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2014年8月13日水曜日

2000AD 2014年冬期 [Prog2014,1862-1873]

なんとか少し頑張ってはみたものの、結局あまり差は縮まらず、8月になって2014年1~3月期の2000ADの報告です。まあ内容的には未来と宇宙の話であまり季節感は関係ありませんが、なんとかもう少し努力せねば…。

今期のラインナップは
 1.Judge Dredd
 2.Ulysses Sweet, Maniac for Hire
 3.ABC Warriors
 4.Grey Area
 5.Strontium Dog
となっております。

Judge Dredd

 1.Titan : Rob Williams/Henry Flint(part1-8)
 2.Squirm! : Michael Carroll/Nick Dyer(Part1-3)
 3.Fit : Rob Williams/Henry Flint

今期のJudge Dreddは、なんといっても全8回にわたる大作Titanです。犯罪を犯したジャッジの流刑地である土星の衛星タイタンと連絡が付かなくなり、ドレッドを中心とする調査チームが派遣されることになる。衛星からの映像などでは反乱、事件の兆候は見られないのだが、いかなる通信に対しても沈黙したままのタイタン。Chaos Day以降未だ人員不足に悩むJustice DepertmentからはドレッドとChaos Dayの根本的責任はドレッドにあると考えるジャッジの内務調査部であるSJSのJudge Gerhartのみで、案内役として元タイタンの看守で犯罪者として拘束されているMcintoshを同行、あとは軍に応援を頼むというチームで出発する。しかし、タイタンで待ち受けていたのは恐るべき罠だった…。

なんといってもHenry Flintの画が圧巻です。もう読み終わっているのですがなかなか手が付けられないでいる『Day of Chaos』でも主に作画を担当しているのですが、とにかく岩に掘ったような重い線の迫力で、この人が描くドレッドこそが本物のドレッドだと思ったりもします。『Day of Chaos』についてはなるべく早く書くつもりです。あと『ZOMBO』の続きも…。

2のSquirm!は大食い大会の選手の腹を食い破って出てきた薬物の影響で巨大化したサナダムシが暴れるという話なのですが…、うーむ、瀕死でなんとか生き残ったTaitanの翌週がこんな話では…と思っていたら、3でTaitanの製作チームによる後日談が続きました。製作上の都合もわかるけどなんかちょっとね。ちなみに大食い大会の話は『Day of Chaos』の中でも出てきたのですが、ひとつのネタなのでしょうか。Mega City Oneでは「サナダムシは違法である!」そうです。

2はともかくとして、今期のJudge Dreddはかなり読み応えのある作品になりました。次期はJohn Wagnerによるストーリーから始まります。

Ulysses Sweet, Maniac for Hire

 Guy Adams/Paul Marshall (Prog 2014, 1862-1869) 
雇われ狂人って?要するに用心棒から傭兵、殺し屋までというフリーランスの荒事師なわけだが、あまりにイカレているので名刺にもその肩書きが入っているUlysses Sweet。あちこちの惑星から接近禁止命令が出され、脳には矯正用のインプラントが埋め込まれている。そんな人物に仕事を頼むまともな人間などいないのだが、なぜか休養中の人気女性シンガーの護衛などという至極まっとうな依頼が来る。勇んで彼女のいるメディテーション惑星へ向かうUlyssesだったが…。

彼の脳に入っているインプラントというのは、常にセラピーだったりUlyssesの行動を注意したりというもので、画面上にはその囲みと、Ulysses自身のモノローグと通常のフキダシが散りばめられるという、なんかアメリカの方にもこんな感じでそれぞれが会話したりするイカレたよく喋る傭兵で赤い人が出てくるのがあるなあという感じ。それでも冒頭あまりにひどい仕事の結果から(夫を殺して欲しいという妻からの依頼だったが、会話中の彼女の「所詮男なんて…」という呟きを拡大解釈し、惑星上の男性すべてを全滅)依頼人に顔の皮をはがされ、しばらくは筋肉標本のような顔で真空パックされた顔の皮膚を持ってうろつく、という始まりからデッドプール(あっ、言ってしまった)とはまた違うイギリス風のたちの悪いギャグで楽しませてくれるのでは、と期待したのですが…。護衛対象のいるメディテーション惑星、水の世界に突入する際、クジラ一頭を巻き込み殺害、到着するや近くにいたイルカを捕獲し焼いて貪り食うと、最初は暴れてくれたものの、あまり面白くないメディテーションがらみのおちょくりなどが増え、失速という感じで、期待はしていたのですが残念な感じで終わりました。

ライターのガイ・アダムスという名前なんか聞き覚えがあるなあと思ったらイギリスの有名な小説家/コメディアン/俳優(この順番でよかったのかな?)の人でした。この結果からコミックと、小説、映像作品との違いを学んで次の機会があるならその才能をうまく発揮できる方法で作品を作ってくれるといいですね。

キャラクターには期待したのだけど、あまり評判も良くなかったようだしこのシリーズも一回限りかな、と思っていたところ、よく見ると”created by Grant Morrison”の文字が?調べてみると、このUlysses Sweetはグラント・モリソンが昔、2000ADの短篇シリーズで現在も続いているFuture Shockで1回だけ登場させ、以来カルト的な人気を持つキャラクターだそうです。2000ADの期待を担って復活したUlysses Sweetなのでまた今後も登場の機会はあるのかも。グラント・モリソンのオリジナルも読んでみたいなあ。

ABC Warriors/Return to Mars

 Pat Mills/Clint Langley (Plog 2014, 1862-1866, 1868-1873)
ABC WarriorとはAtomic、Bacterial、Chemicalといった兵器が使用される戦争に立ち向かえるように作られたロボット部隊のこと。えっ、じゃあABCマートって…?というお約束のネタも出たところで本題に。英国コミック界の巨匠Pat Millsの代表作の一つで、1979年から続いている長い歴史のある作品で、また例の如く今期初めて読む1シーズンではとても全体像を掴むのは不可能ですが、なんとかできるだけ頑張ってみます。登場するロボット達は人間が操縦するものではなく、トランスフォーマーの様に自らの意思を持った者たちです。変形はしませんが。今回のReturn to Marsはメンバーの中のHappy Shrapnelを中心とした語り直しのストーリーです。

Happy Shrapnelはそもそもは武器実験用として作られたロボット。数々の過酷な兵器による攻撃をくぐり抜け生き延びたロボットである。だが、彼のメモリーから、彼をやみくもに破壊しようとした人間たちの姿が消えることはない。かつてのABC Warriorsの火星でのミッションの後、彼は酒場でのつまらないロボット同士の喧嘩で破壊される。彼の死を悼む仲間たちは、彼を人間の様に墓地に埋葬した後、火星を去る。そして、数十年後、新たな敵メデューサの侵略により、墓地から蘇った死者とともにHappy Shrapnelは復活する。そして火星の危機に再びABC Warriorsのメンバーを呼び寄せるのだった。しかし、もはや戦う意思を無くしたHappy Shrapnelは、チームへの復帰要請を拒み、Tubal Caineと名を変え、後方支援にとどまる。一方、守るべき火星の人間たちは何やら怪しげな支給された食物の影響で醜い姿に変わりながら自堕落な生活を送っている。そんな大人たちの様子に疑問を抱き、それを口にしない少年Tomは唯一心を通わせられる相手としてTubalの工房に通い、いつしか親子のような関係を築いて行く。はぐれ者であるTomが人間たちからの制裁で危機に陥った時、Tubalは再び銃を手にする。やっと他者とのつながりを取り戻したTubalだったが、その許をABC Warriorsの創造者であるロボットQuartzが訪れる。ABC Warriorsの行動を快く思わないQuartzは彼らの矯正の第一段階としてTubalを自らの部下にしたロボット達に攻撃させる。破壊の跡、Tubalが見たものは彼を助けようとして惨殺されたTomの姿だった。そして彼はHappy Shrapnelとして復帰を決意する。ABC WarriorsはQuartzと戦うことのできるプログラムを求め、火星から飛び立つのであった。

これまでのストーリーについて会話の中のみで語られる事が多かったので勘違いしていることもあるかもしれませんが、大体のところはこんな感じです。あまりよくわからずに読んでいても引き込まれるPat Millsの重いストーリーもさることながら、Clint Langleyの画がまたすごい!ロボット同士の回はCG、人間との関わりの回はねじれたようなモノクロの線画と描き分けているのですが、その両方がそれぞれの方向で独特の大変優れたものになっています。やっぱり世界にはまだまだ見るべき画が尽きないなあ、と思ったり。今回のトップ画像は、やはりClint Langleyによる近年のABC Warriors/Return to Earthのカバー画です。少し画の雰囲気が伝わればいいかと。このABC Warriorsも過去作にさかのぼってなるべく沢山読んでみたい作品です。でも、まずJudge Dreddを…。うむむ、昔お休みの日にマンガを積み上げて、これ全部読むぞ!とニコニコしてたぐらいの勢いで、英語のコミックも読めるようにならないものか、と思うばかり。

Grey Area

 Dan Abnet
  /Patrick Goodard (Prog 2014, 1863-1871)
  /Mark Harrison (Prog 1872,1873)
長期間続いている看板的人気作と人気キャラクターの復活という今期の中で目立たない印象の本作ですが、ある意味一番安定して楽しめる作品でした。Grey Areaとは、未来の地球を訪れた異星人の、様々な検疫であったり書類手続きなどの期間の一時的受入れ地区の事で、そこの治安部隊のストーリーです。どのくらいの期間続いているのかはわからなかったのですが、まだそれほどの長期ではない様子ながら安定した人気を得ているシリーズのようです。主人公は隊長のBulliet。以下メンバーは赤毛美女、Bullietと恋仲のBirdy、ラテン系モヒカン美女のFoe、様々な異星人との会話能力を持つ男性Kymn。こちらも今回初めて読むのでわからなかったのですが、何か大きなストーリーを一つの流れとして背景にしながら、基本的には、チームが地区内で起こった事件、騒動に対処していく1~3話完結のストーリーで続いていきます。今期のストーリーは以下の通り。

 1. Something to Declare
 2. Did You Pack Your Own Luggage? (Part1-2)
 3. Short Straw
 4. All God's Children (Part1-3)
 5. Rates of Exchange (Part1-3)
 6. Visitation
 7. I.D., Please 

1は異星人の目から見た通関などの役所手続きのややこしさを風刺しながら、メンバーの紹介をする1ショット。2は異星人だと思っていたのが実は運搬用ロボットで、本体は荷物に変形してもぐりこもうとしていたという事件。3は巨大な異星人の腹の中に入り隠された違法物質を探すという仕事を、籤引きで短いストローを引いて負けた隊長のBullietが嫌々行い災難に会う話。4は手続き中、あまりよくない環境に留め置かれている異星人の援助に訪れた教会関係者が、宗教的な考えの違いから危機に陥る事件。5は貨幣交換所が小さいが凶暴な謎の生物に襲われ、実はそれはある異星人が貨幣として使っていた卵が孵化したものだったという話。6は背景のストーリーに関わるらしき話で、深夜Bullietの許に侵入してきた異星人が、Bullietの過去の行動の償いを地球人類全体に求めることを宣告する。7はその星では支配種族が別の種族をI.D.として使っていたが、法律上両種族が平等となる地球上で亡命を申請し、支配種族はI.D.が無い存在になってしまうという話。6の翌日で隊員には話さず苦悩するBullietが次シーズンへ続くという感じで終わる。

今後背景のストーリーがどう展開して行くのかはわかりませんが、基本的には海外の刑事・警察ドラマのSF版といった感じでとても楽しめました。Dan Abnetについてはアメリカでの仕事もあり、またもう少し詳しく書く機会もあるかと思いますが、2000ADでは他に『Sinister Dexter』などの人気作もあり、職人的なエンタテインメント作品が書けるいいライターという印象です。作画のPatrick Goodardについては、特に際立った個性のある描き手ではないけど、正確で迫力のあるいい画を持ったアーティストです。後半2話を担当したMark Harrisonは、前シーズンで『Damnation Station』を描いた私のとても好きなアーティストで、今回も素晴らしい画を描いてくれました。ただ、キャラクターに関しては、メンバー女性2人を美女と書きましたが、Mark Harrisonパートでは、…うむむ女性という感じだったり。また次シーズンを読むのが楽しみな作品です。

Strontium Dog/Dogs of War

 John Wagner/Carlos Ezaquerra (Prog 2014, 1862-1870) 
22世紀イギリスの人口の70%が失われる世界規模の核戦争が勃発。放出されたStrontium-90の影響で数多くのミュータントが産まれる。差別される彼らに残された仕事は危険な賞金稼ぎしかなかった。Strontium Dogsと呼ばれる彼らの中でも最も優れた兵士で、透視とリーディング能力を持つJohnny Alphaが本作の主人公である。

このシリーズも長い歴史があり、なかなか1シーズン読んだだけで語るのは難しいところですが。1978年にJohn WagnerとCarlos EzaquerraによりStarlord誌で連載が始まり、その後2000ADに移り、のちに共作者としてAlan Grantが加わり、Grantの手に渡った後、1990年に終了。更にのち、1999年に再びJohn WagnerとCarlos Ezaquerraの手により復活したのが現行のシリーズということになるようです。

今回のストーリーDogs of Warは以前のシーズンからの続きで、ミュータントの撲滅を謀る勢力が支給される食糧に不妊を促す毒物を混入させていたことから起こった暴動が、内戦状態に拡大しているところから始まります。強敵を倒し、ロンドンに迫る勢いだったJohnny Alphaをリーダーとするミュータント勢力。政府は最後の手段として異星人傭兵部隊Ikanを投入する。あまりに危険なため少人数しか許されていないIkanだったが、どう殺しても再生し、蘇生するIkanへの恐怖から戦線は崩れ後退を余儀なくされる。次々と倒れて行く仲間たち。最終手段としてJohnnyは単身その行為に責任を持つ勢力の本拠へと乗り込み、爆破する。ミュータントたちの主張は証明され、戦争は終結する。だが、Johnny Alphaの生死とその行方は不明である。

Pat Millsと並ぶ英国コミックを代表するライターの一人、John Wagnerについて少しの作品を読んだだけで語るのは困難ですが、『Judge Dredd/Day of Chaos』やこの作品を読むと、近年は社会派というような傾向が強い作家に思われます。ニュース報道などを使い様々な視点から語られる重いストーリーは、短いページの中でも読む者を圧倒します。作画のCarlos Ezaquerraは、書いた通り1970年代からのアーティストで、やはり今の水準からするとあまりうまくなく、古い画だな、と最初は思ったのですが、読んでいるうちにやはりこの人のこの画でないと語れないストーリーがあるのだなと思うようになりました。例えば、今更水木しげるの画を古いなどという人はいませんよね。あまりうまい例えではないかもしれませんが、少なくとも、それに近い域に達した人ではないかと思います。

このStrontium Dogsも過去作にさかのぼり、その長い歴史を探求してみたいと思わせる作品でした。昔お休みの日に…(以下ABC Warriorsと同文)。


また、今回もわからないの連発でしたが、画像も加え少しは読みやすくなったのではないかと思います。また、ずいぶん長くなってしまいましたが…。こうやって書くことにより自分の2000AD作品への理解も広がる部分もあり、今後も遅れながらもなんとか続けていこうと思います。
次期の2000ADは、これもPat Millsの代表作のひとつである『Slaine』と、Dan Abnetの『Sinister Dexter』、加えて2本の新シリーズが始まります。ではまたなるべく早い機会にという感じで。それまでには今度こそ『Day of Chaos』について書かなくては。



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