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2017年3月25日土曜日

2000AD 2016年秋期 [Prog 2001-2011]

年明けすぐぐらいにやる心づもりではありましたが、なんだかんだで遅れてしまいました2000AD 2016年秋期です。まあ、まだ許容範囲…ですよね?
それではまず今回のラインナップから。

 Judge Dredd
 Flesh [Prog 2001-2010]
 Hunted [Prog 2001-2009]
 Savage [Prog 2001-2010]
 Counterfeut Girl [Prog 2000-2008,2010]

今期は記念すべき2000号に続き、連載作品も超豪華!巨匠Pat Millsの代表作2本立てに加え、Gordon Rennieによる『Rogue Trooper』に連なる作品、そしてピーター・ミリガン最新作というラインナップで、どれがトップ画像でもよかったのですが、その中で今回限りの単発作品であるゆえ『Counterfeit Girl』を選びました。トップ画像と言えば今まで画像を借りてた2000ADのサイトが40周年の今年に合わせ、全面的に新築されてしまったので、今までの画像が全部パアになってしまいました…。色々いい加減にしているのは多いのだけど、これだけはある程度アーカイブ的に役立てれば、と思っているので、なるべく早く何とかしようと思います…。

Judge Dredd
 1. Get Sin : Rob Williams/T. Hairsine & B. Kitson/Dylan Teague (Part1-3)
 2. Act Of Grud : Rob Williams/Henry Flint (Part1-3)
 3. The Cube Root Of Evil : Arthur Wyatt/Jake Lynch (part1-3)
 4. In Denial : Michael Carroll/Andrew Currie

1、2はRob WilliamsによるTitanサーガのその後。Titanサーガとは2014年冬期のTitanに始まり、2015年春期のEnceladus - New Life、同年夏期のEnceladus - Old Lifeへと続いたストーリーです。犯罪に関わったジャッジの刑務所惑星であるTitanにおける陰謀、そして派遣されたドレッドとの闘争の末、衛星Enceladusへと逃亡した囚人たちが、死の間際に一体化したEnceladusの生命体の力を得て、復讐のため帰還したMega-City Oneを危機に陥れるという話。Titanの方は『Judge Dredd : Titan』として単行本化されていますが、後半Enceladusの方はまだ単行本としてはまとめられていません。とすでにちょっとややこしいことになっているのですが、今回の1、2ともに以前Enceladusのあらすじで省略してしまった部分からつながったりするので、また説明を加えながら、という感じで行きます。

1. トナカイにまたがった部隊を率い旧シベリアに潜入したドレット。その目的地は東側Sovsの秘密基地、そしてそこにはTitanで囚人となっていたかつてのチーフ・ジャッジが捕えられていた。
Enceladus - New Lifeの最後で死に瀕した囚人グループがSovsの部隊に襲撃されるという場面があり、それが今回のストーリーにつながってきています。Sovsの目的は元チーフ・ジャッジからMega-City Oneの情報を引き出すこと。この元チーフ・ジャッジはDay of Chaosより以前にP.J.Maybeと組んでCity乗っ取りを謀った人物らしく、Day of Chaosの単行本『Day of Chaos:The Fourth Faction』の冒頭で逮捕されてTitanに移送されるというシーンがあります。自分もDay of Chaosがやっとのところなのでそっちの事件の経緯はわかりません。その後、シティのチーフ・ジャッジは現在のHersheyが勤めています。ちなみにこのHersheyはスタローンの『ジャッジ・ドレッド』にも登場してドレッドを助けていた女性で、現在Complete Case File Vol. 4に収録されているJudge Childというストーリーから登場しています。あと今回はあのジャッジ・アンダーソンも登場。ちなみに夏期のアンダーソンに関しては、その後のお便りコーナーで「あのアンダーソンはちょっと…」という声も寄せられていました。少なくともイギリス人の美的感覚も日本人に理解不能なものではないようで安心しました。
2. 以前Enceladus - Old Lifeのあらすじを紹介した時には、その結末を書いていなかったのですが、Cityの攻防戦と並行する形でEnceladusへ派遣された調査隊のストーリーが描かれており、その調査隊が地底の遺跡で謎を解き氷に保存された囚人たちの遺体を破壊したことでCityは救われる、というのが結末でした。地底の遺跡への途上、隊員たちは次々と倒れ、最後にただ一人生き残りCityを救った青年ジャッジSamが今回の主人公です。
Enceladusの地底遺跡で待ち、酸素も尽きる寸前で救出されたSam。人智を超えたものを目撃し、死の淵を見た彼は元いた建築関係の部署を離れ、Cityでのジャッジの任務に就くが、奇妙な違和感から逃れることができずにいた。そんな彼がドレッドに命じられた保護された証人の監視任務に就いた時、彼の目の前で監視対象の男が見えざる手により殺害される。
犯人はEnceladusのエネルギーを利用したステルスと同時に壁抜けもできる装備を装着した暗殺者で、Enceladusで調査活動に当たっていたSamがその秘密を見抜く、という展開になるのですが、暗殺者の正体は不明のまま終わります。1,2ともTitanサーガのその後の話なのだけど、多分Rob Williamsラインの次の展開の始まりというところと思われます。ちょっとこの2の方は表のSamの話の後ろに色々詰め込みすぎた上に次に続く謎を残して終わったため、少しわかりにくい話になってしまった感じ。最後のページもかなり画も小さくなってたり。とりあえずは、Rob Williamsの次の展開に期待。
1の作画コンビに関しては多分初見だと思うのだけど、不明。第1回がこの名前になっていて、2,3回はT. Hairsineと最初にカラーリストとしてクレジットされていたDylan Teagueとの連名になっています。どういう事情かも不明。画については日本のマンガに近い感じの線による見やすい迫力あるタッチです。2は言わずと知れたHenry Flint!どちらにもGerhartが登場していて、この人はJustice Departmentの内務調査部であるSJSに属しており、かつてはDay of Chaosにドレッドの責任があるとして追及していたのだけど、Titanで共に戦ってからはドレッドに全幅の信頼を置いている。Titanで体のほとんどがアンドロイド化していることが明らかになり、それゆえ不死身のドレッドとともに唯一生き残ったのだけど、以来顔面がとりあえず応急修復したツギハギ状態で歪んでいる。1ではさすがにそろそろ直しただろうと思って普通の顔で描かれているのだけど、2のFlint画ではまたツギハギに。GerhartについてはTitan以降はFlintしか描いていなくて、ちゃんと打ち合わせなかっただけの行き違いだろうけど、なんだかFlint先生がツギハギ面に異様にこだわってるようにも見えてちょっと可笑しかったです。あ、でもSamがGerhartの顔を見てぎょっとしてる話しの流れから見て主にRob氏によるミスか。

3. ドレッドは同僚Judge Orvilleに呼び出され、様々な素材から食料を作り出すマシンの開発に携わった功績のある女性科学者Merissa Bierceの自宅での市民栄誉賞の授与へ同行させられる。Merissaはかつて研究所へのテロ攻撃で命を落としかけて以来、自宅での研究を続けている。彼女にはその事件以来、ある暗い秘密が隠されていた。そして、彼女の自宅周辺では失踪者が相次いでいた…。
2015年前半(冬期春期)に掲載されたOrlok, Agent of East-Mega Oneシリーズのコンビによるサイコ・ホラー。Jake Lynchについては登場の度に昭和も40年代ぐらいの少年マガジン風レトロ画と言ってきたのですが、今回の作品を見るとなんとなくArthur Wyattのストーリーにも少しそっち風があるように感じられ、ちょっと異色のいいコンビなのではないかと思えてきました。Orlok再登場の予定があるのかは不明だけど、このコンビでまた頑張ってほしいところ。2000ADカバーではカラーの迫力あふれるドレッドを度々描いているLynchですが、コミックの方はいつも白黒。しかし、今回はドレッドということで初めてカラーの作品を見ることができました。やっぱちょっとレトロ風なのだけど。最近2000ADではYOUTUBEで”FROM THE DRAWING BOARD”というアーティストによる制作過程を紹介するシリーズが始まっており、そこでLynchによる今回の作品のものが取り上げられています。最後に線を青に変えているので下描きだと思うけど、なんとLynchさん日本のClip Studio(北米・ヨーロッパではManga Studioらしい)を使っていたのですね!てっきりボンナイフで削った鉛筆だと思っていたよ。しかしクリスタに関しては私もまだ日が浅く練習中ぐらいの感じなのであまり事情も分からないのだけど、ずいぶん世界に拡がっていたのですね。


4. 逮捕され、道端の鉄柱に手錠でつながれ連行を待っていた男。しかし、緊急呼び出しが掛かり、逮捕した女性ジャッジは男をその場に残しそちらに向かう。そのまま身動きも取れず放置される男だったが、いつまでたってもジャッジは戻らず…。
逮捕したジャッジが向かった現場で死亡し、連絡が届かないままになってしまったという事情で、不運な男の話のようだが、最後に彼がChaos Dayは嘘だ、とするビラを配っていたことが明らかになるというオチ。アクションよりはユーモア方向に強そうな作画Andrew Currieの画は見たことあるような気がするのだけどちょっと思い出ません。でもこのドレッドの顔は初見かも。今回はワンショットだったMichael Carrollは年明けからドレッドのテキサス方面での新展開が始まります。


Flesh : Gorehead
 Pat Mills/Clint Langley

23世紀、食糧危機に陥った人類はタイムマシンを使い原始の地球の恐竜を食料ととして運び込むことでその解決を図るのだが…、という設定の巨匠Pat Millsの代表作の一つであるSF恐竜ウェスタンが2013年秋期以来の久々の登場。2013年秋期というと私もこれを始めたばかりで結構雑だったりもしたので、なるべく修正を図るべくわかる範囲で頑張ってみます。ちなみに作画は前シリーズではJames McKayという人で、70年代最初のシリーズが出た頃とあまり変わらないんじゃないか、という感じのレトロ画だったのですが、今シリーズからはあの現行『ABC Warriors』を手掛けるClint Langley画伯!というわけで今回も素晴らしい画伯によるカバーを並べてみました!あ…、前のABC今無くなってるから修正しなきゃ…。
この物語ではTrans-Time Corporationという大企業が独占的に恐竜の肉を供給することにより莫大な利益を得て、世界を裏で支配しているという状況。だが、そんなやり方で時間に干渉するのがそもそも問題があり、そのせいで様々な事故も起こっている。この物語の主人公となるのはそのTrans-Time Corporationと闘う美女Vegas Carverとその父親Claw Carver。Vegasの配下はタイムマシンの事故によりミュータント化してしまった恐竜人間の軍団。父親Clawもその事故で片腕が恐竜の爪のような鉤爪となっている。ちょっとその辺の事情はよく分からないのだけど、Clawは一度死にかけたところを助けられた代償に現在はTrans-Time CorporationのPastor Sundayの配下となっており、Vegasをその手で殺すべく動いている。前シリーズの最後でVegas達は自分たちの側の人物を大統領として選ばせることに成功し、過去の地球とをつなぐタイム・ゲートを閉じることを公式に宣言させる、というところまで。と書いてみるとやっぱり自分もわかってないところ結構多いなと気付いたり。以前に読んだときは恐竜でウェスタン?とか思ってしまったのだけど、今になってみるとこの設定でウェスタンができると思いついた巨匠Millsのアイデアってさすがだと思います。1977年の創刊号から79年まで続き、90年代に復活したのが第2期、そして2011年からJames McKayの作画で再開されたのが第3期というところでしょうか。そしてClint Langley画伯の作画により3年ぶりの再開となったのが今期のシリーズです。
タイム・ゲートの閉鎖は宣言されたが、なおもTrans-Time Corporationは恐竜の肉を過去から運び続ける。過去の地球で恐竜を運搬する部隊に付き添うPastorとClaw。しかしそのような強引な過去への干渉がもたらした結果なのか、原始の恐竜たちを絶滅させた地球への大隕石の落下が既存の歴史より早く引き起こされる。急激に環境の変化をもたらした嵐の中、Vegas、Claw、Pestorの対決の時が迫る!そして、時を同じくし、最強のティラノザウルスGoreheadもその眠りから目覚める!
Goreheadは画像の方にも登場している顔に「666」が入ったティラノザウルスで、このシリーズのもう一人の主役という存在らしい。前シリーズでVegasがNew New Yorkに運び込み大パニックを引き起こしたのもこのGoreheadだったと思います。2000AD初期にはドレッドと闘ったこともあり。
ABCではカラー・白黒で様々な画風を見せてくれるLangley画伯ですが、今回『Flesh』ではひたすらリアルなタッチの白黒画です。まあ、一色でここまでできるのか、とただ見とれる感じ。今期最終話の掲載されたProg 2010では、普段表紙の次の最初のページにあるはずの目次でもあるTharg's Nerve Centreが『Judge Dredd』、『Flesh』の次に来ていて今回はなぜこういうページ構成なのだろうと思ったら、Langleyドロイドの見開きページを成立させるためにはこの解決法しかなかったとのこと。かなり盛り上がったいいシーンで終わった『Flesh』ですが、今年は『ABC Warriors』が来るだろうから次の登場は早くて来年末ぐらいかな。気長に楽しみに待つであります。

Hunted
 Gordon Rennie/P. J. Holden

人気シリーズ『Jaegir』に続き2000号では『Rogue Trooper』ワン・ショットも手掛け、現在のNu Earth方面を一手に引き受けている感のあるGordon Rennieですが、今期掲載の『Hunted』はその2000号の『Rogue Trooper』(詳しい設定などについてはリンクの2000号の際の説明を読んでください)の続きともいえる作品です。しかし今回主人公となるのはRogueではなく彼が追い続けている裏切り者の方。この人物そもそもはSouther側の軍上層部に属する人間で、RogueらG.I.(Genetic Infantrymen)部隊の情報をNortサイドに流した後もしばらくSoutherに残っていたのですが、Rogueが裏切り者が軍上層部の一員であることを突き止め、司令部のある衛星に現れたとき、もはや正体を隠しSouther側に残るのは不可能と察知し、衛星を破壊しNu Earthへと脱出カプセルで降下。以来逃亡を続けることとなります。このあたり『Rogue Trooper』のシリーズ序盤の展開で、私もそこからまだあまり進んでいない状況なのであまりはっきりしないのですが、この男逃亡中の事故(前述の脱出カプセルでの降下中のように描かれているので多分そうだと思うのだけど)で全身に大やけどを負っており、そのため体調管理に常に医師を必要とし、今作の中では全滅させたNort部隊の生き残りの女医を同行しています。過去にはNort側の保護を受けていた時もあったようですが、今作の段階ではそちらからも離れて単独で行動しています。そしてその女医の他に、失敗作としてNu Earth上に遺棄され一人さまよっていた初期に遺伝子操作で作られたG.I.の生き残りを見つけ出し配下として連れています。ひたすら逃亡を続け、行き場のなくなっている彼ですが、今作では反撃に。あらゆるものを商売とする異星人とG.I.の技術と引き換えに平和な生活を取り戻すべく契約を結び、Rogueの捕獲を謀る。溶岩地帯に潜み、Rogueをおびき寄せ罠を張るが、同地には降下中の事故で迷い込んだ、Nort部隊に属するJaegirの姿もあった…。
というわけで、遂にJaegirとRogue Trooperの物語が重なるのですが、現在『Jaegir』で語られているよりは少し前の話。自分もかなりスローペースだけど『Rogue Trooper』については読んでいるところで、あまり先を知りたくなくて調べていないのだけど、多分Rogue Trooperの話はもうこの先の展開がないような形で終わってしまっていて、それゆえにJaegirと絡ませるとなると、過去の話にするしかないのでしょう。『Jaegir』の中で以前語られ、彼女のトラウマともなっている事件の真相が、今作では明らかになります。追われる側からの視点で、新たな設定を加えるという形で、Gordon Rennieによる新たなRogue Trooperのストーリーが始まったところなのでしょうが、なにせ『Jaegir』の他にも『Absalom』、『Aquila』といった人気シリーズを抱え多忙なRennieゆえ、次の登場はしばらく先になるでしょうが、とりあえずは期待して待とうと思います。
そして、今回の作画はあのP. J. Holden…。いや、本当にこの人の画は嫌いじゃないんだが、あまりにも男性に特化した感じで…。(詳しくは2016年夏期 前編を読んでください。)序盤から登場の女医に関してはおとなしいキャラ故それほど問題はなかったが、Jaegir登場でどうなるか、と思われたが終始分厚い防護服を着用し、あまり広くないヘルメットの窓越しということでそれほどの甚大な被害には至らずに終わりました。(そんな言い方ないだろ)いえ、Holdenさんにも今後もなるべく男性に特化した方向のストーリーで活躍してもらいたいと思います。

Savage : The Marze Murderer
 Pat Mills/Patrick Goddard

2015年冬期以来の登場となる、架空の1999年のイギリス侵略から宿敵Volganと闘い続ける不屈のレジスタンス闘士Bill Savageの物語です。ここ数年は『ABC Warriors』と1年交代で年の初めの冬期に掲載されていた『Savage』ですが、今回は多分2000号記念特別仕様でちょっと早めに登場。前回はめでたくイギリスがVolganの支配から解放されたが、戦後の混乱期アメリカのイギリスへの力が強まり、またロボット部隊の投入での功績から力を強めるQuartz社への懸念が高まるという社会状況の中、過激派による暴動の陰で密かにQuartz社CEOHoward Quartzを始末したSavage。しかしQuartzはロボットの身体を得て生き延び、Savageへ復讐を誓う!というABC Warriorの最大の敵でもあるロボットHoward Quartzの誕生も描かれた展開でした。
そして今回の物語の舞台となるのは、Volgan支配下のベルリン。イギリス解放の後もレジスタンスとして戦い続けるSavageは、あるバーの経営者として潜入し、警察とも賄賂で結びつき情報を集めつつ、密かに活動を続ける。彼の目的は戦局を変えるとまで言われている謎のThousand Year Stareの謎を探ることだった。しかし、時は3月。彼の妻子が殺害され、彼を果てしないVolganとの闘いに導いた月である。復讐の亡霊に取りつかれたSavageは、自らの任務とは無関係に相棒のショットガンを手に夜のベルリンの路地裏でVolgan兵を無差別に殺害し始める。腐敗した警察はその犯人の手掛かりすら得られずにいたが、セクハラの告発で恨みを買い交通課に左遷されていた女性刑事Nikaだけがその犯人の動機を見抜いていた…。
前回に続くシリーズの展開はQuartzとの戦いになるのかと思っていたけど、今回はそちらがらみの話はなくHoward Quartzも登場しませんでした。が、Thousand Year Stareの謎はそちら方面につながる気配あり。今期はその正体も明らかにされなかったが次シーズンはThousand Year Stareが話の中心となってくると思われます。それまでにABCでもそっち関係の動きがあるかも。ちなみに前回の時騒いでいたMills未来史についてですが、まだ最初にと読み始めた『Invasions!』がやっと半分ぐらいという始末…。まあSavageがレジスタンスになった経緯ぐらいはわかったし、Bill Savage大将にもずいぶんなじんでは来ているのだが…。いやまあ特に初期の2000AD物はとにかく1ページ当たりの情報量も多く時間もかかる上に、1話5ページぐらいの中で熱量高いから1話読むとすぐおなか一杯になっちゃうし。同じ巨匠Millsの『Slaine』やら『Dredd』やら『Rogue Trooper』も遅々として進まずという状況で、何とか早く読んで書かねばとは思うのですが。あとFantagraphicsの『Love & Rockets』とかDarkhorseの『Creepy』のアーカイブなんかも同じような事情で随分かかってるけどなかなか進まんしなあ。ってゆーかそんなにあっちこっち色々読んでるから進まないんじゃないの?いやまあ…。
今回も当然ながらPatrick Goddardの作画は素晴らしい。本当に存在感のあるという感じの白黒の力強く緻密な作画です。今回は、うー、ほらあれだよヨーロッパの、フランスの映画の、うー、読んでる頃からずっと思ってるのだけどさっぱり名前が出ない…。最近映画観れてないからなあ…。とにかくそれ風の静かで冷たい空気の中を鋭い音が突き抜けるようなすげーかっこいい感じです。フランス好きの巨匠Millsだけに、今回はあれでいこーぜ、って打ち合わせて、それでもそれを実現できるGoddardの画力はさすが。あれ風画面の中をバイクに変形する犬型ロボットが疾走するのはホントにしびれました。すごいぞGoddard!私がどうしても思いつかなかったあれに関しては、見ればなんとなくわかるのではないかと思いますので…ごめん…。あと巨匠Millsに関しては、ちょっと前に書いたけど初の小説作品についてもなるべく早く読んで書く予定です。

Counterfeit Girl
 Peter Milligan/Rufus Dayglo

2015年秋期の『Bad Company』復活による復帰に続くピーター・ミリガンの2000ADでの新作!その際故Brett Ewinsに代わりペンシラーを務めたRufus Daygloがアーティストとしてコンビを組みます。こちらは2000号記念号から開始の作品です。
Libra Kelly、I.D.偽造屋にして、世界最大の企業Albion Corporationと闘うゲリラ。個人情報がすべて個人の上に書かれたデータ化された未来社会。そのデータを完全に書き換えてしまえば全くの別人になれる。彼女の仕事は闇社会で盗み出した個人データで身元を変える必要のある人間を別人に作り変えること。Albion Corporationとのある深い因縁から、その商売に手を染めることとなる。Corporationの指名手配リストトップに属する彼女自身も何度も自分のI.D.を書き換え、現在はLulu Funと名乗っている。しかし時間の問題で彼女の正体は突き止められ、逃亡が始まる。町中のCorporationの監視装置を逃れ、アンダーグラウンドの顔見知りから新たなI.D.を手に入れるLibra。だがそれは罠だった!彼女に書き込まれたI.D.の人物は重病に冒されていて、彼女も同様の致死性の病に体を蝕まれ始める。死へのカウントダウンとCorporationの追手に迫られながら、そのI.D.を取り除く方法を探し求めるLibraの運命は!?
本来人間に属するはずの個人情報が、逆にそれを持たされた人間の方を支配してしまうというような、P. K. ディックにも通ずる未来社会のアイデンティティの逆転がテーマのSF作品です。後半には驚きのどんでん返し!そこでProg 2009は1週休み…。なんか最近は日本の週刊漫画誌とはご無沙汰の私としては、久々に「エッ?今週ミリガン休みなの?」気分を味わったよ。つまり優れたストーリーテラーということなのだろうけど、ミリガンという人は本当に話の組み立て方、語り方の上手い人だと思うのです。例えば前の『Bad Company』にしても大体予想通り、というような感想を書いていた人がいたのだけど、やっぱりそれって本当にそうなのかなと思うところがある。実際『Bad Company』ではその辺の陰謀の正体というのは途中から徐々に見えてくるのだけど、それが最終的にどう語られるのかというところで全く目を離せない感じで読みました。まだミリガンの作品てこの2作しか読んでいないのだけど、両作とも読み終わってみるとなんだか結末は力学的にというのか無理のない形で滑らかに収まるべきところに収まる感じで、それが物語を読み終わった後あらすじと結末で感想を考える人からそういう評価を受けてしまうのではないかなと思うわけです。でもそういう話をきれいに作ってその物語を自分の作った道筋から外れさせず最後まで読ませるって優れた作家ということではないのでしょうか。どうもうまく伝わっているのか自信がないのだけど、私はミリガンはとても優れた作家だと思い全面的に支持しております。うーむ、とにかくミリガン作品についてはもっとたくさん読んで語って行かなくては。というところです。中途半端でごめん。
作画Rufus Daygloについては、今回はカラー作品でダーティーなディストピア的サイバーパンク未来都市や、サイケデリックな雰囲気などまた前作にもプラスする新しい魅力を見せてくれました。『Counterfeit Girl』については今回限りのシリーズで、次は『Bad Company』の続きであるとTharg閣下も言っておられましたのでもう再登場はないようですが、『Bad Company』の続きにおいてもまだしばらくこの息の合った感じのMilligan/Daygloチームは続いていくようです。

そして今期は最後にProg 2011 クリスマス特大号について少し。そのラインナップは。

1.Judge Dredd : Boxing Day
2.Kingmaker
3.Ace Trucking : The Festive Flip-Flop!
4.The Order : Wyrm War
5.The Fall of Deadworld : Winter Break
6.Hope : ...For The Future
7.Aquila : More Venetiae
8.Kingdom : As It Is In Heaven

今回は2,4,6,8の4本が続く2017年冬期の連載の第1回となっているので、そのほかの作品について簡単に解説。
1のBoxing Dayというのはイギリスの伝統的なクリスマス翌日の休日で、教会が寄付の箱を開ける日なのでボクシング・デイと言われているそうでボクシングとは関係ないそうです。元々はクリスマスに休めない使用人たちのための休日だったらしい。毎年クリスマス時期には犯罪が増加するシティ。Justice Departmentの会計課から犯罪に手を染めずクリスマスを過ごした市民に現金を配るという提案が出されるのだが…。
Rob Williams/Chris Westonによるワンショット。Williamsのストーリーではレギュラーの会計課の眼鏡美人さんが登場。軽めのクリスマス・ワンショットなのだけど、作画Chris Westonの画がバカうま!ドイツ出身で2000ADでは80年代後半から活躍のベテランアーティストでアメリカでの仕事も多いようです。2000ADには久々の登場のようです。緻密で迫力のある素晴らしい作画。色々と興味深い作品も多いようなのでどこかでまた会ったらその時もっとちゃんと書こう。
3は前回夏期の最後に書いたSummer Specialにも登場していた、80年代の宇宙の運送屋が主人公の人気シリーズのリバイバル。クリスマス期、大繁盛のプレゼントメーカーEuphrates Inc.の仕事を請け負ったAce達。知的生命体が存在しないということで非課税の惑星の倉庫から大量の荷物を積み込み、出発。ところが星を離れた途端、積み荷の中から見たこともない異星人が次々と現れて…?
実はその星にはそれほどは発展していない土着の生命体がいたのだが、温厚で平和的なのをいいことにEuphratesが税金対策のためにその存在を隠しつつ陰でこき使っていたのであった。その悲惨な境遇から助けを求め、Aceの船に密航してきたというわけ。義侠心に篤いAceはもちろん黙ってらず、一計を案じる。
ライターEddie Robson、作画Nigel Dobbynのコンビによる作品。Eddie Robsonは日本未紹介ではあるけど、イギリスでは2000年代に入ってから活躍中のSF作家らしい。多分2000ADではこれが初登場なのではないかと思います。TVのDoctor Whoの仕事も結構やっているようで、コミックにもこれから進出というところなのでしょうか。Nigel Dobbynは2000ADでの仕事の他、ソニックのコミックなども書いている人のようです。
5. 2016年春期に第1シーズンが掲載されたKek-W/Dave Kendallによる、んーまあ、問題作の続きとなるワンショット。物語の最後、農場一家のただ一人の生き残りの少女とジャッジFarefaxがちょっとイカレたバイクに乗り、多分シティに向かった旅のその後。Dead-Fluidsにより凶暴なゾンビと化した人々をかわしながら進む彼らの道程に、予期せぬ冬の猛吹雪が襲い掛かる。遂に気象コントロールまでもがDeath Judge達の手に落ちたのだった。更に困難を極める道を進む二人の運命は?
んー、Kek-Wに関する苦情は前回ずいぶん書いたので今回はいいか…。多分今年中には続きも登場すると思います。あっ、こっちが遅れているうちに今週から?
7はおなじみGordon Rennieのローマの狂戦士Aquilaシリーズのワンショット。作画は2016年春期から交代しているPaul Davidsonが引き続き担当。今回は時代が一気に飛んでペストにより死の街と化した14世紀ベニス。高い城壁で病から守られ、堕落した享楽に耽る富豪の許をある男が訪れる。世界中の奇怪な宝を集める富豪に男が持参したのは、その呪われた運命からの解放を求め地獄で戦いを繰り広げた伝説の狂戦士Aquilaの剣だった。そして、時を同じくし、その城に忍び込むある影があった…。
これから「ローマ編」に続き「地獄編」となると思われる『Aquila』のストーリーからはちょっと離れたワンショット。とにかくこの『Aquila』も『Absalom』も『Jaegir』もすげー期待してるんで、Rennieさんはどんどんやってくださいというばかりです。

そして続く2017年冬期のシリーズ。中でも最注目は、えっ?また新作なの?のIan EdgintoによるSFファンタジー『Kingmaker』。作画はなんとあのLeigh Gallagher!!昨年『Aquila』と『Defoe』両作の作画を交代し、どうしたのだろうかと心配していたGallagherが戻ってきました!前述の”FROM THE DRAWING BOARD”ではGallagherによるこの作品の2000AD Prog2015のカバー画の製作過程も紹介されております。気さくなLeighやんによるマジックもあり。あとGuy Adamsによるハードボイルド・オカルト。ホラー『Hope』など、またなるべく早く書くつもりでおります。あと、先月発売された2000AD40周年記念増刊号についてもその時に。


うー…やっと終わった…。もはや許容範囲じゃないじゃん、次の冬期も終わっちゃったし…。何かと遅れがちでした昨今でありますが、今回これほど遅れてしまった言い訳としましては、さる3周年記念周辺の事情から私にもめでたく彼女ができて…。とか吹かすにゃ一週間早いか…。いやその、実はしばしの失業状態から、ちょうどその3周年記念のころに何とか転職を果たしたのですが、やはり新入社員状態は何かと大変で、なかなかこちらに割く余力がないところで一番時間のかかる2000ADを始めてしまったところがこの始末というわけでした。まあそれでも何とか少しずつは慣れてきて、あまりの感動に衝動的にTillie Waldenさんについてちょっと書くぐらいの力は出るようにもなって、やっと今回で正式に再開という感じであります。まあまだしばらくは少し遅れ気味にはなるでしょうが、以前よりも職場も近いのだしまた何とか頑張れることと思いますので、またよろしくお願いいたしますです。続く2000AD 2017年冬期につきましては、今やるとまたしばらく音沙汰がなくなりそうだし、色々書こうと思ってるのもあるし、とりあえず時期を見てなるべく早い機会にやるつもりです。というところで、ではまた。


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2017年3月11日土曜日

Tillie Walden / A City Inside -1996年生まれの恐るべき才能!-

これは凄い!これについてはなんとしても早く書かなければ、と思い急いでやりました。1996年生まれ、テキサス州オースティン在住の女性コミック作家Tillie Walden(ティリー・ウェルデン)による、近年注目度も上昇中のイギリスのパブリッシャーAvery Hillから昨年発行された現在最新作である『A City Inside』です。

物語はある女性の内面世界を彼女自身の語りで綴ったもので、50ページほどの作品の内容をあまり詳しく書いても興を削ぐだけだと思います。テキサスの田舎の大きな古い家で生まれ育ち、15歳でその家を出た彼女の、過去、現在、未来が幻想的ともいえる美しい風景の中で語られて行きます。コマも割と大きかったり、語りもそれほど多くなかったりで、お休みの朝起きて、メシは昼過ぎでいいや~などと思いながらゴロゴロしてて、そうだこれをちょっと読んでみようと思いついて30分かそこらで読み終われました。しかし読んでいるうちにその一つ一つのあまりにも美しく情感あふれる画と語りに引き込まれ、そのあまりの美しさに涙まで出てきました。悲しい話とかじゃないのですが。この優れたイメージと、それをひとつひとつ画として実体化する能力。一つ一つのコマにいつまででも見ていられるような引き込まれる魅力がある。本当に素晴らしい、凄い才能。絶対に読む価値のある作品です。つーか、私はこういうことあまり言わない性格なのはご存じでしょうが、敢えて言うがこれは絶対に翻訳出版すべき作家・作品であり、もうそれも進んでいるのかもしれない。そう思って調べてみたのだけど、ざっと検索してみたところまだ日本語で書かれた記事はすぐには見つからず、それならば、と急いで書いた次第ですが、よく考えるとこんな素晴らしいものを早めに書いたのがオレで良かったんだろうか?まあ殺伐としたノワールや、コミックでもバイオレンスやホラー方向によりがちな私の傾向からもお分かりの通り、どちらかというと内省的というのも大雑把な分け方かもしれないけどそういう傾向の作品はあんまり得意じゃなく、近年海外での評価も高くなっている浅野いにお氏なんかも割と初期のころ読んで優れた作家ではあるけど、若手の純文学や映画監督なんかと共通のある種の甘さについていけなくて以来敬遠していたのだけど、そういうのや手を付けていなかった女性作家の作品などもまた読んでみようかと思わせるほどの力のある作品でした。

あとちょっと急いだのにはもう一つ理由があって、現在iPadのみのリリースなのですが、イギリスのコミックのアプリ・ショップSEQUENTIALがセール中で、こちらの『A City Inside』もセールに入っており、なんと240円で購入できます!明日(2017年3月12日)まで…。先週からやってたんだからもっと早く言えよ!とりあえずこの機会に一人でも多くWaldenさんの作品に触れられればと…。Waldenさんの現在までの他2作(『The End of Summer』、『I Love This Part』)もセール中です。

作者Tillie Waldenについては、ちょっと急いだのであまりわかっていないのだが、昨年Ignatz Awardを『The End of Summer』で受賞。かなり気になっているAvery Hillの中でも現在イチオシの感じで注目してはおりました。1996年生まれで、まだ20歳か21とずいぶん若い才能。なんでもCenter for Cartoon Studiesというコミックの学校を最近卒業したばかりらしい。日本のMangaも好きで、最近日本に来たようなことをツイッターで言ってたりもしたようなので、結構日本には近い人なのかも。さっき初めて行ったばかりのWaldenさんのホームページではいくつか小さい作品も読めるようです。まだ若き恐るべき才能のTillie Waldenさんについては、いずれ日本でもやたらと人を罵倒して回ったりスキあらばギャグを挟もうと図ったりしないインテリジェンスと正気度の高い人たちによって絶賛され始めることでしょうが、現在のところはしばしこのボンクラの情報でなんか面白そうだな、と思って必ず読むべし!

3周年記念からまたしばらく遅れててすみません。まさかの『The Boys』日本版発売もあってか見に来てくれる人も増えているようで頑張らねばと思っているのですが…。一応遅れながらやってるいつものアレもあるので、もうすぐ何とかなると思いますので、遅れてる個人的事情についてはその時言い訳しますです。ということで今回はこれで。

Tillie Waldenホームページ

Avery Hill Publishing


●Tillie Walden



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