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2021年10月24日日曜日

Ray Banks / No More Heroes -Cal Innesシリーズ第3作!マンチェスターのチンピラ探偵疾る!-

お待たせしました。誰も待ってなくても勝手に待ってたことにします。マンチェスターのCal Innesアニキ第3作『No More Heroes』です!
なんだかなかなか進まない言い訳も色々あるけど、今回はなるべく早くサクサク進めることを優先するよう努力します。つーのはこれは3作目で、次に最終第4作が控えておるから。そして最終作ともなるとそれまで以上に 書くことが増えるというのが経験上分かってきてしまったからです。「経験上」というのは、以前のストックホルム三部作のことでもあるのですが、直近では既に読み終わっているマッキンティ Dead三部作!これは相当あれこれ言いたいことがあると、読み終わる以前の途上から考えさせられるものでありました。まあそちらの方は近日登場で乞うご期待というところですが、とにかくまずは こっち、Cal Innes四部作の第3作『No More Heroes』。別に何部作の何作目だろうが、常に一作ごとは重要であることに変わりはなく、決して結末へ至る過程などとして軽く扱ったりしていいものではないのですが、 それでも全部終わってから見ると、また違った見方も出てきたり、新たな考えを追加したりということも多くなるもので、そういう意味でもきちんと早く最終作に至るためにも、あんまり寄り道せずに、 一旦はスッキリまとめておかなければ、ということです。あー、念のために言っとくけど、これは肉体LOVE♡北上次郎がよくやらかしていたクソ尊大な「○○シリーズは完結してから語る!」みたいな クソ批評ぶりっ子モードではないからね。これはこれで読んで思ったことはきちんと書くし、その先で間違ってたりわかってないことがあってもそれはそれで、その時点の感想をその位置で書くのが シリーズの読者の務めであり、その作者に対する正当なスタンスだというのが私の意見っすから。いや、まあこういうのが寄り道なんだよな。さっさと行くよ!

本編に行く前に、まずは前作『Sucker Punch』の続きから。といっても前作のInnesが世話になってるPauloのボクシングジムの練習生Liamの付き添いでアメリカ、L.A.のボクシングトーナメントに行っての顛末は、 わざわざネタバレしなくてもこっちを読むのに問題ないんで、前作からつながるところだけ。
アメリカで厄介事に巻き込まれているうちに、途中からInnesが何度電話してみてもPauloと連絡が取れなくなる。何とかそっちの事件から解放されて心配しながらマンチェスターに戻ると、Pauloのジムがなくなっていた…。 火災により全焼。証拠もなく警察による訴追もないが、犯人は明らかにMoだ!Innesはその足でMoの行きつけの店に乗り込み、怒りに任せ徹底的にぶちのめす。そして、最後に作中序盤から、 仕事をしつこく頼んできたDon Plummerに電話をかけ、依頼を引き受けることを告げる。
前作『Sucker Punch』のストーリー紹介の中で、自分でもちょっとバランス悪いな、と思いながらも主な展開であるアメリカでのボクシングトーナメントの方にあまり関係ない、序盤のMoとのいざこざを わりと長めに書かなきゃならなかったのは、実はこういう事情があったからなのでした。こうして居場所も失い、嫌々ながら元の稼業に戻ったCal Innesアニキのその後は?というところから 第3作『No More Heroes』は始まります。

【No More Heroes】

さて、「元の稼業に戻った」とは書いたが、実は正確には探偵稼業に戻ったわけではない。以前から探偵業務の一部として請け負っていた立ち退き状の配達という仕事にのみ復帰しただけで、 探偵としての調査・捜査といった仕事は受けてはいない。第1作『Saturday's Child』でもこの仕事をやっていたInnesだが、英国では家主が店子に立ち退きを要請するためには、 正式に作成された書状を直接本人に手渡すことが義務付けられているというのだと思う。すんません、ちゃんと調べてないのだが。
そしてInnesにこの仕事を依頼しているDon Plummerは、マンチェスターの各地に不動産を持つ人物なのだが、はっきり言って悪徳家主。あちこちに劣悪な不動産を持ち、問題があったり、不満があったりする店子を 数多く抱え、この手の立ち退き状の配達が度々必要となる家主である。
そして今作で、待望(?)の間抜けな相棒が登場!残念ながら弟分ってわけじゃないのだが。その名もDaft Frankと、既に通り名に”マヌケ”が入っちゃってる筋金入りだ。Innesと同じくPlummerに雇われている立ち退き状の送達要員。そもそもはそれほどのマヌケでは なかったそうなのだが、かつて銀行を襲撃し、奪取した現金を抱えて徒歩で逃走、なんとか追手を振り切ったと思い、一息ついて路上に金の入ったバッグを下ろしたところ、そこで中に仕込まれていた 防犯用のカラーボールが破裂!頭からペイントをかぶって逮捕されることとなる。どうもそのペイントがまずかったらしく、刑務所に収監されているうちに少し頭の方が悪くなり、以来Daft Frankと 呼ばれるようになったということ。基本的にガタイはいいのだが、いざとなるとあたふたして役に立たないタイプ。刑務所に入っている間に精神のみならず、健康にも支障をきたしたと主張し、 夏場に車の中でもジャケットを首までボタンを掛けて着こみ、車中でInnesが煙草を吸おうとすると大袈裟にせき込む。こうしてInnesは前作に続き喫煙難に苦しめられることになる。基本的には全く 役に立たないのだが、中盤辺りで、例の弟分ぐらいにちょっと活躍し、結果ひどい目に遭ったりする。
ところでInnesにしてもこのFrankにしてもそれほど危険人物ではないが、一応前科者なわけで、英国の決まりらしい立ち退き状を渡す手続きにしても、とりあえず渡せばよいだけで、渡す人の資格などは 必要ないのだろうね。
そして前作『Sucker Punch』では、第1作『Saturday's Child』での怪我から鎮静剤が手放せなくなり、周りからややヤク中気味と見られていたInnesなのだが、今作ではその依存症状はさらに悪化。 遂には友人のディーラーを頼って薬を入手するまでに至っている。一人称の物語において、常に自己弁護が繰り返されるが、周囲から見れば完全にヤク中と化している。

物語は、InnesとFrankが車中で立ち退き状を渡す借り手が家に戻ってくるのを待っているところから始まる。前述の通りFrankの「健康上の問題」から車中でタバコが吸えず、なかなか姿を現さない 借り手へのInnesの苛立ちはつのるばかり。やっとマンチェスター大学の学生である借り手が、友人数名と共に帰ってくる。とっとと立ち退き状を渡して帰りたいところだが、やはりそう簡単にはいかない。 血の気の多い体育会系の友人数名が一緒にいたこともあり、状況はヒートアップしもみ合いになり、Innesは車のフロントウィンドウを割られながらやっとのことで逃げ出す。当然ながら、 Frankは全く役に立たない…。

もうあんな奴の仕事を二度と引き受けるものか!と思うInnesだったが、なんだかんだで結局また翌日もFrankとともに立ち退き状の配達に向かっている。今度の物件も他のものと同様に、 外見の体裁は整えてあるが、中身はいかがなものか?玄関に向かい、チャイムを押すが、応答は無し。だが、2階の窓のカーテンが少し動いたような…?何度かチャイムを押した後、今度はドアの 郵便受けをガチャガチャ言わせ、そしてそこから屋内を覗いてみる。その時、Innesは異変に気が付く。
「おい、ヤバいぞ、Frank!中で何か燃えてるぞ!火事だ!ドアをけ破れ!」
「え?え?で、でも誰もいないんだろう?」
「お前も見ただろ、カーテンが動いたのを。誰かいるんだよ。俺は背中を痛めてるからこんなドアを蹴れないんだ!こっちが壊れちまう!だからお前がこのドアを壊すんだよ!」
「ま、待てよ、まず消防に通報だ!ああっ、この携帯なんでこんなにボタンが小さいんだよ!子供用かよ!」
あたふたするばかりで埒が明かないFrankを置いて、Innesは自力で入れそうな入り口を求めて裏に回る。裏へ回れば一層火事だということがはっきりとする。割れた窓ガラスから煙が立ち昇っている。 放火だ。犯人はこの窓を割って火元になるものを放り込み、既に逃走しているようだ。裏口のガラスを割り、ドアを開ける。煙と熱気が押し寄せてくる。ああ、俺はこんなことをする柄じゃないのに。
「誰かいるのか!?」
Innesの呼びかけに答えるように、二階から足音が響く。畜生、やるしかない。

二階にいたのは言葉も通じないこの家に住む移民の子供。やっと成功したらしいFrankの通報に応えて消防も到着し、Innesはなんとか子供を救出する。

この救出劇がマンチェスターの地元紙に大きく取り上げられ、Innesは一躍英雄に祭り上げられる。そんなもん柄じゃないと思いつつも、せっかくなら宣伝に貢献したいと、まもなく再オープンされる Pauloのジムの前で新聞用の写真を撮影されるInnes。

だがその一方。家主Don Plummerは最低の防火設備も整わない劣悪な不動産により暴利を貪る悪徳家主として、マスコミから糾弾、集中砲火を浴びせられることとなる。

そんな中、マスコミに追われ、行方も知れなかった渦中のPlummerからInnesに電話がかかる。
「おい、Innes、助けてくれ、お前探偵だろう。俺ははめられたんだ。火を付けた奴を、証拠を見つけてくれ。」
俺はもう探偵はやめたんだ、他を当たってくれ。だが、しつこく食い下がるPlummerに、ちょっと高めの料金を吹っ掛ける。
悪態をつきながら、それでも金を用意してくるPlummer。こうなったらやるしかない。
かくしてInnesは探偵稼業に復帰する。

Plummerによると、最近脅迫めいた文書が送られてきており、その相手もわかっているということだ。要はそいつらが放火犯人だという、警察にも持っていける証拠を見つけ出せばいい。
送り主はMoss Sideなる市民団体。Plummerのいうところによれば、ネオナチ。移民排斥などを強硬に訴えるグループだ。劣悪ながら家賃は低めなPlummerの不動産には、移民が多く居住している。
グループのリーダーはCollins Motorsという自動車修理工場を経営するPhil Collins。(ああ、フィル・コリンズなら知ってるよ。なんかチャリティ活動の一環でやってるのか?違う、そのフィル・コリンズじゃない。)

Innesは先日フロントウィンドウを割られたばかりの車をもってCollinc Motorsを訪れる。図らずも格好の敵情視察の口実ができたわけだ。
件のオーナーPhil Collinsは、愛想よく対応するが、いかにも腹に一物ありそうな男だ。全員が団体の活動員だという従業員たちも目つきの悪い連中が揃っている。
とりあえずはパンフレットなど受け取り、車を任せてその場は帰る。

そしてPlummerの地所についても調べておこうと、最寄りの不動産屋に向かったInnesは、Plummerへの抗議活動として店を取り囲む学生グループとも遭遇する。
折しも市長選が近づき、徐々に政治的にもヒートアップし始めるマンチェスター。
嫌々ながら探偵稼業に一時的に復帰したCal Innesは放火犯人を突き止めることができるのか?

タイトルの『No More Heroes』は、言わずと知れたぐらいの70年代後半に登場した英国パンクロックの重鎮、ザ・ストラングラーズの初期代表曲。ベースがブンブン鳴る太いサウンドをバックに、 太い脅迫ボイスで”ヒーロー共がどうなったか知ってるか?もう英雄なんて沢山だぜ!”と脅しをかける。
ただ、言わずと知れたぐらいにゃ言ってみたけど、ちょっと正確な歌詞調べようかとネットで検索してみたら、まず出たのはゲームのやつだったな。まあネットだとそんなもんか。カートゥーンタイプのグラフィックの 格好よさげなやつだけど、生憎やってない。見て久しぶりに思い出した。『3』まで出てるんやね。
しかし明らかに英国パンクロックを聴いて育ったスコットランド野郎Ray Banksなら、間違いなくストラングラーズの方が元ネタだろう。色々音楽も好きそうで作中でも言及多いしね。あ、そういえば 書くの忘れてたけど、前作『Sucker Punch』じゃジャズをくそみそに貶してたな。個人的にはジャズも嫌いじゃないけど、なーんか日本のハードボイルドといえばジャズみてえに気取ったの散々見せられて、 ちょっとウンザリしてる身としてはなかなか痛快でしたよーん。HAHAHA。
例えば、Cal Innesはパンクロックのハードボイルドだ。金も腕力もなく、知性もなければ人生経験も都合のいいコネもない街のチンピラレベルの自称探偵だ。あっちこっち痛めた挙句にちょっと体を動かせば 息が切れ、鎮痛剤に頼るヨレヨレの半ばドラッグ中毒だ。だからどうした?だが、奴にはいつだって弱っている奴、困っている奴には手を差し伸べずにはいられないハートがあり、不正に対してはどこが 痛かろうが拳を振り上げずにはいられないガッツがある。見栄えが悪かろうがテクニックが無かろうが関係ねえ!薄汚れた街の薄汚れたチンピラレベルで俺は俺だ!と叫ぶパンクロックのハードボイルドなのだ! ハードボイルドは、人生経験を積んだつもりのちょいわる親爺の格言ぶった格好つけセリフ集なんかじゃねえ!これが今読むべきハードボイルドだ!ああ、オレはCal Innesアニキに会えて本当に良かったよ。 日本じゃ翻訳される可能性はまずない、21世紀初頭の珠玉のハードボイルド、英国マンチェスターのチンピラ探偵Cal Innesシリーズ!必ず読むべし!

さて、今作では後半に差し掛かるぐらいのところで、ちょっとした作者Ray Banksによる遊びがある。一人称記述の物語は、基本的に語り手が後に手記などの何らかの形で書いたものであることが装われているものだが、 その場合なら絶対に起こりえないような展開がある。例えば語り手が最後に死亡してしまうというケースはよくあるが、こんなのはちょっと珍しいだろう。まあ見ている側とスクリーンに映し出される場面の 同時発生を装える映画などでは、この状況において当たり前に見られる展開なのだけどね。まあ作者Ray Banksとしては明らかに確信犯的で、逆にこんな奴があとで手記とか書くと思ってんの?といわんばかりでも あったり。どんなシーンかは読んでのお楽しみなので、必ず読むようにね。

今作では、結構序盤あたりでInnesの家族、父と兄についての記述があり、それで今回はそっちの方の展開になるのかな、と思ったがその後は無かったので、続く第4作、4部作最終作はInnes自身の家族に関わる 物語となることが予想されたりする。また、第2作の最後でPauloのジムに放火し、Innesに徹底的にボコられた後、マンチェスターから姿を消した宿敵Moも、今作では登場しなかったが、次作では何らかの形で 復活してくるのもほぼ確実だろう。あと、あんまり頼れないが愛すべき「相棒」、Daft Frankも引き続き登場がほぼ確定!ああ、次で最後か。名残惜しいし、もったいないけどこのまま進むぜ!
4部作をすべて読み終えれば、作者が意図したまた別の形が見えてくるのだろうし、こちらの思い込みや誤解で訂正するべきところも出てくるのかもしれない。だがたとえどうなろうが、私自身のこのシリーズへの 思いは絶対に揺らぐことはないと確信している。また、すべてを読み終えた最後には同様のことを書くのは確実だが、今一度ここで繰り返しておこう。
これが今読むべきハードボイルドだ!ああ、オレはCal Innesアニキに会えて本当に良かったよ。 日本じゃ翻訳される可能性はまずない、21世紀初頭の珠玉のハードボイルド、英国マンチェスターのチンピラ探偵Cal Innesシリーズ!必ず読むべし!


さてさて、国内的には待望のだらデカ3部作最終作『スリープウォーカー』が発売されたわけだが、なんだい、あのクソ帯!「ついにノワールの謎解きが本格ミステリーの謎を超えた!」???またぞろガラミス見当違いの 上から目線の、「ネオハードボイルドはリューインとプロンジーニのみミステリとして評価する」みてえなクソゴーマンの繰り返しかい!いい加減にしやがれ!ってとこだが、今回は色々書かねばならんことも多いので、 いずれまたの機会に極めて口汚く罵ってやるかんな!憶えてやがれ!あー、だらデカ第2作『笑う死体』は1年遅れでやっと最近読みましたが、やっぱ奴上手くなってたな。新潮文庫ハードボイルド都市伝説が かなりまぐれ当たり的に翻訳した近年の英国ノワールの大収穫やね。あー、このペースだと『スリープウォーカー』読むの来年か…?

で、今回何より強く訴えなければならんのはこれだ!遂に出た!現代最強のノワール作家にして無冠の帝王Anthony Neil Smith先生最新作!昨年出た『Slow Bear』に続く新作『The Butcher's Prayer』が、英Fahrenheit 13より遂に出版されました!
なんかさ、秋の予定のはずだったマッキンティ ショーン・ダフィがまた来年まで延びちゃったりしてたのもあって、Smith先生のも延期なんじゃないかと心配してたんだが、しっかり予告通り秋に出してくれましたがな。 ありがとう、Fahrenheit 13!
さて、Smith先生のここに至るまでの近況なのだが、少し遡った今年7月、突如ツィッターのアカウントが消滅!?まあ、この先生基本的には優しい大変ユーモアもある方なのだが、作家的にはとんがっているので 時々こういうことが起こる。以前にも色々ブチ切れてブログをかなり破滅的にやめてしまったりな。いやまあ、かなり長く大学でも教鞭をとっている人でもあり、人格的にも社会性的にも問題があるわけではないのだが、 とにかく作家的にとんがっているのでな。今回何が起こったのかは不明なのだが、まあこれまでの色々を知っている一ファンとしては、ああ、またやってしまったか…、うーん、何らかの形で早く 戻ってきてくれるといいのだが、と思いつつ現行のホームページなどを時々のぞいていると、9月初めごろにめでたくツィッターアイコンが復活。まあ色々あるけどさあ、インディーで出版してる作家としちゃあ これくらいしか宣伝の方法ないからなあ、ということです。折しもFahrenheitからは100部限定の短編作品『Trash Pandas』が出版され、この『The Butcher's Prayer』の発売も迫っており、自著宣伝をしなくては、 と戻ってこられたということでしょう。いやもう全然ありでしょう。世の中しれっとした顔して下品な宣伝垂れ流してるクズ山ほどおりますからな。とにかくお帰りなさい。先生の発言いつも楽しみにしとりますんで。
で、その近著の方だが、先の『Trash Pandas』はFahrenheitが出してるプリント版限定のシリーズの一冊。価格も確か100円ぐらいと安いんだが、Fahrenheitのショップ限定販売で、英国から日本への送料となると、 本体の何倍とかになっちまうんで、欲しかったんだけど買えませんでした。英国インディーのコミックとかでも結構気になってもその送料の敷居が高すぎて諦めること多い。もう完売してしまいましたが、 いつか読める機会もあるかと気長に待ちましょう。
そして今月になって発売されたのが件の『The Butcher's Prayer』!いや、前に予告あったし完全にあの『Slow Bear』の続編か、と思ってたんだが別の作品らしい。いや、別にいいんだが。Smith先生の本なら もれなく読むつもりだし。まだ読めてないのも色々あるけど…。ただまあ、Smith先生の作品も読めてないのはあっても、とにかく新しいものが出たらすぐ読んで現在進行形の先生をきちんと追って行こうというのが 現在の私の方針である。これはなるべく早い機会に読んで今度こそちゃんと書く予定ですから。日本に私以外いるのかは不明のイマジナリーAnthony Neil Smithファンの皆さんお楽しみに!

そしてこちらが前々から書かなくてはと思っていたスコットランドからのノワールの新しい動き。その辺の新スコットランドノワール一派とでもいう連中を結集した最新アンソロジーが、先月‎Bristol Noirから 出た『TAINTED HEARTS & DIRTY HELLHOUNDS: Bristol Noir Anthology 1』『SAVAGE MINDS & RAGING BULLS: Bristol Noir Anthology 2』の2冊。
おもにスコットランド出身のここから新しいノワールを撃ち出してやるぜ、という気概を持った新進作家達が横のつながりで一派的なものを形成し始めている。よし、もうワシが『新スコットランドノワール一派』と 勝手に認定する。その辺の中心となっているのがJohn BowieとStephen J. Goldsの二人だと思う。
John Bowieはこのアンソロジーを出版したBristol Noirの主催者。Bristol Noirはこの界隈ではおなじみのショートストーリーを掲載するウェブジンから、 最近出版にも手を伸ばしたところで、このアンソロジーが最初の出版となる。ダーティーリアリズムによるダークフィクションが主軸で、ブコウスキーに深く傾倒しているとのことである。
Stephen J. Goldsは今年に立ち上げられたウエブジンPunk Noir Magazineの主催者。Bristol Noirのようなショートストーリーの他、作家インタビューや 周辺カルチャーについての情報なども掲載されている。
この辺の動きについては少し前から気になりつつもなかなか書けなかったんだけど、ちょうどカタログ的なものも出たところなのでこのタイミングで良かったかな。ちなみにアンソロジーには、常々スコットランドを 心の故郷と呼ぶAnthony Neil Smith先生や、前世代のってことになっちまうけど、英国インディーノワールのオーガナイザーPaul D. Brazil大将なども参加しております。この辺の注目作家については、 アンソロジーと一緒に下のアマゾンへのリストの方に並べときますので、興味のある人はそっちから。あー、つってもそのうち日本で出版されますとか、そういう類いのことではないからね。「本格ミステリー を超えた謎解き」とかいった時代遅れで偏狭な馬鹿馬鹿しいお題目をお求めの方は他を当たってくんな。まあ今んとこはなかなか読めなくて外から見てるばっかだけど、このムーブメントについてはいずれもっと 詳しく書きますんで。うーん、とりあえずこっちのアンソロジーだけでも早く読もうと思ってるのだけど。

そして最近のおなじみPaperback Warrior師匠の話なんですが、ホント最近なんだけどこれ取り上げてるの見てびっくりした。エド・ブルベイカー/ショーン・フィリップスによる現在最注目のクライムコミック 『Reckless』!師匠のところでは最近割とゆるい感じで週ごとにテーマを決めた企画みたいのをやってたりやってなかったりするのだが、それで新しい作品について語るというような週がありその中で選ばれた ひとつがコレ。ぐぅー、師匠に先越されたッス。悔しい…。まあこれについては少し前にやった『Kill or Be Killed』のところで少し書いたんで、そっちを見てもらえばいいのだが、作品については 師匠も高評価でおススメ!まあコミックとか読まん人でもこのジャンル好きならブルベイカー/フィリップス作品は読んで絶対損しないよ。遅ればせながらやっとかの『Criminal』も読み始めたんだが、 やっぱもうこのコンビの作品はすべて必読やね。
そしてその翌日、今度はこれ来ててまたへこんだわ。Jon Bassoff『Corrosion』!あー、この人のことすっかり忘れてたわ…。結構カルト作家ぐらいのポジションの作家で、数年前ぐらいの 頃だけどDown&Outが、鳴り物入りぐらいの感じでこの人の旧作数点を一挙リリースして、気にはなったのだけど今よりもっと原書を読むスピードも遅くて、とりあえずホラー系かな?ということで後回しにしているうちに すっかり忘れてしまっていたよ…。あーもう到底忘れていいような作家ではないのに!師匠のお陰で思い出すことができましたよ。今度こそはちゃんと読もうっと。

その他、最近買ったちょっといいおススメ本とかも紹介します。前回のでブラック・リザードの流れでバリー・ギフォードの名前が出てきて、そういやちゃんと調べてなかったな、と思ってアマゾンで検索してみたら これを見つけました。『Sailor & Lula: The Complete Novels』。映画化もされた『ワイルド・アット・ハート』から始まり、二人のその後を描いた続編の、そのまた続編やらの長篇中編、確か7つぐらい入った合本です。最初見た時2400円ぐらい だったかで、どうすっかなと思ってたら2~3日後に1500円に下がってたんで即買いました。そのうち元の値段に戻るかもしれないんで欲しい人はお早めに。これ1500円は相当お買い得じゃない?あー、 念のために言っとくけど「映画の続きを知りたいと思い…」みたいな人はお呼びでないからね。全然別ものやし。いるんだよなあ、有名監督が撮ってるとあたかもそっちが原典だと思って原作の方を批判し始める 迷惑な映画言いたがり。
こいつは、今回のRay Banksが最近付き合いあるのそこだけみたいだし、なんか新作出ないかなあと思って以前にも書いたNeo Textのサイトを見に行って見つけました。おい!Eduardo Rissoやん!前回の『Moonshine』の レジェンドチームの作画担当Eduardo Rissoが挿絵を担当しているGerry Brown作『Hole』。Gerry Brownという人はアマゾンで検索するとマーベルとかでコミックのライターをやっている人が出てくるけど、その人なのかはちょっと不明。 まあでもRissoが描いてるんなら絵本だってすぐ買っちゃうよなあ。現在112円と大変お得価格だけど、いずれもうちょい高くなるかもしれんので興味のある人はお早めに。

というわけで、最後やっと戸梶圭太先生にたどり着きました。こっちがバテたりサボったりしている間に新作が2作も登場!8月2日発売の『みなさまのキルスイッチ』は、先生が半年かけた力作ということ。 まあ作品を創る時間は人それぞれだが、戸梶先生的には半年というのは相当かかったということになるようだ。 そして続いて8月16日に発売されたのが『半グレVSノーマスクカルト コロナ日本の内戦2021』。これは4日で書いたそうな。これはタイトルにもあるように、昨年出た問題作『コロナ日本の内戦』に連なる作品 ということである。あっち読んだんだからまずこれから早く読まんとなあ、というところなのだが、なんだか毎度並べるばっかりでさっぱり読めてなくて本当に申し訳ないっす。戸梶先生もSmith先生同様、 現在進行形で追って行かなければいけない作家だと思っているので、読めてないの多いけど、なるべく新しいのから読んでくつもりです。あー?こいつなかなか読めないで積まれてるのを知らんぷりする 新しい言い訳思い付いたんじゃない?いや、読むよ!絶対読むかんね!まあもう少しで色々区切りが付いて戸梶先生のもまた読めるから!なんかさあ未読の翻訳のとか溜まっちゃって少し整理してたからさあ。 自分内では翻訳も「にほんごのほん」というカテゴリで一緒にしてるからなかなか戸梶先生のも進まんのだよなあ。もうすぐホントに読みますからね!ごめん。


なんか後半今年のまとめみたいな感じになっちゃってるんだけど、並べたものはここ1~2か月ぐらいのものです。今回はSmith先生と戸梶先生の新作について、なんとしても書かねばと思っていて、あーついでにあれもこれもとやってたらこんなになっちゃいました。そのくらいのスパンでこんなに貯めちまうのでいくら時間があっても足りません。バカなのでしょうか? バカなのですね。ああそういえばここのところやっていた今年のまとめ的なことは、今年はやらないと思います。いっつも年末のクソランキングとかでどうせ誰も入れなくてなかったことにされるんだろうから、 何とかここで拾っとかんと、というのでやってたのだけど、今年は特にそういうのも見つかんないからなあ。もうあんなランキングどーでもいいし。どうせアレかアレでしょ。大体あの出版社だって、そもそも 海外作品出してるわけでもないし、そっちの方なんてどうでもいいんでしょ。もー国産物だけでやれば?どうせかなりの部分というか、へたすりゃほとんどぐらいが国産物のみ目当てで読んでんだからさ。どうせもーホントはそっちだけやりたいんでしょ。 でもその一方で投票者は海外物の方が人数多かったりさ。まあ日本のミステリ論評がいかに古臭い老害人脈で構成されてるかよくわかるよね。だからって国産物を選ぶそこそこ若い層を無理矢理増やそうとしたら、 しょーもねえ映画ライターみたいの引っ張り出してきたり、あと書店員か?それでも足んなきゃタレントアイドルとかまで連れてきて、んーまあみんな喜ぶすんばらしいランキングができるんじゃないすかね。 本屋大賞やらなんやらとかと二冠三冠続出とか?やれやれ。ホント果てしなくどーでもいいわ。
そんなもんは放っといてこっちは読みたいもん読むだけですわ。これ書いたんでやっとCal Innes4部作最終作も読めるしな。その後は色々片付いてから心置きなくゆっくり読もうととっておいたAdam Howe君だ! Howe君の作品が面白くないことなんてありえないしな。もう爆笑間違いなしや!それからSmith先生と、あースプラッタウェスタンもどんどん読まねば。あーDestroyerも全然終わってないからね。書けてないのが 3冊溜まっちゃってどうしようかでちょっと止まってるけど。あ、それからトラヴィス・マッギー!!!いや、ちまちまもたもたと読んでるんだが、なんかやっぱ読み進めているうちにこれはやっぱり ハードボイルドにおいてマイク・ハマーと並ぶほどのターニングポイントだったんだな、とひしひしと感じてきてもっと読むペース上げなきゃと思ってるところ。マッギー以前と以後って感じか。 まーどーせ「本格ミステリーを超えた謎解き」をお求めの向きにはカンケーねえだろがね。くそ、トラヴィス・マッギーいずれ必ず書くぞ!ってところでこれ以上読みたい本の話しててもきりないんでこの辺で終わりますわよ。


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■Ray Banks
●Cal Innes四部作

●Farrell & Cobbシリーズ

■Anthony Neil Smith:Fahrenheit 13作品

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