
確か2022年頭ぐらいのどっか、コロナ禍から色々回復し始めたころ、2022年9月にSimon & Schuster UKから出た『The Last King of California』と同時に出版がアナウンスされたため、どっちが先に書かれたかわからないかも、 ぐらいのことを書いていたが、読んでみれば、まあ出版順で間違いなかろうなという感じ。その辺については後述するか。
前作『The Last King of California』では、同じカリフォルニア州でもやや辺境の森林火災が押し寄せてくるあたりだったが、今作の舞台はLA。ハリウッドの芸能界の闇を動く二人の男女が主人公となる。
ハリウッド芸能界で日々起こる、様々なスキャンダルや揉め事。それらをもみ消し、すり替え、調停する、弁護士事務所を中心に様々な役割に枝分かれした巨大組織。二人の主人公はそれぞれ別の枝分かれしたセクションにいる。
ひとりはMae Pruett。主に広報関連担当の女性。問題発生の際に、記事・報道が出る前に交渉を行い、当事者のイメージを損なわない方向へと誘導する。
もうひとりはChris Tamburro。元刑事の男性。ダーティーな噂を売る密告屋への対処など、腕力が有効な場に赴く。
かつて短い期間に関係があったが、現在は別々の道を進む二人。だがある事件に関係し動くうちに、二人の道は再び交差し始める…。
Everybody Knows
Mae / Chateau Marmont
ロサンゼルスは燃えている。
何処かの病質者がホームレスのキャンプを焼いている。今夜は5号線近くのロス・フェリズにあるテント・シティ。炎はグリフィスパークまで広がる。
Maeはシャトーマーモントの秘密の出入り口の外で待っていた。サンセット・ブールバードを行き交う旅行者たち。彼らはサンセット・ストリップがキャンプファイアのような臭いがするとは思わなかっただろう。
Maeは、Danからの連絡を受け、あるスタンダップコメディアンとのデートをキャンセルしてここにやって来た。
Danからのメッセージは「Hannah シャトー ASAP」。続いてHannah Heardの新しいアシスタントの電話番号。Danからのメッセージはいつものように暗号めいている。
シャトーマーモントの秘密の入り口は、プライベートコテージ群の並ぶ洞窟へと、直接続いている。
グリーンクロスのドアが開き、アシスタントの女性が迎える。
「あなたが広報担当?」アシスタントが言う。
「その類いよ。彼女のところへ連れてって」
Hannahのプライベートコテージで、Maeは彼女と対面する。フーディーを深く被り、大きなサングラスを掛けたお馴染みのファッション。
「サングラスを外して、なぜ私がここに呼ばれたか話してくれる?」
Hannahはサングラスを外す。彼女の左目は紫に変色し割れたプラムのように腫れ上がっていた。
「撮影開始時間は?」
「AM4時にメイク」
「クソッ」
スキャンダルで地に堕ちた彼女のイメージ回復へのストーリーは慎重に作り上げられてきた。6か月のリハビリの後のインタビュー。健康的なイメージの頒布。そして明日からはドラマ撮影が開始される。
彼女の目はそのすべてを台無しにする。
MaeはHannahからその経緯を聞く。
Hannahの旅の流れはこういうもの。プライベートカーによりサンタモニカ空港へ行き、プライベートジェットに乗りフランスのどこかのプライベートの着陸地へ。50歩歩いてヘリコプターへ乗り換え、国際水域に浮かぶ100フィートのクルーザーへ。 そしてそのクルーザーがクライアントの待つ三階建てのメガヨットへと彼女を運ぶ。
不確かな噂として囁かれる、大金持ちが美女を侍らせる海上パーティー。だがそれは実在する。
「あいつは自分のことを如才ないとか思ってたんだ。あいつはあたしを撮ろうとした。…つまり、ヤッてるところを。それであたしはあいつの電話を窓から海に捨ててやったんだ。それで…」
段取りを終えたMaeは、シャトーマーモントのバーで結果を待つ。そこにDanから電話が掛かって来る。
「彼女の犬ってわけか?」心底楽しんでいる声。
「じゃあ彼女アップロードしたわけね?」
それは2分ほどのビデオ。サングラスを掛けたHannahが愛犬Mochiとじゃれる。Mochiの突然の頭突き。そしてサングラスを外したHannahの目に痣。
「スタジオは既にビデオをリツイートしてる。撮影開始はAM6時からだ」
「月曜の仕事の後、予定はあるか?」Hannahについての会話の後、Danがそう言って来る。
「エクササイズのクラスぐらいかしら」
「じゃあ、飲みに行こう」
Danは彼女にとって、これまでで最も好ましい上司だった。彼はこれまで彼女を誘うようなことはしなかった。
「ポロ・ラウンジで。いいな?」
嫌な雰囲気中の嫌な雰囲気。ポロ・ラウンジはビヴァリーヒルズ・ホテルにある。ホテルバーで一杯。エレベーターひとつでカリフォルニアキングベッドへ直行。
「何の件で?」
「俺の輝かしい未来のためのグランドヴィジョンを共有して欲しくてね。すなわち君の」
「分かったわ」不安な気持ちを抱えながらMaeは承諾し、電話での会話は終わる。
Chris / Mid-Wilshirer
Britのアパートは、カタログからの写真のようだが、場末の洗濯屋のような匂いがした。ビー玉でいっぱいのガラス瓶、アンティーク・トイがまさに、この全ての役立たずの出鱈目、という感じで陳列されている。チンケで安っぽいスローガンが でかでかと書かれた額入りのポスターがそこら中に掲げられている。「笑い続けて生きよう。君だけのマジックを作ろう。パースピレーションはインスピレーションを引き出す」リングライトと三脚がそこら中に。Britの世界の全てが まさにここに。
Chrisは明らかなその世界の真ん中に明確な侵入者として立っていた。41歳。オフェンシブラインマンタイプの大男。3XLのトラックスーツに身を包み。
彼は他の誰かの腕の拳だ。
携帯をチェックする。Patrickが10分前に、Britがリトル・トーキョーのバーを出たと連絡してきた。奴が戻るまでもう10分。
暇つぶしに部屋を探し回り、見つけたドラッグと現金をポケットに入れる。
そしてカウチに腰かけ待つ。
やがてホールに足音が響き、鍵がもたつきながら差し込まれる音が聞こえる。
ドアが開き、コカインに酔った眼の痩せたチビ助、Britが入って来る。
Britはすぐに自分のアパートの中に立っている大男に気付く。「誰だよ、お前?」平然を装うが、声はついて来ない。
「さて」Chrisは言う。「お前がどこでしくじったか、話してやろう」
ChrisはBritに向かって歩み出す。Britは動かない。もはや逃げ場はないことは理解できる程度の頭は持っている。Chrisは横を通り過ぎ、ドアを閉める。
「お前はいつもと同じパターンでしくじった。欲をかき過ぎたんだよ」
「しくじったのはてめえの方だよ。見た目通りの間抜けなんだろうな。俺が誰だか知ってるのかよ?」
「ああ。多分お前はゴシップサイトに下世話な噂を永久に売り続けることができたんだろう。だがお前は欲をかき過ぎた」
BritはD級の有名人、リアリティショーやインスタグラムのインフルエンサー程度の友人を多く持ち、仕入れた秘密をこっそりと、タブロイド紙など金を出す相手誰にでも売りつけて来た。
Britは先月、Bリストの俳優、Patrick DePauloがコカインで鼻柱に穴をあけたという情報を、タブロイド各紙に売りつけた。
恐らく、BritはPatrickの父親が誰だか、調べようとも考えなかったのだろう。Patrickのブガッティと尽きることのないコカイン供給が、散発的なシットコムのゲスト出演で賄われていると思っていたのだろう。
Patrickの父、Leonard DePauloは、L. A.最大の民間警備会社、BlackGuardの所有者だ。
BlackGuardからの下請け業務。Patrickの父親は、通例家族関係の仕事に自社は使わない。そして弁護士Stephen Ackerに依頼し、Ackerを経由してChrisに仕事が来た。
「お前は売ったのが誰か調べるという宿題を忘れたのさ」
Britの頭の中で、何かが繋がる。「これはPatrickの件だな、そうなんだろ?」
「俺はクソみてえな話を売ったさ。それがなんだ?みんな噂してることだ。それで稼いで何が悪い?」
「あいつの親父が兵隊と殺し屋を飼ってて、お前が送られて来たってわけか、ああ?ならず者部隊の一員が?」
「俺はこれからお前を痛めつける」
「顔は勘弁してくれよな。明日撮影があるんだ」
Chrisは頷く。誰もショーを止めることは望まない。
ChrisはBritの肩を掴み、腹に膝を打ちこむ。もう一発。
Chrisの仕事は終わった。Britを痛めつけている間、彼は何も感じなかった。Britもそうだったかはわからない。
とりあえず二人の紹介的なそれぞれの第1章。こういう形で名前/場所という感じで章タイトルが入り、基本交互に入れ替わり続いて行く。Maeの方は年齢は入っていなかったが、32歳。
物語はMaeサイドから動き始める。
不安を感じながら、上司Danに誘われたバーに向かうMae。Danは彼女に、現在付き合っている相手はいるか、住んでいるところの間取りは、などを尋ねてくる。
Maeは、自分は上司とそういう関係になるつもりはないと、明確に告げる。
Danはこれは一つのカバーストーリーさ、と話す。俺たちがこういうバーで会っていれば、誰でもそういう関係と見て疑わない。
そしてDanは、巨額の富を得る計画があると匂わせる。自分たちの仕事の外で。
「全ての富の源は犯罪だ。聞いたことがあるだろう」Danは言う。
「一旦入ったなら抜けることはできない。話を聞いただけでも。知ることはすなわち参加することだ。考え直すことはできない。俺たちはこれを最重要機密保全で実行する」
「明日の晩、同じバット・タイム、同じバット・チャンネルで。俺はこのテーブルに座り、ドリンクを注文し、飲む。もしお前が俺の向かいに座るなら、すべてを話す。もしそうでないなら、これはなかったことになる。そして人生はこれまで通りに続く」
「お前は既にこの汚泥であらゆる汚れ仕事をやって来た」Danは続けて言う。「一度は自分のためにやってみてもいいんじゃないか」
翌日、Danはオフィスには現れなかった。アシスタントによれば、一日中のミーティングということ。Danの不在中も、厄介な件が持ち込まれる。
夕方、渋滞にイラつきながら昨日のバーへと向かう。道の先で何かの事故があったようだ。時間には遅れそうだが、電話はするなと言われている。
やっと着いたホテルの前の交差点では黒のテスラが歩道に乗り上げ、その周りに警察の封鎖テープが張られている。
Danは黒のテスラに乗っている。ビバリーヒルズの半分はそうだ。Maeは自分に言い聞かせる。
フロントガラスに銃弾が撃ち込まれた蜘蛛の巣。窓ガラスに血でペイントされたジャクソン・ポロック。ストレッチャーに乗せられブランケットがかけられた死体。
風がブランケットをめくる。
MaeはDanの側頭部から溢れ出た灰色の脳髄を見る。
Danの事件はスピード解決を見る。Danにカージャックを仕掛けた人物は、監視カメラにより特定され、翌日に発見、射殺される。
そして、ChrisはAckerと共に、BlackGurdのLeonard DePauloに呼ばれ、その事件の捜査を依頼される。
「Dan Henniganは多くの非常にセンシティヴなクライアントの情報に通じていた。もし彼の死亡事件に更なる話があるなら、我々はそれを知らねばならん。それで我々は警察と並行し、独自の捜査を行うのが好ましいと考える」
「私の元の警察関係のコネクションを使い、内部情報を探れと言うことですか?」
「その通りだ」
昔の同僚たちに会い、事件とその後の解決について詳しく調べるChris。だが、彼はその中に巧妙に段取りされた匂いを感じてくる…。
Maeは謎の陰謀めいた話を聞いた翌日のDanの死亡という事態を不審に思い、独自に密かに調査を始める。
Danの最近の女性関係を調べ、一人の女性について調べ始めるMae。
そしてそこで、思わぬ形でMaeとChrisの道は交差することとなる。
MaeとChrisは、過去にある若手アイドル俳優の過剰摂取による死亡事件で出会う。
お互いに飾らず本音で話ができるという相性を感じ、その後しばらく関係を持つこととなる。
だが、噓に囲まれた世界で本音で語れるという関係に、危機感を抱いたMaeからの申し出で、二人の関係は終わっていた。
偶然出会ってしまった二人は、とりあえず同行して調査を続けるが、そこである秘密を目撃する。
彼女たちの属する組織には不利益をもたらすかもしれないその秘密を、二人は協力して秘密裏に探って行くことになる。
そして少しずつ明らかになるその秘密は、二人に組織の外に出て、それに反する行動をとる決断を迫る形をとって行く…。
* * *
まあしばらく前ぐらいになってるあたりだと思うが、翻訳ミステリよりもう少し広範囲ぐらいのところの評論・レビュー界隈で、犯罪ジャンル作品に対して「よくある話」だの「ありきたりの設定」だのというようなレッテルを貼り、自分の見識だか何だかを ひけらかしたつもりで格好付けられると思っている阿呆連中がふんぞり返っていた。これの意味は、実際の警察官が在職中絶対に遭遇しないような不可能犯罪でも、どこか世界の全く関係ないところで起こっていることになっている「スケールの大きい」国際謀略でもなく、誰でも様々なところで目にするような組織犯罪や ドラッグ関連などの言ってみればリアルで日常的とも言える犯罪を描いた作品ということ。ホントバカじゃないの?
それぞれの「現在」におけるリアルな犯罪を通じて社会を描くという形で進化してきたハードボイルド/クライムジャンル作品が、こんな愚物の小手先の格好付けによって踏みつけられてきたことは本当に腹立たしい状況で、しかもそれを始めたのが 団塊世代ぐらいのいい年をした爺連中らしいというあたりにも本当に呆れるんだが、その辺のことは一旦置いておこう。
この作品『Everybody Knows』は、ハリウッド芸能界のスキャンダル、事件を、裏から様々な形で情報操作し、イメージを保つために動く組織集合体を中心に描いた作品。
日々浮かんでは消える芸能界のスキャンダル、それこそ言ってみれば(上記のような経緯であまり言いたくないところもあるが)よくある話。Everybody Knows -誰でも知っている。リアルな犯罪を描くハードボイルド/ノワールジャンルの後継者として ジョーダン・ハーパーが新たに選んだ作品舞台が、このハリウッド芸能界というわけなのだ。
映画・テレビ業界で長い経験を持つジョーダン・ハーパーが暴くハリウッドの闇!なんて激安暴露本モードのコピーなんて、果てしなく願い下げだよん。
双方の第1章はなるべく作品の雰囲気が伝えられるようにやったつもりだけど、それでもかなりスカスカな気分。それぞれの目を通して見える風景・人物に対する短く断片的に語られる印象が、現在のL.A.やハリウッド芸能界の多角的なパースペクティヴで 見える風景なのだろう。
そしてほとんど端折ったその後のあらすじの中では、同じような視点でからによる彼女たちが属する組織・状況が描かれて行く。そして主に移動を通して見える簡潔だが詳細に描かれる様々なL.A.の風景。
なんかほとんど飛ばしてしまった、それらをモザイクのように組み合わせて作られた描写の方がジョーダン・ハーパーのスタイルの本質かとも思ったりする。
今作では、というより以前からもそうだったように思うが、主に車による移動の際には、その道順であったり風景などが、前述のように簡潔かつ詳しく描かれる。
それはビバリーヒルズに立ち並ぶ豪奢な邸宅群から、観光客の多く集まるブロードウェイ、そして河岸のホームレス・キャンプまでに及び、現在のL.A.全体を俯瞰する地図として描かれて行く。
そしてその地図は、同様にハリウッドの暗黒面を多く描写した、かのジェイムズ・エルロイのL.A.四部作、現在進行中の新L.A.五部作と時代を挟んで重なるものなのかもしれない、なんてことも考えたりする。
さて、最初の方で言ってた第2作、3作って話。前の『The Last King of California』は、カリフォルニア田舎方面を舞台として、主人公Lukeのビルディングロマンス的ストーリーがメインとなり、そこからCallieのストーリーが枝分かれしていくような形と なって、最終的には二人の主人公それぞれのという感じの結末に至る。
それに対し、この『Everybody Knows』は、最初から二人の主人公のストーリーが明確に並行する形で始まり、舞台は近年のハードボイルド/クライム作品の田舎・ローライフという傾向に連なる方向性だった前2作から、都市部であるL.A.中心部へと 移動している。
この辺から、様々な外的状況から出版日時が接近してしまっただけで、第2作として『The Last King of California』を書いた後に、この『Everybody Knows』が第3作として書かれたのだろうと推測される。まあゴチャゴチャ余計なこと考えず、 出版日時順で考えればいいんだろ、ってことなのだけどね。
ここから、おそらくジョーダン・ハーパーは、ハリウッド芸能界的なところは分からんけど、都市部であるL.A.を描くというような方向性で進んで行くのではないかという予想も出てくる。まああくまで予想だけどな。
そして上で書いて伝わってるのかやや不安な感じの、ジョーダンの文章・記述方向でのスタイルだが、なんかトラヴィス・マッギーからずいぶん遠くまで来たよな、というような視点もこれからハードボイルドジャンル作品を読んで行く上で 持つべきなのかな、というようなことも考えさせられたとも思う。
この作品の結末については、やはり結果的には巨悪と闘うという感じの方向に進んでしまったためか、前作『The Last King of California』のような爽快感はなかったかも。まあどういうのが正しいとかいう方向の押し付け的考えは心底嫌いなんで、 あくまで一つの感想として。
あとまあちょっと余計なことかもしれんけど、全68章に細かく区切られ、その中で前述のようにやや緻密ぐらいに主人公のいる場所について書き込まれたこの作品を、読後俯瞰してみると、なんかポワ~ンと、DVDとかの小さな画面が ずらっと並んだチャプター選択画面みたいなのが浮かぶんだけど。なんかこういうのもこれからジョーダン・ハーパースタイルのひとつってことになるのかもね。
ジョーダン・ハーパーが現在のハードボイルド/クライムジャンルにおいて、今後のシーンを先導して行くような重要作家の一人であることは、もはや言うまでもない。ここで長編第3作。まあまだ「初期作品」と言ったところに 属する段階だろう。ここからどんどんこの国の状況と共において行かれないために、ここまでの初期3作『She Rides Shotgun』、『The Last King of California』、『Everybody Knows』は必ず読んでおくようにね。
さてジョーダン・ハーパー最新情報なのだが、とりあえず第4作に関するアナウンスは現時点ではなし。なのだが、関連情報は二つ。
まず、現時点では進行中らしく実物は見えてこないのだけど、この作品『Everybody Knows』はコミカライズされ、Comixology Originals作品として出版されるとのこと。これしばらく前にジョーダンが自分のXで言うてたんで間違いの類いではないと思う。 Comixology Originalsは、現在はそれ自体が出版社というものではなく、インディーパブリッシャーや個人出版のものがそのブランドを通じて出版されるという形らしいんで、ジョーダンの個人出版という形で進んでいるのだろうか? いずれにしてもこの作品を120~50ページぐらいのコミックにまとめるのは少し難しそうだが。そちらについては実物が出たらコミック支店の方でやると思うので、その際にはこの中にリンクを付けますので。
そしてもう一つ、こっちの方が直近なのが、『She Rides Shotgun』映画版が8月に公開というニュース。これがあるんで早くやっとかなきゃとなってたんだが。監督ニック・ローランド、主演タロン・エガートンで、アメリカでは8月1日から。 日本で劇場公開というような情報はまだないみたいだけど、何らかの形では観れるようになるんじゃないかと思う。
そこで気になるのは邦題…。日本での翻訳出版の際の邦題は、いつの西部劇だよみたいな酷いもんで、二度と書く気も起らんやつだが、まさかそれが使われることはないと思うが…。ただ劇場公開にならなかった場合は、さらにひどく扱われて 割と最近やった『ドニーブルック』みたいな、これまた二度と書く気が起こらんぐらいの酷いバカタイトルつけられる可能性もあり。本当にシンプルに原題通り『シー・ライズ・ショットガン』でやってくれと祈るばかりっす。
トレーラーはこちら。面白そうっしょ?
原作出版の際に、助手席をショットガンとか言うの知らないってことで英国・日本とタイトルを変えられてしまい、こんなカッコイイタイトルを!と不満の多いジョーダン・ハーパーは、今回の『Everybody Knows』でも隙あらばぐらいに その普及に努めている。少なくとも犯罪小説ジャンルではかなりよく見るのだけど、なんか日本でもギャングスタラップみたいな経由で入ってきてないんかね?
ちなみに、途中で出て来た「同じバット・タイム、同じバット・チャンネルで」は、昔のテレビの『Batman』のエンディングナレーションの最後のお馴染みのセリフらしいけど、日本でもテレビ放送されたらしいこれを観ていた世代よりも、今では DVDやブルーレイのボックスセット持ってる人ぐらいのところぐらいでお馴染みなのかも。まあこっちの普及はいいよね…?
* * *
さて、最後にジョーダン・ハーパーと同時代というような、現在の米国のハードボイルドジャンルの重要作家の新作というあたりをいくつか挙げておこう。本当はこういう視点って常に必要なんだけど、どうせ日本の翻訳ミステリなんてところは、 青息吐息でなんか賞とったとか言うのを一個ずつ拾って来るのがやっとのうちに、この辺も全部途切れてわかんなくなっちまうだけが精々なんだし。まず、S・A・コスビー。今年6月に新作『King of Ashes』が出ましたー。コスビーでももう出るか出ないかわかんないぐらいの状況なんだろな。確実に出るの年末の紅白クイズ合戦向けだけなんだろ。
そしてちょっと厄介なのが、ルー・バーニー。昨年11月に『Double Barrel Bluff』が出たのだけど、これ『ガットショット・ストレート』のシェイク・ブション・シリーズのまさかの第3作。もうこれやんないと思って油断してたんだが。 まあ2012年の第2作『Whiplash River』が出てないし、なんか賞みたいなとこにも引っ掛かってないので、バーニーももう出ないんでしょ。今年9月には新作『Crooks』も出るんで、早く読んどかなきゃ。まず『Whiplash River』最優先か。
続いてロブ・ハート。なんか『Assassins Anonymous』が翻訳出てるらしいんだけど、邦題調べる気も起きず。Assassins Anonymousシリーズ第2作『The Medusa Protocol』が6月に出ました。なんかSubstuckに書いてたの見ると、第3作も ほぼ完成してるらしい。ロブ・ハートについては、今は亡きPolis BooksのAsh McKennaシリーズからやろうと思ってたんだけど、もたついてるうちに終わってしまった…。今のところ再版についてのアナウンスなし。そろそろ出ないかな。
日本で出てないもんとしては、最近やって衝撃的だったGabino Iglesiasが今のところ2024年『House of Bone and Rain』が最新だが、そろそろ新作来るかも。
あとはBull MountainシリーズのBrian Panowich。新作『Long Night Moon』は来年予定だが、シリーズ4作早く追いついとかなきゃならんし。
パッと思いついたあたりこんな感じまでで申し訳ないんだけど、まだまだ掘れば出てくると思うよ。
なんかこの辺のクラスのやつとか、もしかしたら日本で出るかもみたいなの考えて後回しにして遅れてたりというようなところがあった。しかしもはやその可能性ほとんどなくなってるだろうし、翻訳ミステリ業界気持ち悪すぎて出ても一切見る気も起こらんしで、 もうすべて原書で読むことにしたわけだ。だが、ん~そうなってみると、この辺基本的には優先度の高いものばかりなんで順番もつけがたく、上記の感じで遅れてるのが多過ぎて、やや渋滞気味。持ってるけど翻訳出たから急がないでいいやとか思って後回しにしてた イーライ・クレイナーとかもう3作も出てたりとか…。なんか最近さっぱり思うようにはいかんけど、もっと書く量増やさなきゃみたいにしきりに言ってたのも、これが一因なんだろうと思う。今気付いたんだが。
とにかく片っ端から読んで、出来るだけ書いて行くつもりだけど、やっぱりどこかで個人的に優先度つける感じになるのかも。どこで線引きするかはわからんけど。何にしてもこういう「今」ってところを、常にこれがどこに位置するのか、 何処から繋がるのかを明確にして見て行くのは一番必要なことだと思う。結局、過去にも未来にも繋がるのは「今」で、そこから歴史が構成されて行くわけだし。
ただねえ、なんか自分ってどうしても知らないものやら正体不明みたいなもんにやたら惹かれる傾向みたいなもんがあって、こういう次第でここのところやや確実、鉄板ぐらいのところばかり読んでて、あーもうちょっと正体不明のもんを 読みたいなー、みたいなのが起こって来て、いくらか予定されてる既読のものの先でそういうものに流れて行ってる今日この頃です。なんか根本的にそういうメジャーなことをやるのに向いてないんだろ、わし。
そんなわけで、最新注目作品が出るか、それを押しのけて何か聞いたことも無いものが出てくるのかはその時の気分次第ぐらいだけど、とにかく自分的に面白い本について頑張って伝えて行きますので。
■Jordan Harper著作リスト
●長編
- She Rides Shotgun (2017)
- The Last King of California (2022)
- Everybody Knows (2023)
●短篇集
- Love and Other Wounds (2015)
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