昨年8月には2年ぶり、やっとで本開催となったテキサス キラーコンでの受賞作発表ができたスプラッタパンクアワードでしたが、やはり2022年は業界全体もコロナ状況からの厳しい状態が続いていたようで、長編部門のみ6作品がノミネートされましたが、他部門は各5作品と若干のスケールダウンを余儀なくされている感じです。
以下が各部門のノミネート作品です。
2023 Splatterpunk Award ノミネート作品
【長編部門】
- Playground by Aron Beauregard (Independently Published)
- The Television by Edward Lee (Madness Heart Press)
- Faces of Beth by Carver Pike (Independently Published)
- Last of the Ravagers by Bryan Smith (Thunderstorm Books / Death’s Head Press)
- Mastodon by Steve Stred (Black Void Publishing)
- Ex-Boogeyman (Slasher vs The Remake) by Kristopher Triana (Bad Dream Books / Thunderstorm Books)
【中編部門】
- Charcoal by Garrett Cook (Clash Books)
- Grandpappy by Patrick C. Harrison III (Independently Published)
- Mr. Tilling’s Basement by Edward Lee (Deadite Press)
- #thighgap by Chandler Morrison (Cemetery Gates Media)
- Plastic Monsters by Daniel J. Volpe (Independently Published)
【短編部門】
- “Just Another Bloodbath at Camp Woe-Be-Gone” by R.J. Benetti (Independently Published)
- “Of The Worm” by Ryan Harding (from Splatterpunk Zine issue 13)
- “My Chopping List” by Stephen Kozeniewski (from Counting Bodies Like Sheep, The Evil Cookie Publishing)
- “Gutted” by Bracken MacLeod (from Splatterpunk Zine issue 13)
- “Jinx” by Bridgett Nelson (from A Bouquet of Viscera)
【短編集部門】
- Always Listen To Her Hurt: Collected Works by Kenzie Jennings (Blistered Siren Press)
- Mr. Tilling’s Basement and Other Stories by Edward Lee (Deadite Press)
- Horrorsmut by Christine Morgan (The Evil Cookie Publishing)
- A Bouquet of Viscera by Bridgett Nelson (Independently Published)
- Pornography For the End of the World by Brendan Vidito (Weirdpunk Books)
【アンソロジー部門】
- Human Monsters edited by Sadie Hartmann and Ashley Sawyers (Dark Matter Ink)
- Camp Slasher Lake, Volume 1 edited by D.W. Hitz and Candace Nola (Fedowar Press)
- Counting Bodies Like Sheep edited by K. Trap Jones (The Evil Cookie Publishing)
- Call Me Hoop edited by SC Mendes & Lucy Leitner, created by Drew Stepek (Blood Bound Books)
- Czech Extreme edited by Lisa Lee Tone and Edward Lee (Madness Heart Press)
【J.F. GONZALEZ LIFETIME ACHIEVEMENT AWARD】
- Monica J. O’Rourke
第6回となる今回、まず目につくのはこのジャンルではもはや巨匠ぐらいのポジションにあるエドワード・リー作品。長編、中編とそちらを含む短編集と、さらには共同編集のアンソロジーまでノミネートされている。 同時に、もう終わってしまったかと思っていたDeadite Pressからのリリースも。Deadite Pressについては復活か?とホームページも見に行ったのだが2021年にでた最後のところから更新はなかったのだが、 アマゾンで検索してみると、昨年あたり出ているは出ているがリー作品の復刻っぽいのだけ。こちらで責任感にさいなまれつつ手が回らず放置中の『White Trash Gothic』現行3作もDeaditeに収まったようで、それは よかったのだが…。この感じから見てDeaditeは完全復活とかいうわけではなく、エドワード・リーからの働きかけか話し合いによるリー作品限定というところなのだろう。こっからまた頑張るんで、そっち関連の 何とかしてもらえんかね。よっしゃ!そういうことならうちも協力しまっせ!的な。いくらかリー本人の出資とかもあったかも。そしてこっからまた頑張るリー先生のもう一つがMadness Heart Press。 2019年発足の新興パブリッシャーだが、既に多くの作品を出版しており、これまであまり聞かなかったが、リー効果により注目も高まるのかもしれない。なんかホームページ色々見てたら、Splatterpunk、 Folk & Religious Horror、Bizarroの他にExperimental Horrorなんてのもあり、結構気になる感じ。Experimental Horror的傾向なのがBizarroかと認識していたのだが、ホラージャンルも日々進化しとるのだね。
こんな感じで終わったと思ってたものが復活してきたり、新たな勢力が出現してきたりなど動きが激しいホラー系インディーパブリッシャー業界なのだが、昨年今年と落ち込んできているのが、一昨年 スプラッターウェスタンで大いに気を吐いたDeath’s Head Press。今年は唯一同シリーズ作品としてThunderstorm Booksとの共同出版によるBryan Smithの『Last of the Ravagers』がノミネートされているのみ。 ちなみにThunderstorm Booksというのはホラー作品のハードカバーの豪華版、サイン本など、プリント方向に特化したパブリッシャーらしく、『Last of the Ravagers』も現在出ているのはそちらのプリント版のみで、 またスプラッターウェスタンも昨年まではKindle版ではシリーズとしてずらりと並んでいたのが無くなり、多分売れ線かなんかのがバラで出ている感じに変わっている。とりあえず、Death’s Head Pressは スプラッターウェスタンシーズン2を準備中ということなので、期待して待ってみよう。結局3冊しか読めずにこの状況になってしまったがスプラッターウェスタン期待しとるんよ。
あと、ほんとにざっとなんだけど色々見てて気になったのが、アンソロジー部門のBlood Bound Booksからの『Call Me Hoop』。どうも同じ設定・世界観を使っていろいろな作家が書くという形のものらしく、これは シーズン1となっている。テレビシリーズを模した感じのこの形のものとしては、ずいぶん昔にリー・ゴールドバーグプロデュースの『The Dead Man』シリーズについて書いた他、クライム方向ではDown & Outが やってるのをなんかのついでに言及したぐらいなのだが、最近自費出版ぐらいのところでもある程度こちらの知ってる名前ぐらいのを動員してこれをやってるのをいくつか見つけたりして、結構気になってる。 この『Call Me Hoop』も含めてこの辺のシリーズ諸々、いつかまとめて書けるといいんだけど…。版元Blood Bound Booksは、最近TRPG部門も立ち上げたそうで、これからもなんか面白いことやってくれそうやね。
本当はもっと前に言及しなければいけなかったのだけど、話の流れで後になってしまって申し訳ないのが、J.F. GONZALEZ LIFETIME ACHIEVEMENT AWARDのMonica J. O’Rourke。この人このジャンルで100を超える 短編作品をあちこちで出しているスプラッタパンクの重鎮。主に短編作品というのは長編主体の作家に比べどうしても目立たないのだが、業界では深くリスペクトされている実力派作家らしい。従来のホラージャンルとは 一線を画すスプラッタパンクジャンルの女性作家の草分け的な評価もあるのかも。これまでのJ.F. GONZALEZ LIFETIME ACHIEVEMENT AWARD作家は一応邦訳作品があったのだが、Monica J. O’Rourkeさんに関しては、 翻訳されたアンソロジーに入っているものがあるのかもしれないが、とりあえず確認できなかったので、英語表記のままとしました。
昨年、今年とどうしても落ち込み傾向と言わざるを得ない感じのスプラッタパンクアワード。しかし、やはりこれはコロナ状況が大きく影響したものであるのは明らかだろう。ハードボイルド/クライム方面でも 今年はその状況下雌伏していた作家たちの新作が次々とアナウンスされていることは既に伝えたとおりである。こいつらの2023年の復活へ向けた動きも既に大きく始動しているのかもしれない。いくら小パブリッシャーが 倒れてもすぐに新たな者が立ち上がる不屈不撓のジャンルなのだ。今回リンクのためにアマゾンで調べた各作品はいずれも100を超えるレビューが寄せられている。インディーパブリッシャーの小説作品が、これほどの レビューを集めるのは生易しいことではない。このジャンルがそれだけの熱量を持っているということを示す如実な例だろう。こいつらは必ず復活し、外的要因による落ち込み以前の勢いをすぐに取り戻すだろう。 そしてこれまでに述べてきたように、たとえ低迷期であっても見るべきところは非常に多い。この中のいずれの作品がその中から突出し、次の時代への橋渡しとなるのかを刮目して待て!スプラッタパンクアワード 各受賞作の発表は、本年テキサス州オースチンで例年通り行われるキラーコン内にて8月12日ということ。発表されたらまたなるべく早くこちらにも掲載いたしマース。
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