2015年8月9日日曜日

BLUE -オーストラリアのクソガキ『スタンド・バイ・ミー』-

なんだか色々と個人的なこだわりで力が入り過ぎて少し時間的にもきつかったりというのが続いて、ちょっと短く書けるのをと思い何となく書く機会が無かったこの作品をやってみることにしたのですが、夏バテでダウン。今週もやっとでなんとか力を出してという感じですがなんとか頑張ろう。Top Shelfから発行されているオーストラリアの漫画家Pat Grantの『Blue』です。

オーストラリアの田舎町Boltonに住む悪ガキChristianは、仲間のMuck、Verne(女子)とともに学校をさぼってサーフィンに出掛ける。ところが海は大荒れ。やることの無くなった彼らは、途中で出会ったクラスメートから聞いた事故の現場を見に行くことにする。町を通っている鉄道の線路の先で人が轢かれたというのだ。線路を歩いて事故現場へ向かう3人はあちこちで明らかに人間と違う異様な風体の者たちを見かけ始める…。

冒頭その時点からずいぶんと年月が過ぎ、中年となったCristianが登場します。町にはその異様な姿の宇宙人なのか、船で現れたようなので海から来たものなのか、人間のような顔をしているけどひょうたん型の身体からタコのような柔らかくて本数の多い手足の生えた生き物があふれすっかり占領されています。どうやったのか彼らはその町の地所を買占めのさばり、麺類を食べてはそこらじゅうにごみを散らかし、壁を青い落書きで埋めていきます。Christianの仕事はそんな町を掃除する事。彼らの落書きで埋められた町の壁を白いペンキで塗り直して行きます。仕事とは言っても、同僚もいないし、どこかに雇われているという様子も描かれていないのでもしかしたら自発的なボランティアでやっているのかもしれません。謎の生物”Blue”達はそんなChristianに一切構うことはありませんが、ペンキを塗られた壁にはすぐに新たな落書きを始めます。

Christianの回想として語られるこの物語は、誰でも知っているスティーブン・キング原作の『スタンド・バイ・ミー』ととてもよく似ているものですね。作者Pat Grantはその原作小説が書かれた1982年生まれで、この作品の舞台となっているようなオーストラリアの田舎町で生まれ育ち、子供時代に同じような事件があり映画のように友達と線路を歩いてその事故現場を見に行ったという経験があるそうです。『スタンド・バイ・ミー』の方は線路を歩いて行くだけで鉄道事故ではなかったと思うけどその辺の細かいところはまあいいか。原作小説もずいぶん昔だけど読んでいるはずだけど、映画もここしばらくは観ていなかったりであまり詳しい比較とかできないのだけど、それもそれほど重要でもないかなと思います。単行本のあとがきにも成長してからこの話を知って、自分も同じような経験があり、それは子供時代の重要な想い出の一つで作品にしてみたいと思ったというようなことが書かれています。

Boltonというのは架空の町だそうだけど、作者が生まれ育ったのも同じような田舎町で、子供時代は毎日サーフィンをしたり、鉄道の線路の周りが遊び場だったということです。この作品の主人公たちは、アボリジニの絶対言ってはいけないような蔑称を大声で言ってケタケタ笑うようなクソガキで、オヤジは飲んだくれて昼間から寝てるし、途中で会うやつらもろくな奴じゃないし、ホントにいいところの何もないような町です。でもだからと言ってわけのわかんない奴らに好き勝手に変えられちゃったり無くなったりしていいもんじゃないんだよ、これは俺たちの町なんだから悪口を言ってけなす権利だって俺たち以外にはないんだよ!というようなのが作者の想いではないでしょうか。謎の生物”Blue”に象徴されるのは具体的な外からの人間とかよりもっと希薄な空気とか時間とか、それでいて抗うこともできずこちらを全く無視して変化を進めて行ってしまうものではないかなと思います。
Christianはなんとか町を元に戻そうと白いペンキを塗り続けていきます。でも元々が白ではなかったものにいくら白いペンキを塗っても元には戻らないのですよね。

この約100ページの作品は、プリント版の他にComixologyから3ドルほどで読むこともできるのですが、Webコミックとしても公開されていて無料で読むことができます。プリント/デジタル版単行本には他に作者によるあとがきとオーストラリアのコミックについての紹介などが載っています。作者Pat Grantに関しては、現在自身のホームページが壊れてしまって閉鎖中でもあり、詳しい情報は分からないのですが、今のところ出版されている作品はこの『Blue』だけのようです。閉鎖中のホームページに掲載されているイラストが女性の画だったのでもしかしたら女の人だったのかな、と思ったのですが、画像検索をしてみたら男性の写真が出てきました。ヒゲがあるので男性で間違いないと思います。独特の雰囲気とリズムで心に残る作風で、また作品が発表されたら読んでみたいアーティストです。頑張ってほしいものだ。

というわけであまりに虚弱でなんとかかんとかという感じですが、もうすぐ夏休みだしなんとかまた頑張りますのでよろしくです。


Blue by Pat Grant

Pat Grantホームページ(閉鎖中)


●BLUE


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