2014年8月31日日曜日

夏のホラー特集に関するおわび

えー、本来なら今回は前回に引き続き夏のホラー特集その2のはずだったのですが、すみません、その2は無くなりました。
実はその2として左の画像の『30デイズ・ナイト』の『1』、『2』の続きである原作コミックの『Return to Barrow』の事を書くつもりだったのですが…。2週間かけて前2作の映画と原作の違いやら結構長いのを書いていたのですが、最後の最後、アマゾンへのリンクを作っているときにこの作品がすでに翻訳されていることに気付きました。翻訳の出ているもののあらすじを延々と書いたりかなり頓珍漢なものだったので今回は中止にしました。
そもそもそれを書こうと思ったきっかけは、実はこの作品初期3部作というようなものを前2作とこの『Return to Barrow』で構成していて、個人的には『2』の悪印象が少し変わって、最後はちょっと感動するようなものだったりした、ということだったのです。現在は絶版のようですが、古書では手に入るようなので、興味のある方は読んでみてください。
それにしてもやっぱりコミックは少し難しいな。これからも書いていこうとは思うけど、まあ、やっぱりなるべく小説中心で考えた方が良さそうですね。ホラーも小説に関しては翻訳される気配もなさそうだけど面白そうなのが沢山あるようなので、夏に限らず読んで感想を書いていければな、と思います。
まあ、大して読んでいる人もいないブログですが、一応、まだ次があるよ、という感じのタイトルでやってしまったのでもしかして期待してくれている人がいたならすみませんでした。次回からはまたハの字中心で頑張ります。ではまた。

あ、『Header』映画版に関しては、来月中にちゃんとやります。

2014年8月17日日曜日

夏のホラー特集 その1 Header -Hump! エドワード・リーの残虐バイオレンスホラー-

注意:今回は読んだ本の内容としてかなりグロい事が書かれています。

-Headerとは何か-

この小説の舞台となっている架空の地では、Hillfolkと呼ばれるレッドネックたちが山中に法からも見放されて住み着いている。お互いに仲の悪い彼らが究極の報復として行う残虐行為。それがHeaderである。

Headerって何だろう。父と祖父がそう囁きかわすのを何度も聞きながらTravisは思っていた。そんな父も母とともに交通事故で亡くなった。Travisが矯正施設に収容されている間に父と暮らした家も燃えてしまった。施設を出所したものの行く当てのないTravisは祖父の許を訪ねた。両足をなくし車椅子生活の靴職人の祖父はTravisを温かく迎えてくれた。Travisは永年の疑問を祖父にぶつけてみる。すると、祖父は答える。今こそ家族の恨みの積もった奴等にHeaderを仕掛ける時だと…。

最初の標的は隣の地所に住みなにかと嫌がらせをしてきたCaudillsの娘。道を歩いていた彼女を送ってやると車に誘い込み、殴って昏倒させ、祖父の小屋に運び込む…。

-Headerとは何か-

Travisは彼女を祖父の作業机に縛り付ける。祖父はPower drillを手に取りそこに取り付けた3-inch hole-sawで彼女のBlond headのTopにPerfect holeを開ける。そして、BrainにSteak knifeで入れたSlitに、TravisのDog-stiff Dickを…。 

目には目を。その日からTravisは祖父に指示された家族に対し不正を働いた者たちを、次々とHeaderにかけて行く…。

Cummingsは地元のATFの支局に勤める捜査官である。謎の病に日々弱って行く妻の薬代の重圧に耐えかね、密造酒業者に融通を図り賄賂に手を染めている。更に増す妻の医療費のために、遂にはドラッグ・ディーラーの仕事に関わり始める。苦悩するCummingsは、ふとしたことから知ったHillfolk同士の諍いとして地元当局が放置しているHeader殺人犯の捜査に、自らの存在意義を証明するかのように執念を燃やし始める…。

何とも恐ろしい本を読んでしまった。そもそも、この小説を読むきっかけというのは、前に書いた『The Dead Man』シリーズにも見られるように、米国の小説ではホラーとハードボイルド/ノワールは割と近い関係にあったりもするので、時々はチェックしていたところ、昨年末ホリデーシーズンこの小説の版元であるDeadite Pressがセールを行っていたのです。ズラリと並ぶ恐ろしいカバー画の迫力からこれはとにかくこの機会に入手しておかねば!と思い、ホラー小説には全く知識が無いながら、とりあえず作品数が多くて人気がありそうな作家からという感じで選んだ内の1冊がこの『Header』だったわけです。しかしながら自分にとっては本筋のハードボイルド/ノワール系も読むのが遅くてなかなか進まず、放置状態が続いていたのですが…。そんなある日暑さに浮かれたボンクラ頭が、せっかく自分の場所を作ったのだからなんか「企画」ごっこでもやっちゃおーかなあ、夏と言えばホラーじゃん!と思い付き、そこで何を読むかと考え選んだのが100ページ中編と手頃だったこのエドワード・リーの『Header』だったのでした。まあ、エドワード・リーがこの分野では結構な大家だというのは読み始めて少し調べてすぐわかったのですが、その話はまたあとで。

しかし、何とも恐ろしい本を読んでしまった。まさかこんなことを思い付いて、小説という形にしてしまうとは。その恐るべき発想を、アメリカ奥地のレッドネックの蛮行という、『テキサス・チェーンソー・マサカー』というよりはむしろ筒井康隆の『熊の木本線』に連なる奇想で動かし、そこにCummings捜査官パートのノワールを乗せてくるという、読み始めたら止まらない…と言いたいところですが、これ、結構苦労しました。というのはTravisパートの方が本当に存在するのかわからない恐ろしい方言で、会話のみならず地の文まで書かれていて、なんとか推測しながらやっと読んだという感じでしたが。しかし、まあ到底万人におススメとはいかないものですし、若干褒め過ぎかとはとも思いますが、あくまでも読者を選ぶという前提では、一読に値する作品だと思います。これは個人的な好みの問題かもしれませんが、行為が始まってからの被害者の記述はおそらく意図的に控えめになっており、自分的には過度なエログロにならずバイオレンスホラーの線内で読めました。もちろんこれは、モラル的なエクスキューズではなく、あくまでもとことん人を怖がらせるという種類のエンタテインメント作品を作る上でのさじ加減という意味です。私のそちら方面の知識が少ないいからわからないというだけでなく 、やっぱり翻訳出版点数のかなり少なそうなこのジャンルを求めている人、アメリカのホラー映画のファンの人にはお勧めのかなりヤバイカルト作です。

作者エドワード・リーについてですが、前述の通り調べてみればこのジャンルでの結構な大家だとすぐわかったのですが、もしかしたら国内的にも翻訳作や情報があるのではと日本語で検索してみたところ、ジャック・ケッチャム、リチャード・レイモンとの共作アンソロジーである画像の本がヒットしました。なんだこの間から見てて今度買おうと思ってたやつじゃん。というわけで早速購入し、併せて読んでみたので翻訳和書は異例ですが、少し感想を。「謎の人物が職場に押し掛けてきて、そいつが何者か、さらに、なぜ自分が狙われるのかわからない人物を殺そうとする」という設定(訳者あとがきより引用)で書かれた3人の作家の作品が収録されています。最初のケッチャムは何となくポール・オースターフォロワーが書きそうな話をケッチャム味でやったような佳作。ちょっと積読になっているケッチャム作品も早く読まねば。次のレイモンはオフィスビルの中主人公が不条理なまでに追いつめられ、次はどうなるのかハラハラさせられるエログロサスペンスホラー。最後のリーはまさかのSF。どうも前には短篇1作の翻訳があるのみで、今回の『Header』よりは少し長めの中編であるこの作品がある意味本格的な紹介になるのかな。最後まで読んでなるほどこういうことか、という感じ。しかしSF的にはあれはどういうことなのかちょっと中途半端な気も。帆掛さんはニヤリとするけど、早川さんは少しご不満というところでしょうか。リーの全く毛色の違うこの作品と『Header』ですが、最後まで読んでみると共通して、結末から逆算しながら必要な人物と事件を配置していて、一見乱暴に見えるけど案外堅実にストーリーを構成していく作家なのかもしれません。この企画アンソロジーのそもそもの成り立ちはその設定でレイモンとリーが共作をする予定だったのだけど進めていくうちにそれぞれの考えている作品が別の方向に向かってしまったということだそうですが、両者の作品を読んでみると、その設定からどう展開して行くか考えていたレイモンと、その謎の人物の正体背景を考えていたリーとの間で作品の方向性の乖離が大きくなってしまったのかな、と思いました。それにしても個人的には一番好きなケッチャムの作品ですが、この時期多忙だったということだったけどこれは断れないな、と引き受けたもののどうにもならず困って、とっさのケッチャムさんのとんちで書きかけで放置していた作品にこの設定をくっつけて切り抜けたとかじゃないのか?…と今回は少し邪推が多いかな。訳者あとがきで、名前と怖い表紙だけで正体不明だった数人の作家について言及してくれていて助かりました。翻訳権のゴタゴタがあったにしても、2001年出版のものが今頃出たというのもこういう作品の翻訳出版は厳しいのかなと思われますが、その辺の作家の作品ももっと出版されるといいですね。

『Header』の版元であるDeadite Pressについてですが、まだこの本のみしか読んでいないのであまりよくわからないのですが、そもそもは1995年出版のこの作品のようなカルトホラーから最近の作家の新作まで色々と出版されている様子です。うっかりリンクからサイトを開くとたいへん恐ろしいカバー画が並んでいるので、心の準備をしてからクリックしてください。このDeadite Pressはもっとビザールや文学的傾向の作品を出版しているEraserhead Pressのバイオレンス/カルトホラー部門のレーベルのようですが、どうにもつながりにくくなかなかサイトが見られなかったりします。リンクからもつながらないかもしれませんが確かにそこに存在します。他にもビザール傾向の強いLazy Fascist Pressというレーベルもあり、色々面白そうなのでその辺の本も読むスピードを上げてガンガン読んでいきたいなあ、と希望だけは持っています。エドワード・リーにはずいぶんたくさんの著作があるようですが、とりあえずはこのDeadite Pressで読める物を出版順に並べておきます。

このDeadite Press版にはリーによるあとがきも載っていて、出版以降のことなども色々書かれなかなか興味深かったりします。他にも序文がありそちらはあのジャック・ケッチャム!それによると、なんとこの作品映画化され、ケッチャムとリー本人が警官役で出演しているとの事。ここまで書いたからには責任もってそちらも観なければ、と注文したのですが、届くまでまだ少しかかりそうで、この続き映画版『Header』についてはまた9月ごろにこのブログで。この作品がどう映像化されるか少し恐ろしいですが、興味のある方はお楽しみに。
そして、更にこの『Header』には続編があります。『Header2』!カルトホラーの評価を受けて近年書かれたと思われる作品で、さらに『Header3』も執筆中らしいです。一体どんな話になっているやら…。なるべく早い機会にそちらも読んでみたいと思います。


Edward Lee Official Website

Deadite Press

Eraserhead Press

Lazy Fascist Press 



 

●Header シリーズ


●Edward Lee/Deadite Press





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2014年8月13日水曜日

2000AD 2014年冬期 [Prog2014,1862-1873]

なんとか少し頑張ってはみたものの、結局あまり差は縮まらず、8月になって2014年1~3月期の2000ADの報告です。まあ内容的には未来と宇宙の話であまり季節感は関係ありませんが、なんとかもう少し努力せねば…。

今期のラインナップは
 1.Judge Dredd
 2.Ulysses Sweet, Maniac for Hire
 3.ABC Warriors
 4.Grey Area
 5.Strontium Dog
となっております。

Judge Dredd

 1.Titan : Rob Williams/Henry Flint(part1-8)
 2.Squirm! : Michael Carroll/Nick Dyer(Part1-3)
 3.Fit : Rob Williams/Henry Flint

今期のJudge Dreddは、なんといっても全8回にわたる大作Titanです。犯罪を犯したジャッジの流刑地である土星の衛星タイタンと連絡が付かなくなり、ドレッドを中心とする調査チームが派遣されることになる。衛星からの映像などでは反乱、事件の兆候は見られないのだが、いかなる通信に対しても沈黙したままのタイタン。Chaos Day以降未だ人員不足に悩むJustice DepertmentからはドレッドとChaos Dayの根本的責任はドレッドにあると考えるジャッジの内務調査部であるSJSのJudge Gerhartのみで、案内役として元タイタンの看守で犯罪者として拘束されているMcintoshを同行、あとは軍に応援を頼むというチームで出発する。しかし、タイタンで待ち受けていたのは恐るべき罠だった…。

なんといってもHenry Flintの画が圧巻です。もう読み終わっているのですがなかなか手が付けられないでいる『Day of Chaos』でも主に作画を担当しているのですが、とにかく岩に掘ったような重い線の迫力で、この人が描くドレッドこそが本物のドレッドだと思ったりもします。『Day of Chaos』についてはなるべく早く書くつもりです。あと『ZOMBO』の続きも…。

2のSquirm!は大食い大会の選手の腹を食い破って出てきた薬物の影響で巨大化したサナダムシが暴れるという話なのですが…、うーむ、瀕死でなんとか生き残ったTaitanの翌週がこんな話では…と思っていたら、3でTaitanの製作チームによる後日談が続きました。製作上の都合もわかるけどなんかちょっとね。ちなみに大食い大会の話は『Day of Chaos』の中でも出てきたのですが、ひとつのネタなのでしょうか。Mega City Oneでは「サナダムシは違法である!」そうです。

2はともかくとして、今期のJudge Dreddはかなり読み応えのある作品になりました。次期はJohn Wagnerによるストーリーから始まります。

Ulysses Sweet, Maniac for Hire

 Guy Adams/Paul Marshall (Prog 2014, 1862-1869) 
雇われ狂人って?要するに用心棒から傭兵、殺し屋までというフリーランスの荒事師なわけだが、あまりにイカレているので名刺にもその肩書きが入っているUlysses Sweet。あちこちの惑星から接近禁止命令が出され、脳には矯正用のインプラントが埋め込まれている。そんな人物に仕事を頼むまともな人間などいないのだが、なぜか休養中の人気女性シンガーの護衛などという至極まっとうな依頼が来る。勇んで彼女のいるメディテーション惑星へ向かうUlyssesだったが…。

彼の脳に入っているインプラントというのは、常にセラピーだったりUlyssesの行動を注意したりというもので、画面上にはその囲みと、Ulysses自身のモノローグと通常のフキダシが散りばめられるという、なんかアメリカの方にもこんな感じでそれぞれが会話したりするイカレたよく喋る傭兵で赤い人が出てくるのがあるなあという感じ。それでも冒頭あまりにひどい仕事の結果から(夫を殺して欲しいという妻からの依頼だったが、会話中の彼女の「所詮男なんて…」という呟きを拡大解釈し、惑星上の男性すべてを全滅)依頼人に顔の皮をはがされ、しばらくは筋肉標本のような顔で真空パックされた顔の皮膚を持ってうろつく、という始まりからデッドプール(あっ、言ってしまった)とはまた違うイギリス風のたちの悪いギャグで楽しませてくれるのでは、と期待したのですが…。護衛対象のいるメディテーション惑星、水の世界に突入する際、クジラ一頭を巻き込み殺害、到着するや近くにいたイルカを捕獲し焼いて貪り食うと、最初は暴れてくれたものの、あまり面白くないメディテーションがらみのおちょくりなどが増え、失速という感じで、期待はしていたのですが残念な感じで終わりました。

ライターのガイ・アダムスという名前なんか聞き覚えがあるなあと思ったらイギリスの有名な小説家/コメディアン/俳優(この順番でよかったのかな?)の人でした。この結果からコミックと、小説、映像作品との違いを学んで次の機会があるならその才能をうまく発揮できる方法で作品を作ってくれるといいですね。

キャラクターには期待したのだけど、あまり評判も良くなかったようだしこのシリーズも一回限りかな、と思っていたところ、よく見ると”created by Grant Morrison”の文字が?調べてみると、このUlysses Sweetはグラント・モリソンが昔、2000ADの短篇シリーズで現在も続いているFuture Shockで1回だけ登場させ、以来カルト的な人気を持つキャラクターだそうです。2000ADの期待を担って復活したUlysses Sweetなのでまた今後も登場の機会はあるのかも。グラント・モリソンのオリジナルも読んでみたいなあ。

ABC Warriors/Return to Mars

 Pat Mills/Clint Langley (Plog 2014, 1862-1866, 1868-1873)
ABC WarriorとはAtomic、Bacterial、Chemicalといった兵器が使用される戦争に立ち向かえるように作られたロボット部隊のこと。えっ、じゃあABCマートって…?というお約束のネタも出たところで本題に。英国コミック界の巨匠Pat Millsの代表作の一つで、1979年から続いている長い歴史のある作品で、また例の如く今期初めて読む1シーズンではとても全体像を掴むのは不可能ですが、なんとかできるだけ頑張ってみます。登場するロボット達は人間が操縦するものではなく、トランスフォーマーの様に自らの意思を持った者たちです。変形はしませんが。今回のReturn to Marsはメンバーの中のHappy Shrapnelを中心とした語り直しのストーリーです。

Happy Shrapnelはそもそもは武器実験用として作られたロボット。数々の過酷な兵器による攻撃をくぐり抜け生き延びたロボットである。だが、彼のメモリーから、彼をやみくもに破壊しようとした人間たちの姿が消えることはない。かつてのABC Warriorsの火星でのミッションの後、彼は酒場でのつまらないロボット同士の喧嘩で破壊される。彼の死を悼む仲間たちは、彼を人間の様に墓地に埋葬した後、火星を去る。そして、数十年後、新たな敵メデューサの侵略により、墓地から蘇った死者とともにHappy Shrapnelは復活する。そして火星の危機に再びABC Warriorsのメンバーを呼び寄せるのだった。しかし、もはや戦う意思を無くしたHappy Shrapnelは、チームへの復帰要請を拒み、Tubal Caineと名を変え、後方支援にとどまる。一方、守るべき火星の人間たちは何やら怪しげな支給された食物の影響で醜い姿に変わりながら自堕落な生活を送っている。そんな大人たちの様子に疑問を抱き、それを口にしない少年Tomは唯一心を通わせられる相手としてTubalの工房に通い、いつしか親子のような関係を築いて行く。はぐれ者であるTomが人間たちからの制裁で危機に陥った時、Tubalは再び銃を手にする。やっと他者とのつながりを取り戻したTubalだったが、その許をABC Warriorsの創造者であるロボットQuartzが訪れる。ABC Warriorsの行動を快く思わないQuartzは彼らの矯正の第一段階としてTubalを自らの部下にしたロボット達に攻撃させる。破壊の跡、Tubalが見たものは彼を助けようとして惨殺されたTomの姿だった。そして彼はHappy Shrapnelとして復帰を決意する。ABC WarriorsはQuartzと戦うことのできるプログラムを求め、火星から飛び立つのであった。

これまでのストーリーについて会話の中のみで語られる事が多かったので勘違いしていることもあるかもしれませんが、大体のところはこんな感じです。あまりよくわからずに読んでいても引き込まれるPat Millsの重いストーリーもさることながら、Clint Langleyの画がまたすごい!ロボット同士の回はCG、人間との関わりの回はねじれたようなモノクロの線画と描き分けているのですが、その両方がそれぞれの方向で独特の大変優れたものになっています。やっぱり世界にはまだまだ見るべき画が尽きないなあ、と思ったり。今回のトップ画像は、やはりClint Langleyによる近年のABC Warriors/Return to Earthのカバー画です。少し画の雰囲気が伝わればいいかと。このABC Warriorsも過去作にさかのぼってなるべく沢山読んでみたい作品です。でも、まずJudge Dreddを…。うむむ、昔お休みの日にマンガを積み上げて、これ全部読むぞ!とニコニコしてたぐらいの勢いで、英語のコミックも読めるようにならないものか、と思うばかり。

Grey Area

 Dan Abnet
  /Patrick Goodard (Prog 2014, 1863-1871)
  /Mark Harrison (Prog 1872,1873)
長期間続いている看板的人気作と人気キャラクターの復活という今期の中で目立たない印象の本作ですが、ある意味一番安定して楽しめる作品でした。Grey Areaとは、未来の地球を訪れた異星人の、様々な検疫であったり書類手続きなどの期間の一時的受入れ地区の事で、そこの治安部隊のストーリーです。どのくらいの期間続いているのかはわからなかったのですが、まだそれほどの長期ではない様子ながら安定した人気を得ているシリーズのようです。主人公は隊長のBulliet。以下メンバーは赤毛美女、Bullietと恋仲のBirdy、ラテン系モヒカン美女のFoe、様々な異星人との会話能力を持つ男性Kymn。こちらも今回初めて読むのでわからなかったのですが、何か大きなストーリーを一つの流れとして背景にしながら、基本的には、チームが地区内で起こった事件、騒動に対処していく1~3話完結のストーリーで続いていきます。今期のストーリーは以下の通り。

 1. Something to Declare
 2. Did You Pack Your Own Luggage? (Part1-2)
 3. Short Straw
 4. All God's Children (Part1-3)
 5. Rates of Exchange (Part1-3)
 6. Visitation
 7. I.D., Please 

1は異星人の目から見た通関などの役所手続きのややこしさを風刺しながら、メンバーの紹介をする1ショット。2は異星人だと思っていたのが実は運搬用ロボットで、本体は荷物に変形してもぐりこもうとしていたという事件。3は巨大な異星人の腹の中に入り隠された違法物質を探すという仕事を、籤引きで短いストローを引いて負けた隊長のBullietが嫌々行い災難に会う話。4は手続き中、あまりよくない環境に留め置かれている異星人の援助に訪れた教会関係者が、宗教的な考えの違いから危機に陥る事件。5は貨幣交換所が小さいが凶暴な謎の生物に襲われ、実はそれはある異星人が貨幣として使っていた卵が孵化したものだったという話。6は背景のストーリーに関わるらしき話で、深夜Bullietの許に侵入してきた異星人が、Bullietの過去の行動の償いを地球人類全体に求めることを宣告する。7はその星では支配種族が別の種族をI.D.として使っていたが、法律上両種族が平等となる地球上で亡命を申請し、支配種族はI.D.が無い存在になってしまうという話。6の翌日で隊員には話さず苦悩するBullietが次シーズンへ続くという感じで終わる。

今後背景のストーリーがどう展開して行くのかはわかりませんが、基本的には海外の刑事・警察ドラマのSF版といった感じでとても楽しめました。Dan Abnetについてはアメリカでの仕事もあり、またもう少し詳しく書く機会もあるかと思いますが、2000ADでは他に『Sinister Dexter』などの人気作もあり、職人的なエンタテインメント作品が書けるいいライターという印象です。作画のPatrick Goodardについては、特に際立った個性のある描き手ではないけど、正確で迫力のあるいい画を持ったアーティストです。後半2話を担当したMark Harrisonは、前シーズンで『Damnation Station』を描いた私のとても好きなアーティストで、今回も素晴らしい画を描いてくれました。ただ、キャラクターに関しては、メンバー女性2人を美女と書きましたが、Mark Harrisonパートでは、…うむむ女性という感じだったり。また次シーズンを読むのが楽しみな作品です。

Strontium Dog/Dogs of War

 John Wagner/Carlos Ezaquerra (Prog 2014, 1862-1870) 
22世紀イギリスの人口の70%が失われる世界規模の核戦争が勃発。放出されたStrontium-90の影響で数多くのミュータントが産まれる。差別される彼らに残された仕事は危険な賞金稼ぎしかなかった。Strontium Dogsと呼ばれる彼らの中でも最も優れた兵士で、透視とリーディング能力を持つJohnny Alphaが本作の主人公である。

このシリーズも長い歴史があり、なかなか1シーズン読んだだけで語るのは難しいところですが。1978年にJohn WagnerとCarlos EzaquerraによりStarlord誌で連載が始まり、その後2000ADに移り、のちに共作者としてAlan Grantが加わり、Grantの手に渡った後、1990年に終了。更にのち、1999年に再びJohn WagnerとCarlos Ezaquerraの手により復活したのが現行のシリーズということになるようです。

今回のストーリーDogs of Warは以前のシーズンからの続きで、ミュータントの撲滅を謀る勢力が支給される食糧に不妊を促す毒物を混入させていたことから起こった暴動が、内戦状態に拡大しているところから始まります。強敵を倒し、ロンドンに迫る勢いだったJohnny Alphaをリーダーとするミュータント勢力。政府は最後の手段として異星人傭兵部隊Ikanを投入する。あまりに危険なため少人数しか許されていないIkanだったが、どう殺しても再生し、蘇生するIkanへの恐怖から戦線は崩れ後退を余儀なくされる。次々と倒れて行く仲間たち。最終手段としてJohnnyは単身その行為に責任を持つ勢力の本拠へと乗り込み、爆破する。ミュータントたちの主張は証明され、戦争は終結する。だが、Johnny Alphaの生死とその行方は不明である。

Pat Millsと並ぶ英国コミックを代表するライターの一人、John Wagnerについて少しの作品を読んだだけで語るのは困難ですが、『Judge Dredd/Day of Chaos』やこの作品を読むと、近年は社会派というような傾向が強い作家に思われます。ニュース報道などを使い様々な視点から語られる重いストーリーは、短いページの中でも読む者を圧倒します。作画のCarlos Ezaquerraは、書いた通り1970年代からのアーティストで、やはり今の水準からするとあまりうまくなく、古い画だな、と最初は思ったのですが、読んでいるうちにやはりこの人のこの画でないと語れないストーリーがあるのだなと思うようになりました。例えば、今更水木しげるの画を古いなどという人はいませんよね。あまりうまい例えではないかもしれませんが、少なくとも、それに近い域に達した人ではないかと思います。

このStrontium Dogsも過去作にさかのぼり、その長い歴史を探求してみたいと思わせる作品でした。昔お休みの日に…(以下ABC Warriorsと同文)。


また、今回もわからないの連発でしたが、画像も加え少しは読みやすくなったのではないかと思います。また、ずいぶん長くなってしまいましたが…。こうやって書くことにより自分の2000AD作品への理解も広がる部分もあり、今後も遅れながらもなんとか続けていこうと思います。
次期の2000ADは、これもPat Millsの代表作のひとつである『Slaine』と、Dan Abnetの『Sinister Dexter』、加えて2本の新シリーズが始まります。ではまたなるべく早い機会にという感じで。それまでには今度こそ『Day of Chaos』について書かなくては。



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2000AD 2013年秋期 [Prog1850-1861,2014]


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2014年8月2日土曜日

Rabid Child -New Pulp Press発!どん底ノワール!-

Pete Risley作『Rabid Child』。私が注目しているハードボイルド/ノワール系パブリッシャーNeo Pulp Pressからまず一冊!…というところなのですが、うーん、これがなんというか他人に勧めていいものなのか…。まあカバー画を見てお察しの方もいるでしょうが、これが読むと大変いやな気分になるという小説なのですね。そういう本イコール悪い本という事ではないのは当然ですし、価値もないようなものについて書く気もありませんが、やはりゲテモノを人に勧めるのはためらうなあ。などと思いつつ、とりあえず始めてみます。

主人公のDesmondはホームレスの青年。数少ない楽しみは覗きと非力な子供への性的悪戯という最低の人間。自分の将来についてはいつか何かで虫のように潰されて終わるとしか考えられない。夜更けの街角でウインドウの中のマネキンに興奮していると、通りすがりの車の中から彼を呼ぶ声が。それは、かつて彼が逃げ出した養母のMrs.Honneckerだった。彼女に促されるまま、Desmondは車に乗せられ、少年の頃逃げ出した家へ向かう。

着いてみると、彼がかつて住んでいた家は完全なゴミ屋敷と化していた。ゴミだらけの居間のTVの前には”下宿人”だという両腕が無く、代わりに木の棒を取り付けた老人Mr.Winceが居座っている。そして、Mrs.Honneckerが彼に出した食事は完全に腐っていた。昔は仲の良かったその家の幼かった娘Tracyも今ではティーンエイジャーとなり、Desmondを見知らぬ人間の様にあしらう。そして、彼が最も恐れていた家長のMr.Honneckerはいつになっても姿を現さず、その寝室からは恐ろしい悪臭が漂ってくる。突然の来入者から手渡されたが、Mrs.Honneckerが中身を見もせず捨てた封筒を見てみると、それはこの家からの立ち退き要請通知だった。一体この家でなにが起こっているのか?そしてDesmondは更に深みへと巻き込まれて行く…。

最初からどん底の状況で始まるこの小説ですが、さらにその底が抜け、果てしなく底なしの悲惨さへどんどん落ち込んで行くばかりです。そしてこの主人公がひどい。無力、無能力の極みのような人物で、エロいことしか考えないというよりそれにしか反応しない徹底的に無気力な弱者。とにかくこの場から逃げ出すことしか考えていないのだが、Tracyちゃんに未練を残して覗きに行ったり、怪我をして動けなくなったりしているうちにこの状況から抜け出せなくなってくる。この小説はDesmondの一人称ではないのですが、常に彼を中心に置き、そこから離れることなく徹底的にこの最低の弱者の視点でこの狂った世界を見せ続けられ、彼が逃げ出したりその前から立ち去ってしまった人物、事件についてのその後は一切わかりません。後に登場する人工中絶反対運動に献身する年齢不詳の肥満女性AmberにDesmondが言い寄られたりするあたりは滑稽だったりもしますが、Mr.WinceやMrs.Honneckerの狂気がだんだん露わになってくる様子はほとんどホラー的です。
あえてお勧めするなら、ノワールとして紹介されたジャン・ヴォートランの『グルーム』や、トンプスンの『サヴェッジ・ナイト(残酷な夜)』あたりが好きな人か、私はああいう話が苦手で読めていないのですがケッチャムの『隣の家の少女』あたりかな。しかしむしろカフカであったり、ドストエフスキーであったりというような文学的方向で考える方が妥当かもしれないなとも思ったりもします。あまりに気が滅入る話なので少しふざけておちゃらかして紹介しようかと最初は考えていたのですが、読み進めるうちに作者の、例えば冷蔵庫の中で腐ってしまった野菜をそれがどこまで腐るのかひたすら見つめ続けるといったような何か一つの真摯な文学的アプローチというものを感じて考えを改めました。私の浅い文学経験からすると、ドストエフスキーの初期に分類される小説と共通するものを感じたりしました。しかし、『罪と罰』の主人公が最終的に宗教的なところに救いを見出すのに対し、この小説では、現代アメリカの底辺層の問題を探ると付随して浮き上がってくることの多いキリスト教原理主義的なものが登場人物の破滅を加速していくようなところが現代的であり、ノワールなのだなと思ったりもします。

作者Pete Risleyに関しては、著作は2010年刊行のこの1作だけで自身のホームページも見つからず、あまり詳しいことは分かりません。ただ、以前に書いたアンソロジー『All Due Respect』に短篇が掲載されていて、作者紹介が少し載っていました。それによると、オハイオ州コロンバス在住で、All Due Respectの他にはPlot with Guns、Pulp Metalなどのウェブジンにも作品を発表しているそうです。次作の予定などについては不明です。ちなみに『All Due Respect』掲載の短篇「Bad Movie」ですが、イケメン気取りの少年が相棒のマッチョと映画を観に行き、可愛い女の子の気を引こうと下級生をからかっているうちに破滅していくという、これもいやな感じの話でした。
この小説のパブリッシャーNew Pulp Pressについてもあまりよくわかってないのですが、ホームページにアクセスしてみれば一目瞭然、とても面白そうな本がズラリと並んでおります。アメリカ国内のその筋では注目の作家の作品や、Tony Black、Anoymous-9などの新進英国作家、日本でも翻訳の出た南アのロジャー・スミスなどのノワール作品が次々と出版されています。その中で何故まずこの作品を読んだかというと、順番に並んだリストの一番下、つまりこのNew Pulp Pressで最初に刊行された作品だからです。私のような「全部読む病」の人間にきれいな並んだリストを出せば1番から読み始めるのは当然の行動です。まあ、このカバー画を見て嫌な予感は若干あったのですが…。しかし、色々な意味でかなりの手応えを感じさせてくれた作品でした。これからもNew Pulp Pressには期待しつつ全部読むのだ!

あまりお勧めしないと言いつつも、このコミックと人殺しの出てくる本以外はよまないもんね!というボンクラにここまで延々と色々語らせるくらいには価値のあった作品ということではないでしょうか。正直、私もこの小説を再読してみようという気はあまり起こらない気もします。しかし、Pete Risley氏の次作が発表されたなら、私は必ず読みます。


New Pulp Press 


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ハードボイルド/ノワール系アンソロジーとインディー・パブリッシャー


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