2014年8月17日日曜日

夏のホラー特集 その1 Header -Hump! エドワード・リーの残虐バイオレンスホラー-

注意:今回は読んだ本の内容としてかなりグロい事が書かれています。

-Headerとは何か-

この小説の舞台となっている架空の地では、Hillfolkと呼ばれるレッドネックたちが山中に法からも見放されて住み着いている。お互いに仲の悪い彼らが究極の報復として行う残虐行為。それがHeaderである。

Headerって何だろう。父と祖父がそう囁きかわすのを何度も聞きながらTravisは思っていた。そんな父も母とともに交通事故で亡くなった。Travisが矯正施設に収容されている間に父と暮らした家も燃えてしまった。施設を出所したものの行く当てのないTravisは祖父の許を訪ねた。両足をなくし車椅子生活の靴職人の祖父はTravisを温かく迎えてくれた。Travisは永年の疑問を祖父にぶつけてみる。すると、祖父は答える。今こそ家族の恨みの積もった奴等にHeaderを仕掛ける時だと…。

最初の標的は隣の地所に住みなにかと嫌がらせをしてきたCaudillsの娘。道を歩いていた彼女を送ってやると車に誘い込み、殴って昏倒させ、祖父の小屋に運び込む…。

-Headerとは何か-

Travisは彼女を祖父の作業机に縛り付ける。祖父はPower drillを手に取りそこに取り付けた3-inch hole-sawで彼女のBlond headのTopにPerfect holeを開ける。そして、BrainにSteak knifeで入れたSlitに、TravisのDog-stiff Dickを…。 

目には目を。その日からTravisは祖父に指示された家族に対し不正を働いた者たちを、次々とHeaderにかけて行く…。

Cummingsは地元のATFの支局に勤める捜査官である。謎の病に日々弱って行く妻の薬代の重圧に耐えかね、密造酒業者に融通を図り賄賂に手を染めている。更に増す妻の医療費のために、遂にはドラッグ・ディーラーの仕事に関わり始める。苦悩するCummingsは、ふとしたことから知ったHillfolk同士の諍いとして地元当局が放置しているHeader殺人犯の捜査に、自らの存在意義を証明するかのように執念を燃やし始める…。

何とも恐ろしい本を読んでしまった。そもそも、この小説を読むきっかけというのは、前に書いた『The Dead Man』シリーズにも見られるように、米国の小説ではホラーとハードボイルド/ノワールは割と近い関係にあったりもするので、時々はチェックしていたところ、昨年末ホリデーシーズンこの小説の版元であるDeadite Pressがセールを行っていたのです。ズラリと並ぶ恐ろしいカバー画の迫力からこれはとにかくこの機会に入手しておかねば!と思い、ホラー小説には全く知識が無いながら、とりあえず作品数が多くて人気がありそうな作家からという感じで選んだ内の1冊がこの『Header』だったわけです。しかしながら自分にとっては本筋のハードボイルド/ノワール系も読むのが遅くてなかなか進まず、放置状態が続いていたのですが…。そんなある日暑さに浮かれたボンクラ頭が、せっかく自分の場所を作ったのだからなんか「企画」ごっこでもやっちゃおーかなあ、夏と言えばホラーじゃん!と思い付き、そこで何を読むかと考え選んだのが100ページ中編と手頃だったこのエドワード・リーの『Header』だったのでした。まあ、エドワード・リーがこの分野では結構な大家だというのは読み始めて少し調べてすぐわかったのですが、その話はまたあとで。

しかし、何とも恐ろしい本を読んでしまった。まさかこんなことを思い付いて、小説という形にしてしまうとは。その恐るべき発想を、アメリカ奥地のレッドネックの蛮行という、『テキサス・チェーンソー・マサカー』というよりはむしろ筒井康隆の『熊の木本線』に連なる奇想で動かし、そこにCummings捜査官パートのノワールを乗せてくるという、読み始めたら止まらない…と言いたいところですが、これ、結構苦労しました。というのはTravisパートの方が本当に存在するのかわからない恐ろしい方言で、会話のみならず地の文まで書かれていて、なんとか推測しながらやっと読んだという感じでしたが。しかし、まあ到底万人におススメとはいかないものですし、若干褒め過ぎかとはとも思いますが、あくまでも読者を選ぶという前提では、一読に値する作品だと思います。これは個人的な好みの問題かもしれませんが、行為が始まってからの被害者の記述はおそらく意図的に控えめになっており、自分的には過度なエログロにならずバイオレンスホラーの線内で読めました。もちろんこれは、モラル的なエクスキューズではなく、あくまでもとことん人を怖がらせるという種類のエンタテインメント作品を作る上でのさじ加減という意味です。私のそちら方面の知識が少ないいからわからないというだけでなく 、やっぱり翻訳出版点数のかなり少なそうなこのジャンルを求めている人、アメリカのホラー映画のファンの人にはお勧めのかなりヤバイカルト作です。

作者エドワード・リーについてですが、前述の通り調べてみればこのジャンルでの結構な大家だとすぐわかったのですが、もしかしたら国内的にも翻訳作や情報があるのではと日本語で検索してみたところ、ジャック・ケッチャム、リチャード・レイモンとの共作アンソロジーである画像の本がヒットしました。なんだこの間から見てて今度買おうと思ってたやつじゃん。というわけで早速購入し、併せて読んでみたので翻訳和書は異例ですが、少し感想を。「謎の人物が職場に押し掛けてきて、そいつが何者か、さらに、なぜ自分が狙われるのかわからない人物を殺そうとする」という設定(訳者あとがきより引用)で書かれた3人の作家の作品が収録されています。最初のケッチャムは何となくポール・オースターフォロワーが書きそうな話をケッチャム味でやったような佳作。ちょっと積読になっているケッチャム作品も早く読まねば。次のレイモンはオフィスビルの中主人公が不条理なまでに追いつめられ、次はどうなるのかハラハラさせられるエログロサスペンスホラー。最後のリーはまさかのSF。どうも前には短篇1作の翻訳があるのみで、今回の『Header』よりは少し長めの中編であるこの作品がある意味本格的な紹介になるのかな。最後まで読んでなるほどこういうことか、という感じ。しかしSF的にはあれはどういうことなのかちょっと中途半端な気も。帆掛さんはニヤリとするけど、早川さんは少しご不満というところでしょうか。リーの全く毛色の違うこの作品と『Header』ですが、最後まで読んでみると共通して、結末から逆算しながら必要な人物と事件を配置していて、一見乱暴に見えるけど案外堅実にストーリーを構成していく作家なのかもしれません。この企画アンソロジーのそもそもの成り立ちはその設定でレイモンとリーが共作をする予定だったのだけど進めていくうちにそれぞれの考えている作品が別の方向に向かってしまったということだそうですが、両者の作品を読んでみると、その設定からどう展開して行くか考えていたレイモンと、その謎の人物の正体背景を考えていたリーとの間で作品の方向性の乖離が大きくなってしまったのかな、と思いました。それにしても個人的には一番好きなケッチャムの作品ですが、この時期多忙だったということだったけどこれは断れないな、と引き受けたもののどうにもならず困って、とっさのケッチャムさんのとんちで書きかけで放置していた作品にこの設定をくっつけて切り抜けたとかじゃないのか?…と今回は少し邪推が多いかな。訳者あとがきで、名前と怖い表紙だけで正体不明だった数人の作家について言及してくれていて助かりました。翻訳権のゴタゴタがあったにしても、2001年出版のものが今頃出たというのもこういう作品の翻訳出版は厳しいのかなと思われますが、その辺の作家の作品ももっと出版されるといいですね。

『Header』の版元であるDeadite Pressについてですが、まだこの本のみしか読んでいないのであまりよくわからないのですが、そもそもは1995年出版のこの作品のようなカルトホラーから最近の作家の新作まで色々と出版されている様子です。うっかりリンクからサイトを開くとたいへん恐ろしいカバー画が並んでいるので、心の準備をしてからクリックしてください。このDeadite Pressはもっとビザールや文学的傾向の作品を出版しているEraserhead Pressのバイオレンス/カルトホラー部門のレーベルのようですが、どうにもつながりにくくなかなかサイトが見られなかったりします。リンクからもつながらないかもしれませんが確かにそこに存在します。他にもビザール傾向の強いLazy Fascist Pressというレーベルもあり、色々面白そうなのでその辺の本も読むスピードを上げてガンガン読んでいきたいなあ、と希望だけは持っています。エドワード・リーにはずいぶんたくさんの著作があるようですが、とりあえずはこのDeadite Pressで読める物を出版順に並べておきます。

このDeadite Press版にはリーによるあとがきも載っていて、出版以降のことなども色々書かれなかなか興味深かったりします。他にも序文がありそちらはあのジャック・ケッチャム!それによると、なんとこの作品映画化され、ケッチャムとリー本人が警官役で出演しているとの事。ここまで書いたからには責任もってそちらも観なければ、と注文したのですが、届くまでまだ少しかかりそうで、この続き映画版『Header』についてはまた9月ごろにこのブログで。この作品がどう映像化されるか少し恐ろしいですが、興味のある方はお楽しみに。
そして、更にこの『Header』には続編があります。『Header2』!カルトホラーの評価を受けて近年書かれたと思われる作品で、さらに『Header3』も執筆中らしいです。一体どんな話になっているやら…。なるべく早い機会にそちらも読んでみたいと思います。


Edward Lee Official Website

Deadite Press

Eraserhead Press

Lazy Fascist Press 



 

●Header シリーズ


●Edward Lee/Deadite Press





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