今回はGabriel Valjanの『Dirty Old Town』。2020年にLevel Best Booksから出版された私立探偵Shane Clearyシリーズの第1作。こちらはこの作品が2021年のアンソニー賞オリジナルペーパーバック部門にノミネートされた他、シリーズ第4作『Liar's Dice』が、
2024年のシェイマス賞オリジナルペーパーバック部門を受賞している。ということで、前回からこっちも本格的にやって行くぞ!と意気込んだPI小説の第2弾なんだが、なんか早くも「例外的」というような作品にぶち当たってしまった…。
一応、現代のPI小説というジャンルについて、おそらくはブロック/マット・スカダーを起点とするような、警察なり何なりを辞める理由となった過去の出来事事件が重くのしかかる主人公による作品群の流れ、という仮説に基づいて始めたんだが、 第2回にしてそれに相当しない例外的作品…。まあそもそもが自分が読む作品についてあまり事前情報を入れたくないという考えで、適当にひっつかんで読み始めるようなことにも原因があるんだが。なんか本当にそういう流れがあるんだよ、とここで 言い訳始めても時間の無駄にしかならんし、結局どんどん紹介して行くことでわかってもらうしかないので、まあとにかくこの『Dirty Old Town』、どういうところが例外的なのかも含めてやって行きます。
私立探偵Shane Clearyシリーズは、1970年代のボストンを舞台としたシリーズ。この第1作『Dirty Old Town』は1975年。
作者Gabriel Valjanについてはのちほど少し詳しく書くが、歴史に強い関心を持つ作家で、他にも歴史ミステリといったカテゴリの作品を多く著している。その作者がそういった歴史的視点を持ちながら、初の私立探偵、ハードボイルド作品として書いたのが この『Dirty Old Town』である。
1970年代というと、一般的なイメージとしてヒッピーカルチャーみたいなもんが浮かぶかもしれないが、作者の意図はそういった風俗的な方向ではなく、あくまでも1970年代のボストンを描くというところにある。主人公が自身の子供時代を思い浮かべるような、 そこから更に遡るノスタルジックなところもあったり。
その時代を作者が選んだ意図というものまではきちんと調べてないんだが、読んだ感じとして、作者Gabriel Valjanが思う古き良きボストンみたいなものが保存されていたのがその時代で、ここからボストンはその姿を変えて行くという時期なのかもしれないと いう感じがした。作者の考える古き良きDirty Old Townボストンを舞台とした私立探偵作品というのが、このShane Clearyシリーズなのだと思う。
この作品、ボストンが舞台ということでレビューの多くにロバート・B・パーカー/スペンサーの名前が見られる。スペンサーオマージュ的なのかな、と思って読んでいたのだが、ボストンというところ以外はあまり共通点は見られなかったと思う。スペンサーと言えば 延々料理の話をするとか、筋トレジョギングでしょう?どちらかと言えば1950年代ぐらいまでのところのクラシックを目指しているという感じだと思ったけど。
ただ、ミステリファン向けのサービス的な感じで、スペンサーの名前が一度だけ出てくるところが中盤ぐらいにある。主人公Shane Clearyがやや無茶な行動をして、お前スペンサーかよと言われ、俺はマーロウのつもりだとか答えるところ。でも1975年というと、 スペンサーも第3作ぐらいのところで、地元ボストンでもミステリマニア以外が読むほどのベストセラーにはまだなってなかったんじゃないかなあ、とか思うやや強引かもというところだったけど。
主人公Shane Clearyは元警察官だが、ある事件で自身の正義に基づき警察に不利な証言をしたことがきっかけとなり、警察を辞めて私立探偵になった。そのため地元の警察全体から深い恨みを買っていて、何か理由があればそれにこじつけて殺されかねないという不穏な立場にある。
独身一人暮らしだが、猫を飼っていて彼の事務所兼自宅を好き勝手にうろつき回っている。猫を飼っている探偵としては、最近チリのRamón Díaz Eterovic/Herediaを紹介したが、同様に話しかけたりすることも多いんだが、Herediaとは違って自分で返答も捏造して会話まではしていない。
とりあえず事前情報としてはこんなところか。では私立探偵Shane Cleary第1作『Dirty Old Town』です。
Dirty Old Town
電話が鳴った。最初にそれに気付いたのは私ではなく、横に寝ていて私の肋を蹴ったDelilahだった。彼女の行動の利点と言えば、電話が何時にかかってこようとそれは仕事を意味し、そして私の猫は財政状況に関しては私より優れた考えを持っているということだ。 アパートの家賃を滞納しすぎており、我々はサウスエンドの大家を避けるために、ボストンのダウンタウンにある事務所で暮らしていた。電話は鳴り響いた。
繰り返し、鳴り続けた。
よろめきながら暗闇の中をデスクに辿り着き、受話器を上げた。わざと何も言わなかった。私の睡眠を妨げた電話の相手から話を始めさせるつもりだった。
という感じで、事務所はあるが仕事がない私立探偵の一つの定型パターンという感じで始まる。いや、出だしが定型パターンというのはこれから読む話の主人公が何者かまず把握できるんでありだと思うよ。この作品も私立探偵ものの定型という感じで、 全面的に主人公Shane Clearyの一人称で書かれているが、あらすじを説明する便宜上、以降は三人称で。
「Mr. Shane Clearyかな?」嗄れ声が問いかける。
「多分ね」
「Shane、古くからの友人よ。BBだ。Brayton Braddock。俺を憶えてるだろう?」
「夜中の2時だぞ、Bray。何の用だ?」
BBというのは、Braytonが子供時代に、それがクールだと思って自分でつけた呼び名だ。そんなわけない。だが彼はやめなかった。金が妄想を産み出す。オールドマネーがそれを保証する。
「お前の助けが必要なんだ」Braytonが言う。
正直言って仕事を受けたい相手ではないが、今は金欠で背に腹は代えられない。
「この件については直接会って話したい」「いつ、どこでだ?」
「ビーコンヒル。俺の運転手が向かってる」そう告げ、電話は切れる。
着替えて猫の食事を用意し、窓から外を見下ろしたところで、前の通りにコンチネンタルが滑り込んでくる。そしてShaneはそれに乗り、Brayton Braddockの邸宅のあるビーコンヒルへと向かう。
この辺の車の窓から見たボストンというのが、この作者の書きたいところではあるんだろうが、すまんがそこは省略。
そしてBraytonの邸宅で彼と会う。
子供時代、地元の有力者の息子であるBraytonとは、友人と言えるような関係だったのだろう。だがそれは、Shaneの父親が亡くなり、そして追うように母親も亡くなり、彼が完全に孤児となってしまったところで途切れる。実際に彼と会うのも十年以上ぶり というところだった。
「単純に言えばだ、俺の会社の何者かが俺を脅迫している」Braytonは言う。
「で、どの会社の話だ?」
それは大した問題じゃないと曖昧に答えるBrayton。
「もしその犯人が誰だかわかっていて、それを何とかしたというなら、俺はお前の運転手に礼儀作法なしでやらせるのを薦めるがね。それとも100パーセントの確信はないのか?」
自分には確信がある、と言うBrayton。なら警察に行けばいいと言うShane。
「お前にやってもらいたいんだ」Braytonは言う。
「俺は腕力商売をしてるんじゃないんだ。そこははっきりしとこう。お前の立場にいる人間なら、汚い仕事を請け負ってくれる友人もいるんじゃないのか?」
帰ろうとするShaneをBraytonが呼び止める。「すまなかった。こいつはクリーンな仕事なんだ」
Braytonのような人間からは滅多に出ない謝罪の言葉を聞き、戻るShane。
そこにBraytonの妻、Catが部屋に入って来る。
「Catは憶えてるよな?」Braytonは言う。
ShaneとBrayton、そしてCatは子供時代からの知り合いだった。一時期は深い関係だったShaneとCat。だが、Shaneが孤児となり、行き場を無くし軍隊に志願し、ベトナムへ行っている間に、CatはBraytonの妻となっていた。
これはビジネスの話だと、Catを退がらせようとするBraytonだったが、Catはそこに留まる。
懸案中の取引について脅迫されていると言うBrayton。
それは合法的な土地取引についてだが、現段階でその情報が暴露されると、世論をある方向に大きく動かしてしまうことになる、それが完全に公明正大なものでもだ、と話すBrayton。
「脅迫者は何らかの要求をして来たのか?大金であるとか?」Shaneは尋ねる。
「まだ何もない」答えたBrytonは、執事を呼び二つの封筒を受け取る。
ひとつに入っていたのは、分厚いゼロックスコピーの束。
それは取引について詳細に記録された台帳のコピーで、専門家が見れば何が行われているのかは明白なものだということだ。
「それで、俺は何をすればいいんだ?」Shaneは問う。
「脅迫者の正体を明らかにしてほしい」
「で、それが明らかになったらどうすればいいんだ?」
「何もない。後はこっちでやる」
「そう聞かされると、俺としては心配になるがね。歴史的に言われてるところの、あんたの一族が小作人やらをどう扱ってきたかを見るとな」
Brytonは何も答えず、沈黙する。
「それで、もう一つの封筒は何だ?」
「こいつに入ってるのは、手掛かりの名前と住所、そして気前のいい前金。現金だ」
そう言って、Braytonはその封筒を放ってよこした。
翌日、Braytonからの仕事に取り掛かる前に、Shaneは父親のように思っている古くからの友人、"教授"ことDelano Lindseyに会うため、彼の行きつけのダイナーを訪れる。
Lindseyに渡された台帳のゼロックスコピーを見せて意見を聞くが、特に問題である部分は見つからないという答え。
古くからShaneを知るLindseyは、彼とBraytonの妻Catとの関係も知っており、深入りしないよう警告する。
その後、路上を歩いていたShaneはかつての同僚であるBillに声を掛けられる。
Billはかつては同じ部隊で従軍した仲の、現在のボストンの警察の中では唯一と言えるような友人である。また、Billはホモセクシュアルゆえに警察組織内では浮いた存在であるというのも、その理由の一つかもしれない。
「お前に仕事だ。ベイヴィレッジでの失踪した可能性のある人物の捜索だ」Billは言う。
行方不明となっているのは、Billの友人であるRoger Sherman。スポーツ関係のファンイベントを企画していたらしい。
手掛かりとなりそうな人物の名を伝え、簡略に5W、Who、What、When、Where、Whyを裏に記した自分の名刺を渡し、Billはパトロールへと戻って行く。
こうしてShaneは、Braytonからの脅迫事件の捜査と、Billからの失踪人捜索の二つの事件を並行して取り組んで行く。
それはShaneをある殺人事件へと巻き込んで行き、敵だらけの警察に囲まれたボストンで、危地へと追い込んで行くこととなる…。
* * *
歴史的な方向に関心の強い作者により描かれる1970年代のボストン。なのだが、まああらすじとして端折らなきゃならんというところと、そこについては知識が皆無ということもあり全く紹介の方はできなかったんだが…。例えばこれが東京とかだったら、現在の感じもある程度把握できて過去の資料なんかも手に入りやすいと思うんで、もっと違った感じになったかもというところなんだが。多分だけど、現在や昔のボストンについて知識があれば、 そういう感じで読める所も多いのかと思う作品。
ただ、この作者の関心は多分地図的だったり建物的だったりという方向で、最初にも書いた通り風俗的という方向のものはあんまり見られない。ヒッピーみたいなものも出てこないし、日本で言えばなんか毎度お馴染みもうその話いいよの、 団塊世代の子供のころ給食に出た脱脂粉乳がまずかったみたいな話で、あるあるパターン的な共感を呼ぼうとしたりはしない。なんか自分の昔の仕事の知り合いだった地図マニアの人思い出したり。へとへとに疲れているときに、喫茶店でこの辺の道はほとんど農道だったから変な風に斜めに交差してるのが多いんだとかいうのを延々1時間ぐらい話されて、興味深くはあるんだが結構閉口したのを思い出したよ。作者Gabriel Valjanというのもそんな人かも。
主人公Shane Clearyが基本的には車の運転をせず、徒歩による移動が多いのも、作者がそういう形で過去のボストンを見せたいという意図のものかも。
作中に出てくるゼロックスコピーも、当時はそれほど多かったものではなく、そのコピーがどこでとられたかみたいなことも鍵になって来る。
かつての警察内の友人Billはホモセクシュアルであるという設定で、70年代のゲイカルチャーと言った方向も描かれる。
その他、ウィンズロウのDanny Ryanトリロジーにも出てきたような、ボストンにおけるアイルランド系とイタリア系のギャングの対立の70年代の状況というところも少し背景ぐらいのところで描かれる。
それ以前は主に歴史ミステリーといった方向の作品を書いて来た作者Gabriel Valjanは、その方向から自身の地元であるボストンの過去を描くという方向でハードボイルドというスタイルを選択したのだろう。
歴史ものが好きな作者らしく、お手本としたのは主に50年代までのクラシック作品という感じ。
途中で出て来た主人公の友人"教授"ことDelano Lindseyは、クラシック作品に多く登場する主人公と話して事件を考察するという役割で配置されたキャラクターなのだろう。40~50年代の私立探偵クラシック作品には、多分当時隆盛だったラジオドラマと いった方向の影響もあると思うんだが、例えば女性記者だったり友人の刑事だったりというキャラクターが、主人公と会話して事件についての考察を繰り返すといったミステリ的とも言える手法がよく用いられる。
この作品の中には本来の事件とは関係なく、Billとの会話で最初にある殺人事件について語られ、しばらくたった後に謎解き的形でそのトリックと解答が語られる「3分ミステリ」?みたいな趣向もある。実際に見たことはないんだが、 クラシック作品では使われたおまけ趣向なのかも。
作者の他の作品を読んでいないので、はっきりしたことは言えないのだけど、クラシックなハードボイルド作品をよく研究したようで、ハードボイルド的というような一人称記述はよく書けていると思った。だが作品のテーマ上、過去の建物などの描写の中で、 その一人称記述ゆえに少し分かりにくい部分もあったり。つまり主人公はその時代にいて現在あるものとして語っているのだが、そういう過去の状態について全く不案内な自分のような目で見ると、時に主人公の行動を見失いかけるようなところが あったり。作者のそういったものへのこだわりゆえというところなのかもしれないけど。
また、お手本としてクラシック作品のみではなく、過去のノワール映画や、ポランスキー『チャイナタウン』あたりをイメージしているのではないかと思われるところもあり、時にそちらのイメージが先行し、内容が追いついていないところも見られたり。
中盤頃にある事情でShaneがBraytonと話すために彼の屋敷へと向かうのだが、そこではパーティーが行われており、という場面がある。
この手のパーティー場面というのは、古くはスピレインやマクドナルド、最近のものではリー・バークが農業祭みたいな形だったりで、ハードボイルド作品にも多く登場するもの。大抵はストーリーの中で出てくる様々なキャラクターが参加し、 それぞれの関係や、隠された思惑などが垣間見えるというものである。
だが、この作品のそのパーティー場面では、ストーリーに関わるキャラクターがBraytonとCatのみで、かなり中途半端な感じになっている。おそらくは映画などのイメージから、こいつは金持ちという印象を強くするためにここに入れることを 思いついたのだろうが、これ電話で言えば済んだんじゃね、というような感じになってたり。
その他、一方では冗長だったり、説明不足だったりとバランスが悪いところもあったり、Billというキャラクターがあまりうまく使えていなかったりと、挙げれば色々な欠点は見えてくるんだが、まあそこは第1作ゆえの甘さというところで。 とりあえずは第4作『Liar's Dice』がシェイマスで賞もとっていることだし、ここから順調に成長して行くんじゃないだろうかな。
クラシックタイプの探偵というところでは、以前から書いているようにロングスパンで見れば前回のSteve Goble/Ed Runyonや、Matt Coyle/Rick CahillといったところがPI小説ジャンルの主だった流れであり、そこから見るとこの時代においては少し異色 というところに分類されるシリーズだろう。
PI小説の起点を80年代ぐらいと見ると、その中でもいくつか散発的にといった感じで、例えばマーク・ショア/レッド・ダイアモンドみたいなパロディ以外にもそのタイプの探偵は登場している。80年代という時代にハメット型の探偵を創造した Jack Lynch/Peter Bragg。ロバート・J・ランディージのボクサー探偵Miles Jacoby。1980年代後半にマイク・ハマーを一般的イメージとはまた違うそのスタイルという部分で再創造した探偵Saxonを登場させたレス・ロバーツについては、 なんとかもっとほかの作品も読んで行かなければというところなんだが。更にこの流れであいつもそうだったなと探しているうちにDown & Out Booksの復活を知ったJ. L. AbramoのJake Diamondなどなど。
忘れてるのもありそうだし、探せばこれからも出て来るものだろう。だが、現在までのところ、いずれも作家自身の好みというような方向でクラシックと直接つながるという形で点在しているだけで、一つの流れを作るというものにはなっておらず、やっぱりPI小説ジャンルの主流というところは前述のようなものになっている。
だがそこで、このわが街ボストンの過去を歴史的な視点で描くというGabriel Valjan/Shane Cleary。このスタイルにはクラシックな私立探偵という方向がうまく嵌まるのかも。自分の愛着のある街をこういう形で書くというのは、一つ魅力的なアイデアで、 これをスタイルとして使いたいというような作家も出てくるかもね。ただしValjan氏のようながっちりした歴史への取り組みや思い入れが無いと、結局脱脂粉乳まずかったあるあるみたいなもんばかり出て来るものになってしまうかもしれんけど。
そんな感じで、このスタイルともども、一つ注目しておいた方がいいのではないかとも思うGabriel Valjan/Shane Clearyシリーズ第1作、『Dirty Old Town』でした。
* * *
作者Gabriel Valjanについては、生年なども公開されておらず個人的な情報についてはあまりよくわからない、2012年から結構な著作がある割にはそこそこ若く、まあ40代ぐらいだろうけど、見えるが。ボストン在住で、Munchkinという名の猫を飼ってるぐらいが 個人情報。Historical Novel Society、ITW、MWA、Sisters in Crimeなどの会員。2012年、デビュー作となる『Roma, Underground』に続き、Romaシリーズというのが全5作出ているんだが、現在は絶版となり本人のホームページにも載っていないので、詳細は不明。多分ローマをテーマとした歴史ミステリーというところなんだと思う。
続いて2017年から始まっているのがThe Company Filesシリーズ。こちらは第2次大戦後のヨーロッパなどを舞台としたエスピオナージュシリーズらしい。こちらはアガサ賞にも複数ノミネートされている。現在までのところ4作が出ている。
そして2020年からこのShane Clearyシリーズが始まり、現在第5作まで。The Company FilesシリーズとShane Clearyシリーズを並行してやって行くというのが現在の方向らしい。
その他に、2025年にEchoes of Italyシリーズというのが一気に5作出版されているんだが、どうもこちらは過去の作品を個人出版電子書籍という形でまとめて出したものらしい。Amazonで見ると第5作になっている『Five Before Rome』は、他のところで 見たら2021年にRomaシリーズの第6作になっていたり。
その他、前回最後の方で触れた元Down & Outで出ていたGrifter's Songシリーズも1作書いているのに今気付いたり。こういう方の横のつながりもある人だったんだね。
版元であるLevel Best Booksについても少し。2003年設立のミステリー専門の独立系出版社。なんかもうややこしいんだが、結局今のアメリカではNYのBIG5だか4だかに属してない出版社は大小関わらず独立系インディペンデントってことになるんだろう。 本社はワシントンDCで、ボストンとロンドンにもオフィスがあるそうなんで、そこそこ大きな会社だろう。様々なミステリ関連賞の受賞作も多く出版しており、わざわざ調べる気も起らんけど、日本で翻訳されてるものも出してるんじゃない?
ホームページの"Our Authors"ってところを見ると、それこそ山のような作家が並んでいて、全てをチェックする気も起らないが、まあアンソロジーに1作短編を出してるような人も入ってるんだけどね。"Our Books"というところを見ると、 "Noir/Hardboiled"ぐらいのジャンルに絞れて、見た感じきちんと分類されてるんで、PI小説という方向ではこの辺から拾ってくることもできるかもと思う。こういうところはあれもこれも入れちゃえみたいなあんまりあてにならないところの方が 多いんだが、ここに関しては結構拾いものかも。まあこのLevel Bestについては、少し前に最後ぐらいに言及したEric BeetnerのCarter McCoy三部作も出てるんで。Beetnerさん今度こそは絶対にやるよ!
この手のミステリ系出版社というのは、まあほとんど自分では全体把握できないようなものも多いんで、あんまりちゃんと見てこなかったけど、PI小説というジャンルになると、前回のSteve Gobleのように「ミステリ」ってところとも近い作家も多そうなので、 とりあえずホントにざっとぐらいだけど一応紹介的なことはしておくべきかと思う。よくわかんないからまあいいやでスルーしてきたの結構あると思う。Oceanviewとかについてもいずれちゃんとやっとかないとね。
Level Best Books
■Gabriel Valjan著作リスト
●Romaシリーズ
- Roma, Underground (2012)
- Wasp's Nest (2012)
- Threading the Needle (2013)
- Turning to Stone (2015)
- Corporate Citizen (2016)
- Five Before Rome (2021)
●Company Filesシリーズ
- The Good Man (2017)
- The Naming Game (2019)
- The Devil's Music (2021)
- Eyes to Deceit (2025)
●Shane Clearyシリーズ
- Dirty Old Town (2020)
- Symphony Road (2021)
- Hush Hush (2022)
- Liar's Dice (2023)
- The Big Lie (2024)
●Echoes of Italyシリーズ
- Man of Honor (2025)
- The Fallen One (2025)
- Two Warriors (2025)
- Dance of the Spider (2025)
- Five Before Rome (2021)
【訃報】Sheldon Lee Compton死去
ケンタッキー州在住の、小説家、詩人として知られるSheldon Lee Compton氏が、2026年4月13日に亡くなりました。地元ケンタッキー、パイクビルや自らの生い立ちなどをテーマとした数多くの短編小説などの他、詩集、長編フィクション、Breece D'J Pancakeに関するノンフィクションなどを著し、ドナルド・レイ・ポロック、クリス・オフット、David Joyらに 高く評価されている。
Anthony Neil Smith経由で知り、こちらでも何度か名前だけは出してきていて、短編を少し読みこれは是非ともちゃんと読まなければならない素晴らしい作家だと思いつつ、結局届かないままにこのような形となってしまった。
遺作となった最新作『The Old Invisible』が本年5月12日にCowboy Jamboree Pressから出版されている。ここから読むのが正しいのか、少し悩むところではあるのだけど、なるべく早く読んでこちらで紹介する予定です。
Sheldon Lee Compton氏のご冥福をお祈りします。
■Sheldon Lee Compton著作リスト
- The Same Terrible Storm (2012) 短篇集
- Where Alligators Sleep (2014) 短篇集
- Brown Bottle (2016) 長編小説
- Dysphoria (2016) 長編小説
- Absolute Invention (2019) 短篇集
- Sway (2020) 短篇集
- The Collected Stories (2021) 短篇集 (既発の四作の短篇集収録作品を一巻にまとめたもの)
- Runaways (2021) 詩集
- The Orchard Is Full of Sound (2022) ノンフィクション
- Alice (2023) 長編小説
- Oblivion Angels (2025) 長編小説
- The Old Invisible (2026) 長編小説
まったくなんというか…。ハードボイルドってところを中心に、あまり目が届いてない「ミステリ」寄りというあたりのPI小説というところも探って行かねば、と自分的にはやや強引ぐらいに2作ねじ込んでやって行けば、その反対側、カントリーノワールから文学といった境界に位置するSheldon Lee Comptonの訃報…。なんか一区切りついたらそっちの方少しまとめて読めれば、と思っていたところといえば聞こえがいいが、実際にはこれについては書けなくても仕方ないかというのも挟みつつあれこれ読んで、それでも既にこれは書かなければというのが4作品になってる現状だったり。どうやってもなかなか進まず、コミックの方も牛歩かカタツムリか…。何とかもがきつつ、これは自分がやんなきゃ誰も伝えないという重要作・魅力ある作品を一つでも多く紹介して行かなければ。
PI小説ってところに話を戻すと、第2回ぐらいにして早くも自分が見えてるジャンルの傾向というところからの例外作品みたいなのが出て来たわけだが、まあこんなもんでしょ。生きてる作者が常に自分で新しいものを作り出したいと闘っているようなところで、読んでるだけの奴が安直にこれはこういうものだと決めつけで、傾向や定義なんてものを押し付けられるわけがないんだよ。こんなもんができることといえば、とにかく山のように数多の作品を読み、それこそ例外的作品の傾向ぐらいまで見出すつもりで重ね続け、そこからこうかもしれないぐらいのところを見出して行くのが精々なんだろ。まだたったの2作だ。ホント色々あるんだけど、なるべく早い機会に第3回、4回をやってくつもりです。あー、そろそろMatt Coyleの次のやつも読まなきゃ。
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