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2022年4月10日日曜日

ハードボイルド-ノワール小説未訳シリーズ!これを読むべし!

失業記念!うわもうヤケクソかよ。
というわけで失業しました。前にもいっぺん失業しているけど、そん時は勤め先自体の経営不振という感じだったので、心の準備とかあってそれほどダメージなかったのですが、今回はなんか色々積み重なったうえで、 あー、もうそういうことすんなら辞めるわ、という感じになってしまったという次第で、まあさすがにダメージもでかく、一月ぐらいはちょっとブログとかやる気も出なかったわけです。とりあえず立ち直った というわけでもないんだが、とにかく求職活動も始めたし、そろそろこっちもやらなくてはな、という感じでモタモタとやっと戻ってきたというところです。なんかねえ、ブログやってて2回も失業するなんての 珍しいんじゃない?昔仕事の関係で色々見てた時、「仕事辞めました」で終わってるブログとかあったしね。まあしばらくは時間もあることやしこっちの方もなるべく頑張ってみようと思います。

そんなわけでやっと再開ということになったわけで、書きかけのマッキンティのやつとか早く進めなければならない案件もあるのですが、まあそんな事情・気分ゆえここはちょっとワンクッション置きたいなと 考えて思いついたのが今回のやつです。
自分もハードボイルド-ノワール方面で激しくお勧めしてきた作品も数あるわけですが、なんか長くやってきて色々書いてるうちに埋もれてきてわかりにくくなってるのも結構あるので、 どっかそれらをまとめてあるところを作った方がいいのだろうな、というようなことは以前から考えていたわけなのですが、んー時間もないしで先送りしてきたのをここでやるかということです。うん、とにかく時間はできたしな…。
で、実際にどうやろうかというのは前々から色々と考えていたわけだけど、肝心なのは一回やってそれっきりにならないようにすること。というのはこういうお勧めというのはこれからも増え続けるのは確実だからです。 例えば直近にしても前に書いたジェイムズ・カルロス・ブレイクのThe Wolfe Familyシリーズなんていうのはここに入る可能性かなり大だけど、まだ読み始めたばっかりで説明できるまでに行ってないわけだし。 しかもその前、去年の秋ぐらいまでは来年ぐらいは絶対バリー・ギフォード『Sailor & Lula: The Complete Novels』を中心に読んでくぞ、と思ってたんだけど…というように日々新たに見つかった注目作に 後回しにされているこれは確実ぐらいの重要作なんて山ほどあるわけだしね。
実際の運用としては、とりあえずは下に追加したり、説明に追記したり書き直したりという感じでやって行こうかという感じです。あんまりうまくいかなくなったら全面的に改稿して改訂版とか、まあそれはこれからも 続いて行ってからの話だよな。まああまり考え過ぎず現時点の物を作ってきます。

で、これを見ている皆さんに強く注意しておきたいのは、ここに並んでいるような作品には、小さいインディペンドのパブリッシャーや場合によっては自費出版というようなものが多く含まれているということ。
電子書籍時代になり、品切れによる絶版という心配はなくなったが、パブリッシャー自体がなくなってしまうと必然的に作品の販売もなくなってしまう。あー、もしかしたらそういう経験ない人も多いのかもしれんので、 一応言っておくと、少なくともKindleやKoboで販売が終了してしまった作品も、購入しておけば再ダウンロードもできますので。いや、私は販売終了作品山ほど持ってますので大丈夫です。
で、とりあえず それらの電子書籍が未来どのくらい先まで安泰なのか、という問題は置いといてだ。このジャンルのファンなら、扶桑社あたりが年一ぐらいのペースで「70年を経て今始めて翻訳されるノワールの幻の名作」 みたいのを出してるのは知ってるだろう。まあしばらく前のノワール原理主義者共による馬鹿げた定義縛りによるノワール統制下での定義に合う評価の定まった過去のビンテージ作品のみ持ち上げましょうブームの余波なんだろうけどな。
確かにそういった隠れた名作が出版されるのは喜ばしいことだろうし、私自身もそういうのはもれなく買ってるぐらいではあるが、一方で考えれば、米国内でも過去作品の復刻に特化した Stark Houseなどの出版が60年代ぐらいまでで、我らの味方Brash Booksの復刻作品も70~80年代頃、というのも見ればわかるように、一度失われてしまった作品が再評価の機会があったとしても戻ってくるのは早くて4~50年後ということだ。
日本で出たそれらの「幻の名作」を見てみれば、21世紀初頭の最重要作家ケン・ブルーウンがわずか数作で翻訳中断になる状況を放置し、あのストックホルム三部作が第1部のみしか 翻訳されなかったことに抗議の声さえ上げず、現在このジャンルの最前線を走るエイドリアン・マッキンティをきちんと評価しているのかさえ怪しい輩が、ご自慢の知識披露に得々としている。だが、この世界にこれまで現れたすべての作家は、50年後、70年後に評価されるためなどではなく、常に同時代、目の前にいる読者に向けて作品を創っているのだ!今の作品は今読まれるべき、当たり前のことだ!
この辺を踏まえて、忠告しておこう。ここに並べた作品はほとんどが日本に翻訳される可能性はなく、そして多くの作品はそれほど遠くない未来に原書自体が失われる可能性も高い。たとえ現在英語力に自信がなくても、気になる作品は早めにゲットしておけ!一旦失われれば、運がよく再評価されても次に出会えるのは4~50年後だ。
後世の定まった評価の上にあぐらをかいてふんぞり返る「評論家」なんぞのためでなく、今、全力で優れた作品を世に著した作家のためにこそ作品を読むのだ!

前述の通り、自分で考えてもここに追加されるべき作品はまだまだある。つーか書いてるうちにあーアレも読んでねえ!アレも1冊しか読んでねえ!と思い出して頭がグルグルしているとこなんですが…。 そんなわけで、下に次々追加しやすいよう、いつも最後にダラダラやってるような話は省き、ここで一旦締め、あとは作品、シリーズ紹介のみが 続くという形を取らせてもらいます。前から考えてたんだけど、こういうのあると、これ絶対に読んだらなんか書かなきゃいけないやつだから後回しにしよう、みたいのも減って、とりあえずここに簡単な紹介を書いて いつものようないつかちゃんと書きますからー、というデマを追加しとくということができるのではないか?あ、いやデマではなくいつもちゃんと書かねばならんと持っているのだが、結果的にゴニョゴニョ…。 なんか本を探す人に便利なように作れるといいのだけどね。とにかくこれ作って終わりではなく、今後も語るべき本についてはなるべく詳しく語って行くつもりです。


Anthony Neil Smith : Billy Lafitteシリーズ

常々言っとるが、私は本に順位をつけるような思い上がった恥知らずではないのだが、私にこういうことやらせればやっぱりこれを最初に持ってきてしまう。現代ノワール最強作家にして無冠の帝王Anthony Neil Smith 先生が創造した伝説的カルトノワール作品Billy Lafitteシリーズだ!
第1作ではミネソタ州イエローメディスン郡の保安官代理であったBilly Lafitteが、ある事件をきっかけに後戻りのできない犯罪者の烙印を押され、自身を取り巻く世界全てから憎悪を浴び、命を狙われ、 第2作ではバイクギャング、第3作では刑務所の囚人へと堕ち続け、自身の意に反して暴力機械へと変貌して行く物語である。
最初に出版されたパブリッシャーが倒れた後、しばらく自費出版されていたが、英国の今は亡き電子書籍黎明期の伝説的パブリッシャーBlasted Heathでシリーズ展開を進め、その後米国のインディペンド クライム作品出版の雄、Down & Outにて出版されていたが、本年になり事情は不明だがそちらとの契約を終了し、再び自費出版にて販売されている。現在第4作まで発行されていたのだが、販売は第2作までで、 これから追加になるところと思われる。 第5作も予定されていたのだが、作者の意図により中断しており、その辺を巡ってDown & Outと意見の不一致があったのでは?と想像もできるが、とりあえずはホント直近のことなので詳細・その後の経緯等 わかることがあったらまた報告します。
※追記(2023年8月19日):しばらく絶版となっていたBilly Lafitteシリーズ第3、4作がやっと再版されているのに今日気が付いたので追加しておきます。色々と出版に関しては厳しい状態で、自費出版となっていますが、とにかく再版され現行全4作揃ったのは大変めでたい。2000-2010年代最強のノワール・シリーズ、必ず読むべし!

■Anthony Neil Smith : Billy Lafitteシリーズ

Ray Banks : Cal Innesシリーズ

全てのハードボイルドファン必読!21世紀ゼロ年代最重要作と言っても過言ではない、ハードボイルドの反逆児Ray Banksによる英国マンチェスターのチンピラ探偵Cal Innes四部作である! ムショ帰りで身元引受人のPauloのボクシングジムに事務所を借りるカネなし、コネなし、腕力なしの20代の若きチンピラ探偵。我が国が誇る70年代の伝説的名作『傷だらけの天使』の木暮修を連想するなという方が 無理だろう。「ハードボイルドとは云々」などと聞いた風を並べる輩を根こそぎ蹴飛ばす唯一無二のオリジナルハードボイルド!何度でも言うがハードボイルドファン必読!これを絶対に逃すな!
こちらもAnthony Neil Smith : Billy Lafitteと同様の経緯でBlasted Heathにて四部作を完結。Blasted Heath設立者である作家Allan Guthrieの功績はあまりにも大きい。現在は英国TSB Booksより発売中。

■Ray Banks : Cal Innesシリーズ

Johnny Shaw : Jimmy Veeder Fiascoシリーズ

日本でも単発作品『負け犬たち(原題:Big Maria)』の翻訳があるジョニー・ショーによる国境の町Imperial Valleyの農夫Jimmy Veeder Fiascoシリーズ。父の危篤に帰郷し、その農地を継いだJimmy Veeder Fiascoが 国境をまたぐ事件に巻き込まれて行く。
自分はジョニー・ショーにハズレ無しぐらいにこの作家に信頼を置いているのだが、それが高すぎる故にいまだに第1作『Dove Season』と『Big Maria』しか読んでないという始末。まあ救いがたい貧乏性と、正体不明 これ面白いんかな?という方を優先してしまい、信頼がおける好きな作家ほど後回しにしてしまう悪癖ゆえなのだが。ジョニー・ショー作品は誰でも100%楽しめると自信を持ってお勧めする。いや、こんな面白い作家の 作品読まないなんて人生の損失だって。
Jimmy Veeder Fiascoシリーズは第3作が出てからしばらく音沙汰がないのでこれで終わりなのかもしれないが、ジョニー・ショーはその後も次々と絶対面白い新作を発表し続けているのだよ。

■Johnny Shaw : Jimmy Veeder Fiascoシリーズ

Adam Howe : Reggie Levineシリーズ

日本では全く名前も知られていない作家の作品を色々と見つけ出して読んでる私なのだが、中でもこのAdam Howeという作家に出会えたのは本当に幸運だったと思っている。スティーヴン・キングの短編小説コンテストで 優勝し、その才能を認められたAdam Howe。ホラー系のインディペンド・パブリッシャー、Comet Press(現在はRed Room Press)からの中短編集『Die Dog or Eat the Hatchet』に収められた中編「Damn Dirty Apes」が 我らがReggie Levine初登場作となる。Reggie Levine、アメリカ南部の田舎町Bigelowのストリップバーの用心棒として働く元ボクサー。まあ簡単に言ってしまえば、かのジョー・R・ランズデールの ハップ・コリンズタイプの主人公。トラブル吸引体質でとにかく厄介事に見き込まれ散々な目に遭う。本家ランズデールもかなりのお下劣ギャグ連発なのだが、さらに輪をかけたようなジャッカス級の 破壊的なドタバタが繰り広げられる。
第1作の好評を受け、第2作は長編『Tijuana Donkey Showdown』。続いてHowe君自身が立ち上げたHoney Badger Pressからのプロレスアンソロジー『Wrestle Maniacs』に収められた短編「Rassle Hassle」の3作が 今のところ出ている全部かと思っていたら、今年の1月に「Of Moose And Men」という33ページの短編が単品で出ていたよ。すぐ買った!すげー嬉しい!またReggie Levineが読めるぞ!
現在は自費出版で苦戦するAdam Howe君。最新長編80年代アクションムービーへのオマージュに満ちた『One Tough Bastard』も大傑作!誰かこの天才にもっとガンガン書かせてくれよ!

Douglas Lindsay : Barney Thomsonシリーズ

史上最弱の「連続殺人鬼」Barney Thomsonシリーズ!えーっと、これは正確にも不正確にも、ハードボイルドジャンルというよりは、英国のブラックユーモアミステリーという(そんなジャンルあるのか知らないけど) ところなんだろうが、ジャンルなんてとりあえずはどうでもいい。Barney Thomsonは絶対面白いともう500%ぐらいの自信を持ってお勧めする。スコットランド グラスゴーの気弱で冴えない中年の床屋Barney Thomson。 彼の前には次々と死体が積み重なり、やがてスコットランド中を震撼させる最凶殺人鬼と糾弾されることになってくる。
自費出版などで苦戦を重ねた後、こちらも伝説のBlasted Heathで注目され、ロバート・カーライルの監督・主演で映画化(日本でもDVDその他で観られます。)されるも、Blasted Heath亡き後は、予定されていた パブリッシャーが経営不振などで、現在は再び自費出版にて販売中。だが不屈の男Douglas Lindsayの創作意欲は一切衰えず、Blasted Heath版全7長編プラスをまとめたオムニバス『The Barbershop 7』を買って これで全部だと安心していたら、その後第8作、9作が刊行。最近出た『Scenes From The Barbershop Floor: A Barney Thomson Book』っていうのはまた別のシリーズなの?まあいいや、Barney Thomsonなら 絶対面白いから全部並べとくぞ!

■Douglas Lindsay : Barney Thomsonシリーズ
●長編

Duane Swierczynski : Charlie Hardieトリロジー

日本では3作翻訳が出ているドゥエイン・スウィアジンスキーなんだが、当然まだ全然足りん。で、この驚愕のCharlie Hardieトリロジー!不死身っぽい男Charlie Hardieが次々に予想もつかない事件・陰謀に 巻き込まれて行く。
頭脳は大人、発想は中学生!こんな三部作を思いついて書けるのは世界でもスウィアジンスキーただ一人だろう。こんな三部作が世に現れることは二度とないと断言する!。あ、ある意味 そこら中に転がっているのだが…。これを読み逃したら来世まで後悔するドゥエイン・スウィアジンスキーの前代未聞の三部作!何が何でも必ず読むべし!

■Duane Swierczynski : Charlie Hardieトリロジー

Ken Bruen : Tom Brantシリーズ

例えばRay Banks : Cal Innesが21世紀ゼロ年代最重要ハードボイルドというのは私の個人的意見主張なのだが(もちろん同意見の人は多数存在する)、ケン・ブルーウンが21世紀初頭のハードボイルド最重要作家である というのは、日本のみで流通していない世界の常識である!我らがジャック・テイラーさんに先立ち、ブルーウンが世に著したのがこのTom Brantシリーズ!アイルランド出身のスコットランドヤードのでたらめ 暴力刑事Tom Brant!初登場時は部長刑事なのだが、シリーズが進むにつれて出世する。出世要素ほぼなさげに見えるが…。圧倒的な主人公Tom Brantなのだが、このシリーズかの87分署スタイルで書かれており、 Brant以外にも活躍したりかき回したりする魅力的なキャラクターも多い。
日本以外のミステリ界に衝撃を放った初期3作The White Trilogyに続く第4作『Blitz』がジェイソン・ステイサム主演で映画化。第1作『A White Arrest』を読んだところでまあ大丈夫だろうと思って観たら かなり深刻なネタバレをされて泣いた…。ケン・ブルーウンが日本で正当に評価されるまでにはあと3世紀ぐらいかかるので、ジャック・テイラーともども原書ですべて揃えて読むべし!あと、結局まだ第1作についてしか 書けてなくてホントにごめん…。

Adrian McKinty : Michael Forsythe/Deadトリロジー

エイドリアン・マッキンティのデビュー長編『Dead I Well May Be』から続くMichael Forsytheを主人公としたDeadトリロジー。日本的に無名な作家をまず優先したいというのと、これぐらいになればいくらか 読んでる人もいるだろうということから少し下の方に来てしまったが、気分的には最上部でアピールしたいぐらいの重要作。
昨年やっと第3作を読み終わったのだが、三部作を通してみることでエイドリアン・マッキンティという作家の現行のショー・ダフィシリーズにも通ずるのだろうと思われるテーマというべきものも見えてくる。 現在進行形ここから未来へ続くハードボイルド最前線の最重要作家、エイドリアン・マッキンティから目を離すべからず!

■Adrian McKinty : Michael Forsythe/Deadトリロジー

James Carlos Blake : Wolfe Familyシリーズ

巨匠ジェイムズ・カルロス・ブレイクによる麻薬カルテルがはびこる現代メキシコを舞台としたボーダー・ノワールシリーズ。#0『Country of the Bad Wolfes』は19世紀初めから20世紀初頭メキシコ革命勃発期までの 約100年に亘る、メキシコの地におけるWolfe一族の波乱の歴史。#1『The Rules of Wolfe』はそこから続くのかと思ったら、一気にさらに100年後の現代メキシコを舞台とした現代版ジェイムズ・カルロス・ブレイクって感じの (いや、本人なんだが)国境を目指す激アツアウトローアクション!#0はボリューム的にも倍近くて、内容も犯罪小説というよりも歴史小説という感じだったりもして少し大変なので、とりあえずシリーズ第1巻特別激安価格の #1から読み始めてみても大丈夫だと思う。実は#1では現代のWolfe一族のほんの一部分しか明らかにされないのだが、最後にその恐るべき一端の片鱗が姿を現す。#1を読んで気に入ったら(いや、こんなところ見に来る君なら 確実に気に入るが)そこから遡って、これから徐々にその真の姿を見せてくるであろうWolfe一族について知っておくために#0を読むのもあり。こちらの詳細については近日中…いや、とにかくなるべく早く必ずちゃんと書くので、 乞うご期待!…気長にしてみて下さい…。

Massimo Carlotto : The Alligatorシリーズ

イタリア産ハードボイルド。ムショ帰りの元ブルースシンガーのアウトロー探偵、通称アリゲーター。アウトロー探偵というと、アメリカのアンドリュー・ヴァクス(合掌。ご冥福をお祈りします。)のバークを思い浮かべる向きもあると思うが、そこにかなり濃いイタリア風味の味付けをした感じ。ゴッドファーザーあたりにも通ずるイタリアのアンダーグラウンドの仁義と非情あふれる人気シリーズ。
イタリアの出版社Edizioni E/Oが、英語圏への進出を目指しニューヨークに設立したEuropa Editionsより、第4作以降の英語版が販売中。作者マッシモ・カルロットは他にも映画化作品などの多い ベストセラー作家なのだが、一方でイタリア中を騒がせた事件で服役していたいわくつきの人物(詳細は下のリンクの記事に)。なんか日本も一昔かふた昔前はこのくらいの作家翻訳される国だったんじゃないかなあと思うんだけどねえ。

Eric Beetner : McGrawシリーズ

禁酒法時代から続く運び屋稼業のMcGraw一家。その2代目が荷とともに失踪。だが奴が荷を盗んで姿を消すはずはない。最高にヤバい初代ジジイが、裏稼業から足を洗っている3代目と、その息子のティーンエイジャーを 巻き込み、一家の汚名を晴らし、2代目を救出するために立ち上がる。甦る走り屋の血!McGraw一家になめた真似をしたらただじゃ済まねえぞ!
新旧含めた数多くの優れたクライム小説を発行し、突如ぐらいの感じで倒れた伝説のパブリッシャー280Stepsより発行され、絶版状態のままアンソニー賞にノミネートされた傑作!(現在はDown & Outより販売中) 数多くの著作があり、近年のアメリカのインディークライムノヴェルシーンの中心人物であるEric Beetnerについては、もっと読まねば書かねばというところなのだが…。とにかくこれについても書けていないのは 本当に申し訳ない。
McGrawシリーズは多分だけど、全2巻で完結。Beetnerについてはもっと推したいのでLars and Shaine三部作も載せとく。あ~、これも未読だよ。トホホ。
Eric Beetner作品Down & OutよりRough Edge Pressに移籍となったの気付かず、しばらくリンク切れてました。すんません。両シリーズとも以前よりお得価格の合本版で再版です。

■Eric Beetner : McGrawシリーズ / Lars and Shaineシリーズ

Rusty Barnes : Matt Rider/Killer from the Hillsシリーズ

自然保護観察員のMatt Riderは、ある事故をきっかけに地元で多くの犯罪に関わるPittman一家との暗闘に巻き込まれて行く。さして力もなく、応援もないど田舎の普通の男が、地元で幅を効かせる無法者たちの 暴力と恐怖に自らの生存を護るため立ち向かって行く。これぞカントリーノワールという珠玉作。
Rusty Barnesはクライム系ウェブジンTOUGHを主催するこちらもインディークライムノヴェルシーンの重要人物。第1作『Ridgerunner』はBeetner : McGrawシリーズと同じく 280Stepsから発行されていたのだが、読んでこれについては書かなければ、と思っていたところで280Stepsが倒れてしまった…。なんだか読んでから結構時間が経ってしまい、舞台になっている地名なども忘れてしまい 申し訳ない。その後、Down & Out傘下のShotgun Honeyから再刊。続編『The Last Danger』も刊行された。第1作『Ridgerunner』を読んだ時には、あまりに重い結末にこれシリーズになってるけど本当に続きあんのかなあ、 と思ったものだが無事出てよかった。というか早く読め。いや、その前にちゃんと書け。色々とごめん…。

■Rusty Barnes : Matt Rider/Killer from the Hillsシリーズ

Anonymous-9 : Dean Drayhartシリーズ

車椅子のヴィジランテ!Dean Drayhartは轢き逃げ事件に遭い愛する妻と娘を失い、そして自らも両足、片腕、腸の一部を失う。すべての轢き逃げ犯への憎悪から、残り少ない命を燃やしながら様々な手段を用い 罪を逃れて隠れている犯人をあぶりだし、不自由な生活を支える介護猿を相棒に自らの手で制裁を下す!その中で思いもかけぬ形で大きな犯罪組織を敵に回すことになり…。
女性作家Anonymous-9による衝撃の異色ヴィジランテアクション!…なのだが、大変残念なことに本当に才能あふれる作家なのだが、もうかなり前から作家活動を休止している。事情は不明なのだが。 こちらも前述のAnthony Neil Smithらと同じく伝説のBlasted Heath出身。現在のDown & Outに移籍する頃にはもう作家活動休止となっていたようなのだが、まだ作品が販売されている以上復活の可能性はあると信じる! このまま失われ、忘れ去られるにはあまりに惜しい作家・作品。このジャンルのファンなら絶対に読む価値あり。

■Anonymous-9 : Dean Drayhartシリーズ

Dave White : Jackson Donneシリーズ

なんかちょっと微妙な言い方になってしまうのだが、例えば一つのジャンルにおいて突出した作品・作家というのがその時代ごとに出てくるのだが、その陰に常にそのジャンル本体の流れを支えるような多くの作品が存在する。 あー、やっぱこの言い方そういうものを一段低く見るようで良くないなあ。ごめん。自分はそういったある意味普通の作品というような範疇に属するものが、ハードボイルド誕生時から連綿と続く、ミステリのフォーマットに 沿った形の私立探偵小説、PIミステリーというものだと思っているのだが、その2010年代ぐらいを代表するのがPolis Booksから出たDave Whiteら一連の作家だと考え、新世代ハードボイルドなどと読んでみたりしたのだよね。
Jackson Donne、ニューヨークの若き探偵。結構破滅型。学校教師をやりなが地道に作家活動をしてきた苦労人Dave Whiteは、やや注目された第1作の後、第2作を発表したところで一旦中断。その後電子書籍発展成長期に Polis Booksよりチャンスを得て、第3作以降を発表。現在2017年の第5作でストップしており、その辺の事情は不明なのだが、何とか頑張って続行して欲しいものである。こちらも第2作まで読んで第3作からがPolis Books版 本番だと思っているのになかなか進まなくて申し訳ない。本当ならこういったPIミステリーを3、ノワール・クライム小説を3、最も注目する作家などを3、復刻された旧作を3、アンソロジーを3、ホラーなど他ジャンルを3、ぐらいの割合で 読めればと思うのだが。ていうかとっくに10超えてるやん!だから読めないんだよ!

Alex Segura : Pete Fernandezシリーズ

マイアミの元新聞記者の私立探偵Pete Fernandezシリーズ。第1作ではまだ私立探偵ではなく、記者であった彼がある事件に巻き込まれ、最後に私立探偵に転職するというところで終わる。Dave White : Jackson Donne シリーズと同じくPolis Booksからの私個人の分類である新世代ハードボイルド一派のひとり。現在まで5作が発表されており、第4作がアンソニー賞にノミネートされている。
Jackson Donneとの共通点として、私立探偵という形へのこだわりや、やや地方へと向かう傾向があったハードボイルドの中で、ニューヨークやマイアミという大都市を舞台にしているところ。この辺なんとなく 長い目で見たハードボイルド、私立探偵小説の歴史への参加・継続という意思が感じられる。だが一方で両作品ともに主人公がルーザー傾向にあるあたりは現代的というところだろう。この辺の作家は仲も良く 一緒にシーンを盛り上げていこうという感じでそれぞれの主人公が共演する短編なども出ている。しかしこのPete Fernandezシリーズも2019年の第5作でストップしており、やっぱこの辺結局版元Polis Booksの 事情なのかなあ。何とかこの動き続けて行って欲しいところなのですが。
ところで2010年代頃のこのシーンでは、他にリー・チャイルド/ジャック・リーチャー寄りのアクション傾向の強そうなシリーズで人気のものもあるのだが、単に自分の中の優先度的にあまりきちんと見てなかったりもする。 そういう意思はないのだけど、結局かつての本格通俗のような悪習と同じ轍を踏んでるのかも、と今気付いてしまったので何とかそっちも遅ればせながらもちゃんと見とかなければ、と思ったり。Sean BlackのRyan LockシリーズとかJude HardinのNicholas Coltシリーズとかな。読むもの増やしてる場合か、というところなのだけど、実はその辺も結構持ってたりするんだよな。

■Alex Segura : Pete Fernandezシリーズ

Joe Clifford : Jay Porterシリーズ

ニューハンプシャーの田舎町で廃屋の整理の手伝いなどをして暮らしていたJay Porterは、ドラッグ中毒、ルーザーの兄が引き起こした厄介事から町を揺さぶる陰謀に巻き込まれて行く。
作者Joe CliffordはウェブジンOut of the Gutterのエディターなどとして長くインデイークライムシーンに関わってきた人。今は亡きSnubnoseとかから著作も結構あったのだけど、その辺は絶版になってるのも多い。 かつてはかなり荒れた生活をしていてドラッグ中毒で苦しんだ時期もあり、その経験が反映された作品も多いということ。第1作の最後では、町を去り、大きな街で調査の仕事に就くことになるのだが、その後のあらすじを ざっと見たところ通常の私立探偵シリーズとはまたちょっと違う重い展開になるようにも思われる。2014年の第1作『Lamentation』から始まり、2019年の第5作まで出ているのだが、全5作で完結なのかは不明。 このJay Porterシリーズも2010年代PIミステリーといった方面で、実は一番の重要作ではと思っているのだが、まだ第1作しか読めてなくて書けてもいなくてホントに申し訳ない。なんか読み進めたらかなり 色々言わなきゃならないことも増えそうな予感がある。
版元Oceanview Publishingについては、実はかなり昔前述のPolis Booksと同方向のパブリッシャーだと認識していたのだが、ちょっと手を抜いててよく見てなかったら…、うげ、あーかなりやばいのある…。 とにかく早急にMatt Coyle、Rob LeiningerあたりからOceanview作品読んで拡げていかなければ。あー、また読むの増えてる、増えてるー。

■Joe Clifford : Jay Porterシリーズ

Matt Coyle : Rick Cahillシリーズ

8年前、妻を殺した容疑で警察を追われ、現在は故郷の街カリフォルニア ラ・ホーヤで友人と共同経営のレストランの店長として働く主人公Rick Cahill。妻の殺害の容疑は一応晴れたが、事件は未解決のままで依然彼を第一容疑者 と思う者も多い。ある晩、レストランに現れた一人の女と続く出来事により、8年かかって築き上げた彼の生活、唯一の居場所は粉々に砕け始める…。
第1作では本の半分ぐらいまで起こっている事態が一人称主人公視点から全くわからないままひたすら追いつめられてゆく。作者の技量は確かなので読み進めるには問題ないが、読んでいるときには若干長すぎる気もしてくる。 しかし、後半になって展開が早くなってきたところから、いかにも普通の男という感じの主人公Rickの自身の周りの一切が信用できないという感覚を、それまでの経緯により非常に共感しやすく読ませる。あー、やっぱりこれについては もう少し詳しく書きながら説明すべきなんだが…。
物語の結末エピローグ部分で、彼がこの後私立探偵となることが語られる。少し先の展開を見たところ、このシリーズも最近のジャンルの傾向と同じく探偵である主人公がより深く事件に関わって行くものになるようだ。 比較的短命に終わるシリーズが多い中、今年最新刊9巻が出版されているように順調に刊行が続くこのシリーズは現在進行中作品としてちゃんと追っかけて行かねばならん。
第1作はアンソニー賞Best First Novel受賞。Oceanviewは結構頻繁にセールやってるのでお手頃価格の時を狙ってゲットすべし。

Jack Lynch : Peter Braggシリーズ

こちらは旧作。1981年から始まり全8作が出版されたJack LynchによるPeter Braggシリーズ。うちのブログでは割とお馴染みのBrash Booksより復刊されています。シェイマス賞の受賞歴もあるのだが、日本では 翻訳されていません。
Peter Bragg。記者出身の私立探偵なのだが朝鮮戦争での軍歴もあり、結構強面タイプ。あんまり情報がなかったんだが、こちら的には困ったときにホント助かるおなじみのThrilling Detectiveに結構詳しい情報が 載ってて助かった。(Thrilling Detective/Bragg)そちらにも書いてあるんだが、ハメットタイプ、かなりコンチネンタル・オプを思わせるキャラクター。 第1作では調査のために赴いた街でギャングの抗争が起こっていて、かの名作『赤い収穫』を思い出させたり。やっぱ日本に翻訳されなかったものにもまだまだいいのあるねえ。 Brash Booksは要チェック。前は第1~3作までの合本が『Bragg Volume 1』として出てあとはばら売りだったんだが、現在は全8作が収録された『The Complete Bragg』が 割とお手頃価格で出ているので、そちらがおススメです。ちぇ、『Bragg Volume 1』買っちまった。

■Jack Lynch : Peter Braggシリーズ

Ralph Dennis : Jim Hardmanシリーズ

こちらも旧作。というかこれ実は日本で2作翻訳が出ていたのだが、もー今やそんな本見たことも聞いたこともないという人がほとんどだろうと思えるし、そんな形で忘れられていいシリーズでは絶対ないので、 ここに取り上げ大プッシュします。
Jim Hardman。アトランタの元警官の無免許の私立探偵というよりはトラブル解決屋というところ。相棒は元NFLのスーパースターの黒人Hump Evans、どこへ行ってもHardmanよりモテモテ。1974年に第1作が発表され、 以降全12作が発行されたシリーズだが、永らく絶版になり忘れられていたところで2019年にBrash Booksにより復刻され、この時には多くのファンや作家から狂喜の声が上がる。更にBrash BooksはRalph Dennisの 失われた作品の復活に努め、なんと2020年には一度も出版されたことのなかった幻のシリーズ第13作を発掘し、出版する!この偉業は同年度のシェイマス賞のペーパーバック部門にもノミネートされた。 過去に翻訳されて忘れられてたなんて全然関係ナーイ!今こそHardmanを読むときなのは明らかだろう!こちらもBrash Booksは、そんな無茶な、ぐらいの全13作入り『The Complete Hardman』を発売中である。 こっちはまだ1作しか買ってないんで、そっちを買おうっと。
次々と恐るべき発掘をしてくるBrash Books!他にもジミー・サングスターや、マイケル・ストーンみたいな日本で少しだけ出た作家のもあるんだが、正直これ以上読まなければ なんないと強迫観念に駆られるものが出てくると怖いんであんまり調べてない作家もいたり。でも一方で創元から2冊で打ち止めになったカール・ウィルコックスとか復刻してくんないかな、と密かに期待していたり。 Brash Booksにヤバい動きがあれば、またお伝えしよう。

■Ralph Dennis : Jim Hardmanシリーズ

Max Allan Collins : Quarryシリーズ

ベトナム戦争から帰還後、あるきっかけから犯罪組織との仲介役である”Broker”のもとで殺し屋として仕事をしている主人公Quarry。長く続けているうちに”Broker”との関係にもぎくしゃくしたものを感じ始めた矢先、 ある田舎町での仕事を任される。付き合いの長い監視役の男の気のゆるみが気懸りになったり、ターゲットに関する違和感を感じながらも仕事は予定通りに遂行されるが、その直後、事態は思いがけぬ方向へと転がって行く。
YMCAに宿泊し、プールで泳ぎ、80年代風景の中を歩く、それまでの犯罪小説と一風変わった新しいキャラクター。70年代後半から80年代にかけ5作が刊行され一旦は終了するが、2000年代に入りHard Case Crimeにて再開され、 現在までに15作が出版されている。2015年には短命に終わったが、CinemaxにてTVシリーズ化もされた。
80年代にコリンズが日本に紹介された際、名前だけは伝わってきたが翻訳はされなかったコリンズのもう一つの代表作ともいえるシリーズ。エド・ゴーマン、ロバート・J・ランディージとコリンズあたりは80年代に登場した 50~60年代のペーパーバック黄金時代に深く影響を受けた作家として、同じく80年代のBlack Lizardとも関連して考えるべきだというのが私の考え。また、それは日本ではいい加減に投げ捨てられている50~60年代の犯罪小説や、「通俗」 ハードボイルド作品を再考すべきという考えにもつながって、また読まねばならんもんがさらに山積みされているところです。
コリンズ作品としては、やはり80年代に書かれ現在は同じくHard Case Crimeより復刻されているNolanシリーズも必読なり。

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