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2026年6月1日月曜日

Gabriel Valjan / Dirty Old Town -1970年代を舞台としたクラシック風私立探偵シリーズ!-

今回はGabriel Valjanの『Dirty Old Town』。2020年にLevel Best Booksから出版された私立探偵Shane Clearyシリーズの第1作。こちらはこの作品が2021年のアンソニー賞オリジナルペーパーバック部門にノミネートされた他、シリーズ第4作『Liar's Dice』が、 2024年のシェイマス賞オリジナルペーパーバック部門を受賞している。

ということで、前回からこっちも本格的にやって行くぞ!と意気込んだPI小説の第2弾なんだが、なんか早くも「例外的」というような作品にぶち当たってしまった…。
一応、現代のPI小説というジャンルについて、おそらくはブロック/マット・スカダーを起点とするような、警察なり何なりを辞める理由となった過去の出来事事件が重くのしかかる主人公による作品群の流れ、という仮説に基づいて始めたんだが、 第2回にしてそれに相当しない例外的作品…。まあそもそもが自分が読む作品についてあまり事前情報を入れたくないという考えで、適当にひっつかんで読み始めるようなことにも原因があるんだが。なんか本当にそういう流れがあるんだよ、とここで 言い訳始めても時間の無駄にしかならんし、結局どんどん紹介して行くことでわかってもらうしかないので、まあとにかくこの『Dirty Old Town』、どういうところが例外的なのかも含めてやって行きます。

私立探偵Shane Clearyシリーズは、1970年代のボストンを舞台としたシリーズ。この第1作『Dirty Old Town』は1975年。
作者Gabriel Valjanについてはのちほど少し詳しく書くが、歴史に強い関心を持つ作家で、他にも歴史ミステリといったカテゴリの作品を多く著している。その作者がそういった歴史的視点を持ちながら、初の私立探偵、ハードボイルド作品として書いたのが この『Dirty Old Town』である。
1970年代というと、一般的なイメージとしてヒッピーカルチャーみたいなもんが浮かぶかもしれないが、作者の意図はそういった風俗的な方向ではなく、あくまでも1970年代のボストンを描くというところにある。主人公が自身の子供時代を思い浮かべるような、 そこから更に遡るノスタルジックなところもあったり。
その時代を作者が選んだ意図というものまではきちんと調べてないんだが、読んだ感じとして、作者Gabriel Valjanが思う古き良きボストンみたいなものが保存されていたのがその時代で、ここからボストンはその姿を変えて行くという時期なのかもしれないと いう感じがした。作者の考える古き良きDirty Old Townボストンを舞台とした私立探偵作品というのが、このShane Clearyシリーズなのだと思う。
この作品、ボストンが舞台ということでレビューの多くにロバート・B・パーカー/スペンサーの名前が見られる。スペンサーオマージュ的なのかな、と思って読んでいたのだが、ボストンというところ以外はあまり共通点は見られなかったと思う。スペンサーと言えば 延々料理の話をするとか、筋トレジョギングでしょう?どちらかと言えば1950年代ぐらいまでのところのクラシックを目指しているという感じだと思ったけど。
ただ、ミステリファン向けのサービス的な感じで、スペンサーの名前が一度だけ出てくるところが中盤ぐらいにある。主人公Shane Clearyがやや無茶な行動をして、お前スペンサーかよと言われ、俺はマーロウのつもりだとか答えるところ。でも1975年というと、 スペンサーも第3作ぐらいのところで、地元ボストンでもミステリマニア以外が読むほどのベストセラーにはまだなってなかったんじゃないかなあ、とか思うやや強引かもというところだったけど。
主人公Shane Clearyは元警察官だが、ある事件で自身の正義に基づき警察に不利な証言をしたことがきっかけとなり、警察を辞めて私立探偵になった。そのため地元の警察全体から深い恨みを買っていて、何か理由があればそれにこじつけて殺されかねないという不穏な立場にある。
独身一人暮らしだが、猫を飼っていて彼の事務所兼自宅を好き勝手にうろつき回っている。猫を飼っている探偵としては、最近チリのRamón Díaz Eterovic/Herediaを紹介したが、同様に話しかけたりすることも多いんだが、Herediaとは違って自分で返答も捏造して会話まではしていない。
とりあえず事前情報としてはこんなところか。では私立探偵Shane Cleary第1作『Dirty Old Town』です。

Dirty Old Town


電話が鳴った。最初にそれに気付いたのは私ではなく、横に寝ていて私の肋を蹴ったDelilahだった。彼女の行動の利点と言えば、電話が何時にかかってこようとそれは仕事を意味し、そして私の猫は財政状況に関しては私より優れた考えを持っているということだ。 アパートの家賃を滞納しすぎており、我々はサウスエンドの大家を避けるために、ボストンのダウンタウンにある事務所で暮らしていた。電話は鳴り響いた。
繰り返し、鳴り続けた。
よろめきながら暗闇の中をデスクに辿り着き、受話器を上げた。わざと何も言わなかった。私の睡眠を妨げた電話の相手から話を始めさせるつもりだった。

という感じで、事務所はあるが仕事がない私立探偵の一つの定型パターンという感じで始まる。いや、出だしが定型パターンというのはこれから読む話の主人公が何者かまず把握できるんでありだと思うよ。この作品も私立探偵ものの定型という感じで、 全面的に主人公Shane Clearyの一人称で書かれているが、あらすじを説明する便宜上、以降は三人称で。

「Mr. Shane Clearyかな?」嗄れ声が問いかける。
「多分ね」
「Shane、古くからの友人よ。BBだ。Brayton Braddock。俺を憶えてるだろう?」
「夜中の2時だぞ、Bray。何の用だ?」
BBというのは、Braytonが子供時代に、それがクールだと思って自分でつけた呼び名だ。そんなわけない。だが彼はやめなかった。金が妄想を産み出す。オールドマネーがそれを保証する。

「お前の助けが必要なんだ」Braytonが言う。
正直言って仕事を受けたい相手ではないが、今は金欠で背に腹は代えられない。
「この件については直接会って話したい」「いつ、どこでだ?」
「ビーコンヒル。俺の運転手が向かってる」そう告げ、電話は切れる。
着替えて猫の食事を用意し、窓から外を見下ろしたところで、前の通りにコンチネンタルが滑り込んでくる。そしてShaneはそれに乗り、Brayton Braddockの邸宅のあるビーコンヒルへと向かう。
この辺の車の窓から見たボストンというのが、この作者の書きたいところではあるんだろうが、すまんがそこは省略。

そしてBraytonの邸宅で彼と会う。
子供時代、地元の有力者の息子であるBraytonとは、友人と言えるような関係だったのだろう。だがそれは、Shaneの父親が亡くなり、そして追うように母親も亡くなり、彼が完全に孤児となってしまったところで途切れる。実際に彼と会うのも十年以上ぶり というところだった。
「単純に言えばだ、俺の会社の何者かが俺を脅迫している」Braytonは言う。
「で、どの会社の話だ?」
それは大した問題じゃないと曖昧に答えるBrayton。
「もしその犯人が誰だかわかっていて、それを何とかしたというなら、俺はお前の運転手に礼儀作法なしでやらせるのを薦めるがね。それとも100パーセントの確信はないのか?」
自分には確信がある、と言うBrayton。なら警察に行けばいいと言うShane。
「お前にやってもらいたいんだ」Braytonは言う。
「俺は腕力商売をしてるんじゃないんだ。そこははっきりしとこう。お前の立場にいる人間なら、汚い仕事を請け負ってくれる友人もいるんじゃないのか?」
帰ろうとするShaneをBraytonが呼び止める。「すまなかった。こいつはクリーンな仕事なんだ」

Braytonのような人間からは滅多に出ない謝罪の言葉を聞き、戻るShane。
そこにBraytonの妻、Catが部屋に入って来る。
「Catは憶えてるよな?」Braytonは言う。
ShaneとBrayton、そしてCatは子供時代からの知り合いだった。一時期は深い関係だったShaneとCat。だが、Shaneが孤児となり、行き場を無くし軍隊に志願し、ベトナムへ行っている間に、CatはBraytonの妻となっていた。
これはビジネスの話だと、Catを退がらせようとするBraytonだったが、Catはそこに留まる。

懸案中の取引について脅迫されていると言うBrayton。
それは合法的な土地取引についてだが、現段階でその情報が暴露されると、世論をある方向に大きく動かしてしまうことになる、それが完全に公明正大なものでもだ、と話すBrayton。
「脅迫者は何らかの要求をして来たのか?大金であるとか?」Shaneは尋ねる。
「まだ何もない」答えたBrytonは、執事を呼び二つの封筒を受け取る。

ひとつに入っていたのは、分厚いゼロックスコピーの束。
それは取引について詳細に記録された台帳のコピーで、専門家が見れば何が行われているのかは明白なものだということだ。
「それで、俺は何をすればいいんだ?」Shaneは問う。
「脅迫者の正体を明らかにしてほしい」
「で、それが明らかになったらどうすればいいんだ?」
「何もない。後はこっちでやる」
「そう聞かされると、俺としては心配になるがね。歴史的に言われてるところの、あんたの一族が小作人やらをどう扱ってきたかを見るとな」
Brytonは何も答えず、沈黙する。

「それで、もう一つの封筒は何だ?」
「こいつに入ってるのは、手掛かりの名前と住所、そして気前のいい前金。現金だ」
そう言って、Braytonはその封筒を放ってよこした。

翌日、Braytonからの仕事に取り掛かる前に、Shaneは父親のように思っている古くからの友人、"教授"ことDelano Lindseyに会うため、彼の行きつけのダイナーを訪れる。
Lindseyに渡された台帳のゼロックスコピーを見せて意見を聞くが、特に問題である部分は見つからないという答え。
古くからShaneを知るLindseyは、彼とBraytonの妻Catとの関係も知っており、深入りしないよう警告する。
その後、路上を歩いていたShaneはかつての同僚であるBillに声を掛けられる。
Billはかつては同じ部隊で従軍した仲の、現在のボストンの警察の中では唯一と言えるような友人である。また、Billはホモセクシュアルゆえに警察組織内では浮いた存在であるというのも、その理由の一つかもしれない。
「お前に仕事だ。ベイヴィレッジでの失踪した可能性のある人物の捜索だ」Billは言う。
行方不明となっているのは、Billの友人であるRoger Sherman。スポーツ関係のファンイベントを企画していたらしい。
手掛かりとなりそうな人物の名を伝え、簡略に5W、Who、What、When、Where、Whyを裏に記した自分の名刺を渡し、Billはパトロールへと戻って行く。

こうしてShaneは、Braytonからの脅迫事件の捜査と、Billからの失踪人捜索の二つの事件を並行して取り組んで行く。
それはShaneをある殺人事件へと巻き込んで行き、敵だらけの警察に囲まれたボストンで、危地へと追い込んで行くこととなる…。

*  *  *

歴史的な方向に関心の強い作者により描かれる1970年代のボストン。なのだが、まああらすじとして端折らなきゃならんというところと、そこについては知識が皆無ということもあり全く紹介の方はできなかったんだが…。
例えばこれが東京とかだったら、現在の感じもある程度把握できて過去の資料なんかも手に入りやすいと思うんで、もっと違った感じになったかもというところなんだが。多分だけど、現在や昔のボストンについて知識があれば、 そういう感じで読める所も多いのかと思う作品。
ただ、この作者の関心は多分地図的だったり建物的だったりという方向で、最初にも書いた通り風俗的という方向のものはあんまり見られない。ヒッピーみたいなものも出てこないし、日本で言えばなんか毎度お馴染みもうその話いいよの、 団塊世代の子供のころ給食に出た脱脂粉乳がまずかったみたいな話で、あるあるパターン的な共感を呼ぼうとしたりはしない。なんか自分の昔の仕事の知り合いだった地図マニアの人思い出したり。へとへとに疲れているときに、喫茶店でこの辺の道はほとんど農道だったから変な風に斜めに交差してるのが多いんだとかいうのを延々1時間ぐらい話されて、興味深くはあるんだが結構閉口したのを思い出したよ。作者Gabriel Valjanというのもそんな人かも。
主人公Shane Clearyが基本的には車の運転をせず、徒歩による移動が多いのも、作者がそういう形で過去のボストンを見せたいという意図のものかも。
作中に出てくるゼロックスコピーも、当時はそれほど多かったものではなく、そのコピーがどこでとられたかみたいなことも鍵になって来る。
かつての警察内の友人Billはホモセクシュアルであるという設定で、70年代のゲイカルチャーと言った方向も描かれる。
その他、ウィンズロウのDanny Ryanトリロジーにも出てきたような、ボストンにおけるアイルランド系とイタリア系のギャングの対立の70年代の状況というところも少し背景ぐらいのところで描かれる。

それ以前は主に歴史ミステリーといった方向の作品を書いて来た作者Gabriel Valjanは、その方向から自身の地元であるボストンの過去を描くという方向でハードボイルドというスタイルを選択したのだろう。
歴史ものが好きな作者らしく、お手本としたのは主に50年代までのクラシック作品という感じ。
途中で出て来た主人公の友人"教授"ことDelano Lindseyは、クラシック作品に多く登場する主人公と話して事件を考察するという役割で配置されたキャラクターなのだろう。40~50年代の私立探偵クラシック作品には、多分当時隆盛だったラジオドラマと いった方向の影響もあると思うんだが、例えば女性記者だったり友人の刑事だったりというキャラクターが、主人公と会話して事件についての考察を繰り返すといったミステリ的とも言える手法がよく用いられる。
この作品の中には本来の事件とは関係なく、Billとの会話で最初にある殺人事件について語られ、しばらくたった後に謎解き的形でそのトリックと解答が語られる「3分ミステリ」?みたいな趣向もある。実際に見たことはないんだが、 クラシック作品では使われたおまけ趣向なのかも。

作者の他の作品を読んでいないので、はっきりしたことは言えないのだけど、クラシックなハードボイルド作品をよく研究したようで、ハードボイルド的というような一人称記述はよく書けていると思った。だが作品のテーマ上、過去の建物などの描写の中で、 その一人称記述ゆえに少し分かりにくい部分もあったり。つまり主人公はその時代にいて現在あるものとして語っているのだが、そういう過去の状態について全く不案内な自分のような目で見ると、時に主人公の行動を見失いかけるようなところが あったり。作者のそういったものへのこだわりゆえというところなのかもしれないけど。
また、お手本としてクラシック作品のみではなく、過去のノワール映画や、ポランスキー『チャイナタウン』あたりをイメージしているのではないかと思われるところもあり、時にそちらのイメージが先行し、内容が追いついていないところも見られたり。
中盤頃にある事情でShaneがBraytonと話すために彼の屋敷へと向かうのだが、そこではパーティーが行われており、という場面がある。
この手のパーティー場面というのは、古くはスピレインやマクドナルド、最近のものではリー・バークが農業祭みたいな形だったりで、ハードボイルド作品にも多く登場するもの。大抵はストーリーの中で出てくる様々なキャラクターが参加し、 それぞれの関係や、隠された思惑などが垣間見えるというものである。
だが、この作品のそのパーティー場面では、ストーリーに関わるキャラクターがBraytonとCatのみで、かなり中途半端な感じになっている。おそらくは映画などのイメージから、こいつは金持ちという印象を強くするためにここに入れることを 思いついたのだろうが、これ電話で言えば済んだんじゃね、というような感じになってたり。
その他、一方では冗長だったり、説明不足だったりとバランスが悪いところもあったり、Billというキャラクターがあまりうまく使えていなかったりと、挙げれば色々な欠点は見えてくるんだが、まあそこは第1作ゆえの甘さというところで。 とりあえずは第4作『Liar's Dice』がシェイマスで賞もとっていることだし、ここから順調に成長して行くんじゃないだろうかな。

クラシックタイプの探偵というところでは、以前から書いているようにロングスパンで見れば前回のSteve Goble/Ed Runyonや、Matt Coyle/Rick CahillといったところがPI小説ジャンルの主だった流れであり、そこから見るとこの時代においては少し異色 というところに分類されるシリーズだろう。
PI小説の起点を80年代ぐらいと見ると、その中でもいくつか散発的にといった感じで、例えばマーク・ショア/レッド・ダイアモンドみたいなパロディ以外にもそのタイプの探偵は登場している。80年代という時代にハメット型の探偵を創造した Jack Lynch/Peter Bragg。ロバート・J・ランディージのボクサー探偵Miles Jacoby。1980年代後半にマイク・ハマーを一般的イメージとはまた違うそのスタイルという部分で再創造した探偵Saxonを登場させたレス・ロバーツについては、 なんとかもっとほかの作品も読んで行かなければというところなんだが。更にこの流れであいつもそうだったなと探しているうちにDown & Out Booksの復活を知ったJ. L. AbramoのJake Diamondなどなど。
忘れてるのもありそうだし、探せばこれからも出て来るものだろう。だが、現在までのところ、いずれも作家自身の好みというような方向でクラシックと直接つながるという形で点在しているだけで、一つの流れを作るというものにはなっておらず、やっぱりPI小説ジャンルの主流というところは前述のようなものになっている。
だがそこで、このわが街ボストンの過去を歴史的な視点で描くというGabriel Valjan/Shane Cleary。このスタイルにはクラシックな私立探偵という方向がうまく嵌まるのかも。自分の愛着のある街をこういう形で書くというのは、一つ魅力的なアイデアで、 これをスタイルとして使いたいというような作家も出てくるかもね。ただしValjan氏のようながっちりした歴史への取り組みや思い入れが無いと、結局脱脂粉乳まずかったあるあるみたいなもんばかり出て来るものになってしまうかもしれんけど。
そんな感じで、このスタイルともども、一つ注目しておいた方がいいのではないかとも思うGabriel Valjan/Shane Clearyシリーズ第1作、『Dirty Old Town』でした。

*  *  *

作者Gabriel Valjanについては、生年なども公開されておらず個人的な情報についてはあまりよくわからない、2012年から結構な著作がある割にはそこそこ若く、まあ40代ぐらいだろうけど、見えるが。ボストン在住で、Munchkinという名の猫を飼ってるぐらいが 個人情報。Historical Novel Society、ITW、MWA、Sisters in Crimeなどの会員。
2012年、デビュー作となる『Roma, Underground』に続き、Romaシリーズというのが全5作出ているんだが、現在は絶版となり本人のホームページにも載っていないので、詳細は不明。多分ローマをテーマとした歴史ミステリーというところなんだと思う。
続いて2017年から始まっているのがThe Company Filesシリーズ。こちらは第2次大戦後のヨーロッパなどを舞台としたエスピオナージュシリーズらしい。こちらはアガサ賞にも複数ノミネートされている。現在までのところ4作が出ている。
そして2020年からこのShane Clearyシリーズが始まり、現在第5作まで。The Company FilesシリーズとShane Clearyシリーズを並行してやって行くというのが現在の方向らしい。
その他に、2025年にEchoes of Italyシリーズというのが一気に5作出版されているんだが、どうもこちらは過去の作品を個人出版電子書籍という形でまとめて出したものらしい。Amazonで見ると第5作になっている『Five Before Rome』は、他のところで 見たら2021年にRomaシリーズの第6作になっていたり。
その他、前回最後の方で触れた元Down & Outで出ていたGrifter's Songシリーズも1作書いているのに今気付いたり。こういう方の横のつながりもある人だったんだね。

版元であるLevel Best Booksについても少し。2003年設立のミステリー専門の独立系出版社。なんかもうややこしいんだが、結局今のアメリカではNYのBIG5だか4だかに属してない出版社は大小関わらず独立系インディペンデントってことになるんだろう。 本社はワシントンDCで、ボストンとロンドンにもオフィスがあるそうなんで、そこそこ大きな会社だろう。様々なミステリ関連賞の受賞作も多く出版しており、わざわざ調べる気も起らんけど、日本で翻訳されてるものも出してるんじゃない?
ホームページの"Our Authors"ってところを見ると、それこそ山のような作家が並んでいて、全てをチェックする気も起らないが、まあアンソロジーに1作短編を出してるような人も入ってるんだけどね。"Our Books"というところを見ると、 "Noir/Hardboiled"ぐらいのジャンルに絞れて、見た感じきちんと分類されてるんで、PI小説という方向ではこの辺から拾ってくることもできるかもと思う。こういうところはあれもこれも入れちゃえみたいなあんまりあてにならないところの方が 多いんだが、ここに関しては結構拾いものかも。まあこのLevel Bestについては、少し前に最後ぐらいに言及したEric BeetnerのCarter McCoy三部作も出てるんで。Beetnerさん今度こそは絶対にやるよ!
この手のミステリ系出版社というのは、まあほとんど自分では全体把握できないようなものも多いんで、あんまりちゃんと見てこなかったけど、PI小説というジャンルになると、前回のSteve Gobleのように「ミステリ」ってところとも近い作家も多そうなので、 とりあえずホントにざっとぐらいだけど一応紹介的なことはしておくべきかと思う。よくわかんないからまあいいやでスルーしてきたの結構あると思う。Oceanviewとかについてもいずれちゃんとやっとかないとね。

Level Best Books

■Gabriel Valjan著作リスト
●Romaシリーズ

  1. Roma, Underground (2012)
  2. Wasp's Nest (2012)
  3. Threading the Needle (2013)
  4. Turning to Stone (2015)
  5. Corporate Citizen (2016)
  6. Five Before Rome (2021)

●Company Filesシリーズ

  1. The Good Man (2017)
  2. The Naming Game (2019)
  3. The Devil's Music (2021)
  4. Eyes to Deceit (2025)

●Shane Clearyシリーズ

  1. Dirty Old Town (2020)
  2. Symphony Road (2021)
  3. Hush Hush (2022)
  4. Liar's Dice (2023)
  5. The Big Lie (2024)

●Echoes of Italyシリーズ

  1. Man of Honor (2025)
  2. The Fallen One (2025)
  3. Two Warriors (2025)
  4. Dance of the Spider (2025)
  5. Five Before Rome (2021)


【訃報】Sheldon Lee Compton死去

ケンタッキー州在住の、小説家、詩人として知られるSheldon Lee Compton氏が、2026年4月13日に亡くなりました。
地元ケンタッキー、パイクビルや自らの生い立ちなどをテーマとした数多くの短編小説などの他、詩集、長編フィクション、Breece D'J Pancakeに関するノンフィクションなどを著し、ドナルド・レイ・ポロック、クリス・オフット、David Joyらに 高く評価されている。
Anthony Neil Smith経由で知り、こちらでも何度か名前だけは出してきていて、短編を少し読みこれは是非ともちゃんと読まなければならない素晴らしい作家だと思いつつ、結局届かないままにこのような形となってしまった。
遺作となった最新作『The Old Invisible』が本年5月12日にCowboy Jamboree Pressから出版されている。ここから読むのが正しいのか、少し悩むところではあるのだけど、なるべく早く読んでこちらで紹介する予定です。
Sheldon Lee Compton氏のご冥福をお祈りします。

■Sheldon Lee Compton著作リスト

  • The Same Terrible Storm (2012) 短篇集
  • Where Alligators Sleep (2014) 短篇集
  • Brown Bottle (2016) 長編小説
  • Dysphoria (2016) 長編小説
  • Absolute Invention (2019) 短篇集
  • Sway (2020) 短篇集
  • The Collected Stories (2021) 短篇集 (既発の四作の短篇集収録作品を一巻にまとめたもの)
  • Runaways (2021) 詩集
  • The Orchard Is Full of Sound (2022) ノンフィクション
  • Alice (2023) 長編小説
  • Oblivion Angels (2025) 長編小説
  • The Old Invisible (2026) 長編小説


まったくなんというか…。ハードボイルドってところを中心に、あまり目が届いてない「ミステリ」寄りというあたりのPI小説というところも探って行かねば、と自分的にはやや強引ぐらいに2作ねじ込んでやって行けば、その反対側、カントリーノワールから文学といった境界に位置するSheldon Lee Comptonの訃報…。なんか一区切りついたらそっちの方少しまとめて読めれば、と思っていたところといえば聞こえがいいが、実際にはこれについては書けなくても仕方ないかというのも挟みつつあれこれ読んで、それでも既にこれは書かなければというのが4作品になってる現状だったり。どうやってもなかなか進まず、コミックの方も牛歩かカタツムリか…。何とかもがきつつ、これは自分がやんなきゃ誰も伝えないという重要作・魅力ある作品を一つでも多く紹介して行かなければ。
PI小説ってところに話を戻すと、第2回ぐらいにして早くも自分が見えてるジャンルの傾向というところからの例外作品みたいなのが出て来たわけだが、まあこんなもんでしょ。生きてる作者が常に自分で新しいものを作り出したいと闘っているようなところで、読んでるだけの奴が安直にこれはこういうものだと決めつけで、傾向や定義なんてものを押し付けられるわけがないんだよ。こんなもんができることといえば、とにかく山のように数多の作品を読み、それこそ例外的作品の傾向ぐらいまで見出すつもりで重ね続け、そこからこうかもしれないぐらいのところを見出して行くのが精々なんだろ。まだたったの2作だ。ホント色々あるんだけど、なるべく早い機会に第3回、4回をやってくつもりです。あー、そろそろMatt Coyleの次のやつも読まなきゃ。


●関連記事:PI小説

Matt Coyle / Rick Cahillシリーズ


■Gabriel Valjan
●Shane Clearyシリーズ

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2026年5月11日月曜日

Steve Goble / City Problems -Ed Runyonシリーズ第1作!-

今回はSteve Gobleの『City Problems』。2021年に出版されたEd Runyonシリーズの第1作。Matt Coyle/Rick Cahillシリーズと同じOceanview Publishingより出版されているPI小説シリーズです。

前からしつこく言ってる現代のPI小説というのをもっとよく見て行かねば、というのの第1弾というところなんだが。
ところで、12周年のところでハードボイルドの本流っていうところがあって、それとは別の流れとしてPI小説というのがあるというようなことを言って、まあ伝わらんだろうけど説明するスペースもないしな、と投げっぱなしだったんだが、 今頃は、ハードボイルドの本流って何?お前がそう思い込んでるだけだろ、はい論破、とか言ってる奴もいるかもしれんので少しは説明しておこう。
つまりさ、S・A・コスビーが『Blackktop Wastland』一作でなぜジャンルのトップぐらいまで昇り詰めたかってところ。コスビーの『Blacktop』は、まず仲間の作家から高く評価され、それがその友人の作家、さらにその友人と広がり、最終的に ジャンルの大物作家達からの高評価を得るという形でトップへ上って行った。まあこっちはその様子をリアルタイムでスゲーなと眺めていたようなもんなんで。で、そんなことがなぜ可能だったかと言えば、そこにはマイナー作家から大物作家まで、 簡単につながるようなラインがあったからだ。そういったところをハードボイルドの本流という部分と見るのは間違ってないと思うがね。
そしてハードボイルドというジャンルの中で、それらと別の流れとなっているのが主に私立探偵を主人公としたPI小説。PI小説という呼称・概念っといったものは1980年代半ばごろに出来たという経緯は既に書いた。そもそもは、色々なイメージが付いて 使いにくくなってしまったハードボイルドを、私立探偵ものに特化した形でその呼称により新たに進めて行こうというような意図のものだったのだろう。
だが一方で、その頃よりハードボイルドジャンルのメインストリームは、エルロイやエルモア・レナードといった作家の強い影響により、クライムノベル傾向へとシフトして行く。
当初は両者の間に大きな隔たりはなかっただろうが、その時代における「現代」の私立探偵を描こうとして進んできたPI小説は、そこから実質的には道を分かつことになったハードボイルドのメインストリームとはかなり違う独自のジャンルと 言ってもいいようなものになっている。そこに至る経緯ももっと追って行きたいところもあるんだが、とにかく現代のPI小説からもっときちんと把握して行きたいというのが私の考え。

と説明はしてみたものの、思い込みの「ハードボイルド精神」に歪められる一方で、ハードボイルドの変化をきちんと見ることもせず、ミステリの進化を止めるどころか退化へと向かってきたこのミステリ超後進国でこんなこと言っても、全然 分かんねえんだろうな、と絶望感に捕らわれるばかり…。ハードボイルド=私立探偵という考えに凝り固まり、私立探偵が主人公ならそっちがハードボイルドの本流なのではないか、ぐらいのこと言いだす阿呆が自称「専門家」レベルでも ゴロゴロいるのがこの国なんだろ。全く通じてないことを承知で、PI小説ジャンルの作家たちの考えは、「ハードボイルド精神」の継承でも、チャンドラーの模倣でもなく、現代を生きる私立探偵像を描くことにある、というところで、 この徒労としか思えない説明を一旦終わる。

とにかくそういうポジションにあるPI小説なわけだが、ではPI小説の注目作はどこで見つければいいか?
前述のハードボイルド本流というところでは、相互に繋がりのあるその辺の作家の動きを見ていれば、色々な作品が見つかって来る。だが、PI小説の作家というのは、また独自のコミュニティに属していたりして、概してその辺の作家との繋がりが あまりない上に、それぞれの作家同士の繋がりも薄く、そういった関係からは今ひとつ見つけにくい。
そこで一番頼りになりそうなのが、結構長く80年代ぐらいから続いているThe Private Eye Writers of Americaによるシェイマス賞(The Shamus Awards)かと思う。
…いやまあ、結構前からそうだろうな、と思ってはいたんだけど、結局のところは他に色々あってなかなか手が回らなかったというところか。とにかくここから片っ端から拾って読みたいなあが、読んで行かなければならんという使命感ぐらいに変わってから、 更に一年ぐらいかかってると思うし…。
ただまあ、シェイマスってところも100%信用してるってもんじゃない。っていうのは例えば世の中には、シャーロック・ホームズも私立探偵であるみたいな考えもあるんで。まあそういった賞というのも数多あるんで、棲み分けはできてるんだろうなと思うけどね。 とりあえずは現代というところを舞台としてれば、8割がたは問題ないだろうとか。

そんなわけで、その辺の受賞作、ノミネート作品から選んだのを色々とリストアップしてたところ、2025年のBest PI Novelにシリーズ第3作『Go Find Daddy』がノミネートされたSteve Gobleが引っ掛かって来た。あ、いや、Oceanview Publishing作品はよくセール やってるんで、たまたま安くなってるの見かけて買ったので、じゃあこれから行くかという感じだったんだが。
で、こちらはそのEd Runyonシリーズの何の賞にも引っ掛かっていない第1作である。別に自分は、賞とかとったのがそのシリーズの最高傑作で、それから読むべきなんて考えは持ってない。1作目から読めるならそうすべき。
で、その第1作だが、実はこの時点では主人公Ed Runyonは私立探偵ではなく、ある田舎町の保安官事務所の刑事。つまりどういう経緯で主人公が私立探偵になったかについて描かれた、まあ昨今の一部での流行り風に言えば、Ed Runyon : Zero Yearみたいな話。
元々はNYの刑事だったが、ある事情により田舎町へと移って来たEd Runyonは、いかにして私立探偵となったのか?ではEd Runyonシリーズ第1作『City Problems』です。

City Problems


俺はOllie Southardの頭を右の脇で抑え込んだ。奴のやかましい吠え声を止められるのに充分な圧迫を加えて。それは肋に向かってくすぐったいような振動を引き起こすが、警官はその手のことを無視することを必然的に学ぶ。
Ollieは通常は温厚な大男で、俺に向かって怒鳴り散らすような奴ではない。彼は自分をイラつかせた奴に対して喚いていたのだ。
そいつは、Ollieにたぶんは折られたのだろう鼻から血を流し、バーの床に倒れていた。痩せた見たこともないその男は、俺とOllieから逃れるために、ブーツの踵で木の床を掘り起こすようにもがいている。男の手はベルトに向かって彷徨う。 あたかも「ナイフ」と言っているように。

というわけで、物語は田舎ポリス物の定番とも言える、主人公がバーの喧嘩に巻き込まれるというところから始まる。
主人公Ed Runyonはその日、朝にしばらく取り組んでいた事件に決着をつけ、その日の残りは休みとして、まず馴染みのTuckのバーで楽しく過ごすつもりだった。
事件は、ヘロイン中毒の妻が夫に階段から蹴落とされ、両足と片腕骨折を始めとする大怪我を負ったというもの。夫は、犯人はヘロインの代金の足しに妻と寝ているドラッグ・ディーラーだと主張し、その時間はあるバーにいたと他の客も証言する アリバイもあった。だが、それが妻から盗んだヘロインで買収した偽証であることを突き止め、夫を起訴するまでたどり着いたというところ。
そしてその解決に気分よくTuckの店にやって来て、最初のコモドア・ペリー IPAが注がれる前に、騒動は起きる。
その始まりは、よそ者のその痩せた男が、テレビで喋っていた男に対して、ホモ野郎と罵ったことだった。
タイミングの悪いことに、近くでダブルのバーボンを飲んでいたOllieは、彼の兄弟にも見える髭面の大男Rushとの結婚に臨もうというところだった。
ホモセクシュアルへの偏見に怒ったOllieとその男の口論が始まり、それは乱闘へと発展。
そしてそのよそ者は、ナイフを抜いた。

そのタイミングでポケットの携帯が鳴り出す。とりあえずはそれを無視して言う。
「俺は警官だ。そいつを捨てろ」
「くそくらえだ」男は言い、立ち上がろうとする。
格闘で押さえつけることも一瞬考えてみたが、Edは腰のホルスターから銃を抜く。
「俺の方が射程が長いぞ。刃物を捨てろ」
男はナイフを落とし、言われた通りにそれを手の届かないところまで蹴る。

そして、騒動の最中にTuckが通報しておいたパトロール警官たちが到着する。彼らに二人の逮捕を任せ、事態が落ち着いたところで、改めて携帯を見る。
電話は保安官のJohn Daltryからだった。
Daltryにかけ直すと、すぐに電話を取らなかったことに文句を言った後、本来の要件を話してくる。
オハイオ州コロンバスの刑事が、失踪人の捜査のためにやって来る。ブロンドの可愛い十代の少女だ。そちらの刑事は少女がこちらに来たと考えているようだ。Edにはその刑事のこの土地での捜査を手伝ってもらいたいということ。
「失踪した十代の少女」…。それはEdが再び聴くことになるのを恐れていた言葉だった。
なんとかその仕事を避けたいと思うが、保安官事務所のもう一人の刑事Bobは別の件にかかりきりで手が離せない。
渋々承諾し、後で署に向かうと話し電話を終わり、そこから逃げるようにTuckにさらにビールを頼む。

Ed Runyonはかつてはニューヨーク、ブルックリンの刑事だった。
ある十代の少女の失踪事件の担当になるが、様々に起こる他の事件に追われ、そちらに時間を割けないうちに最悪の結果を迎えることになる。
少女はブルックリン近郊で連続していたサイコキラーによる被害者の一人となり、陰惨な死体として発見される。
それにより心を病んだEdは、ニューヨークから逃げ出し、半ばアル中状態でこのミフリン郡に流れ着き、ここでのリハビリで立ち直り現在保安官事務所の刑事となっていた。
「失踪した十代の少女」は、彼にとって最も関わりたくない事件だった。

ミフリン郡の警察だって簡単な仕事じゃない。ドラッグの問題。ドラッグを手に入れる金のための強盗事件。だが少なくとも、大都市で起きるような狂人による理解不能な事件は起こらない。
それは都市の問題だ。そしてコロンバスは、ニューヨークほどではなくても、それなりの大都市だ。
「都市の問題」を持ち込まないでくれ。

しばらくの後、重い腰を上げ、署に向かったEdは、保安官のオフィスでコロンバスから来た刑事と会う。
Michelle Beckworthという女性の刑事。Edは彼女から事件の詳細を聞く。
失踪した少女の名前は、Megan Beemer。地元の有力者の娘ゆえ、早期に大掛かりな捜査に至ったのだろう。学校の成績も優秀で、品行方正。補導歴などもない。家出の可能性は低い。
交際していたボーイフレンドとは、最近別れており、その少年には確かなアリバイもある。
Meaganは、土曜の夜、パーティーに出かけた。倉庫を借りて一夜限りで開催される類いのパーティー。一つか二つのバンド演奏があり、ダンスフロアがあり、そして少々の酒やドラッグなど。
そして彼女はそのまま帰らなかった。
現在は火曜日。数日間の失踪だ。EdはMichelleから少女の写真を見せられる。青い目で金髪、明るい笑顔の!6~7歳の少女。
その少女は、彼がニューヨークを去った夜、やっと見つけた少女を思い起こさせる。彼がその後、多くの時間を費やしてそれについて考えない方法を学んだあの夜。

Meaganがこちらに来たのではないかとMichelleが考える理由としては、まず彼女が当夜、友人に「田舎から来た子と会った」とメールを怒っていること。そしてその夜のパーティーの駐車場には、ミフリン郡のナンバーの車が多く見られたこと。
更に強力な手掛かりとしては、その倉庫からこちらに向かう道の途中で、Meaganの携帯が捨てられているのが発見されたこと。
だが、その道は近くの他の町へも続いており、Michelleのパートナーの刑事がそちらに調査に赴いているということだった。

EdとMichelleは手始めに地元の高校に、彼女の知り合いがいないか、当夜パーティーにいった者がいないかなどの手掛かりを求めて向かう。
そこで、そのパーティーにはそこの生徒であるJimmy Norrisという少年がやっているバンドが出演していたという情報を得る。地元の若者にはそれなりに人気で、彼らの演奏を聴くためにそのパーティーに行った者もいるだろうとのこと。
Jimmy Norrisは、母親と二人でトレーラーハウスに住んでいて、その敷地内でバンド練習をしており、騒音に対する苦情が度々通報されていた。署に連絡を取ると、その日も通報があったところで、その対応という形で向かっていたパトカーの代わりに Edたちが行くことになる。
屋外で轟音を響かせ演奏をしている彼らを止め、話を聞く。Meaganの写真を見せるが、見覚えはないという彼ら。
だが、その倉庫に来ていた客の中に、同じ高校でフットボールチームのスターである、Jeff Cottonを見たことを話す。

Jeff Cottonは、多くの大学も注目しているフットボールの花形選手であると同時に、地元ではかなり知られる私設民兵組織のリーダーであるCotton家の息子だった。彼の父、Brian Cottonは、地元の"愛国者"達を集め、重武装し独自の活動を行っている。 道すがらMichelleに彼について説明し、話を聞くだけでも困難なことになると思いながらCotton家の地所へと向かう。
周囲を1ダース以上のスクールバスで囲い、壁面に下の地が見えないほどに鉄板を打ち付けられ、さらに廃車のフードやドアを防護壁として取り付けた、要塞化したCotton家。
ショットガンを手にして現れるBrian Cotton。事情を説明するが、案の定、息子はそんなものに一切関係ないとして、強硬に追い返される。

再び高校に戻り、グラウンドへ行くと、そこで練習中のJeff Cottonを見つけ話を聞くことが出来た。
父親から警察とは話すなと言われているというJeffだったが、非協力的ながら、Meaganを見かけたが接触はなかったこと、Norriのバンド演奏を聴くため一人で行ったことだけは訊きだせた。

まだ実際にこの町がMeaganの失踪と関係があるのかは不明で、それほどの情報も得られなかったまま、Michelleはコロンバスへと帰って行く。
Edは、自分とこの土地と一切関係ないまま、事件が解決してくれることを切に望むのだが…。

*  *  *

実は最初にどこかに閉じ込められているらしい女性、まあ明らかに失踪した少女Meaganなのだが、の一人称による切迫した感じの短い章が冒頭に入り、その後事件発覚を恐れている複数の正体不明の犯人たちの会話といった章が、Ed Runyonの 一人称によるメインの章の間に挟まれるんだが、その辺は省略した。サスペンスを盛り上げる感じの近年…って程でもなく、多分90年代ぐらいからだと思うが、よく使われる手法。

過去に関わった事件により大きなトラウマを負い、それが原因でアル中などの方向で身を持ち崩し、司法関係の職から退き、そこから立ち直ってという、現在までに作られてきた感じのPI小説の典型的パターン。
そこにまた別方向で人気である、多分Craig Johnson/Walt Longmireに代表されるのだろう田舎ポリスものの要素を加えたあたりが特徴というところか。
ただ田舎ポリスものと言っても、言葉から想像されるような牧歌的な部分だけではなく、Longmireの方でも、それこそヘビーなノワールコミック『Scalped』で描かれたのと同じ、アルコール問題で深刻なネイティブアメリカン社会で糖尿病のまま放置され、 両足を失ったようなキャラクターが出てくるように、ただ愉快で暢気なスローライフではないのが現代の田舎ポリス物というところなのだろう。
この作品でも、まず最初に主人公Ed Runyonが関わってきた事件として、ドラッグが関係する夫婦間の暴力事件について語られる。こういった現代のアメリカの田舎町でのドラッグ問題については、作者自身の経験も交えて書かれたJoe Cliffordの Jay Porterシリーズもある。まあS・A・コスビーとかも主に舞台となるのは、地方都市というよりこの手の田舎町に近いあたりだしね。
作中に登場するBrian Cottonの、過激な愛国者による民兵組織みたいなものも、この手の作品ではお馴染みのものだろう。ここではそういう言われ方はしていないが、コミックの方でやった『Beneath』という作品で出て来た 「スリーパーセンターズ」(アメリカ独立戦争時にイギリス軍と戦ったのは植民地のわずか3パーセントだったという主張に由来する)と同様の、現代アメリカの田舎的ところで多数発生している動きなのだろう。

そういった田舎町の問題というものについては対応できるが、理解不能な狂人により犯罪に一切関わりがないような少女が無残に殺されるような「都市の問題」により深いトラウマを負い、そのような事件が自分のいるこの町に持ち込まれるのを 何よりも恐れるのが、主人公Ed Runyon。
だが、事件が進むにつれ苦悩も深くなり、深酒に溺れるようなところもあるが、全体的な主人公の一人称の語りによる物語は、それほど鬱々としたものではなく、どこかバランスを維持していて、ノワール傾向の強い作品の主人公のように 自己破壊的な行動に向かうことはない。ジャック・テイラーさんみたいに気が付いたら精神科病院に入れられてたとかさ。
その助けになっている一つかと思うのが、彼の音楽的趣味。ハンク・ウィリアムズ(ジュニアかな?)、ウィリー・ネルソンなどの少し古いカントリーミュージックに深く傾倒し、自宅ではギターも弾いている。とは言っても日本の主人公=オレで 自分の音楽趣味を作中で正義としてゴリ押しするようなものではなく、あちこちでその趣味をやや生暖かい目で呆れられる。最初から出てくるTuckの店では、ジュークボックスでそれらの曲を流す度に店主Tuckに嫌がられ、捜査に当たり 彼の車に同乗したMichelleにも苦笑交じりで受けとめられる。
また、作中に登場する容疑者の一人になるJimmy Norrisのバンドは、三人編成のオルタナティブ、パンク傾向のものだと思われるが、Edにとっては音楽以前の騒音にしか思えないのだが、Michelleを始め、登場する多くの人物は、結構いいバンドだと いう感想だったり。
こういったところがそれなりのユーモアを帯びて、この物語が暗くなりすぎるのを救っているのだろうと思う。
まあ、現代のハードボイルドジャンルの、音楽ってものの使い方はこういうものだからね。なんかクラシックミュージックを聞いてるからポピュラーミュージック全般をガキっぽいと見下せると思い込んでた学生時代の考えそのままから成長できてない、 「ガキっぽい」老害なんて話にもならんしね。

過去のトラウマを乗り越えたと思っていたEd Runyonの前に、再び現れた悪夢。そして物語の最後では、Edはある思いから保安官事務所を辞め、私立探偵となることを決意する。
こういった田舎を舞台とした私立探偵ものというのはあまり読んだことがないのだけど、現在のアメリカのクライム・ノヴェルぐらいの枠で舞台がこちらの方に移っている傾向があるので、探索を進めて行けばまた出てくるんだろうと思う。 まだホントこれからで、色々なもんを読んで行かなければというところなんだが、なんとかこのEd Runyonシリーズももっと追って行ければと思うんだが。そういえば、今更ながらに思い出したんだが、色々先駆的だったり、ちょっと別格として 考えてしまいがちになるんだが、かのジェイムズ・クラムリーも田舎私立探偵ものだったな、と思ったりもする。思い起こされるとかいうのが…、あ、やっぱクソだせえや。

*  *  *

作者Steve Gobleは、オハイオ州在住のジャーナリストから転身した作家。なんか主人公Ed Runyonの感じからして、これがデビュー作ぐらいなのかと思っていたが、これ以前にSpider Johnシリーズという18世紀を舞台とした海洋冒険小説 シリーズがある。アガサ・クリスティ ミーツ パトリック・オブライアンなんて評もあるんで、結構ミステリ色の強いやつなのかも。2017~21年にそちらを4冊出した後、2021~23年にEd Runyonシリーズを3冊。前述のように、第3作 『Go Find Daddy』がシェイマス賞にノミネートされている。
歴史という方向にも関心は高いようだが、ジャーナリストとしての経験というようなものがEd Runyonシリーズに活かされているのだろう。今後については両方やって行ければ、というのが本人の希望なんだろうね。

■Steve Goble著作リスト
●Spider Johnシリーズ

  1. The Bloody Black Flag (2017)
  2. The Devil's Wind (2018)
  3. A Bottle of Rum (2019)
  4. Pieces of Eight (2021)

Ed Runyonシリーズ

  1. City Problems (2021)
  2. Wayward Son (2022)
  3. Go Find Daddy (2023)


Down & Outが帰ってきたぞ!

というところで、ちょっとしたお知らせ。昨年秋、Pablo D'Stairの『this letter to Norman Court』についてやった直後、その版元であるDown & Out Booksが終了という、かなりトホホな事態となったわけだったのですが、そのDown & Outが 帰って来ました!…えーと、いつ帰ってきたのかは正確には分からんのだけど…。
かなり多くのクライムノヴェルを出版していて、結構急にぐらいに終了したDown & Out。その後、あれとかどうなったのかな?とか時々思い出し調べていて、先月末ぐらい今結構こだわっていて今回やっとやったPI小説の流れで、Down & Out初期から 出ていたJ. L. AbramoのJake Diamondとかどうなったんかな?とアマゾンで調べてみたところ、Kindle版が販売されてるのを発見。自費出版とかで頑張ってるのかな、と思ってさらに出版社を調べてみたところ、なくなったはずのDown & Out? えー?なんで?と思って検索してみると、新たなDown & Out Booksのサイトがあった。
実際のところ、元のDown & Outが終わった経緯なんてものもよくわからないんだが、とにかくどうにもならなくなって会社自体を整理倒産という形にしなければならなくなって、終わったが、これほどの短期間での復帰を見ると、その時点で 新会社として立ち上げ、ある程度の出版を引き継ぐということは決まっていたのだろうと想像できる。まあ、会社経営的な知識なんてないんで、全くの素人想像だけど。
さて、新たなDown & Outだが、とにかくサイトを作ったまでで、まだ本当に作りかけという感じ。メニュー項目一番左の「Authors」なんてページがあるだけでまだ白紙。次の「Books」も、現在出版されているのだろう過去に出ていたものの 画像をいくらか並べただけ。できているのは「Staff:The Lineup」と「Submissions」だけぐらいの状態。Down & Outが復活した手掛かりとなるような「About」というような項目もない。だが、注目すべきはその「Submissions」。 というか根本的にこの「Submissions」ページがサイト全体のトップページになっているんだが。その辺を一部引用してみよう。あーGoogleのAI翻訳を修正程度のもんだけど。

我々が求めているもの。
我々は、道徳の影に潜むような作品、つまり主流社会の快適さの裏側や周縁部を描き、その居心地の良さに収まっている層に自分たちの快適さの真の意味を理解させるような作品を求めている。
コージーミステリー、ヤングアダルト、あるいはティーンエイジャーが主人公の犯罪小説、午後のシャルドネやピノ・グリージョを楽しむ層をターゲットにした家庭内スリラー、あるいは使い古されたお決まりのパターンにとびきりユニークなひねりを加えたものでない限り 警察小説には興味がない。シャーロック・ホームズはコカインを吸う狂人だった。そういった類の探偵小説を投稿したいと考えるなら、保護者の助言が必要な、あるいは露骨な描写のあるシャーロック・ホームズを求めている。
我々が尊敬する作家たちとは:ドナルド・レイ・ポロック、William Gay、ジム・トンプスン、フラナリー・オコナー、ギリアン・フリン、Will Christopher Baer、Craig Clevenger、Breece D’J Pancake、パトリシア・ハイスミス、ハリー・クルーズ、 マーガレット・ミラーなど。
作品の登場人物は、クリート・パーセル、エイミー・ダン、ミスフィット、モイラ・ラングテリー、フィニアス・ポー、ダニエル・フレッチャーといった人物がそうであるように、道徳的な重みと危険性を背負うべきである。彼らの選択によって、 読者は彼らがこれまで取ってきた安全な選択に疑問を抱いたり、肉体や魂に、物語的に意味のある傷跡を残すべきであったのかどうかを考えさせられたりする。何か不安を掻き立てるもの、人間の本質を突くもの、真実を我々に見せて欲しい。

まあ、日本の状況を考えると本当に暗澹たる気分になってしまうんだが、とりあえずあらゆる意味で日本の出版業界が小手先で「売れる」と思ってるものの真逆を行ってるんで、ここから出てくるものが日本語で読めるような機会は絶対に来ないぐらいのところは言っておこう。 それにしても、かつてFahrenheit PressのボスChris McVeighが、お前らもう警察小説送って来るんじゃねえ!と吠えてたのも思い出すんだが、日本でそのレッテル貼っとけば大丈夫ぐらいに思われてる「警察小説」が、こっちジャンルでどう思われてるのかを、 改めて認識するよね。
一旦は破綻し、過去作一部の出版継続のために再開されたように見えてしまうDown & Outだが、そこが一番強く打ち出しているのが現在の「売れる」に迎合しない新しい才能の募集なのだ。こんな奴らを応援せずにいられるものかい!今のところはまだ どんなものが出てるのかすらよくわかんない状況の新生Down & Outだが、これからの展開に期待しつつ追って行くものである。
さて、かなり多くの作品を出版していた旧Down & Outなのだが、まあどう考えても過去のものがすべて再版されることはないだろうというところで、その他の動きみたいなもんにもできるだけ目を向けて行かねばと思う。
かつてFrank Zafiroが作った設定で、多くの作家たちが参加したシリーズ『A Grifter's Song』については、いつかやるからと延々言い続けてそのままになってしまったいたんだが、あれがなくなってしまうのは惜しいなと思って探してみたところ、 Frank Zafiroの個人出版社であるCode 4 Pressより、全35巻が再版されていた。Frankさん、今度こそはちゃんとやるからね。とりあえず、現在の『A Grifter's Song』はこちら
例えば、この間書いたJoe CliffordのSquare Tire Booksのように、出版不況にさらにコロナを乗せたような困難な状況に、様々な動きが起こってるわけで、色々な意味でも過渡期と思われる今の時期、そういったところになるべく多く 目を向けて行かないと、次の展開なんて絶対見えてこないよね、と思うものである。あー、あっちもこっちもだ。

Down & Out Books
Code 4 Press


なんかもっと短く書くつもりだったのだけど、結局そこそこの長さになってしまった。まあDown & Outのことは置いとくにしても。
現在のPI小説というあたりの流れを見るために、そっち方向の作品をなるべく多く紹介していかねばならん、そのためにはもっと短くなるべく早く書いて行くこと。という考えだったのだけど、やっぱり日本的にはほぼ知られていないだろう作家・作品を紹介 するには、このくらい書かねばということになってしまう。なんかそこから、例えばリー・バークみたいにある程度は知られているものについては、もっと簡単なあらすじでもいいのかも、という考えも出て来たりもしているのだが?
自分がここでPI小説と言ってるものについては、まだまだ説明が足りんのだろうなと思っている。ハードボイルドジャンルの現在の本流というところが、犯罪小説傾向にあり、傍流というようなところに私立探偵を主人公としたような作品群があり、 それは単純にクラシックなものと照らし合わせるような形ではわからないある種の傾向を持っている、なんてことはそもそも近年というか2000年代以降のハードボイルド作品が、系統的に以前にほぼまともに紹介されて来なかったこの国では 簡単に飲み込めるものじゃないんだろ。
だが、それはか細くながら日本にも翻訳されたジョナサン・キングやピーター・スピーゲルマンといった2000年代近辺の作品から、今は亡きPolis BooksのDave Whiteらの作品を経て、Matt Coyle/Rick Cahillといった現代の私立探偵小説=PI小説を 読んできた自分の感触である。まだまだ足らないところも多くもっと多くの作品を読んで行かなければならないというところなんだが。とにかく多くの作品を紹介して、しつこく言って行けば、なんとなく伝わって行くんじゃないかなあ、と期待しつつ 続けて行くしかないか。いや、最近はもう一方のコミックの方はどうやったって時間かかるから仕方ないか、という気分でコツコツやりつつ、こちらの時間を多めに増やしているところなんだが。
こちとらハードボイルド廃人である。ちょっと気になったものを追っかけてみると、すぐにこれは何だというものを見つけてしまう。しばらくぶりに思い出したものを見てみれば、またこれについては書かなければというものを見つけてしまう。 あーもうあっちもこっちも。とにかくPI小説2冊読んでみたが、その間に次から次へと押し寄せるものに、一体色々ねじ込んだ間のどこに次のをねじ込めば次のを読んで書けるのかと思案するばかり。ゴチャゴチャゆーとらんと、早く次から次へと進めてくしかないっす。


●関連記事:PI小説
Matt Coyle / Rick Cahillシリーズ


■Steve Goble
●Ed Runyonシリーズ

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2026年4月18日土曜日

Ramón Díaz Eterovic / Dark Echoes of the Past -チリ サンティアゴの私立探偵Heredia登場!-

今回はチリの私立探偵小説作品、Ramón Díaz Eterovicの『Dark Echoes of the Past』。チリの私立探偵Herediaを主人公とした作品で、初の英訳作品となるが、本国でのシリーズでは2008年に出版された、シリーズ第13作『La oscura memoria de las armas』が オリジナルとなる。英語への翻訳はPateick Blaine。

というところが基本情報なんだが、そこまで来るのにやや手間がかかったり…。私立探偵Herediaはチリでは人気のシリーズで、TVシリーズやグラフィックノベルまであるそうなのだが、やはり英語圏では知名度も低く、Wikiもスペイン語のものしかない。 まあそれでも今や直ちにページ全体が日本語訳される時代なんで、そこにさほどの苦労はない。だが、問題はその作品リストについて。なんだか文中には12作出ているとあるんだが、作品リストはどう見てもそれより多い。こういう場合、Wikiの製作者が 短編作品などもごっちゃにしているというケースもあるので、リストにあるのが単行本として出ているかを照らし合わせるという作業で、最初に著作リストを作ってということになってしまった。結果としては、リストにあった2024年までのすべて、 全21作が長編作として出版されているのが確認できた。Herediaシリーズは、実はオリジナルのスペイン語版も日本からKindle版で結構な数入手可能なんだが、プリント版のみしか出てなく、日本からは全く手に入らないものもあったりして。まあ そんなわけで、これがオリジナルのシリーズ第13作だと確認するまで少々大変だったみたいな話なんだがね。
結局、「12作」というのは、多分最初にこれが作られた時の話で、その部分の文章は書き換えられないまま、新刊が出ると追加されてったみたいなよくある話だけど、他に情報源ないと今でも確認に苦労するものですな。とにかくこの作品 『Dark Echoes of the Past』は、2008年に出版された私立探偵Herediaシリーズ第13作というところからまた始めます。

さて、このシリーズについては、まずチリという国の現代史についてのある程度の理解が必要となる。1970年の大統領選挙により、アジェンデ大統領による社会主義政権が誕生するが、続く政治・経済的混乱の中、1973年第2のキューバ化を怖れる 合衆国からの介入もあり、アウグスト・ピノチェト将軍らによる軍事クーデターが起こる。以降1990年までピノチェトによる軍事独裁体制が敷かれることとなる。多くの反体制派の市民が弾圧され、後の政府公式発表によれば約3,000人、人権団体の 調査によれば約3万人が殺害され、数十万人が強制収容所に送られる。国民の10分の1である100万人が国外亡命し、その中にはロベルト・ボラーニョらの作家も多く含まれる。
このチリ・クーデターについては、当時世界的な注目を浴び、五木寛之の『戒厳令の夜』といったそれに関わるテーマの小説・映画なども多く作られ、知ってる人も多いかと思う。
そして、この私立探偵Herediaシリーズは、1956年生まれの行政官でもある作家Ramón Díaz Eterovicにより、その軍事独裁政権が衰退し、民政化へ移行する時期、1987年に登場する。
まあ、前置きとしてそのくらいの事情は把握してればというところなので、とりあえずあらすじの方を始めます。では『Dark Echoes of the Past』。

Dark Echoes of the Past


最悪とは、何もやることが無いことだ。あるいはほぼ無いということ。つまり、私が仕事に向かい、煙草に火を点け、プレイヤーのカセットテープを換え、そして右手の人差し指を湿らせ、読んできた本のページをめくり、その間ずっと事務所のドアに ノックがないだろうか耳を傾けているようなしばしばのこと。

こんな感じで、物語は主人公の私立探偵Herediaの、まあこの手の作品ではお馴染みのような仕事が来ない探偵の一人称のぼやきから始まる。
私立探偵Heredia (姓以外不詳)。年齢50代。多分作者と同じ。しばらく依頼人はなく、言ってるところの「仕事」とは副業である大学時代の友人に紹介してもらった、主に実用書といったあたりの本の書評。
長年交際している女性、13年前彼女が学生の時に知り合い、現在は精神科医(精神分析医?)のGrisetaがおり、作中にも登場するが、基本的には独り暮らし。Simenonという名前の飼い猫がいて、時々会話しているが、実際に喋れるニャンコ先生ではない、と思うけど。 あっ、夏目友人帳の方ね。風大左衛門はネコ語が話せるので会話しているのであり、ニャンコ先生が人語を話しているわけではない!とツッコミを入れてるぐらいのオールドタイマーもいそうだから…。
その他の友人としては、彼の事務所兼住居の建物の前で新聞売りのスタンドをやってるAnselmo。競馬仲間で、時々飯を食いに来たり、Herediaが怪我をしたり動けない時は様子を見に来てくれたりする仲。事件について相談したりもする。

しばらく自身の周辺の独り語りが続いた後、仕事のないHerediaは気晴らしに散歩に出かける。彼の住んでいるサンティアゴの周辺について少し語られるが、その辺は省略。
そして、自身の住む建物へと戻って来ると、ドアマンに呼び止められ、自分に来た郵便を手渡される。このドアマンの名前がFelix Domingoというのだが、毎度ワザとのようにFelizと間違えるというネタが繰り返されることになる。
自身の事務所兼住居に戻り、まず手渡された郵便物を改めるのだが、その中に707に住むDesiderio Hernandezという人物の郵便物が紛れ込んでいた。親切心からそこへ届けに行くのだが、ずいぶんとつっけんどんな対応をされて、やや不快になる。
まあこの「感じの悪い隣人」というのは、想像される通り一つの伏線だったりするのだが、その後も度々見かけることはあるが、実際に意味を持ってくるのはかなり後半。

そしてほとんど何もないまま第1章が終わり、第2章へ。
まずは友人の作家から電話が掛かって来る。Herediaの扱った事件の話を元に小説を書いている姓名不詳の作家。何かいいネタはないかね?
この作家はこの後も何回か出てくる。実際のところ主人公Herediaは作者自身が投影されている部分が多いと思われるのだが、それとは別の、商売として小説を書いている部分の自分ってところかと思う。

そしてその後、先に話だけ出て来た恋人Grisetaが、年配の女性を伴って現れ、そこから本編の事件が始まって行く。
女性の名前はVirginia Reyes。Grisetaの学生時代の教師で、最近再会し、それ以来食事などをして旧交を温めていた。
ごく最近、弟Germanを亡くしその状況に疑問を持っているところで、GrisetaからHerediaの話を聞き、調査を依頼するために彼女とともに訪れたということ。

彼女の弟Germanは、仕事からの帰り道で二人の銃を持った男に襲われ死亡する。警察は路上強盗とみて当てのない捜査をしているが、彼女から見ると疑問が多い。
その日Germanは給料日で、もらった給料の入った封筒を所持していたが、それには手を付けられておらず、またそれなりに高価な腕時計もそのまま残されている。警察の見方としては、手慣れた強盗の仕業ではなく、相手を殺した後パニックになって 何も取らずに逃走したというもの。
だがVirginiaよると、弟は殺される一週間前、何者かに尾けられているようだと話していたという。
「Germanはよく行くいくつかの場所で数人の男たちを見かけたそうよ。そして家の外の路上でも。はっきりわかっているのは、弟が恐れていたということ」
「弟は最近様子がおかしかった。家に帰ると自分の部屋に閉じこもっていたわ。弟が何か問題を抱えていたとしたら、それは勤めていたホームセンターで起こったことに関係すると思う」
Virginiaは、そのホームセンターで、従業員が関わる盗難事件が起こっていたようだが、詳しくはわからないと話す。

German Reyes。死亡時の年齢は60歳。若い頃結婚したが、短期間で別れその後は独身。子供はいない。2年ほど前、メディカルセンターで働くナース、Gendilda Roosと交際を始め、一時期一緒に暮らしていたが、最近はVirginiaの住む実家に戻っていた。
友人関係についてもわからないが、最近は多く何かのクラブ、あるいは団体の会合に出ていたようだ。
Germanは父の後妻の子供で、年も7歳離れており、結局自分たちはそれほど近しい間柄ではなかったのだろう、とVirginiaは付け加える。
二人の男に殺害されたとわかっている事情は、目撃者がいたからということ。Germanと同じホームセンターで働いていたDario Carvilloという人物。

一通り話を聞き終えた後、GrisetaはHerediaにVirginiaを助けてくれるかと問う。
少し考えた後、Herediaは言う。「最大の謎は、貴方の弟のようだ」
「もし、彼が怖れていたものが何か分かれば、それは何者が彼を殺したかを見つけ出せるかもしれない」
「調査はしてみるが、それが警察とは番う結果を導き出せるとは保証はできませんが」
そしてHerediaは彼女からの依頼を受けると告げる。

まずHerediaは、死亡したGermanの部屋、所持品の調査から始める。特にこれといった収穫はなかったが、残されていた雑誌の間から「Werner Ginelli、拷問医師」と書かれた謎のチラシを見つける。
あまりに片付いた部屋の印象に違和感を抱き、事務所に戻ってからVirginiaにGermanは最近所持品を整理したのではないかと電話で尋ねる。
Virginiaは、彼がしばらく前に大量の雑誌や新聞からの切り抜きを捨てていたと話す。
そこで、German Reyesがかつて軍事政権により拘束されていた者の一人であったことを知る。Germanはそれらに関する記事の切り抜きを集めていたということだった。
一方、Herediaは友人のジャーナリストに「Werner Ginelli、拷問医師」の調査を頼む。確かにWerner Ginelliは軍関係の医師だったが、既に死亡したと聞かされる。

そしてHerediaは、Germanが働いていたホームセンター、The Leon Lumberyardへと向かう。
目撃者であるDario Carvilloは、元警官でホームセンターでは警備として働いていた。10年勤めた後、警察を辞めた理由は地方転勤が嫌だったからと話す。
姉Virginiaの依頼により調べている私立探偵だと話すHerediaに、勤務終了後近くのバーで話すことを承諾する。

ホームセンター近くの一旦破壊された後、適当にテーブルや椅子を集めて作ったようなバーで、HrediaはCarvilloと会う。
あまり人付き合いの多くないGermanだったが、店ではレジ係として信用があり、Carvilloとは彼が元警官であることに興味を持ち、給料日などにはこのバーで話すことも多い友人関係だった。
Germanの興味は、彼自身の経験にも関わるかつての軍事政権による拘束についての犯罪だったが、民主政権後に警官になったCarvilloは、彼の話を聞くだけで、それ以上こちらから深堀りするようなことは話さなかったと言う。

そしてCarvilloが目撃した殺害状況について尋ねる。
その日その時間にCarvilloは店の出口で警備に当たっていた。殺害犯たちは、閉店30分前頃に赤いピックアップに乗ってやって来た。最初は彼にとって気にかかるところはなく、単に客が購入したものを運ぶために待っているのだろうと思ったとのこと。
だが、一旦用事で店内に入り、再び出入り口に戻ってもその車の中に居続けたことからCarvilloの注意を引き始める。車に乗っていた二人は両方とも60代と思われる年配者だった。
しかし、Germanが退勤するときには特に動きのない二人のことは忘れかけていた。Germanは今日は交際している女性と会いに行くと話し、Carvilloに別れを告げ去って行った。
Germanが道を渡った時、二人の男が車から出て、素早く駆け寄りそれぞれ二発ずつ銃を撃った。
あまりに早い出来事で、Carvilloは何もすることができず、倒れたGermanに駆け寄っている間に二人の男はトラックに乗りその場を去った。ナンバーを見ようとしたがプレートが泥で汚れていて、認識できなかった。

連中は何も盗んでいかなかったと聞いているが、とHeredia。
「奴らは標的に弾が当たる事だけしか気にしてなかったさ」Carvilloは答える。
事件の目撃者であり、Germanの友人でもあるCarvilloも事件については疑問に思っているが、警察の見方としては無作為な路上強盗の線で固まっており、何もすることはできない。
Herediaは、何か気が付いたことがあれば連絡してくれ、と名刺を置いて、Carvilloと別れる。

その後、HerediaはGermanが交際していた女性、Gendilda Roosと会い、彼が仕事の後週に二回、Caltural Center of the Americasで開かれる会合に出ていたことを知る。
そこで行われていたのは、軍事政権による拘束の非人道的行為を訴追するための市民団体の活動だった。
そこでGermanは、その拘束時代に残虐な拷問を行いながら、その訴追を逃れている人物たちの発見追及に熱心に取り組んでいたという。

German Reyesの殺害は行きずりの路上強盗によるものでないことは確かだ。彼が殺された理由は何で、彼を殺害しようと企んだのは何者なのか?
私立探偵Herediaの捜査は、Germanの過去によるものと、勤め先であったThe Leon Lumberyard内での何らかの事情の両面で進んで行く…。

*  *  *

以上、私立探偵Herediaシリーズ第13作、『Dark Echoes of the Past』の序盤のあらすじなんだが、まあ日本的には全く知られていないシリーズでもあり、ここはHerediaというキャラクターから始めた方がいいかと思う。
探偵のタイプから言うと、アメリカ1970年代デビューのマイクル・Z・リューイン/アルバート・サムスンあたりが一番近いかと。アルバイトで実用本の書評なんぞをやっているように結構な読書家なんだが、プライベートでビル・プロンジーニの 名無し探偵とかを楽しみに読んでいるようなシーンもあるので、大体そのあたりがお手本なのかと思う。飼い猫がSimenonなので、クラシックなパズルミステリみたいなのも好きなのかもしれんが、この作品の中には出てこなかった。読書については、 他には地元チリの作家の詩集だとか、どっかでジョルジョ シェルバネンコを買ったら最後の解決部分だけなくなってたみたいな話もあったりする。
作者Ramón Díaz Eterovicは、チリという国の中で、とりたててどういう方向にも突出していない普通の存在として生きる人物として探偵Herediaを創造したということなのだと思う。そして、主人公がなぜそういう人物として創られたのかを 考察してみるのがこのシリーズを理解することに繋がるのではないかと考える。

「普通」の人物としての探偵とは言っても、彼が生きるチリという国の「普通」は、日本の「普通」ともアメリカの「普通」とも違っている。
少しでも危険があると思えば、当たり前のように拳銃を携帯して向かう。また、物語後半ぐらいには、普通の方法では情報が得られなかったり、相手を拘束しておく必要があると思えば、容赦なく暴力を使うというような、前述の 「アルバート・サムソン」タイプの探偵とは違うような行動もとる。
では紹介した序盤のあらすじ部分では直接は関わって来なかった警察はどうか?
序盤4分の1ほど進んだあたりで、ある事情でHerediaの知り合いであるBernals刑事が事務所を訪ねてくる。友人といった関係ではないが、過去に何度か同じ事件に関わったという知り合い。「お前はちょっと間抜けではあるが、それなりに評価 している」というのがBernalsのHerediaに対するスタンス。
この作品から透けて見える感じからして、チリの大都市であるサンティアゴであっても、その警察力はあまり高くなく、日本の子供向けマンガのようにしょっちゅう警察が「○○くん」と探偵を頼りにするようなあり得ないフィクションほどではないが、 とりあえず信用できるなら私立探偵でも捜査のあてにするぐらいのものなのだろうと思う。
物語後半、犯罪にも関わっているような人物から情報を得るため、協力関係にある人物とある場所に赴いた際、銃を出してきた相手を射殺することとなってしまうのだが、一旦現場を離れ、事務所からBernalsに電話し、あれは自分がやったが 正当防衛だったと話せば、お前が言うんならそうなんだろう、捜査の手間が省けたぜ、となったり。Herediaに対する信用という部分はあってのことだが、当地の治安というものがそのくらいということなんだろう。
この作品に登場するBeranal刑事は、結構荒っぽいところもある大雑把な警官だが、それでも善良な警察官なのだろう。都市部においてもそれほど犯罪抑止に強く働いているように思われないこの国の警察には、悪徳警官も多く存在するのだろう。
一方で、民主化されたといっても、過去の拘束拷問といった犯罪的行為には目を瞑り、過去の軍事政権を強く支持するような元軍人達も多く存在し、作品内にも登場する。その一方で、過去のそういった行為に従わざるを得なかったことで心を病み、 現在も酒に溺れ続けるような人物も描かれる。

例えばチリという国も、極端な話をすればロジャー・スミスが描いた南アフリカみたいに、かなりダークで陰惨なノワールが書けるような部分もまだ多い国なのかもしれない。だがそこで、おそらくはこの国が普通の国であって欲しいという願いも 込めつつ、普通の人物がこの国の犯罪という形で現れる様々な問題に立ち向かって行く物語の主人公として、作者Ramón Díaz Eterovicが創り上げたのが、まさに軍事独裁政権から民主政権へと移行する時期に登場した、「普通の男」である 私立探偵Herediaだったのだろうと思う。
この作品を読んでいて特徴的だと思ったのが、Herediaが移動中だったり散歩に出てりして見る風景の中に、通りすがりに見る普通の市井の人々の日常の姿が多く描かれるところ。暗い時代を過ぎて来たこの国の中では、それはとても 美しい風景なのかもしれないと思った。
南米のハードボイルド/私立探偵作品としては、メキシコをその内部から鮮烈に描いたパコ・イグナシオ・タイボ二世の私立探偵エクトル・ベラスコアラン・シェインがあり、それほどの衝撃ではなかったが、それでもこのRamón Díaz Eterovicの 私立探偵Herediaは別の意味で現代のチリという国が見えてくる優れた作品だった。まあおそらくはこっちの方がとっつきやすいと思うしね。

唯一つ残念だったのが、この作品シリーズ第13作目ということで、できればもっと初期のところから読みたかったなあ、ということなんだが、前述のように情報が少なくわかりにくいところで後から調べてみたら、英訳版第2作になってる 『Angels & Loners』が1995年出版のオリジナルのシリーズ第4作だった。こっちから読めばよかった…。まあそんなわけで、もしこの私立探偵Herediaを読んでみたいという人がいるならそっちからの方がおススメかもしれない。
以下は前述のように少々苦労して、結局Wikiのまんまじゃんで作ったRamón Díaz Eterovic/Herediaのリストなんだが、こういうものとしては珍しくオリジナルのスペイン語版も大半ぐらいのところでKindle版で日本からも入手できるので、 スペイン語に堪能な人はそちらを読んでみるのもいいかも。TVシリーズやグラフィックノベルにもなっているHerediaシリーズだけに、主人公の見た目も固まってて、それぞれの表紙に描かれているのでイメージしやすいかも。また、 グラフィックノベルがあるといっても、どーせ日本からは手が届かんもんだろ、と思っていたら、こちらもKindle版で入手可能!うーん、スペイン語読めないけど、どうすっかな?

■Ramón Díaz Eterovic/私立探偵Herediaシリーズ

  1. La ciudad está triste (1987)
  2. Solo en la oscuridad (1992)
  3. Nadie sabe más que los muertos (1993)
  4. Ángeles y solitarios (1995) 英訳版『Angels & Loners』(2018)
  5. Nunca enamores a un forastero (1999)
  6. Los siete hijos de Simenon (2000)
  7. El ojo del alma (2001)
  8. El hombre que pregunta (2002)
  9. El color de la piel (2003)
  10. A la sombra del dinero (2005)
  11. Muchos gatos para un solo crimen (2005)
  12. El segundo deseo (2006)
  13. La oscura memoria de las armas (2008) 英訳版『Dark Echoes of the Past』(2017)
  14. La muerte juega a ganador (2010)
  15. El leve aliento de la verdad (2012)
  16. La música de la soledad (2014)
  17. Los fuegos del pasado (2016)
  18. La cola del diablo (2018)
  19. Los asuntos del prójimo (2021)
  20. Imágenes de la muerte (2022)
  21. Dejaré de pensar en el mañana (2024)

●グラフィックノベル

  • Heredia detective: Narrativa gráfica (2011)


なんかしばらくぶりになってしまった、と思っていたが結果的にはそれほどじゃなかったか。個人的事情が云々とかブツブツ言ってたが、実は12周年とか言ってた2月ごろに親族が亡くなり、しばらくは忙しかった。なんかこんなところでお葬式があるので~、とか書く気がしないぐらいの近しいところで。
12周年というタイミングで、先にやってたり、書きかけである程度進めてたのもあって、実際には前の『He Died with His Eyes Open』以後ほぼ一か月近くどちらのサイトもほとんど触ってなかったぐらいの状況だったが、結果的にはいつも通りの一か月少々ぐらいの中断だったので、あんまり個人的なこと書くの好きじゃないし、こんなの書かなくていいかなとも思ったが、後々なんかのタイミングで見て、あまりにも知らんぷりして書いてると自分的にきつくなるかもと思って、少々「個人的事情」について書かせてもらいました。
3月後半ぐらいにはなんとか一区切りついたんだが、体力気力共に底を尽き、しばらくは力も出なかった。急なことというわけではなく、気持ちの整理もついてるつもりだったが、それでも人並みにショックだったんだろな。なんか力でないんで、ちょっと画とか描いて遊び始めたら、そっちが楽しくなって、そろそろこっちもやらなきゃと思ってもここまで描いとこうと一週間ぐらい引っ張り、そのタイミングでスマホが壊れて、機種変更に4~5日えらい苦労させられたりみたいな感じで、やっと復帰という次第。なんかそんな事情の真っただ中で、コミックのサイトの方が3周年になり、とことんやる気のない挨拶になってしまい、そっち見てる人には申し訳なかったんだが…。
そんなわけで、こちら的にはやっと再開ぐらいの気分です。書かなきゃならんこと山積みです。山積みにしながらぼんやりしているうちにも世の中や作家は動きます。なんかしばらく音沙汰ないと思ってたら、ちゃんと情報出してるところを見てなかっただけで、Eric Beetnerの2024年から始まってたCarter McCoy三部作が最近完結と最後になって知ったり。ああEric Beetner、今度こそはちゃんと書かなきゃ。他にもずっと目を付けてたけどなかなか書けなかったNick Kolakowskiの去年終わったJake Halligan三部作なんてのもあるしな。あれもこれも、とにかく書かなきゃと思うものは、先に積まれたのを片付けなきゃ手も付けられない。ともかく頑張らなきゃと思うけど、またなんかあるんだろうな…。人生そんなもんだよね。まず自分本体が倒れないようにだけは気を付けようぐらいがやっとなのかもね。



■Ramón Díaz Eterovic/私立探偵Herediaシリーズ
●英訳版

●グラフィックノベル (スペイン語版)

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