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2019年5月25日土曜日

ゾンビ・コミック特集 第3回 Deadworld

ゾンビ・コミック特集 第3回は『Deadworld』!1987年より始まり、現在までに100号以上が出版されているアメリカ、インディー・コミック・シーンの中でもカルトとして名高い作品です。まあ、当方まだあんまり読めてないのだけど、その出だし辺りの感じと、紆余曲折を経た出版遍歴とシリーズの概略について語って行きます。なお、今回の情報に関してはほとんどウィキペディア頼み(Wikipedeia:Deadworld)なのだが本当に助かりました。ありがとうございます。多分日本ではあんまり知られていない伝説のインディー・カルト・コミック『Deadworld』の全貌!とくと見よ!

【Deadworld】
ホントにまだ序盤というところなのだけど、第10号までの大まかなストーリーを紹介。まあ話の方向性とかぐらいはおぼろげにでもつかめるんではないかと思います。

物語は既にゾンビが生き残っている人間より多くなり、そこら中を徘徊しているという状況から始まる。舞台はミシシッピ川の近くあたりの米南部。
主人公たちは、突然のゾンビ禍から逃れてきたティーンエイジャー。学校のスクールバスを使って逃げている。人数は7~8人ぐらい。ちょっと曖昧で申し訳ないのだが、作画Vince Lockeの画がキャラクターの判別がつきにくく、確認が困難…。まあ、話が進むうちに5人まで減るし…。メンバーは大体17~8歳ぐらいと思われるが、中に一人だけ年少の生意気な感じの少年Joeyがいる。

一体何が起こったのかもわからず、途方に暮れながら逃げている主人公たちなのだが、その途上、明らかに他とは違うバイクに乗り、言葉をしゃべるゾンビと遭遇する。"King Zombie"と呼ばれるこいつ(画像のゾンビ)との戦いが序盤の物語の軸となって行く。

King Zombieとの最初の遭遇からは逃れたものの行く当てもない主人公達。ガソリンや食料を求めて動き回るうちにミシシッピ川にたどり着き、そこに大型の遊覧船を発見する。川の中に浮かぶ陸とは隔てられた船なら安全と思い、遊覧船に乗り込み安堵する主人公達。だがKing Zombieは、そんな彼らを見逃さず、ゾンビの群れを率いて遊覧船を襲う。死体であるゾンビは呼吸の必要もないので、水中を歩いて目的の船に向かう。遊覧船は地獄と化し、主人公達はやっとのことで船から逃れる。

生命は助かったものの、移動と住居を兼ねていたスクールバスも失い、途方に暮れる主人公たちは、休んでいた森の中でDeakeと名乗る奇妙な男と出会う。恐怖に怯えた目で奇妙な話を始めるDeake。彼はある魔術師の弟子であり、その師匠が魔術により地獄の門を開いてしまったためにこのゾンビ禍は始まったのだという。荒唐無稽にしか聞こえないDeakeの話を一笑に付す主人公達。Deakeを加えた一行は、やがて人里離れた森の中に建つ一軒の家へとたどり着く。そこに暮らすのは深い信仰を持ち、世間と隔絶して暮らす家族だった。善良だが、信仰心により少し偏向した考えを持つ彼らは、外の世界にゾンビがあふれかえっていることすら知らない。だが、その平穏も長くは続かない。彼らの前に新たなモンスターを従えたKing Zombieが現れる。
ここで新たなモンスターGraken登場。人間型だがサイズは倍ぐらいで、目は無く大きな口を持ち腕が4本ある。ちょっと「バイオハザード」でリッカー出てきたときの感じ思い出したな。「バイオハザード」はみんなやった国民的ゲームだからわかるよね。あ、そういうのに「国民的」って使っちゃいけないのかな?そしてここで、このゾンビ禍の原因が明らかに。これも前回の『Zombie Tramp』同様に呪術/魔術系起源のゾンビである。

King Zombieの手からは逃れられたものの、Deakeは連れ去られ、再び地獄の門を開く儀式を行うよう強要される。グループの一人Danは儀式が完了される前にDeakeを亡き者としようと単身乗り込むが、失敗。ゾンビに取り囲まれ、あわやというところで強力な武器を携えた軍人風の男に助けられる。混乱に乗じてDeakeも逃亡し、儀式は中断され地獄の門が開くことは防がれた。

男は、Danの仲間たちと出会い、事情を聞き応援に駆け付けたとのこと。そこへ仲間たちも乗せられたヘリが到着し、彼らは軍人風の男たちの基地へと向かう。だが、男たちは救いの神ではなかった。機上で銃を突き付けられ、武装解除された後、基地に到着した彼らは、先に捕えられた多くの人たちとともに暗闇の倉庫へと押し込まれる…。


以上が10号ぐらいまでの展開です。ちょっとネタばらしすぎか、とも思うけど、日本完全未紹介の作品ゆえこのくらいは書いちゃった方が分かりやすいかと、勝手に判断しました。
アメリカを代表するゾンビ・コミック『ウォーキング・デッド』が始まったのが2003年。それを更に遡る1987年に開始されたのがこの『Deadworld』である。ロメロ以降ではホラー映画では定番人気のジャンルにはなっていたろうし、ゾンビが登場するゲームなども出てはいたころだろうが、前述の日本の国民的ゲーム「バイオハザード」第1作が1996年、「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」が1997年というのを見れば、これがいかに先駆的であったかも分かるものだろう。

『Deadworld』は1987年、80年代半ばからコミックを発行していたインディペンデント・パブリッシャーArrow Comicsから発行される。最初の7号のライターはStuart Kerr、作画はその後デスメタルバンドのジャケットも手掛けたりと、作品とともにカルト的存在となるVince Locke(ヴィンス・ロック)。インディペンデントの発行部数ゆえ規模は限られているだろうが、『Deadworld』は発売後すぐにカルト的な人気を得る。しかしながら、本体であるArrow Comicsがわずか9号を出した時点で力尽きる。そこでVince Lockeは『Deadworld』の版権を買い、それをCaliber Comicsに譲渡する形で、同社よりシリーズの刊行は続けられることとなる。Caliber Comicsは1989年にミシガン州でコミックや古書などを扱う書店チェーンを経営していたGary Reedにより立ち上げられ、『Deadworld』と同じくArrow Comicsの『The Realm』の2タイトルの版権を得て出版を始めたパブリッシャー。Gary Reedはその後、ライターとしても『Deadworld』に深く関わって行くことになります。

第1シリーズの『Deadworld』は92年に第26号をもって完結。その1年後、第2シリーズが始まり15号で完結する。90年代アメリカのインディペンデント・コミック・シーンはかの『Spawn』などでも知られるように激動の時代である。そしてGary Reed、Caliber Comicsもその渦中にあった。んだけど、私その辺の時代のことについてあんまり明るくないので、読んでもいまいちよくわからん。申し訳ない。コミックの出版から更に手を拡げ、おもちゃ、つーか日本的に言えばキャラクター・ビジネスとかいう方向だろうな、の企画販売というような方向で、結構成功もおさめたようだが、最終的には『Spawn』のトレーディング・カード・ゲームで失敗し、大損害を出してしまったということらしい。その頃何か流通方面でインディペンデントには逆風のような状況にもなったようで、コミックの出版も縮小し、遂にはCaliber Comicsも2000年頃に力尽きることとなる。

だが、『Deadworld』はまだ終わらなかった。しばしのブランクの後、2005年にはImage ComicsよりGary Reed、Vince Locke両名の手により新シリーズが開始。全6回のこれは『Requiem to the World』としてまとめられる。それが画像のやつ。通例は読んだやつを使うのだが、今回に限りカバーにKing Zombieの出てるこれの方が分かりやすいかと思いこっちを使いました。下のリストでちゃんと順番に並べっからさ。続いてImageからは『Deadworld: Frozen Over』というシリーズも発行される。次の『Deadworld: Bits and Pieces』はTransfuzion Publishingというところから。これはワンショットの短編などを集めたものらしい。そしてDesperado Comicsからも新しいショートストーリー集『Deadworld Chronicles』が発行。同じくDesperadoの2010年の『Deadworld: Slaughterhouse』はハードカバーのグラフィックノベルとしてリリース。ここで出てきたTransfuzion PublishingやDesperado Comicsというのはこの時期出てきたCaliber ComicsやImage Comicsなんかと関係の深い小パブリッシャーらしい。とりあえず、DesperadoはCaliber傘下として発足し、その後Imageに合流。Transfuzionについてはあんまり事情はよくわかんないんだけど、現在は復活したCaliberのインプリントとなっている。この時期のこの手のコミックのパブリッシャーって、ほら、日本のラノベのレーベルがどこの系列とか元はどことかごちゃごちゃしてるあの感じじゃないかなと思うのだけど。ちょっと最近全然そちら方面見てないので今の状況では誤った認識だったらごめん。いずれにしてもアメリカのコミックのその時期のことについてはもうちょっと色々調べて把握しとかんとね。

そして、次には『Deadworld』の版権はIDWへ。まずはその時点では絶版となっていた最初期のシリーズを『Deadworld Classics』として再編集し、出版。そしてGary Reedライターによるグラフィックノベル『Deadworld: The Last Siesta』を2012年に。また前述のImage系列の3シリーズ(『Requiem to the World』、『Deadworld: Frozen Over』、『Deadworld: Slaughterhouse』)をまとめた『Deadworld Omnibus』も出版される。更にIDWはこちらもGary Reedライターによる全5号のシリーズ『War of the Dead』を2012年に発行。こちらはベスト・ミニ・シリーズなどとして、様々な賞を受賞。現時点で最後になっているシリーズが、その後2014年に同じくIDWから出版された『Deadworld: Restoration』。全5号で『War of the Dead』に連なるストーリーらしい。

そして2015年、Gary ReedはCaliber Comicsを復活させる。オリジナル・シリーズを始め、他社から刊行されたシリーズもすべて、現在はこの新生Caliber Comicsからリリースされている。Gary Reedはその翌年2016年死去してしまうが、その後もCaliber Comicsは活動を続けている。おそらくは新体制での新シリーズも企画されていたと思われるが、このGary Reedの突然の死去と、またおそらくは近年アメリカのコミック業界に窺われる電子書籍バブルからの後退なども影響し、現在のところは滞っているのではないかと察せられる。しかし、これだけ長期に亘ってファンに愛され続けてきたシリーズである。いずれかはまた復活の時も必ず訪れるはずである。

いつもは最後の方に持ってくるシリーズの概要を、先に知ってもらった方が良いかと考え、今回は先に持ってったのでちょっともうまとめてしまったような感じになったしまったが、ここからが作品についての感想的なパート。と言っても後にライターとしても中心人物的になるGary Reedがまだ登場しない最初の10号あたりなので、とりあえずそっちは保留で、主にVince Lockeの方について。今回は新生Caliberの方に画像もありましたので、そっちを借りてきました。

こちら3枚は、いずれもVince Lockeによる最初期Arrow Comicsからの頃のものです。自分が読んだところのArrow Comicsの9号までは作画はすべてVince Locke。Caliber Comicsからになる10号で初めて別のアーティストが参加し、メインのストーリーの方はそちらのアーティストで、Lockeは後半、新しく始まったらしいストーリーラインの方を担当しています。本当に読んだのが序盤だけなので、シリーズのどのくらいの作画をLockeが担当したのかもよくわからないのですが、Arrow Comics後半の8、9号ではストーリーの方も担当したりもしています。また、前述のようにArrow Comics終了の際には自ら権利を買い取り、シリーズ存続のために尽力もしています。
Vince Lockeについては出身やら年齢やらの資料が見つからなかったので、不明と言うしかないところなのですが、とりあえずこの『Deadworld』によって世に出た人だというのは間違いないようです。ご覧のように執拗に線を重ねた独特の熱気のこもった画風。なんだが、上でも書いた通り、特に人がいっぺんに大勢出てくる序盤のあたりでは人物の判別が難しかったりもする。でもまあ、このタイプのホラー映画とかどうせ顔覚える前に死んじゃうメンバーもいるの普通だし、まあいいんじゃないの。すぐに5人ぐらいになっちゃって、そうなればさすがに誰が誰だかわかるからさ。実際のところ、やっぱりなんだかんだ言っても初期にはデッサン的な意味での画力という面では少し弱い部分もあっただろう。だが、キャラクターの見かけの統一性よりもシーン一つ一つでの表情に力点を置くような描き方や、何かを力ずくで可能な限り歪めようとするような描き込み、闇の色を描き分け、刻み込むように執拗に重ねられた線など、単にちょっと見にくいからなんてことで放り出せない魅力に満ちた作画である。10号前半で作画代わってて、え?Vinceじゃねえの?ってちょっとがっかりしたもの。(代わった人ごめん。)アメリカのコミックの80~90年代というのは何しろあのロブ・ライフェルドがスターだった時代だぞ。今見たってあんな全員悪人にしか見えねー画でなんで人気あったのか全く理解できないだろ。いや、まあなんか時々あれが見たくなるんだけど。怖いもの見たさか?まあとにかくこのくらいの画はきっと全然ありだったのだと理解せよ。あんまり説得力ない?

で、Vince Locke(ヴィンス・ロック)のもう一つの代表作と言えばこれ。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』である。実はLockeよりもライター、ジョン・ワグナーの話になりちょっと話がそれちゃうんだけど、これについては少し言いたいことがあったのでここでついでに書かせてもらう。なるべく手短めにすっからさ。大抵の人は知ってると思うが、これはデヴィッド・クローネンバーグ監督により映画化され、映画は日本でも大変高く評価された。で、それに合わせてこちらの原作コミックも翻訳されたのだが、当時どうも映画サイドから、映画で印象的だった家族との葛藤が描かれていない、などの批判的な見方をされ、そん時は私もうっかりそうかなあ、などと思ってしまったりしたのだが、今ならわかるその辺の見当違いの批判に対し、うっかり乗っちゃった自分への反省も含めてここで正しておきたいと思うのである。
まずこの映画には原作コミックから2つの大きな変更がある。一つはその家族との葛藤(1)で、もう一つは原作では主人公は親友の悪ガキに乗せられて一緒にギャングの金を奪おうとして失敗し、命からがら逃げて自分の出自を隠し生きてきた男であるのに対し、映画では元はギャングの一員だった男になっているところ(2)である。クローネンバーグは映画化に際し、原作は読んでいなかったと語っている。ならば、この変更は脚本段階のものとみるべきであろう。そして、ハリウッドの脚本家がなぜこういう変更をしたのかは容易に想像がつく。1).ファミリー要素の強化。2).スタイリッシュなアクション。毎度おなじみのやつやね。こうやって見れば、果たしてその脚本が映画に見られるような優れたものであったかは、かなり疑問になってくる。まあ、おそらくはクローネンバーグによる部分的な改変で、傑作に仕上がったってところだろう。その脚本段階での改変について、まず1).の方はあとで述べるが、何よりも問題なのは2).の方である。じつはこの安直な改変により、原作コミックの最も重要なテーマが損なわれてしまっているのである。
原作コミック『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の最も重要なテーマとは何か。それは、人間はその過去から絶対に逃げられない、ということである。それはこのコミックのライター、ジョン・ワグナーの作家としてのテーマであり、ワグナーは自己の経験としてそのことを誰よりも知っている人物なのである。それは80年代初頭に英国2000ADの「ジャッジ・ドレッド」で約半年間にわたって続けられた「The Apocalypse War」というシリーズでのことだ。2000ADのファンとしてこのことは何度もこのブログに書いてきているが、今一度説明しておこう。ドレッドの所属するMega-City Oneが敵対する東側Sov Unionの熾烈な侵略攻撃に追いつめられ、壊滅寸前となった時、ドレッドは最後の手段として精鋭を率い、Sov Unionのミサイル基地を攻撃奪取し、その核ミサイルを全てSov Unionの母国East Mega-City Oneに向けて発射し、地上から消滅させる。これは当時英国でかなり激しく批判されることとなる。いかにフィクションであるコミックでも、核攻撃により一つの国ほどの規模の都市を壊滅させるなどということが許されるのか?そしてワグナーはその十字架を背負うこととなる。30年の後、同「ジャッジ・ドレッド」でそろそろまたMega-City Oneに大きな事件を、という話が持ち上がった時、メインライターである彼が選択したのは、その30年前のSov Unionの生き残りが大規模な報復を仕掛けるというストーリーで、「Day Of Chaos」というそのシリーズでは、Cityの人口の8割が失われるという大惨事になる。そして近年にもドレッドと共にその作戦に参加した後、罪悪感から精神を病んでしまった男の悲惨な末路というような話も書いている。もはや40年近くの昔の過ちを非難するようなものはいないだろう。だが、非難されなければ罪が消えたなど思うのは子供の理屈だ。そしてジョン・ワグナーは、その場での謝罪でことを済ませ、あとは皆がそれを忘れてくれるこ望むような男ではない。これだけの年月が経っても、自らの手で傷を掘り起こし続け、その過去と対面し続ける男なのだ。とは言っても私もその30年以上に亘る年月のワグナーの作品がどんなものであったかは常に早く読まねばと思いつつ、まだほとんど読めてはいないのだが、日本でも翻訳が出たおかげで早めに読めたその一端が、この1997年の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』なのである。
映画を観た人も多いだろうから、それほどストーリーを説明する必要もないだろうから、ざっといくと、上に書いたような過去を持つ主人公は、名前も変えとある田舎町でそこで出会った女性と結婚し、子供も生まれダイナーの店主として平和に暮らしていたが、ある日、自分の店に入った強盗を撃退したために一躍ヒーローに祭り上げられる。だが、それが報道で大きく取り上げられたため、彼の過去を知り、怨恨を抱き続ける者たちの知るところとなり、彼の現在の生活を脅かし始める。そして彼はその過去と決着をつけるため、ギャングの本拠地へと向かう。というところまでは映画のあらすじもほぼ同じ。だが、原作コミックでは映画では描かれなかった衝撃的なシーンが登場する。そして主人公は、彼が逃げてきたと思っていた過去が全く終わっておらず、そのまま続いていたことをあまりにも恐ろしい形で知ることとなる。このシーンが残虐すぎるのでカットされたと見る向きもあるようだが、私はこの物語を改変した者たちにそこまでの考えがあったとも思わない。ただ映画を売るための都合で変えられた設定とつじつまが合わないので切っただけのことだろう。彼らにこの作品へのきちんとしたリスペクトがあったなら、このまま表現できなくとも、何らかの形で残さなければ、この物語の根本的なテーマが崩れてしまうと考えたはずだからだ。これがアカデミーの脚色賞とった?だから何よ?この映画を持ち上げすぎる輩が賛美するラストシーンだって、脚本そのままに撮ったら、すべてが清算され我が家に帰った主人公が庭で息子と何の屈託もなくキャッチボールでもしてんのを奥さんがにこやかに見守る、なんてのだったところじゃねーの?
そして、家族との葛藤の方だが、別にそういうものもあっても良かったんじゃないかと思うが、過去を捨てて今は平穏に暮らしている主人公、という設定で始めた話で、そういうものを入れるということ自体に思いがいたらなかったのかもしれない。後知恵では何とも言えるよ。だが、もしワグナーが現在の家庭までかき乱して、主人公が帰る場所もなくしてしまうような話にしたくなかった、主人公が過去から解放されて救われる物語を書きたかった、と思ったとしても、私はそんなワグナーを責める気にはなれん。いずれにしてもこれはクローネンバーグの映画をコミカライズした作品などではない。こちらが先にありそれをもとに映画が作られたのだ。だから後からの映画ありきで、原作のコミックからそれが削られていて欠落しているかのような批判は、見当違いも甚だしい。例えば、日本で多くの人が読んでいるマンガが映画化され、その時に原作の重要な要素が改変されていれば、それがたとえ映画単体で見れば悪い出来でなかったとしても当然その読者から批判を受ける。そしてこの『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の原作コミックにも当然読者はおり、それが原作の重要な要素が改変され映画化された時、当然批判の声が上がっただろう。クローネンバーグの、俺は原作は読んでない発言は、それを受けてのものなのだよ。
で、自分に関して言えば、やはり最初に読んだ時は読みが甘かった…。その頃はジョン・ワグナーのことをよく知らなかったなどというのは全く言い訳にならん。良い作品だと思ったからこそ、その後も手放さず(…まあ本棚の特等席にしまった結果後に積み上げた本に埋没し、永らく行方不明だったという毎度のやつだが…)持っていたわけだが、やはり映画の印象が強烈でそれには負けるかな、と思ってしまったところもある。何よりの反省点は、映画サイドのそういう流れに乗ってしまったところもあるかも、というところである。未熟ナリ…。ただなあ、そういう自分の反省点は置いといても、映画なんてところにはやいのやいのいう気すらも大して起こらんのよ。なんかさあ、もうそこら中映画言いたがりばっかでさあ、あ?映画の話なの?あー待って待ってじゃあオレ帰るからほらこれオレの分ねこれで足りるよね、って気分なのよ。今はとにかく時間もなくてろくに映画も観れんけど、いずれまたそんな余裕もできてきたなら、もう映画評論家も映画ファンの野良レビューも完全シャットアウトして、自分が面白そーって思った映画を勝手に楽しく観るでやんすよ。すべての映画言いたがりにさよならを言おう。だがもちろん、警官にさよならを言う方法はいまだに発見されていない。

結局のところそこそこ長くなってしまって、かなり話がそれた感じなんだけど、『Deadworld』に戻ろう。と言ってももう大して書くことも残ってないか。なんか最初に「全貌」とか大見得切ってみたものの、Wiki頼りに書いてみたシリーズの遍歴などを見るにつけ、結局まだほんの入り口ぐらいのところなんだよなあ、と改めて気付くのでした。なんかいくらかでもお役に立ったなら幸いですぐらいのもんかね。これからも続きを読んで行きたいシリーズでもあり、いつの日にかはもうちょっと詳しい本当の「全貌」を書ける日もやってくるかもしれません。そして現在は中断状態でも必ずやまた登場するだろうシリーズ続編を待ち、その先の展望を見守って行きたいものですね。

Caliber Comics


ゾンビ・コミック特集第3回は、インディペンデント系のパブリッシャーのゾンビ・コミックについて探って行きます。まあインディペンデント系の線引きも微妙なところなのかもしれないが。この辺なってくると更に活動実態不明だったり、もう活動停止してんのかもってところもあるけど、とにかく気になるのを見て行くことにしましょう。今回は画像の方はComixologyから。
まずはAlterna Comicsの『FUBAR』シリーズ。インディーながら、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー・グラフィックノベルにもなった作品。まあ画像を見ればわかる通り、ゾンビ好きなら放っとけない感じで、私も以前から気になってるのだけど、未だに手つかずでごめん。内容はテーマとか設定を決めたアンソロジー的なものらしい。それぞれ時代とかも違う感じのシリーズが5作か6作出ているようです。きちんと内容を把握しとらんので、曖昧で申し訳ない。他にComixologyのAlterna Comicsのところに『Attack of the Alterna Zombies』というのがあったので見てみたら、なんかAlterna-Verseのキャラクターがゾンビと戦うフリー・コミック・ブック・デイ用のやつでした。Alterna-Verseにどんなキャラクターがいるのかは不明。とにかくそれフリーなので今度読んでみる。内容不明ですが、ホラーSF系多目で面白そうなの結構あります。
続いてAsylum PressのSteve Mannion作『Fearless Dawn』。カバーにも出ているヒロインFearless Dawnちゃんがゾンビと戦うお色気ホラーコメディらしい。お色気って…。これもずっと読もうと思ってたのだけど、ちょっとここんとこ忘れてた。いかんなあ。こんなのこの私が読みたいやつに決まってるじゃないか!Asylum Pressは怖いのとエロいのに特化した大変頼もしいパブリッシャー。ちょっとここんところリリースが止まっちゃってるけど、またきっと復活するよね。Comixologyではフリーのサンプラーも読めます。
今回のゾンビ・コミック特集、まあなんだかんだ言ってもどれもほぼインディペンデント系と言っていいようなところからのものでやってきたのですが、さすがにこの辺で知ってるのも種切れになってきたので、ここからは一本釣りっぽくComixologyのジャンル-ゾンビから面白げなのをピックアップしてみたいと思います。
で、まず選んできたのがこれかよ…。『Chaos Campus: Sorority Girls vs. Zombies』というシリーズでなんだかんだ言っても40号ぐらい出てるロングラン・シリーズらしい。内容不明だがコメディとも書いてあります。楽しそうですね。発行はApprobation Comics。ホラー系らしいのを中心に10シリーズぐらいのコミックを出しているようです。『Chaos Campus: Extra Credit』というスピンオフらしきシリーズもあり。
次はそれほどふざけてないやつ。『Escape From The Dead』はGrind House Comicsという気合の入った名前のパブリッシャーから。2014年に4号まで出てるけど、ちゃんと終わってるのかは不明。SFのタグも付いてて結構面白そうだけど。Grind House Comicsからは他に『George C. Romero Presents: Mulligan』というシリーズが2016年に1号だけ出ています。とりあえずまだComixologyで販売中ということはまだ続ける意志もあると思われるので、頑張ってください。
格好よさげな女の子がゾンビと戦うやつ。『Katrina Hates the Dead』はWannabe Pressから2017年に5号まで発行。なんかプリント版ではハードカバー単行本も出てるようなので、これで完結なのかも。Wannabe Pressはきれいなウェブサイト(Wannabe Press)もあって、コミックというよりはアート系の感じのパブリッシャーにも見える。良く調べてみたら結構面白いところかも。いや、なんかついでっぽく雑に見ちゃってごめん。
そんでまたこんなのを選んでしまいました。『Lesbian Zombies from Outer Space』!レズビアンでゾンビでアウタースペースだよ!これは見逃せんだろう。いや、ゾンビのジャンルに入ってなかったので危うく見逃すとこだったが。こちらもコメディということ。1~4号のコレクションで3.99ドルと結構お買い得。中身はもうちょっとあっさりした画ですが。こんなのを出してる版元Big Things Productionsなんですが、他にはなんかソクラテスについての真面目な歴史コミックを?『ギャグマンガ日和』みたいなのではなさそうです。
次もこんなの。『Bitch With A Chainsaw』!Maggie XというシリーズのVol.1ということです。版元Grimmer & Grimmer Booksからはまだこれの第1号しか出てませんが、今年3月に始まったばかりなのでまだこれからです。『Chaos Campus』ぐらいのロングランになるかもよ。中身は、うーんと、かなりあっさりした画っすね。
何か聞いたことのあるやつを別の組み合わせにしてみた感じのタイトルの『Dawn of the Undead』は、300 Postsから2015年に第1号が出たきり。ワンショットなのかも不明。とりあえず「#1」ってことになってます。これに関しては中身の画の方が良さげです。そういうのもあるんだよ!
次はなんとまたVince Locke作画のやつを見つけたっすよ。『Arise』はSatyrn Studiosから2014年から16年までに3号が発行。Locke作画は最初の1号だけ。これで話終わってるのかも不明。Satyrn Studiosって検索してみたらなんか服とか帽子とか売ってるとこが出てきたけど…?いやロゴも同じだからここで間違いないんだけど、なんか事情が分かるかと思ってメニューのAboutってとこ見たらWordpressの説明が書いてあるし…?いやー、なんかわけわかんないのもあって楽しいよねえ。
『Zombie Commandos From Hell!/Rise Of The Blood Queen』!これも2014年に52ページの1号が出たっきりですが。発行はBloody Gore Comix!こんなイカス名前のパブリッシャー立ち上げたんだから、また頑張ってくれよな。あっ!検索してみたらちゃんとホームページ(Bloody Gore Comix)もあって結構頑張ってる!怖いよう!Zombie Commandos From Hellのサウンドトラックもあり!わー、デジタルで読めないのかなあ?
そろそろこの辺で、てことで最後が『Zombie Zero』。2016年からでスローペースだが、6号まで出てます。全7話ということのようなので、そろそろ完結なのかな?発行はCritical Entertainment。ホラー、SFらしきタイトル数シリーズを出していて、小さいながら頑張ってる様子です。ホームページ(Critical Entertainment)を見たら、今年のコミコンにも出るよ、とお知らせがありました。いいっすね。頑張ってください。いや作品の方も結構面白そうやん。画もいいし。

いやー、こうやって闇雲にあっちこっちひっくり返して、これ面白いかなー?って見て回るのって本当に楽しいよねえ。ほら、出鱈目だって結構収穫あるじゃん。『Chaos Campus』とか『Lesbian Zombies from Outer Space』とかさあ。そんなのばっかかよ!うーん、Bloody Gore Comix何とか読みたいなあ。別に投資とかしてるわけじゃないんだからパブリッシャーの大小なんて関係ないじゃん。コミックなんてアフターサービスの必要な商品でもないんだからさあ。買ったやつがパブリッシャーごとComixologyからも無くなっちゃった、みたいなことがあっても、今じゃ手に入んないレアなやつをゲットしたぜ、って思えないようじゃあコミック=マンガ読みじゃないぜ。以上3作でゾンビ・コミック特集も終了だが、この分なら第2回もまた面白いの並べてやれそうだね。なんか前回までので見落としてたのもあったりね。でかいところのも俺出版社のもゾンビ・コミック・クリエイターの皆さん頑張ってください。アイルビーバーック!
というわけで、ゾンビ・コミック特集全3回これにて終了なのですが、もう少し語りたいこともあるので、ホラー・コミックという括りでゾンビ・コミック特集番外編がもう少し続きます。んですが、ちょっと小説の方でも書かねばならんことがあるので、次回はお休み。その次からはまたこわいまんがの話しちゃうからね!

※下のリストについて:わかりやすいように最初に出版されたところで分類してありますが、現在はすべてCaliber Comicsから発売中。インディペンデントゆえ基本的には入手しやすいKindle版を選びましたが、一部未発売のものはTPB版。オリジナルシリーズはComixologyではIssueでは全部電子書籍化されています。Caliberのところの最後に並んでる説明なかったやつはミニ・シリーズ的なやつらしい。最後のその他に分類してある『Voices From the Deadworld』は『Deadworld』シリーズのキャラクターを中心とした解説書的なものらしい。Gary Reed本人による公式のやつ。あとぬりえ。


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ゾンビ・コミック特集 第1回 The Last Zombie: Dead New World

ゾンビ・コミック特集 第2回 Zombie Tramp



■Deadworld(Caliber Comics)





■Deadworld(Image Comics,others)



■Deadworld(IDW)



■その他



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