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2016年11月30日水曜日

Happy! -重量級コンビによる異色ノワール・コミック-

あのグラント・モリソンと『Transmetropolitan』、『The Boys』などで知られる名アーティストDarick Robertsonのタッグによる2013年Image Comicsからの作品『Happy!』です。少し前の作品ではありますが、最近パイロット版の製作が発表され、再び少し注目も集まってきているところではないかな、と思われます。


【あらすじ】

クリスマスが近づく雪の夜。元刑事のNick Saxは仕事へ向かう。職を失い、堕ちるところまで堕ちた彼の現在の仕事はヒット・マンである。
今回の仕事はFratelli兄弟の暗殺。依頼の兄弟3人を殺害したところで、4人目が撃ってくる。Fratelli兄弟は3人じゃなかったのか?
兄弟最後の一人を追い詰め、銃を突きつけるNick。
「待ってくれ!助けてくれ!隠し金のパスワードを教えるよ!今じゃ兄弟最後の生き残りの俺しか知らないパスワードだ!」
そしてNickは兄弟最後の一人を射殺する。

殺害現場を後にするNick。だが、予定外の男の銃弾を受けた彼も、そのまま雪の中に倒れる…。

しかし、その男はNickが殺すべき男ではなかった。依頼者であるギャングのボスは、駆けつけた警察により逮捕され病院へと運ばれたNickへ向け、彼が兄弟最後の一人から聞き出したと思われるパスワードを聞き出すべく配下に指令を下す。

生死の境をさまよい、救急車で病院に運ばれるNickは、目の前に自分に呼びかける不細工なアニメキャラのような羽の生えた青いユニコーンの姿を見る…。
そして病院で意識を取り戻したNick。そしてそいつはまだ彼の目の前にいた。しかもそいつは彼の目にしか見えていないようだ。そいつはHappyと名乗り、自分と一緒にHaileyを助けて欲しいと言う。
しかし、その前にまずやらなければならないのは、パスワードを聞き出すためにボスが送り込んだ配下と警察を振り切り、この病院から抜け出すことだ!


そしてNickとHappyの珍道中が始まる、という展開。
まあ、まずこのあらすじを読んで誰もが思ったであろうことは、まるでディズニーのファミリー向けクリスマス・ムービーみたいじゃん、てとこでしょうがこれはちょっと違う。これはモリソンが稀代のダーティーでバイオレンスな迫力のある画を描けるアーティストDarick Robertsonと組み、その画から作り出される思い切りダークなノワール世界でそれをやったという異色作なのである。実際これはComixologyのAge Ratingでも17歳以上になっていて全く子供向けではありません。HappyというのはHaileyという女の子のイマジナリー・フレンドで、その女の子を助けて欲しいと、自分の姿が唯一見えるNickに頼むのですが、Nickの方はそんなもん知るか、俺は今自分で精いっぱいなのだ、他のやつを探せ、と手段を選ばない逃走劇を繰り広げます。Robertsonの素晴らしい画もあり、そちらの方にはかなりうるさい私でも品質保証のノワール作品です。そして最後はちょっと泣けるクリスマス・ストーリー。でも彼女にクリスマス・プレゼントで贈ったら100パーセント怒られるだろうね。
最初に書いた通り、パイロット版の製作も発表された本作ですが、ちょっと詳細についてはあまりわかりません。たぶんケーブルTVや映像配信系でのシリーズ化を目指しているのだろうけど、それでもこの血とゲロと小便の嵐のこの作品がそのまま映像化されるのは無理だろうとは思いますが、ダーティーでタフなNickのキャラクターをうまく生かしたものでめでたくシリーズ化されていつか観ることができたらいいですね。ポシャってもパイロット版だけでも観る機会があるといいなあ。

作者コンビについては、まずグラント・モリソンについては特に今更言うこともないか。と言いつつもこのブログではモリソン初登場なのですが…。ただ、ビッグネームではあってもオリジナル作品については『We3』ぐらいしか翻訳もないモリソンでありますし、何かいろいろ紹介していければなと思っております。とりあえずあの超異色問題作『The Invisibles』の研究本『Our Sentence is Up: Seeing Grant Morrison's The Invisibles』というのを割とお手頃価格でKindleで見つけたりしましたので、その辺に取り組んでみようかと。これ(現在\594)とモリソンのDC初期あたりの作品についての本『Grant Morrison: The Early Years』(現在\368)はこの手の本にしてはずいぶん安いのでセールなのかも。一応下のリストの方に入れときます。
Darick Robertsonは私の最も好きなアメリカのコミック・アーティストの一人です。『The Boys』の時に散々言ったので、もう何も思いつかん。代表作の一つであるウォーレン・エリスとの『Transmetropolitan』については超有名作なのでちょっと気が引けるのですが、日本的にはあまり資料もないようなので近日中にちょっと書いてみる予定です。最近の仕事としては、なんとValiantの遂に再開される『Harbinger Renegade』がRobertsonの画で!…いや、中断になるところまでも進んでいないのですが…。Valiantについても続きを早くやります…。なんか宿題ばっかりじゃん…。

というわけで、今回はまた少し遅れてしまったのだけど、ちょいと頑張って2本書いてみました。何とかなるべくたくさんの作品を紹介したいといつも思っていて、2本立てみたいのも考えてみたのだけど後々検索とかしにくくなるだろうなと思い、少し短めな感じで一度に2本という方向でやってみました。全く根性とかとは無縁で1つ書くとすぐ気が緩んでしまう私ゆえ、2本並行して書くという手段により何とか達成することができました。結局遅れたけど…。ここしばらくは2000ADにかかりっきりで手が回らなかったり、いつ終わるのかわかんねーほど長くなってしまったものをダラダラ書いてたり、寒くなるとすぐに体調を崩したりやる気をなくしたりする私ですが、何とか一方では数を目指し、なるべく沢山の作品について書いていきたいと思う次第です。


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