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2015年4月12日日曜日

The Drifter Detective -流れ者探偵登場!-

Beat To a Pulpから何か読もうと思って、同名のアンソロジーにしようかとも思ったのですが、あまり定期的に出ているようではないので、いくつか出ているこちらのシリーズにしました。Garnett Elliott作The Drifter Detectiveシリーズです。短篇のシリーズなので、第1作『The Drifter Detective』と第2作『Hell Up in Houston』を続けて読んでみました。合わせて100ページぐらいになります。

ではそのThe Drifter Detective 流れ者探偵とは何者なのか?

第2次大戦から帰還したJack Laramieは、私立探偵免許を取ったものの大きい街ではすでにでかい探偵社が仕切っていて商売の余地が無い。そこでポンコツのデソトで時には寝床ともなる空の厩車を引き、あちこちで仕事を見つけながら自分に合った街を探して渡り歩いている。

という男。さて、言われてみればありそうで無かったこの流れ者探偵、どんな活躍を見せてくれるのか?

The Drifter Detective : 2013年
田舎の農場主の問題を解決し、いくらかの報酬を得て、さて、もっと割のいい仕事はないものかと次の町へ向かうJack。だがいくらも進まないうちにポンコツのデソトが音を上げる。今度のはちょっと深刻でしばらくはこの人口3ケタの小さな町で足止めを食いそうだ。よそ者を胡散臭い目で見る連中を気にしながら町の酒場に座っていると、何やら一癖ありそうな保安官が現れる。Jackが探偵だと聞いて仕事の話を持ちかけてくる。石油を掘り当てて富豪となった大農場主が先住民相手の酒の密売にも手を拡げているらしいので調べてほしいとの話だ。早速張り込みを始めたJackだったが、よくよく話を聞くと近くに居留地も無くどうにも怪しい話に見えてくる。そのうち、農場主の身持ちの悪い若い女房も町に現れて…。

Hell Up In Houston : 2013年
依頼された家出娘を見つけてみると、どうも話が違う。金を突っ返してやろうかと依頼主の許へ戻る道すがら、またしてもデソトがいうことを聞かなくなる。今度は場所が悪い。ヒューストンだ。この街を仕切るLameauxからは今度ここで商売をしてるのを見つけたら命はないと言い渡されている。しかし、頼みのデソトが動けるようになるまではここに足止めだ。ホテルに部屋を取り眠っていると部屋に入り込んだ妙な男に起こされた。Frank Grogan、このホテルの探偵。Jackが探偵だと聞きつけ、休みを取りたいので1週間代わりにこのホテルの探偵を務めてくれないか、と持ちかけてくる。ホテルの探偵なんて世界一のんきで簡単な仕事だ、などと調子のいいことを並べる男。車の修理代も困っていたところ。引き受けたJackだったが、たちまちあちこちから厄介な問題が起こり始める…。


時代は第2次大戦後、朝鮮戦争の前のようなので1940年代後半と思われます。舞台は南部。レビューでジム・トンプスンを思わせる、というのもあるのですが、まさにそんな感じで、『ポップ1280』とかの狂気の方向よりも、『ゲッタウェイ』や『グリフターズ』や短篇あたりの腹の読めないしたたかな悪党が渡り合うような感じのノワール色の強いハードボイルド。ちょっと1人称っぽいノリであらすじを書いてしまいましたが、実際には3人称なのですが、常に主人公Jack Laramieの視点に沿って書かれている形です。現在第5作まで出ていて、最初に短篇のシリーズと書きましたが、この先は100~120ページぐらいに増えていき、中編のシリーズと言った方が妥当なのかもしれません。いずれはもう少しボリュームのある長編も書かれることもあるのかも。主人公Jack Laramieが愛車(?)デソトで引いている厩車は時々そこで寝る以外使い道は無いように見えるのですが、今後その由来なども明らかになって行くのでしょうか。なんにしても今後も楽しみに注目していきたいシリーズです。


作者Garnett Elliottはアリゾナ在住で、Beat To a Pulpからこのシリーズの他にSF作品も出版しているほか、『Thuglit』『Blood & Tacos』などのアンソロジーやウェブジンなどに多数の作品を発表している作家です。作家以外には退役軍人のPTSDセラピストという顔もあるそうです。見た目もなかなかタフな感じ。
毎度おなじみ『All Due Respect』にも「disability, inc.」という作品が掲載されています。悪徳精神科医のおかげで懲役を免れている犯罪者たちが、その医者からある仕事を頼まれるが…。The Drifter Detectiveシリーズとも共通する、ユーモアを含みながらかなりダークな感じの語り口のノワールです。

さて、このThe Drifter Detectiveシリーズ現在のところ5作出ているのですが

 1. The Drifter Detective : 2013
 2. Hell Up in Houston : 2013
 3. The Girls of Bunker Pines : 2014
 4. Wide Spot in the Road : 2014
 5. Dinero Del Mar : 2014

このうち第4作Wide Spot in the Roadを1990年に文春文庫からジョー・ハニバルシリーズ『燃える季節』の翻訳があるウェイン・D・ダンディーが手掛けています。ウェイン・D・ダンディーもBeat To a Pulpから作品を発表していて、現在は主にウェスタンを書いているようです。こちらの方もいずれは読んでみたいと思っています。ジョー・ハニバル物も続きが読みたいのだけど、こちらは現在Kindle版はアメリカ国内のみの販売となっています。なんとかならないかなあ。

Beat To a Pulpは現在も続くウェブジン発のパブリッシャーです。同名アンソロジーの他に主にハードボイルド/ノワールとウェスタンを出していますが、それ以外にもSF、ホラーなどもっと広くPulpというジャンルでの出版活動を考えているパブリッシャーです。まだそれほど出版点数は多くありませんが、最近でもAll Due RespectのChiris Rhatiganの作品や、Eric Beetnerのタイトル通り7分冊で発表された後1冊にまとめられた『The Year I Died Seven Times』など、気を引かれる作品の並ぶ今後の活躍が期待される要注目のパブリッシャーの一つです。

Beat To a Pulp



●The Drifter Detectiveシリーズ


●Garnett Elliottの著作


●Beat To a Pulp




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