2015年7月20日月曜日

Hellblazer -Jamie Delano編 第1回-

かつてのキアヌ・リーヴス主演映画化に続き、今年はTVドラマ化も失敗したようですが、とにかくお蔭で知名度も高く、日本でも名前だけは知ってる人も多いだろうオカルト探偵ジョン・コンスタンティンを主人公としたシリーズ『Hellblazer』です。

元々はアラン・ムーアがライターを務めていた時の『Swamp Thing』に登場したキャラクターで、その後、DCコミックスがVertigoを立ち上げた際に、彼を主人公としたシリーズ『Hellblazer』が始まりました。以降1988年から2013年までの長期に亘り、300号が発行され終了。その後はDC本体に移行し、現在も『Constantine』シリーズとして継続中です。

で、このたびその『Hellblazer』の最初のJamie Delanoによる40号分を結構時間かかってやっと読み終わったので、『Hellblazer』について書き始めてみようか、ということになったのです。元々は、「Jamie Delano編」1回で書こうと思っていたのですが、後に書いていきますが、このJamie Delanoの作風ちょっとややこしいところがありまだどう書いたものか悩んでいたりもするので、なかなかまとまらずまた長大になって数週引っぱる可能性もあったり、また一方でこれだけ長いシリーズですから、評価の高いガース・エニスのところから読もうかなと思う人もいるだろうから、なるべく詳しく説明した方が役に立つかな、という思いもあったりで、ここはひとつ急がず何回かに分けて適当にやってみることにしました。というわけで今回がその第1回であります。

まずは初登場の『Swamp Thing』のコンスタンティンから語るのが筋というところなのですが、実は私はまだそちらの方は未読です。理由は『Swamp Thing』をそこまで読んでないから。とりあえず飛ばしてそこだけ読んでもあまり支障は無いだろうということは分かっているのですが、まあ、あまりにも『Swamp Thing』の方も好きなのでそんなもったいない事が出来るものか!といういくらかお付き合いいただいてる方にはお馴染みの性格ゆえの事です。毎度申し訳ない。今後も『Hellblazer』については読み続けて書いていきたいと思いますので、いつの日かひょっこりと最初のコンスタンティンについて言及される日も来るのではないか、ということで。

というわけでこのVertigoからのJamie Delanoによる『Hellblazer』から始まります。Jamie Delanoは1954年生まれのイギリス出身のライターです。アメコミの世界では最初のポスト・アラン・ムーア・ブリティッシュ・インベンション世代になるようですね。ニール・ゲイマン、グラント・モリソンなどがその辺りで、ウォーレン・エリス、ガース・エニスはもう少し後、という感じになるようです。イギリスではマーベルUKの『Captain Britain』などの他に2000ADでもいくつか仕事があります。そして1988年Vertigo立ち上げの際にDC の有名な女性編集者カレン・バーガーにリクルートされ、『Hellblazer』を手掛けることになります。

さて、このJamie Delanoによる『Hellblazer』ですが、ちょっと世間的な評価は知らないのですが、個人的な感想では少し読みにくいです。それには二つの原因があると考えています。

まず第一はモノローグ、ナレーションなどのテキスト量がかなり多い事。そして、オカルト・超常的なストーリーということもあって少し凝った難しい単語が多用されたりする事。まあ、これらは読み手である私の英語力に起因する事なのであまり胸を張って言えることではないのですが、それでもこれが日本語で描かれたマンガでも物理的にテキスト量が多ければ時間がかかってしまうのは必然かと思います。
そしてそのモノローグなどの性質というものもあります。その辺についての考察は私のこだわりの分野ですので後にやるつもりですが、この『Hellblazer』という作品は主人公が一匹狼の探偵ということで、一人称で語られるハードボイルド/私立探偵小説のスタイルを意識して作られています。そのスタイルゆえにモノローグは饒舌になり、量も増えるということになります。
更にまた別の側面から見たそれらの性質というものもあります。一貫したストーリーを持つマンガ/コミックに於いて、モノローグ/ナレーションには大きく分けて2つのパターンがおると思われます。一つは絵を中心にして表現されるストーリーを補完するもので、もう一方はそれと逆にモノローグ/ナレーションを中心にストーリーが進むものです。ちょっとややこしい言い方になってしまいましたが、後者の分かりやすい例としてはノンフィクションやルポ物のマンガで多く見られる手法です。しかしこの手法で洗練されたモノローグ/ナレーションを使いフィクションとしてのコミックを構築することは充分可能なわけです。ただし、そもそもこの手法はまず単純に「読みにくい」という理由で敬遠され、部分的なシーンで使われることはあってもあまりこれを中心とした作品というのはあまり見られません。私小説的なマンガとかだと結構あるかな。この手法の利点はキャラクターの思考や意識の流れを言葉でより深く描けることです。そういったものを画で表現する方法もいくらでもありますが、直接的な言葉というのが有効でわかりやすいものであるのは確かです。Delanoの後、41号からはガース・エニスが交代しライターを務めます。まだ私はそちらは少ししか進んでいないのですが、Delanoの手法を引き継ぎ、モノローグはかなり多いのですが、それでも前者のタイプに寄ったものになっていて今までのところはDelanoより読みやすく感じられています。
ライター/原作者-作画という関係で、ライター側があまり考えなしにモノローグなどを多用してしまうと、ひどい場合だと延々と直立不動のキャラクターの周りをカコミが巡るという画ができてしまったりします。これはいくらモノローグが多くなってしまってもページ全体を文字で埋めるわけにはいかず、また一コマにあまりに大量のモノローグを入れるわけにもいかないのでコマ数も増えるという形で物量的に要求されるスペースは増える一方で、逆に画的な部分でのストーリーの流れは停滞してしまうということから起こる事態なのですが、この作品ではそんなことは起こらず、常にキャラクターの動きも描かれていて、併用されるフキダシでの会話とのリズムも上手くできています。やはりこれはモノローグに対応する場合によっては一コマ単位ぐらいの場面に関しての記述も入ったシナリオが作られているということでしょう。つまりDelanoは下手なライターゆえに読みにくいモノローグ/ナレーションを詰め込んだ作品を作ってしまったのではなく、きちんとコミックをわかった上でこの『Hellblazer』ではあえてこの手法を使ったライターだと思うのです。

そして第2の点は、このJamie Delanoによる『Hellblazer』のストーリーがまっすぐ進まないというところです。コミックに限らず語られるストーリーでは常に話の目指す到達点があり、その方向に向かって適したルートを進んで行くものです。しかしこの『Hellblazer』ではDelanoはあえてその最速の道筋をたどりません。そのため、話がどこへ向かっているのかなかなかわからなかったり、あまり意味があると思えないシーンが延々と続いたり、また目的地は分かっているのだけどすぐにはその方向に向かって話が動かないというような局面もよく現れます。私はまだDelanoの他の作品を読んでいないのでこれが彼の常に使っている作風なのかはわからないのですが、この『Hellblazer』においてはそうです。これは作者Delanoがコンスタンティンというキャラクターが自然に動いて事件などに巡り合うという形を作ろうとした結果なのではないかと、私は考えます。キャラクターが自然に動く、というのは色々な物語の作者によって言われていることですが、大抵はストーリー自体が大きく動いているときだったり、その流れでキャラクターに慣性が付いている状況だったりします。では全く何の慣性もついていないキャラクターをどうやったら自然に動かせるのか。まずはそのストーリーの目的地点に向かうきっかけだけを与え、キャラクターを歩かせ始めどうすればキャラクターがそこにたどり着くのかを考え色々なきっかけを追加しながらキャラクターの動きを見守ります。それを考えるためには何を見たか、またそれを見るためには誰と話したか、その人物とはどう知り合ったのか、などなどの逆算をしながら配置されたきっかけによってキャラクターはやっとその目的地点にたどり着きます。それがこのコンスタンティンというキャラクターにとって一番自然になるように作者Delanoによって考えられて作られたものがこの『Hellblazer』のまっすぐ進まないストーリーなのではないかと思います。この方法はストーリーを中心とした考えからすると無駄も多く回り道にはなるのですが、一方でその行動には常にキャラクターの内面が反映されているものとなりキャラクターの個性などが強調されたものになります。つまりこれはストーリーのスムーズな流れよりキャラクターを優先させたDelanoの手法なのではないかと私は思います。

以上の2点により、Jamie Delanoの『Hellblazer』は私にとっては少し読みにくいものとなり、結構時間もかかってしまったのですが、なぜそうなっているのかを考えてみると、いずれも通常のコミックの読みやすさなどに反しても主人公ジョン・コンスタンティンの内面をより深く描こうとした試みだったのだろうと思います。そしてそれはかなり成功したのではないかと私は思います。
映画などの事もありジョン・コンスタンティンというキャラクターについては色々なところで書かれていて、目にしたことのある人も多いと思います。その際この風変わりなキャラクターを説明するためによく使われているのが『Hellblazer』開始以前にさかのぼるコンスタンティンの過去の経歴です。あとから付け加えられたものもありますが、基本的な部分はほとんどがDelanoによって作られたものです。またそのような幹を持っているキャラクターだからこそのちのライターが様々な枝を加えて行くことができたのだろうと思います。
と、キャラクターについて書いてきたところで、やはり自分で考えてもアラン・ムーアによる最初のコンスタンティンを読んでいないことがネックになってきてしまうのですが、それでもいくら天才アラン・ムーアにしても数話のゲスト出演で一人のキャラクターを完成させることはできなかったろうと思います。Jamie Delanoは考え抜かれた独創的な手法を使い、より深くその内面を描くことにより、その後長く続くジョン・コンスタンティンというキャラクターをアラン・ムーアの基礎の上に構築した優れたライターなのだろうと思います。

『Hellblazer』以後のJamie DelanoについてはVertigoからのオリジナル作品などもあるようですが、やはり『Hellblazer』で見せたその特異な作風ゆえかDCのメインのシリーズを担当するというような王道には乗れなかったように見られます。小説作品も2冊発表しており、個人的には高く評価する作家ですのでいずれ機会があったらその辺りも含めて過去作も読んでみたいと思っています。
『Hellblazer』に関してはその後25周年記念にJockとの共作でグラフィック・ノベル『Hellblazer:Pandemonium』を手掛けています。現在私は発行順に全話収録されている(のだと思うのだけど)新編集版のTPBに沿って読んでいるので、いずれはそちらにも時系列順に出会えることになるかなと思っています。
また、前にも書いた通り、この『Hellblazer』はガース・エニスに引き継がれて行くのですが、その後旧Valiant、Acclaim時代の『Shadowman』など、逆にエニスからDelanoへ引き継がれた作品もいくつかあります。『The Boys』のイギリス系アーティストの応援的参加を見ても、エニスがイギリス作家との友情に篤い男なのはうかがわれますが、それよりも前に、自分に先んじてこのジョン・コンスタンティンというキャラクターを深く構築したJamie Delanoの実力を高く評価しているのだろうと思います。

というわけで、危惧した通りかJamie Delanoについて書いただけでまたずいぶん長くなってしまいました。自分としてはとにかくまずJamie Delanoのこの『Hellblazer』における特異な作風についてきっちり書いてから始めなければというところだったのですが。しかし、内容に全く触れられないまま延々と作風について語られてもさっぱりわからないというものかもしれませんので、今回は第2回以降が出てから読み直してもらう方がいいのかもしれません。とりあえず第1回はここで終了となりますが、全く内容についてまで届いていないのも申し訳ないので、最後に簡単な概要だけ書いて終わります。次回第2回は作品内容について少し詳しく語りつつ、今回積み残したハードボイルド的考察についても書いて行く予定です。先の長い『Hellblazer』ですし、とりあえずはあまり間をおかず早くJamie Delano編を完成できるよう努力します。

■概要
Jamie Delanoの『Hellblazer』は5つのパートに分かれています。最初はコンスタンティンがDamnation ArmyとResurrection Crusadeというカルトの争いに巻き込まれて行く話が中心の"Original Sins"。そしてコンスタンティンの過去のエピソードとして有名な「ニューキャッスル事件」を転換点に前の話から続く"The Devil You Know"。コンスタンティンがヒッピーのコミューンで出会った超能力を持つ少女とその能力を軍事兵器に利用しようと企む政府機関をめぐる"Fear Machine"。コンスタンティンがリアルな連続殺人鬼との対決を余儀なくされる"The Family Man"。そして最後はこれまでのキャラクターも登場し、コンスタンティンの子供時代から出生までさかのぼり、更には死も語られる"The Golden Child"。ただこれらのサブタイトルはあとで単行本的にまとめる際などに付けられたようで場所によっては違うタイトルになっているかもしれません。ちなみに現在発売中の新編集版ではVol.5の前半までがJamie Delanoによるシリーズです。ちょっと調べてみたらVol.1に初登場の『Swamp Thing』76-77が収録されてたり、持ってないVol.4までにも色々読んでないのが入ってたり。やっぱりそっちも買い直さないとダメかな…。


●Hellblazer


●Constantine


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