The Knuckle並べたあたりでこれはまずいかも、ってちょっと思ったけど、えーい、ワシはこんなに面白そうなのがいっぱい出てるんだよー、って見せたいんじゃ!とゴリ押し。画像もでかいのゴリ押しで…。なんだか読み込みがすごい遅くなったりして迷惑してる人がいたらごめん…。でも今回はちょっと個人的にはプチ達成感あるっすよ。やっぱりこういうのをやらなくてはね。別に誰もまだ注目してない実力作家をいち早く見つけるみたいなダサい目的じゃなくてさ、おらあっ!出したぞ!読んでみやがれっ!って感じのをよっしゃあっ!って読むのは変人読書バカの快感じゃあないすか。別に誰も同意してくれなくたっていいよっ!まあここからはまたどーしてもこれはやらなきゃ、の有名どころが少し続いたり、Down & OutやPolisの活きのいいとこどんどん読まなくちゃ、とか早急に読まねばならんあれとあれとかあるけどさ、でもまたこーゆーの必ずやるよ!近日中に!えと…、次は3冊ぐらいで…。今回最後に『The Blood Red Experiment』なんて楽しみなの見つけたし、『Switchblade』はちゃんと追って行きたいし、あーそうだ!通りすがりに『Crime Syndicate Magazine』の第3集出てたの見つけちまったよ。今度こそは必ず読むからねー、ごめーん。あとAlec Cizakさんのリニューアルした『Pulp Modern』もあるし、早く『Crime Scenes』読んでオーストラリアへのとっかかり掴みたいしなあ、って既に3冊越えてるじゃん!バカじゃん!いや、とにかく頑張るっす。苦労して読んでくれた人いたらありがとさんでした。


【その他おしらせの類】
いや、もうずいぶん長くなってるし、余力もないのだが、どうしても伝えねばならんことがいくつかあるので少し手短に。
まずはあのAll Due RespectがDown & Out傘下に。ちょっとここんところ元気がなくなりリリースも少なく、そろそろ終わってしまうのでは、と心配していたAll Due Respectだったのだが、随分色々と遅れてていまいち曖昧になっちゃってるのだけど、確か9月にDown & Out傘下に入ることが発表された。自分が見たのはAll Dueのサイトから(All Due Respect : Down & Out Books Acquires All Due Respect)。Chris Rhatigan氏によると、相棒Mike Monsonが共同経営から降り、以来一人での運営は難しくなり、今回の決定に至ったとのこと。いやさ、ここで毎回毎回何回Down & Outって言ってるか知れないぐらいに肩入れしてるDown & Outだしさ、それに大きいものに独立系が呑まれたような構図に不満を感じてるとかいうことでもない。しかしAll Due Respectをウェブジンから立ち上げ、ここまで独立独歩で頑張り、犯罪小説ジャンルに一石を投じてきたRhatigan氏の心中を思うとここはこのくらいのテンションで語るしかない。Monsonさんも辛いところだったのだろうね。本当にこのジャンルを愛している人だったもの。とりあえず今までのAll DueタイトルはすべてDown & Outから再リリースされるということ。同傘下のShotgun Honeyもそのポジションで息を吹き返し、独自のリリースを続けているところでもあるし、またAll Due Respectもそこで新たにエッジのきいた作品群を世に出し続けてくれることには心配はないだろう。新たなAll Due Respectの再開は2018年からということ。まあここで私がちょいと遅れてしんみりしているところで、精力的なRhatigan氏はもう次に向けて大忙しになっていることでしょう。頑張れAll Due Respect!私はいつでもAll Dueの信奉者だよっ!
(追記:とか言ってたら本日12月にAll Dueの新刊Matt Phillipsの『ACCIDENTAL OUTLAWS』が発行されることが発表されました!さすがRhatiganさん!)

で、そのDown & OutからやっとAnthony Neil Smith先生の旧作が一挙にリリース!あのBilly Lafitteから永らく入手困難だったRed Hammond名義の『XXX Shamus』まで!いや、こっちも対応が遅れててすんません…。これ終わったらすぐに前の『Baddest Ass』のところ更新しますので…。えっと、明日…。

最後に、今回Todd Morr、Andrew Nette両氏の再版について文中でお知らせしたが、まだまだあるぞ280 Steps復刊情報!前にShotgun HoneyからRusty Barnesの新刊が出るよー、とお伝えしたと思うのだが、そろそろ出た頃やなと思って先日アマゾンに見に行ったらなんと!新作『Knuckledragger』に加え、280 Stepsより発行されていた『Ridgerunner』も同Shotgun Honeyより復刊されているではないか!以前にも書いたがこれについては280 Steps版を既に読んでいて、復刊された暁にはとも書いたので、近日中には必ず書くであります。しかしこれこのShotgun Honey版でも「Killer from the Hills Book 1」となってるんだけど、あのラストでホントに続きあるんだろうか?とりあえず『Knuckledragger』は続きじゃないようだけど。いや、語るべき本が復刊されて本当にうれしいよ。そして更に!そういやEryk PruittもPolisから新作出るって話だったよな、とチェックしに行ったら、こちらもなんと!新作『What We Reckon』にプラス、こちらもPolisから280 Stepsからのあの『Dirtbags』と『Hashtag』が復刊されてるではないか!あっEryk Pruittについて書くのは初めてだったか。280 Stepsもまだ初期に近いころ『Dirtbags』で長編デビューを果たし、それが一部でかなり話題となり、Eric Beetnerの『Leadfoot』などとともに世に280 Stepsの名を知らしめた立役者の一人なのである。私もその辺で280 Stepsというのを知ったのだったり。いや、あれが復刊されて本当に良かったよ。このまま終わるはずはないと思ってたけど。つーか私も早くその辺ぐらいちゃんと読まねば…。Eric Beetnerさんの名前も出たところだが、やはり『Leadfoot』などのMcGrawシリーズに続き、280 Stepsでは予約受付まで始まっていたのに第3部が日の目を見ずに終わってしまっていたあのLars and Shaineシリーズ3部作が来年2月にDown & Outから発行されるそうです。良かったね。そして更に!あの280 Steps作品救出作戦を進める英fahrenheitからはSeth Lynchの『The Paris Ripper』も復刊!Seth Lynchさんは新作『A Citizen Of Nowhere』もfahrenheitから出版!いやあ280 Stepsの突然ぐらいに近い終結には本当にがっくりさせられたが、意外と早くかなりの作品が復刊されているのは本当に喜ばしいことです。やっぱり奴らは出すべき本を出していたのだな、と再確認。それにしても、再販されたものはどれも文句のつけようのない格好いいカバーで出てくるのだけど、それらとも違う異彩を放つ280 Stepsのアートワークは本当に素晴らしかったな、などと思い出していて、いや、あれがこのまま失われてしまうのはあまりにも惜しいと思い立ち、まだわずかに残っているプリント版のカバー画像をアマゾン他からかき集め、カバーギャラリーを作成しました。うわ、小っちゃ。まあこーなると思ったけど…。元は1600x1280pxあるのでなんか拡大したりして見て下さい。あー、結局連休直前まで引っ張っちまったよ。今週なんかずいぶん頑張ったのだが…。とりあえず私もここまでです。あとは寝てまた明日からボチボチ頑張るです。ぐー。



●Rusty Barnes



●Eryk Pruitt



●Seth Lynch



●これも読むべし!



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2017年10月9日月曜日

2000AD 2017年冬期 [Prog 2011-2022] (後編)

【前回のあらすじ】なんだか時間がかかりすぎたり、長くなりすぎたりでなし崩しに前後編に分けてしまったのだった。書かねばならんことは山ほどあるのに、トホホ…。

というわけで2000AD 2017年冬期後編であります。とにかく早く進めなければ。そして後編のトップ画像はやはりこちら『Kingdom』!いつも面白いのにやっとトップ画像にできたよ。Dan Abnettさん、ごめんね。というわけで、行の高さとかそろえるの面倒なので、今回は順番を変えて、この『Kingdom』から始めます。

Kingdom : As It Is In Heaven
 Dan Abnett/Richard Elson

凶暴化した巨大昆虫が闊歩し、人類が住めなくなった未来の地球で、荒廃した地に取り残され闘い続ける、犬から遺伝子改造された戦士Gene the Hackman達の物語である人気シリーズ。しばらくの中断の後、2014年秋期に再開し、昨年冬期に続き、今年も冬期の登場となったこちらのシリーズ、昨年冬期の再開第2シーズンで、新シリーズの方向が遂に見えてきたところ。再開第1シーズンでは少し時間をさか戻り、Gene the Hackman達がリーダーを持ち群れで行動する進化した巨大昆虫たちと遭遇するエピソードを描き、第2シーズンでは現在に戻り、その群れにより”王国”が危機にさらされるという展開になったわけです。そしてその闘いの最中、Geneたちは現在は軌道上の衛星に暮らす人類の生き残りNuman達が地上の調査に来ているところに遭遇します。GeneとNumanはシリーズの以前の話の中でも会ったことがあるようです。そして巨大昆虫の巣の中で危機に陥りますが、人間たちのシャトルで脱出。その過程でGeneは人間たちが遺伝子操作によるダニの媒介で昆虫たちを急激に進化させたことにより群れでの行動が起こったことを知ります。群れ同士の争いや、進化因子の中に仕込まれたトリガーにより長期的には巨大昆虫たちは絶滅に向かうことになっていますが、そのさなかで到底Gene達の"王国"は生き残ることができない。怒りに燃えるGene達を人間の護衛に同行していたGene達同様に犬から改造された戦士Canisが制圧、そしてシャトルは衛星に向かう…。というところで今期再開第3シーズンへと続きます。
Geneは荒野で愛する妻子や仲間とともに平和に暮らしていた。だが、どこからか彼を呼ぶ声がする。そして荒野から小さな人影が近づいてくる。それはかつてGeneが出会った人間の少女Leezee Sower。そして、Geneは軌道上の衛星の中で目覚める…。
衛星へと連れてこられた後、Gene達は機械につながれ眠らされ、平和な夢を見せられ続けていた。その間、人間たちの間ではGeneの扱いについて議論が交わされ、結果遂に彼らはこのまま殺されることが決定された。しかし、かつてGeneに地上で助けられ、その後衛星上で成長したLeezee Sowerは、Geneを見捨てることができず、密かに彼を目覚めさせる。既に衛星に拘束され続けてから半年もの時間が過ぎていた。地上の”王国”は、そして愛する妻子は無事なのか?一刻も早く戻らなければならない。そして脱出を目指すGeneと”主人”たちとの闘いが始まり、その中で彼は新たに遺伝子改造で産み出されたが、失敗作とされ、その後逃亡し衛星内に隠れゲリラ的に人間たちに攻撃を仕掛けていた豹人間Pauseと出会う…。
見た目豹っぽいので豹人間とか書いちゃったけど、もしかしたら猫人間かも。どちらにしてもキュート要素一切なし。Leezee Sowerについてももう少し色々あるようなのだけど、今回はこれで勘弁してください。なかなか過去シリーズまで手が回らないのだけど、好きなシリーズなので調べてわかっちゃうのももったいない気がする。今回は保留っつーことで。果たしてGeneは無事に衛星を脱出し、地上を救えるのか?次回はまた来年冬か?なんか散々遅れてるのでもーそっちの方が近くなっちゃってるし…。
毎度職人芸で楽しませてくれるDan Abnett。多数の代表作がある人ですが、注目は昨年I. N. J. Culbardとのコンビで始まった『Brink』。実はこの『Kingdom』と『Brink』、地上に住めなくなった人類が軌道上で生き延びているという設定が共通していて、おそらく『Brink』はこの『Kingdom』の設定を発展させたところから始まったのではないかと思われます。ってお前気付くのが遅いよっ。こちらの『Kingdom』では急場しのぎの衛星で、ごくわずかの人間が管理作戦行動を行い、他の多くの人間は冷凍冬眠され再び地上に戻れる日を待っているというのに対し、『Brink』では軌道上にいくつもの巨大な都市のような衛星を構築して暮らしています。さすがAbnett、なかなかに面白い発展をさせるなと思います。アイデアの使いまわしとか野暮な知ったかぶりは言うなかれ。
このシリーズの作画ももうお馴染みのRichard Elson。以前から、構図の取り方だったり表現などで日本のマンガと共通するところが多いと書いてきたのですが、それゆえに違いというのも少し見えてきて興味深かったり。Elsonの画をそのまま日本のマンガに持ってくると、おそらくは基本となる線が若干太すぎる印象になると思う。で、日本でももっと太い線を使う人はたくさんいるけど、それに比べると線の強弱は少ない。何が言いたいかというと、つまりこれってカラー前提の画と白黒前提の画の違いということなんだろうということ。以前にも現代のCGでのカラーリングは線の印象が弱くなるというのを書いたけど、それに合わせてElsonの画では根本的に少し太めの線が選択されているのだと思う。言い換えれば、まあ多分だけど、もしElsonが日本の状況で画を描いていたらもう少し細い線を使っていたのではないかなということ。もちろん線というのは個人の感覚で選択されるのだけど、その環境によっても若干差異が出るのかもしれないというようなことを思うわけです。画というのはそれぞれの個性なので、平均化してくらべるというのは本当に難しいし、大抵は強引なこじつけになっちまうのだけど、ちょっと日本のものに近いようにも思われる技法を使うElsonだけに少しその辺が見えるように思います。ただまた一方で「日本のマンガ」といった時に、ゲームやラノベイラスト方面にも広く広がる美少女ジャンル(これ正確なジャンル名とかないのか?)については含まれていなかったりもします。あれはまたかなり細い線を使った上でのカラー前提というような全く別方向の進化をしているもので、何とかその先鋭的なところだけでもちゃんとチェックしておかなければと思うのだけど、こっちも書店で美少女物を一生懸命チェックするには恥ずかしい年齢風貌になっちまってるしなあ。そもそもそっちまでチェックするには時間が足りないよ。なんかあんまり時間がなくて、その反動でもー1か月ぐらいみんな休んでただ映画とかだけ観て暮らそうかと思ったりするけど、最近のこのブログも半分お休みぐらいのスローペースになっちゃってるしなあ…、と何故かいつの間にか個人的な愚痴になってるよ…。あ、ちなみにこれはRichard Elson氏の画に対する批判とかでは一切ないです。Elsonさんの画はいつも迫力があって見やすくて大好きです。

Hope : ...For the Future
 Guy Adams/Jimmy Broxton

2014年冬期にグラント・モリソンの人気キャラを復活させた『Ulysses Sweet』で登場し、翌年も頑張るも、あんまりパッとしなかったイギリスの有名な作家/俳優Guy Adamsによる久々の新シリーズ。オカルトに深く関わり魔術も使える私立探偵が主人公のハードボイルドです。
また別の歴史の1940年代のハリウッド。第2次大戦は終結したが、連合国の勝利にはオカルトが深く関わっていた。主人公Mallory HOPEもその世界では魔術を操れるものの一人。だが、その使用には必ず代価が付きまとう…。そして彼はその一方で日々の糧を私立探偵稼業で賄っていた。今回彼が依頼されたのはハリウッドの有名な子役スターの少年の失踪事件。これは誘拐なのか?自発的な意思による失踪なのか?捜査が進むにつれ浮かび上がってくる富裕な家庭内の秘密。そして更に彼がかつて戦場で出会った黒い力の片鱗が姿を現して来る…。
実は「別の歴史の…」というあたりの設定は、これを書くために作品紹介のあらすじを読んでいて初めて知った。魔術を使える私立探偵というのはわかって読んでたけど、別の歴史というところまではわかっていなかったり。ちょっとわかりにくいのは、これがハードボイルドの定型に沿った一人称の語りで書かれていて、主人公個人の視点で語られているとそれがそういう世界に深く関わる主人公ゆえの裏の世界の知識なのか、社会公式のものなのかが見えにくくてその辺があまりきちんと整理されてなかったりという事情があるのですよね。この作品の世間的評価については、ちょっと現在のところ不明。お便りコーナーでも言及がなかったり。個人的な意見を言えば、この作品、まずはハードボイルド・コミックという点ではかなりの出来だと思う。ちょっとこのコンビがどのあたりをお手本にしたかそれほど具体的には指摘できないのだけど、多くは70年代ぐらいまでの良質なハードボイルド映画の雰囲気をうまく作り出している。カメラそのものが観察する視点のような静的なフレームの中で動きが起こるような感じとか。白黒のJimmy Broxtonの画はオカルトの幻想的なものが入り込んでくるところもも含めて本当に素晴らしいのだけど、それぞれの場面を選択するのはライターの仕事でもあるのでやはりこのコンビによって達成されたものというべきでしょう。しかしハードボイルドのスタイルを使ったコミックでよくみられる手法で、難しいなあと思うのは、本家小説からの手法に倣い一人称のモノローグが多用されることです。まず小説で一人称の場合はあらゆる情報の入力が主人公の語りのみになるのだけど、映像やコミックの場合は既にカメラの視点で3人称になってるのでその意味が薄れる。でもこれは常に主人公を中心とした場面のみを使って物語を進めて行くということで、かなり一人称に近い形が作られるもので、実際小説でも3人称で書かれているけどその方法で一人称に近い形の物語を作るスタイルもよく見られる。で、そこに所々に一人称のモノローグを乗せて行くわけだけど、映画なら音声なのでそれほど邪魔になるものではないのだけど、コミックだと画面の中で物理的に場所を占めてしまう。また一方で雰囲気のある語りを作ろうとすると、どうしても通常のコミックのモノローグより長くなってしまう。セリフを常に音声として考えている人が戸惑うぐらいコミック/マンガには文字情報が入らないものなのだよね。この作品に関してはGuy Adamsはその辺のところを承知した上でこの手法を使ってるとは思うし、時々他のジャンルから来た人が初めてライターをやった時などに見られる整理されていない文字情報があふれてるような感じはないのだけど、やはりどうしても読み難いものとなってしまう印象がある。実際この作品、やはり小説よりは情報をいれられないコミックという形でこの手法に情報を集中しちゃったことで前述のものを含めたわかりにくさがあるんじゃないかなと思うのですよね。まあとにかくは個人的には結構期待の作品。今期は全6回でしたが、夏期後半に再登場しています。そちらが物語後半でそこで区切りが付くらしい。実は読む方も少し遅れていてまだそこまで届いていなかったりするのですが…。前半少し話の展開がスローだった感じもあるのですが、まあとりあえずそこまで読んでから改めて全体の感想について語ろうと思います。しかし夏期いつになったら書けるのやら…。
で、作画Jimmy Broxtonについてなのですが、なかなかにすごい画なのだけど知らなかったアーティストなので、ちょっと調べてみたら意外な発見が。実はこのAdams/Broxtonコンビ、2000AD以前にも一緒に作品を作っている。それがこちらの『Goldtiger』。こちら2013年にKickstaterを使って個人出版されたものだそうです。内容は60年代風のセックス&バイオレンスのクライムアクションということらしい。多分イギリスのコミック・ファンあたりではかなり注目されたプロジェクトなんだろうね。いや、ホントにまだ知らないことばかりで、手探りで頑張って行かねばと思うばかりです。Broxtonの方はそれ以前にもDCの仕事などもあったようだが、Adamaの方は『Ulysses Sweet』が始まったころにコミックに取り組む意気込みみたいなインタビューを見つけて読んでいたりしたのでその辺が始まりだろうと思ってたけど、もう少し前からそっちで頑張っていたのだね。調査不足で申し訳ない。ちなみにこちらの作品現在は2000AD/Rebellionから発売中です。2000ADのアプリショップでも販売されていて、実はちょっと前のセールでよくわからないまま面白そうなんで買っておいたのだが、いまだに手を付けていなかったりという次第だったりします。まあ2000ADのグラフィックノベル方面も巨匠Pat Mills作品中心にあっちこっち手を付けてまだどれも全然読み終わっていないという状態なのだが、夏期のこの『HOPE』の後半戦までにはもう少し見当がつくようにしておきますですよ。で、このコンビなのだが、その後もMadefireのモーションコミック『The Engine』を共作し、遂に今回2000ADにコンビで登場となったということなのでした。ホントにいつもいい加減にやってるわけではないのだが、どうしても一度に入れられる情報量には限度があるので、なんか後々謝りながら少しずつ知識を積み重ねて行くしかないのですよね。ずいぶん重要な情報が後出しになってしまって、Guy Adamsさん、すみませんでした。

Sinister Dexter
 Dan Abnett/Steve Yeowell
 1. One Hit Wonder
 2. Electric Landlady (Part1-2)
 3. A Rocky Start
 4. Better The Devil

さて、今年もおなじみAbnettの『Sinister Dexter』が帰って参りました!って良く調べたらレギュラー・シリーズは2015年秋以来なのか。まあ昨年はワンショットが3本あったからね。毎回アーティストが交代する今回の作画は、ベテランSteve Yeowell。
もはやおなじみの二人組ガンシャークのシリーズなのだが、まだ読み始めて日が浅くよくわからんという人のために最近までの経緯を少し説明すると、ギャングの大ボスTanenbaumを暗殺したSinisterとDexterだったが、その後別次元の並行世界から逃亡してきた同一人物がすり替わり、そのボスの座に収まっていることを知る。そんな存在がいては世界のバランスが崩れこの世界自体が崩壊する危険性がある。そんなわけで証人保護プログラムに守られたTanenbaumの居所を探し求め、遂に突き止めて再び彼に銃弾を放つが、その瞬間Tnenbaumの身体が大爆発。その爆発に巻き込まれた二人は、今度は自分たちが別の並行世界に飛ばされてしまう。そこはSinisterとDexterが存在していなかった世界。誰も自分たちのことを知らない世界の同じ町で、彼らはまた、ガンシャーク稼業を始めるのだった。という成り行きで、そろそろこの二人も新しい環境に慣れ始めてきたところ。
1. 依頼仕事で大金持ちのターゲットを襲うSinister Dexter。配下を皆殺しにして、ターゲットを追い詰めたが、屋敷の奥の難攻不落のシェルターに立て籠もられてしまう。もう追うのが面倒になった二人は屋敷にミキサー車を乗り入れ、シェルターの入り口をコンクリート詰めに…。
2. 高性能重武装の女性型アンドロイドが管理人を務める高級アパートに居を構えたSinister Dexter。これでねぐらのセキュリティは安泰だと思った二人だったが、常に大量の銃火器をストックしている二人の部屋こそが危険地帯だと認識されてしまい…。この作品はまずこのタイトルの駄洒落からから思いついたと推測。Abnettもジミヘン好きなんだろうね。青春時代の愛聴盤を見つけ、これだ!という感じで作った話なんじゃないかと思うが?
3. 俺の経営するバーに最近現れるようになった奇妙な二人組。新参者なのだがまるで昔馴染みのようにふるまう。どうやらまともな稼業ではないらしいが、店で揉め事が起こると軽く片付けてくれる。奴らの名前はSinisterとDexter…。元の世界ではなじみだったバーNoneの経営者Rockeyの視点から語られるSinister Dexter。
4. 依頼仕事でギャングのボスを暗殺に向かった二人。だがその屋敷についてみると、すでに仕事は片付けられ、現場に一人の奇妙な男がいた。先を越しちまって悪かったな。あんたらSinisterとDexterだろう。俺はDevilって名で通ってる。そしてにこやかに現場を去る男。その後二人の元には仕事の報酬も送られてきたのだが…。新キャラ登場。おそらくはこのDevilが次の展開に深く関わってくることになるのでしょう。というところで今回はここまで。今回は冬期に登場ということで、もしかしたら年内に再登場もあるかもね。新展開に大いに期待です。
作画のSteve Yeowellはかつてグラント・モリソンの英国時代の代表作『Zenith』を描いていた人で、最近の2000ADではアラン・ムーアの娘夫妻の『Black Shuck』があります。少し前に書いたことなんだけど、グラント・モリソンの『Invisible』についての研究本『Our Sentence is Up』を手に入れて、ちょっと中断してたりもした『Invisible』を最初から読み直したりもしているのですが、その一番最初のパートを描いていたのがこのSteve Yeowell。で、その頃の画と比べると、決して画力などは落ちていることはないのだけど、昔は細い線を重ねてたりしたところをベタにしちゃったりという変化があって、昔に比べるとシャープ感が薄れたような印象はある。線についての考え方は人それぞれで変わるものだろうけど、自分は昔の方が好きだったかな、という感じです。経年による画の変化というのはCarlos Ezquerra師匠の恐るべき毒が発酵しもはや解析不能の謎テイストに変化したというようなものが望ましいですね。

40th Anniversary Prog

なんだか2回に分けたのに後編も随分長くなっちまってるのだが、ここでやっと40周年記念号です。今回は2月22日に増刊として発売されました。アプリショップの方では[Specials]のところにあります。カバーを描くのはCarlos Ezquerra師匠!デジタル版ではDavid Ajaの別バージョンも収録。ではとにかく頭から順番にもうひと頑張りであります。

Judge Dredd : Blood
John Wagner/Carl Critchlow

この40周年記念号では2000号記念号と同様に各作品の前に1ページの別作家によるイントロがあります。2000号では1ページのイラスト的なものでしたが、今回はコマ/パネルを割ったものです。そしてまずDreddのイントロを描くのはあのJock!40周年記念パーティーで浮かれる『Judge Dredd』のキャラクターの面々。WalterのみならずDeathまでも。そこにおっかないドレッドが…。「何の騒ぎだ?聞いておらんぞ!2000AD?あれは前世紀に発行禁止になったものだぞ!」そして…。
そして本編。ドレッドは路地で大量の血だまりを見つけ、調査させる。DNAからその血だまりを残した者の身元が分かり、更に調査を進めるとその人物がある大物ギャングの隠し子だったことが判明する。背後で何らかの事件が動いていると察知したドレッドだったが…。
ダークで少し陰鬱な感じの押さえたトーンで語られるミステリー仕立てのストーリー。この40周年記念号では巻末にそれぞれ1ページのキャラクター紹介とライターへのインタビューを掲載された特集ページが設けられています。インタビューでのJohn Wagnerによると、40周年記念ということで自分はDreddでどんなものを書いてきただろうと考え、思いついた言葉が「血」だったということからできたストーリーとのこと。今回のストーリーがミステリ的だったことから、好きなそのジャンルの作品は?と問われて、小説作品ではなくあえてかのフランク・ミラーの『バットマン:イヤー・ワン』を挙げてるところはさすが。
作画のCarl Critchlowはイギリスの有名なイラストレーター/コミック・アーティストでコミック作品を手掛けるのは久しぶりと思われる。くわーっ!またしても知らなかったレジェンドが!とにかく素晴らしいものを見せてもらったの一言に尽きます。ああ、まだ読まねばならぬものはいくらでもあるぞ。

Zombo : Z. O. M. B. O.
 Al Ewing/Henry Flint

えーと…、こちらのイントロページはちょっと元ネタが分かりませんでした…。なんか年老いたかつての有名キャラがインタビューを受けているみたいなところのようなのだけど…。いつか分かる日も来るかと思いますが、とりあえずのところは保留ということで…。すみません。こちらを描くのはRufus Dayglo。ピーター・ミリガンと組んで『Bad Company』を復活させたり、昨年はミリガンとの『Counterfeit Girl』を描いたりと2000ADでもお馴染みになってきました。
そして!遂にあの『Zombo』が帰って参りました!このブログも『Zombo』から始まってるんだしさあ、ちゃんと続いてくんないと困るんだよ、ホントに。話は40周年記念パーティーのTharg閣下の語りから始まる。「地球人よ、40周年記念の祝祭の最中に我輩から一言だ。これは宇宙最強コミックの40周年記念であると同時に、実はZomboの40周年記念でもあるのだ。」閣下によると、実は2000ADの創刊に先立ち、AD2000なる雑誌が密かに発行されており、既にZomboは1977年にそちらで始まっていたとのこと。「だが、AD2000はスリルパワーが強力過ぎてひ弱な地球人の脳は持ちこたえられない。しかし、心配するな!この新型40スリルビューワーを通せば地球人でもこのProgを見ることが可能になるのだ!」というわけで1977年、白黒の『Zombo』の始まりでーす。イギリス秘密諜報部。今日Rubyは新たなパートナーに紹介されることになっていた。だがなんだ?この匂いは?腐った肉?その時!壁をぶち破ってその匂いの元となる醜怪なモンスターが現れる。Can I Eat You?これが今日から君の相棒となる現代科学の成果の結晶、Zombie-Human Originated By Macro-Power Bio-Puncturation、Z. O. M. B. O.だ!だが紹介もままならぬうちに、諜報部本部に侵入した敵が襲い掛かる。銃弾をものともせず、その強靭なパワーで敵の身体を引き裂いて行くZ. O. M. B. O.!しかし!これが見えないか、イギリスのクズ共!お前ら全員道連れだ!そう言い放つ男の胸には核爆弾が!そしてそのスイッチが押され、秒読みが始まる!ロンドンはあと10秒の命?続く!…あれ?時間が止まったぞ?どういうことだ?そして周囲の空間が歪み、そこからブリーフ一丁の男が現れる!あの男だ!かの女マッド・サイエンティストに騙され、出張ストリップに呼ばれたまま脳をバックアップ用にZomboの尻に移植されてしまった男性ストリッパーHarry Angel!だが俺のことはZombo Primeと呼んでくれ!そして俺は現在危機に瀕している多元宇宙を救うため、すべてのZomboを召喚しに来た!…うぬぬ!どうしたことだ?新型ビューワーがオーバーヒートし制御不能に!貴様ら地球人に見せられるのはここまでだ!さもなくば命を落とすぞ!あっ…あんまり楽しくてつい最後まで書いちまったよ。
そしてこちらの巻末インタビューでは、Al Ewing、Henry Flint両名がコンビで登場!Zombo登場はずいぶん久しぶりだけど、との問いに答えてAlさん曰く。実は『Zombo』って書くたびにハードル上げすぎちゃってもう次の展開が思いつかなくなっちゃってたんだよね…とのこと。しかし!今回のワンショットで次の展開がちょっと見えてきたとのこと!Zombo再開の日も近し!頑張ってよね。

Ro-Busters : Seeing Red
 Pat Mills/Clint Langley

こちらのイントロページは、ABC WarriorsのHammersteinとMek-Quakeの漫才。これまでの2000ADの歴史の中でもお気に入りの暴力的なエピソードをリストアップしてるのだ、と言うMek-QuakeにHammersteinは…。こちらを描くはMark Sexton。あのVertigo『Mad Max : Fury Road』の後ドレッドを何作か手掛け、すっかり2000ADファミリーの一員となってる様子。
そして、この40周年記念号では今期冬休みだった巨匠Pat Millsが、この『Ro-Busters』と『Slaine』の2本立てで登場!しかも作画は両作とも本編と同じClint Langley画伯とSimon Davis画伯という豪華仕様!さてこの『Ro-Busters』だが、あの『ABC Warriors』の前身にあたる作品で、詳しくは『ABC Warriors : Return to Ro-Busters』が掲載された2016年冬期を見てちょ。
下右ミドリが
大変キュートな
Ro-Jawさんです。
常に悪口雑言をまき散らしていたRo-Jawがここのところ妙におとなしい。挙句にはMek-Quakeに罵られても口答えもしない。さすがに心配になったHammersteinが強く問い詰めると…。
HammersteinとRo-Jawの友情を描いた楽しい一編。文句あるか?いや私もう『ABC Warriors : Return to Ro-Busters』でキュートなRo-Jawさんを見て以来すっかりやられてRo-Jawが出てくるだけで嬉しくなるんすよ。そして前作で遂にABC Warriorsに加わったRo-Jaw!今後の活躍が楽しみですな。巻末インタビューでは近年自分の色々な作品をクロスオーバーさせていることについて聞かれた巨匠は、2000ADもマーベルDCみたいに色々な作品をクロスオーバーさせればいいと思うのだよね。2000ADを始めたときに(言うまでもないが巨匠Millsは2000AD初代編集長)もっと作家に言っとけばよかったな。とのこと。実はABC Warriorsについては山ほど書かなければならないこともあると思うのだが、その辺についてはもうすぐやっと始められそうに思う「巨匠Pat Mills未来史シリーズ」を待たれよ。あ、その前に次のABC来ちゃうかも…。

Durham Red : The Judas Strain
 Lauren Beukes/Dave Halvorsen/Carlos Ezquerra

タイトルを見て、これは知らないやつだな、と思っていたら、なんとあのStrontium Dogのスピンオフ作品。というわけでイントロページに登場するのは、Johnny Alphaを除いたミュータント賞金稼ぎ部隊の面々。にこやかに40周年を祝おうとした面々だが、いつも一言あるKid(膝に顔のある人)が、おいちょっと待て、これギャラ出んのか?と言い出し、その結果はいつもの…。こちらを描くのは現在『Savage』を手掛けるあのPatrick Goddard!Goddardのベタと描き込みのバランスが絶妙な白黒画はいつ見てもホント素晴らしいんですよね。
で、Durham Redなのですが、Johnny Alphaらの賞金稼ぎ仲間のヴァンパイア・ミュータント美女ということらしい。結構昔からの人気キャラらしいが、近年の『Strontium Dog』では出番がなかったので私的には初見だったのだけど、スタンドアローンのシリーズの単行本も出ています。
荒廃した惑星Tokayで、JohnnyとDurhamは戦争犯罪人Leopold of the Gothaの裁判の証人となる生き残りの住人を探し求めていた。やっと見つけ出したその星の虚弱な原住民の生き残りの女王を説得し、証人を確保したが、Durhamは不可解な行動に出る…。
ヴァンパイアという体質ゆえJohnnyからも少し距離を置かれる美女Durham Redの峰不二子的活躍を描くワンショット。ライターDaveさんのことはちょっとわからなかったのですが、ローレン・ビュークスは日本でも翻訳が出ている南アフリカの作家。『ZOO CITY』出てすぐに買ったのだけどまだ読めてないや。そんなのばっかり…。コミックではVertigoの『Fable』のスピンオフ『Fairest』を6話手掛けています。写真を見たら大変好みのタイプの美女だったので、どちらもなるべく早く読むです。巻末インタビューではコミック・レジェンドCarlos Ezquerra師匠と仕事ができ、大変嬉しいと語っています。誰かね?師匠の描くDurham Redが兵頭ゆきさんぐらいの美女にしか見えないなどと失礼なことを言う者は?

Slaine : Red Branch
 Pat Mills/Simon Davis

こちらのイントロページは巨匠Millsの代表作の一つ『Nemesis The Warlock』の敵役の人が大ゴマでこちらに向かって説教してるというもの。『Nemesis The Warlock』は2000号に登場して、ちょっとわかる範囲で調べたりもして説明したのだけどやっぱりあんまりわかっていなかったり…。Mills未来史にも属するのでいずれはちゃんと読む予定なのだけど、今のところはすみません。ちょっとこの説教の内容もよくわかんなかった…。作画はBryan Talbot。英国コミック・レジェンドの一人でオリジナル『Nemesis The Warlock』の共作者であります。いずれちゃんと読むからね。
少年時代のSlaineが部族の精鋭部隊Red Branchに入るためのテストを受ける話。能力的には勝っているが、競争相手は次々と奇策を使い…。
落ちも含め、かなりグロテスクなユーモアに満ちた一編。『Slaine』は現在の「The Brutania Chronicles」と最初のあたり少しぐらいしかまだ読めていないのだけど、その初期からも出自については多く語られる作品なのでこういう話も作れるわけですね。これも今のところのかなりでかい宿題の一つ…。いつかちゃんとやります。『Slaine』は「The Brutania Chronicles」最終章第4部が現在2017年秋期に掲載中!

Nikolai Dante : Devil May Care
 Robbie Morrison/Simon Fraser

こちらのイントロページは、編集者ネタらしい。なにかCyber-Mattという人が見つかるのをびくびくしながら読者に40周年のお礼を述べてるというやつなのだけど、こういうのがあんまりよくわからないうちは私もまだまだ2000AD初心者なのだよねと思うのです。
で、とうとう来てしまったよ、『Nikolai Dante』。こちら1997年から2012年までの期間に2000ADに掲載されていた人気シリーズなのですが、私が読み始めたのが2013年からで、その後掲載がなく一度も読んだことがないシリーズなのですよね。いや前から気にはなってたのだけどさ。知らない昔の作品はたくさんあるのだけど、こちらはどうも色々連続した大きな話もあるようで、設定だけ書いてなんとなくわかるというものではなさそうなのですよね、これが。とにかく調べた限りで書くと、27世紀、再び勃興し地球とその周辺を支配しているロシア帝政下で、恋と冒険に生きる盗賊Nikolai Danteの活躍を描くというものらしいのだけど…。
そんなわけで話も細かいところはよくわからなかったのだけど、一応読んだ感じで書いてみると、皇帝のパーティーに出席し、ヘラヘラと楽しむNikolai Dante。だがそこに反対勢力のアサシンが現れ、破壊活動をはじめ、会場は大混乱。すわ、と剣を抜き活劇に臨むDanteであった。というような感じでしょうか。もう終わったシリーズの、ファン向けワンショットだからどうしても難しい…。最後力尽きてしまった感じで申し訳ない。いつかは必ずこれもちゃんと読むでやんす。
巻末インタビューでは、オリジナル製作チームである今回の二人がNikolai Dante誕生の経緯などを語っています。いつかちゃんと読めたらまた読み返してみようっと。『Nikolai Dante』は2000ADのアプリショップの方でもグラフィックノベル全巻揃ってるので、すぐ読めますよう。

というわけで、やっと2000AD2017年冬期終了です。いや、時々疲れて動けない日もあったけど、ほぼ毎日頑張っていたのですよ。しかしずいぶん長くなっちゃったなあ。話が長くなっちゃうのはアリだと思うけど、問題は他のことを書くのが遅れちゃうことなんですよね。とりあえずはまた頑張って他のこともなるべくどんどんやってって、これに懲りずまた2000ADの方も続けて行こうと思いますです。次回春期には『Brink』『Scarlet Traces』『the Fall of Deadworld』『Defoe』という凄いラインナップも来ちゃうのだよ。しかし折しもアメリカではNYCCが開催されている週末だったのだけど、こっちなんとか頑張らなきゃということであんまり情報もチェック出来てなかったり。今日『Constantine』のアニメのトレーラー観たけどどうなるのかね。まあ日本のアニメ事情は特殊なので、特に斜めに見られがちだろうけど、ここはとにかく色々盛り上がるといいね、という感じでイノセントに期待していこうじゃないですか。でもなかなか日本じゃ観られないだろうな…。そういえば『The Boys』に続いてルッカ『Lazarus』もアマゾンでってアナウンスもあったけど日本で観られるのかなあ。とまあコミック関連の楽しいお話も尽きないわけですが、今回はこの辺で。


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ZOMBO -2000ADのSFホラーコメディコミック-

ZOMBO You Smell of Crime And I'm Deodorant ! -ZOMBO第2巻!-



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2017年9月13日水曜日

2000AD 2017年冬期 [Prog 2011-2022] (前編)

またしてもずいぶんと遅れてしまいましたが、2000AD 2017年冬期であります。アホな使命感と言われようが、何が何でもこれだけはやらねばならんのだ。実際自分のやってるのがどの程度役に立っているのかは不明なのだけど、その歴史と内容の素晴らしさに比して、それぞれの作品の掲載ペースの間が長すぎる故どうしても一見さんにはとっつきにくい2000AD。何とか日本でも一人でも読者を増やすべく少しでもわかるやつがガイドして行かねばならんのだ、と自分を叱咤激励し何とか頑張るであります。それにしてもせっかく少し追いついたのにまたずいぶん遅れちゃったな…。
ではいつものようにまずは今期のラインナップから。

 Judge Dredd
 Kingmaker [Prog 2011-2022]
 The Order [Prog 2011-2022]
 Hope [Prog 2011-2016]
 Kingdom [Prog 2011-2022]
 Sinister Dexter [Prog 2018-2022]

と、今期はこのようなラインナップ。そして今期のトップ画像は、ちょっと出だしでゴリ押し力業感あるかなー、というところはあるけど、とりあえず先への期待もあって、Ian Edginton/Leigh Gallagherコンビによる『Kingmaker』であります!そして、前期2本立てで頑張った巨匠Pat Millsは冬休み。しかし、ただぼんやり休んでいる巨匠ではない!自身のMillsverseから6月には2000AD黎明期について綴った(のだと思うけど…)『Be Pure! Be Vigilant! Behave!: 2000AD & Judge Dredd: The Secret History』を、そして今月にはいつまでたっても私が手を付けられない『Requiem Vampire Knight』シリーズ最新刊Vol.10を刊行している!多分冬休みに頑張ったのだろうね。さすが巨匠!とまずは巨匠Millsの近況をお伝えしたところで2000AD 2017年冬期始まるよー。もう夏も終わるのに…。

Judge Dredd
 1. Deep in the Heart : Michael Carroll/Tiemen Trevallion/Henry Flint (Part1-8)
 2. Thick Skin : T. C. Eglington/Boo Cook (Part1-2)
 3. The Grundy Bunch : Arthur Wyatt/Tom Foster

現在のジャッジ・ドレッドには3人のメイン・ライターがいます。このメイン・ライターというのは、単にドレッドのストーリーを沢山書いているというのではなく、それぞれに自分のストーリー・ラインを持っている人たちのこと。まずメイン中のメインというのがドレッドの創造者の一人でもあるJohn Wagner。この人が書いているのがJudge Deathたちの話や、Chaos Dayのようなドレッドのストーリー全体の根幹にかかわるようなライン。そしてここ2年ぐらいの大きなストーリーであるTitan-Enceladusというところを書いているのがRob Williams。そしてもう一人が今回全8回にわたる「Deep in the Heart」のライターMichael Carrollです。Carrollの最近の大きなストーリーが昨年春から夏期前半に亘る未来のアイルランドEmerald Iselからテキサスにつながる3部作の大作です。テキサスと未来のイギリスの一部勢力が共謀し、Mega-City Oneを危機に陥れ、ドレッドの命も危機にさらされるというストーリーでした。実はこの話、後日譚的な数話がJudge Dredd Megazineの方に掲載されたそうなのですが、ちょっとそちらの方までは手が回らず未読です。とにかくその後テキサスとの関係は元に戻ったようで、今回の物語ではドレッドがテキサスに赴き、地元のジャッジとの協力のもと、Mega-Cityから逃亡中の重要指名手配犯の捜索に当たるというものです。
指名手配中の犯人を追い、テキサスに現れたドレッドは、地元のジャッジBrassとDukeの協力を得て捜査に当たる。どんな任務なのか、と問われても今は知る必要はない、と答える。今では独立自治区のようになり、ジャッジに似たシステムのセキュリティによって統治され、ミュータント、エイリアンをも含む五千人もの怪しげな住人が暮らすかつての巨大採油基地で手掛かりを追い、テキサスのゲットーで犯人を追う能力を持つミュータントの少女を捕え、ドレッドは犯人を追い詰めて行く。そしてその正体は…?
今回の話はかなり難易度高し…。いや、難解とかいうのでなく、少し昔からの主にMichael Carrollによるドレッドの知識が必要となってくる。今回ドレッドが追っていたのは、Sector Zeroと名乗るChaos Dayの混乱の中ジャッジ組織から離脱し、反Mega-Cityとして動いていた元アンダーカバーの一派の残党なのだが、いや、もうこの説明の時点でよくわからんという人もいるでしょう。この一派のリーダー的存在だったのがGideon Dallasという男で、それが前に出てきたのは2014年夏期のProg 1894から1899の『Cascade』という話で、異星のMega-Cityよりもさらに厳しい法体制の元多くの星を統制するLawlordsがMega-Cityを脅威に陥れるというものなのだが、実はそのLawlordsを地球に呼び寄せたのがそのGideon Dallasだったのである。その話ではDallasは途中から暗躍する感じで登場し、最終的には表に出てきて最後には射殺されるのだけど、いまいち役割がよくわからず、私もまだその頃は2000ADを読み始めて日も浅く、よくわからない人とか出てきてもそれが普通で、あんまりそこにこだわっていても先に進めなくなるのでよくわからないものはとりあえず放置という状態だったわけです。重要なキャラだったのかもしれないけどとりあえず死んじゃったし、そこのところ飛ばしても一応話はわかるしな、という感じでDallasのことには触れてもいなかったりする…。で、その更に前にこのGideon Dallasがいつ出てきたかというと、その前年2013年秋期、私が最初に2000ADについて書いた時のことで、Prog 1850-1855の『New Trick』。Mega-Cityの地下世界で起こった武装蜂起を陰で扇動していたのがこのDallasだったのだが、この時もいまいち役割が分からずまたしてもDallasのことには触れていなかったり…。なんだか最初読んだ時には今よりはるかにか細いドレッド知識で、P J Maybeと混乱していたような記憶もある。で、Dallas登場の回は以上で全部らしい。ただ、今回のMichael Carrollのストーリー自体は決してわかりにくいものではなく、テキサスでの追撃も大変楽しく読んだのだが、最後にその話が出てきて、んー、ちょっとよくわかんなかったけどまあいいか、と放置し、今回ちゃんと説明しなければ、と思ったところで躓いてしまったというわけです。そこでいろいろと調べてみて、コミック関係の結構大きなニュース・サイトであるMultiversity Comicsというところでやっとその時のレビューを見つけ何とか理解したという次第だったのでした。前の『Cascade』の時も何とかその『New Trick』で出てきたやつだというところまでは把握してたのだけど。ただよく考えればずっと正体不明で今回明らかになったというところなのかな。『Cascade』でLawlordsが出てきたときにはまだこんなのもいたのか、と思ったのだけど、Multiversityさんによると、実はその前にはMegazineの方でJohn Wagnerの書いた話に1回出てきただけだったらしい。Michael Carrollというのは時々こういうことをやる人らしいですね。今回はCarrollがずいぶん前の話を引っ張り出してきて、やっと決着をつけたということで、そのMultiversityさんの方でも若干呆れ気味でした。まあ所詮は私もまだ2000AD初心者の域を出ない辺りですので、ちょっと混乱気味になってしまったところはご勘弁ください。それにしても今回はMultiversityさんのおかげで助かったよ。今回初めて知ったのだけど、結構大きなところで少年ジャンプのレビューとかなかなか面白い記事も多いので、知らなかった人は要チェックだよ。

Multiversity Comics

しかし今回はなんとしてもそろそろ2000ADだけはやらねばならぬ!と勇んで2週アップを目指して取り組んだのだが、これで躓いてるうちにもう1週間以上過ぎてしまったよ…。今回は40周年特別号もあるのに…。何とかここから頑張るっス。あ、くどいようだけど最後にこの分かり難いところあるけど基本的にはCarrollのこの話面白かったですよ。そして今回の作画は前半4話が『Absalom』(最近単行本2巻目出たよ)のTiemen Trevallion、後半があのHenry Flint様である。『Absalom』では独特のグレイトーンを使って素晴らしい画を見せてくれるTrevallionだがカラーもなかなかの見物。やっぱ配色のセンスとかさすがですね。優れたアーティストの多い2000ADでFlintの描くドレッドこそが本当のドレッドだ、などというのはちょっと言いすぎだとはわかっているのだけど、Flintの岩に彫ったようなドレッドには本当に愛着あるのですよね。

2. TV番組に出演中のタレントが番組中に皮膚が突然崩れるように崩壊し死亡するという事件が続発。事件の背景にはタレントたちが違法に入手していた薬物が関係していることが突き止められたが…。
ライターは以前アレステア・レナルズ風のSF『Outlier』を書いていたT. C. Eglington。Boo Cookは一番活躍していた時期が私が2000ADを読み始める前で、それほど作品を見れてないのだけど、それでも皮膚が崩れ骨や内臓が飛び出すみたいな画は本当に得意なのだろうな、とわかる感じのグロテスクとブラックユーモアの方向が得意なアーティストです。この作品なんかもBoo Cookありきで書かれたんだろうな、と想像できます。

3. Bob Ross Wildlife Domeという自然環境保護ドーム施設にThe Church of Grud and Gunというカルト組織に属するGrundy一家が武装して立て籠もる。侵入手段を模索する対策班にドレッドがある策を提案する。
こちらはレトロ画アーティストJake Lynchと『Orlok, Agent of East-Mega One』シリーズやドレッドを書いていたArthur WyattがTom Fosterと組んだワンショット。Tom Fosterももう新人と紹介するには時間も経ったところでしょうか。登場の度に印象的な仕事を見せてくれるのだけど、そろそろこれという代表作が欲しいところ。今回の作品のFosterの制作過程が前回お知らせした2000ADのYOUTUBE”FROM THE DRAWING BOARD”に上げられています。ペンシルでの下描きを一旦PCに取り込み青でプリントしたものをトレースしてペン入れするというこだわりの手法を見せてくれます。



Kingmaker
 Ian Edginton/Leigh Gallagher

今期より始まった今や書く作品にハズレ無しぐらいの勢いのIan Edgintonと、あの『Defoe』『Aquila』のLeigh Gallagherという恐るべきコンビによる新シリーズ!ファンタジーSF大作の開幕です!いや、最初にちょっと力業感とか言っちまったけど、やっぱり個人的な感想かもしれない…。こーゆーのが嫌いとかいうわけではないのだけど、ちょっとあんまり得意じゃなかったり。例えばRPGとかで最初にその世界の伝説とか成り立ちとか重々しいナレーション付きで延々とテキストスクロールしながら語られて始まったりするじゃないですか。一応少し一所懸命聞いて読むのだけどなーんだか右から左にすかーっと抜けて何が目的かもすっかり忘れていつの間にかはぐれメタルハンターになっているというタイプなのですよね、私…。でこの作品、そんな感じでこれから30年ぐらい続く超大作始まるよーって感じで始まってしまって、こんな私にきちんと説明できるか今ひとつ自信がないのだが、とりあえず頑張ってみるです。
暴王Ichnarの圧政を下してから2000年、世界は9つの王朝により統治され平和を保っていた。しかし、その骨が地中から掘り出された時、Ichnarは蘇生復活し、再び世界には闘いがもたらされる。それぞれの王朝から集った様々な種族の勇者たちの決死の闘いにより、再びIchnarは下されるかと思われた。だがその時!空に現れた謎の巨大宇宙船によりすべての闘いは中止される。そして…。

酒場でそんな伝説を語る老人に酔漢が絡む。しかしその老人Ablardは実はその闘いの勇者の一人の魔法使いだった。うっかりAblardがその力を見せた時、ただの酔漢と見られた男は懐から異星の武器を出し、Ablardを制圧する。実はその男は密かに異星人たちに魔法とかかわりのある者を狩るように雇われていた一味の一人だった。男たちが意識を失ったAblardを連れ去ろうとしたとき、酒場にいたフードを目深にかぶった男が剣をふるい、Ablardを救い出す。
Ablardを救ったのはその星の下層種族であるOrc族のCrixus。彼は虜囚となっていた北の地で目撃した事象について、Ablardに語る。謎の巨大宇宙船の襲撃に遭い、絶体絶命化と思われた時、大地からその宇宙船をもしのぐエネルギー体の巨大な手が現れ、その宇宙船を握りつぶしたというのだ。命を救われたCrixusはただこの世界が危機に瀕しているという思いに駆られ、その事象の意味が分かる者を求めながらさ迷っていたのだった。
その星を襲った異星人の目的は、惑星が持つエネルギーを吸収すること。そして、そのエネルギーとは魔法に相当するもので、多くの星からそのエネルギーを吸い取ってきた異星人たちだったが、その彼らが驚くほどの無尽蔵とも思えるほどの魔法エネルギーがその星には存在している。そしてそれを効率よく集めるため、異星人たちは魔法に深く関わる者を捕獲していたのだった。
AblardとCrixusには更に追手が迫り、彼らは半植物族Drayadの、かつてのIchnarとの闘いを共にした王Tychoの統治する領域Drayad Glamourに逃げ込む。しかし、種族の生き残りを優先させるTychoはすでに異星人たちと手を結んでいた。Ablardを異星人の手に渡そうとするTychoだったが、その娘である姫Yarrowは父の考えに抗い、Ablardたちを救い出し、ワイバーンに騎乗しDrayad Glamourを脱出する。彼らを更に追い詰める追手の異星人部隊。絶体絶命のピンチに再び、かつてCrixusが目にしたのと同じ青白いエネルギー体の巨人が出現する…。

とりあえずは頑張ってみましたけど、お分かりいただけたでしょーか?色々抜けてたり勘違いがあったらごめん。ワイバーンは、ワイバーンって書いてなかったけど、こんな感じのそう呼ぶはずだよな、と思ったのでそう書きました。いわゆる「超訳」的テクニックですね。まあ、ご覧の通り、魔法が出て各種族が共闘したりとか、本当に王道ファンタジーSF大作って感じの話です。EdgintonもGallagherと組んでちょっと今までとも毛色の違うやつを出してきたかなという感じ。Edginton作品は『Brass Sun』や『Helium』を見ても最初に独特の設定、世界観を持ってくるので、どうしても最初力業感が出てしまうのだけど、今作はその辺の情報量が多いので、個人的かもしれないけどやっぱりいつもよりそれが強い感じがしました。しかし、やっぱりEdgintonはさすがに話の進め方とかが上手いので、読み進めているうちに設定や世界観の方には徐々に慣れていけました。でもやっぱりへっぽこRPGプレイヤースキルを発動させてしまい、最初の暴王(超訳)Ichnarのくだりはあっという間にうすぼんやりとしてしまっていたけど…。まあなんにしても本当に楽しみな新シリーズ、とりあえずは頑張ってちゃんとついていきたいと思うところです。それにしてもEdginton、一方ではちょっと因縁のぐらいにも見えるD'Israeliとの『Scarlet Traces』を遂に再開し、またこっちではこんな大作をぶち上げちまってるところでは、『Brass Sun』『Helium』あたりは当分お預けかも…。かなり期待してるんだけどなあ。あと多分次ぐらいで完結しそうな『Stickleback』も…。
そしてもう一方では、昨年『Defoe』『Aquila』両作を降板し、どうしたのだろうかと思っていたLeigh Gallagher先生が遂に再臨!これのための降板だったのかと思うと、この作品への力の入り具合も分かるものでしょう。得意のバイオレンス・アクション描写も素晴らしいし、相変わらずの恐るべきキャラクター造形!まず主人公であるOrc族のCrixusがカバー画像手前の緑のヤツ!こんなの絶対感情移入できねえ!そして老魔法使いAblardはニヤリと笑えばどこから見ても恐ろしい悪人面!Yarrow姫は…、多分日本の皆さんが頭に浮かべた姫とはどれも絶対似ても似つかないよっ!いやーオイラLeighやんの画がまた見れて幸せだよう。そんなGallagherさんの今回のカバー画の制作過程が”FROM THE DRAWING BOARD”に上げられています。カラーリングの模様だけだけど、早回しでかなりきっちり見せてくれます。この”FROM THE DRAWING BOARD”本当に素晴らしいのだけど、一時期いくつか上げられたのみでその後ストップしてしまっているのは残念。2000ADさんまた頼むよう。ただでさえ長いのが余計長くなっちゃうのだけど、あんまりないしできるだけこっちにも紹介して行きます。あとLeighやんのマジックもお見逃しなく。



The Order : Wyrm War
 Kek-W/John Burns

『Deadworld』シリーズのKek-WとベテランアーティストJohn Burnsによる、歴史の陰で時空を超えて侵略してくる謎のWyrmと闘い続けるグループThe Orderの活躍を描く2016年冬期に続くシリーズ第3シーズンです。
死の床にあるシラノ・ド・ベルジュラックは親しい友人に今まで誰にも語つたことのなかった自らの秘密を書いた手記を渡す。ベルジュラックもあのThe Orderの一員だったのだ。Wyrmとのある戦いの中、彼は美しい人間の女性の姿を模したWyrm、Donaと出会う。彼女は人間として暮らすうち、より人間にシンパシーを感じ、この世界を侵略しようとするWyrmには反感を抱いていた。Donaを信じ連れ帰ったベルジュラックだったが、グループ内は彼女を信じないものとに分かれ、対立は深まって行く。一方、時空を超える能力を持つWyrmの作戦により、古参メンバーであるAnnaはその存在を根本から抹消され、メンバーの記憶からも消し去られる。ロボットゆえに彼女の記憶を持ち続けていたRitterstahlは、愛する彼女を失った悲しみに落胆し、作戦を続ける意思も失う。そしてメンバー内でDonaをめぐる衝突が闘争に発展したその時、時空のひずみを抜け、パラレルワールドのRitterstahlが現れる。彼はAnnaを消滅させるに至った増大するWyrmの攻撃に対抗するため、様々な並行世界に存在するRitterstahlの力を結集すべく次元を越えやってきたのだった。ベルジュラックとDonaも闘争から逃れるため、Ritterstahlとともに時空のひずみを抜け、それまで暮らしていた世界から脱出する。彼らが着いたのはネオ・アトランティス。かつてマヤ王国の女王だったItzaが統治し、共に戦ったThe Orderのメンバーもそこに暮らしていた。数々の並行世界から集められたRitterstahl達もそこを拠点としている。だが、その位置も隠されていたはずのネオ・アトランティスにもWyrmの群れが襲い掛かる。そしてRitterstahlとかつてのメンバーは反撃のためWyrmの本拠地への侵入攻撃を図るのだった。
えいっ。どうもとかく話の進め方が強引なKek-W作品ゆえに、こちらもちょっと強引に書かせてもらったよ。ちょっとわかりにくいかと思うのだけど、第1、第2シーズンについて書いたのも参考にしてください。ちなみにAnnaは第1シーズンから、Itzaは第2シーズンから登場するキャラクターです。詳細はそちらで。Kek氏への不満は2016年春期の『Deadworld』で散々書いたので繰り返すことはしない。つーかなるべく前向きに良いところを見るように努めたいと思うのです。まあベテランJohn Burnsの腕もあるのだろうけど、少し強引なコマ運びになってしまう展開も減ったように思えるので、いくらかアーティスト協調して作品を作る方向に改善されたのではないかと思うのと、あと今回は随所にシラノ・ド・ベルジュラックの手記によるモノローグを使ったところで少し話も分かりやすくなったような気もする。本来あんまり推奨されないカコミによるモノローグかもしれないけど、Kek氏の作風ではある程度使っていった方がわかりやすくなるのではないかと思う。若干希望的な観測かもしれないけど欠点が解消される方向に向かっているのではないでしょうか。基本的にはKekさんには期待しているのだよ、私。それが本当に彼の目指すところなのかは不明だけど、ちょっとECやWarrenといった感じの方向も嫌いじゃないしさ。頑張ってよね。とはいえこのシリーズどうしてもこれまでの積み重ねもありわかりにくいところが多いのだけど。まあ、The Orderという組織の背景だとかAnnaやItzaの長命の秘密とか、あと目も手もなく基本的には蛇より知能が低そうに見えるWyrmが知性的な攻撃をしてくるところがどうしても説得力がなく呑み込みにくいとか、そういうことはあまり考えない方がいいのかな。最近2000ADからは単行本第1巻も出版されたこちらのシリーズ、今シーズンの最後は結構大団円ぽかったけどまだ続くそうです。とりあえず、少しわかりにくくても名匠John Burnsの美しいペン画だけでも見る価値はあり。

というところで、今回はここで急遽前編ということになって、いったん終了です。いやホントは最後までやるつもりだったのだけど、いい加減ずいぶん時間もかかってるし、長くもなっているので。今回は40周年記念号もあるしな…。今回、週末一回私用でつぶれたりもしたけど、結構頑張って書いてたのですよ。しかしどうにも難易度の高いものが続いてしまって…。後半はもうちょっとスムーズに進むと思うのだけど。日本じゃ誰も何も言ってないみたいだけど、英国ではかなり盛り上がってるはずの、ドレッドのTVシリーズについても次回詳しく、とか思ったけど、結局2018年というぐらいしかまだ情報ないみたいね。そういえば、紆余曲折を経てあの『The Boys』が遂にアマゾンでシリーズ化とか、以前にパイロット版制作決定ぐらいにお伝えした『Happy!』も順調にシリーズ化とか色々あるけど、日本で観れるのかねえ。さて次回予告!お彼岸のお墓参りでまたちょっと遅れるかも…。いや、その前に終わらせるつもりで頑張るでやんす…。ごめん。


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