Translate

ラベル Mulholland Books の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル Mulholland Books の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2025年7月15日火曜日

Jordan Harper / Everybody Knows -ジョーダン・ハーパーのL.A.!"誰もが知っている"ハリウッドの暗部!-

今回はジョーダン・ハーパーの『Everybody Knows』。2023年にMulholland Booksから出版された、ハーパーの長編第3作です。

確か2022年頭ぐらいのどっか、コロナ禍から色々回復し始めたころ、2022年9月にSimon & Schuster UKから出た『The Last King of California』と同時に出版がアナウンスされたため、どっちが先に書かれたかわからないかも、 ぐらいのことを書いていたが、読んでみれば、まあ出版順で間違いなかろうなという感じ。その辺については後述するか。
前作『The Last King of California』では、同じカリフォルニア州でもやや辺境の森林火災が押し寄せてくるあたりだったが、今作の舞台はLA。ハリウッドの芸能界の闇を動く二人の男女が主人公となる。
ハリウッド芸能界で日々起こる、様々なスキャンダルや揉め事。それらをもみ消し、すり替え、調停する、弁護士事務所を中心に様々な役割に枝分かれした巨大組織。二人の主人公はそれぞれ別の枝分かれしたセクションにいる。
ひとりはMae Pruett。主に広報関連担当の女性。問題発生の際に、記事・報道が出る前に交渉を行い、当事者のイメージを損なわない方向へと誘導する。
もうひとりはChris Tamburro。元刑事の男性。ダーティーな噂を売る密告屋への対処など、腕力が有効な場に赴く。
かつて短い期間に関係があったが、現在は別々の道を進む二人。だがある事件に関係し動くうちに、二人の道は再び交差し始める…。

Everybody Knows


Mae / Chateau Marmont
ロサンゼルスは燃えている。
何処かの病質者がホームレスのキャンプを焼いている。今夜は5号線近くのロス・フェリズにあるテント・シティ。炎はグリフィスパークまで広がる。
Maeはシャトーマーモントの秘密の出入り口の外で待っていた。サンセット・ブールバードを行き交う旅行者たち。彼らはサンセット・ストリップがキャンプファイアのような臭いがするとは思わなかっただろう。
Maeは、Danからの連絡を受け、あるスタンダップコメディアンとのデートをキャンセルしてここにやって来た。
Danからのメッセージは「Hannah シャトー ASAP」。続いてHannah Heardの新しいアシスタントの電話番号。Danからのメッセージはいつものように暗号めいている。

シャトーマーモントの秘密の入り口は、プライベートコテージ群の並ぶ洞窟へと、直接続いている。
グリーンクロスのドアが開き、アシスタントの女性が迎える。
「あなたが広報担当?」アシスタントが言う。
「その類いよ。彼女のところへ連れてって」

Hannahのプライベートコテージで、Maeは彼女と対面する。フーディーを深く被り、大きなサングラスを掛けたお馴染みのファッション。
「サングラスを外して、なぜ私がここに呼ばれたか話してくれる?」
Hannahはサングラスを外す。彼女の左目は紫に変色し割れたプラムのように腫れ上がっていた。
「撮影開始時間は?」
「AM4時にメイク」
「クソッ」

スキャンダルで地に堕ちた彼女のイメージ回復へのストーリーは慎重に作り上げられてきた。6か月のリハビリの後のインタビュー。健康的なイメージの頒布。そして明日からはドラマ撮影が開始される。
彼女の目はそのすべてを台無しにする。

MaeはHannahからその経緯を聞く。
Hannahの旅の流れはこういうもの。プライベートカーによりサンタモニカ空港へ行き、プライベートジェットに乗りフランスのどこかのプライベートの着陸地へ。50歩歩いてヘリコプターへ乗り換え、国際水域に浮かぶ100フィートのクルーザーへ。 そしてそのクルーザーがクライアントの待つ三階建てのメガヨットへと彼女を運ぶ。
不確かな噂として囁かれる、大金持ちが美女を侍らせる海上パーティー。だがそれは実在する。
「あいつは自分のことを如才ないとか思ってたんだ。あいつはあたしを撮ろうとした。…つまり、ヤッてるところを。それであたしはあいつの電話を窓から海に捨ててやったんだ。それで…」

段取りを終えたMaeは、シャトーマーモントのバーで結果を待つ。そこにDanから電話が掛かって来る。
「彼女の犬ってわけか?」心底楽しんでいる声。
「じゃあ彼女アップロードしたわけね?」
それは2分ほどのビデオ。サングラスを掛けたHannahが愛犬Mochiとじゃれる。Mochiの突然の頭突き。そしてサングラスを外したHannahの目に痣。
「スタジオは既にビデオをリツイートしてる。撮影開始はAM6時からだ」

「月曜の仕事の後、予定はあるか?」Hannahについての会話の後、Danがそう言って来る。
「エクササイズのクラスぐらいかしら」
「じゃあ、飲みに行こう」
Danは彼女にとって、これまでで最も好ましい上司だった。彼はこれまで彼女を誘うようなことはしなかった。
「ポロ・ラウンジで。いいな?」
嫌な雰囲気中の嫌な雰囲気。ポロ・ラウンジはビヴァリーヒルズ・ホテルにある。ホテルバーで一杯。エレベーターひとつでカリフォルニアキングベッドへ直行。
「何の件で?」
「俺の輝かしい未来のためのグランドヴィジョンを共有して欲しくてね。すなわち君の」
「分かったわ」不安な気持ちを抱えながらMaeは承諾し、電話での会話は終わる。

Chris / Mid-Wilshirer
Britのアパートは、カタログからの写真のようだが、場末の洗濯屋のような匂いがした。ビー玉でいっぱいのガラス瓶、アンティーク・トイがまさに、この全ての役立たずの出鱈目、という感じで陳列されている。チンケで安っぽいスローガンが でかでかと書かれた額入りのポスターがそこら中に掲げられている。「笑い続けて生きよう。君だけのマジックを作ろう。パースピレーションはインスピレーションを引き出す」リングライトと三脚がそこら中に。Britの世界の全てが まさにここに。

Chrisは明らかなその世界の真ん中に明確な侵入者として立っていた。41歳。オフェンシブラインマンタイプの大男。3XLのトラックスーツに身を包み。
彼は他の誰かの腕の拳だ。
携帯をチェックする。Patrickが10分前に、Britがリトル・トーキョーのバーを出たと連絡してきた。奴が戻るまでもう10分。
暇つぶしに部屋を探し回り、見つけたドラッグと現金をポケットに入れる。
そしてカウチに腰かけ待つ。
やがてホールに足音が響き、鍵がもたつきながら差し込まれる音が聞こえる。
ドアが開き、コカインに酔った眼の痩せたチビ助、Britが入って来る。

Britはすぐに自分のアパートの中に立っている大男に気付く。「誰だよ、お前?」平然を装うが、声はついて来ない。
「さて」Chrisは言う。「お前がどこでしくじったか、話してやろう」
ChrisはBritに向かって歩み出す。Britは動かない。もはや逃げ場はないことは理解できる程度の頭は持っている。Chrisは横を通り過ぎ、ドアを閉める。
「お前はいつもと同じパターンでしくじった。欲をかき過ぎたんだよ」
「しくじったのはてめえの方だよ。見た目通りの間抜けなんだろうな。俺が誰だか知ってるのかよ?」
「ああ。多分お前はゴシップサイトに下世話な噂を永久に売り続けることができたんだろう。だがお前は欲をかき過ぎた」

BritはD級の有名人、リアリティショーやインスタグラムのインフルエンサー程度の友人を多く持ち、仕入れた秘密をこっそりと、タブロイド紙など金を出す相手誰にでも売りつけて来た。
Britは先月、Bリストの俳優、Patrick DePauloがコカインで鼻柱に穴をあけたという情報を、タブロイド各紙に売りつけた。
恐らく、BritはPatrickの父親が誰だか、調べようとも考えなかったのだろう。Patrickのブガッティと尽きることのないコカイン供給が、散発的なシットコムのゲスト出演で賄われていると思っていたのだろう。
Patrickの父、Leonard DePauloは、L. A.最大の民間警備会社、BlackGuardの所有者だ。
BlackGuardからの下請け業務。Patrickの父親は、通例家族関係の仕事に自社は使わない。そして弁護士Stephen Ackerに依頼し、Ackerを経由してChrisに仕事が来た。

「お前は売ったのが誰か調べるという宿題を忘れたのさ」
Britの頭の中で、何かが繋がる。「これはPatrickの件だな、そうなんだろ?」
「俺はクソみてえな話を売ったさ。それがなんだ?みんな噂してることだ。それで稼いで何が悪い?」
「あいつの親父が兵隊と殺し屋を飼ってて、お前が送られて来たってわけか、ああ?ならず者部隊の一員が?」
「俺はこれからお前を痛めつける」
「顔は勘弁してくれよな。明日撮影があるんだ」
Chrisは頷く。誰もショーを止めることは望まない。
ChrisはBritの肩を掴み、腹に膝を打ちこむ。もう一発。
Chrisの仕事は終わった。Britを痛めつけている間、彼は何も感じなかった。Britもそうだったかはわからない。

とりあえず二人の紹介的なそれぞれの第1章。こういう形で名前/場所という感じで章タイトルが入り、基本交互に入れ替わり続いて行く。Maeの方は年齢は入っていなかったが、32歳。
物語はMaeサイドから動き始める。
不安を感じながら、上司Danに誘われたバーに向かうMae。Danは彼女に、現在付き合っている相手はいるか、住んでいるところの間取りは、などを尋ねてくる。
Maeは、自分は上司とそういう関係になるつもりはないと、明確に告げる。
Danはこれは一つのカバーストーリーさ、と話す。俺たちがこういうバーで会っていれば、誰でもそういう関係と見て疑わない。
そしてDanは、巨額の富を得る計画があると匂わせる。自分たちの仕事の外で。
「全ての富の源は犯罪だ。聞いたことがあるだろう」Danは言う。

「一旦入ったなら抜けることはできない。話を聞いただけでも。知ることはすなわち参加することだ。考え直すことはできない。俺たちはこれを最重要機密保全で実行する」
「明日の晩、同じバット・タイム、同じバット・チャンネルで。俺はこのテーブルに座り、ドリンクを注文し、飲む。もしお前が俺の向かいに座るなら、すべてを話す。もしそうでないなら、これはなかったことになる。そして人生はこれまで通りに続く」
「お前は既にこの汚泥であらゆる汚れ仕事をやって来た」Danは続けて言う。「一度は自分のためにやってみてもいいんじゃないか」

翌日、Danはオフィスには現れなかった。アシスタントによれば、一日中のミーティングということ。Danの不在中も、厄介な件が持ち込まれる。
夕方、渋滞にイラつきながら昨日のバーへと向かう。道の先で何かの事故があったようだ。時間には遅れそうだが、電話はするなと言われている。

やっと着いたホテルの前の交差点では黒のテスラが歩道に乗り上げ、その周りに警察の封鎖テープが張られている。
Danは黒のテスラに乗っている。ビバリーヒルズの半分はそうだ。Maeは自分に言い聞かせる。
フロントガラスに銃弾が撃ち込まれた蜘蛛の巣。窓ガラスに血でペイントされたジャクソン・ポロック。ストレッチャーに乗せられブランケットがかけられた死体。
風がブランケットをめくる。
MaeはDanの側頭部から溢れ出た灰色の脳髄を見る。

Danの事件はスピード解決を見る。Danにカージャックを仕掛けた人物は、監視カメラにより特定され、翌日に発見、射殺される。
そして、ChrisはAckerと共に、BlackGurdのLeonard DePauloに呼ばれ、その事件の捜査を依頼される。
「Dan Henniganは多くの非常にセンシティヴなクライアントの情報に通じていた。もし彼の死亡事件に更なる話があるなら、我々はそれを知らねばならん。それで我々は警察と並行し、独自の捜査を行うのが好ましいと考える」
「私の元の警察関係のコネクションを使い、内部情報を探れと言うことですか?」
「その通りだ」
昔の同僚たちに会い、事件とその後の解決について詳しく調べるChris。だが、彼はその中に巧妙に段取りされた匂いを感じてくる…。

Maeは謎の陰謀めいた話を聞いた翌日のDanの死亡という事態を不審に思い、独自に密かに調査を始める。
Danの最近の女性関係を調べ、一人の女性について調べ始めるMae。
そしてそこで、思わぬ形でMaeとChrisの道は交差することとなる。

MaeとChrisは、過去にある若手アイドル俳優の過剰摂取による死亡事件で出会う。
お互いに飾らず本音で話ができるという相性を感じ、その後しばらく関係を持つこととなる。
だが、噓に囲まれた世界で本音で語れるという関係に、危機感を抱いたMaeからの申し出で、二人の関係は終わっていた。

偶然出会ってしまった二人は、とりあえず同行して調査を続けるが、そこである秘密を目撃する。
彼女たちの属する組織には不利益をもたらすかもしれないその秘密を、二人は協力して秘密裏に探って行くことになる。
そして少しずつ明らかになるその秘密は、二人に組織の外に出て、それに反する行動をとる決断を迫る形をとって行く…。

*  *  *

まあしばらく前ぐらいになってるあたりだと思うが、翻訳ミステリよりもう少し広範囲ぐらいのところの評論・レビュー界隈で、犯罪ジャンル作品に対して「よくある話」だの「ありきたりの設定」だのというようなレッテルを貼り、自分の見識だか何だかを ひけらかしたつもりで格好付けられると思っている阿呆連中がふんぞり返っていた。
これの意味は、実際の警察官が在職中絶対に遭遇しないような不可能犯罪でも、どこか世界の全く関係ないところで起こっていることになっている「スケールの大きい」国際謀略でもなく、誰でも様々なところで目にするような組織犯罪や ドラッグ関連などの言ってみればリアルで日常的とも言える犯罪を描いた作品ということ。ホントバカじゃないの?
それぞれの「現在」におけるリアルな犯罪を通じて社会を描くという形で進化してきたハードボイルド/クライムジャンル作品が、こんな愚物の小手先の格好付けによって踏みつけられてきたことは本当に腹立たしい状況で、しかもそれを始めたのが 団塊世代ぐらいのいい年をした爺連中らしいというあたりにも本当に呆れるんだが、その辺のことは一旦置いておこう。
この作品『Everybody Knows』は、ハリウッド芸能界のスキャンダル、事件を、裏から様々な形で情報操作し、イメージを保つために動く組織集合体を中心に描いた作品。
日々浮かんでは消える芸能界のスキャンダル、それこそ言ってみれば(上記のような経緯であまり言いたくないところもあるが)よくある話。Everybody Knows -誰でも知っている。リアルな犯罪を描くハードボイルド/ノワールジャンルの後継者として ジョーダン・ハーパーが新たに選んだ作品舞台が、このハリウッド芸能界というわけなのだ。
映画・テレビ業界で長い経験を持つジョーダン・ハーパーが暴くハリウッドの闇!なんて激安暴露本モードのコピーなんて、果てしなく願い下げだよん。

双方の第1章はなるべく作品の雰囲気が伝えられるようにやったつもりだけど、それでもかなりスカスカな気分。それぞれの目を通して見える風景・人物に対する短く断片的に語られる印象が、現在のL.A.やハリウッド芸能界の多角的なパースペクティヴで 見える風景なのだろう。
そしてほとんど端折ったその後のあらすじの中では、同じような視点でからによる彼女たちが属する組織・状況が描かれて行く。そして主に移動を通して見える簡潔だが詳細に描かれる様々なL.A.の風景。
なんかほとんど飛ばしてしまった、それらをモザイクのように組み合わせて作られた描写の方がジョーダン・ハーパーのスタイルの本質かとも思ったりする。

今作では、というより以前からもそうだったように思うが、主に車による移動の際には、その道順であったり風景などが、前述のように簡潔かつ詳しく描かれる。
それはビバリーヒルズに立ち並ぶ豪奢な邸宅群から、観光客の多く集まるブロードウェイ、そして河岸のホームレス・キャンプまでに及び、現在のL.A.全体を俯瞰する地図として描かれて行く。
そしてその地図は、同様にハリウッドの暗黒面を多く描写した、かのジェイムズ・エルロイのL.A.四部作、現在進行中の新L.A.五部作と時代を挟んで重なるものなのかもしれない、なんてことも考えたりする。

さて、最初の方で言ってた第2作、3作って話。前の『The Last King of California』は、カリフォルニア田舎方面を舞台として、主人公Lukeのビルディングロマンス的ストーリーがメインとなり、そこからCallieのストーリーが枝分かれしていくような形と なって、最終的には二人の主人公それぞれのという感じの結末に至る。
それに対し、この『Everybody Knows』は、最初から二人の主人公のストーリーが明確に並行する形で始まり、舞台は近年のハードボイルド/クライム作品の田舎・ローライフという傾向に連なる方向性だった前2作から、都市部であるL.A.中心部へと 移動している。
この辺から、様々な外的状況から出版日時が接近してしまっただけで、第2作として『The Last King of California』を書いた後に、この『Everybody Knows』が第3作として書かれたのだろうと推測される。まあゴチャゴチャ余計なこと考えず、 出版日時順で考えればいいんだろ、ってことなのだけどね。
ここから、おそらくジョーダン・ハーパーは、ハリウッド芸能界的なところは分からんけど、都市部であるL.A.を描くというような方向性で進んで行くのではないかという予想も出てくる。まああくまで予想だけどな。
そして上で書いて伝わってるのかやや不安な感じの、ジョーダンの文章・記述方向でのスタイルだが、なんかトラヴィス・マッギーからずいぶん遠くまで来たよな、というような視点もこれからハードボイルドジャンル作品を読んで行く上で 持つべきなのかな、というようなことも考えさせられたとも思う。

この作品の結末については、やはり結果的には巨悪と闘うという感じの方向に進んでしまったためか、前作『The Last King of California』のような爽快感はなかったかも。まあどういうのが正しいとかいう方向の押し付け的考えは心底嫌いなんで、 あくまで一つの感想として。
あとまあちょっと余計なことかもしれんけど、全68章に細かく区切られ、その中で前述のようにやや緻密ぐらいに主人公のいる場所について書き込まれたこの作品を、読後俯瞰してみると、なんかポワ~ンと、DVDとかの小さな画面が ずらっと並んだチャプター選択画面みたいなのが浮かぶんだけど。なんかこういうのもこれからジョーダン・ハーパースタイルのひとつってことになるのかもね。

ジョーダン・ハーパーが現在のハードボイルド/クライムジャンルにおいて、今後のシーンを先導して行くような重要作家の一人であることは、もはや言うまでもない。ここで長編第3作。まあまだ「初期作品」と言ったところに 属する段階だろう。ここからどんどんこの国の状況と共において行かれないために、ここまでの初期3作『She Rides Shotgun』、『The Last King of California』、『Everybody Knows』は必ず読んでおくようにね。

さてジョーダン・ハーパー最新情報なのだが、とりあえず第4作に関するアナウンスは現時点ではなし。なのだが、関連情報は二つ。
まず、現時点では進行中らしく実物は見えてこないのだけど、この作品『Everybody Knows』はコミカライズされ、Comixology Originals作品として出版されるとのこと。これしばらく前にジョーダンが自分のXで言うてたんで間違いの類いではないと思う。 Comixology Originalsは、現在はそれ自体が出版社というものではなく、インディーパブリッシャーや個人出版のものがそのブランドを通じて出版されるという形らしいんで、ジョーダンの個人出版という形で進んでいるのだろうか? いずれにしてもこの作品を120~50ページぐらいのコミックにまとめるのは少し難しそうだが。そちらについては実物が出たらコミック支店の方でやると思うので、その際にはこの中にリンクを付けますので。
そしてもう一つ、こっちの方が直近なのが、『She Rides Shotgun』映画版が8月に公開というニュース。これがあるんで早くやっとかなきゃとなってたんだが。監督ニック・ローランド、主演タロン・エガートンで、アメリカでは8月1日から。 日本で劇場公開というような情報はまだないみたいだけど、何らかの形では観れるようになるんじゃないかと思う。
そこで気になるのは邦題…。日本での翻訳出版の際の邦題は、いつの西部劇だよみたいな酷いもんで、二度と書く気も起らんやつだが、まさかそれが使われることはないと思うが…。ただ劇場公開にならなかった場合は、さらにひどく扱われて 割と最近やった『ドニーブルック』みたいな、これまた二度と書く気が起こらんぐらいの酷いバカタイトルつけられる可能性もあり。本当にシンプルに原題通り『シー・ライズ・ショットガン』でやってくれと祈るばかりっす。
トレーラーはこちら。面白そうっしょ?

原作出版の際に、助手席をショットガンとか言うの知らないってことで英国・日本とタイトルを変えられてしまい、こんなカッコイイタイトルを!と不満の多いジョーダン・ハーパーは、今回の『Everybody Knows』でも隙あらばぐらいに その普及に努めている。少なくとも犯罪小説ジャンルではかなりよく見るのだけど、なんか日本でもギャングスタラップみたいな経由で入ってきてないんかね?
ちなみに、途中で出て来た「同じバット・タイム、同じバット・チャンネルで」は、昔のテレビの『Batman』のエンディングナレーションの最後のお馴染みのセリフらしいけど、日本でもテレビ放送されたらしいこれを観ていた世代よりも、今では DVDやブルーレイのボックスセット持ってる人ぐらいのところぐらいでお馴染みなのかも。まあこっちの普及はいいよね…?

*  *  *

さて、最後にジョーダン・ハーパーと同時代というような、現在の米国のハードボイルドジャンルの重要作家の新作というあたりをいくつか挙げておこう。本当はこういう視点って常に必要なんだけど、どうせ日本の翻訳ミステリなんてところは、 青息吐息でなんか賞とったとか言うのを一個ずつ拾って来るのがやっとのうちに、この辺も全部途切れてわかんなくなっちまうだけが精々なんだし。
まず、S・A・コスビー。今年6月に新作『King of Ashes』が出ましたー。コスビーでももう出るか出ないかわかんないぐらいの状況なんだろな。確実に出るの年末の紅白クイズ合戦向けだけなんだろ。
そしてちょっと厄介なのが、ルー・バーニー。昨年11月に『Double Barrel Bluff』が出たのだけど、これ『ガットショット・ストレート』のシェイク・ブション・シリーズのまさかの第3作。もうこれやんないと思って油断してたんだが。 まあ2012年の第2作『Whiplash River』が出てないし、なんか賞みたいなとこにも引っ掛かってないので、バーニーももう出ないんでしょ。今年9月には新作『Crooks』も出るんで、早く読んどかなきゃ。まず『Whiplash River』最優先か。
続いてロブ・ハート。なんか『Assassins Anonymous』が翻訳出てるらしいんだけど、邦題調べる気も起きず。Assassins Anonymousシリーズ第2作『The Medusa Protocol』が6月に出ました。なんかSubstuckに書いてたの見ると、第3作も ほぼ完成してるらしい。ロブ・ハートについては、今は亡きPolis BooksのAsh McKennaシリーズからやろうと思ってたんだけど、もたついてるうちに終わってしまった…。今のところ再版についてのアナウンスなし。そろそろ出ないかな。
日本で出てないもんとしては、最近やって衝撃的だったGabino Iglesiasが今のところ2024年『House of Bone and Rain』が最新だが、そろそろ新作来るかも。
あとはBull MountainシリーズのBrian Panowich。新作『Long Night Moon』は来年予定だが、シリーズ4作早く追いついとかなきゃならんし。
パッと思いついたあたりこんな感じまでで申し訳ないんだけど、まだまだ掘れば出てくると思うよ。
なんかこの辺のクラスのやつとか、もしかしたら日本で出るかもみたいなの考えて後回しにして遅れてたりというようなところがあった。しかしもはやその可能性ほとんどなくなってるだろうし、翻訳ミステリ業界気持ち悪すぎて出ても一切見る気も起こらんしで、 もうすべて原書で読むことにしたわけだ。だが、ん~そうなってみると、この辺基本的には優先度の高いものばかりなんで順番もつけがたく、上記の感じで遅れてるのが多過ぎて、やや渋滞気味。持ってるけど翻訳出たから急がないでいいやとか思って後回しにしてた イーライ・クレイナーとかもう3作も出てたりとか…。なんか最近さっぱり思うようにはいかんけど、もっと書く量増やさなきゃみたいにしきりに言ってたのも、これが一因なんだろうと思う。今気付いたんだが。
とにかく片っ端から読んで、出来るだけ書いて行くつもりだけど、やっぱりどこかで個人的に優先度つける感じになるのかも。どこで線引きするかはわからんけど。何にしてもこういう「今」ってところを、常にこれがどこに位置するのか、 何処から繋がるのかを明確にして見て行くのは一番必要なことだと思う。結局、過去にも未来にも繋がるのは「今」で、そこから歴史が構成されて行くわけだし。
ただねえ、なんか自分ってどうしても知らないものやら正体不明みたいなもんにやたら惹かれる傾向みたいなもんがあって、こういう次第でここのところやや確実、鉄板ぐらいのところばかり読んでて、あーもうちょっと正体不明のもんを 読みたいなー、みたいなのが起こって来て、いくらか予定されてる既読のものの先でそういうものに流れて行ってる今日この頃です。なんか根本的にそういうメジャーなことをやるのに向いてないんだろ、わし。
そんなわけで、最新注目作品が出るか、それを押しのけて何か聞いたことも無いものが出てくるのかはその時の気分次第ぐらいだけど、とにかく自分的に面白い本について頑張って伝えて行きますので。


■Jordan Harper著作リスト

●長編

  • She Rides Shotgun (2017)
  • The Last King of California (2022)
  • Everybody Knows (2023)

●短篇集

  • Love and Other Wounds (2015)


●関連記事

Jordan Harper / The Last King of California -ジョーダン・ハーパー長編第2作!-



●短篇集

'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2018年3月21日水曜日

ジョー・R・ランズデール / Hap and Leonard -ハップ&レナード短編集!-

遂に私のブログにもハプレナ・シリーズが本格的に登場!つってもまだ本編ではないのだが。以前にこれは本編シリーズと版元も別だし、出しやすいからきっとどこかが出すよね!…と言ってたのだが一向にどこからも翻訳の出る気配のない、Tachyon Publicationsより2016年に発行されたジョー・R・ランズデールのハプレナ初の短編集『Hap and Leonard』であります!今回は、この作品集の感想を、ということなのだが、あらかじめ言っとくと、感想もくそもないよ!ランズデールでハプレナで面白くないわけがないじゃん!なんか小難しぶって重箱の隅を突いてケチをつけてミステリ通を気取ろうなんてのは阿呆のすること!つーわけで今回は絶品料理を食べに来たグルメレポーターよろしく、絶対に面白いに決まってるハプレナ短編集がいかに面白いかを語るのみであります。ハハハ、ご心配召されるな。我輩はメシを食う時間より作る方に時間がかかるのは不合理ではないかと屁理屈をこねるほどの理論派グルメなるぞ!泥船タイタニックに乗ったつもりで任せたまえ!

ではまずはこの短編集に収録の作品一覧から。

  • Hyenas
  • Veil's Visit (with Andrew Vachss)
  • Death By Chili
  • Dead Aim
  • The Boy Who Become Invisible
  • Not Our Kind
  • Bent Twig
  • Joe R. Lansdale Interviews Hap Collins And Leonard Pine
  • The Care And Feeding And Rising Up Of Hap And Leonard
以上のうち、「Veil's Visit (with Andrew Vachss)」「Death By Chili」の2作は早川書房の日本オリジナル短編集『現代短篇の名手たち 4 ババ・ホ・テップ / ジョー・R・ランズデール』に翻訳収録されております。「Hyenas」「Dead Aim」と「Veil's Visit」の3作は限定版として出版された中編で、この短編集が出るまでは結構レアな作品だったらしい。では収録順に作品の方を紹介していりましょう。

Hyenas : 2011年
酒場で数人の男と乱闘となったレナード。が、ほぼ一方的にレナードが相手の男たちをぶちのめして終わるのだが、その後その中の一人の男がレナードを訪ねてくる。あんたの腕を見込んで仕事を頼みたい。その男、Kelly Smithが言うところによると、自分の唯一の肉親である弟がよからぬ連中と付き合っている。どうもその連中はただのならず者ではなく、最近近くの銀行を襲った一味らしい。また新たな犯行を計画していて、今度は弟を運転手として使うつもりのようだということ。そもそもはレナードが酒場でぶちのめした男たちにこの仕事を頼むつもりだったのが、こんなことになってしまった。連中よりはるかに腕も立つし、信用できそうなあんたに弟を救い出してもらえないだろうか。そんな話を聞いては放ってはおけないハップとレナードはKellyに力を貸すことになるのだが…。

相変わらずのちょっと過剰ぐらいのユーモアとバイオレンスに満ちた中に常に変わらぬ一本筋の通った真実の正義の光る、いかにもハップ&レナードって感じの快作であります。いやー、またあんたらに会えて良かったよ。
えーっとここで遅ればせながら告白しちゃうのだが、私の以前の住まいで多数の書籍が神隠しにあっていたことは前回書きましたが、実はこのハプレナ・シリーズ翻訳版角川文庫全5冊もその中の一つで、引っ越しの際にやっと救出されたものだったり…。このハプレナ・シリーズに関しては本当に思い入れがあり、度々言ってる貧乏性で好きな本はなかなか読まなかったりする私が、比較的に出て早くに読んでいたシリーズなのだが、あんまり好きなのが仇になり、読み終わって本棚の中の特等席に置いたつもりが、その後の度重なる地殻変動で本その他が積み重なり本棚のその部分も埋没し、かれこれ10年近く行方不明となっていたというわけなのでした。まあそんなわけでハプレナ以外のキャラクターについてはかなり朧気になってしまっていて、ハップの彼女のブレットさんぐらいになっても、いたようないなかったような…ぐらいの状態になってしまっていたりする。本当はこんなに色々遅れなければ去年のうちぐらいに書く予定だったのだが、そのままやってたらかなり頓珍漢な感じになってしまっていたところだったよ…。
そんなよくわからなくなってしまっていたキャラの一人が私立探偵マーヴィン・ハンソンさん。この短編集でもかなり頻繁に登場するのだが、やっと発掘されたのをパラパラめくってみるとかなり初期から登場していたり。こんなのも思い出せないようではもう一度シリーズ通してちゃんと読み返さなければ。もちろん読み返す価値はあるどころか、繰り返し読まねばならん作品だろう、が、どうにも時間が…うむむ…。 で、そのマーヴィンさんなのだけど、この人実はランズデールの長編デビュー作である『Act of Love』の主人公だそうであります。そこまでに至る出版の経緯はよく知らんのだけど、とにかく2014年8月にGere Donovan PressからKindle版が発売されていて、その時にそれに合わせて出版されたのがこちら。
『A Bone Dead Sadness』という55ページの中編なのだけど、こちらマーヴィンが主人公で、その『Act of Love』の後日譚ということらしい。ハップ&レナードも登場とのことです。かれこれ2年以上ぐらいずっと読もうと思ってるのだけど、今に至るも届かず…。一体どんだけ読もうと思ってる本を積み上げてんだよ…。ハプレナコンプリートを目指す人はこちらも要チェックですぞ。
あと、ついでに告白しとくと、実は前述の『ババ・ホ・テップ』についてもここ3年ぐらい神隠しにあっていたり…。しかもそっちは貧乏性発動で未読だったり…。そんな状態でホントに時間があったとしても昨年末ぐらいにこれ書けたのかよ、と思ってしまうよ…。

Veil's Visit : 1999年
ドラッグ製造所と化した隣家に火を付けたかどで逮捕されたレナードのために、ハップはヒッピー時代に出会ったVeilという弁護士を連れてくるのだが…。

Death By Chili
ハップとレナードの友人の警官が悩む、殺害されたコックと消えた最高のチリのレシピの謎にレナードが挑む!

こちらは翻訳も出てる作品なので、2作まとめて軽く。
「Veil's Visit」については、こちらの本では「兄弟分のアンドリュー・ヴァクスとの合作じゃけんのう」ぐらいのことしか書かれていなかったが、この度発掘された『ババ・ホ・テップ』の解説を読み、ヴァクスが「ウチもランちゃんのハプレナが書きたいっちゃ~!」と電撃を送り続けて実現した合作であることを初めて知りました。後半法廷シーンが章を短く分けるヴァクスのスタイルで書かれていて、前半後半をそれぞれに書いたのをつなげたのがまるわかりだったりするところに二人のおおらかさが現れた楽しい合作ですね。あと、アンドリュー・ヴァクスについても語らねばならんところはあるのでいつか必ずやります。ところでランちゃんってどういうキャラだったかどうも思い出せない。ヴァクスの虎ビキニも日本版吹替平野文さんの口調も思い浮かぶのだけど…。
「Death By Chili」は密室トリック。かのエイドリアン・マッキンティが英ガーディアン紙に発表した密室トリックベスト10にも選ばれた…、とか無駄に他のジャンルのファンの人を刺激するデマは止めろって。『ババ・ホ・テップ』の解説に初出というのが書いてあったのだけど、ご本人によると、そもそもは『バッド・チリ』のプロモーションの限定版オマケだったそうです。

Dead Aim : 2013年
マーヴィン経由で、別れた夫からのストーキングに悩む女性のボディーガードを請け負ったハップとレナード。下調べの後問題ないと判断し、仕事に取り掛かるが、案の定思いがけぬ展開に…。

事件とその背景が二転三転、本当に悪いやつは誰なのか?最後にはハプレナにふさわしい敵が登場しますぞ。
ハップが訓練とかではなく、先天的な才能で銃の扱いが上手いという設定は、この短編集でもたびたび登場して、確か割と読んだのが最近の第1作『Savage Season』にも出てきたように思うのだけど、レナードってこんなにクッキー・モンスターぐらいにバニラクッキーが好きだったかな?と、うーん、やっぱり読み返さないとね。
ちなみにここまでの中編3作はVeil's Visit(邦訳題「ヴェイルの訪問」)がCaptains Outrageous(邦訳題『テキサスの懲りない面々』)の前で、後の2作はVintageからの未訳の2長編の後に出版されています。

The Boy Who Become Invisible
ハップの子供時代の話。仲の良かった友人のJesseだったが、家が貧しく、ある時を境にクラスの中でいじめの標的となり、ハップも彼とは距離を置き始める。やがてJesseはクラス中から無視され、存在しない人間として扱われ始め、そしてある日、悲しい結末が…。

子供時代の残酷で悲しい話。子供の頃の親しい友人を救えなかった後悔のにじむ、沈鬱な回想なのだが、実はこの話主人公がハップである必要はなく、ハップであることをはっきり示すのも一か所だけ。それが実に効果的で巧みな仕掛けなのだけど。多分ランズデール自身の体験も部分的に入っているのだろうし、ほとんどランズデール自身の回想のように読んでしまって、ハップって実は思ったよりランズデール本人を投影しているのかな、と思ったりしたのだが、そのことについてはまた後で。この作品については発表日時については明記されていないのだが、「Hyenas」「Dead Aim」と同時期辺りとのことです。

Not Our Kind
ハイスクール時代、ハップがレナードと知り合ってっもないころの話。レナードとちょくちょくつるむようになったハップだったが、校内の人種的偏見の強いグループに見とがめられ、彼らとの関係が次第に険悪になってくる。そして、遂にある日、彼らとの衝突を避けられなくなったハップだったが…。

前の作品は子供時代の悲しい回想だったが、そこから少し成長した時代のこの作品は、60年代ぐらい、まだ根強く残る人種偏見を蹴飛ばす清々しい快作。この作品に登場するレナードの叔父さんは、そういう人がいたのは割と読んだのが最近の『Savage Season』でも確か語られてたので覚えてるのだけど、その後本編に登場したっけ?…いや、ちゃんと読み直すよ…。こちらの作品は、Tachyon Pressのページを見るとoriginal storyと書いてあるので多分書き下ろしなのか未発表作なのでしょう。

Bent Twig
ハップが夜警のアルバイトから深夜2時に帰宅すると、ブレットがまだ起きていてキッチンに座っている。問題児の娘、ティリーがまた姿を消したというのだ。ハップは調査にかかるが、思ったよりも厄介なことになっているらしい。頼みのレナードはマーヴィンからの出張仕事で不在で、ハップは単独で問題解決に乗り出すのだが…。

ブレットの娘ティリーに関しては、この短編集の他の作品でも言及があったので、どういう人かはわかってたけど、やっと発掘された手元のシリーズの登場人物紹介を見ていたら第5作Rumble Tumble(邦訳題『人にはススメられない仕事』)に登場していました。もっと前から登場はあったのかな?あと、今色々パラパラ見てたら、第2作Mucho Mojo(邦訳題『ムーチョ・モージョ』)の冒頭でチェスター叔父さんが亡くなった、って話してたよ…。ごめん。こちらそこそこの長さの中編なのだけど、発表時期などについての記述もなく不明。

Joe R. Lansdale Interviews Hap Collins And Leonard Pine
タイトル通り、ランズデールがハップとレナードにインタビューする、というちょっと気の利いた笑えるキャラクター紹介ですな。どんなインタビューか知りたい人は自分で読むべし。もしくはどっか翻訳出せよー。マジで。

The Care And Feeding And Rising Up Of Hap And Leonard
こちらはあとがきなのだが、内容的にもボリュームとしてもエッセイ「ワシとハプレナ」ぐらいの代物です。で、「The Boy Who~」でハップというのはかなりランズデール本人を自己投影したものではないか、と思ってるところで読んでみると、案の定、第1作『Savage Season』はほとんど私小説みたいなもんじゃからのう、ということ。そしてそこにレナードが現れる。ワシはこのキャラクターをどう創造したか、なんてことは書かれていない。奴は現れたのだよ。他にもハプレナ・シリーズの歴史なども書かれた大変に楽しいお話です。ハプレナ・ファンのあなたならニコニコして読むことでしょう。私もそうでした。収録作品についてのところどころで書いた言及はここからのものです。あと、ハプレナ・シリーズの出版史については、最後に作品リストなんかも書くので、そこんところで。

というわけで以上が大変すばらしい感動のハップ&レナード短編集『Hap and Leonard』でした。繰り返して言うが、ランズデールでハプレナだったら、もう長いも短いもカンケーなく傑作に決まってんだよ。ハプレナ読んで「であるが」とか言い出すミステリ通気取りがバカ!とにかくどっかの出版社が正気に戻ってこんな素晴らしいシリーズがあるのをちゃんと思い出して、この短編集や本編の続きを一日も早く翻訳出版してくれることを願うばかりですよ。
あと以前にこちらの短編集には日本のアマゾンからは購入できないKIndle版でちょっと内容の違う『Hap and Leonard Ride Again』というのがあって、そちらはTachyonのホームページから直では買えるというようなことを書いたのですが、今回見に行ってみたら購入できなくなっていました。地域の問題なのか販売終了なのかは不明です。

そして今回は更にオマケ。短編集を読んだ勢いで、ついでにこちらのe-Bookのみで発売中の中編も読みました。うっかり放置しとくとまたいつになるかわからんからね、というわけで。

Briar Patch Boogie : 2016年
バカンスに釣りを楽しみながらキャンプ、のはずだったがオンボロボートは初日に沈没、あばら家のバンガローで管を巻くしかなくなったハップとレナード。雨の中もう少しまともな釣り場を求めて出かけた2人は、またしても厄介な事件に巻き込まれて行く…。

序盤、結構長くダラダラとバンガローでのバカ話が続き、今回は「ハップとレナードのズッコケキャンプ騒動」とかになるんじゃないかと思い始めたあたりで、一転して陰惨な展開へ。そしてハップとレナードは最も危険なゲームへと向かって行くのであった。
こちらの作品は、前述の『Act of Love』Kindle版なども出しているGere Donovan Pressから、2016年、TVシリーズやMulholland Booksからのシリーズ再開の少し前、ハプレナ復活前夜あたりに出た作品です。えーと、いや作品自体は問題なくいつも通りの傑作なのだが、今回の短編集収録作品との間にも特に長編も出てない時期なので、読んでも何か重要な情報をネタバレ的に知らされちゃうこともないだろう、と思って気楽に読んだのだけど、うがっ!結構重要な展開をさらりと書かれちまったよ!えー?いつそうなったの?全く油断もすきもありゃあしない。同様に短編集など未収録の中編で手に入りやすいところで『Cold Cotton』ってのが2017年にも出てて、そっちも読んじゃおうっと、というつもりだったのだが、シリーズ本編を読み進めないうちにこれ以上うっかり重要情報を知らされると困るので、今回はここまでとしました。

さて日本では長らく翻訳のストップしてしまっているハプレナ・シリーズですが、ここでランズデール本人による話とともにその後の経緯を少しまとめておきましょう。まず日本での現在のところ最後の翻訳である第6作『Captains Outrageous』の後からですが、そこでランズデールがKnopfに移籍になったところ、Knopfではハプレナ出版に興味を示さず、その後8年、Knopf傘下であるVintage Crimeが乗り出すまでシリーズはストップしてしまいました。そしてVintageからは2009年、2011年に2冊の長編が出版されるのですが、その後またストップ。なぜ2冊で終わったかの理由などについては語られていません。そして5年後の2016年、TVシリーズ開始の盛り上がりとともにMulhollandから長編シリーズの出版が再開されるのですが、実はその間に現在のところ幻となっている長編が1作あります。『Blue to the Bone』というタイトルで発行時期未定のまま出版予定としてリストに載っていたもので、さっき見たら日本のウィキペディアにはまだ残っていました。現在はリストそのものが変わってしまっているのですが、しばらく前まではランズデールのホームページの著作リストにも載っていて、Mulhollandからの再開第1作『Honky Tonk Samurai』が出た直後ぐらいに、そのリストのところだったか他のページか忘れてしまいましたが、数年ぐらいたったら出るんじゃないかな、みたいなコメントが付けられていたのを目撃しております。そこから察するに、作品自体は完成しているが何らかの事情で出版されず、また版権上の問題でそれが失効するまでは他の出版社から出すこともできず、みたいな状況が続いているのではないかと推測されるのです。しかし、まあその作品の情報自体がうっかり残ってる日本のウィキみたいなところ以外からは消えているので、もしかすると『Honky Tonk Samurai』以後の最新作を含む2作のどちらかがタイトルを変えたそれ、という可能性もあるのですけどね。ちなみに今回オマケの『Briar Patch Boogie』の巻末のリストにも『Blue to the Bone』が発行時期未定で載っていて、うっかり読んじゃった新展開というのがその『Blue to the Bone』の中でのことなのではないか、という推測もされたりもするのですが。そのへんについてはとにかくシリーズを読んでけばどっかで見えるかも、というところなので、まあとにかくはまずきちんと追っかけて行こうと思っております。
その他のハプレナ情報としては、好評のTVシリーズが現在第3作『The Two-Bear Mambo』が製作中、いやもう始まってんのかな?トレーラー載っけようと思ったらそれも版権で日本からは観られないのね…。しかしかなり遅ればせながらハプレナTVシリーズが日本ではアマゾンプライムで観られる、ということを昨年末ぐらいに知って、一日も早く観なければと思ってるのだけど、結局それも引っ越しのバタバタでなかなか手を付けられないところ…。うむむ…。まあ次の当ブログハプレナ登場までには何とかするですよ。アマゾンプライムでは現在もうシーズン2『ムーチョ・モージョ』も観れるですよ!
そしてもう一つ、TVシリーズに合わせて第1作『Savage Season』のコミック版が、えーと日本じゃ『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』でおなじみぐらいなのかな?ああ、あと『30デイズ・ナイト』とかジョー・ヒルの『ロック&キー』(日本版続き出ねえの?)とかのIDWから出てるのですが、今なんかキャンペーン中かなんかでKindle版が400円台と大変お得価格で販売中。ComiXologyより安いじゃん。Kindleで買って結局ComiXologyのアプリで読んでるのだけど。こちらについては読み始めたばかりで、まだどうなんかな、というぐらいなのだけど、とりあえず書いとかんと間違って買うおっちょこちょいがいるから。しかも中にはてめえの不注意で間違えたのに、「小説だと思って買ったらコミックでがっかりした。★1」とか言い出す頭のおかしいレベルの迷惑クレーマーみたいなのもいるんで。そーゆーのに限って「コミックやマンガには関心がない。」みたいなことを言うのがインテリジェンスの表明だと勘違いしてるけど、結局アンタママに字ばっかりで画の入ってない本読めてえらいね、って褒めてもらってからたいして成長してないんだよ。前から思ってたことでこの際だから言っとくが、まず例えば小説が好きな人だと、映画の原作だっていうことで読むけど結局あらすじレベルでしか本を読めない人っていうのをあんまり良く思ってないでしょう。マンガ・コミックについても同じこと。簡単に早く読めてもそれが本当に「読めた」ってことになるのかどうかは上の映画原作の例と照らし合わせるぐらいの頭があれば当然わかるでしょうが。たとえ著名な書評家だろうが、それが小説作品をコミカライズしたものだったとしても的確に評価できるとは限らない。それでもコミックとして読んだうえでの感想で★1を付けるってえ自信があるならどうぞやってみなさいよってところですね。マンガだから★1を付けると褒めてくれるママがいるならアンタの家の中だけでやってくれ。とは言っても先に書いたように私もこの作品については読み始めたばかりで評価は未定。ちょっと出だし見た感じでは、TVシリーズ版も観たうえでトータルで考えるのがよさそうな直感はありますが、しばらく先で、次のハプレナ登場の時にって感じになると思います。そんなところなので強くお勧めはしないが、ハプレナ・シリーズの世界を拡げたいって考える方ならキャンペーン価格中に買っとくのもアリではないかと思います。とかダラダラ言ってるうちにキャンペーン終わっちゃったらごめん。

というわけでハップ&レナード・シリーズ初の短編集『Hap and Leonard』及びオマケ『Briar Patch Boogie』、その他ハプレナ情報や罵倒少々と盛りだくさんでお届けいたしました。本を売る方法といやあメディアミックスしか思いつかんくせにハプレナ・ブームに便乗しないバカばかりの出版社群に無視され続けている、日本にもたくさん存在しているハプレナを愛する皆さんにはちょっと喜んでもらえたのではないでしょうか。しかし今回これを書くまでは、やっと発掘された翻訳版ハプレナ・シリーズを見て、いつか再読できればいいなあ、とか思ってたけど、もう完全に早く読み返さなければだめじゃんという感じになって参りました。そんなわけで今後は旧作と未訳作を並行して読んでいくつもりで、いつまでたっても出版社群が正気に戻らずハプレナ・シリーズの翻訳が再開されない場合は、またそのうち長編第7作『Vanilla Ride』も登場となると思います。あと、文中で何度も『Savage Season』のことを書いてるのだけど、それについては別の本について書いた時についでに下の方に書いただけだったので、特に右にもリンクとかなかったのですが、どこだったかさっき探してみたらMatthew Stokoeの『High Life』の下でした。ハプレナ・シリーズだから当然面白いぐらいしか書いてないのだけど。そういやMatthew Stokoeも早く次読まなきゃ…。

■ハップ&レナード・シリーズ
【長編】

  1. Savage Season (1990)
  2. Mucho Mojo (1994) ムーチョ・モージョ
  3. The Two-Bear Mambo (1995) 罪深き誘惑のマンボ
  4. Bad Chili (1997) バッド・チリ
  5. Rumble Tumble (1998) 人にはススメられない仕事
  6. Captains Outrageous (2001) テキサスの懲りない面々
  7. Vanilla Ride (2009)
  8. Devil Red (2011)
  9. Honky Tonk Samurai (2016)
  10. Rusty Puppy (2017)
  11. Jackrabbit Smile (2018)
【中編】
  1. Veil's Visit (1999) ヴェイルの訪問
  2. Hyenas (2011)
  3. Dead Aim (2013)
  4. Briar Patch Boogie (2015)
  5. Bent Twig (?)
  6. Hoodoo Harry (2016)
  7. Coco Butternut (2017)
  8. Cold Cotton (2017)
【短編集】
  1. Hap and Leonard (2016)
  2. Hap and Leonard Ride Again (2016)
【モザイク・ノベル】
  1. Hap and Leonard: Blood and Lemonade (2017)


【その他おしらせの類】
さて、まずは現代最強のノワール作家にして無冠の帝王Anthony Neil Smith先生の新刊のお知らせです。以前にも言ったように私はSmith先生の素晴らしい作品を世に知らしめるためにブログをやっているので、新刊発売告知がある場合は必ず宣伝するのだよ!新刊『The Cyclist』が、『Castle Danger』シリーズと同じBastei Entertainmentより5月8日発売予定!今回の作品はシリーズ物でない単独作品とのことです。楽しみですね!…いや、しかしとにかく何とか早く『Castle Danger』ぐらいは読まんと…。なんだかホントにあっちもこっちも読まなきゃならんもんばっかりな一方で、さっぱり進まずで。ブルーウンのトム・ブラントやマッキンティDead三部作の次ぐらいは当然もう読んでなきゃならないはずなのに…。マッキンティはSean Duffyの翻訳出たらネタバレされるかもしれないしね。しかしもう3月なのにマッキンティも『IQ』も出ないけどどうなってんのかね。空気読みのプロ先生どもが新しい売れるシリーズが欲しいという本屋や出版社の要望に応えて、『IQ』と多分どっかが必ず出して来るメグ・ガーディナー『UNSUB』あたりをランキング上位に押し上げてくるってのが2018年の私の予想なんだがね。いや、どっちも悪い本じゃないんだから余計な悪態のネタにするなよ…。とにかく『UNSUB』早くどっか出してよね。
で、その『UNSUB』をメチャ推ししてるドン・ウィンズロウなのだがもうすぐハーパーから翻訳出るらしい『The Force』は映画化進行中らしいです。詳しくは本が出た時オビに載るだろ。ちなみに『ザ・カルテル』の続きは来年になるそうです。ということは日本で出るのハーパーなら早くて2020年か。え?オリンピックの年なの?どこで?えー?日本で?
で、そのハーパーなんですが、昨年本国のHarperCollinsで見つけたJason Millerの『The Hunger Angels: A Slim in Little Egypt Short Story (Slim in Little Egypt Mystery)』が面白そうなんで読んでみると言ってたのですが、期待通り!元炭鉱夫の私立探偵Slimの活躍するSlim in Little Egyptシリーズ。ユーモア&バイオレンスのカントリー・ノワール、っていうよりもう田舎ノワールって呼び名の方がいい気もする。もっと読みたいんで翻訳出してよ!つってもどーせ無理だろーな。そのうち原書で読むよ…。あとハーパーと言えば前書いた時見落としてたんだけど一昨年の各賞ペーパーバック部門総ナメのLou Berneyの『The Long and Faraway Gone』があるじゃん!何であれ出さないんだよ!いや、私もずっと読もうと思ってKindleで延々待機中なのだけどさ…。
なんだかどこをたたいても結局個人的なぼやきに突き当たる情けない状況ですが、何とか頑張って早く面白い本をたくさん読み、早くお伝えして行きたいと思うのですよ。ホントに。その後の引っ越し情報につきましては、相変わらず段ボールが天井まで積み重なり、相変わらず自室のドアすら閉められません。でも今回最近にしちゃ割と早かったっしょ。また次も頑張りますんでよろしくね。

【2024年1月追記】:残念ながらこの短篇集は現在絶版となっております。その他、Gere Donovan Pressからの電子書籍版中編なども絶版。画像があるけどリンクのないものは全て絶版となりました。が、ハップ&レナード・シリーズの近年の中短編などに関しては、修正の際追加した最近の短篇集『Born for Trouble: The Further Adventures of Hap and Leonard』の方に収録されているようです。


'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2017年12月24日日曜日

グレッグ・ルッカ / Bravo -Jad Bellシリーズ第2作!-

というわけで、グレッグ・ルッカJad Bellシリーズ第2作『Bravo』の登場です。前回も書いたのだけど、こちら結構早く読み終わってたのだけど、前のQueen & Countryの方が遅れて、結果こちらも随分間が空いてしまって申し訳ないっす。
で、まあ前の『Alpha』についてなんだけど、なんかさあすんませんでしたね。いや、私の「予想」なるものが間違ってたとかいうわけじゃないんだけど、ちょっとこれが続きだということばかり力説しちまってさ。まあ普通に読めば誰でもわかるよな、と後で反省してたり。まあ今回はなるべくもうちょっと内容のあるところを書けるように努力いたしますです。つーことで当然前の続きから、めでたく日本からもKindle版も購入できるようになったグレッグ・ルッカ Jad Bellシリーズ第2作『Bravo』であります。

で、まずは第1作『Alpha』のストーリーの続きから。ここからはネタバレです。未読の方はご注意を。でもそれ書かないと先に進めないので。
で、どこまで書いたかな、と一年前以上のを読み返してみると、…なんかお前ずいぶん丁寧に書いてるじゃん、と最近の言葉の乱れにちょっとへこんだり。もう少し気を付けますです。ハイ…。で、前の時はBellがどこからかの情報により、テロの警戒のために潜入していたテーマパークに、元妻と耳の不自由な娘が、聾学校のレジャー旅行で訪れたその日に、案の定テロが勃発するというところまででした。その前のところを詳しく知りたい方は前のを読んでちょ。あ、いや、お読みください…。
計画されたテロは、各所に設置されたセンサーがボツリヌス菌を検知したところから始まる。パーク内からの避難が始まる混乱に乗じ、武装したテログループが潜入。そして避難中の客を人質にする。その中にはBellの娘Athenaを含む聾学校の生徒たちと元妻も含まれていた。そしてパークで手話通訳として働き、生徒たちの案内係として同行していた、テロリストグループのリーダーGabrielの恋人Danaも。グループはパークの着ぐるみを身にまとい正体を隠し、Gabrielは密かにDanaの身を案じる。ボツリヌス菌はフェイクであったことが判明するが、続いてグループから、パーク内にダーティー・ボム-放射能爆弾が仕掛けられていることが宣告される。パーク内に残り、彼らと対するのは、Jad Bell、同じくデルタ・フォースのChaindragger、そして同時に潜入していたCIAの女性局員Nuriの3人のみ!
という感じに話は展開して行き、まあ途中は端折るが、パーク内のBell達とテロリストグループとの攻防、人質とされた元妻Amyと娘Athena、そしてDanaの様子、外では暗躍するUzbekとさらにその背後に控える”名前のない男”、などが交互に描かれて行く。戦闘の末、遂にAthenaを救い出すが、父の兵士としての恐るべき戦いぶりに戦慄する娘を気遣う余裕すら与えられず、逃げ去ったGabrielを追うBell。そして最後の闘いは、前の時ちょっとほのめかしたように、Bellの視点ではなく、Gabrielの視点から描かれる。
Danaにもその正体を知られ、すべてを失い、自分でもほとんど信じていない残された最後の、ここから脱出できるという望みにすがり、ジェットコースターの頂上を目指すGabriel。そこに仕掛けられたダーティーボムを起動させれば、ヘリが自分を救い出してくれるはず。そのGabrielに追いすがる、傷だらけの、手負いの野獣のようなBell。どれほど痛めつけてもあきらめず、逃れることができない。そしてすべての力が尽きる時、Gabrielの頭上にヘリの姿が映る。違う…、あれは報道のヘリだ…。Uzbekの野郎、やっぱり嘘つきだ…。そして、Gabrielは落ちて行く…。
そしてその後に描かれるのはハリウッド・アクション映画のようなハッピーエンドシーンではない。しばらく離れていた元妻と娘の無事を喜び、抱き合い、信頼を取り戻すというようなシーンもない。Bellの任務はまだ終わっていない。テロの援護をしていたパーク内の裏切り者をあぶりだし、そこから入手した情報から、このテロ事件のスポンサーであるテキサスの富豪の男の邸宅を急襲する。男は言う。この国は戦争の最中にあるのだ。大衆も大統領も、そのことが分かっていない。今一度、その事実を目の当たりにさせ、そしてこの国を立て直さなければならないのだ。自分はそのために行動した。そして志を同じくする仲間は大勢いるのだ、と。Bellは男の膝を撃ち抜き、売り手の男、Uzbekの居所の情報を引き出し、そして男を射殺する。
そしてBellとその部隊はウズベキスタン、タシュケントへ飛ぶ。

そして物語は『Bravo』へ!

【あらすじ】

Bellとその部隊は、タシュケントの敵のアジトを急襲する。目的はUzbek-Vosil Tohirの身柄の確保。1階の敵を制圧し、上階へ。一室にVosilと女を発見。ChaingraggerのカービンがVosilを無力化。居合わせた女にBellの銃が向かい、引き金に指がかかったところで女が叫ぶ。

「Biplane! Biplane!」

Biplane…。伝えられていた符牒だ…。

コードネームBlackfriars、本名Petra Nessuno。軍情報部から16か月間に渡りElisabetta Villanovaの偽名でUzbekの組織に潜入していた彼女から、前作『Alpha』のテーマパーク襲撃テロ計画の情報がもたらされたのであった。第2作『Bravo』でBellと並びもう一人の主人公ともいうべき存在になるのが、このPetra Nessuno。そんなわけでこの第2作のカバーは女性なのであります。ちなみに私の読んだ旧ペーパーバック版にはご覧のように男女2人の姿が描かれております。こっちは多分いずれなくなっちゃうのだろうと思われるので、アマゾンからのリンクではなく表示中。

そして更に、この物語では敵の奥深くに潜入したもう一人の女が登場する。

彼女のアメリカでの名前はJordan Webber-Hayden。本当の名前はZoya。”名前のない男”の命を受け、アメリカに偽名で潜入し、その美貌で男女を問わず要人を誘惑し、操り、彼の目的達成のために献身する。彼女は”名前のない男”を「愛する人」と呼び続け絶対の信頼を置いている。それは貧しい境遇から彼女を拾い上げ、教育し、現在の生活を与えてくれた恩からだけではない。
そしてそんな彼女の虜となり、操られ続ける軍情報部の高官”The Soldier”。彼女に執着し、何とか自分だけのものにしたいと渇望する彼は、情報を流し続け、彼女からの頼みを実現しようと奔走する。そして彼女を独占するための最大の障害である”名前のない男”を、そのイメージから”建築家”と名付け、憎悪し続ける。
今作ではその”建築家”が作品中の”名前のない男”の呼称となって行きます。

身柄を確保されたVosilは、ただちにアメリカへと移送、そして厳重なセキュリティーの軍施設に監禁され、尋問が始まる。困難を極め、しかし迅速な情報の引き出しが求められる状況に、既に任務の終わったNessunoも招集される。そして彼女は16か月間Elisabetta Villanovaという人格になり切り愛人として暮らした男の前に再び立つ。

そしてVosilは語りだす。俺は必ずあの男に殺される。奴の手はこの国のかなりの部分にまで入り込み、こんな施設にいても逃れることはできない。俺が求めるのは奴からの完全な保護だ。それができるなら自分の持っている情報を提供しよう。そして、既にもう一つのテロ計画は進行中で、まもなく実行に移される…。

Vosilの言葉通り、”建築家”は彼の抹殺のため動き始める。Zoyaを通じ、”The Soldier”を含む各方面にVosil処分が依頼される。そして遂にZoya自身もその任務を越えて、危険なポジションに動かざるを得なくなった時、彼女の身を案じる”建築家”も自らアメリカの地を踏むこととなる…。


ちょいとハリウッド・アクション的なテイストもあった第1作とは打って変わり、このシリーズ第2作では派手なドンパチは少々後ろに下がり、Nessuno、Zoyaの二人の女性の物語を軸にしつつ、冷酷非情ともいうべき水面下の暗闘が繰り広げられて行きます。その一方で、別れた妻と娘について、Bellの「人間的」な側面も描かれ、デルタ・フォース・チームの面々についても少し掘り下げて語られて行きます。そして今作では遂に、というか意外と早くかもしれないけど、主人公Bellと”建築家”が直接相まみえる展開に!

そして、まあフツーに予想されるように、背景説明も少しアップデートされ、拡大された第2作で見えてきた方向性として、このシリーズの中心テーマとなってくると思われるのは、「アメリカの敵はアメリカ自身ではないのか」ということでしょう。まあこの作品が仮に日本で翻訳されたとしたら、「9.11後のうんたらかんたら」とか、場合によってはさらにさかのぼり、「冷戦構造崩壊後のうんたらかんたら」で始まるようなおなじみ時事解説風の解説なんかが付けられるところなんでやんしょ。しかしね、まずそこに釘を刺しときたいのは、別にルッカはアメリカに「敵」がいなくなったから「アメリカ」を敵に持ってきたわけではない、ということである。そしてその「敵」であるアメリカというのが、何か陰謀説めいたものであったり、利益を追求する軍産複合体というものではなく、具体的であれ仮想状態であれ、「敵」である国家・地域・民族に対し、あらゆる側面で「強国」であることのみにより自国のポジションが守られるという、結果的にトランプを大統領に押し上げたアメリカ国内の空気のようなものであろう。もはや敵には「ルール」などは通用せず、場合によっては和平交渉を行える国家すら存在せず、やられる前に完全に敵を破壊しなければならないというパラノイア。それは単にアメリカだけのものでなく政権交代など以前に総理大臣の選択が一択しかないと思い込む日本でも同様のものであり、さらに多くの国でも起こっている空気なのだろう。リアルな国際情勢にコミットする『Queen & Country』の後、ルッカが次に新たなシリーズのテーマと定めたのがこの空気なのだろう。リアルな国際情勢に照らし合わせ作品を作る作家なら、例えば冷戦時対共産主義における中東政策、中南米政策とそれがもたらした結果という形でも明らかな、アメリカの国際政策の中の「敵」に対するパラノイアについて考えざるを得ないものだろう。そしてこの同じものでもありまた別の側面も持ちながら、更に各層に拡大するパラノイアはいつか国家や世界をも飲み込むものかもしれない。これはリアルな世界の動きからの「現実」にとらわれすぎることなく、更に想像力を拡げられる、ルッカのような作家だからこそ現在の世界を舞台にして描ける「スケールの大きい」物語なのだろう。
ここでくどいようだがもう一度、このシリーズの構造について言っておくのだが、まあ割と最近になって気付いたのだけど、これはコミックのライターでもあるルッカがコミックの方法論を応用したものである。つまりコミックというのは大抵の場合は1号24ページとかの分載という形を余儀なくされる物であり、またそれがたとえ4~5回分をまとめたTPBという形になったとしても、大きな物語の背景説明までするには到底足りない。ではどうするか?まず限定された部分的な情報のみで構成される、目を惹く派手なエピソードで始め、読者を引き付けつつ物語を徐々に大きくして行くのである。同様の手法が、少し前にお伝えしたようにアマゾンでのシリーズ化も進行中の『Lazarus』でも使われてるので気付いたんだけど。それがこのJad Bellシリーズ第1作『Alpha』で、続く第2作『Bravo』。つまり物語はまだまだ隠されている部分が多く、更に拡大されるということである。
そして、このシリーズではそういった大きく、ある意味では曖昧に見えるかもしれないテーマを持ってきたルッカである。現在のところはまだ限られた情報のみで、輪郭とその前を走り回るキャラクターしか見えないかもしれないが、この土台の上に物語は確実に更なる深みを持ち、構築されて行く。政府の高官や資産家たちがその「愛国心」から国内で偽のテロ攻撃を計画する、という展開を早々に「荒唐無稽」と切り捨てて見せたい気取り屋もいるだろうが、そんな輩はとっとと降りていただいて結構。物語終盤ではさらに大きく陰謀めいたこの先につながると予想される展開もほのめかされるが、今作で最も重要と思われるのは、短い直接対決シーンで”建築家”がBellにほのめかす彼自身の正体についてだろう。まだそこについては何の予想もあるわけではないのだけど、その正体が明かされた時、このJad Bellシリーズはその様相を変え、真の姿を現すのではないか、と予想するところであります。
そしてこの主人公Jad Bell。別れた妻と娘の身を案じながらも、結局大したことはできない普通の中年男の側面を持ちながら、いざとなれば冷徹な戦闘機械になり切れる男。この男についても語られていない部分はまだ多いように思える。新たに登場し、まあ予想通りに急接近したNessunoとの関係も含め今後の展開には大いに期待したいところ。またこの主人公が、ジャーナリストであったりフリーランスの外部の人間ではなく、軍の人間であり作戦行動として物語が展開することから、この「敵」を曖昧で巨大な手に負えないものとして終わらせるのではなく、「アメリカ」の手で解決する物語として描くのだというルッカの意図を表しているのではないかとも思うのですよね。
ちょいとまた先回りしすぎて慎重モードで語りすぎたかもしれないんだけど、この『Bravo』、私的にはもう文句なしに100%完全に楽しく読めた作品でした。なんか大き目で読み難いサイズのペーパーバックをしばらく持ち歩き、みたいな感じだったのだけど、なんだかそれほど長く読んでた感じもしなかった。とは言え、どうやったって連続している進行中のシリーズの中の一つの作品を、単独で評価するってのは難しいのだけどさ、一作目からもたらされた期待を裏切らず、続くシリーズへの期待を高めるシリーズ第二作であった、というぐらいのことは言っときましょうか。まあいっつも日本で翻訳なんか出したってしょうがねえ、とか悪態をついちまうのだけど、やっぱりいい本は翻訳とかもされてなるべく多くの人に読まれるべきなのでしょう。このJad Bellシリーズももしかしたらどっかがこれから翻訳しようとしているのかもしれないけど、なんかいい本を全力で勧めようという気もないなあなあ空気読みばかりの「読書のプロ」どもに雑に扱われ、すぐれた作品を見出したいなんて意思もなくてめえが通ぶって格好つけることしか考えてない劣化甚だしい「冒険小説」周辺の、時事解説風のまとめがあって初めて自分が何か読んだ気になるスケール小さいクレーマーや、毎度おなじみ○○の一つ覚え「マーク・グリーニーに比べれば」にこき下ろされて1作だけで引っ込めるようなら意味ないよ。出すんだったら最後まできちんと付き合うべし!つってももう日本にそんな出版社無いのかもね。やっぱそんなもんには期待しないで、せっかくKindle版も買えるようになり手に入りやすくなったことだし、ちょいと頑張って原書で読みましょうや。
さてそんなグレッグ・ルッカJad Bellシリーズなのだが、続く第3作についてはまだその発売時期についてもアナウンス無し…。しかし!と思っていたら先日アマゾンで「Greg Rucka Jad Bell」で検索をかけてみたら、2017年9月発売予定で第3作『Gamma』を画像なし現在品切れです状態で発見!察するところ発売予定で商品情報だけは作ったもののまだ作品も完成せず、無期限延期状態というところなのだろう。第2作以後、トランプ政権も誕生し、ツイッターを見ても常にトランプ政権には批判的なルッカだけに作品の構想も変化したのかもしれない。しかし、未定ではあるだけで、続きの書かれることははっきり決まっているのだ。何とか来年2018年には出るのではないかな?出たら今度はホントの最新刊ですぐ読むであります。必ずや!


【その他おしらせの類】
あのドゥエイン・スウィアジンスキーが映画『ワイルドスピード』シリーズの脚本家クリス・モーガンと共同脚本でダン・シモンズの『ダーウィンの剃刀』をTVシリーズ化進行中。これはどうもスウィアジンスキーが共同脚本として呼ばれたというものでなく、むしろ業界に強いクリス・モーガンの力を借りてプロットを売り込んだというスウィアジンスキー主導のものらしい。放送は大手ネットワークNBCということで日本にも入ってきやすそうで期待も高まるところ。『ダーウィンの剃刀』については未読なのでなるべく早いうちに読んどかねば。なんか日本ではダン・シモンズは『エンディミオン』とかみたいなSFだけ書いてればよいとする偏狭な輩の感想が見つかりそうで、評判については一切知らんけど、スウィアジンスキーがやりたいって言ってんだからきっと面白いんだろ。

そしてもう一つもスウィアジンスキーなのだけど、かのジェイムズ・パタースンのBookShotsから新たに新刊『Stingrays』を発売、って6月、半年前の話じゃん…。パタやんのBookShotsには新たにPolis BooksからAsh McKennaシリーズを出しているRob Hartも参戦し『Scott Free』が発売中。で、なんでこのBookShotsにそんなにこだわっているかというと、これらの作品カバーにはWithという形で作家名は記載されているが、版権はすべてパタースンのみのもの。世間的には不死身のベストセラー・サイボーグと信じられているパタースンだが、ここだけの話だが実は生身の人間で、いつかはその命が尽きる可能性もある。そうなった場合これらの明らかにパタやん本人の手によるものでない作品はことによるとパタ作品リストからも、また版権を所持していない作家の作品リストからも外され、せっかくのすぐれた作家の作品が永久に失われるということもあるかもしれない、という気の長い危惧をしていたりもするのである。まあそんな心配は置いといても、せっかくいい作家の作品が割とお手軽に手に入るのだから放っておく手はないっしょ。まあ自分の方でお知らせするのは自分の興味のある作家だけなので、もっと広く読みたい方は自分で色々と探してみてください。もう結構大量に出ているBookShots作品を調べるには、各種出ているBookShotsアプリがおススメ。ちゃんとアカウントを作っておけば、定期的にパタやんからの新刊お知らせメールも届くぞ。もちろん毎回ジェイムズ・パタースンからであると明記されて送られてくるこれらのメールがパタやん本人からのものであることは疑ったこともない。ハハハ何を言ってるんだね。世界中にお知らせメールを送るなど造作もないこと。何しろ相手はあの無敵の不死身ベストセラー・サイボーグ、ジェイムズ・パタースンなのだぞ。あっ、実はスウィアジンスキーのBookShots一冊読み終わってるのだけど、色々遅れててなかなか書けないので、しょうがないのでそのうちまとめてやりますです。

というわけで、どうかね、本人も含む大方の予想を裏切り年内に間に合ったぞ!しかもクリスマス・イヴ当日に。だって何の予定もないんだもん…。まあ結局3週かかっていて威張るほどの要素は全くないのですがね…。ちょっと他にやりたいことも思いついていたりもするので、もっと気合を入れなければと思っているところであります。まあ年末正月も、寒いのでなるべく外に出ない、ぐらいの予定しかないのでここからまた頑張る予定ですが、さすがに年内最後になるかと思いますのでちょいとまとめ的なことも。年末ということであちこちで今年のベスト的なものもやってるところですが、先日ドン・ウィンズロウが僕の本選んでくれてありがとう、って言ってたのが、割と一般的というか来年とかもう少し先に翻訳出るかもよ、っていうのが並んでた感じだったりするのでちょっと紹介しときます。[Literary Hub:The Best Reviewed Books of 2017:Mystery & Crime] Literary Hubってところも初めて知ったのですが、面白そうなところなのでこれからはチェックせねば。ちょっとまだよくわからないのだけど、こちらLiterary Hub内のBook Markってところにあって、他に本体のLiterary Hubの方にもThe Best Crime Books of 2017というのがあって、そちらではもっと数も多くて日本の横山秀夫、湊かなえの本なども選ばれています。しかし今年はウィンズロウの『The Force』やハミルトンのニック・メイソンの続きぐらいは翻訳出るのかと思ったけど全然出なかったね。ウィンズロウは来年『ザ・カルテル』の続き出ちゃうんだけどどうなるのかなあ。あとウィンズロウが昨年発売前からかなり入れ込んで推してたメグ・ガーディナーの『UNSUB』絶対翻訳出るだろうと思ってたのだけど来年なのでしょうか?なんかTVシリーズか映画かどっちかになる予定とかも聞いたのでそれ待ちなのでしょうか。何しろウィンズロウがこれ読まないやつはバカだぐらいの勢いで推してるので、翻訳出たなら必ず読もうと思ってるのですが。あとJoe Ideの『IQ』シリーズとか日本で出したら売れそうなんじゃないの、と思うのだけど。あんまり自分的には優先度高くないかと思ってたら、「bridges the gap between Sherlock Holmes and Elmore Leonard」なんてレビューもあるのでもう少し気にしてみようか。この辺ってもしかしたら年末恒例のアレの隠し玉ってとこに載ってるのかもしれないけど、金曜の帰りそろそろ買おうかなと思って本屋に寄ったらすごい列出来てて面倒だったのでやめちゃったのでわかりません。どうせ読んでも文句しか出てこないだろうし、立ち読みでその辺だけ見ればいいかな。個人的には今年のベストでおススメは、お馴染み英国犯罪小説界のドンPaul D. Brazill大将のFIVE CRIME FICTION FAVOURITES FROM 2017.です。うわー、早く読みてえ。しかし映画とか全然チェックする余裕なかった間に『ドッグ・イート・ドッグ』の映画とか出てたんだ…。ハプレナも早く観たいし…。わーもーブログやめるー、ぶー。いやまあ…また頑張るです…。では楽しいクリスマスと良いお年をね。オレに言われたってありがたくもなんともねーだろーけどさっ。何の予定もないからって最後にすねるなよ…。ではまたね。

【追記】
本日(12/28)本日仕事納め(大掃除の役には立たんので半日!)で帰りに年末のアレを買った(ちゃんと買ったよ!)ので追加報告を。えーと、どこにも『UNSUB』が無いのだけど…ホントに出ないの?当方、そっちまでは今んところ手が回んないのだけど…。何しろ昨年せっかく出たのに続きをぶん投げられたクリス・ホルム、C・B・マッケンジー、トム・ボウマン、あとオーファンXの続きとか来年こそは読まねばと思っているのだし。頼むよ…。それからウィンズロウ『The Force』はハーパーから?と思ったら、本国の方でHarperCollinsに移籍したようですね。Vintage/Black Lizardもかなりジリ貧っぽいしなあ…。多分『ザ・カルテル』の続きも再来年ぐらいにハーパーからになるのかな?で、本国HarperCollinsってどんなの出してんのかな?とざっと見てみたところ、なんかJason Millerって人の「Slim in Little Egypt」シリーズっていうのが面白そう。もっとよく調べてみたらKindleでプロモーション用の短編『The Hunger Angels: A Slim in Little Egypt Short Story (Slim in Little Egypt Mystery)』っていうのが無料で出ていました。気になるのですぐに読むつもりなので、もしすげー面白かったら次々回ぐらいからハーパーは何であれを出さないんだよ、って苦情を言い始めるかもしれません。それからジョー・イデの『IQ』は早川から出るそうで良かったですね。自分的にすぐに読めるかはわかんないけど、好きな人も多いと思うので盛り上げてください。今年は2作目も出てるしね。…と思っていたら、その早川があのエイドリアン・マッキンティを最悪の売り方で出そうとしていることが判明…。もうよっぽどのバカしかいないのか、一作だけ話題性で売るだけ売れば続きはぶん投げても構わないと思ってるのか…。ここに出てるんだから来年早々には出てくるのだろうし、それまでには少しでも空気を悪くしておかねば、とはせ参じたわけです。はっきり言っとくがなあ!せっかく優れていると思った本を褒めたのに、それが仇になり、そのジャンルの作品でないことを理由に優れた作品を不当に低く評価するような国の人間にミステリなんて読む資格はねえんだよっ!まあこちらとしては購入時に帯を破り捨て、場合によっては解説も無視して、優れているに決まってる本編だけを楽しく読むだけです。マッキンティの作品ですから優れているにきまってますから。それがたとえ「本格密室ミステリ」だったとしてもね。早川は順次刊行と言ってるのだから、それがどんなに「ミステリ通」どもにこき下ろされても責任持って出し続けるように!順次刊行というのは一作目の後しばらくして二作目だけ出して終わりというのではないからね!Sean Duffyはもう6冊出てるのだからね!以上追記でしたー。



●関連記事

■Queen & Country

グレッグ・ルッカ Queen & Countryシリーズ -第1回

グレッグ・ルッカ Queen & Countryシリーズ -第2回

グレッグ・ルッカ Queen & Countryシリーズ -第3回

■Jad Bell

グレッグ・ルッカ / Alpha -Jad Bellシリーズ第1作!-


●Jad Bellシリーズ



●Lazarus



●BookShots個人的に注目



'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2016年10月23日日曜日

グレッグ・ルッカ / Alpha -Jad Bellシリーズ第1作!-

前回予告しました通り、今回はグレッグ・ルッカの小説最新シリーズ、Jad Bellシリーズの第1作『Alpha』についてです。2012年に今作、そして2015年に第2作『Bravo』の2作が現在発行されています。
まず最初に私の感想を言うと、今度はルッカ、結構スケールのでかい長編となるようなシリーズを仕掛けてきたんじゃないの、というところです。なぜ最初に感想を書いたかというと、実はこの作品多くの謎が書かれていない形で隠されており、それを指摘することによりその辺が見えてくるのですが、どうもそれをやってると若干ネタバレの危険性があるからです。ちょっとまた翻訳の出てないものでそれを言うのは何だとも思いますが、できれば本編の方を読んでからこちらを読んでもらえればと思います。とりあえずストーリーについては極力ネタバレのないように努めます。


そんなわけで今回は書き方の方もいつもとちょっと違う感じで進めていきます。まず、主人公Jonathan "Jad" Bellについて。アメリカ陸軍のデルタフォースの曹長。年齢は40代ぐらいで、半年前に離婚した奥さんとの間にはティーンエイジャーで耳の不自由な娘がいる。物語の冒頭ではアメリカの巨大テーマパークWilsonvilleの保安主任の職に就いている。まず最初はパークのカフェに勤める女子とベッドインする場面の合間に、過去の中東と思われる地域での作戦行動の回想が入り、この主人公は元々軍隊にいた人なのだな、と推測できるのだが、翌朝出勤してきたところで私服でも場違いな上官の大佐がパークに現れ、その会話でBellが現在も軍属で偽装して任務にあたっていることがわかるのである。
続いて少し時間を遡り、Bellがパークの保安主任に就職する経緯、続いてキャラクターおもちゃから始まり映画・TV産業を通じ拡大を続け現在に至るWilsonvilleの歴史、Bellがまずパーク内を案内される様子などが続く。この辺読んでるときはずいぶん説明が長いな、と思ったけど後に説明を入れられないスピーディーに展開して行くあたりで混乱がなかったので、自分的にはありだと思うけど、その辺は人それぞれかと。
そしてどうやらこのテーマパークでテロが計画されている可能性があり、Bellはそのためにここに潜入しているらしいということが見えてきます。しかし実際にこのパークでそれが起こるのか、というまでの確証はない模様。しかし、この作品の冒頭でこのパーク内で起きたある殺人事件が描かれており、その事件が何らかの関係にありこのパークでそれが起こる可能性も高いと推測されています。
そこでBellの耳の不自由な娘が、通っている聾学校のレジャー旅行で母親ともどもパークを、その近くでは最も事件が起こる危険性が高いと目される独立記念日の週の休日に訪れることとなる。んー、これって…。家族がテロなりの事件に巻き込まれ主人公である父親が奮走するって、ハリウッド・アクション映画のすげーベタなパターンですよね。しかも家族助かるって決まってる。なんか私とか映画でこのパターン出てくるとかなり続きを観るモチベーション下がるのだが…。まあ助かるのわかってるから安心してハラハラできるって層もいるのでしょうが。本当にルッカがそんなベタなのをやる気なの?しかしルッカという作家がその裏をやるとは思えないし。スウィアジンスキーだとコイツもしかしたら殺すかも、って若干の緊迫感はあるのだけど。などと疑問を抱えながら読んでいるうちに次々とその方向へのフラグが立って行くのです。

この作品は3人称で書かれ、主人公Jad Bellの他にも様々な人物の視点からシーンを切り替え書かれるというスタイルをとっています。その中でもBellに次いで重要なのがテロリスト部隊のリーダーとなる青年。この現在はGabriel Fullerと名乗る青年は、元々はロシアの少年ギャングのリーダーだったのですが、彼のいた世界では恐れられる謎の人物Uzbekにより強制的にスカウトされ、謎の仕事のためにアメリカに送り込まれます。そして彼はUzbekに命ぜられるまま、まずはアメリカに溶け込み、やがて年齢に達すると軍隊に入隊し軍人としてのスキルを身に着け、除隊後はUCLAへ通う学生として暮らし、とスリーパーとして長い年月を過ごした後、ある日Uzbekから任務を告げられWilsonvilleへと送り込まれます。しかし、その一方でGabrielはアメリカで普通の大学生として暮らし続けるうちにDanaという恋人もでき、その平穏で幸福な生活を守りたいと思い始めてしまう。そして休みはWilsonvilleで働くと言うGabrielに対し、それならばとDanaもWilsonvilleへ申し込み、二人は近くに借りたアパートで共に暮らしながらパークで働くことになる。そしてGabrielはこの任務さえやり遂げればDanaとの幸福な生活に戻れるのだ、という望みにすがりながらパークでのテロに向かって進んで行くことになります。
このように敵側に物語の最後に主人公により倒されるのを読者が望みながら読むような冷酷な悪役ではなく、どこか主人公同様に感情移入できてしまう人物を配置するというのは、Queen & Countryシリーズ第1作『A Gentleman's Game(『天使は容赦なく殺す』)』でのアラブのテロリスト青年でも見られたことです。これってもしかしたら現在のルッカの考えやスタイルなのかも、と思ったりするのですが、今のところは材料がこの二つと少なすぎるので保留。現時点で出ているこれの続編とQueen & Country2作の未訳の残り3作読めば少し見えてくるかも。

そしてこれらの登場人物も揃ったところでパークにテロが勃発!そして案の定元妻と娘も巻き込まれて行くという展開になって行くのです。

そしてここからがこの作品『Alpha』の謎。
まずこの作品ではデルタフォースの隊員である主人公Jad Bellが経営陣にすら極秘のまま、国内で潜入作戦行動にあたっている。そして後にはパーク内にはCIAのエージェントも潜入しており、協力して行動するようになる。軍とCIAが国内で?この疑問はある登場人物の頭に浮かんだりもするのだが、明確な答えは得られない。そもそもどのようにしてこの情報を得て、それがそれほどの重要事項とみなされ、このような作戦行動がとられたかについての説明は一切ない。
そしてもう一方の敵側。Gabrielに指示を出すUzbekの背後にはさらにすべてを取り仕切るボス、”名前のない男”と称する謎の人物がいる。いかにも悪役然として描かれる彼らの正体は不明だが、Gabrielの出発点などから見てもロシア、旧東側と目される地域に彼らの拠点があるのは確かと思われる。そして彼らは思想・政治的な動機で動いているのではなく、何らかのクライアントを得て、その手段などを提供し、テロを実行しているのだということも次第に見えてくる。そして彼らは最終的にはそのクライアントを裏切り、テロをそのクライアントも考えていないさらに大きな破壊的結末へ導こうとするのである。これはまるでいかにも悪役然として描かれた謎の人物らの悪意による行動のように読ませるのだが、その規模やそれに至るための手段などを考えると明らかにもっと大きな目的があるとしか考えられない。これに至る手段・手順も最低限しか描かれず、そしてこの人物・組織についての情報をどのような形でアメリカ側が入手し、それがなぜどれほどの重大事とみなされ、NSAとCIAが共同して動くほどの事態になったかの説明は一切なされていない。つまりこの作品、実は背景となる部分の説明がほとんどないのである。

さてこれをどう見るか?ただの雑な欠落?あの常に複雑な事態に追い込まれギリギリの活路を見出してきたアティカス・コディアックシリーズを書いたルッカが?あの国内外の様々な利害関係の軋轢の末、やっと行動に至る英国情報部マインダータラ・チェイスの苦痛に満ちた戦いを描いたルッカが?我々はグレッグ・ルッカという作家を知っているのだ。これはルッカが考えてなかったり、サボったり、雑に省略したものではない。明らかに意図的に書かなかったものである。そして前回Queen & Countryシリーズ第2回でも書いたように、彼はシリーズ内の連続性にこだわる作家であり、そしてこれはJad Bellシリーズと宣言され始まったシリーズなのだ。となればこれは今回は明かされない情報であり、そこから考えてシリーズが進むにつれ少しずつ謎は明かされ、更に話は拡大し、結構スケールの大きいものになるのではないか、と想像するのが妥当なところではないでしょうか!
そしてここで少し前の疑問に戻るのです。なぜルッカはこんなベタなハリウッド・アクションを書いたのか?これはつかみ、この作品全体が007映画で言えば冒頭の部分にあたるのではないか、というのが私の推測です。やっぱりルッカは描写も上手く、それぞれ別のキャラクター視点によるシーンの切り替えも巧みで、そういう物語をたいへんテンポよく読ませてくれるます。そして最後の最後、ある地点で主人公Jad Bellは恐るべき非情ともいえる戦士の顔を露にします。これが私の願望などによる強引な深読みの類ではないことは、クライマックスともいえるシーンが誰の視点で描かれているかを見れば明らか。そしてそのまま畳みかけるようにして結末へと向かい、いかにも「To Be Continue!」の文字が突き出されるようなエンディングを迎える。そしてここで!バーン!と!007のあの銃口の中からのオープニングが今入ったところなんじゃないの!というのが私の読みであります。

誰がコアラじゃ!コラアッ!
となれば早く次の『Bravo』を読まねば!…というところなのですが、このシリーズ今作が2012年で、次の『Bravo』が出たのが3年後の2015年、で第3作は当然『Charlie』となるはずだがこれについてはまだMulholland Booksの2017年冬の発売リストにも載っていないのであります。コミックの方でも忙しいルッカゆえ小説の出版はどうしてもスローペースに。まあ今のところ小説家グレッグ・ルッカに関しては、「いつ動くのかしら?」と動物園のコアラちゃんを見るような気長な気持ちで見つめて行くしかないところでしょう。
まあとは言ってもQueen & Countryシリーズコミック版を読み終えれば私としても早くそちらの続きも読みたいということになり、両シリーズをごちゃまぜに読むわけにもいかんので、Queen & Countryシリーズ小説版の続きに取り掛かる前に『Bravo』も読み終えるつもりです。そんなわけで今度Queen & Countryシリーズ第3回が登場する際には、続いてJad Bellシリーズ第2作『Bravo』という感じでまたしてもルッカ特集!という感じになると思います。まあ私の説がちょいと強引じゃないの?とあまり信じてない人もいるでしょうが、その時にはちゃんと証明してやろうじゃないの!んー、でも間違ってたらその時には素直に謝りますです。ごめん。

ここで日本でのルッカ観について一言。なんだかこの世のすべての事象はスポーツ選手のモデルケースで説明がつく!とでもお考えの先生が、アティカスシリーズはピークを過ぎて下降に向かっていたのでここで終わってよかったのである、と仰っておるのだがみんなそれ信じてるの?先生はシリーズの話の方向が変わったあたりがお気に召さないようでそこのあたりを「下降」とみなしているようだけど私は全然そうは思わなかったけど?前にも書いたけど、アティカスっていうのは明らかにルッカ自身の分身。で自分の分身ゆえにあまりにも色々なものを取り除くこともせずに乗せすぎちゃったためもはや現時点では身動きも取れなくなってしまい、まあ当分は無期限休止ってことで俺の分身よ異国の地でしばらくは静かに幸せに暮らしてくれや、っていうのがルッカの考えだろうというのが私の感想ですが。と言っても所詮はこっちも感想であっちも感想。反論で討論を望む!なんてつもりはまるでないのだが、但し!もしかしてその先生の御説が拡大解釈されて、「ルッカはピークを過ぎて下降に向かっている作家である」なんて考えが広がっているのでは?というところが私の危惧するところなのです。ルッカは前述の通り小説の出版ペースは遅いもののコミックとの両面で今も乗りに乗っている作家であるなんてことはもはや説明するのもめんどくさい。ただでさえ翻訳というハードルがある海外の作家の作品が、先生が得々と披露された御説による風評被害により作家自体の評価が根拠なしに下がり、出版が控えられるなんて事態になるのは迷惑千万としか言いようがないのですよ。もー先生お得意のその御説は、今後はピークを過ぎちゃっても出てれば誰でも手に入る日本の作家限定で使用願えないかというのが私の提言であります。

前から書いているようにアメリカでは小説とコミックの両面で活躍している作家が多数います。しかしその中でもルッカは少し特殊なように思えます。例えば小説家として人気が出た後コミックを手掛けるようになったスウィアジンスキーやヴィクター・ギシュラーといった作家はあくまでも小説の方をメインに置いてコミックの仕事もしています。またコミックのライターとしての才能をさらに広げた形で小説も書いているウォーレン・エリスという人もいます。それに対しそのキャリアの初期から小説とコミックのライター両面で活躍してきたルッカは、今でもその両者に同じウェイトを置いて活動を続けている作家なのだと思います。そんなわけで小説の出版ペースはどうしても遅くなるのだが、一方でルッカの作家活動は絶え間なく続いているわけです。となるとグレッグ・ルッカという作家をちゃんと追って行くためには小説・コミック両面で追っていかなければということになるでしょう。とりあえずはQueen & Countryを早く読み終わり次はImage Comicsで進行中の『Lazarus』か。少し遅れてしまいましたが今後はルッカ率が高くなるよう努力して行くつもりというところの2回にわたってのルッカ特集でありました。
以前も書いた通りMulholland Booksからのこの作品、日本からはKindle版は購入できないのですが、少し前に280 Stepsなどを調べているときに見てみたらKobo版は発売されているようです。辞書も使いやすいeBook版をという人はそちらを見てみるとよいかと。色々見てみると中堅以上ぐらいのパブリッシャーでは割とマルチで色々なeBook版を発売しているところが多いので、読みたい作家の本がAmazonのオプションで日本の発売がないというときはKoboを見てみると見つかるかもしれませんよ。ただ、MulhollandとかになるとあんまりeBook値引きがなかったりするので、日本と違って定価縛りのないプリント版ペーパーバックなどを探した方がお得なのが見つかるのだけど。あとルッカさんのホームページ、「ここ古くなったからそろそろ新しくする」って5月から言ってるのだけどいつ変わんの?

Greg Ruckaホームページ


【その他おしらせの類】
なんか前回色々きつくて余力がなく今回はいいやとか思っていたらお知らせが溜まってしまった。今回まずはあのHard Case Crimeがコミックに進出というニュース。過去の名作の発掘のみならず、最近はTVシリーズも始まり話題の『Quarry』シリーズ最新作も発行など、今や目が離せないHard Case CrimeがTitan Comicsと組みHard Case Crime Comicsシリーズの刊行を開始しました。なぜHard Case Crimeが英Titan Comicsからかというと、現在Hard Case CrimeはTitan Comicsと同じく英BBC系列のTitan Books傘下にあるからなのです。そしてその第1弾『Peepland』Issue1が10月12日発売されました。ライターはあの少し前にDown & Out『3 the Hard Way』のセールをお知らせしたGary Phillips。この人も小説・コミック両輪で頑張っていてルッカの後を追う人かも。今後はマクベイン、スピレインらの過去の名作も刊行予定ということで私的にはかなり期待が高まっております。Hard Case Crime印のコミック欲しい!

the Gurdian / Trigger warning: the return of sleazy crime comics

そして、先月書いたばかりの現在最も注目のAdam Howe君の長編第1作が発売決定!前作までと同じComet Pressから12月9日発売予定となっております。この作品では前に紹介した中編集『Die Dog or Eat the Hatchet』収録の傑作「Damn Dirty Apes」の主人公元ボクサーの用心棒Reggie Levineが再登場とのことで、かなり期待も高まるところ。発売されたらまた色々前倒しして早く読もうっと。Reggieシリーズの予定もあるのかな?やはりこのAdam君注目度も上昇中のようで、前に通りすがりぐらいの感じでちらっと書いた新進ミステリ作家によるグループのサイトDo Some Damageに作家Scott Adlerberg氏によるAdam君への新作発行に関するインタビューも掲載されています。実はこのAdlerberg氏、私同様『Die Dog or Eat the Hatchet』に感動し5月にもインタビューを同サイトで行っており、そちらはページ内にリンクがあります。とにかく何を置いてもこの最新作は読むべし!

Do Some Damage / Tijuana Donkey Boy: An Interview with Adam Howe

あとこれはセールとかなのかよくわからないのだけど、同Comet PressのホラーアンソロジーThingsシリーズ3作をまとめたボックスセット『Stiff, Sick and Vile Things Box Set - Three Complete Comet Press Anthologies in the THINGS Series』が現在404円で販売中。最新作『Stiff Things』に1ドル乗せたぐらいの価格なのでかなりお得かと。なかなかホラーまで手が回らず読めるんかなあ、とは思いつつもかなり期待していてもっと深く知りたいComet Pressゆえとりあえず買っときました。何とか少しずつでも読むよう努力したい。

そして最後に日本で私以外に関心持っている人いるのかも不明なドイツの新読書アプリOolipoの最新情報です!先週半ばごろ遂に最初のアップデート!色々変わったり、作品が増えたり減ったりしました。前回の報告で私がスルーした『Taste of Love』がなぜか消えてるのだけど、もしかしたらものすごくエロ過ぎてアップルから削除指令が下ったとか?なら読んどきゃ良かったよ。そして今回のアップデートで音が入りました!前回ちょっと読んだ『Apocalypsis』をもう一度見てみたところビュービューってな感じの吹雪の音がバックに流れるようになっていました。たぶんそれぞれの作品に合わせた効果音的なものが流れるようになるのでしょう。まだ読めない作品も多いようですが、今度はリリース日時なども書かれているので、今後は色々なのが読めるようになってくるのだろうと期待します。あと今回からこれまでいい加減になっていたアカウントをちゃんとしなきゃならなくなったのだけど、それが少しややこしくて、もしかすると私同様に少し困った人も地球上に一人ぐらいいるかもしれないので書いておきます。まず前のメールでちゃんと認証していなかったので、アプリ内の色々なところに出てきたアカウント関係の警告の下の方にある[RESEND](だったと思う)をタッチでもう一度認証用のメールを送ってもらいます。今度のやつはちゃんとリンクがつながっているのだが、ここで問題。私のようにPCではPC用のメールを使い、スマホでは携帯からのメールを使い続けているという状態で、習慣からアカウントを作る場合はPCのメールアドレスを使っているという場合、PCの方でメールを開き認証しようとしたりしますよね。この場合それだとダメでスマホの方でメールを開き認証しなければいけない。うーん、こういう説明になるとどうもうまくないのですが、とにかく[RESEND]で認証用のメールを送ってもらったら、同じスマホ上でメールを開き認証を送ること。これでちゃんとアカウントが使えるようになり色々読めるようになります。一人ぐらい困ってた人いるよね?えー?私だけ?

Oolipo

10月も後半になり、とうとう気温も下がって参りましたが色々と体調にはお気を付けくださいませ。まずオレ。寒さが極端に苦手で毎年ながらこれから年末に向かいペースダウンの恐れがありますが、書かねばならんことは沢山ありますので何とか頑張って行くつもりであります。ではまた。



●関連記事

グレッグ・ルッカ Queen & Countryシリーズ -第1回

グレッグ・ルッカ Queen & Countryシリーズ -第2回


●Jad Bellシリーズ



●Lazarus



'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2016年2月20日土曜日

Point and Shoot -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー最終作!-

※注意:これはドゥエイン・スウィアジンスキー作Charlie Hardieトリロジー最終作『Point and Shoot』についての感想です。できれば第1作『Fun and Games』、第2作『Hell and Gone』についての感想を先に読んでもらった方が良いのですが、もっと言えばこの三部作はめちゃくちゃ面白い大傑作なので、こんなもの読む前にまっすぐ実物の方をお読みください!

Fun and Games -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー開幕!-

Hell and Gone -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー第2作!-

というわけで、遂にCharlie Hardieトリロジー最終作『Point & Shoot』読み終わりました!…のですが、うーむ、本当はこんな面白い本について内容を少しでもバラすような事は書きたくないのだが、ここまでやってしまったのだし仕方ない。もう一度繰り返しますが、何にも知らないでとにかく読んだ方が絶対面白いですよ。ということで今作『Point & Shoot』のさわりだけを少し。また前作『Hell & Gone』のネタバレを含んでしまいますのでご注意ください。


地底の牢獄からの脱出を果たしたCharlie Hardieは、その足で自分をそこに送り込んだ相手への報復に向かう。だが、当の相手から聞かされたのは意外な言葉だった。

「我々のそもそもの目的は、君のその何があってもしぶとく生き残るという才能を見込んで、ある仕事を依頼することだった。話すら聞いてくれない君に対し、あのような処置をとるしかなかったのだ。ここで改めて提案する。我々の仕事を引き受けてくれれば、その後、君と君の家族の安全は保障する。」
Hardieの妻と息子はこの瞬間も常に彼らの監視下にある。Hardieは彼らの申し出を受け入れる。

そして、Hardieの乗り込んだロケットは空高く発射される…。

そして『Point and Shoot』-

「そこは危険だ!今すぐCJを連れて家を離れろ!」
受話器からHardieの元妻Kendraの耳に飛び込んできたのは、ずっと行方知らずになっていた元夫Charlieの声だった。

だが、Kendraは家を離れることはできない。
息子CJからの少し様子のおかしい電話が気になり、慌てて家に帰ったのが4時間前。だが、家にCJの姿は無く、そればかりか何者かにセキュリティシステムを乗っ取られ、見たこともない「家から出るな」という警告が表示されるとともにドアがロックされ、ただ一人自宅に閉じ込められている。
そこへ長い間行方の分からなくなっていた元夫からの電話…。

「今すぐそこから逃げるんだ!」

だが、そこへHardieには聞き覚えのある声が割り込んでくる。
「無駄だ。あんたの家族はそこで死ぬ。そしてあんたにはどうすることもできない。」

しかし、Hardieはその声に向かって言い放つ。

「いや、俺にはできる!」

その3日前-
Hardieは地球を巡る軌道上の人工衛星にいた。
彼が依頼された仕事とは、この誰の手も届かない人工衛星に隠された彼らのもっとも重要な秘密情報をここで守ることだった。その人工衛星の中でただ一人で。だが、その誰の手も届かないはずの衛星に、突如奇妙な揺れが走る…!


というわけで、ここまで!これ以上は口が裂けても言うものか!
…というところなのですが、ここからはこの3部作の構造に関する重大な秘密をバラします。くどいようですが、ここから先は未読の人は絶対読まない方がいいですよ。…って何だろう、こんなにしつこく読むなと言ってるこの珍妙なブログは…。というのも、実はこれって本当に書いてしまっていいのだろうかとちょっと思っているのですよね。もちろんストーリーの内容とかに関することではありませんが、ある意味それに等しい物なのではないかと。これは読んでいるうちに、あっ、と気付き、そうか、まんまとしてやられた、と思うべきものなのですよね。とは言っても前の『Hell & Gone』の感想の中で、これはこうなっている、というような予測を書いてしまったので、その結果を書かないわけにもいかないので。
では覚悟のほどはよろしいでしょうか。

さて、この3部作第2作目の『Hell & Gone』についての感想の中で、「この3部作はそれぞれ違ったジャンルの3作で構成されることになる」と予測を立てたわけですが、それは一応当たっていました。ただし、一部だけ…。(あ、ちなみにそのジャンルについては今回最後に発表します。ここで書くとその方向で話しているうちに内容をバラしてしまう恐れがあるので。)そしてこの3部作の本当の正体はというと、実は3本立て映画だったのです!
例えば、ここではブルース・ウィリスとしましょう。「ブルース・ウィリス主演映画特集3本立て」というのを観に行くわけです。3本ともブルース・ウィリス主演の映画ですが、それぞれ全く違うジャンル、1本目はアクション、2本目はホラーとか。主人公の名前も設定も全然違う。でも主人公は全部ブルース・ウィリス。それじゃあ全部つなげてブルース・ウィリスという人が主人公の話にしちゃえ。というわけで1本目から2本目、2本目から3本目へとつながる話を考え、前のから結構時間が経って少し老けたりハゲが進行しちゃってる、とかいうのにも色々つじつまを合わせて…。という感じでできた「オレ脳内ブルース・ウィリス物語3部作」みたいなほぼ子供の発想をまんまと小説の形でやってのけたのがこのCharlie Hardieトリロジーだったのです!
私がやっと気づいたのは、ほぼ最後に近いあたり。うわっ、そうか!まんまとやられた!このヤローって感じ。そうなると今までの奇妙な設定や違和感の理由もすべてわかってくる。思えば最初からヒントは出ていたのだ。この3部作、常に章の始めに映画のセリフからの引用があり、それが映画の中の役名ではなく役者名で書かれていたのです。
ザマーミロ。テメーは読みが甘いんだよっ。
そんな出鱈目な遊びをやりながらこの3作、それぞれ単体で読んでも読み始めたら止まらないくらいの傑作!全くとんでもない人です。前作を読んで「わかりましたよ!この3部作こうなるんでやんしょ!」と得意顔で私が言ったとしたら、「フフ~ン、なるほどね~」とか言ってあの人相の悪い面でニヤニヤほくそえんでいるスウィアジンスキー氏が見えるようです。まったくいいお客さんになってしまったのだが、それも光栄と思うべきでしょう。本当に心の底から楽しめた大傑作、絶対おススメの3部作です!え?今作あんまりHardieが活躍してないって?どこ見てるんですか。大活躍じゃないですか!

それから、前回の『Hell & Gone』についてはもう一つ。私のこの3部作への考えからの予測で一部違っているところがありました。まあそうなるよね。だって別の映画だもの。これに関しては私の負けです。すみませんでした。今作の内容にかかわるところなので詳しくは書きませんが、読んだ人ならお分かりかと。いや、読んでない人に謝るいわれなどは無い!だから読んでくださいよ。いくらでも謝るから。

しかし、まあ、この3部作本当に楽しく読んで、原書を読むようになってからはずいぶんいい本が色々読めるようになってはいるけど、こんなにわくわくして早く続きを読みたくなるような感じで楽しく読めるような本を読んだのはいつ以来だろうと考えると…あー、割と近い、『The Wheelman』じゃん!そんなわけで私的には、もう小説だろうがコミックだろうが、100パーセント確実に満足させてくれるこのスウィアジンスキー印のものは何が何でも全部読む!、いや読まずにはおくものか!、というところであります。

版元のMulholland Booksについてですが、スウィアジンスキー作品では次作『Canary』が出版され、他にも以前Queen & Countryの時に触れたグレッグ・ルッカのJad Bellシリーズや、ジョー・R・ランズデールのハップ&レナード最新作『Honky Tonk Samurai』といった作品も出版され、このジャンルでは最要注目のパブリッシャーとなってきています。まだ名前の知らないeBookオリジナルあたりの作家についても今後は調べてみようと思っています。

Malholland Books

それでは最後に今作のジャンルについて発表します。最終作である今作はバディ・ムービー!『48時間』とか『ラッシュアワー』みたいなやつ。古典的パターンのギャグとかもあって、1作目よりも更に笑えます。さて、バディ・ムービーとなると当然相棒がいるわけですが、それはなんと…?まあ、これは前2作読んでても絶対当たりませんから!


●関連記事

Fun and Games -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー開幕!-

Hell and Gone -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー第2作!-

The Wheelman - ケイパー小説の傑作! -


●Duane Swierczynski


'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2015年12月30日水曜日

Hell and Gone -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー第2作!-

※注意:これはドゥエイン・スウィアジンスキー作Charlie Hardieトリロジー第1作『Fun and Games』についての感想の続きです。未読の人はできたらそちらを先にお読みください。

Fun and Games -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー開幕!-

緊急!実は他に順番的には先に書かなければいけない本もあるのだけど、これについてはとにかく急いで前倒しして書かなければいけないのだ!


とりあえず、まずは今作『Hell and Gone』のあらすじなのですが、前作『Fun and Games』のネタバレを含んでしまいますのでご注意を。

前作『Fun and Games』のラスト、謎の’事故屋’との戦いに決着を着け生き延びたHardie。だが、満身創痍で救急車に乗せられたHardieは予定されていた病院に現れることはなかった…。

’事故屋’たちの背後に潜む’彼ら’は語る。「彼こそがあの仕事のために探していた人材だ。」

そして『Hell and Gone』-


Hardieは救急車の中で目覚める。何やら救急隊員であるはずの連中の話が気に入らず、拘束を解こうと試み始める。「おい、こいつ目を覚ましてるぞ!」強力な麻酔を射たれ、Hardieは意識を失う。

次に目を覚ましたのはどこかのガレージの中。救急車から別の黒いヴァンに移し替えられようとしている。意識を取り戻し、暴れるHardie。「こいつまた目を覚ましてるぞ!」そして麻酔を射たれ再び意識を失う。

そして、Hardieはヴァンの中で目を覚ます。「こいつには普通の量の麻酔じゃ効果が無いんだ。」そして更に大量の麻酔を注入され、Hardieの意識は暗黒に沈み込む…。

一方、前作終盤でHardieがやっとで連絡を付けたFBI捜査官のDeacon "Deke" Clarkは、微かな手がかりを追い消えたHardieの行方を単独で探し続ける。だが、遂には彼にも’彼ら’からの脅迫の手が迫り、断念せざるを得なくなる。こうしてCharlie Hardie探索救出の望みは完全に断たれる…。

そして、Hardieはどことも知れぬ窓もない一室の中で目覚める。見たこともないスーツを着せられ、椅子に座らせられ、右手は手錠で繋がれている。最後に意識を失くしてからどのくらいの時間が経ったのだろうか。傷はすっかり治っているようだが…左手と右足がほとんど麻痺して使い物にならない?
そして、Hardieは杖を手渡され、告げられる。「あなたにはこれからエレベーターで下に降り、ある仕事についてもらう。」
その部屋からの唯一の出口であるエレベーターに乗り下降するHardie。彼が着いたところは地下深くに作られた謎の監獄だった。そこに閉じ込められている謎の「看守」達。そして更にその中で牢獄に閉じ込められている謎の「囚人」達。Hardieはそこで「刑務所長」として迎え入れられる。彼らは何者で、なぜそこに捕えられているのか?そしてHardieはその監獄から脱出することができるのか?


驚愕。前作の、不死身の男がL.A.を疾走するアクション・ストーリーが、一転し閉鎖された地下の牢獄を舞台とするソリッド・シチュエーション・スリラーへ!
それではまずはこの作品に対して予想される「エンターテインメント小説ファン」氏の感想を見てみましょう。

がっかり
 前作『Fun & Games』がなかなか面白かったのでこの続編を読んでみたのだが、一読してがっかり。

 前作ではちょっととぼけた不死身の主人公Charlie HardieがL.A.を駆け巡るアクションとユーモアあふれる快作だったのだが、今作では謎の監獄が舞台のダークなホラー的作品になっている。前作の良さが微塵も感じられず、作者がなぜこのような方向転換をしたのか全く理解できない。そもそもどこかの地下深くに作られた謎の監獄などという設定自体に全くリアリティが感じられない。

 三部作ということで次回は1作目のようなCharlie Hardieの復活を期待したいが、望み薄かな。★1つ(CV : ブラッド・ピット または山寺宏一)

むきー、なにを偉そうに!と、まずはイマジナリー・エネミーにキレてみる。こーゆーリアリティと日常性を混同している人に限ってあたかもそれが何かの基準のようによく考えもせずに「リアリティがない」とか言いますよね。じゃあ謎の監獄が新大久保の雑居ビルの中にあったら納得したわけ?
まあ、こういう人アメリカのAmazon.comのレビューにもいました。結局のところこういう人たちって小説などを読むときに勝手にその内容を想定し、それが期待したものと違った時頭をそちらに切り替えられず、もーあっちこっちで自分の言葉が無い輩が使いまくり変な虫みたいに見えて来たお馴染みの「コレジャナイ感」(うわっ、オレのブログに変な虫がっ!)ってやつを引きずりながら否定的に読むことしかできず、作品を楽しめなかった哀れな人たちなのでしょう。たぶんこういう人たちの期待したCharlie Hardieトリロジーって

  1. 『Fun & Games』謎の’事故屋’によるハリウッドの女優の暗殺の企みに巻き込まれた不死身の男Charlie Hardieの活躍!
  2. 『Hell & Gone』’事故屋’の背後に潜む’彼ら’によりその計画のコマにされた不死身の男Charlie Hardieは、アメリカの大都市を大災害に巻き込む陰謀を阻止すべく走る!
  3. 『Point & Shoot』不死身の男Charlie Hardieが大統領暗殺の陰謀を阻止すべく走る!
というようなところでしょう。
オレがドゥエイン・スウィアジンスキー様だぜ
だが!これは何らかの思い付きによる方向転換などではありえない!この一連の作品は最初から「三部作」とアナウンスされている。そしてこの作者ドゥエイン・スウィアジンスキーは何をやらかすかわからない男である。これは明らかに当初からの計画的犯行!(犯行?)このいかにも性格の悪そうな(顔つきからの推定)スウィアジンスキー氏が「へっへー、全部違うタイプの小説3作で三部作を作って読者をビビらせてやるぜー。オレがフツーの三部作書くわけねーだろっ。」とほくそ笑んでいるのが目に浮かぶようです。

また、米Amazon.comのレビューの中には100ページで読むのを止めたという人もいました。そういう人にレビューする資格があるかというのは別にして、ある意味その人の方が正解です。大体その辺りでこの作品が前作のようにはならないというのが見えてくるわけです。自分の読みたいものと違うとわかったならそこで捨ててしまうのも一つの選択。世の中には「期待」に100%応えてくれる作家なんて山ほどいるのでそちらだけ読んでいても一生読む者に困らない。思い込みの「期待」を引きずったまま否定的に読むよりよっぽどマシ。

また、以前に美味いパスタを食べたレストランに入ったらお好み焼きを出された、なんて例えを出したい人もいるかもしれないが、それは違う。この店の看板にはドゥエイン・スウィアジンスキーとしか書かれていない!そしてこの店主は何をやるかわからない男である!それを見抜けなかったあなたが悪いのだ!

そしてその「前とは違う!」と気付いたあたりで頭を切り替え、そういう小説を読むつもりで読み進めれば、もーさすがにこのスウィアジンスキーの手腕で、数ページ刻みで、新たな謎が提示され、秘密が明かされ、どんでん返しが起こる、というめまぐるしい展開!私も結構コミックに充てる時間を削って読みふけってしまいましたよ。わー、100ページで止めて損したね。

あとちょっとこれはネタバレとまでは行かなくても少し展開を明かしてしまうようなので書こうか迷ったのだけど、誤読予防のためにあと一つ。この監獄の謎が最終的に明かされると、それは割とポピュラーなあるものに分類されます。で、世の中にはそうやって何かに分類できたことを自分の評価と勘違いしてしまう人も多いわけで、「この監獄の謎というのも結局は○○○だしね。」(CV : ブラッド・ピット または山寺宏一)とか言い出されると腹が立つので言っておくが、この監獄については実は結末が書かれていない。それはこの作品が次に続く第2部だから。そんなわけでその種明かしが結末のように見えてしまい、「結局○○○だよね」(CV : 同)族が横行しそうなので、その読みは浅い!とあらかじめ指摘しておきます。大体分類できたことで評価できたなんて思いこむこと自体中学生レベルなのですが。

と、またしても長々と書いたわりには要領を得ないものになってしまっているのですが、結局のところ何が言いたかったかというと、これは絶対に面白いスゲー本なので読み間違えるな!ということ。作品の方向性から、前作のようなユーモアは少し薄れているけど、前にも書いた構成や読ませ方のうまさは変わらず、少なくとも自分としては文句のつけようのない本当に楽しめた作品でした。
そして今回なんでそんなに急いで前倒ししてまでこの作品について書いたかというと、ここまでに書いてきた通り1作目とは全く違うタイプの2作目を仕掛けてきたスウィアジンスキー、3作目はさらに予想もつかないモノを出して来るのは確実。というかこの2作目のラストがすでにとんでもないことになっているのですが。そうなれば第3作を読んだ印象を含めてこの第2作を語るなどというズルをしてはいかんのだ。Charlie Hardieシリーズについては全部読み終わった後、三部作を俯瞰しオレハードボイルド論に沿ってまとめるつもりである、なんていうのはもってのほか。きちんと、うっひゃースウィさんビックリしたよー、次どーなるの?という感想を書きとめてから次に進むのが正しい本との付き合い方。そして私はこの次の第3作『Point and Shoot』を一刻も早く読みたいのだ!そんなわけで自分内優先度も読んだ本の順番も無視し、今回はこの『Hell and Gone』について前倒しして語ったわけです。こーなったら第3作『Point and Shoot』についても読み終わったらすぐに書くつもりです。とにかく私はこのドゥエイン・スウィアジンスキー屋を完全に信頼しているので、次に出てきたものがたとえスリッパオムレツだったとしても「Droook」と叫んで必ず完食します。でももしその時「やっぱ私の読み間違いで3作目は1作目みたいな感じでしたー。てへっ」ということになったら素直に謝りますですよ。それでよし。さあ、これで『Point and Shoot』をいつでも読めるぞっ!


というわけで、緊急だの前倒しなどと言いつつ、またブログ的には少し空いてしまいましたが、その辺は年末ということでお許しください。まあ、なんとか年内に間に合って、今回が2015年最後となりました。それではよいお年を。来年もまた気が向いたら見に来てくださいね。


●関連記事

Fun and Games -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー開幕!-

The Wheelman - ケイパー小説の傑作! -


●Duane Swierczynski


'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

2015年11月1日日曜日

Fun and Games -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー開幕!-

遂に、というかやっと再登場のドゥエイン・スウィアジンスキーのCharlie Hardie三部作第1作の『Fun and Games』です!
近年のハードボイルド/ノワール/クライム・ノヴェルの中でも最も活きのいい、最注目で作品を追って行かなければいけない作家と思いつつ、こんなに遅れてしまったのはただ私がまだまだ洋書を読むのが遅いだけじゃなくて少し事情があります。ずっとこのブログでは小説に関してはKindleで発売されているものを扱ってきたのですが、この作品については現在日本ではKindle版が販売されておりません。確か5月ぐらいまではあったと思うのだけど、なんだか気が付いたら無くなっててそのうちまた出るだろうと思っていたのだけどずっとそのまま。どうも版権が移動したためらしくて、そのため現在はMalholland Books発行のこのCharlie Hardieトリロジーと最新作『Canarry』はアメリカ国内以外ではKindle版は販売されていないようです。どうしたものかと困りながら日々を過ごしていると、ある日天からフランス貴族階級の声が。

「Kindle版が無いならプリント版を読めばよろしいのに」(CV:ガチャピン)

そーかその手があったか!気付かないのはお前だけだっ!というわけでプリント版を注文し(意外とKndleで出てたのより安かったり)やっとのことで読み始めたのでした。やはりどこでもすぐに辞書を引けて便利なKindleなのだけど、まあそれほど辞書に頼らなくてもプリント版でも読めるようになってめでたしめでたしなのだけど、そんな事情でずいぶんと意気込みよりも遅れてやっとの登場となったわけでした。まあ、色々と外国の本を読むのは厄介ですね。というわけで『Fun and Games』です!

ではまず、この作品と続く3部作の主人公であるCharlie Hardieとは何者なのでしょうか?
少し前まではフィラデルフィアで警察に協力する仕事をしていたが、ある事件をきっかけに今はその仕事から離れている。現在の仕事はハウス・シッター。大金持ちが旅行などでしばらく自宅を空けるときその留守宅に滞在して盗難や災害から邸宅を守るという仕事。元警察関係の仕事をしていたという信用もあり、口コミで仕事が途切れることはない。いざとなれば全力で責任を果たす人物だが、以前の仕事を辞める原因となった事件のせいで無気力になり、その仕事で滞在中も一日中映画のDVDを観ながら酒を飲んで暮らしている。
そしてこのCharlie Hardieが今回はある大物の映画のサウンド・クリエイターの邸宅を守るためL.A.へ行き、そこで大変な事件に巻き込まれて行きます。以下がそのさわりのあらすじです。


彼女はデッカー・キャニオン・ロードで事故に直面していた。ウェストレイク・ヴィレッジまでの12マイル、ヘアピンカーブに次ぐカーブ。ルート23から入ったところから追い込みをかけてきたシボレー・マリブ。スピードを落とすことはできない。謎の追走車にぴったりと張り付かれたまま彼女は危険なカーブに次々と突入して行く。
彼女の名はLane Madden。女優。様々なストレスからちょっとした気晴らしに車を飛ばしていただけなのに…。

合衆国内における自動車事故の死亡者数は、年間43200人。

マルホランド・ストップの信号で彼女はなんとか難を逃れる。悪質なイタズラだったのだろう。自分を殺そうなどと企んでいたわけではないのだ…。

だが、彼女の殺害を企むチームはひそかに彼女の動向を窺っていた。あくまでも事故に見せかけて…。そして、次のシナリオが動き始め、Laneは再び危機に陥る…。

空港に到着したCharlie Hardieは早速最初の災難に見舞われる。荷物受取所で待てど暮らせど彼のスーツケースは現れない。幸い最も大切なものを入れたバッグは、いつものように肌身離さず機内に持ち込み無事だ。紛失届を出し、レンタカーを借り、とりあえずは今回の仕事先に向かう。

依頼人のサウンド・クリエイターとは先方の出発前に会い、直接鍵を渡されるはずだったのだが、急遽予定が変更になりすでに出発していて、鍵は郵便受けの中においていったとのこと。…だが、無い…?やむなくHardieは道を探し、屋根によじ登りそこから広いベランダに降り、邸内に入る。
とりあえずは点検がてら邸内を見て回るHardie。だが、そこに突然邸内に潜んでいた謎の人物がマイクスタンドを振りかざし彼に襲い掛かる!その人物こそ前夜、デッカー・キャニオン・ロードで危機に陥っていた女優、Lane Maddenだった!?


と、ちょっと書きすぎてしまったような気もしてしまうが、まだほんのさわりでこれからめまぐるしくストーリーは展開して行きます。とにかく次から次へと意表を突く展開を畳み掛けて楽しませてくれるスウィアジンスキー作品なので、本当は全然内容を知らないまま読んでもらうのが一番なのですが。ちょっとどこから話したものか迷ってしまうのだけど、とにかくこの人は上手い!派手なアクションシーンと怒涛のように疾走するストーリーに押されるように読んでしまうのだけど、実は緻密な構成で組み立てられていて本当に「読まされる」という感じ。そして彼の得意技であるユーモアは今作は特に冴えていて、これはもう「笑える」を強調してもいい作品ではないかと。

実はスウィアジンスキーの得意とする手法の一つはわりと昔からあるものだったりします。登場人物が絶体絶命のピンチに陥るが切り抜ける。登場人物が確実に死んだと思われる状況に巻き込まれるが、実は生きていた。などというもの。しかしそこにスウィアジンスキー流のアレンジがあり、登場人物が絶体絶命のピンチに陥る→死ぬくらいのダメージを受ける→が切り抜ける、とか、登場人物が確実に死んだと思われる状況に巻き込まれる→本当に死んだぐらいのダメージを受ける→が、実は生きていた、などとなるわけです。で、そうなると本当に死にそうになるような流血だったりエグイシーンが書かれるわけで、この辺の味の濃さが「暴力的すぎる」とか解釈されて日本の薄味好みの「エンターテインメントファン」に敬遠されて翻訳がストップしてるところなのでしょうか。
スウィアジンスキーのこの手法はコミックでも顕著で、お馴染みValiantの『Bloodshot』でも、この人主人公が不死身だからってホント無茶苦茶するよなあ、と思っていたらダークホースの『X』(もう少し読んだらなんか書きます)でも主人公Xがかなり死ぬくらいの目に遭ったいたりもします。もしかしたらコミックのライターをしているうちにこの手法を加速させていったのかもしれないなと思い、早く『Cable』とかにもさかのぼって読んでみないとな、と思っていたりもします。ちなみにCableというのはXメンのサイクロプスの息子で、オッサンではなく胸についている赤ちゃんが本体です。というウソを画像を見ているうちに思い付きました。いつか『Cable』の事を書くときにまた使いまわそう。本当のところを知りたい人は自分で調べてみよう。ややこしいぞ!

さてこの作品の主人公Charlie Hardieですが、上のキャラクターについての文章を読むと暗くて沈鬱な感じなのかな、と思うと意外にすっとぼけた感じの人だったりします。というよりすっとぼけた感じに描かれているというのが正しいかな。色々と過去に抱えているため、自殺願望というほどではないけど、どこか最後の最後では少し生命への執着が薄いところもあり、何度も死にそうになり、ああ、今度こそ死んだな、と諦めかかるのですが、まだ生きていて、そっか、生きてんなら仕方ないからまだ頑張んないとな、みたいに立ち上がる人です。前述のスウィアジンスキーの手法が一層加速された本作では、主人公Charlieは何度も瀕死の目に遭いその度に立ち上がって行くのですが、その様子はもはや不屈の男、というよりは不死身ギャグといったものになって行きます。

そしてスウィアジンスキーの文体には、第三者の語り手がいて物語を語っているような独特の「スウィアジンスキーノリ」みたいなのがあってそれがテンポよく読ませてくれたり笑わせてくれたりとても楽しく読ませてくれます。『The Wheelman』でも今作でもその文体だったので翻訳された2作もそうだったのだろうと思うのですが、その辺はあまり活かされていないように思いました。まあ難しいんだろうけど。自分もその2作は原文を読んでいないのではっきりしたことも言えないけど。
ついでに前に中途半端なまま放っといたその邦訳2作について少し書いておきます。まあこの天才の作品なので薄味に慣れ過ぎちゃった偏食の「ミステリファン」以外の人なら2作とも楽しめることと思います。
ただ『メアリー・ケイト』については『The Wheelman』のかなり重大なネタバレがされているので、できればそっちを先に読んだ方が良いと思います。自分的には『The Wheelman』はもう十数年に一冊ぐらいのケイパー小説の大傑作だと思っているので、悪党パーカーとか好きな人は絶対に読まないと損ですよ。
『解雇手当』については、前2作に比べて少しキャラクターに焦点を合わせにくいかな、と読んだときは思ったのだけど、今回『Fun and Games』を読んだ後では、ずっと言ってる→本当に死にそうなヒドイ目に遭う手法を先鋭化させて行く過程のちょっと重要作ではないかな、と思っています。

と、また無駄なウソやら含めて長々と書いてきたのですが、毎度のことながら本当に好きな作品になると言いたいことが多すぎて無茶苦茶になって今ひとつちゃんと伝わりにくいものになってしまったのではないかと心配しております。うーん、まだ言いたい事があるような…。ただとにかくこの作品ドゥエイン・スウィアジンスキー作『Fun and Games』は私がとても楽しく読んだ絶対おススメの一冊です!そこだけは伝わりました、かな?

さて、今作『Fun and Games』で散々な目に遭ったCharlie Hardieですが、最後の最後にまた大変なことになります。この続きは次作『Hell and Gone』で明らかに!と言ってもとにかく3部作!まーた1年後なんてことにはならずすぐに読む予定です!とにかく年内には。
しかし3部作。なーんか気になる3部作があちこちにあってあっちもこっちも早く読みたいなあと思うばかり。まずはもちろんケン・ブルーウン先生のホワイト・トリロジー。そしてイェンス・ラピドゥスのアムステルダム3部作はやっぱりもう英訳版を読むしかないのかなあ。どう見たってあそこから面白くなるのに。気にしてるの私だけなんでしょうか?そして近年再評価機運が高まっている様子のテッド・ルイスのジャック・カーター・トリロジー。故人なのををすっかり忘れていて、最近よく見かけるので新作出たんかと思っちゃいました。まあこれは作者が亡くなって3作しか書かれなかったからトリロジーになっているわけだけど、ジャック・カーター氏のその後は知りたいよねえ。他にもまだ全く正体不明のMalcom Mackayのグラスゴー・トリロジーとか読まねばならない3部作は山積みなのです。とにかく3部作はなるべく間を空けずに3作読むこと。まずはこのCharlie Hardie3部作!『Hell and Gone』、『Point and Shoot』へと進むのだっ!


ああ、やっぱり重要なことを忘れてた。実はこのCharlie Hardieシリーズにはオリジナルのコミック版があります。と言ってもおそらく小説の刊行に先駆けて宣伝用に作られたと思われる8ページほどの短いものですが。タイトルは『Hardie vs The Fire』。内容は『Fun and Games』の最初の方で少し語られる以前ハウス・シッターの仕事で山火事から依頼人の貴重品を救った時の事。Charlie Hardieという人物について少しわかる感じのものです。こちらはComixologyでフリーで読むことができます。(多分アカウントだけは必要)Home→Browse内Publisher→Creator Ownedで進むのが一番見つけやすいと思います。元々は出版社を通じて創られたものかもしれないけどComixologyとは取引のないところなのでスウィアジンスキーの自費出版という形で出ているのではないかと思われます。現在Comixologyでは自費出版的なものはSubmitの方になりますが、これが出されたのはそれができる以前なのでCreator Ownedのところにあります。

●Duane Swierczynski


'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。