2015年3月21日土曜日

2000AD 2014年夏期 [Prog1888-1899]

前回がずいぶん遅れてしまったので春期から割とすぐになりました、2000AD夏期です。今期のラインナップは以下の通りです。

 Judge Dredd
 Brass Sun [Prog1888-1899]
 Aquila [Prog1890-1899]
 Black Shuck [Prog1891-1899]
 Sinister Dexter [Prog1889-1892]
 Jaegir [Prog1893-1898]


またかと言われそうですが、今期のトップ画像は私的には待望の『Brass Sun』であります。これ本当に好きなんですよねえ。そして今期の特徴としてはもはやお馴染みになってしまった「巨匠Pat Millsの代表作の一つ」がありません。Mills先生夏休みです。あと、今期はほとんど一度は登場した作品なので比較的楽に進められるのではないかと。



Judge Dredd

 1. The Heart Is a Lonely Klegg Hunter : Rob Williams/Chris Weston (Part1-2)
 2. Student Bodies : John Wagner/Boo Cook (Part1-2)
 3. A Night In Sylvia Plath : John Wagner/Colin Macneil (Part1-2)
 4. Cascade : Michael Carroll/Paul Marshall (Part1-6)

今期のJudge Dreddは前半が各2話からなる軽めのストーリーで、後半が全6話のCascadeという構成になっています。そのうち、1と3は昔のキャラが再登場するコメディ・タッチの話です。
1はかつて事件解決に協力した功績によりMega-City Oneでの居住を許可されている見かけは2足歩行の巨大な鰐のように恐ろしげだが心は優しく少女小説のファンの宇宙人Kleggが賞金を懸けられハンターたちに追い回されるという話。KleggというのはJudge Dreddのかなり初期の「The Day the Low Died」(Complete Case File 2に収録)から登場する宇宙の傭兵種族で基本的にはかなり獰猛です。
3は金に困ったセールスマンがMega-City Oneで怖れられるJudge Deathの変装で押し込み強盗を働くというのがメインのストーリーです。この回にはJudge Dreddの初期からDreddに仕えていたロボットのWalterが登場します。Rが発音できず全部Wになっている舌足らずで喋りまくる(例:Dredd→Dwedd)大変キュートなキャラクターで、初期の少しを読み始めたばかりで間がスッポリ抜けている読者の私は、どこかの時点で悲しい別れがあるのだろうかと気になっていたのですが、健在で何よりです。しかしかなりの久しぶりのようでポンコツ化していて自分のことを認識できずに訳の分からないことを昔ながらの様子で喋りまくるWalterにDreddも思わず苦笑するシーンもあります。画像の中段がWalterで現在は手前のMrs. Gudersonという老婦人の世話をしていて、この人もかなりボケてぶっ飛んだキャラクターです。どうも本物のJudge Deathとも関わりがあるようなのですがその辺はよくわかりませんでした。Judge Deathは私が今読んでるComplete Case File 3の後半で初登場するようなので、いずれWalterともどももう少し詳しく書くつもりです。
2は大学に進学した姿は醜いが生真面目で向学心の高いミュータントの青年が行方不明になるという事件をDreddが調査するうちに学友会のいじめが関わっているらしいことが浮かび上がってくる。その中心人物であった学生が逃走しようとして大事故に遭い、一方でミュータントは発見された時には死亡し、その学生の脳はミュータントの身体に移植されその後の人生はその姿で生きなくてはならなくなる、というJohn Wagnerによるちょっと教訓的な話。
4は冒頭、現代に近い時代の地球から飛び立った女性宇宙飛行士がDreddの時代のMega-City Oneに帰還するというところから始まり、現代の眼から警察国家になっているMega-City Oneについて批判的考察を与える、という展開なのかと思っていたら一転し、実はその女性宇宙飛行士は地球のJudgeとよく似た体制ではあるがさらに強力な法による厳しい統制で宇宙の多くの種族を支配するLowlordsの支配下にあり、旧時代の衛星兵器を操作し、Mega-City Oneを脅威に陥れるという話。6話構成でこの年の『Judge Dredd』という視点で見ても結構な大作ではあったのですが、ちょっと絵の方の問題で迫力不足に終わってしまった感じ。Paul Marshallはよく見るアーティストで画が下手というほどではないのですが、決め画となると大抵は真正面の画を使ってしまうというような凡庸な描き手だったりもするので、ストーリーのポテンシャルまで画を持っていけなかったかなあ、という感じで少し残念な結果になってしまった印象です。絵の良し悪しは単純にデッサン力などで決められるものではないけど、どういう形でもストーリーに見合った表現力は要求されるものだと思います。

Brass Sun/Floating World

 Ian Edginton/I. N. J. Culbard
待望の第3シーズン!これまでのストーリーについてはBrass Sun Issue One -英SF-クロックパンク・コミック-2000AD 2013年秋期 [Prog1850-1861,2014] をお読みください。と、やっとこういうやり方が使えるようになってきたよ。かつての動乱後荒廃した地面の無い世界Floating Worldに到着後、捕獲され後に女船長Ar>ielとともに脱出したWrenたち。あ、Arielは前に勢いで女海賊などと書いてしまいましたが、この星の通商ギルドから追放されている有能だがちょっとやくざな女船長というところでした。それから6か月、Wrenちゃんの髪形も変わった。彼女らの飛行艇は再びギルドの有力者Peiによって捕獲される。PeiはArielに彼女の船以外が生還したことのない危険地帯から伝説のGaseous Crayを持ち帰ることと引き換えに彼女のギルドでの地位を復活させるという話を持ちかける。拒否すればその場で全員殺されるだけなのだが…。Gaseouse Clayとは大災害の時のガスが長期間と特殊な環境下で粘土状に変化したもので万能薬になると言われるもの。Peiは死に瀕している自分の愛娘を救うためにそれを求めていたのだった。前シーズンに発見した「祖父の本」を脳にインストールしたことにより新たな知識と能力を得たWrenはそのPeiの娘の中にこの世界を救うための鍵の一つがあることに気付く。そして、Wrenたちは新たな危険な冒険に乗り出す!
今回、Wrenが襲われたクリーチャーの毒により生命の危機に陥り、そのさなかで意識内の世界でカート・ヴォネガットの姿を借りて現れた「祖父の本」の中のこの奇妙な世界の創造者と出会い、元は地球が属する宇宙だったこの世界がこのように姿を変えた秘密の一端を明かされます。また、ずっと役立たずだった男(名前を忘れた…)が後半意外な活躍をし、そのうえ船長Arielともいつの間にか深い仲になっており、シーズン最後にはWrenとSeptimusは二人と別れ新たな惑星へ向かう、という展開で次シーズンへ。
この作品2000AD誌上でずいぶん人気も高いようで、四半期間の最初の号は大抵はJudge Dreddかいくつかの作品を並べたものだったりするのが今期Prog1888のカバーは上の『Brass Sun』単独のものになっています。またこの作品から始まった連載5~6回分30ページぐらいをまとめてアメコミ風のIssueのような形で単独で出すという方式も成功を収めたようで、この先いくつかの作品もこの形で単行本に先行して出される予定になっているようです。また、ちょっと不確定な情報で申し訳ないのですが、少し前に2000ADのAPPストア内で、この『Brass Sun』のIssue Oneがフリーになっていて、私はKindle版を買っていたのでダウンロードしておいたのですが、入手してしまうと値段のボタンが変わってしまうので、期間限定だったのか今でもフリーなのかちょっとわかりません。気になる人は2000ADAPPストア内の2000AD Specials内を見てみてください。2000ADAPPは最近Android版も出たようですね。


Aquila/Carnifex

 Gordon Rennie/Leigh Gallager
超自然的な力により意味も分からず死から蘇らされ、不死身の肉体を与えられた狂戦士が登場するローマを舞台としたハードコア・バイオレンス・コミック!こちらもこれまでのストーリーは2000AD 2013年秋期 [Prog1850-1861,2014] の方を参照してください。前シーズンの最後で皇帝ネロに捕獲されたAquilaは、ネロが神となるために7つの宗教の僧侶の首を集めるように命じられ、ローマのあちこちの神殿で殺戮を繰り広げる。一方ローマの神官Triscusはネロの意図を察知し動乱を怖れローマ脱出を図るが皇帝の命により叶わず残るキリスト教の僧侶を助けネロの意図を挫くよう試みる。容易にTriscusたちを追いつめたAquilaだったが、自己の存在理由を見いだせない彼を唯一導く空の黒鳥がその僧侶を生かしておくように告げるのを感じ、秘かにTrisucusと協力する行動をとり始める…。
自分がなぜ生かされているのかという理由を見いだせないまま善も悪もなく目の前に立ちふさがるものが兵士であろうが恐るべきモンスターであろうがひたすら凄まじい戦いを続けるAquilaのキャラクター、そして既存の歴史の陰で様々な魔物が暗躍するダークなストーリーが素晴らしい。今期もう一人の主役であるTrisucusですが、神官で水の流れなどから予知ができるような人なのですが、あまり威厳などはなく、現代劇にすれば右往左往するばかりの所轄刑事ぐらいのポジションで、そういうキャラクターの配置もなかなかうまいなと思ったりします。私的にも結構気に入っているシリーズなのですが、まだ単行本化もなくどのくらい続いているのかもわからなかったのですが、近々『Brass Sun』と同様にIssueの形でまとめられ始めることが告知されていて、いずれは過去のストーリーも読んでみたいなと思っています。前シーズンから続いたローマ編が決着を見て、次はどういう展開になるのか楽しみにしています。この作品の作画のLeigh Gallagerは前述のPaul Marshallと少し似たタッチの画を描く人ですが、バトルシーンなどの迫力はかなりのものでちょっと腕の違うアーティストだなと思います。

Black Shuck

 Leah Moore, John Reppion/Steve Yeowell
こちらは今期唯一の新シリーズです。中世あたりの時代だと思うけど、とにかく北欧を舞台としたダークファンタジー。王Ivarの治める領土の海岸に一人の男が流れ着く。意識を取り戻した男はBlack Shuckと名乗り、王Ivarの息子であると告げる。半信半疑の王。その時、領土に恐るべき獣人の群れが襲い掛かる。軍隊とともに一際勇猛に戦い獣人を撃退したBlack Shuckは王の息子として認められる。だが、王とその領土には秘密があった。領土を見下ろす山の上の古代の王の墳墓に隠された財宝に手を付けたため、その呪いにより領土は夜毎に獣人たちの襲撃にさらされていたのだった。呪いを解くために山上の墳墓へ一人向かうBlack Shuck。だが、その彼にも隠された秘密があった…。
王と言っても族長ぐらいの感じで、領土も村ぐらいの規模。あまりこういうファンタジー的なものは小説などでも読んでいなかったりするのですが、画で見ると大変わかりやすい。きっと考証などもちゃんとしているのだろうと思われます。ですが、今期の中でこれだけは私的には最後まであまり乗れなかった感じです。Steve Yeowellの画に関してはちょっと色々な意味でメリハリが足りない感じ。日本のマンガを読みなれている眼から見ると、日本でとくに発達している集中線、スピード線などの強調技法が使われない英米のコミックではこういう絵が余計に単調に感じられてしまう。なんだか最近知ったところでは、このSteve Yoewellという人グラント・モリスンとともにあの『Zenith』を描いた人のようですが。ただ、画の責任ばかりではなく、あらすじぐらいにまで分解してみると、ストーリーの方も構成や語り方でもう少し面白くできたのではないかなあとも思ったりもします。とりあえず、ストーリーは一応完結し、続きが描かれるのかは不明です。


Sinister Dexter/Congo

 Dan Abnett/Jake Lynch
今回は2000ADでのカバー絵はナシ。前期からも続いてのお馴染みのシリーズです。この宇宙を崩壊させる危険のある人物Tanenbaumの行方を探す一行は宇宙最大の通販企業Congoの配送センターに潜入し、その顧客データに用意したプログラムを走らせ、Tanenbaumの居所を探ろうと試みる。だがそのデータベースにはすでに何者かの手によりそのプログラムに対抗するプログラムが仕込まれていた。センターから脱出し、隠れ家に戻った彼らの元にその当人からの招待メールが届く。そこで彼らが出会ったのは現在証人保護プログラム中のかつての犯罪者たちのグループだった…。
SinisterとDexterが狙うTanenbaumはギャングのボスで、彼らによって暗殺されたのですが、別次元の同一人物がそこに入れ替わりそれを放置しておくとバランスが崩れこの宇宙が崩壊してしまう危険があるということ。私が読み始めてからやっとその辺の説明があって話が分かりました。とりあえずラストでTanenbaumの居所を掴み、今シーズンは終了で、続きはしばらく先の次シーズンということになります。毎回作画の変わるこのシリーズ、今回も交代しているのですが、前期と割と似たモノクロの少し古い感じのタッチ。逆にこういう絵を描ける人材が良くそれ程いるものだなとと思ったりします。

Jaegir/Circe

 Gordon Rennie/Simon Colby
前シーズンから始まったクールな女性戦争犯罪捜査官Atalia Jaegirが主人公のSFミリタリー・アクション。Jaegirとそのチームは、自ら集めた元犯罪者などで組織された舞台を率いるMabuse大佐の許へ捜索中の犯罪者の情報を得るため訪れる。引き換えにMabuseは自分の部下の部隊が被害に遭っている謎の薬物についての情報を求めるのだが…。
このシリーズ説明が少なかったり少し難解でもしかしたらちょっと間違っていたらすみません。ミリタリー物の会話とかって少し難解ですよね。前期に書いた通りこのシリーズは『Rogue Trooper』という作品のスピンオフというようなもので、今回はそのRogue Trooperが物語に大きく関わってきます。『Rogue Trooper』は1981年から2000AD誌上で長く続いているシリーズです。NortsとSouthersの二つの勢力が戦争を続ける未来世界のストーリーで、その戦場となっているのがNu-Earthと呼ばれる惑星。長く続けられている戦争で双方から容赦なく投入され続けた化学兵器、生物兵器により、兵士は防護服とマスクなしでは行動できなくなっている。そんな環境に合わせSouthersが遺伝子操作により開発した兵士がRogue Trooperと彼の所属する部隊である。だが、その部隊はNu-Earth上陸のまさにその時Nortsの待ち伏せに遭い、集中攻撃により壊滅し、Rogue Trooperはただ一人の生き残りとなる。そして、彼は謎の”任務”のため、味方であるSouthers側の部隊ネットともリンクを断ち、ただ一人Nu-Earth上で作戦行動を続ける。というちょっと小池一夫の孤独な復讐者あたりをも思わせるキャラクターが主人公のシリーズです。まだ最初の数話を読んだぐらいなのですが、ある程度進んで来たらいずれもう少し詳しく書いてみたいと思っています。Nortsに所属するJaegirはNu-Earthの戦場でかつてRogue Trooperと敵として遭遇したことがあり、防護服無しで俊敏に行動し、仲間の兵士のマスクやエアチューブを次々と破壊して行くRogue Trooperの獰猛な戦いぶりは恐るべき恐怖として刻み込まれ彼女のトラウマとなっています。そして自らは肉体を失い脳だけとなっていて必要なときは保存してある兵士たちの死体に接続し行動するMabuse大佐が、秘かに上陸時に壊滅した部隊のRogue Trooperと同じ青い肌を持つ遺伝子改造兵士の死体を保存していて…という展開。また、他にも断片的に語られるJaegirの家族にまつわる過去も気になるところなのですが、ちょっとこちらの方は私も上手くまとめ切れていません。何分情報が多くて説明の少なかったりするシリーズなので。Jaegirは名門軍人一家の出身のようで、察するところ、長く続いているRogue TrooperのSouthers側の敵であるNortsはお馴染みのドイツ軍的設定になっているように思われます。前期、6回のミニシリーズとして描かれtが、反響が大きく本格シリーズ化が始まったこの作品。今回は先に続く大きなストーリーの序章というところでしょう。この先の展開が楽しみなシリーズです。

その他に、2000ADでは連載の合間に色々な読み切りの短篇が掲載されていて、今期その中に今年冬期に『Ulysses Sweet』が今ひとつだったガイ・アダムスがTharg's 3rillersという3回完結の短篇シリーズのライターとして再登場していました。『Voodoo Planet』というグロテスクなSFホラーで今回はなかなか良かったです。単にセリフやモノローグが多いというだけでなく、まず言葉先行で話を作ってしまうという異ジャンルからのライターが陥りがちな欠点も改善されたようで、アメリカ(?)のWebコミックAce Weekly(ちょっとまだ実態を把握してません。すみません)にも作品を発表したりとコミック制作進出にも意欲的なガイ・アダムス氏の今後の活動にも注目してみたいところです。今年冬期の2000ADには『Ulysses Sweet』のもうないと思っていた続編も掲載されているようなので、また様子を報告できるかと。半年後…かな?

ということで2000AD2014年夏期でしたが、簡単に行くかと思いきや思い入れの多い作品も多くて結局結構長くなってしまいました。次回秋期には『Brass Sun』のIan Edgintonのもう一つの進行中のシリーズ『Stickleback』が登場し、Pat Millsも復帰するほか、色々と注目作も登場します。なるべく早く報告できるよう頑張りますです。



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