【Book One】
Tales From The Farm
主人公の少年Lesterは、二人暮らしだった母が癌で亡くなって以来、叔父に引き取られエセックス郡の農場で二人で暮らしている。母が亡くなって以来Lesterは常にコミックスのサイドキックのようなマスクとマントを身に纏い、あまり友達もいない孤独な少年。叔父はそんな少年を心配しているのだが、なかなかうまく心を通わせられないでいる。ある日Lesterは、叔父に連れられて行ったガソリンスタンドで、そこで働く元ホッケー選手のJimmyと知り合う。そして、彼と親交を深めて行くのだが…。
【Book Two】
Ghost Stories
エセックス郡の農場で暮らす孤独な老人Lou。そろそろ人生の終わりを向かえそうな彼の許を訪れるのは、訪問看護の女性だけ。消えかかる記憶を手繰り寄せるようにして、彼は自らの長い人生を振り返る。弟Vinceとともに戦ったホッケーリーグの事。様々な後悔…。
【Book Three】
The Country Nurse
第2部に登場した訪問看護の女性の話と、1917年、雪に閉ざされた山奥の孤児院が火事になり、雪山を越えて避難する修道女と子供たちの話が交互に語られ、そして三部作に登場したすべての人々の物語がひとつにまとめられる。
アイズナー、ハーヴェイ両賞にノミネートされた、近年のもう「名作」という評価が決まっている作品です。Jeff Lemirieの画は、それはデッサン力などの面で上手いとは言えませんが、一見同じようにも見える中で、確実にその場、その場で表情をとらえ、この人は今どう思っているのだろう、この少年の目には何が映っているのだろう、と見つめてしまう素晴らしい画だと思います。このように、必ずしもクリエイターオウンドの作品でなければ実現できないとは思いませんが、やはりマンガ=コミックという表現において、画とストーリーは不可分のものだな、と改めて考えさせられます。登場する人々の様々な想いが、カナダ、エセックス郡の自然とともに染み渡るように伝わってきて、読後はいい映画を観たのと同じような気分にもなる素晴らしい作品でした。
Jeff Lemirieは1976年カナダに生まれ、作品と同じエセックス郡で育ちました。一旦は映画制作の学校に進みましたが、コミックの方が自分の表現にあっていると思いこちらの道を選んだそうです。2005年に『Lost Dog』という作品を発表した後、2008-2009年にこの『 Essex County』三部作を発表しました。現在は『Animal Man』『Justice League Dark』、そして昨年DC52へ移籍した『Constantine』などの作品でライターとして活躍する一方、Vertigoから『Sweet Tooth』『Trillium』、Top Shelfからは『Underwater Welder』などのクリエイターオウンド作品を発表し続けています。今後、確実にアメリカン・コミックの中心人物のひとりとなって行く作家でしょう。
版元のTop Shelfは、いわゆるインディペンデント系のコミックを数多く出版しているパブリッシャーで、他にAlex Robinsonや、『ダース・ヴェイダーとルーク(4才)』などでブレイクした(のかな?)ジェフリー・ブラウンの作品なども出ています。近年のアラン・ムーアの、アメリカでの版元でもあります。
元々は三部別々に出ていましたが、現在はそれらをまとめた500ページほどの完全版が出版されています。私はComixologyでデジタル版を読んだのですが、ぜひプリント版も手に入れたいと思っていたのですが現在は絶版で入手困難…、と思っていたら今回のために少しTop Shelfのサイトを見てみたら、近く再版されることになったそうです!とりあえずはKindle版のリンクを載せておきますが、プリント版が入手したい方はもう少々お待ちください。
※文中のクリエイターオウンドという語は、大抵は版権上の用語として使われますが、私の勘違いでなければこのような作品形態に使われることもあったと思うのですが…。あなり自信はありません。間違っていたらすみません。
●Jeff Lemirieの著作
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