2015年11月1日日曜日

Fun and Games -ドゥエイン・スウィアジンスキーCharlie Hardieトリロジー開幕!-

遂に、というかやっと再登場のドゥエイン・スウィアジンスキーのCharlie Hardie三部作第1作の『Fun and Games』です!
近年のハードボイルド/ノワール/クライム・ノヴェルの中でも最も活きのいい、最注目で作品を追って行かなければいけない作家と思いつつ、こんなに遅れてしまったのはただ私がまだまだ洋書を読むのが遅いだけじゃなくて少し事情があります。ずっとこのブログでは小説に関してはKindleで発売されているものを扱ってきたのですが、この作品については現在日本ではKindle版が販売されておりません。確か5月ぐらいまではあったと思うのだけど、なんだか気が付いたら無くなっててそのうちまた出るだろうと思っていたのだけどずっとそのまま。どうも版権が移動したためらしくて、そのため現在はMalholland Books発行のこのCharlie Hardieトリロジーと最新作『Canarry』はアメリカ国内以外ではKindle版は販売されていないようです。どうしたものかと困りながら日々を過ごしていると、ある日天からフランス貴族階級の声が。

「Kindle版が無いならプリント版を読めばよろしいのに」(CV:ガチャピン)

そーかその手があったか!気付かないのはお前だけだっ!というわけでプリント版を注文し(意外とKndleで出てたのより安かったり)やっとのことで読み始めたのでした。やはりどこでもすぐに辞書を引けて便利なKindleなのだけど、まあそれほど辞書に頼らなくてもプリント版でも読めるようになってめでたしめでたしなのだけど、そんな事情でずいぶんと意気込みよりも遅れてやっとの登場となったわけでした。まあ、色々と外国の本を読むのは厄介ですね。というわけで『Fun and Games』です!

ではまず、この作品と続く3部作の主人公であるCharlie Hardieとは何者なのでしょうか?
少し前まではフィラデルフィアで警察に協力する仕事をしていたが、ある事件をきっかけに今はその仕事から離れている。現在の仕事はハウス・シッター。大金持ちが旅行などでしばらく自宅を空けるときその留守宅に滞在して盗難や災害から邸宅を守るという仕事。元警察関係の仕事をしていたという信用もあり、口コミで仕事が途切れることはない。いざとなれば全力で責任を果たす人物だが、以前の仕事を辞める原因となった事件のせいで無気力になり、その仕事で滞在中も一日中映画のDVDを観ながら酒を飲んで暮らしている。
そしてこのCharlie Hardieが今回はある大物の映画のサウンド・クリエイターの邸宅を守るためL.A.へ行き、そこで大変な事件に巻き込まれて行きます。以下がそのさわりのあらすじです。


彼女はデッカー・キャニオン・ロードで事故に直面していた。ウェストレイク・ヴィレッジまでの12マイル、ヘアピンカーブに次ぐカーブ。ルート23から入ったところから追い込みをかけてきたシボレー・マリブ。スピードを落とすことはできない。謎の追走車にぴったりと張り付かれたまま彼女は危険なカーブに次々と突入して行く。
彼女の名はLane Madden。女優。様々なストレスからちょっとした気晴らしに車を飛ばしていただけなのに…。

合衆国内における自動車事故の死亡者数は、年間43200人。

マルホランド・ストップの信号で彼女はなんとか難を逃れる。悪質なイタズラだったのだろう。自分を殺そうなどと企んでいたわけではないのだ…。

だが、彼女の殺害を企むチームはひそかに彼女の動向を窺っていた。あくまでも事故に見せかけて…。そして、次のシナリオが動き始め、Laneは再び危機に陥る…。

空港に到着したCharlie Hardieは早速最初の災難に見舞われる。荷物受取所で待てど暮らせど彼のスーツケースは現れない。幸い最も大切なものを入れたバッグは、いつものように肌身離さず機内に持ち込み無事だ。紛失届を出し、レンタカーを借り、とりあえずは今回の仕事先に向かう。

依頼人のサウンド・クリエイターとは先方の出発前に会い、直接鍵を渡されるはずだったのだが、急遽予定が変更になりすでに出発していて、鍵は郵便受けの中においていったとのこと。…だが、無い…?やむなくHardieは道を探し、屋根によじ登りそこから広いベランダに降り、邸内に入る。
とりあえずは点検がてら邸内を見て回るHardie。だが、そこに突然邸内に潜んでいた謎の人物がマイクスタンドを振りかざし彼に襲い掛かる!その人物こそ前夜、デッカー・キャニオン・ロードで危機に陥っていた女優、Lane Maddenだった!?


と、ちょっと書きすぎてしまったような気もしてしまうが、まだほんのさわりでこれからめまぐるしくストーリーは展開して行きます。とにかく次から次へと意表を突く展開を畳み掛けて楽しませてくれるスウィアジンスキー作品なので、本当は全然内容を知らないまま読んでもらうのが一番なのですが。ちょっとどこから話したものか迷ってしまうのだけど、とにかくこの人は上手い!派手なアクションシーンと怒涛のように疾走するストーリーに押されるように読んでしまうのだけど、実は緻密な構成で組み立てられていて本当に「読まされる」という感じ。そして彼の得意技であるユーモアは今作は特に冴えていて、これはもう「笑える」を強調してもいい作品ではないかと。

実はスウィアジンスキーの得意とする手法の一つはわりと昔からあるものだったりします。登場人物が絶体絶命のピンチに陥るが切り抜ける。登場人物が確実に死んだと思われる状況に巻き込まれるが、実は生きていた。などというもの。しかしそこにスウィアジンスキー流のアレンジがあり、登場人物が絶体絶命のピンチに陥る→死ぬくらいのダメージを受ける→が切り抜ける、とか、登場人物が確実に死んだと思われる状況に巻き込まれる→本当に死んだぐらいのダメージを受ける→が、実は生きていた、などとなるわけです。で、そうなると本当に死にそうになるような流血だったりエグイシーンが書かれるわけで、この辺の味の濃さが「暴力的すぎる」とか解釈されて日本の薄味好みの「エンターテインメントファン」に敬遠されて翻訳がストップしてるところなのでしょうか。
スウィアジンスキーのこの手法はコミックでも顕著で、お馴染みValiantの『Bloodshot』でも、この人主人公が不死身だからってホント無茶苦茶するよなあ、と思っていたらダークホースの『X』(もう少し読んだらなんか書きます)でも主人公Xがかなり死ぬくらいの目に遭ったいたりもします。もしかしたらコミックのライターをしているうちにこの手法を加速させていったのかもしれないなと思い、早く『Cable』とかにもさかのぼって読んでみないとな、と思っていたりもします。ちなみにCableというのはXメンのサイクロプスの息子で、オッサンではなく胸についている赤ちゃんが本体です。というウソを画像を見ているうちに思い付きました。いつか『Cable』の事を書くときにまた使いまわそう。本当のところを知りたい人は自分で調べてみよう。ややこしいぞ!

さてこの作品の主人公Charlie Hardieですが、上のキャラクターについての文章を読むと暗くて沈鬱な感じなのかな、と思うと意外にすっとぼけた感じの人だったりします。というよりすっとぼけた感じに描かれているというのが正しいかな。色々と過去に抱えているため、自殺願望というほどではないけど、どこか最後の最後では少し生命への執着が薄いところもあり、何度も死にそうになり、ああ、今度こそ死んだな、と諦めかかるのですが、まだ生きていて、そっか、生きてんなら仕方ないからまだ頑張んないとな、みたいに立ち上がる人です。前述のスウィアジンスキーの手法が一層加速された本作では、主人公Charlieは何度も瀕死の目に遭いその度に立ち上がって行くのですが、その様子はもはや不屈の男、というよりは不死身ギャグといったものになって行きます。

そしてスウィアジンスキーの文体には、第三者の語り手がいて物語を語っているような独特の「スウィアジンスキーノリ」みたいなのがあってそれがテンポよく読ませてくれたり笑わせてくれたりとても楽しく読ませてくれます。『The Wheelman』でも今作でもその文体だったので翻訳された2作もそうだったのだろうと思うのですが、その辺はあまり活かされていないように思いました。まあ難しいんだろうけど。自分もその2作は原文を読んでいないのではっきりしたことも言えないけど。
ついでに前に中途半端なまま放っといたその邦訳2作について少し書いておきます。まあこの天才の作品なので薄味に慣れ過ぎちゃった偏食の「ミステリファン」以外の人なら2作とも楽しめることと思います。
ただ『メアリー・ケイト』については『The Wheelman』のかなり重大なネタバレがされているので、できればそっちを先に読んだ方が良いと思います。自分的には『The Wheelman』はもう十数年に一冊ぐらいのケイパー小説の大傑作だと思っているので、悪党パーカーとか好きな人は絶対に読まないと損ですよ。
『解雇手当』については、前2作に比べて少しキャラクターに焦点を合わせにくいかな、と読んだときは思ったのだけど、今回『Fun and Games』を読んだ後では、ずっと言ってる→本当に死にそうなヒドイ目に遭う手法を先鋭化させて行く過程のちょっと重要作ではないかな、と思っています。

と、また無駄なウソやら含めて長々と書いてきたのですが、毎度のことながら本当に好きな作品になると言いたいことが多すぎて無茶苦茶になって今ひとつちゃんと伝わりにくいものになってしまったのではないかと心配しております。うーん、まだ言いたい事があるような…。ただとにかくこの作品ドゥエイン・スウィアジンスキー作『Fun and Games』は私がとても楽しく読んだ絶対おススメの一冊です!そこだけは伝わりました、かな?

さて、今作『Fun and Games』で散々な目に遭ったCharlie Hardieですが、最後の最後にまた大変なことになります。この続きは次作『Hell and Gone』で明らかに!と言ってもとにかく3部作!まーた1年後なんてことにはならずすぐに読む予定です!とにかく年内には。
しかし3部作。なーんか気になる3部作があちこちにあってあっちもこっちも早く読みたいなあと思うばかり。まずはもちろんケン・ブルーウン先生のホワイト・トリロジー。そしてイェンス・ラピドゥスのアムステルダム3部作はやっぱりもう英訳版を読むしかないのかなあ。どう見たってあそこから面白くなるのに。気にしてるの私だけなんでしょうか?そして近年再評価機運が高まっている様子のテッド・ルイスのジャック・カーター・トリロジー。故人なのををすっかり忘れていて、最近よく見かけるので新作出たんかと思っちゃいました。まあこれは作者が亡くなって3作しか書かれなかったからトリロジーになっているわけだけど、ジャック・カーター氏のその後は知りたいよねえ。他にもまだ全く正体不明のMalcom Mackayのグラスゴー・トリロジーとか読まねばならない3部作は山積みなのです。とにかく3部作はなるべく間を空けずに3作読むこと。まずはこのCharlie Hardie3部作!『Hell and Gone』、『Point and Shoot』へと進むのだっ!


ああ、やっぱり重要なことを忘れてた。実はこのCharlie Hardieシリーズにはオリジナルのコミック版があります。と言ってもおそらく小説の刊行に先駆けて宣伝用に作られたと思われる8ページほどの短いものですが。タイトルは『Hardie vs The Fire』。内容は『Fun and Games』の最初の方で少し語られる以前ハウス・シッターの仕事で山火事から依頼人の貴重品を救った時の事。Charlie Hardieという人物について少しわかる感じのものです。こちらはComixologyでフリーで読むことができます。(多分アカウントだけは必要)Home→Browse内Publisher→Creator Ownedで進むのが一番見つけやすいと思います。元々は出版社を通じて創られたものかもしれないけどComixologyとは取引のないところなのでスウィアジンスキーの自費出版という形で出ているのではないかと思われます。現在Comixologyでは自費出版的なものはSubmitの方になりますが、これが出されたのはそれができる以前なのでCreator Ownedのところにあります。

●Duane Swierczynski


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