2016年11月17日木曜日

Anonymous-9 / Hard Bite -車椅子のヴィジランテ登場!相棒は猿!-

あまりにも遅ればせながら、やっとAnonymous-9作『Hard Bite』が登場です!
少し前(と思っていたらもう5か月前…)のDave Zeltserman / The Julius Katz Collectionの時にちょっと触れた、随分前にフリーで手に入れた短編を2本読んでみるというのをやった時のもう1本がこのAnonymous-9の短編3本が収録された『Just so You Know I'm not Dead』だったわけなのですが、一読しそのアノ9姐さんの筆力とでもいうものに圧倒され、何とかこれを早く読まねばと思いつつやっと今回たどり着いたのがこの『Hard Bite』であります。

ではその『Hard Bite』とはいかなる作品なのか?


男の名はDean Drayhart。轢き逃げ事件に遭い愛する妻と娘を失い、そして自らも両足、片腕、腸の一部を失い車椅子での生活を送っている。もはやそれほど長くは生きられないだろう。だが、轢き逃げ犯への怒りは消えない。全ての轢き逃げ犯への!そして彼は療養生活の陰で様々な手段を使い逃げ延びている轢き逃げ犯を割り出し、そして暗殺する。残り少ない命が燃え尽きるまで!それがこの物語の主人公である。
そんな彼を支える相棒が介護猿のSidである。介護猿の需要は多く、待っていてもなかなか手に入らないという状況で違法に入手されたこのSidは他の介護猿にはない鋭い牙が残されている。体の自由が利かない主人を様々な局面で助けつつ、ある時はその命令一下敵の首筋にその牙を突き立てる!Hard Bite!
そしてもう一人、彼が車椅子生活になってから出会った恋人である娼婦のCinda。彼女もDeanの秘密の顔を知る人物である。彼のヴィジランテ行動には直接は関わらないものの、何かとDeanを助けてくれる。

Doug Coltson刑事は積み重なる未解決殺人事件に頭を悩ませていた。そして今夜もまた事件だ。Lakewood Parkの駐車場の植え込みの中で倒れていた被害者の首には死因となった謎の傷。吸血鬼?不穏な考えがColtsonの頭をよぎる。そしてすぐ近くでは闘犬場で負け犬を屠殺する係りの男が逃げた闘犬に噛み殺される。意味もつかめないうちにまた次の事件…。しかしColtsonは優秀な鑑識課員や相棒の女刑事Leoneらの助けもあり、次第にその中につながりを見出して行く…。

そして、警察の目をもかいくぐるようにDeanに殺害された一人の男の遺体がメキシコへと運ばれる。その男は偽装された身元でアメリカで暮らしていたメキシカン・マフィアの息子だった。刑務所で夫が亡くなった後、代わってトップとして組織を動かしてきた母親Orellaは激怒する。自身の探索のためアンダーグラウンド社会とも関係を持っていたDeanは、そのつながりからマフィアに身元を特定される。そしてDeanに死の手が迫る!


物語はまず主人公Deanの一人称から始まります。このような境遇にある主人公ではあるのだけど、その語りは悲壮というよりはユーモラスな感じで、自分の今の状態を笑い飛ばす感じ。そしてその後、刑事やマフィアの視点による3人称のパートが加わり、入れ替わりながら物語は進んで行きます。
そしてこれがどのような作品かというと、何の但し書きの必要もなくあのマック・ボランにも連なる良質のヴィジランテ・アクション・ノベルというところです。冒頭から続く探り当てた轢き逃げ犯の暗殺、そして次第に迫ってくるマフィアと警察による追跡がスピーディーで迫力あるタッチで描かれる。なぜこのような設定でそんなことが可能なのか。それこそがアノ9姐さんの「筆力」というものではないかと思うのです。
基本的には自分は筆力だとか言霊だとかなーんか定義が曖昧かついかがわしいにおいのするもので作品を語るのは好きではないのですが、このアノ9姐さんには自分の能力ではそんな風にしか説明できないものがある。『Just so You Know I'm not Dead』収録の「Dreaming Deep」ではラブクラフトとは全く異なるスタイルでありながら完璧に現代にクトゥルフ世界を再現し、このような特異な設定でアクション・エンタテインメント作品を作り上げる。そこにはもはや小手先のテクニックを超えた能力があるとしか言いようがない。そんなわけでここではとりあえず仮にでもこれを姐さんの「筆力」と呼ばせてもらいます。更に今回の作品中でも警察パートだけ抜き出してもかなりよくできていて、捜査物の警察小説とか書いても凄いのができるんじゃないか、とかまだまだアノ9姐さんの実力・「筆力」は計り知れない。恐るべしアノ9姐さん!絶対に読むべし!

というもはや現在のこのシーンでは必読作家の一人であるアノ9姐さんなのですが、ちょっとここのところ活動休止状態…。前述のクトゥルフ短編を中編化したらしいUncanny Booksからの『Dreaming Deep』が昨年4月に出たのが現在のところ最新作。(Uncanny Booksでは他の作家も加えてこちらを新クトゥルフ物としてシリーズ化する意図だったようだが、その後は不明。アマゾンでUncanny Booksとか検索してみてもマーベルのUncannyナントカが山のように出てわからん!)ホームページもそこまでで、まあ作家のホームページなどは放置状態のものが多いけど、ツイッターも今年お正月ごろのが最後となっていたり。もしかしてどこか身体を悪くしてしまったのでは、と心配しております。今年になってからの活動がDown & Outへの移籍だけというところなのだが、しかしそれは今後の作家活動継続への意志と見るべきでしょう。こちら極東辺境の一介のチンピラ・ファンで御座いやすが、姐さんの一日も早いご復帰を末席で心からお待ちしておりやす!

ちょっと順番が後になってしまった感じですが、作品についてもう少し。こちらの作品どうも原型となる短編があるそうで、そちらは短編集『The 1st Short Story Collection』に収録されているそうです。色々な描写から、多分轢き逃げ被害者かどうかは別としても、作者の身近にこういう大変な境遇の人がいるのだろうと思います。主人公Dean Drayhartについては、どこかに寄りすぎることもなく読者が好感を持ち、共感するところも多いような一人の普通の人物として描かれています。そしてこの作品シリーズとして第2作『Bite Harder』が2014年に発表されています。まだそれほど多くはないが、その他の作品についても必読!あっしもなるべく早く読むでやんす!

そしてこの作品の版元についてですが、またしてもまず訂正。以前こちらのデジタル版は英版がBlasted Heathで米版がDown & Outとか書いてしまったのですが、そちらは間違いで現在はデジタル版はBlasted Heathのみの販売となっています。Down & Outの方にデジタル版の表記があったのでそちらからも出てるのだと思い込んでしまったのですが、よく見たらリンクは張ってなかったので、そちらの販売ではないがデジタル版もあるというだけの表記だったのでしょう。Blasted Heathについてはもう散々書いてきているのですが、こういう形になるのもやっぱりAllan Guthrieさんの人望の厚さなのでしょうね。Down & Out Booksについてももう結構おなじみだと思いますが、ここで一応ちゃんと書いておくと、2011年フロリダ タンパにて設立。最初はCrimespree Magazineのデジタル販売から始め、アンソロジーなどを経て最近急成長、とちょっと雑ですがこんな感じです。現在は気鋭の作家を次々と集め、注目作を出版中。日本でも文春文庫から翻訳の出たロノ・ウェイウェイオールも最近参入の一人です。とにかくこのDown & Out BooksとかPolis Booksとか280 Stepsとかについてはもう片っ端から読まねば、と思っている次第なのですが、まだほとんど手を付けられていない状態で…。何とか努力いたしますです。

Anonymous-9ホームページ

Blasted Hearh

Down & Out Books


【その他おしらせの類】
なんと早くもアンソニー賞受賞のクリス・ホルム『The Killing Kind』の翻訳が!邦題『殺し屋を殺せ』。まあ昨年9月に出てた本なので版権を取得した後ノミネートされ、賞をとるか?と期待して待っていたところなのでしょうね。よかったね早川さん。そろそろ原書を買おうかと思っていたタイミングだったので助かったっすよ。どうも雑読み雑感想で通気取りが横行しがちなこのジャンル、期待の新作家遂に上陸!を保護するためにも最優先で読んで感想を書くつもりであります。
えーと、それから以前にタイトルを上げた『ガール・セヴン』なんですが、「女子の女子のうるさい」とか書いちゃってごめんなさい。ほんとに女子の女子ので私に関係ない本でした。キャラで動く話なので、女子の他にもアニメやラノベを楽しめる人ならいけるかな、というところでしょうか。まあブリティッシュ・ノワールへの待望の気持ちもあって勢いでタイトルを載せてしまったので一応書いときました。以後責任持てるかわからない本についてはやみくもに書かないように気を付けていきます。載せられた方も妙な事かかれりゃ迷惑するだけなんだし。結局自分に合わない本を読んじゃったなどというのは自己責任の事故ですので、不必要にこき下ろすような下品なことは控えますが、ただ翻訳については、原文にあるのかも怪しい特定の人たちへの明白な差別表現とも考えられる「バーコード頭」というような言葉が無造作に使われているのを見ると、その存在ゆえに世界から負のエネルギーを被るのは女性だけではないのではないかなという印象を持ちました。べ、別に自分の頭髪に危機を感じてるから言ってるわけじゃないんだからねっ!どーせ人間見た目が70%で残りはタンパク質やミネラルなんだろっ!ちぇっ。
まあなんだかんだで『熊と踊れ』はまだ少しなんですが、途中でも明らかに傑作。こーゆーのに関しては色々権威も信用もある人たちが誉めるだろうし、空気読みの「である系」もそこに従うところでしょうから別に私がどうこういうものでもないでしょう。でもそーゆー先生がスルーしちゃって適当な悪評ばかりが横行しそうな『殺し屋を殺せ』、『オーファンX 反逆の暗殺者』といったあたりには、この一切空気もバーコードも読まない誰にでも見境なく吠える犬が熱く語って行くつもりであります。わんわん。ああ、『カルテル』読めるの来年かも…。

ドゥエイン・スウィアジンスキーKindle版が少しお得セール開催中!この間までペーパーバック定価並みの1800円ぐらいだった未訳作品『The Wheelman』、『Expiration Date』の2作を含むスウィアジンスキーKindle版が800円台ぐらいで販売中です。まあ800円台ではそれほど安くもないんだが。でももしかするとこれは現在のMinotaur Booksの版権切れ前セールという可能性もあるので、このチャンスを逃すとKindle版が手に入らなくなる恐れもあります。Mulhollandに移ったとしてもあそこは日本ではKindle売ってくれないし。そうでなくても少ししたらまた元の値段に戻るだけ。スウィアジンスキーをKindle版でとお考えの人はこの機会に買っておくべし。何百回でも言うけど『The Wheelman』はケイパー小説近年の大傑作で読まないと損するよっ!『Expiration Date』もいずれ読んで書きますが、絶対面白いのは間違いなし!

最後にまた読書系アプリの紹介です。まずはMystery Weekly Magazine。実はこれアマゾンのKindleのおススメで来て、どういうところなのだろうと調べてみたらアプリもあるということなのでインストールしてみました。まだ創刊されて1年と少しというところのようです。Weeklyとはいうものの現在のところは月刊で発行中です。Weeklyは目標なのか?こちら前に書いたEllery Queen Mystery Magazineと形が同じじゃん、と思ったら、どちらも単体のアプリは出ているけど大手BookstandのMAGZTER傘下で販売されているということでした。Ellery Queen Mystery Magazineと違ってこちらは日本でもKindle版が買えるので、辞書も使えるしそっちで読めばいいかと思うけど、とりあえずあるとなんかうれしいのでインストールしてみてはいかがでしょうか。
続いてJonesin’- Daily short fiction。というのがアプリの名前だと思うのだけど、Great Jones Streetというところがやっています。Spotifyで音楽を聴いたり、Netflixを観たりというように手軽に新しい優れた短編を見つける、というのがコンセプトだそうです。まだ始まったばかりで現在出ているのはまだベータ版で、ただ作品が並んでいるだけで特別な機能などは何もありませんが、作品にはそれぞれカバーがつけられて、結構たくさんあって日々追加されている様子です。とりあえずは現在のところはとてもシンプルで、カバーをタッチすると特にダウンロードなどもなく作品のページに移動し、下にスクロールしながら読むというものです。ジャンルは幅広く何でもあるようですが、現段階では整理されておらず、カバーで推測するしかないようです。今後どういう形で有料化されていくのかも不明ですが、ベータ版の現在のところは全部の作品が無料で読めます。まだまだ分からないことばかりで、自分の興味ある作家を見つけるのも難しいかという状況ですが、とりあえずは期待して行きたいところですので、なるべくは目を離さず何か続報がありましたらお伝えいたします。
あとOolipoの方については相変わらずなかなか読めるものが増えてきません。頑張れ!

Mystery Weekly Magazine

Great Jones Street


またしても少々遅れてしまいましたが、とりあえずは何とか頑張って続いております。11月も半ば過ぎでそろそろ年間ランキングとかも決まってきたのだろうな、と思ったりしますが、今年出たジョニー・ショーの『負け犬たち』はどうなったのでしょうか。私も原書Kindle版をせっかく持っているのでまずそちらを読みたいという事情で未読ですが、ジョニー・ショーの作品が面白くないなどということは100パーセントありえないので、ランキングに影も形もなくても絶対読んでねっ!では世界から被る負のエネルギーにも負けず、また頑張りますです。


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■Hard Biteシリーズ


■中編


■短編集



●ドゥエイン・スウィアジンスキー未訳



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