2014年3月30日日曜日

ハードボイルド/ノワール系アンソロジーとインディー・パブリッシャー

ハードボイルド/ノワール方面で、私が今一番注目しているのがこの辺りの動きです。まだまだ私もとっかかりぐらいなのですが、少し読んだり調べたりした概略を書いてみます。
Kindleではハードボイルド/ノワール系の1~3ドルぐらいの安価なアンソロジーがいくつか出ていて、大抵はウェブジンを母体にしたもののようです。多くの作家が複数のアンソロジーに登場していて、色々横のつながりもあるかと思われます。それらの作家の本を多く出版しているインディー・パブリッシャーもあり、大抵はそれほど高くない価格でそれらの本も読めます。今回はそんな中からいくつか、私の知っているものを紹介してみようと思います。

アンソロジー

●All Due Respect

同名のノワール系投稿ウェブサイトの作品から選ばれた29作家29本、約270ページで0.99ドル。様々な個性的な作品を読めて、この辺りの入門書的な一冊です。29本となると、うまく内容を紹介できない感じですが、興味を持たれた方は絶対に損はしない一冊です。
All Due Respectは、こちらを出版した後、ウェブでのサブミッションは終了し、現在はオリジナルのアンソロジーの刊行を始めています。昨年11月に1号が出て、今月2号が発行されました。そちらの方はまだ未読なのですが、ショートストーリーに加えて、インタビューやレビューも掲載されているそうです。

All Due Respect

●THUGLIT 

作家Todd Robinson主宰のアンソロジー。現在10号まで発行されています。どのくらいの間隔で出ているのか把握していないのですが、結構早いペースで発行されていて、今年1月に9号が出たと思ったら3月にはもう10号が発行されました。いい作品が集まったら出るぐらいのアバウトな感じなのかも。毎号100~150ページで1ドル前後と、こちらもお買い得です。
こちらは、1号を読みました。全部で8本のショートストーリーと、Todd Robinsonの長編小説『Hard Bounce』のプレビューが掲載されています。中では、ちょっと傷だらけの天使みたいな情景も浮かんだりしてしまったJohnny Shawの『Luck』が私のお気に入りです。 

Thuglit

●Crime Factory

Crime Factoryは、2000年にオーストラリア、メルボルンで立ち上げられ、インディー系書店にのみ出回る雑誌として2003年まで活動した後、一旦は休止しましたが、2010年から再開された、という話なので現在も本拠地はそちらの方なのでしょう。活動再開後、しばらくはウェブからPDFで出版という形式で活動していたようですが、現在はKindleなどにも活動の場を広げています。現在最新号が15号で、2ドル前後で販売されています。内容は、ショートストーリーの他にも評論やインタビューも掲載されていて、小説だけでなく、映画やコミックのレビューもあります。
こちらも1号しか読んでいないのですが、中ではFrank Billのどちらを向いていも救いがないノワール、『Trespassing Between Heaven & Hell』が圧巻でした。他にケン・ブルーウンの長編のプレビューも載っていました。
Crime Factoryは途中からのKindle参入で、それ以前のバックナンバーはこの間までウェブから無料でダウンロードできたのですが、今は有料になっています。ただ、バックナンバーもKindle化を進めているようで、今月3月に、5,6号が立て続けに販売が始まっています。そう遠くないうちに、全号Kindleで読めるようになると思います。

Crime Factory

●Blood and Tacos

THUGLITの項で名前が出たJohnny Shawによる、70年代メンズアドベンチャー・リスペクト・アンソロジー…なのですが、これはちょっと曲者なので新たに別に回を設けて書きます。

私が現在までに読んでいるのはこのくらいなのですが、未読の物としては、ウェブジンShotgun Honneyからベスト版アンソロジーが2冊、Beat Up Pulpから色々ジャンルがあるらしいアンソロジーが6冊出ています。単発のものとしては、イギリスの犯罪小説作家45人の作品を集めた『True Brit Grit - A Charity Anthology』というのがあって、こちらは現在のイギリスのそのジャンルの物としてはベスト、と評判の高いものです。探せばまだまだありそうな感じですが、とりあえず今のところはこのくらいです。

Shotgun Honney

Beat Up Pulp

インディー・パブリッシャー

実はまだこちらの方は全然読み始められてもいないのですが、これから読もうと思っているこの辺りの作家の本を多数出版している インディー・パブリッシャーをいくつか挙げておきます。
まず、アメリカで注目は、New Pulp PressとSnubnose Pressの二つ。ただ、Snubnoseの方は、今年になってからまだ新刊が出ていなくて、もしかしたら活動休止では、と少し不安なのですが…。New Pulp Pressからは、イギリスの作家や、日本でも翻訳の出たロジャー・スミスの本なども出ています。イギリスでは、Ray BanksやDouglus Lindsayの本を出しているBlasted Heathが注目です。他には、アンソロジーのところで名前を出したBeat Up Pulpや、やはりウェブジンをやりつつプリントでアンソロジーを出しているOut of the Gutterなどからも色々面白そうな本が出ているようです。

New Pulp Press

Sunubnose Press

Blasted Heath

Out of the Gutter

とりあえずこれから書いていくためにこの辺りのことを一度まとめておいた方が良いかな、と思って書き始めたのですが、やはりまだあまり読んでもいないので、後半かなりグダグダになってしまいました。またいろいろ読んだりしながら調べて、もう少しまともにまとめたものがかければと思っています。


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2014年3月21日金曜日

Essex County -Jeff Lemireの感動作-

今やDC52のメインライターの一人となっているJeff Lemirieの2008-2009年のカナダ、エセックス郡を舞台にした三部作です。こちらは、画もJeff Lemirie本人による完全クリエイターオウンド作品です。

【Book One】
Tales From The Farm

主人公の少年Lesterは、二人暮らしだった母が癌で亡くなって以来、叔父に引き取られエセックス郡の農場で二人で暮らしている。母が亡くなって以来Lesterは常にコミックスのサイドキックのようなマスクとマントを身に纏い、あまり友達もいない孤独な少年。叔父はそんな少年を心配しているのだが、なかなかうまく心を通わせられないでいる。ある日Lesterは、叔父に連れられて行ったガソリンスタンドで、そこで働く元ホッケー選手のJimmyと知り合う。そして、彼と親交を深めて行くのだが…。

【Book Two】
Ghost Stories

エセックス郡の農場で暮らす孤独な老人Lou。そろそろ人生の終わりを向かえそうな彼の許を訪れるのは、訪問看護の女性だけ。消えかかる記憶を手繰り寄せるようにして、彼は自らの長い人生を振り返る。弟Vinceとともに戦ったホッケーリーグの事。様々な後悔…。

【Book Three】
The Country Nurse

第2部に登場した訪問看護の女性の話と、1917年、雪に閉ざされた山奥の孤児院が火事になり、雪山を越えて避難する修道女と子供たちの話が交互に語られ、そして三部作に登場したすべての人々の物語がひとつにまとめられる。

アイズナー、ハーヴェイ両賞にノミネートされた、近年のもう「名作」という評価が決まっている作品です。Jeff Lemirieの画は、それはデッサン力などの面で上手いとは言えませんが、一見同じようにも見える中で、確実にその場、その場で表情をとらえ、この人は今どう思っているのだろう、この少年の目には何が映っているのだろう、と見つめてしまう素晴らしい画だと思います。このように、必ずしもクリエイターオウンドの作品でなければ実現できないとは思いませんが、やはりマンガ=コミックという表現において、画とストーリーは不可分のものだな、と改めて考えさせられます。登場する人々の様々な想いが、カナダ、エセックス郡の自然とともに染み渡るように伝わってきて、読後はいい映画を観たのと同じような気分にもなる素晴らしい作品でした。

Jeff Lemirieは1976年カナダに生まれ、作品と同じエセックス郡で育ちました。一旦は映画制作の学校に進みましたが、コミックの方が自分の表現にあっていると思いこちらの道を選んだそうです。2005年に『Lost Dog』という作品を発表した後、2008-2009年にこの『 Essex County』三部作を発表しました。現在は『Animal Man』『Justice League Dark』、そして昨年DC52へ移籍した『Constantine』などの作品でライターとして活躍する一方、Vertigoから『Sweet Tooth』『Trillium』、Top Shelfからは『Underwater Welder』などのクリエイターオウンド作品を発表し続けています。今後、確実にアメリカン・コミックの中心人物のひとりとなって行く作家でしょう。
版元のTop Shelfは、いわゆるインディペンデント系のコミックを数多く出版しているパブリッシャーで、他にAlex Robinsonや、『ダース・ヴェイダーとルーク(4才)』などでブレイクした(のかな?)ジェフリー・ブラウンの作品なども出ています。近年のアラン・ムーアの、アメリカでの版元でもあります。
元々は三部別々に出ていましたが、現在はそれらをまとめた500ページほどの完全版が出版されています。私はComixologyでデジタル版を読んだのですが、ぜひプリント版も手に入れたいと思っていたのですが現在は絶版で入手困難…、と思っていたら今回のために少しTop Shelfのサイトを見てみたら、近く再版されることになったそうです!とりあえずはKindle版のリンクを載せておきますが、プリント版が入手したい方はもう少々お待ちください。

※文中のクリエイターオウンドという語は、大抵は版権上の用語として使われますが、私の勘違いでなければこのような作品形態に使われることもあったと思うのですが…。あなり自信はありません。間違っていたらすみません。


●Jeff Lemirieの著作


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2014年3月9日日曜日

Dead Pig Collector -Warren Ellisのノワール短篇-

ウォーレン・エリスといえば、イギリス出身の、マーベルやDCでの活躍でもよく知られるアメコミライターの重鎮ですが、これまでに犯罪小説も2冊出版しています。いつか読んでみたいな、と思っていたところで、昨年のサンディエゴのコミコンでこの短篇がe-Bookで出版されることがアナウンスされ、去年の夏ごろ、Kindle版を買って読んでみました。

Mister Sunは、特殊なアプリを使って仕事を請け負う殺し屋である。今回の仕事はL.A.。どうも今回の依頼人は気に入らないのだが、仕事は仕事。ターゲットの女性の家へ向かったMister Sunだが…。

昨年読んだノワール短篇の中でもかなり気に入っている一篇です。少し乾いたユーモアも感じられる独特の雰囲気を持った作品です。まあ、ノワールというのは少し読む人を選ぶジャンルでもあるので、万人にお勧めというわけにもいきませんが、このジャンルが好きな人や、 ウォーレン・エリスの小説を読んでみたいという人には、読む価値のある作品だと思います。29ページの短篇で、1ドルとお手軽な感じです。

版元のFSG Originalsは、ノワールジャンル注目のFrank Billの作品も出版しているところで、今後はウォーレン・エリスのノンフィクション作品もリリース予定だそうです。
ウォーレン・エリスについては、ご存じない方のためにもう少し補足しておくと、マーベル、DCでのヒーロー物での活躍の他、オリジナル作品としては、映画2作目も公開された『RED』の原作や、『Transmetropolitian』『Planetary』などがあります。私もまだほんの隅っこをかじったぐらいで、前述の犯罪小説も含め、もっと読んでいきたい作家のひとりです。 

●ウォーレン・エリスの小説


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