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2021年4月27日火曜日

The Colombian Mule -アリゲーター・シリーズ!非情と仁義のイタリア製ハードボイルド!-

今回はイタリア産ハードボイルド マッシモ・カルロット作アリゲーター・シリーズ作品『The Colombian Mule (原題:Il corriere colombiano)』。つってももちろんイタリア語は読めないんで、米国のEuropa Editionsから出ている英訳版を読みました。ちなみにこの『The Colombian Mule』という作品、米版では第1巻ですが、本国イタリアのシリーズ全体では第4作です。実は読み終わってずいぶん経って、今回初めて知ったのですが、私がいつどうやってそれを知ったかは最後まで読めばわかる…。

まずは私がどうしてこの作品と出会ったのかについてから始めよう。始まりはこのブログでお馴染みの、私がしょっちゅう名前を出す、現代ノワール最強作家にして無冠の帝王Anthony Neil Smith先生 である。昨年のいつ頃だったか忘れたが、Smith先生がツイッターで、イタリアのバッド・コップものが読みたいなあ、これとかこれとか誰か翻訳してくれないかなあ、と何回かに渡って呟いていたのを みつけた。エッ、イタリア物ですか?先生、自分も是非読みたいであります!なんか英語で読めるやつとかないっすか?とすぐに食いついたわけなのだが、その流れで知ったのが、この米国にも 作品が多数翻訳されているこのマッシモ・カルロットというわけ。
ところで当ブログでは邦訳作品のある作家か、当然名前の知られてるぐらいの人以外は基本めんどくさいんで英語、または本国表記のままにしてるんだが、 このマッシモ・カルロットがなぜ日本語表記かというと、映画化作品があり原作者名で日本語表記がすでに流通しているようなのでそんでいいかな、という理由です。
で、どれを読もうかな、とアマゾンのkindleでの作家名検索で出てきたのを色々と見ていて、件の映画化作品というのも考えたのだけど、またそっちも観なきゃなんない となって面倒くさいなあと思い却下。それで作者紹介などを読んでみると「アリゲーター・シリーズの作者として知られる…」みたいな感じに書かれてるんで、それならそいつを読んでみようと手に取ったのが、このシリーズ第1作(米版)『The Colombian Mule』というわけなのでした。
と、毎度のことながら結構前置きが長くなっちまってるんですが、さてそのアリゲーター・シリーズとはいかなる作品なのか?『The Colombian Mule』始まりまーす。

【The Colombian Mule】

今回はキャラクター紹介から始めましょう。まず主人公はMarco…ナントカ、通称アリゲーター。推定40代。若かりし頃はブルースバンドOld Red Alligatorsのフロントマンとしてアリゲーターの通称で鳴らしていたが、道を踏み外し7年のムショ務め。その間にすっかり声も衰え、音楽の道は諦めたが、刑務所内でその人柄と機転で囚人間の揉め事解決に力を見せ、出所後も非合法の私立探偵として犯罪事件・組織に関わる弁護士などからトラブル解決の仕事を請け負っている。表の顔は、イタリア ヴェネト州パドヴァ郊外にあるイカすブルースを聴かせるクラブLa Cucciaのオーナーである。
彼の本名についてなのだが、一人称の語りの中で自ら名乗る事はなく、他者から呼ばれることでわかるのだが、主にファーストネームの「Marco」で、ラストネームの方は、仕事相手の弁護士から2~3度呼ばれていたと思うのだが、どうにも見つかりませんでした。今回はナントカということで…。
そして彼には二人の探偵ビジネスに関わるパートナーがいる。
一人はBeniamino Rossini、通称Old Rossini。推定50代。現在も密輸稼業で荒稼ぎする昔気質のギャング。ここで言う昔気質というのは、なーんか日本の少女マンガみたいのに出てくるような 都合のいい”昔気質”じゃあない。まあゴッドファーザーに出てきたようなイタリア系ギャングを思い浮かべればいいかな。バラシた人間の人数だけブレスレットを着け、ジャラジャラいわせてるタイプのヤバい”昔気質”。今作中でもその数は増える。
そしてもう一人がMax the MemoryまたはFat Max。こちらも推定50代かな?1970年代、極左セクトの間で情報収集・操作に暗躍。最近特赦で出獄したばかり。情報収集・分析のプロフェッショナルだが、 住んでいるアリゲーターのクラブLa Cucciaの2階の部屋から出てくることはほとんどない。かつて彼が様々な追求から地下に潜っていた頃からの知り合いで、その頃は彼の恋人だったウルグアイ人の ストリートミュージシャンMarielitaが窓口となっていたのだが、それが原因で地元のマフィアに殺害され、Rossiniと共にその落とし前を付けたことから今のような関係になったとのこと。これはもしかすると米版では未訳のシリーズの前の方で語られた話なのかも。
アリゲーターとRossiniの二人が、手掛かりとなりそうなところに出向いたり、聞き込みをしたりと動き回り、Maxが部屋でネットから情報を得たり、見つかった情報を分析したり自分のコネクションに問い合わせたり、というのがこのチームの捜査スタイル。とりあえずは簡単な紹介が済んだところで、本編の方に参りましょう。

-ベニス マルコ・ポーロ国際空港 2000年12月26日-
南米コロンビアからのフライトで到着した青年が、麻薬密輸の疑いで逮捕される。彼は昔ながらの方法で、800グラムのコカインを呑み込んで密輸を謀っていた。
青年の名はGuillermo Arias Cuevas。故郷であるコロンビアの首都ボゴタを牛耳る犯罪組織の女ボスLa Tiaの甥っ子だ。だが、この密輸はLa Tiaの手引きによるものではなかった。
ボスの縁者であるにもかかわらず、あまり大きい仕事を任せられず組織内での地位を上げられないことに業を煮やしていたGuillermoだったのだが、ある日出会った謎のイタリア人にそそのかされ、組織を通さず単独でイタリアへのコカインの密輸に乗り出したのだった。一年で最も混雑する時期であろうクリスマス近辺を狙ってイタリアへやってきたが、空港を出ることすらできずに逮捕されてしまったという次第。
Guillermoの逮捕はただちにボゴタのLa Tiaに届く。Guillermoの友人を呼び出し、事情を詰問した後、配下を連れLa Tia本人がイタリアへと向かうことになる。

ここまでがプロローグ。そしてこれ以降はアリゲーターの一人称の語りとなります。
本編はまず、アリゲーターがクラブLa Cucciaで依頼を持ってきた弁護士Bonottoと会うところから始まる。Bonottoとは長い付き合いだが、読者への自己紹介としてテーブルに運ばれてきたのは、その名もアリゲーターというカクテル。カルヴァドス7にドランブイ3、大量の氷を入れてグリーンアップルのスライスを添える。La Cucciaのバーテンダー考案のオリジナルカクテルだそうである。
ちなみになんかアリゲーターってカクテルありそうだな、と思ってちょっと調べてみたところやっぱ既にあり、レシピはメロンリキュールとオレンジジュース1:2に氷を入れてステアということ。 札幌の元バーテンダーの方のCocktail Catalog GENUINEという沢山のカクテルのレシピを紹介しているサイトで教えてもらいました。 (カクテルレシピ:アリゲーター)有難うございました。

Bonottoの依頼は、ドラッグ密輸の疑いで逮捕されたNazzreno Corradiという男を救うのに手を貸して欲しいということ。
だが、アリゲーターにもルールがある。俺がドラッグがらみの仕事は引き受けないのは知っているだろう。
奴は無実だ。Bonottoは言う。奴も昔は銀行強盗などやってきたが、60の今では美術品の密輸しかやっとらん。…んー、まあそういう世界の話ね。
Corradiが逮捕された経緯はこうだ。午前2時、彼が友人とポーカーをやっているところに聞き覚えのない声の主から電話があった。彼の愛人、コロンビア人のVictoriaが倒れ、イェーゾロのホテルにいるので助けに来て欲しいとのこと。彼女の携帯に電話しても繋がらず、とにかくCorradiはその場所へと向かった。ホテルのドアをノックすると、見たこともない男が現れ、彼に逃げろ、とスペイン語で叫ぶ。Corradiはわけがわからず、ホテルの従業員を探そうと振り返ったところで警官隊が現れ、彼を逮捕したというわけだ。
ホテルの部屋にいたのは、最初に登場した空港で逮捕されたコロンビア人Guillermo。警察は彼を尋問し、彼に密輸を依頼したイタリア人を逮捕すべく、Guillermoを指定された受け渡し場所へと赴かせ張り込んでいたというわけだ。CorradiはGuillermoがコロンビアで会ったと証言した男とは似ても似つかないが、警察はそれを聞き入れようともしない。
事情を聞いたアリゲーター達は、まず自分達による下調べでCorradiがドラッグ密輸に関わっていないと確信した後、暗黒街での捜査を始める。当初はCorradiが無関係であることを証明するのはそれ程難しくはないかと思われたが、イタリアに上陸した女ボスLa Tiaの介入もあり困難な事件へと様相を変えて行く。
Guillermoにドラッグを運ばせたイタリア人は何者なのか?そしてCorradiは何故罠にかけられたのか?

この作品、及び恐らくはシリーズ全体の方向性を表す言葉として、タイトルにも使用した「非情と仁義」というのが適当だと思う。
彼らチームのスタンスとして、警察及び司法関係とは徹底して距離を置く。それは彼らがアンダーグラウンド社会、犯罪者側に属する人間だからである。そしてその捜索、及び司法機関から彼らの存在・痕跡を隠すためならいかなる非合法手段も選択する。
そして、彼らの住む世界には彼ら自身の掟がある。彼らが従うのは一般社会の法ではなく、アンダーグラウンド社会の掟・仁義だ。この物語の最終局面でもそういった暗黒社会の仁義が大きな意味を持ってくることになる。
そのチームの中で、実は主人公アリゲーターが一番歳も若いこともあってか、なんというか一番常識的というか、一般社会に近い感覚であったりもする。
「なあRossini、さっきあの女の頭ぶん殴ったのはさすがにやりすぎじゃねえか?」
「何言ってやがる。あんな海千山千あのくらいしなきゃ何にも聞き出せねえよ!」
という具合。そして物語の中で成される非情な決断や、暗黒社会の仁義の厳しさについて疑問をさしはさむのも主人公アリゲーターなのだが、大抵の場合事態は非情と仁義の方向へと動き、決断される。これはそういった物語である。

タイトルの『コロンビアのロバ』は説明するまでもないと思うが、いつ頃の話かは知らんがかつてロバの腹に麻薬など違法品を入れた密輸手段があり、そこから麻薬を飲み込んで国境を渡る者を犯罪隠語でロバ(ミュール)と呼ぶというところから。
コロンビアからのミュールの入国に始まるこの作品を読んで感じたのは、かつては最大の悪人輸出国だったイタリアが、 今では結構輸入超過ぐらいの状況になってきていること。ドラッグの流入や、風俗産業向けの女性というのは日本でも多く見られる現象だろう。ちなみにこの物語の鍵を握るコロンビアに現れた謎のイタリア人はそもそもは東京の「赤線地帯」へ送る女性の斡旋のためにコロンビアに入国していたのである。

この作品を読んで私が連想したのは、我が国の木内一裕である。以前書いた時、なんか見ようによっては木内氏がチャンドラーとかを読んでいないと言っているようにとられかねない書き方をしてしまい、随分失敬なことなのでちゃんと自分の意図を説明しなければとも思っていたのだが、この機会にやっておこう。例えば、日本のハードボイルド小説というのはかなり多くの部分がある意味アメリカのそれのスタイルの模倣である。それは、そもそもの出発点がアメリカのハードボイルド小説を読んで自分もそういうものを日本で書いてみたいというところだからという結果で、そういう作品にも優れたものは多いのだし、そのことを批判するつもりなど毛頭ない。だが木内一裕の作品はそれらとは少し違って見える。日本の伝統的、というには少しスパンが短いかもしれないが、戦後でもないのか、多分1960年代以降ぐらいから数多く作られてきた、多くは映画であるのだろう日本製の クライムストーリーの、最も良質な部分をベースにし、そこにアメリカ由来の私立探偵ものの型を乗せたのが、木内一裕のハードボイルドではないかと思う。つまりチャンドラーを読んでいなかったとしても書ける、チャンドラーを目指したりしないハードボイルドだ、ということを言いたかったのである。もしかして誤解した人がいたなら、こちらの言葉足らずで申し訳ない。まあ多分木内氏なら特別そういうものは読まん、とか言う主義でもなかったらチャンドラーぐらいは読んでるだろうし、特に自分の書きたいようなもんじゃねえなあ、と読んですぐ捨てちゃったりしててもそれはそれでアリだろう。
いや、長々と木内先生へのお詫び文を書いてたんじゃなくてさ、私が言いたかったのは木内一裕作品は、時に前述のようなアメリカ物に深く影響された作品がそうであるような、ある意味エクスキューズとしての「和製」ハードボイルドではなく、純正の和製ハードボイルドだということだ。 言っておくが真にそう言えるものを創り上げることはそれ程生易しい事ではない。てめえハードボイルドを名乗るんなら少しは海外のもんも読んで勉強しろよ、と言うしかないクソ作品も山ほどあるし、ハートボイルドなんてインチキ便乗商法なんてのは言わずもがなだ!それゆえに本当にそれをいとも簡単にあっさりと自分流にやってのける木内一裕という才能を私は深く尊敬するのである。あと念のために言っとくが良質なクライムストーリーと言ったのの「良質」は阿呆な権威筋指定みたいなもんでは絶対ないからね。
そして、この作品、アリゲーターシリーズも、木内作品がそうであるのと同様に、純正のイタリア製ハードボイルドなのだ。それこそがここで随分回りくどく遠回りになりながら木内一裕を持ち出してきた理由である。世間のトラベル女子のおしゃれイメージなんてさっぱりわからんけど、我々のイメージするイタリアってあるだろう。あの悪くて味の濃いやつ!ここにあるのはそのイタリアだ! これこそがアメリカのハードボイルドのスタイルを使い、我々のイメージするあの悪くてエグイイタリアをやった純正のイタリア製ハードボイルドだ!我々の読みたかったイタリアがここにあるぞ! おしゃれ女子お断り!イタリア、と聞いて私のように反応してしまった人には絶対おススメの伊製ハードボイルド、アリゲーターシリーズなのでした。絶対読むべし!
あっ、ついでで思い出したから書いちゃうけど、 この間晩飯食いながらぼんやりついてるTV観てたら、なんかインテリアの番組かなんかで「北欧風インテリア」とか言ってて、自分的には北欧のインテリアって、なんか今にも消えそうな裸電球一個しか点いてない、行ったら絶対帰ってこられなそうな地下室みたいのしか思い浮かばなかったんだけど、床は土のまんまね、そういう病気の人って私だけじゃないよねえ。ああ、大きく頷いてる人たちがこの近辺だけは大勢いる気がするよ。よかった。

作者マッシモ・カルロットは、かなり特異な経歴の持ち主でかなり有名らしいので、知ってる人いるかもしれないけどここで書いておきます。 1976年、彼が19歳の時、25歳の大学生Margherita Magelloが59回も刺され殺害され、その殺人事件の容疑者となる。彼はただちに逃亡。 3年後メキシコで逮捕されてイタリアに送還され、その後は刑務所暮らし。懲役18年の刑が宣告されたが、彼はあくまで無罪を主張し、法廷闘争を続ける。 判決は翻ることはなかったのだが、1993年に恩赦により出獄する。実際のところはかなり状況証拠で、それ程堅固な証拠は見つかっていなかったらしい。とりあえず彼は現在も無罪を主張しているそうである。
そして1995年、そんな自らの経験を元にした半自伝的な作品『Il fuggiasco』で小説家としてデビュー。以来30作ぐらい(イタリア語読めんのでいまいち曖昧…)のクライムジャンルの作品を発表しているイタリアでは結構売れっ子の作家である。デビュー作は2003年に映画化され、『逃亡者』というタイトルで、日本でも観ることができる。 映画化作品としては、2001年の『Arrivederci, amore ciao』が2005年に『グッバイ・キス 裏切りの銃弾』として、その他に2004年の『L'oscura immensità della morte』が2015年にインドで『Badlapur』として 作られてるんだが、後者は日本で観れるのかは不明。なんか一応日本語のウィキもあるんだけど。
アリゲーターシリーズは、彼のデビュー作と同じ年、1995年に第1作が出版され、現在まで10作が刊行されている。うち、2007年に出た第6作がグラフィックノベル。とりあえずアマゾンで検索してみたら 意外と簡単に見つかったな。ちょっと気になるけど、結構お高い…。むむむ。カルロットはこの他にグラフィックノベルを3冊手掛けている。前にあのストックホルム三部作のイェンス・ラピドゥスが 一冊グラフィックノベルを手掛けてるんだけど、入手も困難で正体不明というのも書いたんだが、あれも確かイタリアだったろ。なんか一時期というか今でもやってるのか知らんけど、現役のノワール作家を起用してオリジナルのグラフィックノベルを出版するという動きがイタリアにあったのかもしれん。うらやましい。ヨーロッパのコミックもだんだん手近になってきている感じだけど、イタリアはまだまだ遠いみたいやね。
ちなみにアリゲーターシリーズの英訳版はあとにも書いたけど第4作から始まり、最新の第10作まで。詳しくは最後の著作リストを参照のこと。
英語版の版元Europa Editionsは、調べてみたらイタリアの出版社が英語圏への進出を目的に2005年にニューヨークに設立した出版社だということ。現在までにイタリアのみならず世界30か国に及ぶ作品を出版し、日本からも川上未映子や川上弘美らの作品が出版されている。2020年にはなんと年間40作品もの出版を成し遂げたということで、これからもかなり期待できそうな感じで英語圏以外の知られざる作品を出してくれそうですな。とりあえずは中に「World Noir」ってカテゴリがあり、ここ調べてみると思いがけないのが見つかるかも。なんかまたしても注目必至のパブリッシャー見つけちまったよ。どうしよう。

なんか名前を出すばっかりでちょっとご無沙汰になっているAnthony Neil Smith先生についても今回は少し。実はSmithさんの作品もその後2冊読んでるのだが、全然書けてなくて申し訳ないっす。 ひとつは前々から何度も名前を出してるCastle Dangerシリーズの1巻『Woman on Ice』。舞台は夏は観光地として賑わうミネソタ州ダルースの殺伐とした冬。ある事件をきっかけに二人の主人公が この地に隠された暗黒に巻き込まれて行く。一人は女装趣味の強迫観念に苛まれる刑事。もう一人は地元の良家に生まれるが家系ともいえるマチズモへの強迫観念に苛まれる元兵士の青年。 どっちも強迫観念に苛まれてるというSmith先生じゃなきゃ操れないキャラクターコンビ!いや、なんか問題あって書かなかったんじゃなくて、ホント面白かったんだけどなかなか書けない時期に 読んでしまったので…。まあこれ続きもんで全2巻なので、次読んでから頑張ろうと思いつついまだに放置…。すんません…。
もう一つは英国 Fahrenheit 13より昨年発売された現在最新作の『Slow Bear』。ある事件で片腕を失い退職したノースダコタの居留地の元警官のネイティブアメリカンのルーザーSlow Bearが 主人公というまたしてもSmith先生ならではの作品。こちらも期待に違わぬ素晴らしい作品だったのですが、こちらも出版されて間もなくぐらいに続編についてアナウンスされるという次第で、 続き物。とりあえずひとつの区切りはついて終わってるんですが、これからという感じだったりもするので、続編出てからかなあと思って保留になっとります。続編は今年の秋に出版の予定。
それからあのBilly Lafitteの第5作についてなのですが、こちらは前にも書いたかもしれないんだけど、書き始めてみたものの行き詰って現在は中断とのことです。私もいつまでも貧乏性 振り回してないでそろそろ第4作読まなければというところなのですが、Billy Lafitte、あまりに好きなんでまた『Yellow Medicine』から再読しようかなあ、と時々思ってたりする。
というとこなんだが、実はつい先週、Smith先生には大変つらい出来事が。もう随分前に終わってしまったあの楽しいブログの頃から、Smithさんの傍に常に控えていた相棒、愛犬のHerman君が先週亡くなられたそうです。 詳細は明らかには語られていませんが、病気で手の施しようがなく安楽死ということになったようです。最期の日にはSmithさんのツィッターに沢山の思い出の写真が次々とアップされ、涙なしには 見られませんでした。犬好きのランズデールや、スウィアジンスキーを始めとする多くの作家からも哀悼のメッセージが送られていました。ご冥福をお祈りします。


今回はこんな感じでイタリア製ハードボイルド マッシモ・カルロット『The Colombian Mule』について書いてみました。これを読んでみたいという人結構いると思うので、これについては 何とか早く書かんとと思っておりました。うーん、そのへん考えるともっとストーリー紹介した方が良かったんかなと思ってしまうのだが、一方であんまりネタバレしたくないんだよなあ。 読んで話分かってる側からすると、この先のこれ書くとこの辺まで見えちゃうとか考えてしまうのだよねえ。まあ世間的には、イタリアのハードボイルド?それ読めんの?じゃあ絶対読む! と内容も確認せずにひっつかむワシのような変人ばかりではなかろうからねえ。しかし例えば「イタリアでベストセラー!○○万部突破!」なんて帯に書いてあっても、そもそも日本のベストセラーに 一切関心のないワシらの心は動かんよねえ。何気に言い足りないようなところもあるんだが、ハードボイルドファンならちょっと毛色の違ったもんとして絶対おススメのアリゲーターシリーズです。 Europa Editionsにも注目!なんか面白いのめっけたらまたご報告いたしますんで。ではまた。

※すんません。下の著作リストを作ってて米版と伊版を照らし合わせているうちに、やっと実は今作がアリゲーターシリーズの第4作であることに気付きました。米版はここから始まってて第1作に なってるので信用してて気付きませんでした。ずっと思い込んで書いてた本文の方もあとからなるべく修正したのだけど、直し切れてなくて混乱してるところがあったらごめんなさい。 アリゲーターシリーズ英訳版は正確には第4作から始まり、グラフィックノベルの第6作を飛ばして、最新作までが英訳されています。著作リストについては本当は全作品を掲載すべきだとは思うのですが、 イタリア語が読めないのでちょっとややこしくて、アリゲーターシリーズ以外は英訳版のみ掲載しました。下のアマゾンのリストも英訳作品Kindle版のみとなっています。(アリゲーター最新作『Blues for Outlaw Hearts and Old Whores』のみ日本ではKindle版未発売)
あと、イタリア語版のカルロットのウィキペディアではアリゲーターシリーズ第9作『Per tutto l'oro del mondo』が『ワンピース』劇場版第1作のイタリアでのタイトルと同じだったため、 そっちにリンクしてしまっているのですが『ワンピース』とは全く関係ありません。リンク開いてビックリしたわ。

■マッシモ・カルロット著作リスト
●アリゲーターシリーズ
  1. La verità dell'Alligatore:1995
  2. Il mistero di Mangiabarche:1997
  3. Nessuna cortesia all'uscita:1999
  4. Il corriere colombiano:2000 英訳:The Colombian Mule:2001
  5. Il maestro di nodi:2002 英訳:The Master of Knots:2002
  6. Dimmi che non vuoi morire:2007 (グラフィックノベル)
  7. L'amore del bandito:2009 英訳:Bandit Love:2010
  8. La banda degli amanti:2015 英訳:Gang of Lovers:2015
  9. Per tutto l'oro del mondo:2015 英訳:For All the Gold in the World:2016
  10. Blues per cuori fuorilegge e vecchie puttane:2017 英訳:Blues for Outlaw Hearts and Old Whores:2020

●Giorgio Pellegriniシリーズ
  1. Arrivederci amore:2001 英訳:The Goodbye Kiss:2006 映画”グッバイ・キス 裏切りの銃弾”原作
  2. Alla fine di un giorno noioso:2011 英訳:At the End of a Dull Day:2013

●英訳作品
  • Il fuggiasco:1995 英訳:The Fugitive:2007 映画”逃亡者”原作
  • L'oscura immensità della morte:2004 英訳:Death’s Dark Abyss:2007 映画”Badlapur”原作
  • Nordest (Marco Videttaと共作):2005 英訳:Poisonville:2009


●Giorgio Pellegriniシリーズ

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