さてまず画像の方ですが、今年もノミネート作品のアンソロジーの中から。『Polish Extreme』。Necro Publications発行のポーランド作家たちによるアンソロジーです。未知の国ポーランドのホラーシーンをリードする4人の作家によるアンソロジーとは、うむむこりゃあ読んでみたいもんだな、と思いましたが、よく考えれば米英のホラー作家のもさっぱり読めてないんだから私にとって全部未知の国やんと気付きました。いや、それでも読みたいけどね。カバーもかなり怖いんですが、こちらの出版にはかのエドワード・リーも深く関わり、前文と短編を一本提供しとるとのこと。先日書いたようにエドワード・リー作品布教の日本担当として何か高次元の宇宙意志っぽいものから任命されたと思い込んだ私なので、裏工作の一環としてこちらを選びました。明らかに不正なひいきですが、まあ私が何をやっても選考に関係するわけがありませんので、堂々とインチキをさせてもらいました。いやいや、いつまでも無駄話しとらんで早くノミネート作品に行け、という声が冥府の底からも聞こえてきましたんで、進みますです。こちらが2020年 スプラッタパンク・アワード各部門のノミネート作品です!
2020 Splatterpunk Award ノミネート作品
【長編部門】
- Carnivorous Lunar Activities by Max Booth III (Cinestate/Fangoria)
- Killer Lake by W.D. Gagliani and David Benton (Deadite Press)
- Reception by Kenzie Jennings (Death’s Head Press)
- Lakehouse Infernal by Christine Morgan (Deadite Press)
- Merciless by Bryan Smith (Grindhouse Press)
- Toxic Love by Kristopher Triana (Blood Bound Books)
- They Kill by Tim Waggoner (Flame Tree Press)
【中編部門】
- White Trash Gothic Part 2 by Edward Lee (Section 31 Productions)
- Saint Sadist by Lucas Mangum (Grindhouse Press)
- Weeping Season by Sean O’Connor (Uafas Press)
- How Much To..? by Matt Shaw (Self-Published)
- One For the Road by Wesley Southard (Deadite Press)
- Paradise, Maine by Jackson R. Thomas (Alien Agenda Publishing)
【短編部門】
- “Breaking the Waters” by Donyae Coles (from Pseudopod)
- “Angelbait” by Ryan Harding (from The Big Book of Blasphemy, Necro Publications)
- “Censered” by Christine Morgan (from And Hell Followed, Death’s Head Press)
- “Shoulder Pain” by Chandler Morrison (from Macabre Museum Magazine)
- “Param” by Susan Snyder (from Trigger Warning: Body Horror, Madness Heart Press)
- “Norwegian Woods” by Jeremy Wagner (from The Big Book of Blasphemy, Necro Publications)
【短編集部門】
- Dead Sea Chronicles by Tim Curran (Bloodshot Books)
- Various States of Decay by Matt Hayward (Poltergeist Press)
- Dawn of the Living Impaired, and Other Messed-Up Zombie Stories by Christine Morgan (Death’s Head Press)
- This Is A Horror Book by Charles Austin Muir (Clash Books)
- Dirty Rotten Hippies and Other Stories by Bryan Smith (Grindhouse Press)
- Resisting Madness by Wesley Southard (Death’s Head Press)
【アンソロジー部門】
- And Hell Followed, edited by Jarod Barbee and Patrick C. Harrison III (Death’s Head Press)
- The Big Book of Blasphemy, edited by Regina Mitchell and David G. Barnett (Necro Publications)
- Dig Two Graves, edited by Jarod Barbee and Patrick C. Harrison III (Death’s Head Press)
- Midnight In The Graveyard, edited by Kenneth W. Cain (Silver Shamrock Publishing)
- The New Flesh: A Literary Tribute to David Cronenberg, edited by Sam Richard and Brendan Vidito (Weirdpunk Books)
- Polish Extreme, edited by Edward Lee & Karolina Kaczkowska (Necro Publications)
【J.F. GONZALEZ LIFETIME ACHIEVEMENT AWARD】
- Edward Lee
まず、Brian Keeneの今回についての覚書から。ノミネート作品は各部門通例6作品なのですが、今回特に長編部門には優秀作が多く、特別に7作品をノミネートに選出したとのこと。他の部門も、前2回では6つに満たないものもあったのだけど、今回はいずれも6作品・作品集が選出されています。また、ちょっと名前だけからではよくわからないのですが、今回かなり女性の書き手が増えているとのこと。作家としてこのシーンに長く関わっているKeeneから見ても画期的な変化なのでしょう。更に、Keeneによると、今回の選考過程ではジャンルのファン、読者からの作品への推薦が著しく増大したことから、スプラッタパンク/エクストリームホラーの読者も確実に増大していることが感じられたとのこと。アワード設立の成果も着実に得られてきているようで、単なる外野の私としても大変喜ばしい限りです。やっぱりある種限定された読者ではあるだろうけど、ちゃんと中心を作って集結させれば一つの力となるのだぜ。その他覚書には、これまで審査員として貢献してきたRegina Mitchellが、編集に携わった『The Big Book of Blasphemy』がアンソロジー部門にノミネートされたため、今回は審査員から外れる旨の報告がありました。
今回のノミネート作品をみた私見による印象では、まず目につくのは新しいパブリッシャーDeath’s Head Pressの活躍。こちらは昨年1月Jarod Barbee (CEO)と Patrick C. Harrison III (主幹編集者)の二人によって立ち上げられたばかりですが、矢継ぎ早にアンソロジー、長編、短編集を放ち、中編以外の各部門でノミネートを果たしている、ジャンルでの今後の活躍が大いに期待されるパブリッシャーです。その他、Deadite Press、Necro Publicationsや昨年第2回より参戦のGrindhouse Pressといったおなじみのところからも優秀作がノミネートされています。新規ではほかに、先日少し触れたJeff BurkのSection 31 Productionsも参戦の他、初めて見るパブリッシャーの本も多く見られます。(今度もっと調べとくよ、ごめん…。)ただその一方で、第1回よりスプラッタパンクの名を掲げ、『SPLATTERPUNK FIGHTING BACK』などのアンソロジーを放ちジャンル隆盛に意欲を燃やしていたSplatterpunk Zineや、『YEAR’S BEST HARDCORE HORROR』シリーズなどでおなじみのComet Pressなどが、活動停止となってしまったようで名前のないところは寂しいところ。インディー・パブリッシャーは浮き沈みが激しいからなあ…。
長編部門では昨年の覇者Kristopher Trianaがまたもノミネート。『Toxic Love』はRedLine Bookの1となっているのだが、これは昨年2月からそれぞれ違う作家によって書かれた作品が一月おきに出版されたRedLine Bookシリーズの一冊らしい。その他、Bryan Smithも昨年に続き登場。結構今はGrindhouse Pressの看板作家なのかも。看板作家と言えば、Christine Morgan、Wesley SouthardあたりがDeadite Pressのそれなのかな。
中編部門にはエドワード・リー『White Trash Gothic Part 2』や、個人出版で頑張るMatt Shaw作品。Matt Shawも第1回からの常連かな?
短編部門のPseudopodって何なのかな、と思って調べてみたら短編ホラー作品を朗読して配信しているポッドキャスト。そんなのあるんだね。結構長くやってる、もはや伝統があるぐらいのところらしい。ノミネート作品「Breaking the Waters」はこちら(PseudoPod 666: Breaking the Waters & The Second Coming)
アンソロジー部門では、『Polish Extreme』以外にも注目作多し!『The Big Book of Blasphemy』はボリューム的にも収録作家的にも、現在のこのシーンを俯瞰するって感じのものかも。Death’s Head Pressの『Dig Two Graves』は既にVol2も発行されているリベンジテーマのアンソロジーということ。かなり勢いの感じられるDeath’s Headには今後要注目。その他クローネンバーグトリビュートアンソロジー『The New Flesh』もかなり気になるところ。
とにかく日本的にはあまりお馴染みでない作家ばかりなので、いくらかお助けになればとちょっと知ってる範囲で付け加えてみましたが、蛇足だったかニャ?2020 スプラッタパンク・アワード発表は例年通りテキサス州オースティンで8月7~9日にお開催されるキラーコンで。またその辺になりましたらなるべく素早目に受賞結果をお知らせする予定であります。
本年ノミネート作品は遂に一つも欠けることなくKindle版にて発見出来ました。海の向こうの遠いところの話でも、電子書籍発展のお陰でこんな風に結構参加できちゃう感じなったのは良いですよね。
●2020 Splatterpunk Award Nominees/Brian Keeneホームページより
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