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2026年2月14日土曜日

12周年。転生する前からスライムっぽかった件。

12周年でいーす。12周年でいいんだよね?オレ本当に12年もこんなことやってたのか?実は3年ぐらい前に捏造された記憶をインストールされて製造されたアンドロイドで、その時点で過去9年分やったことになってるブログも用意されて、続けてるつもりで やってるだけなのではないか?全然メンテナンスしてないんで、身体こんなにガタガタなんじゃないのか?修理に持ってくともう保証期間過ぎてて莫大な金を要求されるとかじゃないのか?などと、アンドロイド部分は今思いついたネタで、本当に12年も やってたのかなあという気分のところだけは思ったりする今日この頃です。
まあ12年も読んでる人は絶対私一人のみしか存在しない、しかも書いたものを読み返すことはほとんどない、と確信しているこのブログですが、記憶の捏造にしろ12年も続いたのは、今日初めての人も含めてこれまで読んでくださった方々のお陰と、 心より感謝しております。…あ、お前今感謝っぽく頭下げて見えないと思って舌打ちしただろ。聞こえたぞ!

さて12年といえば、昨年はサッカー大好きバカ夫婦が生まれてきた子供達で最強の兄弟チームを作ると決意し、遂に11人目が生まれたと思ったら女の子でやや落胆し、いや幼少時からドラッカーで英才教育をして最強の女子マネージャーに育てればいいのだ! と思い直し、ついに今年は男児が生まれ大喜びした年。だが、そこで12歳の誕生日を迎えた一郎が、「僕はサッカー選手にはならないよ!僕はアニメやゲームの可愛い女の子のフィギアを作るフィギア原型師になるんだ!」と爆弾宣言をする。何とか説得を 試みるも一郎の決意は固く、落胆する両親。しかしそこで英才教育を受けた将来の天才マネージャードラ美が一郎に言う。「お兄ちゃん、フィギア原型師に最も必要とされるのは、人体構造の正確な把握よ。それを磨くにはスポーツで自分の身体を 使うのが最適の方法。サッカー選手こそがお兄ちゃんの夢への最短ルートなのよ」それを聞いた一郎は考えを改め、再びサッカーの練習に励み始め、サッカー大好き一家は夢に向かって再始動するのであった (13周年に続く)というころ。
私もそのような心持でここからの13年目を頑張りたいと思います!

と、まあそんなわけで、いや別に全然繋がってないけどあとが相当長くなるんでここで切り上げて、12周年特別企画として「ハードボイルドジャンル重要作家108」を始めます。いやまあ、結構長い間思いついては書き足す感じでダラダラやってきて、 自分的に全く特別感ないんだが。特別企画とかってこういうもんかね。
あれ?12周年というとエルモア・ジェームスじゃなくて、干支の被り物をした美少女バニーガールが勢ぞろいしてわーい♡っていうのじゃないのか?まあこの顔見ると「ダスト・マイ・ブルーム」が脳内自動再生始まって、去年結構聴いたんで これってことで。

ハードボイルドジャンル重要作家108


ハードボイルドってジャンルは、起点をキャロル・ジョン・デイリーにしようが、ダシール・ハメットにしようが勝手にすりゃいいが、とにかく始まってほぼ100年過ぎている。100年継続されていれば、当然重要作家を100人ぐらいピックアップすることなど 容易い。
とは言ってもやってるのが頼りにならん自分の頭なんで、まあ絞りながらやって行けば90ぐらいのところで一旦まとまって、あとは自分にこだわりのある作家をねじ込めるかもぐらいに考えながら始めたんだが、そう甘いもんじゃなかった。 すぐに100を超え、そこから削って行くことになったんだが、ある程度まで進むと、なんか「これを外す理由」みたいなのを考えているようになってきているのに気付いた。そもそも誰かに100に収めろなんて言われたわけでもないし、さらに言えば 誰かに言われるような形でこんなことやること絶対にないしな。それが105のところで、そこから理由を考えて外した中から3つ選んで戻して108にした。まあ日本的なのか、それとも東洋的ぐらいの範疇で意味ある数字かもしれないけど、なんか意味があって その数字を選んだわけではなく、単純に100でやろうとしたらはみ出したぐらいのもんなんで。

まずこのリストについて。これは「私が思うハードボイルド」みたいな基準でセレクトした作家ではない。ここに並んでいるのはすべて、それ以前の作品に影響を受けてそれに続く形で作品を創り上げたそのジャンルに属する作家たちの連なりである。
この中には最もオリジナルのところの私立探偵を主人公とする狭い意味での「ハードボイルド」を書いた作家も、従来犯罪小説という形で分類されてきた作家も、同様に並べられている。これらのジャンルはそれぞれに影響し合ってジャンル全体を作り上げて 来た言ってみれば不可分のものであり、これらを総合的に見る以外に現在のこのジャンルの作品を理解することなどできない。
これは評論家や読者向けの利便性みたいなもので区切られたジャンルではなく、作品を作る側の作家サイドの視点から見たジャンル分類である。ハードボイルドは、批評家その他の自称専門家に指定されてハードボイルドになるわけじゃない。 ハードボイルドは、以前の作品を継いで自分なりの新しい作品を作ろうとした作家の中にしか存在しない。それがこれらの作家である。
まあ、今更なんだがジャンルの呼称について。実際にはハードボイルドってのはその語源がどうだとかでゴチャゴチャしすぎて、ややめんどくさいし、自分としてもこの呼称について強い拘りがあるとかいうわけでもないんだが、もう他に呼びようがないんじゃない? まあとりあえずの便宜的なものだろうが何でもいいんで、ここではハードボイルドジャンルって名前で話させてもらいます。

というところで、リストの内容についての解説は後でやるが、ここではまず一番面倒なところを先になるべく簡略に済ませておこうか。
このリストになんでギャビン・ライアルやロス・トーマスって名前がないのかってことだ。それはいたってシンプル。それが別のジャンルの作家であり、ハードボイルドジャンルに属するものではないからだ。これは一般常識だからね。
ではなんでこれらが日本でハードボイルドと思われることになったかってことなんだが、そもそもハメット-チャンドラー-マクドナルドをハードボイルド精神みたいな考えで理解しようとして、そこから出て来たハードボイルド=男の生き様格好付け、 みたいな思い込みが拡大されたなんて過程は散々書いて来たんでもう繰り返さん。省略。そしてそういう下地のもとに、1980年代頃から日本でその男の生き様という考えでハードボイルドを書く作家が現れて来た。同時期、アメリカでもその考えを補強 するような作家ロバート・B・パーカーが現れた。そんなわけでそこで日本ではハードボイルドとは男の生き様、という考えがますます強調された。
だがね、アメリカで発祥したハードボイルドというジャンルは、そもそもがそんな考えで続いてこなかった。まあその辺については続くリストで説明するが。だから過去に遡っても、その時の現在を見回してもその「ハードボイルド」にマッチする ハードボイルドなどパーカーぐらいしか見つからなかった。そこで他ジャンル、主に英国冒険小説の流れを汲むスパイ・諜報・メンズアクションアドベンチャーというジャンルに属する作品であることを承知で、ハードボイルド扱いしたのが これらの作家だというわけだ。
この時期、アメリカのハードボイルドでは、エルロイ、バーク、コナリー、ペレケーノス、ランズデール、ルヘイン、ウィンズロウといった優れた作家が次々と輩出し、ハードボイルドは新たな方向へと向かって行った。だが、それらは日本が考えた 「男の生きざまハードボイルド」とはまったく一致しなかった。こうして日本では思い込みのハードボイルドが海外作品まで加えて作り上げられる一方で、そことは全く違った方向に進んでいた本流のハードボイルドは殺された。
あのさ、言っとくが作家が自分の考えで何を書くかなんていうのは勝手だ。ハードボイルドが男の生き様だと思うんなら、そう書くのも完全に自由だし、実際にそういうところで書かれた作品でも評価すべきものはいくつもある…と思うよ。そしてライアルや トーマスといった作家は自分も本当に好きだし素晴らしい作家だと思っている。だがアメリカのオリジナルから様々に変遷・進化を進めた本流というべきハードボイルドは、全く違う方向へと進んでいた。全く違うものを思い込みでその代表のように はめ込んでしまったことで、本当の流れがせき止められ、そこで日本におけるハードボイルドは停滞してしまった。
改めて少し考えてみれば、少数ではあってもそれなりにはいる日本のハードボイルド作家の中で、男の生き様!男は、タフでなければ生きて行けない、優しくなければ生きて行く資格がない、若造をいびらなければ生きて行くプライドが保てない、 みたいなもんをゴリ押ししたのは片手で足りるか両手じゃ少々余る程度だろう。その前にも後にも評価すべき作家は大勢いるのに、結果的にそれに巻き込んでしまう感じになってしまったのはやや申し訳なく思うよ。一番の害悪はそれこそがハードボイルド!とバカ丸出しで持ち上げた ホークがスーさんがハマちゃんが連中なんだろう。だが今となっては更にそれを上回る害悪とも言えるのは、日本が思うハードボイルドと、アメリカの本流のハードボイルドから発展したような作品群が全く別の動きをしているぐらいのことは見えていたはずなのに、 声がでかい奴らの言い草に流されハードボイルドをそのまま放置し、また一方でバブル的に増えただけの読みにくい児童レベルやら女性読者に対して「ハードボイルドは売れない」というような出版サイドだかの考えに追随し、動き続ける本流のハードボイルドを 別の呼び方で考えることばかりに汲々としているうちに全くわからなくなり、今になってハードボイルドと呼ぶしかないものが出てくりゃ(どう考えようが作家たちはその考えで書き続けてたんだから当然出てくるよ)、仕方がないんで原点まで戻って ハメットだー、チャンドラーだー、本格御三家だーでこじつけてごまかしたり、もう分んねえから足すノワールで新しいジャンルでも作ったつもりになってるような自称専門家どもなんだよ。

去年あたりたまたま本屋をうろついていたら、「かつてのハードボイルドは男のロマンだった」というような言い草をいくつか目にした。なんとも都合のいいやり方を見つけたもんだ。要するに過去のものを作品ごと埋めちまえば、この先自分たちの 都合がいいように出てきたものを語れるってわけだ。本当にうんざりするわ。
こういうやつらがやることと言えば、都合が悪いことは適当に埋めて知らんぷりするだけ。自分には責任ないけど過去はそうだったらしいよとか。
アメリカ本流のハードボイルドでは、前述の作家に続く作家が次々に現れ新たなハードボイルドジャンルが作り出されている。エルロイであれ、ルヘインであれ、ウィンズロウであれ、個性的ではあってもそれぞれに基本的な私立探偵型の ハードボイルドから出発し、そこから自分なりの形で新たな方向へ作品世界を広げて行っている。そして、それに続く作家たちはどうなるか?それはその原点である理解しやすいハードボイルド型ではなく、それらの作家が達成した地点から始めるんだよ。 ジャンルの進化とはそういうものだ。一旦見失ってしまったこの道を正しくたどり直すには、日本がどこでハードボイルドを見失い、それにはどういう原因があったのかを遡って検証しなければならない。そこでは先人の思い込みによる 勘違いを批判する必要だって当然出てくる。
それをやらないで全部埋めちまえばいいってことだ。
実際には責任の一端を負ってるような奴らは、サブカル無責任時代でヘラヘラ誤魔化し、そして更にこれから出てくるような「○○氏によれば」みたいなお勉強してきましたモードで先人からの引用で自分の言ってることを補強したがるような ミス研人脈の後輩みたいなもんが過去に遡ってそれらを批判し、正しいレールに戻すなんてことも絶対に起こらないだろう。これから出てくるのは「警察小説+ノワール」みたいな思い付きその場しのぎみたいな安手の新発明ジャンルばっかになるんだろうね。 どんなアホらしい足すノワールが出てくるやら。
そして適当に埋めちまった「男のロマンハードボイルド」。もはやおっさん階級が犬猫より遥かに下層になってるこれからの時代に、そんなやつらの格好付けが戻って来ることあり得ないと思ってるだろ?だけど例えばこれが「女性作家」みたいな ところで使われたらどうなる?「今、女性作家たちによりハードボイルド(ルビ:男のロマン)が見直され始めている」な~んて二束三文出版業界寄生虫(ルビ:ミステリ評論家)のクソレベルのコピーが見えるようだわ。
正しく修正することなくその場で適当に埋めてごまかしたもんがどうなるかっていうのはこういうこと。ちゃんとはっきりしないで適当に埋めといたもんなんて、しばらく時間が経てば、あの時期男のロマン的なもんが否定された頃だったんだろうな、 ぐらいの感覚でなんかのタイミングでハードボイルド=男のロマンそのままで使われ始めるんじゃない?まあそれが変わるなんてことあるのなんて全然期待してないしさ。結局日本でハードボイルドなんてものは、未来永劫赤ちゃんの格好をしたおっさんが 運転するルパン3世が横に描かれた汽車ポッポで、同じ遊園地のレールの上をぐーるぐる回り続けるだけなんだろうね。
だが、こんな未来に全く希望が持てない日本のハードボイルドファンに、少しばかりの朗報です。読書のプロ暗黒時代を経て救いようもないところまで腐った日本の翻訳ミステリ業界も余命いくばくかというところ。まあ世間的には「ミステリの世界最高峰」 アンソニー・ホロヴィッツで安楽死ってことになるんかな?読書のプロ暗黒時代のミステリの二大巨頭が、ジェフリー・ディーバーとホロヴィッツなわけだ。こんな業界、これ以上被害を広げないうちにとっととご臨終してくださいだけが、当方の願いですわ。

まあどうやったって改善する見込みもなく、ただ消えてくだけみたいなもんに対する愚痴はこのくらいで、後はなるべく楽しくハードボイルド話をして行くものです。本当にこんなどうにもならないもんきりもなく批判してみたって時間の無駄にしかならんよ。
このリストについては一応年代順に並んでいて、作家それぞれのデビュー長編が出た年、ということになってるのですが、あんまり正確でない人もいるかもしれません。代表的なシリーズが始まった年という場合もあり。とりあえずは数年ぐらいの誤差だと思うけど。 元々作家とシリーズをごちゃまぜにして個人的な整理のために作ってたリストが元だったりもするんで。ちょっと意図的に変えたものについては、後ほど解説の方で説明するつもり。
日本で1作でも翻訳が出てる作家については、日本語表記も入れたが、主要作品・キャラクター名に関してはスペース取り過ぎるし、もうそんなもんで検索してもどうにもならんので、原語表記、あるいは英語表記にした。
事前に言っといた方がいいのはそのくらいかな。では後はハードボイルドジャンル重要作家108リストになります。

11923Carroll John Dalyキャロル・ジョン・デイリーRace Williams
21929Dashiell Hammettダシール・ハメットThe Continental Op, Sam Spade
31932Paul Cainポール・ケイン『Fast One 』
41934James M. Cainジェームズ・M・ケイン『The Postman Always Rings Twice 』
51935Horace McCoyホレス・マッコイ『They Shoot Horses, Don't They? 』
61935Samuel Fullerサミュエル・フラー『The Dark Page』,『Dead Pigeon on Beethoven Street』
71939Raymond Chandlerレイモンド・チャンドラーPhilip Marlowe
81939A.A. FairA・A・フェア(Erle Stanley Gardner), Cool and Lam
91939James Hadley Chaseジェイムズ・ハドリー・チェイス『No Orchids for Miss Blandish』
101939David Goodisデイビッド・グーディス『Dark Passage』, 『Black Friday』,『Down There』
111942Jim Thompsonジム・トンプスン『The Killer Inside Me 』,『Pop. 1280』
121946Wade Millerウェイド・ミラーMax Thursday
131946John Evansジョン・エヴァンズPaul Pine
141947Mickey Spillaneミッキー・スピレインMike Hammer
151947Thomas B. Deweyトマス・B・デューイMac, Pete Schoefield
161948William P McGivernウイリアム・P・マッギヴァーン『Shield for Murder』,『Rogue Cop』
171949Ross Macdonaldロス・マクドナルドLew Archer
181950Richard Scott Pratherリチャード・S・プラザーShell Scott
191952Lionel Whiteライオネル・ホワイト『The Big Caper 』,『Clean Break 』
201952Evan Hunterエヴァン・ハンター(Ed McBain/Curt Cannon) Curt Cannon, 87th Precinct
211953Michael Avalloneマイクル・アヴァロンEd Noon
221953Elmore Leonardエルモア・レナード『La Brava』,『Glitz』
231953Charles Willefordチャールズ・ウィルフォード『Cockfighter』 , Hoke Moseley
241954Carter Brownカーター・ブラウンAl Wheeler, Danny Boyd
251957Chester Himesチェスター・ハイムズHarlem Detective
261957José Giovanniジョゼ・ジョヴァンニ『Le Trou』,『Le Deuxieme Souffle』
271958Lawrence Blockローレンス・ブロックMatthew Scudder, Bernie Rhodenbarr
281958大藪春彦伊達邦彦, 『蘇る金狼』
291960Donald E. Westlakeドナルド・E・ウェストレイクParker(Richard Stark), John Dortmunder
301962Dan James Marloweダン・J・マーロウDrake
311962Derek Raymond(Robin Cook), Factory
321964John D. MacDonaldジョン・D・マクドナルドTravis McGee
331967Michael Collinsマイクル・コリンズ(Dennis Lynds), Dan Fortune
341969Don Pendletonドン・ペンドルトンMack Bolan
351970Ernest Tidymanアーネスト・タイディマンJohn Shaft
361970George V. Higginsジョージ・V・ヒギンズ『The Friends of Eddie Coyle』
371970Joseph Hansenジョゼフ・ハンセンDave Brandstetter
381970Ted Lewisテッド・ルイス『Jack's Return Home 』
391971Bill Pronziniビル・プロンジーニNameless Detective
401971Michael Z. Lewinマイクル・Z・リューインAlbert Samson, Leroy Powder
411971Warren Murphyウォーレン・マーフィーRemo Williams, Trace
421971Jean-Patrick Manchetteジャン=パトリック・マンシェット『Le petit bleu de la côte ouest"』
431972Joe Goresジョー・ゴアズDKA Files, 『Hammett』
441973Roger L. Simonロジャー・L・サイモンMoses Wine
451973Robert B. Parkerロバート・B・パーカーSpenser, Jesse Stone
461973Edward Bunkerエドワード・バンカー『No Beast So Fierce』,『Dog Eat Dog』
471973Jean Vautrinジャン・ヴォートラン『Billly-Ze-Kick』,『Groom』
481974Ralph Dennisラルフ・デニスJim Hardman
491974Arthur Lyonsアーサー・ライアンズJacob Asch
501975James Crumleyジェイムズ・クラムリーMilo Milodragovitch, C.W. Sughrue
511976Paco Ignacio Taibo IIパコ・イグナシオ・タイボ二世Héctor Belascoarán Shayne
521976Max Allan Collinsマックス・アラン・コリンズQuarry, Nathan Heller
531978矢作俊彦二村永爾,『マイク・ハマーへ伝言』
541979Stephen Greenleafスティーヴン・グリーンリーフJohn Marshall Tanner
551980Loren D. Estlemanローレン・D・エスルマンAmos Walker
561981Harold Adamsハロルド・アダムズCarl Wilcox
571981Carl Hiaasenカール・ハイアセン『Tourist Season』,『Strip Tease』
581982Sue Graftonスー・グラフトンKinsey Millhone (Alphabet series)
591982Robert J Randisiロバート・J・ランディージMiles Jacoby
601984James Ellroyジェイムズ・エルロイLloyd Hopkins, L.A. Quartet
611985Andrew Vachssアンドリュー・ヴァクスBurke
621985Ed Gormanエド・ゴーマンJack Dwyer
631986Daniel Woodrellダニエル・ウッドレル『Tomato Red 』,『Winter's Bone』
641987James Lee Burkeジェイムズ・リー・バークDave Robicheaux, Holland Family Saga
651987Robert Craisロバート・クレイスElvis Cole and Joe Pike
661987James W. Hallジェイムズ・W・ホールThorn
671987Les Robertsレス・ロバーツSaxon, Milan Jacovich
681987Ramón Díaz EterovicHeredia
691987Eugene Izziユージン・イジー『The Take』,『Bad Guys』
701989Philip Kerrフィリップ・カーBernie Gunther
711990Joe Richard Lansdaleジョー・R・ランズデールHap Collins and Leonard Pine
721990Walter Mosleyウォルター・モズリイEasy Rawlins
731990Barry Giffordバリー・ギフォードSailor and Lula
741991Don Winslowドン・ウィンズロウNeal Carey, Cartel Trilogy
751991Ken Bruenケン・ブルーウンJack Taylor, Tom Brant
761992Michael Connellyマイクル・コナリーHarry Bosch, Mickey Haller
771992George Pelecanosジョージ・P・ペレケーノスDerek Strange, D.C. Quartet
781992James Sallisジェイムズ・サリスLew Griffin,『Drive』
791993桐野夏生村野ミロ,『OUT』
801994Dennis Lehaneデニス・ルヘインKenzie and Gennaro, Coughlin
811995James Carlos Blakeジェイムズ・カルロス・ブレイク『In the Rogue Blood 』,『Red Grass River』
821995Massimo CarlottoAlligator
831995Vicki Hendricksヴィッキー・ヘンドリックス『Miami Purity』
841995Nicholas Blincoeニコラス・ブリンコウ『Acid Casuals』,『Manchester Slingback』
851996Kent Harringtonケント・ハリントン『Dark Ride』,『Dia de los Muertos (Day of the Dead)』
861996Pascal Garnierパスカル・ガルニエ『La Théorie du panda』
871997Jo Nesbøジョー・ネスボHarry Hole
881998William Kent Kruegerウィリアム・K・クルーガーCork O'Connor
891998Ace Atkinsエース・アトキンスNick Travers, Quinn Colson
901998Steve Hamiltonスティーヴ・ハミルトンAlex McKnight,『The Lock Artist』
911999Seamus Smythシェイマス・スミス『Quinn』,『Red Dock』
921999David Peaceデイヴィッド・ピースRed Riding Quartet, Tokyo Trilogy
931999José Latourホセ・ラトゥール『Outcast』,『Havana World Series』
941999Boston Teranボストン・テラン『God Is a Bullet』,『The Creed of Violence』
952000Ray BanksCal Innes
962003Victor Gischlerヴィクター・ギシュラー『Gun Monkeys』
972003Adrian McKintyエイドリアン・マッキンティMichael Forsythe, Sean Duffy
982005Duane Swierczynskiドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardie Trilogy,『The Wheelman』
992006Jens Lapidusイェンス・ラピドスThe Stockholm Noir trilogy
1002006Megan Abbottミーガン・アボット『Queenpin』,『Bury Me Deep』
1012006Paul Cleaveポール・クリーブJoe Middleton, Theodore Tate
1022008Anthony Neil SmithBilly Lafitte
1032008Donald Ray Pollockドナルド・レイ・ポロック『The Devil All the Time』
1042009Roger Smithロジャー・スミス『Mixed Blood』,『Wake Up Dead』
1052009Ed Brubaker & Sean Phillipsエド・ブルベイカー&ショーン・フィリップスCriminal, Reckless
1062011Johnny Shawジョニー・ショーJimmy Veeder,『Big Maria』
1072013Joe CliffordJay Porter
1082019S. A. CosbyS・A・コスビー『Blacktop Wasteland』


というわけで、以上が2026年現時点での、ハードボイルドジャンル重要作家108なのだが、まあなんせ108人も並べたリストなんで、あんまり一見ではよくわからず、また見返しに来るということになる人も多いんではないかと思う。 こんなとこ何度も来たくねえって人も、何度も来るんじゃねえよっていう類いのもんもいると思うんで、ここにもう来なくても見れるPDFを用意しました。まあそもそもエクセルで作ったもんなんで、108行もテーブル組むよりそっち出す方が 簡単だったんだが。以下のリンクから。

Hardboild108.pdf

ここからは解説。主にこれは入れられなかった言い訳など。
まず最初の方では、結構昔のこの手のリストでは、クレイグ・ライスやフレドリック・ブラウンというような名前が最初の方に並んでいたものだが、もうあんまり現在にはつながらんと思い省略した。ガードナー=A・A・フェア/クール&ラムももういいかと 思ったんだが、こっからリチャード・S・プラザー/シェル・スコットっていうあたりがクラシック・ハードボイルドの一つのラインかと思い残した。
ハードボイルドをいつまでも大好きな『名探偵登場』のピーター・フォークの位置に置いておきたいんだか、この時期のハードボイルドに謎解きがあることを強調するような層もいるようだが、この辺のクラシックの時期にはパズルミステリーも生き残ってた頃で、 そっちとの兼業作家みたいなもんも多かっただけの話。
このクラシック期40~50年代には今でも名前の残るような作家も多かったのだが、ここでとどまってるわけにもいかず、かなりを外した感じ。中でも一旦まとめた今になってエド・レイシイは入れるべきだったかと思うんだが。他にはフランク・ケイン/ジョニー・リデル、 ブレット・ハリデイ/マイケル・シェーン、ハロルド・Q・マスア/スコット・ジョーダン、スティーヴン・マーロウ/チェスター・ドラム、タルミジ・パウエルなど。あと50~60年代に非常に多くの作品を出したウイリアム・キャンベル・ゴールトについては、 気になってたんだが、リスト作るまでに読めなかった。なんかこうやって名前並べると、クラシック物はそれでどっかでまとめるべきかという気もしてくるんだが、『名探偵登場』大好き勢のこと考えると、どうでもいいかという気もしてくるが。

クラシックのあたりでは、現代にいたってもまだ一部で残る厄介物件、ハメット-チャンドラー-マクドナルドスクールというところを早めに片付けとこう。
誰が言いだしたとか調べりゃわかるんだろうが、もはやそれほど重要とは思わん。要するにこれはミステリ=犯人当て謎解きストーリーというような考えの「ミステリ評論家」というところで考案されたもの。その考えにより、主人公が私立探偵などの事件があって解決されるものばかりに注目し、犯罪小説に分類されるようなものを別扱いやら無視していたせいで、クラシックの重要作が80年代になって「再発見」される事態となったわけだ。
当時の作家がどのくらいこの「ハメット-チャンドラー-マクドナルドスクール」を念頭に作品を作っていたのかは不明だが、現在から俯瞰してみて、そんな形跡はほとんど見られないというところじゃないかと思う。一番これに近い考えでやったのって、日本の結城昌治の真木シリーズじゃないのかな。
実際の運用としては、こういう形を作って、出てくる作品をこれに当てはめて考える程度のもので、この先に続くものを考えるような考え方はほぼなかったと思う。「ミステリ評論家」にとっては過去に思いついたこの形しかなく、これに縋りつくことで凌いできたぐらいのもんだろう。
ここで、ロス・マクドナルドっていう作家について言っておかなければならないんだが、マクドナルドはジャンル内でも現在もリスペクトされる重要な作家であり、ハードボイルドを考える上では必読といえる作家である。ただ、心理学というような方向の 家庭の問題やら、次第にただの事件の傍観者となって行くような彼の作風を継承しようと思う作家がいなかったという話である。それぞれの時代のリアルな犯罪を通して社会を描くという、ハードボイルドのフィールドでは、浮いた存在になってしまった というのがロス・マクドナルドという作家なのかもしれない。
日本にはこの「ハメット-チャンドラー-マクドナルドスクール」の「マクドナルド」が使えなくなっただけと思い「ハメット-チャンドラースクール」でその2作家だけ読んでればハードボイルドを「評論」できると思ってるレベルの阿呆が数多く存在するが…、 なんかもうなんも言う気も起らんわ。
マクドナルドがハードボイルドを代表すべき作家でなくなったから、この「ハチャマスクール」(長すぎるからもうこれでいいだろ)が使えなくなったわけではない。これは単純にせいぜい50~60年代ぐらいの時期で「ミステリ評論家」が優れていると思った作家を並べて一つのお手本になる方向性のように思いこんだだけのものである。そしてこのお手本により否定された代表格が、スピレイン/マイク・ハマーであり、先に並べたこのリストに載せられなかった作家達だったぐらいのことだろう。ここでこの連中がその「ハチャマスクール」以下としたような作家以前に、別物として除外していたホワイトやグーディスらの犯罪小説ジャンルが、ウェストレイクやブロックといった次代をリードして行く作家を産み出し、そしてそちらサイドから出て来たジョン・D・マクドナルド/トラヴィス・マッギーにより、そちらの私立探偵方向のハードボイルドも、大きく別方向へと舵を切る。まあそこから出て来た私立探偵作品に対してまたこの形を当てはめようとするわけなんだがね。
この「ハメット-チャンドラー-マクドナルドスクール」という考えは、アメリカでも旧世代の「ミステリ評論家」がほぼ絶滅する90年代ぐらいには衰滅したと思われる。一方日本では同時期に「ミステリ評論家」が大量生産され、読書のプロ暗黒時代を産み出し現在の惨状に至るわけだが。

このクラシック期には、エルモア・レナード、チャールズ・ウィルフォードといった、主に80年代以降に評価が高まり活躍した作家の名前もあるんだが、やっぱり登場年の方で並べた。
サミュエル・フラーはパルプ作家から映画監督へ転身したという出自があり、一応その年でリストに入れたんだが、現在辛うじて手に入るのは70年代以降の『ベートーヴェン通りの死んだ鳩』あたりからで、旧作がどんなものだったかは不明だったりする。
エヴァン・ハンターについては、当然エド・マクベイン名の方が有名だが、87分署は必読書ではあっても一応ハードボイルドとは区別すべきものであり、かといって最もハードボイルド方向のカート・キャノンにするのもどうかとうじうじ悩んだ挙句、 本名エヴァン・ハンターでちょっとごまかした。

60年代にはドナルド・ハミルトン/マット・ヘルムが抜けてる。実はこれはなんだか結構長い間ぐらい米国版が日本から手に入らず、忘れてたぐらいのものなんだが、思い出してさっき調べたら英国Titan Books版が日本から買えるようになってた…。
60年代といえばジェイムズ・ボンドでスパイものがブームになっていた頃で、ハードボイルド的手法で書かれたそっちジャンル傾向のものということで、結構重要なんだが…。なんにしても読んでないもんを入れるわけにもいかんというところで、 これも間に合わなかったというやつ。ごめん。
実際のところ、先に書いたロス・トーマスやギャビン・ライアルというのも60年代デビューの作家であり、同じジャンルに分類されるハミルトンとなぜ区別しなければならないかといえば、それぞれの作家が当時どちらのジャンルで評価されていたか、 ぐらいのところでしかないのかもしれんが、日本で80~90年代頃にこれらの作家をハードボイルドのお手本のように扱ったのは、日本のハードボイルド誤解の元凶である「ハードボイルド精神」という考えからのものであり、それがその先の ハードボイルドジャンルを日本においてせき止めていることから、ここでははっきりと区別していかなければならない。まあ、何よりも日本でまず排除されなきゃならんのは「ハードボイルド精神」なんだが。

ハードボイルドジャンルの歴史というものを大雑把に分けるなら、クラシック期と、トラヴィス・マッギー以降と、ジェイムズ・エルロイ以降という感じに分けられるんじゃないかと考える。
ジョン・D・マクドナルドは1950年に長編作デビューした作家だが、その辺の重要性から、敢えてマッギー第1作の1964年でリストに載せた。旧来のハードボイルドの一人称スタイルで書かれた、免許を持たないフロリダのハウスボートに住む 盗品回収屋という主人公、多く挟まれるその時代の風俗文化批評的モノローグといった新しいスタイルは、セールス的な成功もあり、多くの追随者を産み出し、沈滞気味であった私立探偵型のハードボイルドを再活性化させることとなる。
この辺の作家を日本では「ネオハードボイルド」(小鷹信光氏による命名)と呼んでいるんだが、これは「本格ミステリ」同様に、日本国内でしか通用しない用語なんで。この時期、70年代的時代風潮みたいなもんもあって、従来のタフガイタイプと大きく違う新機軸の探偵像が新しい作家により多く書かれたという事実から、これを分類上の名称とするのはありだと思うが、一部日本で思い込まれていたような、「ハードボイルド精神」からのイメージのハードボイルドに対するアンチのような考えは根本的に間違っている。
以上のような考えから、しばしばそこに一緒にされるローレンス・ブロック/マット・スカダーは、ブロックがそこで出てきた新人作家ではないことと、マット・スカダーがその後に与えた大きな影響からもそれら「ネオハードボイルド」とは別に考えるべきである。
また、「ネオハードボイルド」というところによく置かれる作家としてジョン・ラッツ/アロー・ナジャーがいるんだが、80年代にはフロリダもののフレッド・カーヴァーシリーズを立ち上げるラッツは、やっぱり売れそうなところを狙って書く 商売っ気の強い作家で、そういう人がいたことでこの時期そういう傾向が流行っていたという証拠にはなるんだが、ここでは外した。まあ後のロバート・キャンベルやスチュアート・カミンスキーとかと同じ感じで入りきらなかった、ということ なんだけど。こういうジャンルというところで商売っ気の強いというのは、ゲス本方向に流れるわけでは無ければ別に全然悪いとは思わないけど、やっぱりこういうところでは優先度が下がってしまうので。まあそれを追補するために長々と書いてるんだけど。
この70年代初め頃の「ネオハードボイルド」って辺りは色々面倒臭いイメージ残ってる一方で、あんまりその辺の作品とか電子書籍等でも手に入りにくかったりするのだが、それ以前にはジャンルの作家の興味がクラシックタイプの事件解決型の 私立探偵ものからクライムノヴェル方向へと移って、ややそちらが下火になっていたところで、マッギーに続く新しいタイプの探偵たちの登場により、私立探偵小説が復興したという時期なのだろう。

70年代と80年代を繋ぐ重要な作家としてアーサー・ライアンズがいるのだが、現在のところこの人と80年代のハロルド・アダムズについては、アメリカでも電子書籍の販売が無く、やや入手困難。まだそういう出版をする意図のない出版社に版権が残っている というような事情と思われるが。この2作家についてはそのジャンル内における重要性から、そういう事情ながらリストに加えた。まだしばらく時間はかかるのかもしれんが、いずれは何らかの形で復刊されるのではないかと思うけど。
70年代と80年代を繋ぐということでは、ラルフ・デニス/ハードマン、マックス・アラン・コリンズ/Quarryといったあたりも重要で、なかなかこっちには書けなそうだけど何とか読んでいかなくてはというところ。この辺については、 あっちこっちで書いてるBrash Booksから復刊された、80年代に入ってハメット型のPeter Braggを書いたJack Lynchとかももっと読んでいかんとと思う。ホントBrash Booksものは読まなきゃならんものばっかりなんだが。

70年代、時代風潮からやや極端な方向に振れた私立探偵ものだが、80年代になるころにはキャラクターも落ち着いた傾向で、ジャンルとしても固定された感じで多くの作品が出版されてきたのだろうと思う。
なんかあんまり考えずスティーヴン・グリーンリーフ入れたんだけど、これでよかったんか?と後になって思ってたり。グリーンリーフ/ジョン・タナーは全作翻訳されてるけど、それは日本で人気があった作家ということで、ジャンル内重要性ということと イコールではないのかも?こういうのが結構悩むところになってしまうのだが、そういうところで混乱せずにきちんと見極めて行かんとというのはいつも思うところなんだが。
この時期の作家としては、現在までエイモス・ウォーカーシリーズが続くローレン・D・エスルマンについては確定なんだが、他にもジョナサン・ヴェイリン、ジェレマイア・ヒーリイ、アール・W・エマースンなど多くの作家がいて、その辺見てくと本当に グリーンリーフなのか?と思ってしまうわけだが、まあ結局はこの辺についての自分の読みが足らないということに尽きてしまうので、この辺の80年代私立探偵ものについてはもっと読んで詰めて考えて行かなければと思う。

ここで大抵の場合は82年デビューのサラ・パレツキー/V・I・ウォーショースキーが入るんだが、さすがにもういいんじゃないかと思って外した。パレツキーというのは、この後に続くもう別ジャンルの女性向けに特化したミステリジャンルの先駆けというようなもので、 ミステリ史的に意味があるんだろうけど、別に「ミステリ全体を見た」なんて考えでやっているわけではないんで。まあ入りきらないから外したようなものなので、どうしてもというならそっちで足して109にすりゃいいけど。
女性私立探偵ものではウォーショースキーより前、1977年に登場したマーシャ・ミュラー/シャロン・マコーンがいて、調べたら36作も続いて最新が2024年。その他この時期のものでは、マクシン・オキャラハン/ディライラ・ウェスト、 リンダ・バーンズ/カーロッタ・カーライルなど。個人的な推しはサンドラ・スコペトーネ/ローレン・ローラノなんだがよく見たら1991年か。80年代のジャック・アーリー名義があるんで、その辺に分類してしまうんだが。

80年代中盤にはジェイムズ・エルロイが、主人公がほぼ狂人というようなロイド・ホプキンス三部作に続き、暴力衝動に取りつかれた主人公の眼を通してもはや裏も表もない腐敗と暴力に満ちたアメリカが描かれるL.A.四部作が開始される一方、ブラックリザード叢書 により50~60年代のミステリ評論が無視してきたクライム・ノヴェルの名作が復刻され大きな反響を呼び、更にその時代からの作家であるエルモア・レナード、チャールズ・ウィルフォードらが脚光を浴び、新たな活躍をして行くことになる。
こうしてハードボイルドジャンルのメインストリームという部分は、クライムノヴェル傾向が中心となって行くのだが、その一方で私立探偵ものというジャンルはPI小説と呼称され、次第に別の流れとなって行く。

その辺については後にもう少し詳しく書くが、ここでは先にこの辺りで入れられなかった作家について。
86年にダン・ローズ保安官シリーズで登場したビル・クライダーについては、本当はここに加えるべき重要な作家ではないかと常々思っているのだが、特に理由もなく延々と後回しにして自分がちゃんと読めてない。やっぱり入れるべきだったかなあ。
自分的にこだわりはあるんだが、というところでは80~90年代に『オールド・ディック』など4作の作品を出したL・A・モース。絶対読んどくべき作家だと思うんだけど、作品数が少なく活動期間がそれほど長くないとかいう理由で外さざるを得なくなってしまう。 それほど「私が思うハードボイルド」でやってるわけじゃないんだぜ。わずか2作しかなくほとんど入手困難な、70年代のスティーヴ・ニックマイヤーも本当は入れたかったし。
あと、自分的には余裕があったら最優先だったのがレオ&セレンディピティシリーズが有名なディック・ロクティ。ロクティの過去作品については、前述のBrash Booksで復刻されており、未訳作品についてはなるべく早く読んで書くつもり。80年代半ばというところで、 本当は重要な意味を持った作家なのではないかなあ、と思ってるんだが。
そして88年開始のアンソニー・ブルーノのトッツィ&ギボンズの「Bad」シリーズ。タイトルの付け方やスタイルなどからして、70年代初頭に始まったマック・ボラン、デストロイヤーなどのペーパーバックオリジナルシリーズ物の最後の方の作品ではないのかと 思ってるんだが、あんまり詳しいところは今となっては分からないのだけど。
80~90年代頃は、日本でも大変多くの作品が翻訳出版されていた。本当はもっと多く入れたいところだけど、このくらいで。あとウィリアム・G・タプリー/弁護士ブレイディ・コインシリーズが、2010年までに25作も出てたとか最近まで知らなかったし。

80年代後半から2000年ぐらいまでのエルロイ以降ってところの、ハードボイルドのメインストリーム的なところについては説明するまでも無かろう。その必要がある人に来られても面倒見切れんというところなんだが。
ここではそっから次第に別の流れになって行ったPI小説について。その言葉がどの辺から出て来たのかよく知らんが、まあ80年代ぐらいかな。現在から遡って考えるに、その枝分かれの最初のところに来るのは、ロバート・クレイス、レス・ロバーツ といった作家あたりなのではないかと思う。
レス・ロバーツに関しては、日本ではデビュー作1作が紹介されただけだったが、その後PI小説というジャンルの重鎮となって行くわけで、何とかそっちの方も今後紹介して行ければというところなんだが。
85年デビューのジョナサン・ケラーマン/精神科医アレックス・デラウェア シリーズ、89年のジョン・サンドフォード/刑事ルーカス・ダヴンポート シリーズなどは、当初はこのPI小説という方向のラインで、ハードボイルドとして紹介された。その後、アメリカの ミステリエンターテインメントというようなもっとメジャーなベストセラージャンルとして、ハーラン・コーベンといったところに続いて行くことになるのだが。
50~60年代のクライムノノヴェルや、ノワールという傾向を多く含むエルロイ以降のハードボイルドのメインストリームと比較すれば、そちらのミステリエンターテインメントという方向に近いのがPI小説ということになるかと考える。
94年ダグ・J・スワンソン、95年デイヴィッド・ハウスライト、2002年ジョナサン・キングというようなラインか。主人公が司法側の人間でなくなり私立探偵などになる経緯が、マット・スカダーのそれをなぞっているような傾向が高く、ここに一番 影響を与えてるのがスカダーというところなんだろうと思う。
実は自分的にはこのラインまだきちんと追えていない気もしている。この辺よく考えるようになったのが割と最近。ここでも2回書いてきているMatt Coyle/Rick Cahillシリーズを読んでから。現在においてはかなり分かれた感じでPI小説というのが存在している という認識は前からあり、このRick Cahillシリーズが2010年代後半ぐらいのそれを代表するシリーズなのだろうと見ているのだが、どうもよくわからないところがある。このシリーズ、主人公のCahillが様々な意味でかなり追い詰められた過酷な 状況に置かれるのだが、それが作者Matt Coyleのスタイルなのか、現在のPI小説の傾向なのかいまいち判別できない。
ここでやるべきこととしては、まず近年のPI小説をなるべく沢山読むことと、少し遡ってきちんとジャンルとして考えたPI小説の傾向の推移を見て行くということなんだろうと思う。過去のものについてはやや失われてきているところもあるんだが、 前述のBrash Booksには知らなかったようなシリーズの復刻作も色々あるからな。
この辺のPI小説というラインについては、今後はもっと探って行ければと思ってる。

ここでハードボイルドの私立探偵的というものが全てPI小説という形になったかというと、そういうわけではないところがまた説明するところでややこしいんだが。
70~90年代には、なんかこういう「○○以降期」みたいなものにも上手く収まらない感じで、圧倒的な存在感を持って後のジャンルに大きく影響を与えるジェイムズ・クラムリーという作家がいる。作家的個性みたいな考えもあるかもしれないが、 ジャンル全体の歴史という視点で見れば、「ネオハードボイルド」のやや小手先といった感もあるキャラクター的なシフトとは全く違ったところで、それこそハメット-チャンドラー-マクドナルドといった私立探偵を主人公としたハードボイルドを 大きく動かした作家と言えると思う。
そこからただ繋げるというのはやや安直かもしれないが、少なくともこの時期にはジェイムズ・リー・バーク、ジョー・R・ランズデール、ウォルター・モズリイといった「私立探偵」という型を変形させながら、最もハードボイルド的といえるような作品を書く作家が輩出して行き、それがアイルランドのケン・ブルーウンへとも繋がって行く。
自分の意見としては、こういったところがハードボイルドというジャンルの核となる最も重要な部分であり、現在というところでそういった形でキャラクターを立てたシリーズ作品として書かれたジョニー・ショー/Jimmy Veeder、Joe Clifford/Jay Porterというところに注目し、かなりスローペースを余儀なくされてるが進行中のエイドリアン・マッキンティ/ショーン・ダフィを何が何でも追って行かねばとなっているところなのであるよ。
まあつまり現在クライムノヴェル方向と、PI小説という形に分かれているように見えるハードボイルドジャンルなわけだが、私立探偵もの的なシリーズ作が、単純にすべてPI小説にカテゴライズされるものではない、ということ。まあそういうところがあるからもっとPI小説というものを、独自ジャンルというような考えできちんと見て行かなければと思ってるわけなんだが。

ただね、ここで延々と言ってきたPI小説という一つジャンル的に見えるものも、あくまでこの2020年代中盤という時期に少し前からの動きを俯瞰して言ってるものに過ぎない。どこまで行っても現時点でそういう別の流れとして進んでいるように見えるというだけの話。 ここで、90年代半ばあたりのどっかでPI小説はハードボイルドと全く別のジャンルになったなどというつもりも毛頭ない。
近年日本でハードボイルドジャンルに於いて起こった最大級の愚行が、ハードボイルドジャンルの中からノワールというものを切り離そうとして、話にもならん定義まで掲げ、ノワール統制まで行った挙句に、結局それに合致するクラシック作品しかノワールとして扱えなくなった、ノワール原理主義者連中の動き。
例えばこれまで書いてきたような旧来の事件が解決されるもののみを「ミステリ」とするような考え方で、このPI小説をそれこそハメット、チャンドラーから続く一貫したものとして犯罪小説というようなものと切り離した私立探偵ジャンルとして考えれば、一見わかりやすそうには見えてもそこには必ずそれのみでは説明できない部分が生じる。それを理解しやすくするために強引に定義みたいなもんを被せれば、必ずノワール原理主義と同様の停滞・行きどまり、更に悪い場合は分かりやすい解釈に飛びついたが故の見当違いの方向での理解に流れて行くだろう。当方がこんなこと言ったからってPI小説なんてもんで、新たなその手の愚行の先導にされるなんてことはごめんこうむる。そんな奴現れたら率先して笑えるあだ名付けて徹底的に馬鹿にしたるから。
未来にはマイク・ハマーやトラヴィス・マッギーみたいなもんが電撃的に現れ、一見本流の方よりおとなしめに見えるこのジャンルを大きく別方向へ動かして行くかもしれない。70年代のよわよわ探偵時代に、あと10年したらエルロイみたいな狂犬が現れるなんて予想したやつ誰もいなかったんじゃない?
ジャンルなんてものは読んでるだけの奴らが外から定義なんか被せて形を決められるもんじゃない。常に新しいものを創ろうとする作家達により形作られて行くもの。ここで言ってるPI小説なんてものも、少し別の動きをしているような作家たちの考えみたいなもんを、独自のものと考えた方がわかりやすいんじゃないかという程度の提言に過ぎんからね。

この時期になって来ると、かなり何を外すかというところが困難になって来る。まず現在に直結してる重要作家を並べ、そこにどれだけ加えられて行くかみたいな作業になったり。
85年デビューのT・ジェファーソン・パーカーについても、結構重要な作家だと思うんだが、結局もっと売れてるミステリエンターテインメントってとこに属する作家かな?みたいな言い訳付けて外した。実は同じ考えで外しかけた作家もいたんだが、 それただの外すための言い訳じゃんと気付いて戻したのが最初のところで言ってた中途半端な数になった経緯。結局きりがないんで結果的に外すことになってしまったが、パーカー、重要作家です。
86年デビューで、何度もシェイマス賞ペーパーバック部門を受賞とかノミネートされたロブ・カントナーも重要だとは思うんだが。あと96年のG・M・フォードも最後まで悩んだ一人。
ジャック・オコネル、ジョナサン・レセムというのも忘れてはならない作家なんだが。
リード・ファレル・コールマンについても、パーカー/ジェッシィ・ストーンの続きの後しばらく音沙汰なく、もう作家辞めてしまったのだろうと思って最終的に外したんだが、なんかさっき調べてみたら2023年から新しいシリーズ始めてたり。そのNick Ryanシリーズ なんだがアマゾンで見たらプリント版しかなく、気付かんわけだよな、と一旦思ったんだが、出版社を見たら私の中で大変評判の悪いBlackstoneから。もしやと思って米Amazonで調べてみたら、案の定そっちでは電子書籍版も販売されてた…。ああ、もう 誰かBlackstoneを何とかしてくれよ。まあ、とにかくコールマン外しちゃってごめん。
90年代後半、映画化作品などもあるジョン・リドリーなんだが、もともと映画関係の人でこういう小説を書いていたのも割と短期間で、その後はDCバットマン系のコミックの仕事ぐらいしか出てこない人なんで外した。なんかケント・ハリントンと並んでみたいなイメージあったんだが。

個人的にはかなりこだわりがあるんだが、結局外したのがグレッグ・ルッカ。アティカス・コディアックを主人公としたハードボイルド的なところからスタートしたのだが、その後スパイ、エスピオナージュといったジャンルへ移行している。
ルッカのこの転身というのは、ひとつの考えとしては単純にわかりやすいんだけど、作家はあんまりやらないというものなんだろうと思う。例えばルールや手段を限定せず闘えば一番強いのは何?という考えで軍人という結論を出すような考えを、進めて行った 結論みたいな感じで変化していったというような。そこには、作品にリアリティを出すためという考えで自身を鍛えたりとか、いかなる敵が最も強大かという考えを突き詰めて行ったりとかいった過程もあるのだろう。
アティカスシリーズに続く、『Queen & Country』や、中断中のJad Bellシリーズ、コミック『Lazarus』なんかを順に追って行けば、その辺の考えというのは明らかに見えてくる。
やはりハードボイルドジャンルに属する作家とはもう言えなくなったルッカゆえ、こっちのリストからは外さざるを得なかったんだが、読まれるべき作家として何とか語って行かねばと常に思ってるのだが。コミックから映像関連に仕事を広げ、 一時期忙しくなり過ぎていた感のあるルッカだが、何とかコミックの方には戻ってきたようなんで、そろそろ小説の方も書いてくれんかと思うのだがね。

1997年デビューのリー・チャイルドも、初期から自分のルーツとして、まあ英国人として自国作家との違いを強調したいという意図だったのだろうけど、トラヴィス・マッギーからの影響を主張してきて、日本では「ハードボイルド売れない指定期」に出た数少ないものの一つとして思い入れは強いのだけど、やはりもうちょっと違うジャック・リーチャーという単独ジャンルぐらいになっているかなあという感じで。それでもペンドルトン/マック・ボラン的な意味で必要かなと思うところもあるんだが、まあこの辺なって来ると大雑把に並べたリストが100越えてて、まあしょうがないかとなってしまった。一番重要になって来るその後のリー・チャイルドからの影響っていうところなんだが、なんかもう把握できないほどの公認二次創作的なものまで含めても、まだあんまり見えて来ないかなと思う。当然英国からも目指せ第2のリー子という作家も出てくるんだろうと思ってたんだが、話にもならんもん読まされてあんまり追っかける気なくなってたり…。

この辺で一旦、アメリカ以外というところの作家に言及しとこう。書いとかないと区別付かないという作家もいるかもしれんので。
まず英語圏、クラシック期にはイギリスのジェイムズ・ハドリー・チェイスと、オーストラリアのカーター・ブラウン。この辺日本でも大量に翻訳された。版権安かったんかな?
イギリスは、60年代以降Derek Raymond、テッド・ルイス、ニコラス・ブリンコウ、デイヴィッド・ピースというような、アメリカとは少し違う英国ノワールの流れがある。ジョセフ・ノックス、ウィル・カーヴァーあたりがこのラインの近年の注目株か。英国ノワールの父、Derek Raymondについては、このリスト作るために読んでかなりの衝撃を受けたんだが、間に合わなかった…。Raymondについては早急に書くので。
そしてRay Banks。これは心からの親切心のみで言ってるんだが、もしあんたがハメットだーチャンドラーだーレベルの超初心者だったとしても、これからハードボイルドを読みたいという意志が少しでもあるなら、このRay Banks/Cal inens四部作だけは絶対に押さえておけ。これを声高に推す権威みたいなもんがあまり見つからなことも、日本に翻訳される可能性なんてないことも、全く関係ない。唯一無二の2010年代ハードボイルド必読の異端の名作!これを読んどかんと絶対に後悔するぞ!
フィリップ・カーも英国作家だが、ちょっとこの辺の英国ノワールとは少し違う流れなんだと思う。
アイルランドではケン・ブルーウン、エイドリアン・マッキンティだが、作品数は少ないながらシェイマス・スミスというのも絶対忘れちゃならん作家だろう。
そして、ニュージーランドが赤ちゃんばかりの国ではない!と知らしめたポール・クリーブ。実はTheodore Tateシリーズという私立探偵ものも書いてるの最近知った。なるべく早く読むっす。
この辺の英語圏の作家については、ある程度代表的なところは押さえられてると思いたいけど、探ればまだ色々見つかりそう。

その他の国については、定番不動のものもあるが、やっぱり翻訳ものを含めてたまたま知って読めたというところが多いところとなってしまう。なんかまだすごいのがどっかに隠れてるんだろうなと思いつつ。
フランスと言えば、ジョゼ・ジョヴァンニ、ジャン=パトリック・マンシェットといったところが鉄板。70年代、映画監督ジャン・ヴォートランがあって、比較的最近のものとしてはパスカル・ガルニエ。
イタリア、Massimo Carlotto/Alligatorを読めたのはなんかホントに運が良かったと思う。続きも読んでいかなきゃなんだけど、イタリアまだいろいろあるんだろうな。
北欧ものでは、とりあえずジョー・ネスボと、ストックホルム三部作のイェンス・ラピドス。北欧もの翻訳されたのでも読んでないの多いんだけど、「日本的な評判」みたいのあてにして読むと、自分的にはハズレみたいなの引いてしまって、しばらくそっちから離れたりみたいなこと繰り返してる感じ…。まあお馴染みの「ミステリとして」基準ね、とかさ。結局、北欧ものに関してハードボイルド/ノワール界隈で決定的というような評価が出ているのはイェンス・ラピドスぐらいのところで、後は自分で見て行くしかないところなんだが。2000年代近辺の北欧ものが、エルロイ以降っていうところから大きく影響を受けてるのは確かなんだろうけど。念のために言っておくが、単純に読んだ感想でこれはハードボイルドである!みたいな認定をして回っているわけではないからね。なんかそういう方向で引っかかるものがあれば、作者についてとことん調べ、別方向からの評判も見てぐらいのところで言ってる話だから。よく思い起こしてみればそういやあれとかあれも一作読んだだけかとか色々あって、まだいいの確実に見つかりそうなんだが。こういう日本的評価が全くあてにならないなんてところも「読書のプロ暗黒時代」の弊害かと思ってしまうよ。なんかさ、その界隈で評判いいイコールハズレが確定してりゃもっと楽なんだけど。
中南米。メキシコパコ・イグナシオ・タイボ二世/ヘクトル・ベラスコアラン・シェイン、チリRamón Díaz Eterovic/Herediaについてはもっと読みたいんだけど、英訳版もあまりない…。Ramón Díaz Eterovicについても、これやるために読んだんだけど、書くの間に合わなかった。すぐに書きますので、少々お待ちを。
キューバのホセ・ラトゥールに関しては、原文英語で書かれてるので近作なども比較的手に入りやすい。
南アフリカ、ロジャー・スミスはしばらく自費出版などで頑張っていたけど、もうやめてしまったみたい。残念。
なんかアメリカ以外ってところには、こっちの常識覆すようなハードボイルド/クライム作品が隠れてるんじゃないかといつも思うんだが、なかなか探す手段も乏しかったり。またなんかの偶然でたまたますごいの見つかるのを期待しよう。

そして現在ってところに続く2000年代なのだが、ここについてはどうしても難しい。やっぱりこういうところ入れるのはロングスパンで見た評価みたいなもんになるんだが、割とショートスパンで考えなきゃならなかったり。さらに加えて、2000年代の 出版不況みたいなもんで、これはという作家も短命に終わってしまったり。更に2010年代後半から20年代にかけての、世界的な新型コロナによるパンデミックは、出版の方でも様々な停滞を起こしたり。
ただし、現在というのは最も重要な部分で、そこに持ってくるために長々と書いたというところもあるので、入ってるのも入れられなかったのも、これから多分入って来るんだろうというところも、なるべく多くの作家について語って行かねばと思う。

まず、ブラッド・スミス、アダム・スターンバーグというカナダ出身勢なんだが、割と短期的に見ててもうやめちゃったのかなと思ってたんだが、最近になって復活の模様。なんか本当に短期的に見てしまって、著作リスト的に見れば大した ブランクでもないんだけど。結局、自分もそういう本が出にくい時代みたいなもんの中で、何か諦め気分で見てた人間なのかなと思ってしまったり。先に書いたリード・ファレル・コールマンや、ジョージ・P・ペレケーノスなんかも復活してきてるしな。 翻訳一冊ずつしかないスミス、スターンバーグだが現在を担う作家としてちゃんと追って行かねばと思う。
2010年代半ば、かなり印象的な作品が翻訳されたビル・ビバリー、C・B・マッケンジーなんだが、かなり期待してるんだが先が続いてない。こっちでヘンリー・ファレル第2作書いたトム・ボウマンもその後が続かない。このへんの人たちも 復活してくれるといいんだけど。
2000年代以降というと、日本で一冊だか出てそのまま知らんぷりという作家も多く、追っかけようと思ったらすぐに終わっちゃってたり、かと思うと復活してたりでなかなかややこしい。またその辺見返し始めると結構な時間持っていかれたり。 リチャード・ラングや、ウィリアム・ボイルというあたりもちゃんと追ってかなきゃならんところなんだが、どれにするかと思ってるところで進まなかったり。いや、それじゃいかんだろ。あと、ピーター・スピーゲルマンっていうのも、 PI小説でいいのか?と気になってるちょっと曲者作家なのだが、コロナ以後で復活すんんか?ここで止まるのか?というところだったり。どっちにしてもジョン・マーチ以後の2作は読んどくべきか。
前々から気になっていて、去年やっと読んで紹介したのがJosh Stallingsの『Beautiful, Naked & Dead』、昨年15年ぶりに続編が出て完結し、一部で話題になったChrista FaustのAngel Dare三部作など、まだまだこういったちょっと遡ったあたりにも、出版不況の時代、日本では目を向けてすらいられていない重要作家は多く存在する。なんとか一つでも多く掘り出して行ければと思う。

過去においては、古くはボリス・ヴィアン、そしてノーマン・メイラー、リチャード・ブローティガン、ポール・オースターなど、それぞれの作家ごとに意味は違うだろうが、ハードボイルド/クライム/私立探偵的手法の作品を書いた文学というところに属する 作家は多い。ピンチョンの最近の3作がいずれもそっち方向ということは、今後なんかそれなりの意味を持ってくるのかもしれんしね。とりあえずそれぞれをリストに載せるのも違うと思うが。
2010年代にハードボイルドの一つの中心は、カントリーノワールという方向に進むわけだが、そこに大きな影響を与えた作家がコーマック・マッカーシー、チャールズ・ブコウスキーということになるだろう。
マッカーシー『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』については、前述の文学系作家が書いたハードボイルドとは違い、もうクライムジャンルのその時代の代表的作品の一つとなっている。
2008年『悪魔はいつもそこに』のドナルド・レイ・ポロックを入れるのは少し迷ったのだけど、カントリーノワールというジャンルでは、先行するLarry Brownや、後のFrank Billのように文学という方向に属する作家抜きでは語れないという形になっているため、 その代表として挙げた。
まあこれで、ハードボイルドは文学となった、みたいな幼稚なことは言うつもりはないが、暴力というものがアメリカ文学の中で重要なテーマとなるにつれ、それらが接近するのは必然ということだろう。まあその一方で、日本の「ミステリ評論家」は、 純文学ノリといちゃもんを付ける、といった呆れたレベルなんだが…。
現在という時点で、クライムノヴェルとしてのカントリーノワールというジャンルを代表する作家としては、『Bull Mountain』のBrian Panowichということになるだろうし、このリストに入れてもいいかと思ったんだが、それと並ぶ作家と見られるDavid Joyすらまだ読めていない状態なんで、とりあえず見送った。クライムノヴェルというジャンルではやや頭打ちかという意見も出てきているカントリーノワールだが、一つのアメリカの姿として、今後も文学との境界というところでは 続く作家が多く現れてくることだろう。まあそもそもここに至る流れというのが、ドナルド・トランプを強く支持するような現代のアメリカの姿を、底辺的部分で見つめて行くというところも含んでいるわけで、そういう意味でも単純に アメリカの田舎の果てまで行ったので終わりなんてことにはならないんだろう。

境界を接するというところでは、ホラーというのも重要なジャンルだろう。結局このリストには入れなかったが、デイヴィッド・J・スカウ(ちょっと日本語表記わかんなくなってる?)とかも少し遡ってちゃんと見といた方がいいのかと思い始めている。 ジャック・ケッチャムという名前も浮かんだんだが、なんかあんなにホラージャンルで愛されてる人を迂闊に入れるのはちょっとためらった。
昨年読んで大変衝撃を受けたGabino Iglesiasの『The Devil Takes You Home』なんかは、その一作でこのリストに入れていいんじゃないかとも思った。一昨年やっと読んだ、クラシックノワールというストーリーがホラーにスライドして行くような Jon Bassoffの『Corrosion』もかなり印象的だった。また、去年やっと読んだホラーと文学ってところの境界に位置する『Mongrels』のStephen Graham Jonesとか、自分にロス・トーマスとかをハードボイルド扱いしてのほほんとしてられるくらいの 無責任キャパが少しでもあれば(そんなキャパ絶対に要らんが)、自信満々にこれはノワールである!とねじ込んでたかもね。
大きな反省点としては、どいつもこいつもやっと読んだというところ…。もはやジャンルには拘らず、そっちも積極的に読んで行くことで、この境界というような位置する作品も多く見えてくるのだろうというのが今の考えである。ここのところには これからも絶対に見逃してはならん強力な作品が出てくるであろう、予感というより確信というものがある。

コミックジャンルからブルベイカー&フィリップスを入れたが、なんかこれが必要な意味など説明するのがいい加減面倒になって来た。なんか遥か昔の価値観にしがみつき、そこにいることで自身の人間的価値が保てると妄想し、執着するような狂人とか、底を見ればきりないわけだし。老害だけに限った話じゃないぜ。
父親のコレクションのペーパーバックのクライムノヴェルを読み漁り、そこから自身のクライムコミックを創り上げたブルベイカー。ブラックリザードから深く影響を受けて、『100 Bullets』を作ったBrian Azzarello。『フルメタルジャケット』の作者 グスタフ・ハスフォードの従兄弟であるジェイソン・アーロンの、インディアン居留地を舞台としたノワールコミック『Scalped』など、クライムコミックというジャンルにもここに並べた作家たちの作品に並び立つ優れた作品が多く生み出されている。
フランク・ミラーらにも大きく影響を与えたアルゼンチン出身のCarlos Sampayo/José Munozによる『Alack Sinner』など、深く探って行けばさらに多くの作品が見つかって来るだろう。
まあ日本の「ミステリ評論家」みたいなものを近づけさせれば、日本の謎解きミステリマンガと一緒に並べて、ぬる~く薄めた「ミステリコミックの世界」みたいな商売ができるかもとか思うのが関の山なんで、絶対近寄らせるな!ってとこだがね。

2019年『Blacktop Wasteland』が仲間の作家の口コミから大物作家からの評価にもつながり、それらの後押しで一躍ジャンルのトップに躍り出たS・A・コスビー。見方によれば、2010年代後半という地点でのクライムノヴェルがテーマとしてきた アメリカの姿の集大成というような部分もあるのだろうと思う。ここからどんなアメリカを描いて行くのか、というのがコスビーの今後の課題であり、絶対に追って行かなければならない作家だろう。
そしてその先を模索するジョーダン・ハーパー、ルー・バーニー、ロブ・ハートといった作家も、この先このリストに名前を連ねて行く作家となるのだろうと期待している。
日本が出版社・評論家というところまでがハードボイルドを馬鹿げた男の生きざまナルシシズムと思い込み、もう終わったと思い込もうが全く関係なく、世界ではそれぞれの時代のリアルな犯罪を通じて社会を描くという形で、このハードボイルドを 起点とするジャンルはここまで途切れることなく続いてきて、これからも新たな作家により引き継がれて行く。とりあえず現時点でここまでまとめて来たが、長々と書いて来た文章の端々に現れているように、あっちもこっちももっと見て行かなければ と思うばかり。過去・現在・未来に亘り、まだ見ぬ作家・作品を見つけ、その意味に驚き感嘆し、このリストをさらに広げて行きたいというのが自分のやりたいことなんだろうね。

*  *  *

昨年前半ぐらいか、第1作を読んだのみで延々と放置してきたウォルター・モズリイ/イージー・ローリンズを、これは絶対読んでおかねばならん重要作だろうと思い直し、第1期だかの区切りである第5作『A Little Yellow Dog』まで続けて読んだ。 1990年というう時点で、私立探偵方向のハードボイルドと、クライムノヴェルを完全に融合させたようなこのシリーズは、自分にかなりジャンル全体について考えさせ、過去から現在に至る流れをきちんとまとめておきたいという気持ちを呼び起こした。
それが夏ごろだったかな?とにかくこれを12周年てところで出そう、半年ぐらいあるからな、一応ブログみたいなところでテーブル100行とか馬鹿の極みだが、半年あれば何とかなんだろう、と思って始めたのが8月末ぐらいだと思う。よく考えりゃ半年 なかったじゃん。そして100を目指したが、結局その数字に収めることに無意味を感じ、適当に増やした経緯は先に言い訳した通り。まあそんなことをやってるうちに、何とか頑張ってもっと書かなければと思ってたのもペースダウンし、最終的には 一時停止となってしまったのだけど、まあこんな長々と書いてちゃしょうがないか。なんとか入れられなかった作家をなるべく多く拾って行こうと書いたこっちの文章も、あれも読まなきゃこれも読まなきゃ増やすばかり。こうしてまた ビル・クライダー後回しにし続けるんだろうな…。ホントごめん。
ただまあこんな頑張ってみてどうなんだろうね、みたいな気分は常にある。自分的にはモズリイを読んで考えたことって部分で、それなりに意味は達成できてるんだが。とりあえず自分が語ってるハードボイルドってもんについての 説明マニュアルぐらいにはなるかもな、ぐらいか。
もしこれを見て、「私が思うハードボイルド」にしか見えないんなら、あんたハードボイルドってもんについて根本的に全くわかってないよ、ってこと。これはそもそもがそんな特別なリストではない。少なくとも10年ぐらい前までは翻訳ミステリってところの一部ぐらいだろが、自分だったらこっちを入れるみたいな意見はそれぞれにあろうが、ちゃんとあった認識だった。うん、多くの人が何とかしたかったけど出来なかった、サラ・パレツキーを外したのは、自分の功績だと思ってる。感謝しろよ。自分もそういうものがあるつもりであちこちで起きる出鱈目をそうじゃないだろうと、批判しているつもりだったんだが、ここに来て それも完全に失われたようだ。もはや日本の翻訳ミステリなんて業界に見るべきものは何もない。カントリーノワール作品を読んで、横溝正史を思い起こすなんてアマゾンの素人野良レビューレベルのことを平気で書く「評論家」が、編集部から渡された資料だけ読んで適当に書いた「解説」とか称する感想文付きの本なんて読んで腹立ててるだけ時間の無駄なんだよ。そりゃあそんな出鱈目が改善されて、まともな出版がされるのを望むというのが普通だろうが、もう現在の出版状況ではロングスパンでそんなことが起きるなんてことは期待できないだろ。それならもうこれ以上被害を広げないよう、ハードボイルドに属する作品の出版など辞めて早く消滅してくれだけがこっちの望みだよ。オレは本当は心から、ダフィが 翻訳されてよかったなあ、マッキンティは素晴らしいなあ、と喜んで楽しく読みたかったんだぜ。クソッタレが!

ここまで来ても、まだハードボイルドが「男の生き様」じゃないなら何なのか?なんて質問をしてくる阿呆もいるんだろう。そんな考え方自体が馬鹿の極みだし、そんなもんに答えるような意図は一切ない。
この作品がハードボイルドであるか否かを判別するような基準も定義もチェックシートもありあゃしない。
ハードボイルドというジャンルを知り、その継続でハードボイルドを書こうとした作家により作られた作品がハードボイルドだ。それはそのジャンルに魅せられ、その継続を追い、新たな作家・作品を探し続ける人間には、そんな馬鹿々々しい判定基準以前に 見つけ出せるものなのだ。
延々と言っているが、自分は言葉としての「ハードボイルド」にそれほどこだわっているわけではない。ただこの国では、ハードボイルドの影響下で書かれた小説だからハードボイルドだというような至極単純なことを言おうとしても、必ず出鱈目に イメージづけられたハードボイルドにぶつかる。
何が日本でハードボイルドをここまで駄目にしたのか?
馬鹿々々しい「ハードボイルド精神」によるハードボイルド観が固定されたまま、誰も海外のハードボイルドをきちんと見ようとせず、翻訳されたものしか見ない「ミステリ評論家」どもがその場しのぎで適当な商売をやってきた結果か?
日本で売れるものみたいな考えでやってるつもりで、結局身内のミス研人脈内で受けるようなものにしか目がいかず、そういうものをきちんと日本に持って来ることさえまともに考えなかった、出版社・編集者に責任があるんか?
正しい形、お手本となるものがあると信じ、それに照らし合わせることで優劣・価値基準を付けられると思うような、幼稚なお勉強型思考から離れられない批評か?
そもそもがオルタナティブアートなんてものを理解しようとすら思わないくせに、それと同じ方法論で世界と切り離した形で作家の内面のみを見ている形に単純化して評価しようとする、ありとあらゆるジャンルにはびこる私小説至上主義批評か?
遡って考えて行けばきりがない。そもそもなんでオレがそんなこと考えなきゃならない?自分は世界で作られ続けている素晴らしい作品を読み続けたいだけだよ。クソ時間の無駄でしかない。
なんとなく、今回のこれももうそういったところから完全に切り離した形で、独自にハードボイルドについて語りたいという意図もあったのかもしれない。まあ自分のある考えから始めたわけだけど、これをこういう形で出すということで 結果的にはそうなのかもな。
これによって日本のハードボイルドに対する考えが大きく変わるなんてことは期待してない。こんな辺境でホントに途切れ途切れに書いてる奴なんかにそんな力あるわけねえだろ。
まあ精々P・D・ジェイムズの『女には向かない職業』ありきで自分が知ってるミステリと「ハードボイルド」につじつまを合わせて知ったかぶりしたい奴に、「私が思うハードボイルド」リストに加えられるこじつけられるもんを少々提供するぐらいの ところじゃないのかね?
結局、日本のミステリってことについて考えれば、本来「古典」であるものをきちんとそう認識・整理しないまま「本格ミステリ」みたいな概念が独り歩きしてしまったということに最大の問題があるのだろうと思う。海外のミステリ状況を見ようが見まいが、 それこそが正しいと狂的にゴリ押ししたような。そんなのカルト宗教としか呼ぶしかないって。「古典」が正しく「古典」として存在すれば、ミステリ初心者もそういう形の入り口だと認識して、そこから違う現代ミステリに進めたし、老後の楽しみとして、 現実とは違う謎が解かれればすべて解決な平和な「ミステリ」を読みたいという人のためのわかりやすいものも用意できたわけだし。そういう形でナントカ神父やら、ナントカ警視やら、美食家のおっさんと助手みたいなもんをまとめて出せば、それはそれで そういう層に対応した商売になったのかもしれんし。そもそも今「本格ミステリ」なんてのを書いてたり、これから書きたい作家の人だって、クラシックミステリみたいな形のジャンルであった方がそういう世界観で好き勝手出来ただろうに。そもそもが こっちは「パズラー派VSハードボイルド派」みたいな昭和あたりにあった対立構造みたいなもんで「謎解きミステリ」を攻撃してるわけじゃないよ。平和的・理性的提言ってとこだけど、カルト宗教には通じないんだろうね。「クラシックミステリは、 かつて日本で本格ミステリと言われて来た」なんてことが言われる日も永遠にやってこないんだろ。
クラシックなミステリにある形式や構造・パターンなどをお手本として照らし合わせて作品を評価するような方法が、現在では通用しないなんてことは言うまでもない。そこまで馬鹿でなくても、理論的・科学的な証拠の実証の積み重ねにより事件解決に向かう形に構築されたミステリこそが正しい「ミステリ」だと思い込んでいるような輩は山ほどいる。だが実際にはそんな方法で綺麗に解決されない犯罪の方が遥かに多いというのが現実だろう。だからといってそういう形で書かれたミステリが現実的で、リアリティがあるなどという観点でそちらの方が優れているなどというつもりは毛頭ない。だが、そこにこそこれまで書かれて来なかったミステリの素材があると考え、旧来の方法とは全く違う方法でミステリ作品を書こうと考える作家が現れるなんてことは当然のことだ。そういった作家の作品は、そもそもがミステリに正しい形があるというような考えでは理解できず、なぜこの作品はこういう風に書かれているのか、作者は何を考えていたのかをとことん考えながら読まれなければない。いや、形にあっていると思える作家の作品であれ、いかなる作品についてそれは同じことだろう。読書という行為について当たり前というようなそういうことをやってこなかったのが、日本の翻訳ミステリという業界なんだろ。どこまで行っても文系思考程度で全体を説明できるパターンや定義を作れると思い込む阿呆な評論家。自分に理解できないものを「わからん」と投げ捨てられる権利があるなどと思い込む三流書評家が、読みにくいが感想になると思うような低劣な読者をはびこらせる。「解説」ってのは作者やその作品が出版された経緯を知るためのものであり、きちんと頭を使わずに読んだ読者が知ったかぶりを開陳するためのお手本感想文コーナーじゃない。前述のように事件解決に至るミステリが好きなのは勝手だ。だがその稚拙な「好き」による人気投票が「ミステリ」の正しいを決め、売れる売れないの安直な判定により日本のミステリ認識自体を狭めて来たわけだ。
自分は元来そういう事件解決がされるミステリも、もっと言うならクラシックミステリも嫌いではない。だがこの作品はそういった従来の方法みたいなもんで評価できるものではないと明確にするために、そういう見方を批判しているうちにそういう作品 自体が嫌いになって来た。なんか気楽に読むべきミステリマンガでさえも、その手のパターンで遺産相続云々でお行儀よく並んで座って自分の主張を並べているようなところで読む気がなくなったりさ。もうこれ以上自分が「ミステリ」を嫌いにならないためには、 阿呆な評論家が適当に書いた出鱈目水増し解説も、狭量なミステリ観しか見えない出版社・編集者による頭悪すぎコピーの帯も、一切見ないため、日本のミステリ出版業界みたいなもんから目を背ける以外ないだろう。 まあ大して先もないこんな業界がここからどうにかなるもんじゃないだろうし、もうどうでもいいや。かさにかかってどうでもいいようなことをなんでやってきたんだ?とか言い出す奴がいるんならまだ続けたっていいんだぜ。どうなんだよ。
どうでもよくないから怒ってきたが、もはやそれでどうなるもんでもなく、自分が本来やりたいことの時間が削られるだけなら、構わない方がいいってだけだよ。自分的にはもう見捨てたってだけの話。
去年出版されたものの中にも本来なら自分が言及するべきものがあったのは知ってる。ただこれまでに積み重ねられて来た出鱈目の結果、単なる意見の違いぐらいではすまないクソレベルのことが書かれてる可能性が高すぎて、またそれに延々時間を取られるのが 嫌で読む気にもなれなかったってだけ。原書で作者本人の文章で読んでるんだから、それこそ読む意味ないしね。
そりゃあ、業界そのものに早く消えてなくなれなんて言い草は乱暴かもしれんが、もうそんな気分にしかなれないよ。
結局これは『ハードボイルドをよく知らない人のためのハードボイルド重要作家108人』なんてフレンドリーなガイドではなく、先に書いたようなここまで劣化してもそれ抜きではミステリに属する作品を語ることが厄介になるこの日本の翻訳ミステリ業界と、 自分が見ているハードボイルドを切り離して語るための最後の抵抗ぐらいのもんなんかと思う。「切り離す」と言っても本来は「ミステリ」と「ハードボイルド」を切り離すこと自体は無理な話だろう。なぜなら意欲的な作家であれば、当然「ミステリ」に分類される作品だって読んでいるからだ(安直に形に合ってない作品を「失敗ミステリ」扱いする阿呆はそこをきちんと考えておくべきだ。馬鹿だから無理か?)。だが、ロス・トーマスや『女には向かない職業』をごちゃまぜにして「ハードボイルド精神」によりひとくくりにしたハードボイルド解釈が日本におけるハードボイルドの理解を妨げ、停滞してきたことから考えれば、ここは敢えて切り離す以外の方法しか見当たらない。 この国で発言している以上、無理な話なのかもしれんが、何とかそういうところと完全に切り離して、自分が思う本来あるべき形でハードボイルドについて語って行ければと思います。そんなところかな。

12周年。なんかこれを始めた頃って、メジャーなものは出版社から少しでも翻訳されるだろうから、そういうのが届かないところで見つけた作品を多く紹介して行こう、みたいなことを考えていたはずだ。
だが、今やこの国ではエルロイさえ翻訳されなくなり、そんなのまで自分でやらなきゃならなくなって書かなきゃならないものは増えるばかり。結局何やってもしょうがないんじゃね、みたいな気分にしばしば捕らわれるが、まだまともなハードボイルドを理解する人だっていくらかは残ってて、これからだってなんかのはずみで一人二人は増えて行くはずと信じ、一冊でも多く優れた本を紹介して行くものであります。
あー、まずはこれをやるために読んだけど結局間に合わなかったDerek RaymondにRamón Díaz Eterovic。そんでなるべく早くエルロイ。その辺でまたリー・バーク。その間を縫って山ほど積み上げ続けてる近年のまだ正体不明のPI小説の山を掘り進めながら、あれやこれの続きなどなど。何とか年内にイージー・ローリンズの次やれんのかな?いや、まだ2月なんだが…。ってところで自分的には【特報!】ぐらいのところなんだが、なんかやや諦め気分で見てたダフィ第8作のペーパーバック版の予約が数日前に開始!また来てもそっから3か月後とかになんだろうと覚悟してたんだが、ほぼ発売日の3月頭に届く予定!大丈夫だよね?今度こそ本当に読めるんだよな?ああそうだよ、新しいもんだって次々出てくる。早く読まなきゃのコスビーや、結構溜まってきちまったルー・バーニー、冗談ハーパーの新作だって春ごろには出てくるんだよ。ロブ・ハートの新作続きもあるんだが、Ash McKennaシリーズも今年には復刊という話だしな。
なんかあれも読めないこれも書けないとブツブツ言い続けてもがき続けてるうちに、なんか13周年とか言い出す。ここはそういうところなんだろうな。
まあなんかお付き合いくださってありがとうございました。うん、そういうこと言うぐらいの誠意きっと残ってるよ。多分。

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2025年12月18日木曜日

2025 ワンダーランド・ブック・アワード 受賞作品発表!

あ~あ、やっぱりだよ…。つい先日、もう今年も最後だと思ってガラにもなく、良いお年を、とか吹いてたら舌の根も乾かんうちにもう一回やることになっちまった。まあ、そうなるかもという予感もあって、最後に言ってたけどさ…。

なんか最初からボヤキで始まって申し訳ないが、2025年のWanderland Book Awardの発表です。
前回、いつまでたっても発表が来ないんだよー、ボクがさぼってるんじゃないからねー、とお伝えし、12月15日の午後ぐらいに記事をアップした後、夜になって念のため検索し、あーやっぱまだだなあ、と思いつつちょっと 思い付きで、「Wonderland Book Award」の過去の検索履歴に「2025」を久し振りに足してみたところ、これまでなかった項目が見つかりそこを辿ってみると、Wonderland Book AwardやBizarroConの告知をやってるBizarro Centralの中に "Wonderland Award Winners 2025"というのが出てきました…。
一応記事の日付は11月17日になってるんだが、このサイトかなりしつこく見に行ってたけど今までそんなのなかったんで、多分11月17日に受賞作の方は決定したけど、発表するBizarroCon開催の方が決まらないんで、そっちの発表ができたら出す予定で準備的に書いといて下書き保存みたいな状況になってて、結局そっちの方の開催発表の方がどうにもならなくなったんで、この2~3日ぐらいのところでそれそのまま出しちゃったみたいな事情なんだと思う。なんか記事の方も前置き全然なくて、いきなり作家作品紹介するような形になってるし。いや、日付をごまかしてるとかじゃなくて、最後に保存した日にちが出てしまうシステムのところってだけなんだろうけど。なんだかこれを書き始めてる時点では、そういう情報をいち早く伝えてくれるLocus OnlineやFile 770の方でも記事が出て来てないぐらいなんで、ホントに昨日今日ぐらいのことかも?

まあこちらでなかなか伝えられなかった事情説明ではあるんだが、結構頑張ったんだろうけどうまく行かなかったそっちの人たちを責めるようになっちゃうのは申し訳ないと思うんで、とにかくご苦労さんでした、うまく行かなくて残念だったね、というぐらいで、何とか今年もアワードやってくれてありがとうとして、後はそちらの方をお伝えして行きます。

2025 Wanderland Book Award


短篇集部門

  • The Expectant Mother’s Disinformation Handbook by Robert Guffey (Madness Heart Press)
  • Inappropriate Toasts for All Occasions by Michael Allen Rose (Madness Heart Press)
  • All Your Friends Are Here by M. Shaw (Tenebrous Press)
  • Vile Visions: Volume Two by Riley Odell (Independently Published)
  • God Is Wearing Black by Kelby Losack (Ugly Child)


短篇集部門受賞作品は、Robert Guffeyの『The Expectant Mother’s Disinformation Handbook』。
『妊婦のための偽情報ハンドブック』というタイトルのこの作品は、その名の通り妊産婦に関する医学的ガイドブックの形を取っており、Quantum Singularity Syndrome (量子特異点症候群)、Spontaneous Infant Combustion Syndrome (乳児自然発火症候群)、 Black Hole Syndrome (ブラックホール症候群)などの病気についてや、子宮内の胎児にインターネット接続を許可することへの危険性などについて、架空の専門家の脚注なども加え、科学的、専門的に解説しているというような作品。シェークスピアが妊娠を 発明したという驚くべき事実も語られているとか。
Robert GuffeyはCalifornia State Universityの英文科講師で、これまでにも10冊ぐらいの謎の著作があり、2022年の『Operation Mindfuck: QAnon and the Cult of Donald Trump』は、かのアラン・ムーアにも高く評価されているそう。

その他のノミネート作品について。
『Inappropriate Toasts for All Occasions』のMichael Allen Roseは、2022年に長編/中編部門を『Jurassichrist』で受賞の他、2023年の短編賞部門受賞作の『The Last 5 Minutes of the Human Race』の共作者でもある。
『All Your Friends Are Here』のM. Shawは、2023年に『One Hand to Hold, One Hand to Carve』で長編/中編部門を受賞している。
『Vile Visions: Volume Two』のRiley Odellについてはこれまでのノミネート歴など分からないのだが、Volume Twoとなっているように、2022年に『Vile Visions』も出ている。アンソロジーの編集なども手掛けている他、ニューロダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)の社会的な理解と受容のための活動家でもあるそう。
『God Is Wearing Black』のKelby Losackは、これまで数作の著作はあるが、受賞歴は無しというところだが、最近Substackに自分の選んだ21世紀映画ベスト200というのを出してて、そこで三池崇史の『殺し屋1』を一位に挙げてたのを見た。今後に結構注目かも。

長編/中編部門

  • Nympho Shark Fuck Frenzy by Susan Snyder and Christine Morgan (Madness Heart Press)
  • Starlet by Danger Slater (Ghoulish Books)
  • Apeship by Carlton Mellick III (Eraserhead Press)
  • Reality But More Fun by Madeleine Swann (Nictitating Books)
  • Kennel by Garrett Cook (Madness Heart Press)


長編/中編部門受賞作は、Christine MorganとSusan Snyderによる『Nympho Shark Fuck Frenzy』。
『色情狂のサメが狂乱的にファックする』というタイトルがすべてを語っておる、とかのエドワード・リー先生に言わしめた作品。リー先生によると聖書ほどの厚さがあるということで見てみたら、420ページの大長編。あー単純に日本の本 思い浮かべちゃダメだよ。翻訳されたら大体1.5倍かそれ以上になるから。
水族館で唯一の初の飼育の成功例となったホオジロザメ。水槽の中で威容を誇る彼だが、外の世界、同胞については何も知らない。唯一のものは彼にえさを与え育ててくれた美しい存在。だが、ある災害が彼をその閉ざされた安全な世界から、 外の世界へと強制的に解き放ち…。という作品らしい。
作者の一人、Christine Morganはスプラッタパンクアワードではもはや常連の一人なんだが、女性作家だというのを今の今まで知らなかった!申し訳ない…。そうだよな、クリスティンだもんな。根拠もなしにこのジャンルでは定番の とことんむさくるしい髭のおっさんを思い浮かべていた…。
多数の著作がある彼女だが、本業は精神科医で、最近30年のキャリアの末母親の介護のため離職し、現在は父親と共に砂漠地帯で次の展開に備えつつ隠遁しているということ。
共作のSusan Snyderもスプラッタパンクアワードで2度のノミネート歴がある他に、海洋学者としての一面も持ち、サメ映画についてやや皮肉に語ったノンフィクションの著作もあるそう(『Encyclopedia Sharksploitanica』(2021))。その他、 詩集も2冊出版。

その他のノミネート作品について。
『Starlet』のDanger Slaterは、2017年に『I Will Rot Without You』で長編/中編部門を受賞している。他にも多くの著作があり、割とユーモアのある感じのカバーが印象的。
『Apeship』のCarlton Mellick IIIは、もはやこのジャンルの重鎮といえる多くの著作のある作家。いつもながらこの人のカバーはいかす。
『Reality But More Fun』のMadeleine Swannもスプラッタパンクアワードのノミネート歴もあるそうなんだが、見つからなかった。ごめん。なんか名前見覚えあるんだがな?長編/中編部門ではそっちの活躍もある人が多い。
『Kennel』のGarrett Cookは、2014年に短篇集部門を『Time Pimp』で受賞している。経歴を見たら自著『Jimmy Plush, Teddy Bear Detective』のキャラによる「Mr. Plush, Detective」というのがミステリマガジンに載ったそうなんだがいつのだかわからん。この人も三池崇史のファンだそう。

*  *  *

そんなわけで、何とか年内にワンダーランドブックアワードの方も片付きました。なんか今年はスプラッタパンクの方も、両方ともそれぞれ事情は違えどバタバタしてたな。
ワンダーランドブックアワードの方も、来年どうなるのかはちょっとわからんけど、少し説明してみただけでもこれだけ面白そうな作品を選べるんだから、何とか続けてもらいたいものだと願います。
スプラッタパンクアワードの方も大丈夫かなと思ってちょっと調べてみたら、来年のKillerconの開催はもう決まってるけど、これまでの8月から、来年は11月頭になるとか。なんかホラーを取り巻く状況とか変わって来てんのかな?悪い方じゃないといいけど。
多分一応アメリカって限定しといた方がいいのかと思うけど、その辺のホラーの状況って、音楽みたいなところに例えるとわかりやすいのではないかと思う。つまり、メジャーなJ-Pop的な部分がまずあり、スプラッタパンクやビザールフィクションみたいな部分は、 ロックだとかメタルとか、テクノやノイズといったところに位置するんだろうと思う。大体音楽とか昔からそういう形なんで、最近のものは聴かない年の人でも大体見当つくと思うけど。
女性にも人気のメジャーなベストセラー的なところすらほとんど入って来ない日本じゃ、その辺のところは本当に遠いところなんだろうと思う。なんか入ってきたらきたで、日本の実話怪談の方が怖い、日本の勝ちー!レベルに粗雑に 扱われるだけみたいなことになるんだろうけどね。
そういった手の届きにくいけど確実に面白いものがあるというところで、「『妊婦のための偽情報ハンドブック』を一位にしたのはまずかったネ」みたいなことを決して言い出さない、視野の狭い小手先の売れる売れないに振り回されずに優れた作品を 選び出してくれる場というのは本当に貴重だと思う。色々と苦しいところもあるんだろうが、両アワード共になるべく長く続いてこのジャンルの優れた作品を選び出して行ってもらえればと願うよ。
とりあえずスプラッタパンクアワードについては、今年12月31日のノミネート応募締め切りも告知されてるが、発表が11月となるとノミネート発表の時期も変わるのかも?とにかく2月ぐらいからはしつこくBrian Keeneのホームページをチェックしに行かねば。 そして秋ごろにはまた「Wonderland Book Award」を毎日のように検索してみよう。来年は順当に行けば、11月にどちらも発表となると結構大変そうだが、そこんところはもうハロウィン後のホラー祭りじゃい!と頑張れるといいですね。
前回書いたように、やっと当方でもいくらかこの辺でセレクトされたホラー作品を読み始めたが、なかなか書くまでの余裕が作れない。とりあえずはとにかく読んで積み重ねて行けば、こっちジャンルに関する視野も広がるんではないかと。来年には何とか少しずつでも書けるように努力しますです。
というわけで、今度こそ本当に今年最後です。最後だよな…?今度こそ、良いお年を。ではごきげんよう。

●関連記事

2024 ワンダーランド・ブック・アワード 受賞作品発表!

過去(2008-2023)の受賞作一覧はこちら→



■Wonderland Book Awards 2025
●短篇集部門

●長編/中編部門

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2025年12月15日月曜日

Joe Clifford / Give Up The Dead -Jay Porterシリーズ第3作!-

今回はJoe Cliffordの『Give Up The Dead』。2017年にOceanview Publishingより出版されたJoy Porterシリーズ第3作です。

ドラッグの蔓延に疲弊したアメリカの行き止まりのような田舎町を舞台とした、2010年代後半~20年代を代表するシリーズとして注目してきたJoy Porter5部作の第3作。いや、注目してきて少しでも早く読まなければと思ってたのだけど、結局前やってから 2年か…。あっ勘違いしてたけど、そんとき色々重なって2023年11月から2024年1月まで休みになって、2023年11月ごろに書き始めたけど実際に出したのは2024年2月とかなってたんだ…。あー…。あの時のごたごたやいまだに修正されてないところとか 思い出してややへこんだ…。
2年前の前回は、更にしばらく前に読んだまま書けなかった第1作『Lamentation』(2014)と第2作『December Boys』(2015)を一緒にという感じになってしまった。…なんかこれまでの数々の不始末をまとめて見せられる感じになってるんだが…。 まあへこんでばかりいても進まないんで、何もなかったような顔をしてまずはそっちのJoy Porterのこれまでから。

第1作『Lamentation』では、ニューハンプシャーの田舎町Ashtonに住み、地元で死亡した人の不動産を片付ける仕事をしていた青年Jay Porterが、唯一の肉親だがドラッグ中毒で面倒ばかり起こす兄の起こした事件に巻き込まれて行く。友人と共に PC関連機器の回収処理業を始めた兄Chrisは、地元の有力な一族でChrisとも過去に因縁があったLombardi家の営む建設会社の廃棄されたハードディスクをたまたま入手し、そこから引き出した情報により命を狙われることとなる。何とか兄を助けようと 試みるJayだったが、Chrisは決して真相が明らかにならない謎を残しながら、Jayを助け自身の苦痛に満ちた人生を終わらせるため、半ば自殺という形で警官隊の銃火の前に飛び出し、死亡する。
Jayとの間に息子Aidenをもうけながら、別れて別の男性と暮らしていたJennyとも最後には和解し、事件の捜査のためやって来た親友Charlie Finnの旧友である保険会社の調査員Fisherの紹介により保険会社に就職しAshtonから出て行くというところで、第1作『Lamentation』は終わる。

そして第2作『December Boys』。前回途中までしか書いてなかったので、こちらややネタバレになるかも。第1作でよりを戻したJennyとその後結婚したJayは、保険会社の支社に調査員として務め、そこに近いPlastervilleに家を借り家族三人で暮らしていた。 Jayは、ある事故による保険金請求案件を調べるうち、近隣のティーンエイジャーの少年少女が些細な件で次々と矯正施設に送られている不審な動きに気付く。気が進まないままにその件を追って行くうちに、彼は地元の判事までが関わるティーンエイジャー、 ドラッグ中毒者の矯正施設建設にまつわる黒い利権の陰謀へと巻き込まれて行く。そしてその背後にいたのは、またしてもLombardi家だった。一方で家庭では妻Jennyとの関係もこじれ、彼女は息子Aidenを連れて母の許へと帰ってしまう。様々に追いつめられ、 パニック障害を患ってしまうJay。かつて兄が殺害されそうになった湖で、Lombardiの手の者たちに殺されそうになるが、保安官Turleyに救われ、判事の不正も明るみに出て事件は解決する。だが、Jennyとの関係は完全に修復不可能となり、離婚へ至り、Jayは 一人、Ashtonの町へと帰って行く。

これらの過去の事件は今作でも度々言及されることになるのだが、第2作『December Boys』の方は、作品内世間的にニュースになったRoberts判事の事件といういわれ方をすることが多い。
あと過去作からのことで知っておいた方がいいのは、Lombardiのセキュリティとして第1作でJayを度々脅かした元バイクギャングのErik Bowman。第2作でも登場するのだが、後半ある事情からLombardi家と対立することとなり、Jayに表には出ていない 情報を教えるという形で、部分的に協力する。あくまでも情報だけで、どういう形でも手を貸すようなことはしないのだが。実は今作でもほんの少しだけ登場するのだが、多分そこまでは書かないと思うのだけど一応。
前作の最後で殺されかけたときに、Jayは足の神経を痛め、歩行などの際に時々ぼやく。
何かと過去からの連続としての言及も多く、全くここから本作を単独で読むことはおススメできないのだが、とりあえずあらすじ説明する分にもわからなくなるかもしれないところはこのくらいかと。ではここからJoy Porterシリーズ第3作『Give Up The Dead』 です。


Give Up The Dead


前作の事件から3年後。感謝祭の日、Jayは元妻Jennyと息子Aidenと食事をした。他に開いている店が無かったので、Denny'sになってしまったが…。
その一時間ほどの間、彼は幸せに過ごした。そしてJennyの新しい夫が車で迎えに来て、元妻と息子は去り、Jayは独り駐車場に残された。

そして沈鬱な気分で自分の車に向かっているとき、彼の現在の仕事のボス、Tom Gableから電話が掛かる。
「今晩、オークションをやってもらえないか?」
「今晩かい?」
Ashtonに戻ったJayは、以前の仕事であるTom Gableの不動産片付けの会社の仕事に戻っていた。依頼されてその家屋の家具などのオークション販売会を行うのも業務の一環だ。だが、祭日にそういう依頼が来るのはとても珍しい。そこそこ長く勤めている Jayが憶えている限りでも一度だけぐらいのものだ。
感謝祭を家族で過ごすので、頼んでしまうことになって申し訳ない、と謝りながらTomは言う。「このKeith Mortensonという依頼人は、ノースカロライナからのフライトで来たんだ。家族の地所の整理のために。世襲財産さ。帰りを急いでるんだ。 もし俺たちがやらなきゃ、Owen Eatonのところに行っちまい、俺たちは委託を失う。ちょっとした掘り出し物だと思うんだが」
Owen Eatonは、この地で同様の商売をしている、Tomより大きな商売敵だ。Tomは現在の彼の会社をJayに売却すると話しているが、なかなかにそれだけの額の金を作れない現状、常にそれを狙っているEatonが買い取るというケースもあり得る。
Jayは通常のパーセンテージに加えて、300ドル払うというTomの申し出に、オークションの代理を承諾する。

一旦Tomの家に寄ってからオークション会場になる倉庫へと向かっているところで、親友Charlieから電話が掛かる。
かつて電話会社に勤めていたCharlieだったが、背中を痛め退職し、現在は手当で暮らしながら行きつけのパブDublinerに入り浸っている。その時の電話も同じDublinerからだった。
感謝祭の夜ひとりで過ごすのも寂しかろうぐらいの気持ちで、断るだろうと思いながらオークションを手伝ってくれと持ち掛けると、以外にも引き受けるとの返事。Jayは途中でCharlieを拾ってから、会場に到着する。

途中しばらくのブランクはあるものの、高校卒業からTomのところでこの仕事をしているJayは、中古家具などについてそこそこのエキスパートになっており、並べられた家具や装飾品にオークション用の値札をつけて行く。
そこには既に数人のバイヤーが到着しており、その中にはOwen Eatonの姿もあった。Eatonは一人の中年男と話していたが、Jayの姿に気付くと男に外に出るように促す。
不審に思ったJayが、あれは誰だと尋ねると、Keith Mortensonだと答えが返って来る。このオークションの依頼者だ。
外に出てみると、Mortensonはその駐車場に駐められたEatonトラックの傍にいた。中を見てみると、Jayの知識ならわかるヨーロッパの高価で取引されるアンティーク家具が置かれていた。
Eatonはこれに目を付け、Jayを通さずMortensonと直接取引しようとしたのだ。
Mortensonにいくらの値で売るのか尋ねたところ、案の定法外に安い価格だった。企みがばれたEatonはもう少し高い金額を提示し、オークション主催者としてのJayに手数料も払うと申し出る。手持ちでは足りないが、その価値に対しては払えない金額ではない。 だが、Tomに相談している時間の余裕もないのだろう。Jayは諦め、手数料を受け取りEatonの取引を容認する。
苦い気持ちで中に戻ると、Keith Mortensonが追ってきて、今日のオークション開催の礼ということで包みを手渡して去って行った。中を見るとそれは冬用のコートだった。

オークションを滞りなく終了させた後、家には自転車で帰ると言うCharlieをDublinerに戻し、Jayは独り暮らしの自宅へ帰る。
Jayの現在の住居は、かつてAshtonから離れていた時と同じHank Millerのスタンド兼自動車修理工場の二階に住んでいる。HankもTom Gable同様に長い付き合いでJayを息子のように思ってくれる人物だ。
感謝祭の食事の残り物を温め直して食べているとドアにノック。
ドアを開けてみると、いかにも高級そうなスーツを着た、体格のいい男が立っていた。
「Vin Biscoglioという者です。聞いてもらいたい話があるのだが、入れていただけるかな?」
「少々遅い時間じゃないかな。俺はもう寝る所だったんだ。加えて、俺はあんたを知らない」
「遅くなってしまったのは申し訳ない。外で車の中に座ってご帰宅を待っていたのだがね。どうやら見逃してしまったようだ」それほど時間を取らせないことは約束する、とBiscoglioは付け加える。
仕方なく、Jayは彼を家へ迎え入れる。

「失踪した少年を見つける手助けをしてほしい」Biscoglioは言う。
「子供が失踪したのは気の毒に思うが、警察へ行ってくれってことだな」
「恐縮だが、我々は警察へは行けないんだ」
俺のところに来ることもできないよ、とJayは笑う。「多分あんたは違うJay Porterのところに来たんじゃないか?俺は地所整理の仕事をしてる。箪笥を動かして、誰もやりたがらない死んだ人の家の片付けをしてる」
君は保険会社で調査員として働いていたのではないかね、と問うBiscoglio。一年も保たずに辞めたよと答えるJay。

「ちなみに、俺のことはどうやって見つけたんだ?」
「君の友人のFisherからだ」
Biscoglioは過去のLombardi家との経緯、Roberts判事の事件の裏の事情などもすべて知っていた。
これはLombardi家に関わることなのか?と問うJay。Biscoglioは違うとだけ答える。
「これらのことを持ち出したのは、君が真実を得るために如何に深く掘り進むかを示しているからだ。これが私の雇用主の関心を惹き、君に仕事を頼むため探した理由だ」
「あんたのボスって誰だ?」
Ethan Crowder、ボストンの大手鉄鋼業社の経営者だとBiscoglioは答える。

Ethanと彼の元妻Joanneは離婚し、息子Phillipは妻が連れて行った。元々は善良な子供だったが、良くない友人と付き合いドラッグに溺れるようになってしまった。困り果てたJoanneは強引な手を打つ。彼の意思を無視し、軍隊式の更生施設に入所させたのだ。
「君はミドルセックス郡には詳しいかな?」Biscoglioは尋ねる。
ミドルセックス郡は自然豊かな地域で、その手の施設も多く、Jayの兄Chrisがそういうところに度々入所していたことで、彼にとってなじみの深い場所だ。当然その類いのことも調査済みなのだろうが。
Phillipが入所している施設は、Rewrite Interventionsというところだ。そこの方針として、彼はある夜、数人の男により枕カバーを被せられ誘拐され、そのまま強制的に入所させられ、携帯など外部に連絡を取る手段も取り上げられている。
「離婚して息子を元妻に取り上げられた父親として、これがどれほどCrowder氏にとってどれほど恐ろしいことか、君にも理解できるだろう」
Jayについて詳しく調べているらしいBiscoglioは、巧みに彼の弱いところを突いて来る。
「我々の共通の友人であるFisherが、君の兄について説明してくれた。君個人のドラッグ関連事件への関心を。君の捜査経歴からの印象で、君が助力について積極的であろうことを我々は望んでいるのだ。報酬を前提として、もちろんのことだが」
「もう遅い時間なんだ。俺は寝なきゃならない。Fisherが何と言ったか知らないが、俺は探偵じゃない。そいうことをやるには免許がいるだろう。俺が持ってる免許と言えば運転の類いだけ、それでゴミが運べる。あんたらが警察に行けないというんなら、ちゃんとした 私立探偵を雇えよ」
どうしても首を縦に振らないJayに、Biscoglioは最後に内ポケットから出した名刺をテーブルに置いて言う。
「これが私の番号だ。考えが変わった時のために。Crowder氏からの報酬提案は裏に書いておいた」

そしてBiscoglioは出て行った。
ふと思いつき窓から外を見るが、雪が降り続ける外を去って行く車は見えなかった。
まだ彼が下にいるのでは、という奇妙な感覚にとらわれ、外に出てみる。
携帯のライトで照らしてみても、足跡もタイヤの跡も見つからなかった。誰もここになどいなかったかのように。

翌朝、雪も止み、Jayは家主であるHankを手伝い、駐車場の雪かきをする。30分ほどでHankの罵り声が聞こえ、行ってみるとガレージの横のドアが錠を壊され開けられていた。
恐らくは近所をうろつくジャンキーの一人の仕業だろうが、Jayの兄の件をよく知るHankは言いかけた口を止め、嵐のせいだろうと言い直す。
Hankの気遣いに感謝しながら、Jayは自分の工具セットを使い、錠を止め直す。昨夜のBiscoglioのことが頭を掠めるが、あの高価なスーツを着た男がパーツを漁るようには思えない。
Hankの駐車場の雪かきを終え、JayはTomとのミーティングのために、彼がいつも朝食を食べるダイナーへ向かう。
Tomに昨夜のオークションの報告をして、リストと売り上げを渡し、彼の報酬を受け取る。少し早めのボーナスだと言い余分に報酬を渡してくれる。
朝食を食べた後、新しくピッツフィールドに借りた倉庫の契約に向かうというTomと駐車場で別れる。
別れ際、ふと昨晩のオークションの依頼者Keith Mortensonの話になり、そこでJayはMortensonがCrowder鉄鋼の社員であることを知る。

それからJayは、まずCharlieの家へ向かう。昨晩のVin BiscoglioがFisherからの紹介と話した件について、本人と話すために。FisherはCharlieの友人だが、Jayとはあまりそりが合わず、電話番号すらも知らない。
昨夜の後、またDublinerで飲み、朝に帰ったのだろうCharlieはどうやってもまともに起きず、何とか半分眠っている彼から電話番号を聞き出す。
そしてFisherに電話を掛けるが不在。思いついて昨夜渡された名刺を見て、Vin Biscoglioにも掛けてみるが、こちらも応答はない。
しばらく待ってみるが、双方ともかけ直してくる様子はない。今日もやらなければならない仕事がある。いつまでもこうしてはいられない。Jayはまた眠ってしまったCharlieに書置きを残し、仕事へと向かう。

午後いっぱいかかってU-ホールのレンタルスペースに預けていた様々な家具類を、別の倉庫へ移動するためトラックに積み込む。
一旦出発した後、忘れ物に気付き戻ったところで携帯が鳴る。
だが、それは待っていたどちらからの電話でもなかった。

電話は保安官Turleyからだった。「Tomが、その…、事故に遭った。今は病院だ」
驚愕するJayに、続けてTurleyは尋ねる「Tomは今朝早くピッツフィールドに向かってたのを知ってたか?」
「ああ、新しい地所のリース契約のためにな。展示兼オークションのために借りる所だ。それが?」
何か悪いニュースを聞いたように唸るTurley。
Jayは何があったのか尋ねる。ピッツフィールドからの帰路、山のふもとの人通りの少ない場所で、おそらくは故障を装ってとまっていた車に手を貸そうと降りたところで、頭部を殴られたということ。
「犯人が使った血が付いたバールも見つかっている。しばらくその状態で寒空の下に放置されていたようだ」Turleyは言う。

Jayは急ぎ病院へと向かう。到着しICUへと行くと、Tomの妻Freddieの姿を見つける。近付こうとすると、彼に気付いたFreddieは険しい眼で見返してくる。意味は分からないまま進もうとすると、近くにいたらしいTurleyに止められ、わきの通路に連れて行かれる。
状況が把握できないままにTurleyの話を聞くうちに、Jayは自分がTom襲撃の容疑者となっていたことを知る。
Tomと最後に会い、今日の行動予定を知っていた人間であること。更に現場で発見されたTomを殴打した凶器のバールが、Hank Millerのガレージから盗まれたものであること。
Jayの頭に、今朝のガレージのドアが壊されていたこと、そして昨夜のVin Biscoglieの痕跡も残さないような退去の件が浮かぶ。
更にTomの妻Freddieによると、昨夜深夜2時ごろ、Tomが電話で言い争う声が聞こえてきたということで、それもJayからではないかと疑われている。
Jayには心当たりもないとは言っても、Tomが現在ICUで昏睡状態ということでは何も証明することはできない。
そして更に、Turleyは今日Tomの書斎のデスクに置かれていたのをFreddieが見つけたという封筒をJayに見せる。
そこには、自分に何かあった時には自分の会社をJayに譲る、という遺書めいた文章が書かれた紙が入っていた。

とにかく町から出るな、程度の警告をTurleyから受けて、Jayは病院から出る。駐車場の車に戻った時、Fisherからの電話が掛かる。
FisherにVin Biscoglioの件を尋ねるが、Fisherはそんな名前のやつは知らないし、Jayを誰かに紹介したこともないと答える。

Jayの知らないところで何かが起こり、それは明らかに彼を単独で狙い、彼を事件の犯人へと仕立て上げようとしている。
それは何者で、一体どういう意図なのか?

*  *  *

またしても結構長くなってしまったが、序盤のオークションの件を含めて、この後のストーリーに大きく関わるところなんで、省くわけにもいくまい。
この謎に対する手掛かりは、まずVin Biscoglioと名乗る人物(省略してしまったが、この人物との連絡はその後途絶え、本当にCrowder鉄鋼に関係する人物なのかさえ不明になる)からの依頼であるPhillip Crowderという少年の捜索しかない。
Jayはそれがどこに行き着くのかもわからないまま、その少年の捜索を始める。
一方、電話で事情を聞いたFisherもやって来て、Charlieの家を拠点として、ネットを使い様々な断片から背景の事情を探り始める。
そして、JayはPhillipが入所しているというRewrite Interventionsに直接向かい、調査を始めるが…。

という展開となって行くわけだが、この辺で一旦だが、全5作からなるJay Porterシリーズ真ん中のこの作品、続き物だからという部分を差し引いても、単独でおススメするには少々問題あり、と正直に言っとかなければならんと思う。
これまで全く関わりのなかったようなところから突然巻き込まれるこの事件なんだが、メインである失踪した少年の事件については解決されるのだが、実はJayがなぜ巻き込まれたかという部分が、謎で終わる。実際には続く巻があるのだから、 そこのところは次以降に明らかになるんだろうなと思うんだが、要するにそこが上手く引っ張れてないのだ。
念のために言っとくが、自分はそういうところであら捜しをする人間でなく、これまでに何度かそういう状況で、そこんところは多分そうだから分かってやれよ、といってきた方だからね。
そんな自分でも、ここんところは必然的に突っ込まれちまうだろうなと思ったんで、事前の注意ぐらいのところなんだけど。

この作品で中心となる、そもそもがボストンにいるEthan Crowder、Crowder鉄鋼と、Jayとの間には全く繋がりはないのだが、調べを進めて行くうちに、単純に手頃なところに彼がいたので巻き込んだわけではなく、 明らかにJayを名指しという形で関わらせていることが判明して来る。しかし、その理由は最後に至ってもわからない。
ただ一つだけ手掛かりとなるのは、前述の前作・前々作から登場しているErik Bowmanという人物。Crowderについて調べているうちに、会社のイベントの写真の中にBowmanの特徴的な首の刺青を発見する。この件にはBowmanが関わっているのではないかと 考え、彼の行方を探しているところで、当人からJayへ連絡が来る。ごく短時間の電話だが、とりあえずその時点ではあまりよくわからないが、Jayを利するアドバイス。だが、その後にFisherが調べたことによると、Bowmanは現在刑務所に収監されている らしい。
明らかにJayが全く繋がりがなかったところからこの件に巻き込まれたのには、何らかのBowmanの介入があるのだが、物語はBowmanがなぜ刑務所にいるかの理由を明らかにする前に終わる。

こうやって説明すれば、続く話でその辺の関係もはっきり説明されてくる、というか次にやるのでその辺について書かなかったというあたりは誰でも推測できると思うんだが、その辺を引っ張る形の書き方が少し弱く、そのあたりをいい加減にしたまま 終ったと勘違いする人も出てくるかもと思う。
まあ変な風に勘違いして読まれて、躓かれるといやだな、ぐらいの心配なのですがね。
しかしながらこの作品、最後にシリーズをここまで読んできた人なら、かなり衝撃を受けるあることが起こって終わる。
言ってしまえば、その衝撃でこれからJayはどうなんの?というだけで充分続きへと引っ張って行けるものなのだがね。自分もかなり気になるし。

この作品はシリーズこれまでと同様に、Jay Porterの一人称のみで書かれている。
彼の一人称による語りは、自分の境遇、兄の事、別れた妻と子の事、などの苦悩が様々な局面で重く繰り返され、そこにわけもわからないまま親代わりぐらいに思っている人物への襲撃犯として疑われるという事態まで加わり更に苦悩は深まり、作品終盤頃には大雪の中結構大変なところを進んで行くシーンもあるのだが、そういった際の肉体的な大変さみたいなものさえあまり強調されないぐらいになって来る。
そして前述のように、前作後半からはこれまでの苦難の結果として、パニック障害を患っており、それを鎮めるために薬を求めるような場面も頻出する。
ややネタバレかとは思うが、既に完結しているシリーズを説明する際には出てきていることだし、多分これまでにも書いていると思うのだが、このシリーズは主人公Jay Porterがドラッグ中毒者となり、そこから復帰するという形で終わるらしい。 それは作者Joe Clifford自身の体験に基づいたものだ。
シリーズ真ん中の本作は、物語がそこへと向かっている途上ということなのだろう。
この作品が出た2010年代後半頃は、本当にあちこちで近親者が薬物中毒で更生施設にいるというような文章をよく読んだ。もはやアメリカでは、親戚や友達の友達ぐらいの範囲で誰もが身近にそういう人間がいるような状態なんだろうと思った。 現在でも多分その状態にそれほど変わってはいないのだろうが、世間の関心となるような社会問題がまた別のところへ行ってるのだろうと思う。
Joe Clifford/Jay Porterシリーズ五部作は、そんなアメリカ社会の現在を、自身の体験に基づいて描いた、2010年代後半という時代のハードボイルドを代表すると言える作品である。…いや、本当はもっと早くこのくらいは全部読破して次に向かっていなければ いかんと常に思うのだけどね…。
かなり衝撃な事態から続く、Jay Porterシリーズ第4作『Broken Ground』も、なるべく早くに紹介の予定です。あ~こんなんばっか…。

さて作者Joe Cliffordの近況。近年いくつかの作品を出していたPolis Booksが昨年終了となり、どうなったんだろうかと思っていたところ、現在はそこからの作品の再発も含め、活動の中心がSquare Tire Booksというところに移っている。 初めて聞くところだけどどういうところなのかと調べてみたところ、元々はSquare Tire Recordsという、…えーと今どう言うのが正しいのか既にわかんなくなってるんだが、とにかく古くからの言い方で言えばレコード会社。
どういう経緯でこうなったのか、と色々調べてみたところ、ここからCliffordが自分のバンドThe Wanderingのレコードを出してることがわかった。色々用語が古いところは勘弁してくれ…。
そういった関係からここと交渉し、出版部門を立ち上げてもらったという感じなのではないだろうか。現在、このSquare Tire Booksから出版されているのは、Cliffordの他には同じくクライム作家のDavid Corbettの作品。まだこの辺の活動も始まって 間もないと思われるが、インディークライムでは結構大手だったDown & Outがつい先日ぐらいに倒れたという昨今、業界でも顔の広いCliffordの伝手で色々な作家の作品が登場してくることになるかも。なるべく気に留めておきたい。
CliffordのJay Porterシリーズ以降の作品だが、ちょっと分かりやすくなった感じで見てみると、サイコサスペンスや犯罪実話といった傾向の物に移行して行ってる感じ。近作ではホラーという方向の作品もあり。Square Tire Recordsは お馴染みキラーコンも開催される、何かそっち傾向のホラーの中心地みたいになってるのかもしれないテキサス州オースティンにあるそうなんで、その辺の毒気に影響されたのかも。前述の通り、Porterシリーズは自身のドラッグ中毒者経験に基づいたもので やや私小説方向というような重さがあるんだけど、その合間からエンターテインメント方向に上手さもあるのではないかなと思わせるところも見えて来たりするので、そういった作品も何とか読んでいければと思ってる。とにかくまずPorter終わらせないと。
そして、先に書いたCliffordのバンドThe Wanderingなのだが、アルバム一枚と数枚のシングルがあり、昨年出たアルバム『A Better Machine』はアマゾンからMP3で買えると検索には出るのだけど、なぜか商品ページに繋がらずエラーになってしまうんで、 日本のアマゾンでは販売されてないのかも。そんな事情でとりあえず画像だけでリンクはないのだけど、Apple Musicで見てみたところ、こちらではアルバムとシングル2枚が聴けました。The Wanderingで検索すると、同名のメタルバンドが前に出てくるので、 アルバム画像の方のThe Wanderingを。ロック傾向の強いオルタナティブカントリーって感じなのかな。音楽の方はあんまりうまく表現できなくてごめん。一昔前だと、こういうのもあるらしいで終わってたんだろうけど、今はそういうのもその日に見つけて聴けるんで、 いい時代になったね。ぜひ御一聴を。
Square Tire Books

■Joe Clifford著作リスト

〇Jay Porterシリーズ

  1. Lamentation (2014)
  2. December Boys (2015)
  3. Give Up the Dead (2017)
  4. Broken Ground (2018)
  5. Rag and Bone (2019)

〇その他

  • Choice Cuts (2012) 短篇集
  • Junkie Love (2013)
  • Wake the Undertaker (2013)
  • The One That Got Away (2018)
  • Skunk Train (2019)
  • Occam's Razor (2020)
  • The Lakehouse (2020)
  • The Shadow People (2021)
  • Say My Name (2023)
  • All Who Wander (2023)
  • A Moth to Flame (2024)
  • I Won't Say a Word (2024)
  • Bigger Bites (2024) 短篇集
  • The Skeleton Theory (2026)


Anthony Neil Smith先生最新情報

さてAnthony Neil Smith先生最新情報のコーナーです。当方では先生になんか動きがあれば伝えるという決まりになっています。以前からお伝えしてるFahrenheit Pocket Noirシリーズにて、Billy Lafitteシリーズ既刊4作がめでたく新カバーにて 揃いました。続く第5作はやや難航してるが進行中とのこと。Fahrenheitからは、Slow Bear三部作(結局三部作らしい)の合本版『Ghost Dance: The Complete Slow Bear Collection』が先月発売。SNS嫌いで一時はSubstackももう知るか!となっていた 先生だが、最近は過去の短編の再録というような活動も再開してくれた。12月になってからは俺は今年は色々本も出したんだから買え!と吠えていたり。
当方の方では遅れているSlow Bearシリーズ第3作『Slowest Bear』の方も年内には間に合わなかったが、何とか来年早いうちにという予定です。

どうなんだよ?Wonderland Book Award?

昨年これから毎年やりますと言ったWonderland Book Awardなんだが、そのまま今年音沙汰がなくどうしてるのかと思ってる人も、もしかしたら一人ぐらいいるのかも?
実は本年のWonderland Book Award、10月頭ぐらいには最終選考が発表されているんだが、いつまでたってもその後の発表がない。これに関してはどうやら発表の場となっているBizarroConの開催の目処が立たないというのが原因らしい。本来なら 例年11月初めぐらいの予定のはずだったようだが…。
こちらも10月に最終選考発表でやろうかと思ったんだが、諸般の事情で余裕がなく、一か月ぐらいで本選発表だからその時でいいかと、そのまま放置してしまった。ごめん。ホラーの方も少し頑張って見て行きたいと前から言ってて、少し読み始めてはいるのだが、 そっちについて書く余裕がなかなかないような状態で。来年には何とかできるよう努力します。なんか年の瀬になると、来年先送りの言い訳ばっかだな…。
とりあえず最終選考作品についてはタイトルだけ並べておきます。

The Wonderland Book Awards – Final Ballot 2025

長編部門
  • Starlet by Danger Slater (Ghoulish Books)
  • Nympho Shark Fuck Frenzy by Susan Snyder and Christine Morgan (Madness Heart Press)
  • Apeship by Carlton Mellick III (Eraserhead Press)
  • Reality But More Fun by Madeleine Swann (Nictitating Books)
  • Kennel by Garrett Cook (Madness Heart Press)

短篇集部門
  • Inappropriate Toasts for All Occasions by Michael Allen Rose (Madness Heart Press)
  • All Your Friends Are Here by M. Shaw (Tenebrous Press)
  • Vile Visions: Volume Two by Riley Odell (Independently Published)
  • The Expectant Mother’s Disinformation Handbook by Robert Guffey (Madness Heart Press)
  • God Is Wearing Black by Kelby Losack (Ugly Child)


カントリーノワールの巨匠ダニエル・ウッドレル逝去

カントリーノワールの開祖であり、『ウィンター・ボーンズ』の作者としても知られるダニエル・ウッドレル氏が、本年11月28日、72歳で亡くなりました。
12月頭ぐらいにウッドレルが死去したらしいとの噂が上り、それから一日ぐらいたって確認されたような様子で、アメリカでもそれほど大きくは報じられなかったらしい。
1986年、『Under the Bright Lights(邦題:白昼の抗争)』でデビュー。1996年の第5作『Give Us a Kiss』で初めてカントリーノワールという名称を使い、以来しばらくひとりジャンルのような状態だったが、近年のアメリカのハードボイルド/クライム作品の傾向と、 2006年の『Winter's Bone』の2010年の映画化のヒットなども重なり、追随するカントリーノワールジャンルの作家も増え、多くの作家たちからリスペクトも集まっていた。
当方でも今年やっとデビュー作から続くThe Bayou Trilogyの第2作『Muscle for the Wing』(1988)を読み、大変素晴らしい作品だったのだが、ウッドレルについては先の作品も読んでもっと深く語らねばとか、色々考えてるライオネル・ホワイトや チェスター・ハイムズあたりとも通ずる三人称複数視点ハードボイルドの重要作でもあるみたいな考えから、とりあえず三部作最後まで読んでからまとめて書こうとか考え、先送りになったままになってしまっていた。なんか後手後手ばかりで本当に 申し訳ない。死後も深く読み継がれるべき作家としてウッドレルについてはなるべく早期に書き始めて行きます。
ダニエル・ウッドレル氏のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

Daniel Woodrell著作リスト

  • Under the Bright Lights (1986) The Bayou Trilogy:1
  • Woe to Live On (1987)
  • Muscle for the Wing (1988) The Bayou Trilogy:2
  • The Ones You Do (1992) The Bayou Trilogy:3
  • Give Us a Kiss: A Country Noir (1996)
  • Tomato Red (1998)
  • The Death of Sweet Mister (2001)
  • Winter's Bone (2006)
  • The Outlaw Album (2011) 短篇集
  • The Maid's Version (2013)


なんだか年末反省大会みたいになってしまったよ、ウッドレルの訃報まで含めて…。ただまあ、こんだけあると逆に一旦年の終わりに整理して、新たな年の始まりと同時にリセットで再スタートとかできるような気分になるから不思議だね。 とりあえず、ここで書いたことも書かなかったことも含めて、このまま引き摺って年を越えて、一つでも早く達成できるように頑張りたいと思います。あー来年まず最優先は、次のも出るエルロイか。そんなところで、あんまりガラじゃないけど、 そういうタイミングなんで、今年もありがとうございました、良い年をお迎えください。とか言えるような人もいくらかは読んでくれてると信じたいですね。ではまた来年に。
…とか言ってて、Wonderland Book Award急遽発表されて、年内に間抜けな感じで再登場することになるのかもな。ワシの人生なんていつもそんなもんよ…。



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Joe Clifford / December Boys -ニューハンプシャーのルーザー探偵(?)Jay Porterシリーズ第2作!-



■Joe Clifford
●Jay Porterシリーズ

●短篇集

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2025年10月30日木曜日

James Lee Burke / Purple Cane Road -デイヴ・ロビショー第11作!-

今回はジェイムズ・リー・バーク、デイヴ・ロビショー シリーズ第11作『Purple Cane Road』。出版は2000年。やっと2000年に届いたけど、まだ前世紀か。

未訳のロビショー第9作『Cadillac Jukebox』(1996)から始まったバーク作品紹介も今回でやっと3回。前回いつかと思えば去年の4月とかかよ…。年1作出版ペースのバーク作品だが、97年にはビリー・ボブ・ホランドシリーズも始まっており、 こんなペースじゃいかん、年2作ぐらいは読んで行かねばと思っているのだがどうにも難しい。あっちもこっちも読まなきゃならんばかりだし。とにかくこんなやり方じゃ、永久に追いつかんよ。いや、オレ本気で追いつきたいと思ってるんだからね!

さて1年半前の前回では、ホランドシリーズ始まってなんか変わった感じぐらいのことを曖昧に書いてたが、今回はその辺ももう少し見えて来たかという感じもあり、また一方で、あーそんな読み方じゃダメだよ、という反省点もあり、3回ぐらいやって来ると 見えてくるバークの考えみたいなもんにも迫って行ければ、と思っています。
バーク作品であれば、必然的にあらすじ部分だけでも長くなるんだし、早く書いて早く進めて早く次のやつ読めよというところなんで、とにかく早く始めなければ。
ジェイムズ・リー・バーク『Purple Cane Road』です。


【Purple Cane Road】


何年も昔、公文書においては、Vachel Carmoucheは常に電気技師と表記されていた。死刑執行人と呼ばれることは決してなかった。過去において、電気椅子はある時はアンゴラ刑務所に置かれていた。またある時には、それは付属する発電機と共に平台のセミトラックに 乗せられ、刑務所から刑務所へと移動していた。Vachel Carmoucheは州の仕事をしていた。それに優れていた。

こんな感じで、今作はまずVachel Carmoucheという人物の紹介から始まる。独身者でバイユー・テッシュの飾り気のない家に住む彼は、ロビショーがニューオリンズ警察の警官でアル中だった頃からの知り合いだった。
Carmoucheの地所の隣には、代々Labicheという一族が暮らしていた。南北戦争以前からの黒人ながら地域でそれなりの尊敬を受けているビジネスマンだったが、戦争を境に没落し、25年前、一族の末裔である夫婦は、売春あっせん業を営み、ニューヨークの 犯罪組織の宣誓証人となっているときに謎の死を遂げる。そしてあとに5歳になる双子の娘、LettyとPassionが残される。
双子の身元引受人となったのは、モルヒネの常用癖のある呪術師とも言われている叔母だった。そして隣人のVachel Carmoucheは、しばしば双子の世話をかって出ることになる。
そして、Carmoucheが双子に対し、性的虐待をしているらしいという噂が密かに伝わって来る。
かつてロビショーもそれに対し何とかしようと試みたが、自身のアルコールの問題も抱え、何も手を打てぬまま時が流れる。
その後、Carmoucheはオーストラリアに休暇で旅行した際、地元のテレビ局から死刑執行人という仕事についてインタビューされ、不適当と思われる発言を多く述べ、それがアメリカのテレビ局まで流れてきたことから、職を失い失踪し数年間姿をくらました。
そして8年前のある春の日、Carmoucheは戻って来る。庭の草を刈り、窓を塞いでいた板を外し、前庭のバーベキューピットでポークロストを焼いた。バルコニーには12歳の黒人少女がすわり、アイスクリームメーカーのハンドルを回していた。
陽が落ちてから、Carmoucheは家に入り、夕食を食べていた。そして裏の戸にノックがあり、彼はテーブルから立ち上がりドアを開ける。そして、彼は根掘りくわを何度も打ち付けられ、身体を刻まれ、惨殺される。
Letty Labicheは自宅の裏庭で、裸で逮捕される。着ていたローブと靴をゴミ缶で焼きながら、身体と髪を覆うVachel Carmoucheの血を、ガーデンホースで洗い流しているところで。
その後8年、Letty Labicheは、宣告された死刑判決が実行される日を待ちながら、刑務所に収容されている。

そんなある日、ロビショーは、クリート・パーセルから彼が現在関わっている仕事の関係で行き合ったLittle Face Dautrieveという黒人の娼婦が、Letty Labicheに関する新聞記事の切り抜きを集めているという情報を聞く。
Lettyの境遇を気に掛けていたロビショーは、クリートの案内でLittle Faceを訪ね、彼女がその切り抜きをヒモであるZipper Clumのためにやっていると話される。
日曜日、妻ブーツィーと娘アラフェアと共に教会に行ったロビショーは、帰り道双子の片割れであるPassion Labicheの家を訪ね、得た情報について尋ねてみる。PassionはLittle Faceという女性は知らないが、Zipper Clumは昔の両親の知り合いだったと答える。 そして知らないと答えたLittle Faceについて、ロビショーが話さなかったにもかかわらず、黒人女性であることを知っていた。

その晩、クリートからZipper Clumが現れるとの情報を得たという電話があり、ロビショーはその現場へと向かう。
街から離れた場所にある窓に板を打ち付けられた廃屋のアパート。その前にクリートのキャディラックと、もう一台の車が駐まっていた。
屋根に足音、そして男の叫び声と木に重いものが落ちる音。
壁に張り付き、上を見上げると、屋根からクリートの頭が覗き下の何かを見下ろし、また引っ込む。
建物に入り、屋根へと上ると、クリートが黒人の男のベルトと襟を掴み、下の木へ向かって放り出したところだった。

奴らは16歳の女の子二人連れをレイプして撮影しようとしてた。Zipperと奴の仲間は映画ビジネスを始めたところだ。クリートはそう話す。
「そうだな、Zip?」片腕を避難はしごに手錠で拘束された白黒混血の男を蹴り、クリートは言う。
「ロビショーなのか?」Zipperはそう言って彼の顔を見つめてくる。
「なんでLittle Face Dautrieveは、Letty Labicheの新しい記事を集めてるんだ?」
「あいつの脳はケツにあるからだろ。なあ、あんたの仲間、歯止めが利かなくなってるんだよ。仲介してもらえねえか?」
クリートは同じ質問をZipperに投げかけ、満足の行く答えが得られず、Zipperも屋根から放り出すべく持ち上げる。
「ロビショー、あんたの母親の名前はMaeだろ…。待てよ、Guilloryと結婚してたんだっけな。彼女は…、Mae Guilloryって名前で通ってた。だが、あんたの母親だろう」Zipperは言う。
「何だと?」

「彼女はカードゲームの担当だったが、まだ少しは売春もしてた。ラフォーシェのクラブの後ろで。多分1966か67年頃のことだった」Zipperは続ける。
「連中は彼女を泥水たまりに押さえつけた。奴らは彼女を溺れさせたんだ」
「そいつらは私の…、もう一度話せ」ロビショーはZipperのシャツを掴み、顔に銃を突きつける。
「そのオマワリたちはカネを受け取ってた。Giacanosからだ。彼女は奴らが誰かを殺すのを見たんだ。奴らは彼女を泥の中で殺し、バイユーに転がしたんだ」Zipperは言う。
そこで、クリートが割って入り、ロビショーを止める。「俺を見ろ、ストリーク!そこから離れろ!」

前作『Sunset Limited』では、母がまだ幼いロビショーを残して、男と一緒にSunset Limitedに乗りハリウッドへと向かった過去の哀しい思い出が語られていた。
その後母は、ハリウッドで男に捨てられ、父の送った切符でグレイハウンドで家に戻る。
だがそれも長くは続かず、母は別の男と家を去り、二度と戻ることはなかった。
ハイスクール時代、友人達と共にバーに入り、そこで酔っ払いと踊っている母の姿を見かける。
それがロビショーが母を見た最後になった。

数日後、ロビショーは休暇を取りクリートに会いに行く。クリートはロビショーが母親の件に深入りすることを心配する。
「お前、本当にLittle Face Dautrieveに乗っかってる風俗課のオマワリと向かい合いたいのか?」
自分は彼女がなぜLatty Labicheの件に個人的に関わってるのか知りたいだけだ、と答えるロビショー。
「俺にはお前の中でハンドルが切られてるのが聞こえるんだよ、大将。お前は思い通りに進めなければ、界隈で一番悪い奴を見つけて、そいつの目に指を突き立てるんだ」クリートは言う。
「デイヴ、この風俗課は本物のクズだ。ちなみにNOPDの多くの連中は俺のことを流せない糞だと思ってるがな」

そして二人は警察署にその風俗課警官、Don Ritterを訪ねて行くが、当人は不在だった。
クリートの話では、Little FaceにはRitterの他につながるもう一人の男がいるという。
Jim Gableというその男は、現在は政治家となっているが、ロビショーとクリートがNOPDに入る以前に制服警官だったということだ。
電話で約束を取り付け、二人はGableに会いに行く。ロビショーはまずその立派な屋敷に驚く。
「心臓病の家系のアル中の女と結婚すれば、簡単な事さ」

Gableは豪壮な邸宅で二人をにこやかに迎え、まずは聞き及んでいたロビショーのベトナムでの戦歴を褒めたたえる。
Zipper Clumというヒモが、あなたと風俗課の刑事がLittle Face Dautrieveという名の娼婦に関心を持っていると話していたのだが、とロビショーは尋ねる。
「署の人間がZipperの顔をホットプレートに押し付けたことがあったよ。15か20年前のことだ。私がそれをやった者を解雇した。Zipperはそのことを忘れているようだな」
君ははるばるニューイベリアから、ニューオリンズ警察の腐敗をチェックしに来たのかね?と問うGable。
自分はLetty Labicheの事件に役立つ情報をその娼婦が持っているのではないかと考えただけだ、と答えるロビショー。
彼女は法の人間を殺害した。致死薬物注射より電気椅子で死刑を執行すべきだというのが私の意見だ。Gableはそう語る。

それからGableの屋敷を辞す二人。だが門近くまで来てロビショーは車を停め、もう一度屋敷へと戻る。
「何か忘れ物かね?」玄関を開けて、尋ねるGable。
「私の母の名はMae Guilloryという。彼女はこの近所で殺されたと私は考えている。Zipperによれば、'66か'67年頃ということだ。Mae Guilloryという名前に聞き覚えはないかね?」ロビショーは問う。
Gableは嘘をついている人間特有の笑みを浮かべて答える。
「なぜかね?知らんな。Maeだったか?そういう名前の女性をこれまで知っていたことはないと思う。いや、確実だ」

日曜の朝、Zipper Clumは従兄弟の芝刈り機店の裏で、ミュージシャンを志していた若い頃からの好みのジャズドラマーのテープをかけながら座っていた。
店の前に停められたピックアップトラックから、一人の男が降り立つ。後に目撃者が話したところによると、ある者は彼がティーンエイジャーに見えたと言い、ある者は30代だったと言う。だが、全員が一致していたことは、男が白人で、女の子のような口をしていて、 無害に見えたということだ。
男は店の正面のドアのベルを鳴らした。Zipperは裏から、店主である従弟は不在で、そのうちに戻ると伝える。
「あんたの従兄弟は、Jimmy Figにデカい借金がある。彼はFigに利子を払わなきゃならん」男は言う。
Zipperはカウンターまでやって来て、男に言う。「Jimmy Figは金を貸さねえ。マンコを売るだけだ」
「あんたが言うんならそうなんだろ。俺は言われたところに来ただけだ」

Zipperは帰ろうとする男を呼び止め、ギャンブルを持ち掛ける。俺が指の上で20ドル金貨を落とさずに3回転がせるかで50ドルだ。
乗ってきた男が、コインに気を取られている間にカウンターの下から38口径を取り出そうとしたZipperだったが、気が付くと銃を持った手が近くの棚にあった鉈で切断されていた。
男はカウンターを回って来て、倒れ込んだZipperに自分の25口径オートマチックを突きつける。
Zipperは殺される前に、ロビショーの母親の件だな、と言った。
薬莢を拾い、血が飛び散ったシャツを脱ぎ、鉈の柄の指紋を拭きとり、トラックに戻った男は、誰かの母親というわけのわからない話を少し奇妙に感じたが、そのまま去って行く。

今作では、かつて苦境から救うことができず殺人犯となり死刑を待つLetty Labicheを何とかできないかというロビショーの動きから、思いがけず母の死の真相の手掛かりが浮かび上がり、二つの事件をそれぞれに追って行くうちに、ロビショーは ニューオリンズ警察の中で過去から現在へとつながる腐敗に対峙し、戦って行くことになる。

そしてここでルイジアナ州の司法長官である女性、Connie Deshotelという人物が登場して来る。
ロビショーは彼女のオフィスを、過去の、警察が関わった可能性がある母親の死亡事件について調査を依頼しに訪れる。
快く受諾し、その後ロビショーの妻ブーツィーと同級生であった話などもして、親密気に誠実に対応して来るDeshotelだったが、その表面の裏で不審な行動をし、その疑いは徐々に広がって行く。
彼女はその件に何らかの関わりを持っているのか?

明らかに過去に関わる何らかの秘密を持ち、その地で権力の拡大を目指す人物Jim Gable。
彼に資産と地位をもたらした妻Coraは、かつてのハリウッド女優で、夫の強権に反する意図を持ちロビショーに接触して来る。
彼女に忠実に付き従う、ある暗い過去を持ち顔の半分に修復不能なほどの傷を負った運転手Micah。

Zipperの殺害により、一旦は失った母の死の手掛かりを追い続けるロビショーの前には、偽りの証言など様々な妨害がもたらされる。
またその一方で、ロビショーとも親交のある信頼に足る人物である知事のBelmont Pughも、何か重大な証拠でも見つからない限りLatty Labicheの死刑執行には、いずれはサインせざるを得ないと言う。

そして、Zipper Clumを殺害した風変わりな若き殺し屋。その後の調べで男はケンタッキーから来たJohnny O'Roarke、別名Rametaと判明する。
その後も近隣に潜伏し、同じ依頼者からの仕事でLittle Faceを狙い家屋に侵入などを行うが、気まぐれな行動と、正体が発覚したことから逆に依頼者から抹殺されそうになる。
結果的にロビショーに命を救われたことから、一方的に彼を味方とみなし、予測不能の行動を取り始める。

といったところでキャラクターも一通り説明できたか。重要なキャラクターが多くて、結構話進んだあたりからも次々出てくるのがバーク/ロビショーシリーズの特徴ぐらいのもの。あらすじ的にはZipper Clumが殺される辺りまででいいと思うのだけど。 あー、今作でかなり悪辣にロビショーの妨害に動く、ニューオリンズ警察風紀課のDon Ritterは名前出しただけだったか。
どうしてもロビショーの母の事件寄りの説明が主となってしまい、LettyとPassion Labicheの双子に関するあたりが薄くなってしまったかも。死刑囚になっている方がLettyで、外にいるのがPassionなのだが、またしてもクリートがPassionとくっつく展開となり、 まあ結果は…というところもあるのだけど。

タイトルのPurple Cane Roadは、実在するのかちょっとわからなかったのだけど、亡くなったロビショーの母が最後近くに生活していた場所の近くの道の名前。実際にそれが出てくるのは、結構後半ぐらいなのだが、それ以前にロビショーの夢の中に 実際のものとは違う形で非常に印象的に現れる。
そのくだりは、19歳の時ある石油リグで働いていた時の話から始まる。1957年の夏、大規模なハリケーンが通り過ぎた後の事。ケーブル修復のため、海中で作業していたロビショーは、作業で動かされた近くの海底から、泥と共に女性の遺体が浮かび上がるのを 目撃する。そのまま流されていった遺体を他に見た者はなく、自身でもそれが現実にあった出来事なのかあやふやになって来る。そして、その幻の女性は彼の夢に繰り返し現れることとなる。
その夜、彼女はロビショーの夢に戻って来る。別の姿で。
ダンスホールから続く泥の道を、彼の母Mae Robicheaixが走っている。道の両側は紫の太いサトウキビの密生した畑で塞がれている。ビアガーデンで働いていた時のピンクの服を着て、両手を広げ口を大きく開けた母は泥の道を走り続ける。その後ろから、 二人の警官がホルスターの銃が落ちないよう手で押さえながら、走って追って来る。
ロビショーはサトウキビの壁の向こうで、急流の中身動きもできず、その光景を見つめ、壁の間から叫んでいる。
そのうち、母の足元から徐々に水位が上がり、母は流れに呑み込まれて行く…。

これはロビショーがかつて母を最後の頃に見た場所として憶えていたPurple Cane Roadという道の名前が、潜在意識の中でこういう形となって夢に現れたというところなのだろう。
かつて水流の中でその遺体を弔うこともできず消えて行った幻の女性。救うことができないままに殺人という最悪の結果に至り、今刑務所で死刑執行を待つ女性。そしてまだ自分が若い頃に行方を失い、その死さえ知らなかった母。
それら救えなかった者たちへの想いが母の姿へと重なって行くのが、この幻想のPurple Cane Roadなのだろう。

*  *  *

さて、書かなきゃと思うところ結構多いのだけど、どこから行くか?やはり弁護士ビリー・ボブ・ホランド・シリーズを立ち上げた後の、バークの考えといったところがうかがえるようなところか。
裕福とまでは行かなくても、それなりに家系もあるホランドとの対比で、沼沢地帯の貧乏白人出身というロビショーの立ち位置を強く打ち出して行くという方向については、前作の時に書いた…、つもりだけどあんま伝わってなかったかも?
そしてそれに加えて、ロビショーという人間を更に内面から掘り下げるという方向に向かう。それが今作の母の死の真相を探るストーリーなのだろう。
今作は、そういったロビショーの過去だけではなく、現在共に暮らす人々も以前に増して事件に深く関わって行く。妻ブーツィーの過去のJim Gableとの関係。そして16歳に成長したアラフェアにある種の恋心を持って接近して来る予測不能の 行動を取り続ける若き殺し屋Johnny O'Roarke。
自身の家系をモデルとしたHolland Familyサガへと発展して行くホランド・シリーズ同様に、こちらのロビショー・シリーズも主人公の個人的関係、過去などの内面に深く関わって行く方向へと進んで行くのはまず間違いないところだろう。

かなり多くの人物が登場し、複雑な話になった前作『Sunset Limited』に比べると、今作はややシンプルに感じられた。前作にあったような複雑な人間関係の裏から伸びる枝というような部分が少なかったからだろう。ただここからこのシリーズが 以前よりシンプルな方向へ向かうかというと、それは違うのではないかと思う。前作におけるその枝的部分は、例えば中国からのブラックマネーといった現在犯罪社会状況といったものだった。南部沼沢地帯を舞台とし、過去・歴史といった方向で その地を立体的に描き出して行くバーク作品では、当然その歴史的地点である「現在」を描くことも重要である以上、こういった方向での複雑化が再び作品に現れてくるのは必然となる事だろう。

そして、キャラクターというところの話。以前『Cadillac Jukebox』のときに、その前作『Burning Angel』に登場したソニー・ボーイ・マーサラスや、『Cadillac Jukebox』のJerry Joe Plumbについてテリー・レノックス的というような 解釈をしたと思うんだが、それに前作『Sunset Limited』の兄妹と強い絆を持つ殺し屋Swade Boxleiter、そして今作の若き殺し屋Johnny O'Roarkeを並べてみると、これはノワール的なキャラクターということになるんじゃないかと思う。
バークの作品、ロビショー・シリーズにしても、ホランド・シリーズにしても、基本的には主人公がその土地で財力・権力を背景に不正を働く者と闘う、という形の言ってみればシンプルなものだ。そこにこういったノワール的キャラクターを 投入することで、物語を様々な方向に膨らまして行くというのが、ロビショー・シリーズにおけるバークのスタイルなのかと思う。ホランド・シリーズについては少し違うのかもという気もしてるので、そっちについては保留。
これがどの辺からなのか、もしかしたら第1作からなのかというところがよくわからないのは、自分が以前の翻訳されたところから結構時間が空いてしまってはっきりしないというところが申し訳ないんだが、とりあえず今後は、いかなる形で こういったノワール的キャラクターが登場するのかというところも注目点になるのだろう。いや、過去作もなるべく早く読み返して全体を俯瞰できるようにすることも必要なんだが。うーん、とりあえずなるべく早く…。

そんで、最初に書いた前回の反省点というところなんだが、ロビショー自身が登場しないシーンが増えたのではないか、なぜそうなったんか?という点についてのところ。
なんかさあ、話が複雑になってロビショーがいない場所で起こることが多くなった結果じゃないかみたいに書いたんだが、そんなわけねえだろ。
小説にしろ、あらゆる創作物なんてもんはそんな風にできてない。作家が頭で考えた「お話」を言葉にして書いて行ったらこうなりました、みたいなもんじゃないだろ。
作家は膨大な時間をかけて、熟考して作品を創り上げる。たまたまそうなりましたなんてことは起きない。何か違和感があったら、それは意図的なものだと考えるべきだ。
では、このロビショーが登場しないシーン、作品の中の三人称的シーンの増加は何を意味するのか?

なんというか、そもそも前作でそれが自分的に気になったのは、さらに遡るその前作『Cadillac Jukebox』に発端があったのだろうと今更ながら考える。
なんかてっきり書いたと思い込んでいたんだが、ごめん、読み返してみたら書いてなかったようなのだが、この作品では先に名前を出したこの作品のノワール的キャラクターであるJerry Joe Plumbが自身の過去について語る、Plumbの一人称による そこそこの長さがある独立した一章が、かなり印象強い形で作中に挟まれている。
そして続く『Sunset Limited』のロビショー不在の三人称場面の増加傾向。
なんかぼんやりしたボンクラ頭の片隅で、バークは何かやろうとしてるんじゃないかみたいなところを薄く考えての、前作のなんか引っかかった的な言い方に繋がったのかもと今になって考える。
ここに来てそこそこ断言的に言えるのは、この時期バークはかなり真剣に一人称記述である自作にいかにして三人称描写を取り込むかを考えていたのではないかということ。

まあ本人に聞いたわけじゃないんで、どう考えたみたいな部分は想像でしかないんだけどね。ロビショー・シリーズ、ホランド・シリーズともに一人称記述で書かれ、そのスタイルにこだわりがあると思われるバークだが、それまでの作品の中でも 度々主人公不在の現場で起こった事態の伝聞による三人称描写を挟むという手法を使ってきた。ともすれば一本道になりかねない一人称記述の作品に奥行立体感を作る有効な手法であり、これを自作の中で色々な形で応用して行こうとバークは 考えたのかもしれない。
そこでバークは三人称記述というものについて根本的に考え直したのではないか?一人称作品には主人公という語り手がいる。では三人称作品には語り手はいないのか?実は三人称作品の語り手というのは「私」という形で前に出てこない作者ではないのか? 一人称作品の中の三人称描写は、語り手主人公を作者という立場で考えて書けばいいのではないか?
なんかこんな考えによる三人称記述のストーリー内への多くの挿入が、本編の章の導入と同じ情景描写からのという形になったのではないか。まあその辺については前回ちょっと面白で揶揄しちゃって悪かったよ。バークさんごめん。
そしてこの伝聞シーン、三人称描写は今作で更に進化する。

ちょっと長くなっちゃうんでそこのところは端折るしかなかったんだが、Zipper Clumが殺害されるシーン。ここは実はZipperというのがどういった人物であったのかを子供時代に遡って語るというところから始まる。Zipperはどんな風に育ち、 そして一旦はミュージシャンを目指したが挫折し、という話が続いた後で、従兄弟の店の裏で好きなジャズドラマーのテープをかけて座っているというところへと繋がるわけだ。
この作品ではこのような手法が度々使われる。例えば冒頭部分も、まずVachel Carmoucheという人物の説明から入り、隣のLabiche一族の話になり、そこから幼い双子への性的虐待の疑惑、そしてCarmoucheの殺害へと至る。その他にも既に登場している人物が 改めてその出自などから語られた後に、ロビショー不在でその人物に関して起こった事件の伝聞による三人称描写へと繋がって行くという形のものが複数現れる。
なんかうまく説明できてるかやや不安だが、これがバークがそれを熟考した上での、前作からさらに進めた一人称作品の中への三人称描写を取り込む手法なのだろう。
そして、おそらくこれはここで完成形ではなく、続く作品では更なる試行錯誤が続けられて行く事になるものと思われる。

世の中にはあんまり考えないで書いて結局こうなっちゃった、みたいな作家もいるんだろう。だがジェイムズ・リー・バークは、決してそんな作家ではない。こういう作家の作品の中で違和感を感じたとしたら、それは必ずその作家が何かを意図していると いうことだ。
ロビショー・シリーズも既に11作。だが作者ジェイムズ・リー・バークはそこで停滞することも、安定することもなく、考え続け更なる高みを目指す、本当にすごい作家だ。こういう作家の作品を読まずに何を読むというんだね。 この現代まで続行中のハードボイルドの巨匠、ジェイムズ・リー・バークの作品をなにがなんでも全作制覇を目指して読み続けるものでありますよ。

さて次、という話だが出版順で行けば次はビリー・ボブ・ホランド・シリーズ第3作『Bitterroot』ってことになる。だがこんなバーク作品年1作目指す…、みたいなペースで読んで行けばせっかく色々見えて来たロビショー・シリーズを次に読むのは 2年後とかいう話になりかねん。そんなわけで、ここでホランド・シリーズはロビショーとは別枠!という考えでバーク作品年2冊を目指そうというのが今の考え。…いやまあ、考えれば時間が増えるってもんでもないんだけどさ…。なんか自分を 騙すぐらいの考えででもなんとかかなり大きいバーク作品未読の山を崩して行けんかというのが、現在の希望です。あーでも今年年内にエルロイの次のやつまで届かなそうだしな…。あれもこれも…。いや、いかんいかん!ちゃんと早く読むからね! では『Bitterroot』は半年後以内に!

さて作者ジェイムズ・リー・バークの近況だが、2022年の『Every Cloak Rolled in Blood』で作者自身に深く関わるところまできてここで終わりなんかな、と思ってたHolland Family Sagaの新作が今年2025年6月に出版。これはまた時間を遡る 過去の出来事についての話らしく、Holland Family Sagaはまだ今後も続行される模様。さらには来年2026年2月にはロビショー・シリーズの新作第25作となる『The Hadacol Boogie』の出版もアナウンスされている。ジェイムズ・リー・バークは まだまだ続く。もたもたしてる場合じゃねーよな。


せっかく頑張ろうと思ってたのに…

ここで残念なお知らせです。前回何とか立て直ったみたいだからこれからいろいろ紹介するよー、といってた矢先にDown Out Booksが10月14日をもって終了しました…。いや、ホントにこれ大丈夫なんだろうな、と思ってたところだったんだよ。 一時期はインディークライム出版の一つの大きな拠点であったわけだし、かなり多くの出版物を残してという感じで本当に残念です。前回のPablo D'Stairの『this letter to Norman Court』も画像もろともなくなってしまったわけで、早く とりあえずの修正ぐらいはせねばというところだったり。色々と消えてしまった多くの作品については、再版などあればなるべく伝えて行くつもりです。ただ、ほとんど紹介できてなかったんだよな…。残念。


なんかね、一方でバークの山ほどの未読がありなんとかしなくちゃ時間がない、と言いつつ、また一方ではなかなか読む時間が作れず手が回らなかったパブリッシャーの終了を惜しむ。客観的に見ればアホみたいなんだが、本読みってそういうもんだろ。 ホントにジェイムズ・リー・バークは絶対に読まなければならない素晴らしい作家で、これから毎日バークの著作だけを読むべきだぐらいに思う一方で、Down & Outの名前しか知らなかった作家の作品はどんなものだったのか、多くの作品を読んで行くことで なんか自分にまだ見えてなかった現代クライム作品の一つの傾向が見えたのかもしれないと思う。そしてまたその一方で、これはどんなものなのだろうか、何とか読んでみたいと思う作家、作品が常に現れ続ける。あー、ここんとこPaperback Warrior 師匠が推してて何度か取り上げてるDavid Agranoffってどんな作家なの?あーくそどっかねじ込んで読めないかなあとかさ。そんなこと繰り返してるうちに、山ほどの未読を残して死ぬんだろうね。まあそれも一つの本読みの人生ってやつなんじゃないんかな。


■James Lee Burke著作リスト

〇Dave Robicheauxシリーズ

  1. The Neon Rain (1987)
  2. Heaven's Prisoners (1988)
  3. Black Cherry Blues (1989)
  4. A Morning for Flamingos (1990)
  5. A Stained White Radiance (1992)
  6. In the Electric Mist with Confederate Dead (1993)
  7. Dixie City Jam (1994)
  8. Burning Angel (1995)
  9. Cadillac Jukebox (1996)
  10. Sunset Limited (1998)
  11. Purple Cane Road (2000)
  12. Jolie Blon's Bounce (2002)
  13. Last Car to Elysian Fields (2003)
  14. Crusader's Cross (2005)
  15. Pegasus Descending (2006)
  16. The Tin Roof Blowdown (2007)
  17. Swan Peak (2008)
  18. The Glass Rainbow (2010)
  19. Creole Belle (2012)
  20. Light of the World (2013)
  21. Robicheaux (2018)
  22. The New Iberia Blues (2019)
  23. A Private Cathedral (2020)
  24. Clete (2024)
  25. The Hadacol Boogie (2026)

〇Billy Bob Hollandシリーズ

  1. Cimarron Rose (1997)
  2. Heartwood (1999)
  3. Bitterroot (2001)
  4. In the Moon of Red Ponies (2004)

〇Hackberry Hollandシリーズ

  1. Lay Down My Sword and Shield (1971)
  2. Rain Gods (2009)
  3. Feast Day of Fools (2011)

〇Holland Family Saga

  1. Wayfaring Stranger (2014)
  2. House of the Rising Sun (2015)
  3. The Jealous Kind (2016)
  4. Another Kind of Eden (2021)
  5. Every Cloak Rolled in Blood (2022)
  6. Don't Forget Me, Little Bessie (2025)

〇その他

  • Half of Paradise (1965)
  • To The Bright and Shining Sun (1970)
  • Two for Texas (1982)
  • The Lost Get-Back Boogie (1986)
  • White Doves at Morning (2002)
  • Flags on the Bayou (2023)

〇短篇集

  • The Convict (1985)
  • Jesus Out to Sea (2007)


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James Lee Burke / Sunset Limited -デイヴ・ロビショー第10作!-


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