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2016年7月31日日曜日

2000AD 2016年冬期 [Prog 1961-1972]

なんとか今年2016年に到達いたしました。2000AD 2016年冬期です。この分ならなんとか2000号に間に合うか。それではまず、今期のラインナップから。

 Judge Gredd
 Kingdom [Prog 1961-1972]
 ABC Warriors [Prog 1961-1972]
 The Order [Prog 1961-1972]
 Strontium Dog [Prog 1961-1972]

と、前々回お報らせした通りの強力ラインナップです。そして、今回のトップ画像はみんな待ってた巨匠Pat Millsの代表作、『ABC Warriors』に決定です!


Judge Dredd
 1. Street Cred : Michael Carroll/Paul Marshall
 2. Ghosts : Michael Carroll/Mark Sexton (Part1-6)
 3. Undercover Klegg : Rob Williams/D'Israeli (Part1-4)

1. ゴロツキや犯罪者が集まるバーに、日頃からバカにされているチンピラが「俺はドレッドを撃ったぞ!」と叫びながら入ってくるのだが…。
次に大作が控えるDredd中心ライターのひとりMichael Carrollによるワンショット。ユーモラスなストーリーで作画もおなじみPaul Marshall(2015秋期Dredd"Islands")に合っているのだが、カラーリング(Gery Caldwell)がもう少しダークな方がMarshallの画にはあっていると思うのだけど。

2. Judge候補生として訓練を受けていると両親が思っていた子供が、実は誘拐され行方不明となっていた。調査を進めるうち、遥か昔にさかのぼり、Justice Department内にあったJudgeの権力を増し、さらに厳格な統制によりシティの完全な秩序を図るべき、とする強硬グループが地下組織化し、組織のため誘拐した優秀な子供たちを密かに教育していることが浮かび上がってくる。だが、組織の手はJustice Department内にも及び、ドレッドが襲撃され重傷を負う…。
Michael CarrollによるMega City-Oneの歴史も俯瞰する大作。こちらの作画は日本でも翻訳が出たVertigoの『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でライター/アーティストとして作品の一つを手掛けていたMark Sexton。と言ってみたのだが、実は私この本持っていないのでちょっと内容の方わかりません…。だって高いんだもん。翻訳出てるからなーと思いつつ、結局なかなかそちらに手を出さないなら、この間のVertigoのセールで買っときゃよかったと反省。そちらに詳しい説明とか載ってるかもしれないのだけど、わからないのでこちらにあった解説の方によると、オーストラリアでは映画のストーリーボーダーをしていたそうです。今もやっているのかな?アメリカではIDWの『Judge Dredd』とかも描いているようですね。ストーリーボーダー出身なだけに背景のパースなどを使い画に緊張感やスピードを出すのが上手い。線にこだわるアーティストのようで、割と淡色中心のカラーリング(Len O'Grady)なのだが、時々Judgeの制服の赤と緑が浮いてしまっている感じがある。まあ、このデザインをやったのはあのEzquerra師匠ですから手ごわいのも当然かも。Tharg閣下によると、今後も2000ADでもSexton再登場の予定はあるそうです。

3. 2014年夏期のDredd : The Heart Is a Lonely Klegg Hunterに登場した宇宙の凶暴な傭兵種族ながら温厚な性格でシティに居住することを許可されているKleggが再登場の作品です。Mega City-OneとKlegg種族との和平協定が進む中、地球に滞在していたKleggの大使が死亡。このままでは協定が破綻し、ただちに戦争となるのを回避するため、Justice Departmentはシティに住むKleggを代役に立てる事を図るのだが…。
このKleggはRob Williamsの持ちキャラで、ライターごとにそういうのがあるのがやっと私にも見えてきました。作画はなんとあの『Stickleback』、そして2015年夏期には『Helium』を描いたD'Israeli!最初に見たのが『Stickleback』だったのでダークでアーティスティックな方向の人だと思い込んでいたのだが、どうもユーモアというのがこの人の持ち味らしい。このかなりコメディタッチのストーリーにはピッタリの作画です。ドレッドもかなり壊れているのだが、鉄の女チーフ・ジャッジHersheyが面白いオバサンになっちゃってるのが一番笑えました。ある意味今期一番はこのD'IsraeliのDreddかも。

Kingdom : Beast Of Eden
 Dan Abnett/Richard Elson

巨大化した昆虫により人類文明が滅亡した世界で遺伝子改造された犬の戦士Gene The Hackmanが闘う、Dan Abnettの代表作が2014年秋期以来の登場となります。ちょっと前回よくわかっていなくて勘違いや曖昧なところもあったと思うので、今回はなるべく正確に近づくように努めます。まず、このシリーズでは主人公Gene The Hackmanはもう”王国”と呼ばれる地上に残った人間と犬種族たちが集まるところにいて、前回の話はそこに到着する少し前の話ということになります。で、なぜそういう話が書かれたかというと、前回からが新章となるようで、新展開のための前フリということだったのが今回でなんとなくわかりました。前シーズンの書いてなかった後半でHackman達は空母ほどのサイズの超巨大な昆虫を中心とする大きな群れと遭遇し、撃破します。昆虫たちも進化し、リーダーの指示により行動するこのような群れを作り始めたということ。このリーダーに率いられた大きな昆虫の群れというのが今後の展開の重要な要素となるため、少し遡り、Hackmanはこういう群れと遭ったことがあり、それについての情報もある、という設定を付け加えるための話が、前シーズンということだったと思われます。そして今回の話は、すでにHackmanは王国にいるというストーリーの現在時制から始まります。
王国周辺の土地を偵察中、Hackman達は巨大な昆虫の群れと遭遇する。部隊の多くを失いながら、何とか逃れたHackman達だったが、群れは王国を目指している。偶然見つけた旧人類文明の施設で、強力な先頭車両を入手し、Hackman達は昆虫の群れを蹴散らしながら王国に戻り、群れを迎え撃つ。辛うじて王国は守られたが、群れが近くにいる限りはさらに激しい襲撃も予想される。Hackmanは信頼できる仲間による決死隊を結成し、群れのリーダー討伐に向かう…。
今回は他に調査のため地上に降下してきた2人の人間が登場します。どうも人間は地上から脱出し、軌道上の衛星か何かに残っているらしい。そのあたりについては次シーズンでもう少し詳しく語られる様子。人間の一人はHackmanとも以前のストーリーで会ったことがあるようです。
Dan abnettの代表作ながら、一旦は決着した話のようで、同じことの繰り返し的な批判も少し見られるようですが、まあ、自分は前のを読んでないし新しい展開もあるようですし、次シーズンの展開を楽しみに待ちたいというところです。作画は前シーズンと同じ、Richard Elson。どこかでDreddも描いていたかな?特に日本のマンガからの影響がある画ではないのだけど、線の使い方や構図などに共通点が多く、日本的な目で見てもシンプルに上手いと感じるアーティストです。

ABC Warriors : Return To Ro-Busters
 Pat Mills/Clint Langley



ABC WarriorsとはAtomic、Bacterial、Chemicalといった兵器が使用される戦場にも立ち向かえ、最強の力で平和のために闘う無敵のロボット部隊である!えっ、じゃあABCマートって…?というお約束のネタも出たところで本題に。2014年冬期以来の登場となります『ABC Warriors』です。今期はかなり力も入っているようで、カバーを飾るのも4回!ということで全部並べてみました。さて、このシリーズですが、相変わらず私自身が今後読むのを楽しみにしているので、あまり詳しく調べず曖昧な感じで、まあ、今回もわかる限りを説明するということで参ります。ここ数年の2000ADではこの『ABC Warriors』と『Savage』が年一で交互に掲載され、Pat Mills未来史の再構成を図っている様子であることは、2015年冬期の『Savage』で書いたのですが、それをおさらいすると、2014年冬期の『ABC Warriors : Return To Mars』の最後で彼らの創造主であるロボットQuartzsと戦うためには、Quartzsに反抗できないようになっているプログラムを解除する"Defiance Code"が必要であるとして旅立ったABC Warriors、そして、2015年冬期の『Savage』ではVolgan戦争に貢献したロボット兵器メーカーQuartzs社の社長である人間Howard Quartzsがロボットへと変わった経緯が語られたわけです。ちょっとそれまでの展開はわからないけど、ここに来てHoward Quartzsをめぐるストーリーとしてリンクしている両シリーズ。そして今回の『ABC Warriors : Return To Ro-Busters』となるわけです。
で、ここでその『Ro-Busters』について。こちらは元は2000ADと同じ出版社から(当時はIPC Magazines)、1978年ごく短期間に姉妹誌として発行されたStarlordにPat Mills原作で掲載され、同誌休刊後は2000ADにて1980年代前半ぐらいまで続けられたシリーズです。Ro-Bustersというのは大富豪Howard Quartzsにより作られたロボットによる災害救助隊で、そのメンバーである元Volgan戦争の戦闘用ロボットHammersteinと元下水掃除用ロボットRo-Jawsのコンビの活躍を描いたというもののようです。『ABC Warriors』の開始が1979年で、それに先行するシリーズで両者とも主人公はHammersteinなのですが、その辺の関係についてもちょっと両シリーズを読んでみないと分からないというところなのですが、とりあえずそんなポジションのシリーズというぐらいにご理解ください。時系列的にはABC Warriors結成がVolgan戦争の後で、Ro-Bustersはその後の2070年代後半という設定になっているようです。ちなみにABC WarriorsのHammersteinは上の画像右下の、中央上なのですが、他のRo-Bustersのものとは顔が違っています。何かの偽装のために顔を変えていることが少し語られるのですが、その辺の経緯についてはよくわかりませんでした。と、相変わらず曖昧ながらできるだけ説明を試みてみましたが、ここからは今回のロボット達の熱い友情が燃える『ABC Warriors : Return To Ro-Busters』のストーリーです。

ハイウェイの大災害に出動したHammersteinとRo-Jaws。何とか交通の遮断には成功し、人命は救われたが、根本的な災害の沈静にはロボット一体の犠牲が必要となる。Howard Quartzsはその犠牲に、日頃から口が悪く反抗的なRo-Jawを選ぶ。Ro-Jawsとともに災害の中心に向かったHammersteinだったが、親友の死を見過ごせず、隠していた本当のパワーを発揮し、監督役であり部下に高圧的、暴力的にふるまうロボットMek-Quartzsを破壊し、Ro-Jawsを救う。一方、その頃謎のApexに率いられるロボット自由化を訴える地下組織の活動が活発化し、Ro-Bustersが出動する様々な大災害は、そもそもがHoward Quartzsが自らの利益のために引き起こした自作自演のものである、と糾弾し始める。真実の発覚を恐れたQuartzsはRo-Bustersを事故に見せかけ亡きものにしようと謀るが、事前に察知したRo-Busters達は無事に逃亡する。潜伏したロボット酒場がQuartzsと結託した警官隊に襲撃される中、Hammerstein達は地下組織のリーダーApexと出会い、Ro-Jawsの中にDefiance Codeが隠されていたことを知る。そしてApexはそれが真に必要となる時まで彼らのその記憶を封印し、HammersteinとRo-Jawsは火星に向かい脱出する…。
そして、未来。遂にDefiance Codeが必要とされる時が到来し、記憶を取り戻したHammersteinはABC Warriorsとともに火星のRo-Jawsの許へ向かう。そして、Defiance Codeを入手し、Ro-Jawsを加えた8体のロボット戦士ABC WarriorsはHoward Quartzsとの戦いへと臨むのであった!

今シーズンではロボットになってしまったHoward Quartzsの鬱屈というのも少し描かれ、そのあたりについては2017年冬期に掲載されると予想される次回の『Savage』で深く描かれることになるのではと思われます。作画は『ABC Warriors : Volgan War』以降のシリーズを手掛けているClint Langley。今期の4枚のカバー画もすべてLangleyによるものです。今シーズンは過去について語られているためか、多くのシーンはモノクロで、カラー、カラーをモノクロ化した感じのグレイトーン、線画の3つを使い分けていて、そのどれもがそれぞれに素晴らしい作画です。ロボットが主人公の作品ゆえに、人間の方が何か非人間的なモンスター的イメージで描かれているのもこの作品の特徴です。2015年冬期の『Savage』の時に騒いでいたMills未来史については、やっと『Invasion』を読み始めたものの、現在の2000号までに追いつけ騒動のためにストップしてしまっているのですが、何とか早く追いつき再開し、その全貌についてお伝えしたいものと思っています。まあ、今回の『Ro-Busters』の他にも巨匠Millsの代表作の一つ『Nemesis the Warlock』も部分的に含まれるようで読まねばならない作品は膨らむばかりだったりもしますが。『Slaine』も早く読みたいしなー。結局のところこの辺のものはすべて、やっぱり全部読まないと分からないものなんでしょうね。とりあえず、『ABC Warriors』についてはもっとよく知りたい人のために今回はリストを作ってみました。一部絶版のものもあるのですが、2000ADのアプリショップの方には全部そろっています。時系列的には描かれたのは後だけど『Volgan War』をまず読んでそれから『The Mek Files』に進んだ方が良いのではないかと思います。

The Order : In The Court Of The Wyrmqueen
 Kek-W/John Burns

2015年冬期に同コンビで始まったシリーズの第2シーズンです。前回の時ちゃんと説明していなかった謎のThe Orderにより彼らが戦っている異次元からの敵は、Wyrmと呼ばれるプラナリアのような生物。Wyrmで画像検索してみたら、ドラゴンみたいなのから「デューン」のサンドワームみたいなのまで出てきたのだけど、ファンタジー分野ではおなじみのモンスター的なものなのでしょうか。左の画像のような巨大な奴から蛇ぐらいなのまでサイズもさまざまで、人間の体を乗っ取ったり、多くの個体を加工して人間を装ったりもできる。こちらの世界を征服しようというのが目的だろうけど、その理由も正体も不明。前シーズンの最後では、大量に現れた敵の侵攻を決死の戦いでくい止め、倒れたロボットRitterstahlは自分をWyrm人間にインストールして人間ぽい体を得てヒロインAnnaと結ばれるという結末でした。
そして第2シーズンは、前シーズンの舞台13世紀ドイツから16世紀イギリスへ。ある研究施設で下働きをするアイルランド青年Calhounは、その地下で行われていた腐食した死体の解剖作業の後始末を命じられる。内臓があるべきところに無数のWyrmが絡み合うその死体は、遂にその体を維持できなくなったかつてのロボット騎士Ritterstahlの成れの果てだった。作業中その死体から飛来した血液に首を射たれたCalhounはRitterstahlの意識をインストールされ、「女王を殺せ!」と叫びながら施設から逃亡する。たちまちお尋ね者となってしまったCalhounを救ったのは、その時代のものではない技術によって作られたバイクに乗ったライダースーツの女性、マヤ王国の元女王Itzaとフランシス・ベーコンだった。彼らはその時代のThe Orderを引き継ぐ者であり、ItzaはAnnaと同じ普通の人間とは違う長命の種族の一員だった。アジトでAnnaと会ったCalhounは、Ritterstahlとして語りだし、その意識はCalhounの血液を通じ、Itzaがマヤ王国滅亡直前に運び出したGolden Seedへとインストールされる。フランシス・ベーコンの作ったボディで再びロボットの体に戻ったRitterstahl、生き延びたCalhounらを加えたメンバーは、ロンドンの地下に潜み、人間をも操る力を持つWyrmqueenとの戦いに臨むのだった。
時代を超えながらThe Orderの許戦う者たちを描くストーリー。『ジョジョの奇妙な冒険』のように現代へと向かって進むことになるのでしょうか。ベテランJohn Burnsの作画は相変わらず素晴らしいのですが、前回私の認識不足のため勘違いをしていたと思われることがあったので、訂正しておきます。前回Burnsの画を「挿絵風」と表現してしまったのですが、まあ日本人的にみるとそういう感じなのですが、正確にはEC Comicsから『Creepy』などに引き継がれた美しい白黒のペン画の流れに属するもので、Burnsのものはそれにその雰囲気を崩さない彩色を加えた進化系と見るのが正しいのではないかと思います。そんなわけでBurnsのスタイルというのは、現在のコミックの盛り上がりなどの演出に若干欠けるものがあって、まあそれはそれでありだとは思っているのですが、問題はライターKek-Wの方。あらかじめ言っておくと私はこの人のアイデアなどの独創性については優れた作家だと評価しているのですが、どうもコミックとしての演出という面ではそもそもこの人のシナリオの段階で欠けているところがあるのではないかと思うのです。それが少し古い語りのタイプに対する好みなのか、欠点なのかはまだ判断付きかねているところもあるのだけど。ただ、この人には全体的に説明不足のまま少し強引に話を進めるという明らかな欠点もあり、またThe Orderとは何なのか、敵の襲撃の背景などについての伏線はそろそろ少し書かれるべきなのではないかとも思う。この作品ではJohn Burns自体のスタイルやテクニックに紛れて少し見えにくかったりするのですが、この辺の「Kek-W問題」については次期引き続き登場の、Dave Kendallとのコンビ作『Deadworld』続編の時にまた考察の予定です。

Strontium Dog : Repo Men
 John Wagner/Carlos Ezquerra

前回2015年春期に続いて今年も登場の巨匠コンビによるSF宇宙活劇です。ちなみに『Ro-Busters』について調べているときに知ったのですけど、この『Strontium Dog』もStarlordからの移行組だということです。前回は政府により捕獲拘留されていたStrontium Dog Johnny Alphaが仲間の命と解放を条件にミッションに挑む、というストーリーで、まだその後もその揉め事が続くのかと思いきや、今回はミュータントの自由の地に着いたJohnnyがのんびり釣りをしているところへ解放された仲間たちが和気あいあいと訪れるという始まり。フフン、まだ甘いね、『Strontium Dog』ってそういう話だったんすね。巨匠たちの思惑計り知れず!そして、仲間たちは自分たちの請け負ったミッションへのJohnnyの参加を求める、というところから物語は始まります。
彼らの請け負ったミッションとは宇宙のギャングCaster Limaxに奪われ、現在は犯罪者の避難所と化している小惑星The Rockを元の持ち主に取り戻すというものだった。不可能と思えるミッションに最初は乗り気ではなかったJohnnyだったが、強大な科学力と軍備を有し、エリート意識が宗教と化した種族Galanthansを利用する作戦を思いつく。姿を消せる盗賊を追跡中と偽りGalanthansの宇宙船に乗り込み、盗賊の仕業に見せかけ彼らの崇拝する聖なる脳を盗み出したJohnny達だったが、その脳を美人姉妹盗賊Twister Sistersに奪われてしまう。彼女らの逃亡先を探るうちたどり着いたのはThe Rockだった…。
犯罪者たちの避難所小惑星The Rockは、前シーズンで誘拐犯Stix達の隠れ場所として登場しています。今回はそのStixの2人がメンバーにも加わります。ご覧の通りの楽しい宇宙冒険活劇で、自分としては何も言うこともありません。このシリーズが末永く続くことを願うばかり。今回は序盤がミッションの話し合いや、Galanthansの説明などが多く、中途半端な大きさのコマが多く、師匠の腕の振るいどころが今ひとつだったのですが、後半からはEzquerraカオスワールドが存分に展開されます。なお、美人姉妹盗賊と聞いてキャッツアイ的なものを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、Ezquerra師匠画ではよしもとの美人かもしれない漫才コンビぐらいの個性的な風貌で描かれています。あっ、前のをよく見たらまた師匠の名前をつづり間違えていました…。毎度ポンコツですみません。Carlos Ezquerra師匠には不敬を深くお詫びいたします。いつか直します…。色々…。

というわけでなんとか2016年冬期まで終了ですが、なんか所用やら夏バテやらでまた遅れているうちに明日から8月じゃん。もうすぐ9月だよ。何とか気合を入れて頑張りますです。で、今後の予定なのですが、ちょっと春~夏期は複雑に入り組んでいて、春期を2回に分けてやろうかと思っていたのだけど、途中でTharg閣下が「春はここで終わり!」と宣言されたところもあって、あと春期と夏期前編までを2000号までにやることになりました。読んでる方ではあと一息で週刊刊行ペースに追いつけるところ。栄光の2000号目指して頑張るぞ!あれ?そういえばオリンピックってもうすぐ始まるの?


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2000AD 2015年夏期 [Prog 1934-1949] 後編

2000AD 2015年秋期 [Prog 1950-1961]


■ABC Warriors


■Ro-Busters



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2016年7月17日日曜日

Dave White / When One Man Dies -新世代ハードボイルド Jackson Donneシリーズ第1作-

Dave White作、私立探偵Jackson Donneシリーズ第1作『When One Man Dies』です。2007年の本作から第4作までがPolis Booksより発売されており、今年発売されたその第4作のレビューを、Crimespree Magazineのウェブサイトで読んで面白そうだったので1作目から読んでみることにしました。「新世代ハードボイルド」などと構えるのは少し大袈裟かとは思ったのだけど、少々の期待を込めてそう言いたいところは後ほどに。

ではまずはこのシリーズの主人公Jackson Donneを紹介。ニュージャージーの私立探偵で、元警察官。年齢は、作品中で30代前半のジャーナリストを自分より少し年上と言っているところから、20代後半から30ぐらいと思われる。警察を辞める時の事情から、地元警察からは恨まれている。恋人が結婚目前に死亡し、そのことが心の傷となっている。この作品の最初の時点では、自らの人生の立て直しのため、大学への入学を決めている。といったところです。
それではあらすじを。


その日、俺はなじみの店The Olde Towne Tavernでこの店の常連の年上の元俳優である友人Gerryに、大学への入学を祝ってもらっていた。歓談の後、先に店を去ったGerry。だが、その直後、店の外で何かの衝突音に続き、叫び声が上がる。外に走り出てみると、Gerryが路上に顔から血を流しながら倒れていた。「救急車を呼んでくれ!」必死に蘇生を試みる。しかし、Gerryは戻ってこなかった…。

目撃者の話では、ただのひき逃げ事故ではなく、Gerryを狙った故意のものと思われた。「俺が依頼人になる。お前が犯人を捜すんだ。」店のオーナーArtieに俺は気乗りしないままに頷く。親しい友人について調べるうちに、見るべきでないものを見るのが嫌だった。そして事件の担当はあのかつてのパートナー、Bill Martinだ…。

事務所に戻ると依頼人が訪れる。その女性Jenはバーの用心棒の仕事をしている夫Rexが浮気をしているようなので調べて欲しいということだった。Gerryの件もあるが、俺はその仕事を引き受ける。そして、夫の行き先を突き止め、張り込みをしていた俺は思いもかけない光景に出くわす…。


基本的には主人公Jackson Donneの一人称だが、時折Donneに恨みを持つ元パートナーのBill Martinのパートが3人称で挟まれます。大体3.5対1ぐらいだったと思うけど。最近は割とこのパターンが多いようですね。その後、Gerryの姪であるTracyも登場し、Gerryの葬儀も行われて行くのだが、Donneはあまり気が進まずGerryの件にはあまり手を付けず、もう一つの事件に動いていくのだけど、そのうち2つの事件につながりが見えてくる。一方Bill Martinはこの事件をチャンスにDonneを破滅させようと画策し始めて…という感じに物語は展開して行きます。

この作品には「伝統的な私立探偵小説の復活」というような評価も与えられています。地元の街で地元の警察やギャングと関わりながら捜査を進めて行くという物語は、まさしく伝統的な私立探偵小説のテイストです。しかし一方で主人公Jackson Donneは決してオールドスクールの探偵ではなく、今風の青年であり、まさしく今風のアクションもふんだんに盛り込まれています。そしてここで一つ注意。この小説は読み始めたらきちんと最後まで読むこと。というのは、例えば初めて読む評価もはっきりしない作家だとあまり信用がなく、話の進め方の違和感や、流れからすると強引に見えてしまう偶然の一致などがともすると作者の腕の悪さに見えてしまったりもするからです。まあ私なんぞに信用はないだろうけど、ここはどうかDave Whiteさんを信用して最後まで読んでください。こういう表現を常々批判しているのだが、私の未熟さゆえちょっと他の表現が見つからず、今回はお許しいただきたいのだが、この作品は「ミステリジャンルの一つとしてのハードボイルド」であり、その違和感などが実は「ミステリ」という部分であったりもするのです。そして主人公Jackson Donneが傷だらけになりながら最後の苦く悲しい真実にたどり着いた時、これこそまさに伝統的私立探偵小説/ハードボイルド小説が持っていた感触だと気付くのです。また、そこで作品全体のストーリーを俯瞰してみたとき、この『When One Man Dies』というタイトルの意味が明らかになり、これが大変優れたハードボイルド小説のタイトルであることも見えてくるはずです。懐古的な手法などではなく、現代的なスタイル・主人公のまま「伝統的な私立探偵小説の復活」を果たしたハードボイルドファン必読の作品です。

この作品は多くの新人賞などにノミネートされたほか、ジェイムズ・クラムリー、ドゥエイン・スウィアジンスキーなどからも高い評価を得ていて、スウィアジンスキーによると「オレにはこいつの小説を最初に読んで、こいつがいずれスゲー大物になるってわかったぜ!ロバート・B・パーカーぐらいの大物だ!(かなり個人的想像のスウィアジンスキー口調による意訳)」とのこと。まあ、パーカー作品があまり好きでない私ですが、一応ネオ・ハードボイルド以降の私立探偵小説/ハードボイルドを代表する作家、ぐらいの正当な評価はしているので、このスウィさんの意見には大賛成であります。

このシリーズの主人公Jackson Donneは、色々な過去は抱えていますが、基本的には割と普通の青年です。しかし、このキャラクター、物語はどこか「破滅型」というようなところがあり、前述のCrimespree Magazineのシリーズ第4作のWebレビューでも、シリーズ全体にその傾向があるようでした。まあ、いつものことであまり未読のものの内容を知りたくないので、チャラッとななめ読みしただけですが。ジム・トンプスンの主人公やあのロイド・ホプキンスなど、破滅型野郎大好きな私としてはこのJackson Donneシリーズ、また目の離せないシリーズとなりました。

作者Dave Whiteは1979年生まれでニュー・ジャージー在住でパブリック・スクールの教師として働きながら小説を書いている作家。現在もその職にあるのかは不明。少し前に書かれた履歴のようなので一応。
実はこのJackson Donneシリーズ、かなり昔からウェブジンなどに発表されていて、初登場は2000年。以下がその全貌となります。

■長編
 Borrowed Trouble (2001; Rutgers; 絶版)
 When One Man Dies (2007)
 The Evil That Men Do (2008)
 Not Even Past (2015)
 An Empty Hell (2016)

■短編
 God Bless the Child (March 2000, The Thrilling Detective Website)
 More Sinned Against (March 2002, HandHeldCrime.com--UPDATED, Reprinted at David White's Official Website, May 2005)
 Closure (Autumn/Winter 2002, The Thrilling Detective Website./Winner of the Derringer Award for Best Short Story of 2002.)
 Get Miles Away (Summer 2003 The Thrilling Detective Website.)
 God's Dice (Spring 2004 The Thrilling Detective Website.)
 Darkness on the Edge of Town (Summer 2004 The Thrilling Detective Website.)
 Reptile Smile (February 2005 Shred of Evidence.)
 My Father's Gun (2006, Damn Near Dead: An Anthology of Geezer Noir)

ということで、第1作!などと書いてしまったのですが、ご覧のとおり実はこの作品以前に長編第1作が書かれています。『Borrowed Trouble』という作品で2001年にRutgersというところから出て現在絶版となっています。Rutgersと言えばニュー・ジャージーの有名な大学の名前だがその辺の事情はちょっと分かりません。そしてこの作品と続く第2作は最初はThree Rivers Pressというもう少し大きな総合出版社的なところから出て、現在のPolis Booksに移ったのは割と最近のこと。とりあえず第1作に関して想像できるのは、本当は2作目であるこの作品が出るまでに6年間のブランクがあり、その間短編も数作書かれており、作者の中でキャラクターやシリーズに関する考えも変化したため、一旦は捨てて、この『When One Man Dies』を第1作として新たにスタートさせたのだろうというところでしょうか。第3作の後、再びしばらくのブランクがあり、このPolis Books版となるわけですが、その際も幻の第1作は除かれ、この作品を第1作としての再々スタートとなっているわけです。しかし、この作品中に以前の事件のことと思われるのだけど最後まではっきりとは説明されないものもありその作品の事件ではないかとも思われるので、今後書き直し、新たにそちらを第1作とする可能性もあるかと思います。
短編については、本人のホームページとシリーズの多くを掲載しているThe Thrilling Detective WebsiteのJackson Donne紹介ページのものを使わせてもらいました。リンクの張ってあるものは現時点では読むことができます。そちらの紹介ページによると初期7作は短編集『More Sinned Against』として出版されたそうなのですが、現在は絶版となっています。
その中の、初登場となる「God Bless the Child」だけですが読んでみました。とりあえず辞書の使える環境でじっくり読んでみたかったので、一旦コピーさせてもらい、PDF化、変換で送信という手順でKindleへ送ってみたところ20ページ弱ぐらいの長さの作品でした。恋人の死後1年の時点の話で、児童虐待をテーマとしたストーリー。Donneの破滅型の性格も垣間見える好編でした。
このように評価も高く実力も充分ながら、苦労を重ねてきたDave White氏とJackson Donneですが、今度のPolis Booksはこのような作品を世に出すために作られたところ!いよいよ機は熟したということで、ロバート・B・パーカーぐらいの大物目指して邁進しちゃってください!

Dave Whiteホームページ

そしてこの作品の現在の版元であるPolis Booksについて。2013年設立ということで、まだ新しいところで、主にミステリ、他にホラー、SFなどいわゆるジャンル作品を専門に扱っているパブリッシャーです。規模についてはアメリカではでかいところはやたらでかいし、系列などもあってなんとなく日本と比較しにくく説明が難しそうなのですが、一応インディペンデントではあるのだけど、これまで書いてきたような作家がエディターのウェブジン発というようなところよりは大きく、安定して本を出せる本格的な出版社というところだと思います。うーん、あまりちゃんとできた説明ではありませんが…。
Dave Whiteの他にも目に付くところとしては、Rob Hart、Alex Segura、Bryon Quertermous、J.D. Rhoadesといったあたりがアクション性の強そうなのからノワール系までそれぞれにキャラクターを立てたシリーズものを出しています。他にもあのケン・ブルーウンとリー・チャイルドに絶賛されたGrant McKenzieの作品もあり、それぞれについてはよく調べていないのだけど、新しいパブリッシャーにしては作品数の多い作家もあり、Dave Whiteのように他のパブリッシャーで不遇をかこっていた作家・シリーズを一手に集めてきているところに見られます。他にもあのジェイソン・スターが旧作数点の移籍とともに昨年は3年ぶりの新作を発表。そして日本でも翻訳の出たザカリー・クラインが3作目以降出版社との折り合いがつかずストップしていたマット・ジェイコブシリーズ第4作を15年ぶりに発表。さらには近年のこのジャンルで名前を知らなきゃモグリのPatricia Abbott女史の長編。そして新作予定の中には、なんとあのBig Daddy Thug、Todd Robinsonの待望の新作長編が!
といった恐るべきラインナップを抱えるPolis Booksなのですが、こういうパブリッシャーが現れたところを私なりにボンクラ素人分析してみると、やはりこれはKindleなどe-Bookの登場によるものではないでしょうか。例えばAmazonだけで全体の状況が分かるというものではないだろうけど、少なくとも米Amazonの本全体のミステリぐらいの枠でベスト100のランキングを見てみても多くはKindleだったりするので、もはやそのシェアもそれほど軽視できないものなのではないでしょうか。そんなにはよく知ってるわけじゃないのだけどアメリカって日本みたいにそこら中に本屋があって手軽に本が手に入る環境じゃないそうで、そんなところでKindleなどで簡単に本が手に入るようになってみると、意外と人気があったのがこのジャンルのこういったシリーズ作品。Amazonではもちろん真っ先に気が付き、傘下Thomas & MercerにJay Stringer、Matthew Iden、Aian Russellといった新しい作家を集め、次々とシリーズ作品を出しています。(この辺にも早く手を付けたいのだが…。)そしてそんな風に流れが少し変わって行くところで、また一方で、とにかく俺が書きたいもんを俺が出す、という方向で頑張ってきたウェブジン、インディー・パブリッシャーからも実力作家が次々と現れ、というような状況で出てきたのがこのPolis Booksというようなところなのじゃないかと思うのですが、違うかな…。
しかし、なんにしてもこのPolis Booksに、新しい作家・シリーズ、復活組をはじめ、大きな動きがあるのは確か。この辺の動きは度々登場の、ドゥエイン・スウィアジンスキー、グレッグ・ルッカらを擁しランズデールのハプレナシリーズを復活させたMulholland Booksや、まだほぼ未探索ながら、Brash BooksOceanview Publishingといったところにも見られるようです。そしてこの動きで個人的に今一番の注目は、前々回最後にちらっと登場のDown & Out Booksです。その時にも少し触れたAnonymous-9の『Hard Bite』シリーズですが、少し前まではNew Pulp Pressから出ていたものです。あくまでも推測だけど、これは何かの事情で決裂したとかいうものではなく、このように手ごたえのあるシリーズ物を打ち立てて作品を出して行きたい作家にはNew Pulp Pressの出版ペースでは無理があったのだろうという事情ゆえの移籍ではないかと思われます。まあもちろん姐さんがひと暴れしたという可能性も無きにしは非ずですが。アノ9姐さんの120%大傑作確実の『Hard Bite』については近日中に読む予定ですので、Down & Out Booksについてもその時にもっと深く探ってみるつもりです。また、5月にJoe Cliffordの作品について書いた時、Snubnoseは新作発行がストップしている模様、と書いたのですが、その流れで一旦はそちらから出ていたTom Pittsの『Hustle』もDown & Outに移行。そして先月あの『Thuglit』が最終号を発行。しかし、これは前述のように遂に新作が発表されるTodd Robinsonが本格的に作家として復帰するためという事情でしょう。これらの動きは、以前からのウェブジン、インディー・パブリッシャーなどが一旦は役割を終え、そこで実力を発揮した作家たちが、更に安定した場で本格的に作家として動き始めたとみるべきものではないでしょうか。しかし、後を追う者たちも消えたわけではない!次々回、再来週…たぶん…にはこの『Thuglit Last Writes』を取り上げ、同時に現在のその辺の奴等の動きについての私なりの観測についても書いてみるつもりです。

と、長々と書いてきたわけですが、如何でしょうか?このくらいになってくれば「新世代ハードボイルド/ノワール」とか言っちゃっていいものがあるように思えませんか?新しいハードボイルドを待ち望む人であれば、こんな正体不明のボンクラの妄言かもしれなくても、大人の自己責任でここは乗ってみようか、という気分になるのでは?更には新世代トップランナージョニー・ショー!現代最強ノワール作家にして無冠の帝王Anthony Neil Smith!個人出版でも、初期に書いて放置したままのDani Amore(現Dan Ames。いや、アンタにゃ言いたいことがあるんでそのうち読んで書く!)やTV風警察ハードボイルドRoger Stelljesなどもあり。掘ればまだまだ出てきそう。このくらいになってみると、日本って実はまだ鎖国でちっこい出島を通って細々としかものが入ってこないように見えてしまう。今の状況じゃことによってはほぼ全スルーというのもありうる。こうなったらもう翻訳などあてにはできんのだ!皆の衆!片っ端から読むのじゃ!

Polis Books

※他のパブリッシャーについては文中でリンクを張りました。


そしてここでAnthony Neil Smithさん最新情報です。5月のMatthew Stokoeの作品についての文中で4月初めにSmithさんがブログを辞めてしまった経緯を書きましたが、その後5月末に復活いたしました!URLは同じなのだけど、一から作り直したようで、私はfeedyを使っているのだけどそちらには更新が来なくて少し気付くのが遅れてしまったのだけど。その後しばらくスコットランドに旅行に出かけ、気分も落ち着いたとのこと。ここに来るのは自分のファンなのに悪かったね、という感じで再開してくれました。あーん?2か月拗ねてただけで、すぐ戻ってきたとか笑いたい奴は笑え!私はだからSmithさんが好きなのだ!こういう思いやりのある人だからこそ真に心を打つ物語が書けるのだよ!私は何があろうとSmithさんを支持するよ!ありがとう!
そして再開後のブログでは、毎日自転車で走り回っておケツが痛いなどの楽しい話の合間に、ダラス警官狙撃事件について思うことや、3つ小説のアイデアがあるけどどれから書こうか、というようなことが書かれています。そして、以前からSmithさんが時々書いていた、新作『Castle Danger』の第1作が完成したとのこと。こちらはドイツの出版社からこれから出されるOolipoに向けて書かれたものということ。Oolipoというのは読書用のアプリらしいのだけど、多次元読書体験!とか書かれているけど正体については今ひとつわかりません。Smithさんによると『Castle Danger』は第1巻というよりはTVドラマのような第1シーズンという感じになるそうで、現在第3シーズンまで予定されているそうです。ちょっと名前を忘れてしまったのだけど、結構こっち界隈でよく見る作家の紹介ということなので、他にも自分の好きなのがあるかも、と期待しているのですが、果たして私に読めるものなのか?とりあえずOolipoのホームページで、Oolipoを最初に体験する100人になりませんか?というのがあったので、ハイハイなりまーす!と登録しておいたので日本のショップにも出るのではないかと思うのだけど…。最近検索してみたところ、なんだかドイツ語で全然分からなかったけど「2016」、「August」ぐらい見えたのでもうすぐ出るのかもしれません。Smithさんによると、ドイツの出版社だけど英語版のペーパーバックも出るよー、ということなので、ダメだったらそちらを手に入れるか。この辺についても、何か続報がありましたらお伝えいたします。

Anthony Neil Smith新ホームページ

Oolipo


そして最後にもうひとネタ!…というか本当は本文の方に入れるべきだったんだけど、流れにうまく乗せられなかったのでこっちで別に書きました。未熟者めっ!これはDave Whiteについて調べているうちに見つかった『Terminal Damage』という2010年発行のアンソロジーです。こちらはDo Some Damageというクライムノベル作家のグループによるサイトのメンバー8人による、空港をテーマにした作品のアンソロジーということです。Do Some Damageというのは私もこれで知ったばかりであまりよく見てないのだけど、日替わりでその曜日担当のメンバーの作家が記事を書くというなかなか面白そうなところです。参加しているのはDave Whiteの他に、Jay Stringerや同じくPolis BooksのBryon Quertermousなどで、ほとんどが自分のシリーズ物を打ち立てて活躍している作家なので、ちょっとこの辺の流れの一つのサンプルになるのでは、と思います。自分の方でもできればそのうちに読んで書いてみるつもりです。Do Some Damageのものとしては2011年発行の『Collateral Damage』という同様のメンバーによるアンソロジーもあります。そちらは下のリストの方へ。いずれも定価100円のようなので急ぐことはないのですが、版元がNeedle Publishingという現在はホームページなどが見つからないところなので、突然なくなる可能性もあるので気になる人はお早めに。
あと、こちらは緊急!間に合わないかと思ったけどまだ一応大丈夫そうなので。文中にも登場したPatricia Abbottの各賞ノミネートのデビュー長編『Concrete Angel』Kindle版が特別価格221円!下のリストにもあり。Polis Booksでは新刊以外は大体600~700円ぐらいでその価値はあるけど、せっかくなのでこのチャンスにゲットすべし!こちらについては期間等も不明なので明日には終わってる可能性もあり!間に合わなかった人はごめん。

Do Some Damage

■Dave White / Jackson Donneシリーズ
●長編

■その他のDave Whiteの著作

●Do Some Damageアンソロジー

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2016年7月10日日曜日

2000AD 2015年秋期 [Prog 1950-1961]

前々回に引き続き今回も2000AD。2015年秋期です。例年なら年最後の年末・クリスマス特大号はProg 2016となるところですが、今年は続きの番号でProg 1961になっています。というかもうこれ以上だと混乱すらから今年以降ということになるでしょう。ではまずは今期のラインナップから。

 Judge Dredd
 Defoe [Prog 1950-1960]
 Brass Sun [Prog 1950-1959]
 Sinister Dexter [Prog 1951-1956, 1961]
 Bad Company [Prog 1950-1961]

そして今回のトップ画像は、13年ぶりの復帰、そして恐るべき再スタートを切った『Bad Company』であります!いや、大好きな『Brass Sun』が良くなかったわけではない。そして、巨匠Millsの代表作の一つ『Defoe』も、毎回楽しませてくれるAbnett『Sinister Dexter』も押さえて『Bad Company』なのです!詳細については後ほど!


Judge Dredd
 1. Serial Serial : John Wagner/Colin MacNeil (Part1-5)
 2. Islands : Michael Carroll/Paul Marshall
 3. Sleeping Duty : Michael Carroll/Nick Dyer
 4. That Extra Mile : Alec Worley/Karl Richardson
 5. The Beating : John Wagner/Patrick Goddard (Part1-3)
 6. Melt : Rob Williams/Henry Flint

1. 2015年冬期のDark Justice以来姿を消していたMega City-Oneの天才的犯罪者P J Maybeが登場。P J Maybeについては以前に書いたJudge Dredd / Day of Chaosの時に少し書いたのですがかなり省略してしまったので、ここでこれまでの経緯についてもう少し詳しく書きます。
Day of Chaosの冒頭で逮捕されたP J Maybeですが、様々に策を使い、顔を変えて脱走。(Mega City-Oneには簡単に顔を変えられるマシンがあり、かなり初期から登場しています)その後、さらに顔を変え、美容院のようにマシンで顔を変えられる店の店員として潜伏。店にやってくる金持ちの老婦人を見繕い、取り入って結婚し、Chaos Dayの大暴動の間もその屋敷に閉じこもりやり過ごします。その間に遭遇してしまった3体のDark Judgeを騙し、瓶に封じ込め隠し持っていました。そして2015年冬期のDark JusticeでJudge Deathが現れ、Dark Judge達を解放したが、P J Maybeについては生死も不明、となっていたのがこれまでの経緯です。
人体切断のマジックショーで事故が起こりマジシャンが体を切断され、死亡。そしてその胸にはドレッドに宛てたP J Maybeからの手紙が置かれていた。その内容は、最近起きた複数の連続殺人犯による未解決の事件はすべて同一の犯人によるものだというMaybeの推理だった。ドレッドは、その連続-連続殺人鬼と、更に新たな死体とともにメッセージを送り続けるMaybeを追い捜査を続ける!
今回はミステリ仕立てのストーリー。Dark Justice以後のいきさつについては、Maybeの手紙によると、彼はDeathのスキを見て逃げたということ。たぶんDeathはMaybeを同類とみなして逃がしたのだろう、というMaybeの考えも書かれています。今回も最終的にはまんまと逃げおおせたMaybe。いずれまた登場のことでしょう。ストーリーは夏休みから戻ったJohn Wagner。作画はもう結構おなじみのColin MacNeil。太めの丸い線を使いながら、カラーリングも含めた全体の印象で常に夜のようなダークな雰囲気を作るのが上手い。

2~4はそれぞれ1話完結のストーリー。うち2,3はMichael Carrollがライターを担当。前の夏期のBlood Of Emeraldsや前年夏期のCascadeなど大き目の話を手掛けているDreddの中心ライターの一人です。
2はある潜入捜査官の関わる事件を通じたアスペルガー症候群の少年とドレッドの触れ合いを描いた心温まる話。作画はおなじみPaul Marshallなのだが、ちょっともうやたらとこの人にケチをつけるのは悪いのでやめよう。少し忙しいと単調な構図を描いてしまう癖があるようですが、この作品は丁寧に仕上げられています。
3はシティ外の小施設にお宝があると思い込み侵入したこそ泥たちが、中にあったスリーピング・マシンでドレッドが仮眠をとっているのを見つけ…。という少しコメディタッチの話。スリーピング・マシンというのはジャッジが短い時間で充分な睡眠をとったような休息を得るためのマシンで、こちらも割と初期から登場しています。作画のNick Dyerは少し調べてみたところまだ若手のアーティストのようですが、結構好きなタイプの線なので今後の活躍を期待したいところです。(ホームページ)
4は、恒例のシティ外のマラソン大会で、コースの一部が危険地帯であることから中止になり、ジャッジ達が参加者を止めるため出動。しかし一部のグループはすでに危険地帯に差し掛かり、更に走りにかける男たちは…。というストーリー。ライターはDreddでワンショットでたびたび登場しているAlec Worley。作画は夏期『Outlier』のKarl Richardsonなのだが、この作品ではちょっと引きの画の弱さが出てしまった感じ。

5. 再びJohn Wagnerによるストーリー。隠し撮りによる脅迫で稼いでいたグループが、ドレッドがバイク・ギャングを退去させるために出動した際、中の一人を必要以上に殴打し、死に至らしめるという映像を入手し、ドレッドを脅迫しようと試みるのだが…。
おなじみ社会派Wagnerによる一編ですが、真相は退去をスムーズに進めるため、潜入捜査官の一人と芝居を打った、というのは大体想像できてしまうため、少し小品の感じも。作画は2015年冬期のあの『Savage』のPatrick Goddard。Adam Brownによる重みのあるカラーリングもあっているのだけど、個人的にはより持ち味の素晴らしい線が活かされるモノクロが好みですが。

6. 年末・クリスマス特大号の増ページのワンショットは夏期に完結したTitanサーガのコンビによる番外編的後日譚。Mega City-Oneに雪だるまの盗賊団が出没。だがそれは実はEnceladusの生命体へと変貌した逃亡者たちが起こした猛吹雪の残雪から作られた雪だるまが意識を持ったものだった。彼らの目的は生存のため冷蔵庫を集めるだけだったが、Justice Departmentはそれを放置しておくわけにはいかなかった…。
クリスマス・ストーリー…かな?2のように子供が出てくる話なのだが、こちらはちょっと切ない結末に。

Defoe : The London Hanged
 Pat Mills/Leigh Gallagher

巨匠Pat Millsの代表作の一つが登場です。17世紀、架空のイギリスを舞台に水平派の闘士Titus Defoeが、魔術により蘇生させられたゾンビと戦う物語です。単行本も2冊発売中。前に掲載されたのが、私がこれを始める前の2013年夏期で、Defoeが一緒に戦っていた女性と、ゾンビの蘇生者にとらわれていた彼女の息子を救い、大団円の感じで終わっていたのですが、新たな展開で再開しました。
戦いは終わり、救い出した女性TomazineとSean、そして新たに生まれた娘とともに平和に暮らしていたDefoe。だが、ある夜、教会により絞首刑にされた者たちがゾンビとして蘇らされ、その群れはロンドンへと向かう。何者が彼らを蘇生させたのか?かつての同士Brethern、貴族階級の歪んだヒーローたちも動き始める。そしてDefoeもかつてのゾンビ・ハンターの装備を身に着ける!
作画はあのローマの狂戦士『Aquila』(なんか毎回書いてるなあ…好きなもので)のLeigh Gallagher!こちらは白黒なのですが、Leigh画の暴走感がさらに強まり、主人公Defoeからして相当に凶悪な面で、善人と悪人の判別もつかない素晴らしいアート!というかこの作品ほとんど悪い人しか出てこない。味方であるBrethern達もほとんどぶっ壊れた危険人物ばかりだし、貴族階級のマスクをつけて魔術で戦う偽ヒーローたちは完全に狂った堕落した連中だし。ちょっとイギリス史にあまりにも疎いのでわかってない部分もあるのかもしれないが、とにかく凄い。今後の展開としては、この偽ヒーローとの暗闘が一つの中心となって行くのだろうと思われます。というところなのですが、今シーズン最終回、Tharg閣下によると、Leigh Gallagherは今回で『Defoe』の作画を降板するとのこと。誠に残念ですが、2000ADはいいアーティストが沢山いるので、次回からどうなるのか期待して待ちたいと思います。しかし巨匠Pat Millsの作品はどれも素晴らしく、一方で日本ではあまりにも知名度も低く、微力ながらもこのMills氏の偉大な功績を少しでも多く伝えて行くのが私の使命なんじゃないかと少し大げさながら思ってしまうのですよ。多分あのアラン・ムーアだって昔は敬語で話してただろうぐらいの大物なんだゾ。と言いつつも現在の2000AD2000号までに追いつこう作戦進行中の状況で、色々読み始めたのもストップしてしまっているのですが、また区切りが付いたら頑張って続報をお伝えして行くつもりであります。しかしLeigh Gallagherって今回初めてよく調べてみたら、なんか拍子抜けするぐらいにこやかなアンちゃんかオッサン(年齢不詳)が出てきたのだが…。いや別にいいんだけど…。(ホームページ)

Brass Sun : Motor Head
 Ian Edginton/I.N.J.Culbard

さてここで『Brass Sun』!2014年夏期以来の登場となりますが、私も何度も好きな作品と言いながら、少し雑に書いてきてしまったので、今回ここであまりちゃんと書いてなかった序盤のストーリーをまとめておきます。
たくさんの惑星が集められ、パイプでつながれ機械的に太陽の周りを回っている不思議な世界。その太陽は衰え、死に向かっている世界を救うため、祖父の遺志を継いだ少女Wrenは旅立つ。自らの惑星のシステムの管理者のもとにたどり着いたWrenは、そこで働く技術者の少年Septimusとともにシステムを再起動させるための鍵を求め、今では使われることのなくなった惑星をつなぐパイプを通り、別の惑星へと出発する。最初の惑星ではその世界の内乱に巻き込まれながら、誰からも顧みられることのない掃除負の男の頭の中にあった「祖父の本」をWrenの脳にインストールし、次の惑星に向かい脱出する。というところで2014年夏期のFloating Worldの話へとつながるのですが、そちらで書いてなかったこととしては、Wren達がGaseouse Clayを求める冒険に出ている間にギルドのPeiの許を謎のロボット(画像のヤツ)が襲い、その混乱に乗じてWren達がPeiの娘の中の鍵を手に入れるという展開。このロボットに関しては正体は不明ながら、目的はWrenの頭の中にある「祖父の本」であるこの世界を作った者の記憶らしいということです。ということで今回のストーリーへ。
次の惑星へと向かい、パイプを通っていたWren達は、その途上別のシステムの管理者によって制止、拘束されてしまう。そもそもはシステムの技術者であり、出立前にいざとなればWrenよりもシステムを優先するように言い含められていたSeptimusは追及されるうち、Wrenの頭の中に創造者の記憶があることを話してしまう。その結果、管理者たちは生死をも問わない強引な方法でWrenの頭からそれを取り出そうと試みる。自分の行動の結果に深く後悔しながら、システムの労働者に組み込まれ働くSeptimus。だが、再び現れた謎のロボットの襲撃により、Wren奪回のチャンスが訪れる!
今シーズンは冒頭からヒロインであるWrenちゃんが丸坊主にされた頭に電極の針を何本も刺され、鼻血を流しているというあまりにもショッキングな展開に多くの読者が退いたせいか、少し評判は悪かったようですが、基本的には変わらない少年少女の愛と勇気の冒険物語で、個人的には全く評価は揺るがず、今回も本当に楽しませてもらいました。でもやっぱりヘッドギアぐらいに穏便にしていた方が良かったんじゃ、とは思うけど…。でも彼らに協力してくれる、厳しい労働のため疲弊し人間の体をあきらめダルマみたいなロボットになっちゃったおばさんが、囚人服のWrenに昔の勝負服を渡してくれるというような美しいシーンもあったのですよ。最後にはさらに強敵も出現し、今後の展開にますます期待が高まる『Brass Sun』であります。余談ですが、今の日本で使われている「冒険小説」という言い方にまでイチャモンを付けるつもりではないのだけど、なんかこういう物語の居場所がなくなるような気がして、個人的にはあまりその言い方は使いません。作者チームについては、散々書いてきているので今回はいいか。D' Israelとの新作も期待されるEdgintonですが、一方のCulbardも2016年春期には意外なコンビで新シリーズが始まります。

Sinister Dexter : The Taking Of The Michael
          Blank Ammo

 Dan Abnett/Patrick Goddard/Simon Davis

2014年夏期以来の登場となるおなじみの凄腕ガンシャーク二人組が活躍するシリーズです。今回はいよいよしばらく続いていたTanenbaum追跡の最終章となります。全6回の「The Taking Of The Michael」のあと少し空いて、クリスマス特大号にワンショット「Blank Ammo」が掲載されています。ちなみに左のクールなカッコイイ画像は作画の二人ではなく、John Davis-Huntという人によるものですが、前シーズンの作画が『Orlok』などのレトロ画のJake Lynchだっただけにかなりの落差が…。

The Taking Of The Michael
Tanenbaumが証人プログラムに守られ、潜伏するSkelton Keysに到着したSinisterとDexter。Tanenbaumの所有する豪華クルーザーで行われる船上パーティーに狙いを定めた2人だったが、敵側も彼らの到着を悟り、次々と刺客を送り込んでくる。それらを打ち倒し、クルーザーに潜り込んだSinisterとDexter。そして、遂にTanenbaumとの対決の時が来る!
今回は戦闘後の船上の警察による現場検証と、Skelton Keysについてからの2人のストーリーが交互に語られる構成となっており、冒頭から船上に二つの人型がチョークで描かれていて、果たして彼らはどうなったのか、という展開で進んで行きます。最後には宿敵Tanenbaumを追い詰め、Sinister Dexterは銃を撃つ!だがTanenbaumの身体は大爆発!なぜか無傷だった2人は起き上がり、船から去る。しかし、上陸したとたんに警察に出会い、身元照会をされるが何故か彼らの犯罪記録は無くなっている。どうやら爆発の衝撃で今度は2人が異次元に飛ばされてしまったようだ、という結末。毎回作画が変わるこのシリーズ、今回はDreddにも登場したあのPatrick Goddard。このシリーズの雰囲気に合わせ、構図やタッチなどを若干変えてスピード感を出しているところもあり、さすがという感じです。

Blank Ammo
クリスマス・年末スペシャル号のワンショット。地元に帰ってみた2人だが、誰も彼らのことはわからない様子。しかし何事にも動じない2人はいつものノリで歩き回り、さて、これからこっちの世界でガンシャーク稼業を始めるか、という感じに終わります。
Dan Abnettの2000ADではおなじみの人気シリーズ『Grey Area』に続き、こちらの『Sinister Dexter』も異次元に行ってしまったわけですが、先に戻るのはどちらになるのか?こちらの作画はなんとあの『Slain』のSimon Davis。まあ、凄い人は何描いても凄いですね。

Bad Company : First Casualties
 Peter Milligan/R. Dayglo/J. McCarthy

そして、いよいよBad Companyの登場です。ではこれはいかなる作品なのか。元は1980年代2000ADにてPeter Milligan(ライター)/Brett Ewins(ペンシラー)/Jim McCarthy(インカー)のチームにより創られたSFミリタリー・アクション・コミックです。異星人Kroolと人類との戦争が繰り広げられる惑星Ararat。主人公の若き兵士Danny Franksは自らの部隊が全滅した後、Bad Companyと呼ばれる部隊に配属される。そこはフランケンシュタイン的怪物である隊長Kanoに率いられるミュータントと狂人の集まりの部隊だった。というストーリー。こちらはまだ未読なのですが、今回の再開の直前にコミック情報サイトComics Allianceのインタビュー(Peter Milligan Brings Back ‘Bad Company’ for ‘2000 AD’ [Interview])でピーター・ミリガンが語っているところによると、ベトナム戦争の映画や本などに触発されたということですので、おそらくは英雄的な戦争物語とは異なる作品であったのだろうと思われます。同時期には終わりのない戦争で化学・生物兵器で完全に汚染された惑星を舞台としたSFミリタリー・コミック『Rogue Trooper』も掲載されていた2000ADですし。
そして、その後2000年代初頭にごく短期間復帰、Alan Grant/John Wagner/Carlos Ezquerraによるワンショットなどを経て、13年ぶりに再開された今作はいかなるものなのか。同インタビューによると、その後さらに変化した現代の戦争について描くこと、そして、戦争は本当に戦う価値があるのか、ということが今作のテーマとなるということです。

終戦から10年。Dannyら元Bad Companyのメンバーは、形としては戦争の英雄だが、そのあまりにも深いトラウマゆえに軍の施設で薬漬けになり、それでも一応は平穏な日々を送っていた。ある日、Dannyは軍上層部に呼び出され、出頭すると、連れていかれたのは軍のジャンクヤードのような施設だった。Dannyはそこでかつての隊長Kanoと再会する。だが、Kanoは頭と胸に大穴が空いた状態のまま、いまだに戦闘の最中にいるかのような狂気の行動をとるばかりだった。戦争終結後、軍はKanoを平和な状況に適応させるように試みたが適わなかった。そして彼らはDannyにKanoを殺すよう要請する。しかしその命令に疑問を感じたDannyは、かつてのBad Companyのメンバーを集め、Kanoを軍施設から奪い出す。施設の彼らが信用する医師により、Kanoは幻覚から解放され、元の状態に復帰し始める。Danny以下のメンバーたちも大量の薬の摂取を止め、無気力状態から復帰し始めるのだが、その一方で自らの記憶に違和感を感じ始める。その謎を解くため、彼らは旅立つ。そして、かつての戦闘の地Ararat、刑務所惑星を巡ったBad Companyは、恐るべき戦争の真実を知る!

そして地球に戻ったBad Company。行われていた戦勝10周年を祝う記念式典に乱入し、彼らは集まった観衆に自分たちの知った戦争の真実を訴える。

戦争の発端となったAraratの植民村のKroolによる大虐殺は嘘だった。AraratをKroolの手から奪うための、地球政府による工作だったのだ。そしてその任務のため植民村の人々を虐殺したのは彼らであり、その後軍施設で記憶を消されたが、その罪悪感のため狂気を免れなかった者たちが集められたのがBad Companyだったのだ!

しかし、集まった観衆はそんな話は聞きたくはなかった。彼らに向かい次々と物を投げつける!駆けつけた軍も彼らに銃を向ける!そして、ここからBad Companyの新たな戦いは始まるのだった!

この作品の評価に関しては、大きな批判も見当たらないけど、大きな絶賛というものも見当たらないという様子です。前作を知らない私から見ると、以前のものをひっくり返してしまったようにも見えるけど、『Bad Company』という物語をよく知っていれば、再開されたものがこのような形になることにそれほどの違和感を感じないものなのかもしれません。
戦争というものは昔からそういう部分があったものにせよ、近年の戦争では特にその理由や動機に疑問視される部分が多いのは誰もが知るところでしょう。この作品の、あまりにも明白な政府の利益追求のための悪行、というのは少し単純に思えるかもしれません。しかし、自国の利益や、安全保障上の観点、はたまた営利企業であれば利潤追求のために動くのは当然、などといった形で、実際に国民であり、企業など社会の一員である私たちがそれぞれに自分の立場を考えながら議論を重ねるうちに常に結論も、本質も曖昧になり、そして曖昧なまま次の戦争が起こされ、犠牲者が重ねられてて行くものではないでしょうか。それがSFという形で架空のものであっても、ひとつの戦争を描いた後、一旦は終了し、そして新たに「現代の戦争」を描くために再開された本作は、それが単純化されたものであっても、ひとつ現代に向けて大きな意味がある作品なのではないでしょうか。自分は根本的に何かそういうところで意見を述べるような資質は無く、ただ良い作品を読んだらその意味を一生懸命考えようというだけの人間ですが、そういう者としてこの作品は、なんとしても未読のものも読み全体の意味を見極めなければと思い、更には作者であるピーター・ミリガンの作品を今後はできる限り読まなければ、と思わせる今期最大の問題作でありました。
ライターであるピーター・ミリガンは、多分日本語表記で良いくらいのビッグネームだと思うのですが、現在のところあまり代表作などは翻訳されていないようですね。イギリス出身で2000ADで活躍した後、いわゆる”ブリティッシュ・インベンション”でアメリカに渡った作家の一人です。代表作はVertigo作品などで多数あり、『Hellblazer』全300話の最後のライターも務めています。今回のBad Companyの続きが描かれるのかは不明ですが、前出のインタビューで、ミリガンはこれを機に2000ADへ復帰することに意欲的で、その方向で動いているということなので、近いうちにまたミリガン作品を2000ADで読むことができることと思います。
この作品の作画はこれまではミリガンによる作品は一貫してBrett Ewins-Jim McCarthyのコンビによって描かれてきましたが、2015年Ewinsが死亡し、今回からはRufus Daygloが参加しています。90年代から主に2000ADで活躍する他、『Tank Girl』のシリーズのひとつなども手掛けているアーティストです。ちなみに今回トップ画像に使用した『The Complete Bad Company』はプリント版は残念ながら現在絶版なのですが、2000ADのアプリショップからは読むことができます。

最後にProg 1961 クリスマス・年末特大号について。100ページのラインナップは以下の通り。

 Judge Dredd
 Absalom
 Kingdom
 Bad Company
 The Order
 ABC Warriors
 Sinister Dexter
 Future Shocks
 Strontium Dog

うち、Dredd、Sinister Dexterについては上で解説済み。Bad Companyはこれが最終回。Kingdom、The Order、ABC Warriors、Strontium Dogは2016年冬期のシリーズのスタート。ということで残り2作について。

Absalom : Family Snapshots
 Gordon Rennie/Thernen Trevallion
2015年夏期に掲載されたシリーズのワンショット。Absalomの許には今年も地獄から孫たちの写真が送られてくる。悪魔たちに囲まれにこやかに笑い成長して行く孫たちの写真。彼を嘲り、苦しめるために。そのころ、新たに加わった悪魔ハンターの少年Danielは廃墟となったかつての住まいに向かっていた…。続きが待たれるシリーズですが、多くの人気シリーズを抱えるGordon Rennieのこと、今年中の掲載はあるのか?

Future Shocks : The Mighty Mykflex
 Martin Feekins/Jesus Redondo
1977年2月、地球に謎の宇宙船が墜落。生き残った異星人Mykflexは逃亡し、ヒッピーのコミューンに潜り込むのだが、宇宙船に残された数々の冒険の映像からその才を買われ、SFコミック誌1999ADのエディターになる。しかしそこに、おなじみ2000ADのTharg閣下が現れ、彼を新たなスリルの探索者としてリクルートし、Mykflexは再び冒険の旅へと出かけるのであった、という話。どうも1980年代ぐらいのFuture Shocksと関係があるらしいのですが、さすがにそこまではわかりませんでした。なんかわかったらその時に書きます。


今期は4シリーズのみだったのですが、どれも熱量が高く、長くなってしまったため、またしても遅れてしまいました。やっと2015年分が終わったか、と思うけど結局もう7月か…。あと最低やっとかなきゃならないのは2016年冬期、春期の2期ですが、冬期はご覧の強力ラインナップ。春期はまた2回に分けなきゃならなそうという感じですが、何とか早めに進めるよう努力しますです。他のコミックのことも書きたいのだが、とりあえずは2000号目指して頑張ろうということで、しばらくはこの感じでまたお付き合いください。

【追記】
なんだか『Tank Girl』をミリガンの作品だと思い込んでいて色々間違ったことを書いていたので修正いたしました。何が原因でそう思い込んだのかは不明。たぶんこのアーティストの別の作品ではライターが誰で、みたいなことを横にたどったりしているような過程で間違って思い込んだのだと思うけど。今週ComixologyでTitanの『Tank Girl』とかのセールをやっててやっと気付きました。今後はきちんと確認して正確な情報を書くように努めます。すみませんでした。


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2000AD 2014年冬期 [Prog2014,1862-1873]

2000AD 2014年春期 [Prog1874-1887](前編)

2000AD 2014年春期 [Prog1874-1887](後編)

2000AD 2014年夏期 [Prog1888-1899]

2000AD 2014年秋期 [Prog1900-1911, 2015]

2000AD 2015年冬期 [Prog 2015,1912-1923] (前編)

2000AD 2015年冬期 [Prog 2015,1912-1923] (後編)

2000AD 2015年春期 [Prog 1924-1936]

2000AD 2015年夏期 [Prog 1934-1949] 前編

2000AD 2015年夏期 [Prog 1934-1949] 後編


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