2015年4月5日日曜日

Ferals -David Laphamの超バイオレンス・ホラー・コミック!-

なんか結構前から予告だけしていたDavid Lapham、やっとの登場となりました。Avatar Pressからの18禁指定ハードバイオレンス・ウェアウルフ・ホラー『Ferals』です。
全18話からなるこの作品、6話ずつの3部構成になっており、まずはそれに沿って順にあらすじを紹介して行きます。

【第1部】
 ミネソタ州レイクカウンティの人口482人の小さな町サイプレスで陰惨な殺人事件が起こる。保安官補Dale Chesnuttの友人Markのトレーラーハウスが現場で、血だらけの室内には彼のものと思われる片腕だけが残されていた。後にMarkは近くの山上で身体をズタズタに引き裂かれ腸を引きずり出されたうえ、性器を口に押し込まれるという凄惨な姿で発見される。
陰惨かつ不可解な事件に苛立つChesnuttは、その夜町のバーで奇妙な北欧系の美女に出会う。女の名はGerda。急速に彼女に魅かれて行くChesnuttはバーのトイレで彼女に求められるまま暴力的に交わる。

その夜、Chesnuttは、更にMarkの別れた妻Jackieの許で一夜を過ごす。翌朝、外からの物音に庭に出たJackieに巨大な獣人が襲い掛かる。遅れてChesnuttが駆け付けた時にはすでにJackieはMark同様四肢を引きちぎられてこと切れていた。続いてChesnuttに襲い掛かる獣人。Chesnuttは一撃のもとに打ちのめされる。しかし、騒ぎを聞きつけ銃を手に駆けつけた隣人により獣人は追い払われChesnuttは一命を取り留める。

重傷を負いヘリで移送された先の病院で目覚めたChesnuttは、謎の美女Gerdaも同様の手口で殺害されていたことを知る。そしてその容疑が自分に向けられていることも。自分で事件を解決し、復讐を果たすためChesnuttは病院を抜け出す。
町に戻り、自力で捜査を始めたChesnuttだったが、やがて逮捕され町の留置場に拘留される。そこに再び獣人が現れ、保安官事務所に襲い掛かる。混乱の中、獣人をやり過ごし逃亡するChesnutt。山中を逃げながら、彼は自分の身体が変化していることに気付く。あれほどの重症が早くも治癒し始め、手の爪が堅く鋭く伸び始めている。まるで凶器のように。自分に何が起こったのか?
執拗に追撃する獣人を遂にChesnuttは返り討ちにする。そして、一連の事件の手掛かりと、更なる復讐を求め、彼はGerdaが口にした町、Bergenに向かう…。

一方、獣人の出現で混乱の最中にある町に、2人のFBI捜査官が現れる。まっすぐ遺体安置所へ向かった彼らはGerdaの遺体から子宮を摘出し、いずこかへ向けて送り出す…。


最初の舞台となるChesnuttが保安官補を務める町は、ツイン・ピークスみたいな田舎町です。ちょっと第1部に関してはほとんどネタバレになってしまうのですが、先に進めるためにストーリーの展開とともに明らかになる色々な設定をここで解説してしまいます。
GerdaがやってきたBergenという町は北欧からの血統の子孫である狼人間の一族が隠れ住む町でした。Gerdaはその中で問題を起こし、逃亡してChesnuttの住む町に現れたのでした。彼ら狼人間たちは基本的には遺伝で受け継がれて行きますが、希少な種族のためもう一つ血族を増やす方法を持っています。それは一族の女性と性交すると感染という形で相手を狼人間に変える能力です。Gerdaは一族からの追手がかかることを予期していたので自分を守るための人間を求めていて、最初に選んだのがその結果獣人に惨殺されたMarkだったのです。そしてGerdaが次に選んだのがChesnuttで、こうして彼は狼人間に変化しながら事態に巻き込まれて行くことになります。
追手の獣人ですが、これは一族の人間がその獣人の血を飲むことで変身した姿なのですが、この変身は不可逆で、一旦獣人に変わったら元の姿に戻ることはできず、強力な力は得られますが人間性を失ったモンスターと化します。
狼人間に変化した者は常人に比べ力も強くなり凶暴性が増すのですが、この主人公Dale Chesnuttは元々ちょっとヤバイ性格の人で、それが更に凶暴化しBergenに乗り込んでいって町の一族と対決します。結果またしても危機に陥るのですが、秘かに捜査を進めていた2人のFBIが現れ、救出されます。

【第2部】
 FBIに救出されたChesnuttだったが、その結果半ば強制的に、米国内に他にも多く存在する狼人間たちの秘密捜査に協力させられることになる。そして彼は女性捜査官Piaと夫婦を装いワシントン州Green Georgeという狼人間の街へ送り込まれる。山中で彼は獣人軍団を従え、町の住民からも怖れられるある種カリスマ性を持つ人物Rikkardと出会う。Rikkardの暴走が、隠れ住むことで存続してきた一族の存亡にかかわると危惧する町の住民たち。しかし、事態は軍隊を伴った政府の介入へと発展する…。


【第3部】
 軍隊によって封鎖されたGreen George。連れ出された狼人間による恐ろしい人体実験が始まる。事態の拡大に政府はGreen Georgeの住民をカルト・テロリストとして始末しようと動き始める。一方で一族の存亡のため、狼人間の長であるViggoが暗躍し始める。そして、近隣の町に獣人の大軍団が襲い掛かる…。



版元のAvatar Pressは、そもそもはいわゆるバッド・ガール物のコミックを多く出版していたところですが、近年一切の編集サイドの規制を行わないという方針で実力派のライター、アラン・ムーア、ウォーレン・エリス、ガース・エニスなどを呼び寄せ、その作品で頭角を現してきたパブリッシャーです。そしてその中の一人がこのDavid Laphamです。

David Laphamは1990年代初頭から旧Valiant Comicsでペンシラーとしてキャリアを始めます。その後もJim ShooterのDefiant Comicsで仕事をつづけた後、自らのパブリッシャーEl Capitan Comicsを立ち上げ、代表作でありアイズナー賞も受賞した『Stray Bullets』などの自作を自費出版し始めます。しかし、『Stray Bullets』は2005年にIssue 40を持って一旦中断。そして同年頃からマーベル、DCなどでライターとして活躍し始めます。…まあ誰もが考える理由としては、金が無くなったというところでしょうが…。そして、2011年から2013年にかけてAvatar Pressから出版されたのが、この『Ferals』です。

そのような経緯でAvatar Pressから18禁として出版されたということで、内容的にはバイオレンスとセックスの嵐ではありますが、そこはポルノというわけではないので、エロ描写的には日本の大人向け劇画誌ぐらいのものです。作画のGabriel Andradeの画がちょっと劇画調にも見えることもあり、日本のバイオレンス・コミックの金字塔、梶原一騎原作による『カラテ地獄変』あたりをイメージしてもらうのが分かりやすいかと…え、旧くてイメージできない?ゴア描写に関してはかなり過激で、人体を骨ごと引き裂き、内臓を引きずり出すという凄まじい描写が繰り返されます。今どきの日本のマンガ誌ではまず無理な表現です。しかし、見どころはそちらばかりではなく、物語の展開・拡大につれ登場してくる様々な人物の思惑・憎悪が交錯して行くストーリーは、大人向けコミックとして読み応えのある作品に仕上がっています。

まだほかの作品を読んでいないので、とりあえずはこの作品に限っての話になりますが、David Laphamの特徴的な手法として、文字情報に極力ナレーションなどの使用を避け、セリフによって進めて行くというものがあり、これによりこの作品はかなりリーダビリティの高いものになっています。まだほんの冒頭ぐらいしか読んでいないのですが、代表作『Stray Bullets』でも同様の手法が使われているようです。また『Hell Boy』のマイク・ミニョーラのライターとしての近作、『Baltimore』を読んでいて、例えば場面転換の風景のみのコマでライターならばナレーションを入れた方が流れが良くなると考えるようなところを画のみで進めるといったような同様の手法を感じました。やはり両者に共通するペンシラー、アーティスト出身ならではの考え方ではないかなと思います。ただ、一方でそういう経験のないロバート・カークマンも『Walking Dead』で同様の手法を使っているので、もしかするとアメリカのコミックの中でもう少し広がっている考え方なのかもしれません。翻訳のある『Walking Dead』はそのまま日本のマンガと比較すると文字情報が多く感じられますが、英語で読むと他のコミックに比べてかなり早く読めます。しかし実際にはカークマンのコミックは『Invincible』も含めてずいぶんセリフが多くて長いのですが。これが近年の傾向なのかはわかりませんが、私の注目するライターには作画も手掛けた作品から入ってきた人が多いようなので、今後はこの辺にも注意しながら読んでいこうと思っています。

さて、その後最近のDavid Laphamについてですが、2014年に『Stray Bullets』がImage Comicsから発売されることとなり、残りのIssue 41を完成させシリーズを完結させた後、続いて『Stray Bullets:Killers』を全10話、更に今年からは『Stray Bullets:Sunshine & Roses』を開始と、現在はこの作品に注力している様子です。私もやはりDavid Laphamはこれを読まなければ始まらないと思い、やっとで読み始めたところですが、トランクに死体を積んだギャングの車が深夜の路上でパンクするという冒頭からかなり期待できる作品に間違いありません。David laphamの作画に関しても、人物の姿勢や構図からもキャラクターを表現するというような、画の方でもただならぬ実力を感じさせるものです。私的にはすでに例の「もったいないのでおろそかには読めない作品」に指定されてしまったので時間はかかると思われますが、なるべく早く中間報告でもお届けするつもりです。
その他の最近の注目作としては、Dark Horseから昨年『Juice Squeezers』という作画も担当した4話+1のミニシリーズが出ています。ホラー系なのかなと思っていたら最近のDark Horseのデジタル・ショップであったキッズ・コミック・セールに入っていたりもしました。Dark Horseからは他にもギレルモ・デル・トロ/チャック・ホーガンの『Strain』のコミカラゼーションの脚色も手掛けていて、これなんかは原作と読み比べてみると面白いかなと思っていたりもします。

ところでこの『Ferals』なのですが、じつはまだ完結していません。第3部終盤になり話は拡大し盛り上がって行くのですが、Rikardoは姿を消したままだし、Viggoは陰で動くばかりであまり出てこないし、これで終わるのだろうかと思っていると案の定、最後に”To Be Continued in 2014 in Ferals : Unleashed #1”の文字が現れました。2014年とありますが、しかし現在に至るまでまだ続編は描かれていません。David Laphamの方では2014年から『Stray Bullets』が動き始めてしまったので、今はこちらの方に割く余裕が無いのでしょう。しかしここまで持ってきた話なので、いずれまた必ず続きが描かれるだろうと期待しております。それともまたLapham氏がお金に困るのを期待した方がいいのかな?


David Laphamオフィシャルサイト

Avatar Press


●Ferals



●その他のDavid Laphamの作品




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