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2015年3月29日日曜日

THUGLIT Issue Three

数あるハードボイルド/ノワール系アンソロジーの中でもとにかくこれだけでも読まねばと思っている『Thuglit』なのですが、やっと3冊目か…。なんとかもっと努力せねば。今回は短篇8本プラスTod Robinsonの『Hard Bounce』プレビューの第3回で約140ページ。ちょっとずつページが増えてる感じですね。

[1]The First Day of Hell Week by J. D. Hibbitts
 やっと刑務所から出所したWyatt。2度と中には戻りたくない。まともな暮らしをしようと思う。だが、迎えに来た父親は明らかに盗難車と思われる車に妙な女を乗せて現れる。当然のように息子に元の犯罪者生活を続けさせようとする父親の様子にWyattの苛立ちは募ってくる…。
[2]Redemption by Terrence McCauley
 1980年の夏、交通事故で父を亡くし、当時10歳の少女だった”私”は母とともにニューヨーク郊外に住む祖母の家に滞在していた。毎日家を訪れる母の恋人Charlie。夜毎暴力的にふるまわれても母は彼から離れることができない。祖母は彼の持ってくる酒と煙草で上機嫌。”私”の話を聞いてくれるのは隣人である武骨な老人Mr. Andersonだけだった…。
[3]Red-Eyed Richard by Paul Heatley
 ”赤目”Richardは引退したギャング。母親の死以来溝ができている娘の許に身を寄せているが、あてつけるように夜毎様々な男を引き込む娘の様子にいたたまれず、夜になると行きつけのバーで酔いつぶれている。長年の奉公に報い毎月の心付けを送ってくれていたボスが亡くなった。後を継いだ次のボスである息子はそんな余計なしがらみを断ち切りたいと考え、行きずりのチンピラの犯行に見せかけ”赤目”を始末しようと企む…。
[4]Doing The Job by Hector Acosta
 かつては栄光の時もあったが、今は落ちぶれて人気女子レスラーの引き立て役としてリングに上がる盛りを過ぎたプロレスラーが主人公。唯一自分を慕う若手で実力はあるのだが今ひとつ伸び悩み、リングではゲイ役として不遇をかこっているレスラーから他団体への移籍を持ちかけられる。だが、その条件とは団体が保持しているチャンピオンベルトを盗み出すことだった…。
[5]In The Neighborhood by Ed Kurtz
 いつものバーにいつもの顔が集まり始める。多くは失業中の中年男。仕事があったとしても誇れるようなものじゃない。中の一人が言う。あのベトナムの将軍が男の頭を撃ち抜いている写真を知ってるだろう。あのモールにあるピザ屋の主人のベトナム人がその将軍だ。仲間は連れ立ってそのピザ屋を見に出掛ける。自分たちの住んでいる落ちぶれた地域と対照的な町の明るい顔の側。そして事態は後戻りできない方向に転がり始める…。
[6]Peek-a-Boo by John Hodgkins
 あの女優に間違いない!場末のダイナーで不器用に働く老ウェイトレスは彼が昔に観た映画の主演女優だった。幼い頃、母と何度も観た映画。だがその母とも今は疎遠になっている。父と同じようにギャンブルで破滅して行く彼とは…。
[7]Lucky For Me by Rob Brunet
 バーでこんないい女に巡り合えるとは俺はツイてる。俺のポケットには大金が入っている。だがこれは賭けの胴元に巻き上げられる金だ。早く逃げ出さなければ。このツキが俺から逃げる前に…。
[8]Wakey Wake by Nathan Pettigrew
 Rolandの父が殺された。地元ではちょっとした顔だったやくざ。いつかはこうなる運命だったのだろう。そして、父の葬式には色々な奴らが集まってくる…。

第2集ではやっぱり今ひとつの作品もあるけど…というトーンでしたが、今回第3集はなかなかの粒ぞろいという感じでした。今回一番のビッグネームはSnubnose Pressやホラー方面でもいくつかの著作のある[5]Ed Kurtz。負け犬たちの行き場のない怒りが場違いな暴走をするちょっとニューシネマあたりを思わせるノワール。他にも今回は負け犬特集かというくらい次から次へと後の無い奴らが登場し、私のようなルーザーの心を打つのでした。猫も失くしたしね。屈折した父と娘の愛憎が余韻を残す[3]、元本職のプロレスラーによる[4]、失敗に首まで浸かっているいることを自覚しながら微かな望みを横目で追い続ける[6][7]辺りは特にお気に入り。
現在第16集が刊行中のこのアンソロジー。今年1月から突然の値上げで、1号約2ドルとなりました。何かホームページの方でコメントがあるかと行ってみましたが、予想通りIssue12以降はまだ更新がありませんでした。こっちもちゃんとやれよー。しかしながら出版の方の勢いは衰えず、また差を大きく開かれて、私の読むスピードでは到底追いつけないな、と思いつつ、また知らない作家のいい作品に出会えるのを楽しみに次もなるべく早く読みたいなと思うのでした。

ブログ1周年を迎え、やる気は上がったものの、いろいろ忙しかったり週末用事が重なったりで思うように書けなかったこの3月でした。一時期は肝心の読書時間も削られてしまう始末でしたがなんとか持ち直してきた、と思いたいところ。なんとか来月からは一新し毎週更新を目指して行きたいと思いますので、またよろしく。頑張るのだよ。


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