
ホラー関連のある部分では、もはや定番の必読書となっているような作品で、しばらく前からもはや強迫観念による譫言の様にもっとホラーを読まなくてはと言い続けている私として、とにかくまず手に取ったのがコレ。
ブラムストーカー、ローカスといったあたりでも受賞歴も多く、本当なら代表作数冊ぐらいがハードカバーぐらいで翻訳されていてしかるべきぐらいの作家だが、ほぼ未紹介ということなので、とりあえずは簡単な経歴から。
1972年生まれ、ネイティブ・アメリカンブラックフット族の出身。フロリダ州立大学在学中に博士論文指導教員によりHoughton-Mifflin社の編集者に紹介され、博士論文として書いた小説『The Fast Red Road』が2000年にデビュー作として出版される。
実験小説、ホラー、犯罪小説、SFといった様々なジャンルで多くの作品を出版しているが、彼の作品はその出自に深く関係するNative American Gothicまたは、Rez Gothicと形容されることが多い。
代表作として挙げられるのは、実は今回の『Mongrels』以後の作品が多いのだけど『Night of the Mannequins』(2020)、『The Only Good Indians』(2020)、The Indian Lake Trilogyの『My Heart Is a Chainsaw』(2021)、『Don't Fear the Reaper』(2023) といったところ。つまり現在注目度、評価が高まり続けている作家という感じ。
なんか改めて経歴書いてみると、『Mongrels』読まなきゃで延々止まってる間に作家的評価どんどん上がってったような気もするが…。
で、この『Mongrels』なのだが、実は経歴に見られるようなネイティブ・アメリカンについて書かれた作品ではない。うーん、色々通ずる部分はあるのかもしれないけどね。
人狼テーマの作品で、ホラージャンルに属するんだけど、怖くはない。これ読んで夜中にトイレに独りで行けなくなる人はいないと思う。まあでも分類すればホラージャンルだよな。
これは最初は8歳で登場する人狼一族の少年が、故郷を離れ、同じく人狼の叔父と叔母の三人で、アメリカ各地を放浪して暮らし、16歳になるまでの物語。
とりあえず、ブコウスキー風に書かれた人狼物語という感じに言っておこう。実はある事情によりブコウスキー風というのはややゴリ押し的に入れたので、かなり異論のある人も多いかと思っているのだが、とりあえずその「ある事情」については、 後ほど説明します。
では、『Mongrels』です。
Mongrels
爺ちゃんは僕にいつも、自分は人狼だと言っていた。
彼はLibby叔母さんと、Darren叔父さんを説き伏せ、自分の20年前のことを頷かせようと試みていた。風車少し上ったところで、自身の爪で雨を裂いた時のことを。彼は四つ足を降ろしブーンヴィル郊外の下り坂道で列車と競争し、そいつを打ち負かした。 彼は満載されたアーカンサスの田舎者よりも早く田舎道を駆け抜けた。生きて羽ばたく鶏を口にくわえて、その全てからのスリルに眼を濡れ輝かせながら。爺ちゃんの物語では常に月は満月で、彼を後ろからスポットライトのように照らしていた。
Libbyはそれにうんざりしてたようだった。
Darrenは、その横長の口を本当には浮かべたくない笑みの類いの形に縮めていた。特に爺ちゃんがリビングルームをゆっくりとのし歩き、いかにして羊をフェンス際に一団にして追い詰め仕留めたかを演じる時には。
Libbyは大抵は、爺ちゃんが群れを突っ切り、羊が叫び、爺ちゃんの口があらゆる狼がそうであるように、大きく開き、飢えてその黄色い歯が暖炉の光に鈍く照らされる前に去っていた。
Darrenは、ただ首を振り、椅子の横に置いてあったストロベリー・ワイン・クーラーを持ち上げた。
そして僕。僕は8歳になりかかっているところで、母さんは僕が生まれた日に亡くなっていて、父さんについては誰も話すことはなかった。
LibbyとDarren、主人公「僕」の母親とは三つ子だった。
Libbyは主人公の亡くなった母代わりに彼を育ててきたが、「母さん」と呼ばれるのは嫌っていた。
Darrenは22歳になったその年、6年の放浪生活から戻ったところだった。彼らの一族の男は16歳になると、一匹狼として旅立つ。
「なぜ16歳なの?」と僕は爺ちゃんに訊いた。
なぜなら16は8の二倍なのを知っていた。そして僕はもうすぐ8歳。それは出て行くまでほとんど半分が過ぎたということだ。でも僕はDarrenのように出て行かなければならなくなるのが嫌だった。そのことを考えると腹が空っぽになるような気分だった。 僕がこれまでの人生で知っているところは爺ちゃんの家だけだった。
Darrenが家に戻ったのは、Libbyの粗暴な元夫Redのためだった。祖父は年を取り過ぎていて、Redと彼女の間に立つことはできなかった。
「ある種の連中は人間社会にうまく溶け込めないのさ」Darrenは言う。
「そしてある連中はそれを望むこともしない」祖父は言った。
祖父と叔父叔母との四人の生活。ちょっとほら吹き爺さんの気もある祖父により、様々な人狼話が語られて行く。
「人狼には剃刀は必要ない」なぜなら狼に変身して、人間形態に戻る時、のびていた髭はその体毛と一緒に全て引っ込んでしまうからだ。
「でも、でも爺ちゃんは人狼なんでしょう?」「僕」は髭の生えた祖父に言う。
「俺の歳になるとな、もう狼に変わるのは死刑宣告なのさ」
そして腕の傷を指して言う、これは何の傷だと思う?撃たれた跡?違う、こいつはダニだ。
狼から人間に戻る時、ダニがそのまま体の中に入ってしまった。そして町の医者へ行き、先を熱したコートハンガーで抉り出してもらった。
「なぜこんな傷跡がまだ残ってるかわかるか?傷をちゃんと塞いだり、縫ったりもせず?」祖父は言う。
それは彼らの中にある血のためだ。
「もしその医者が爪の甘皮に一滴でも血を零したら、そいつは撃ち殺されるしかないムーンドッグに変わってしまう」
「もしそいつが噛まれたら、あるいは血を浴びたら、それはそいつの中を小さな子犬みたいに素早く走り回り、焼き、痛めつける。そいつにできるのは苦しむことだけだ。あの手のやつ、頭が狼で身体が人間。奴らは自分に何が起こったのか決して理解できない ただ走り回り、よだれを垂らし、噛みつき、自分自身の皮から抜け出そうと試みる。時には自分自身の腕や足を噛みちぎって、痛みを止めようとさえする」
祖父はそのまま黙り、窓の外を見つめた。
そしてLibbyもDarrenも何も言わなかった。
「話を真に受けないようにね」後に「僕」を学校へ送る車を運転しながらLibbyが言った。
「あたしもあの傷がいつ付いたのか知らない。あたしたちが生まれる前の話だもの」
「お婆ちゃんがいたからだね」彼の祖母は母と同じように、出産の際に死亡している。彼ら一族にかけられた呪いであるかのように。
「次に爺さんがあの馬鹿話をするときには、ダニはもう腕の後ろにはいないでしょうね。それは肘の古傷になって、医者はコートハンガーじゃなくてポケットナイフを使ったことになってるんじゃないかしら。昔一度あたしたちに話したときには口の横にある傷だったのよ」
人狼の物語とはそういうものさ。
いかなる証拠もない。変わり続ける話があるだけ。自身に捩じり戻り、毒を吸い出そうとその腹に噛みつくように。
その翌週、彼らは野原の中に裸でいる祖父を見つける。膝と手は血だらけで。彼らを見返す目には何も映っていないようだった。
Darrenと「僕」が彼を見つけた。「死んでないよ」「僕」は言った。それが本当になるように。
Darrenは2歩下がり、持っていたボトルを割った。
「親父はいくつだと思う?」「僕」に問いかけた。
「55歳さ」Darrenは言った。「そうなるのさ」
Darrenがボトルを割った音を辿って、Libbyが駆け付けた。
「親父は変わったと思ったんだ」Darrenは顔を歪めて、言った。
「助けて!」Libbyはそう言うと祖父の横に跪き、頭を膝に乗せようとした。
その週、「僕」は学校へ行くのをやめた。祖父を生かしておくために。彼に物語を話させ続けることで。
祖父が「僕」に話した最後の話は、彼のすねにあるへこみについてだった。
その日はLibbyが、やってきた元夫のRedともめている日だった。Libbyは顔の殴られた痣をステーキ肉で冷やし、また外へ出て行った。
そして家の外からはまた争う音が聞こえて来た。
「Redだよ」と「僕」は言い、「Redか」と祖父は応えた。
「あいつは悪い狼じゃない」祖父は首を振りながら続けた。
「だがいい狼は大抵はいい人間じゃない。憶えておけよ」
それは「僕」を別の考えに導く。いい人間は、悪い狼なのか?それはいいことなのか悪いことなのか?
「あの子にはそれがわからん」祖父は言った。「だがあの子は母親にそっくりだ」
Darrenは祖父のすねのへこみを指さして言う。「こいつそれがどうしてできたか知りたがってるぜ」
そして祖父は笑いながら話す。それは狂犬病にかかった犬。寝ていたLibbyを起こすまいと、祖父は丸頭ハンマーを使ってその犬を始末しようとした。
だが犬は祖父の周りをぐるぐると周り一向に捕まらない。
そして思い切って振り下ろしたハンマーは犬から外れてすねを打ったという話。
祖父は最後に短く笑った。
そして「僕」はそれは笑いじゃなかったと思った。
次の月曜日、Libbyは「僕」を強引に学校に戻した。
だがそれは二日で終わった。
火曜日、Libbyの運転する車に送られて学校から帰ると、祖父が正面ドアから身体を半分外に出し、そのまま止まっていた。曇った眼は開かれ、口の周りをハエと蜂が飛び回っていた。
Libbyが止めるより早く「僕」は車から飛び出し、祖父に駆け寄った。
だがその足が止まり、そして後退した。
祖父は単に身体を半分外に出しているわけではなかった。彼は人間と狼の半ばにあった。
腰から上、ドアから出ている部分は、同じだった。だが彼の足、まだキッチンのリノリウムの上にある部分は、絡み合った毛が生え、形が異なり、違う筋肉がついていた。足は、踵が犬の後ろ向きの膝に変わるまで、二倍の長さに伸びていた。太ももは 前向きに膨らんでいた。
祖父はいつも言っていた通りのものだった。
「父さんは森に行こうとしていたのね」Libbyが言い、そちらを見た。
「僕」もそうした。
家に入ることもできず、二人が車のテールゲートに座って、食べそこなった昼のサンドイッチを分けて食べているところに、Darrenが帰って来た。
「駄目だ」祖父の姿を見て言うDarren。「駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ!」彼は叫んでいた。その声が充分に大きければ、それが真実になるかのように。
やがて、Darrenは盗んだホイールローダーに乗って帰って来た。
家の前にそれを乗り付けたDarrenは、前のシャベルに祖父を乗せた。
二人もそれに乗り込み、ホイールローダーは森の先の小川まで行った。
Darrenは祖父を持ち上げ、乾いた草の上に寝かせた。それからホイールローダーのシャベルで、急な土手に穴を掘った。
Darrenは祖父を抱き上げ、Libbyを見て、それから「僕」を見た。
「お前の爺さんだ」彼は言い、祖父を持ち上げた。「俺がこのジジイについて一つ言えることはだ。かれはいつも自分の夕飯を店で買うより、追い掛けて捕まえる方が好きだったってことさ、そうだろう?」
Darrenは泣きながらそう言い、Libbyは唇を噛み、髪で顔を隠した。
Darrenは祖父を新しい穴に降ろした。そしてシャベルで土を戻して被せた。更に土を掘って被せ、小川を掬って水をかけた。そしてその小山を何度も激しくつぶした。祖父の骨がバラバラになり、誰かが掘り出すことがあっても決してわからないように。
これが人狼を葬るやり方だ。
帰り道、車の上で「僕」は言った。「僕はどうなの?」
Darrenはすぐには意味がわからなかったようだが、Libbyはまだ幼く狼に変わったことのない彼が、そのことについて尋ねているのだと気付いた。
「人狼から生まれたすべての子供が人狼なわけではないわ」Libbyは言った。「あなたのママ、彼女はお爺ちゃんから受け継がなかった」
「受け継がないやつもいる」Darrenが言った。
「そういう幸運な者もいるわ」Libbyが付け加えた。
その晩、Darrenは家を出て行き、翌朝裸で帰って来た。肩に黒いベルトを掛けて。
警官のベルト。拳銃さえもまだ入っている。
父の死の悲しみから、酔ったのか、自暴自棄になったのか?狼になって暴れた彼が何をやったのかはわからない。
だがもうここにはいられない。
彼らは荷物を車に積み込み、育った家に火を放ち、旅立って行く。
* * *
………いや、ごめん。本当にごめん。なんか色々申し訳ない。本当に駄目だわ。実はこの後、祖父の話の回想から続く、主人公の母の死にまつわる非常に美しく悲しい話が3ページほどにわたって書かれているのだが、書けなかった。理由はもう省略できず、全部書く以外の方法見えなかったから。
なんかいつもそんなことばっか言ってるみたいだけど、今回は本当に苦労した。とにかく最初祖父の家に四人で住んでいて、祖父が亡くなり旅立つまでの一章分紹介しようと決めたのだけど、なんかあちこち拾って短くまとめるというのが 本当に難しかった。なんか一旦書いてからやっぱこのことも書いておかなきゃと思って戻って書き足したりするばかり。
祖父の話の中で、彼の妻、主人公の祖母のいい話が色々出てくるのだけど、あちこちに断片的に散らばってて、ちゃんとまとめられなくて、結局全部省略。
最後、事件を起こして帰って来たDarrenに怒り、Libbyが手だけ狼に変身して攻撃する良いシーンもあったのだけど、同じく中途半端に書くのは気が引けて省略。というか最後にはできるのこんなもんかみたいな気分で諦めモードだったり…。
結局、このくらいの作品になってしまうと、一章全部完全に日本語にするぐらいじゃないと無理なのかも…。なんかこれでもこの素晴らしすぎる作品の一部でも伝わればと願うばかりっす。
物語はこの後、「僕」とLibby、Darrenの三人が各地を転々として暮らして行く話となる。ある土地でトレーラーハウス的なところでしばらく暮らすが、やがて様々な事情によりまた旅立って行くというような。
時系列的に並んではいるが、各章のつながりは比較的希薄で、短編連作というのに近いような構成。
時系列的に語られる本編というような章のそれぞれの間に、短いワンショット的な章が挟まれる。これらはその前の章の終盤ぐらいで出てきたキーワード的なものが主人公の人称となり、それに関する出来事が語られるというもの。例えば、 第1章の最後近くで、叔父Darrenが「僕」に「お前ヴァンパイアになりたいと言ってたよな」と話すところがあり、第2章はハロウィンの話で「僕」のところが「ヴァンパイア」という形で語られてたり。あれ?それほど難しくないと思ってたのだが、 なんか説明しようとするとややこしくなってる?まあ、とにかくそういう短い章が間に挟まれ、比較的幼い頃の話が時系列の本編の方とは別に語られるという形になっているということ。
第1章に出て来た重要なところでは、彼ら人狼種の血の問題があり、それゆえ人間とは深く関わることはできない。彼らの血を浴びるなどの接触を持った人間は「ムーンドッグ」と祖父が呼んでいたような理性を待たない半人半獣となり、命を絶つしか 救いようがなくなる。
語られていなかったところでは、人狼は長く狼の姿でいると、人間であったことも忘れ完全に狼となってしまう。
また、彼らは人間の姿のままでも、多くの動物にとっての脅威の対象であり、犬猫はもちろんの事、虫もあまり寄り付かない。
多くの人狼物語に出てくるように、銀は彼らの弱点。祖父のように年齢による衰弱以外はほぼ不死身の彼らだが、銀についてはうっかり触れるだけでも回復不能なほどのダメージを与える。
そして、第1章で語られているように、主人公の「僕」はまだ幼く狼に変わることはできない。いつかは祖父や叔父叔母のように狼に変わる日を夢見ながら、少年はひとところには定住できない流浪の生活を続けて行く。
様々な土地で、彼らは様々な同族と出会う。社会の陰で生きる者。人狼であることを捨てて人間として生きる者。
アメリカ社会の底辺というようなところで暮らしながら、ひとつの揺るがない誇りを持って生き続ける彼らの姿は、作者Stephen Graham Jonesのネイティブアメリカンという出自に通じるところのあるものだろう。なんてのはあまりにもお勉強臭い 優等生的感想文かね?
本当に美しく、素晴らしい、ホラーファンであろうがなかろうが、誰もが一度は読むべき名作です。必読!
と、まあそこそこ綺麗に終わったところで、ちょっと面倒なことを書こう。なんでそのまま終われないかね、というとこだけど、こういう奴なんで。
この作品、なんかで日本で広く読まれるようになると、ある問題が発生するかもしれないという懸念。あー、もちろん作品自体の問題ではないのだけど。
それは第9章Layla。14歳になった主人公の美しく悲しい初恋を描いた話。
なんかこの章の美しさと、作品全体的にはやや読みにくいと思う人も多いかもしれないというところが相まって、この作品についてここばかりが強調されることになってしまうかもという心配。
まあ具体的に言えば、「ウィリアム・ギブスンが読めないのはボクたちの頭が悪いからではなく翻訳が悪い」を数の力であたかもそれが正論定説であるかのようにゴリ押しした層によって。
なんかさあ、その挙句に「9章のみが名作!なんで全部この感じにしなかったのか理解できない」みたいなこと言いだすバカや、「評判を聞いて9章から読んだ。泣いた。あとは自分に向いてないと思ったので読まなかった」みたいなことを 当たり前の感想のように言いだすバカやらが横行するのが目に浮かぶ。
こんな出版状況では、日本で翻訳されることなんてまず起こらないから心配ないなんて言いきれない。英語が読めるバカなんて山ほどいるから。
まあそんなわけで、最初にブコウスキー風みたいなことを被せてみたわけです。異論がある人も多かろうが、この本読んで素晴らしいと思った人は、自分なりの考えでいいからこういうバカを寄せ付けない方法を念頭において薦めるようにしてください。
あー…、結局自分がこう言ったことでなんかのきっかけを作ってしまったかもという心配も起きてしまうんだが、本当にこういうことが起こってしまう前に言っておくべきなんだと思う。とにかく本を全部きちんと読めないやつ、 ちゃんと自分の頭を使わずに都合のいい他人の意見に乗っかってわかった風な口をきくやつなんてのには、本を語る資格なんてねえんだってこと。
さてStephen Graham Jonesについてなのだが、いやまずどうしようかという感じ…。最初の方で書いたように、この人この後に代表作といわれるようなのを続々と出してるわけだし、こんなことになった経験もないもんで…。 まあ、とにかく自分がこれだけはいつか読まなくてはと思いつつ放置し、そっちの方ちゃんと見てなかったのが悪いんだけど。
これほどの作家になれば、とにかくこの先の代表作ってところから読んで行くのは確定なんだが、うーん、いやここハードボイルドのこと書いてるところだからね、というのがこのくらいになっちゃうと出てきてしまう。結局、どこかで線引きしないと、本来の目的からそれてしまう、というような事。
まあそんなわけで、このStephen Graham Jonesに関しては、個人的に読んで行くことになると思うので、また次に書くことがあるかどうかはあんまり期待しないでください。ということになっちゃうと思います。そもそもが読んだ本 全部書いてるわけでもないしね。とか言ってもこれほどの作家では読んだら何か言いたくなってしまうところもありそうなんだがね。とりあえずは『The Only Good Indians』(2020)、そんでThe Indian Lake Trilogyに進むという感じかな。
またホラージャンル作品についてもやって行く予定ですが、なんか改めてこれハードボイルドのこと書くところだからな、と自分の中で再確認させられるぐらいの作品でしたということかな。
新刊情報、その他
なんかこの回こういうの入れにくいな、とかで先延ばしにしてきたら色々溜まって来てしまったので、ちょっと今回もホラージャンルだったりするけど、ハードボイルド関連の新作情報などを短くやっておきます。
まずは最新、ジョーダン・ハーパー新作。『A Violent Masterpiece』が来年2026年4月に発売予定!まだ結構先なのもあるけど、ジョーダン今先月頭公開の映画の方で忙しそうで、あんまり自分で宣伝しとらんけど。
前々作ぐらいで開眼したのか前作『Everybody Knows』では主人公を二人立てるパターンをやって来たのだが、新作はなんと主人公が三人になるらしい。トリプル主演ww。また読後全体を俯瞰するとDVDのチャプター選択画面が頭に浮かぶ ジョーダン・ハーパースタイルになるのは多分確実なんだろう。
続いて、早く書かなきゃと思いつつ先延ばしにしてたのが、今年5月から始まった英国Fahrenheit PressからのFahrenheit Pocket Noirシリーズ。こちらは過去に出版された作品を安価、お手頃サイズで出版するというシリーズで、日本の文庫本 的な企画。というかサイズ10X15cmぐらいで、ほぼ文庫本と同じ。最初にあの10th Rule Booksでお馴染みの…、えっとしばらくご無沙汰だけどまだ憶えてる人いるよね?のTodd Morrの過去作3作がリリースされ、なんか消えたタイミングからして これかな?と思っていたAnthony Neil SmithのBilly Lafitteシリーズ第1作『Yellow Medicine』が7月に第2弾として登場。今のところ1冊だけだが、Billy Lafitteシリーズについては現在出ている4作までがこのFahrenheit Pocket Noirシリーズから 再販されるらしい。その発表の際、Smith先生のSubstackほぼ撤退でどうなるのかなと思っていた第5作も無事進行中であることが明らかにされた。多分Fahrenheit Pressから出るのではないかと思われるけど、このポケットシリーズなのかは不明。
その他、このポケットシリーズからは、これも早く読まなきゃとずっと思ってたJo PerryのDeadシリーズ(Charlie & Rose Investigateシリーズ)第1作の『Dead Is Better』が8月に第3弾として出版されている。
未訳おススメのところで消えてるBilly Lafitteシリーズもいくらか揃ってきたら修正するっす。あと、もう続き出ないのかもでもったいなくて読めなかったLafitte第4作も早く読まねばだし、第5作は出たらすぐ読む!
あと、もうだめなんかと思ってあんまり見てなかったDown & Outが持ち直して、いつまでたっても書けないEric Beetnerが復帰してるじゃん、とかの話もあるんだが、それは多分次回に。
なんかね、世界に読むべき本なんてもう途方もないくらいあるよね。ホラーもっとなんとかしなくちゃ、Stephen Graham Jonesもっと読みたいとか考えながらこれ書いてる一方で、最近のPI小説方面もっと読まなければ等々で、7~8冊以上は 積み上げてるしな。いつまで暑いのか知らんけど、何とか生き延びたらまたいい本の話しますですよ。
■Stephen Graham Jones著作リスト
- The Fast Red Road: A Plainsong (2000)
- All the Beautiful Sinners (2003)
- The Bird Is Gone: A Manifesto (2003)
- Seven Spanish Angels (2005)
- Bleed into Me: A Book of Stories (2005)
- Demon Theory (2006)
- The Long Trial of Nolan Dugatti (2008)
- Ledfeather (2008)
- It Came from Del Rio (2010)
- The Ones that Got Away (2011)
- The Last Final Girl (2012)
- Growing Up Dead in Texas (2012)
- Zombie Bake-Off (2012)
- Zombie Sharks with Metal Teeth (2013)
- Three Miles Past (2013)
- The Least of My Scars (2013)
- States of Grace (2014)
- Flushboy (2013)
- Not for Nothing (2014)
- After the People Lights Have Gone Off (2014)
- The Gospel of Z (2014)
- My Hero (2016)
- Mongrels (2016)
- Mapping the Interior (2017)
- Night of the Mannequins (2020)
- The Only Good Indians (2020)
- The Indian Lake Trilogy
- My Heart Is a Chainsaw (2021)
- Don't Fear the Reaper (2023)
- The Angel of Indian Lake (2024)
- I Was a Teenage Slasher (2024)
- The Buffalo Hunter Hunter (2025)