2016年4月2日土曜日

2000AD 2015年春期 [Prog 1924-1936]

いくらなんでもそろそろなんとかしなくては、ということでずいぶん遅れている2000ADの続き、昨年2015年の春期です。まず、今期のラインナップは以下の通り。

 Judge Dredd
 Slaine [Prog 1924-1936]
 Grey Area [Prog 1925-1931]
 Orlok, Agent of East-Mega One [Prog 1924-1929]
 Strontium Dog [Prog 1924-1933]

ご覧の通り、今期は『Slaine』のみがProg 1936まで続き、他の先品は早めに終わっており、その後には3話構成の「Tharg's 3rillers」や1話完結の「Tharg's Future Shocks」が収録されるという形になっていました。実際にはProg 1934からは夏期の連載が始まっており、『Judge Dredd』もそこが区切りとなっているので、今期はProg 1933までのものについてまで書いています。
そして今期のトップ画像は、John Wagner/Carlos Ezquerraの巨匠コンビによる、宇宙冒険活劇へと復帰した『Strontium Dog』であります!


Judge Dredd
 1. Enceladus - New Life : Rob Williams/Henry Flint (Part1-5)
 2. Breaking Bud : John Wagner/Richard Elson (Part1-5)

1は2014年冬期の同コンビによる個人的には2014年のDredd最高傑作「Titan」の続編です。犯罪を犯したジャッジの流刑地であるTitanで、秘かに反乱を起こした囚人たちによる罠で、ドレッドが絶体絶命のピンチに陥るというストーリー。最終的には元女性ジャッジNixonをリーダーとする囚人たちが宇宙船を奪い、土星の衛星であるEnceladusに逃亡して終わります。
今回のストーリーは、そのEnceladusから謎の宇宙船がMega-City Oneへ向かって接近するところから始まります。以前の事件の後、ドレッドには告げられないまま、Enceladusには核ミサイルが撃ち込まれ、生存者はいないはず。呼びかけに全く応答しない宇宙船はCityの外で撃墜される。残骸の調査では船内には人間がいた形跡すらなく、ただEnceladusの氷のみが発見される。ドレッドは船内に記録映像を見つける。それはNixonによるEnceladusに逃亡した後の経緯だった。極寒の衛星Enceladusに着陸した囚人たちはその過酷な環境にたちまち危機に陥る。食料も尽き、グループは絶滅に瀕する。Nixonは独り放棄された基地へ探索に向かい、異様な生命体と遭遇する…。
今回もHenry Flintの作画が素晴らしい。実は今期の全5話は前編で、続く夏期に後編であるOld Lifeが続き、Mega-City Oneに恐るべき脅威が訪れます。

2も以前の2000ADもしくは、Judge Dedd Megazineに掲載された話から続くエピソードのようなのですが、こちらについては元が今のところ分かりません。Justice Departmentの兵器研究所で研究されている、着装した人間の姿を不可視にして力を増大させるというブレスレットを巡る話で、実はこれはその以前のエピソードで何らかの方法で更に未来の世界から持ち込まれたものであるようです。今回の話では、研究のためにそのブレスレットを装着する被験者となっていたBudという男がリストラされ、生活苦とリストラされた恨みから、盗み出したそれを使い事件を起こすというもの。そこに更に未来から回収のために現れた時間警察が絡んできます。
タイトルの「Breaking Bud」は、明らかにあのアメリカのTVドラマ『Breaking Bad』のもじりですね。生活苦に追いつめられた男の犯罪というところが共通しているけど、多分John Wagnerもあの作品が気に入っているのでしょうね。
作画のRichard Elsonは見た事がある画だと思っていたのだけど最近のDreddではないようです。どちらかというと地味な印象ですが、堅実にわかりやすくストーリーを伝える画。最近のWagnerによるエピソードでよく起用されるタイプの画で、Colin Macnelあたりに近い印象だと思います。

Slaine/The Brutania Chronicle : Book Two Primordial
 Pat Mills/Simon Davis

2014年春期に掲載された「Book One A Simple Killing」に続くThe Brutania Chronicleの第2章です。昨年に書いたときと比べ、よくわかったなどとはまだ到底言えないのだけど、少しわかってきたことをまず修正がてら書いておきます。まずはこの作品は思っていたような古代戦士の冒険譚というよりは、かなり複雑なオリジナルの神話的世界を舞台としているらしいこと。前回、作品中でGoddessと書かれていたのを雰囲気から神と書いてしまったのですが、もう少し複雑なものらしい。Slainは基本的にはそのGoddessに仕えているようなのだけど、一方で憎悪の対象でもある様だったり。でも単純に王様的ななものとも違ってどちらかと言えば神的なものという感じのようなのですが。ストーリーの中には登場せず、様々に言及されるだけだったりするのもわかりにくいところなのですが。今回も更に過去の出来事に関する言及が増え、わからない情報が膨らむばかりだったりするのですが、わかる部分でのストーリー展開とSimon Davisの素晴らしいアートでなんとかしがみついて読んでいた感じです。とりあえず今回もなんとかあらすじの解説を試みてみます。
前回はカルト教団と書いていたのだけど、神話世界で魔法的なものも普通のようでちょっとその解釈も間違っていたと思います。さて、今回のストーリーはThe Brutania Chronicleの最大の敵であるLord Wierdの領土内の本拠地の砦Gulnasadhに乗り込んだが力尽き、Slaineが捕獲されたところから始まります。かつて父をSlainに殺されたLord Wierdは自らの手で決着を付けようと彼に闘いを挑む。Goddessの力も及ばないところで絶対のピンチに陥るSlainだったが、かろうじてLord Wierdを下し、虜囚となっていた娘Sineadを連れ、Gulnasadhを脱出する。鍛えられた追手の軍団と森で死闘を繰り広げるうち、洗脳されていたSineadも正気を取り戻す。だが、彼らの前に立ちふさがる軍団の隊長こそがこの旅の途中で別れた共にGoddessに仕える親友Gortiだった…。
今回、森で多勢に追いつめられたSlainは、隠された奥の手的な能力Warpでクリーチャー的な狂戦士となって戦います。それが右の画像。スーパーサイヤ人というよりは大猿的なもののようです。ちょっとわかりにくいかと思ったのでWarpと書いてみたけど、文脈的には「歪む」という感じなので以降はその書き方で行きます。しかしそんな能力を隠していたとは。まだまだ知らないことが出てきそう。今回ラストは、Lord Wierdにより歪み能力を与えられたGortiがSlainに襲い掛かり、死闘の決着は如何に?というところでBook Threeへとつづく。
今回もSimon Davisの画が圧巻。とにかく多少は内容が把握できなくても画だけでも見る価値あり。ご覧のようなイラスト、絵画の域の画なのだけど、バトルシーンでも動きも迫力もあり素晴らしい。巨匠Pat Millsについては、冬期に騒いでいた通り、『ABC Warriors』『Savage』などを含むMills未来史に取り掛かり、手始めに『Invasion』を読み始めているところなのですが、このもう一つの代表作『Slaine』についても最初から少しは読み始め、いくらかでも早く設定ぐらいは把握しなければいかんなと思っております。

Grey Area/Locked In/Talk Down
 Dan Abnett/Mark Harrison

2014年春期に、敵宇宙船を爆破したが主人公Bullet達チームの生死は不明、というエンディングで、しばらくの再開はないかと思っていた『Grey Area』が思いのほか早く復帰。と言っても1年経っているのか。
Bullet達が倒したエイリアンは、実は複数の別次元に拡がって存在する生命体で、その一つの宇宙船を破壊したことにより、Bullet達の宇宙艇は別次元の宇宙に飛ばされてしまう。手近の惑星に着陸したBullet達はその星のGrey Areaに収容される。そして、その惑星にもその宇宙の同エイリアンの脅威が迫ってくる。だが、テレパシーによる共感を発達させた平和主義のその星の住人はその脅威に何ら手を打たず、Bulletの話にも耳を傾けようとしないのだった…。
地球ではGrey Areaを管理する立場だったBullet達が逆の立場になってしまうという展開です。今期のストーリーでは、まだ異星のGrey Areaで、襲ってくるエイリアンへの対策も立てられず、元の次元に帰るめども立たずという状態で終わりますが、『Grey Area』は次の夏期にProg 1945から再開。夏期の最後になるのか秋期のラインナップに続くのかまだ不明です。
今回も引き続き作画はMark Harrison。異世界の空気感などを描かせると本当に上手い。線もカラーも素晴らしいけど、相変わらず女性に関しては少しブサイク…。

Oarok, Agent of East-Meg One/The Rasputin Caper
 Arthur Wyatt/Jake Lynch

今期はカバー画像なし。前回2015年冬期から始まったMega-City Oneと敵対する東側East-Meg Oneの工作員を主人公とするシリーズが、今期も登場。前回書いたようにEast-Meg One消滅前の30年ほど前の時代が舞台となります。前回East-Meg Oneから離脱逃亡した工作員Oarokだったが、実はそれは自国内の裏切り者をあぶりだすための偽装で、今回は元のスパイとして復帰。
Oarokの今回の任務は、西側に亡命している予知能力を持った画家Jiri Rasputinを東側に取り戻すこと。しかし、同時にRasputinの身を狙うEast-Meg Twoの凄腕工作員Black Widowerやミュータントギャングなどが現れ、三つ巴の乱戦へと展開して行く。果たして誰がRasputinを手中に収めるのか?
今回も作画はレトロ風タッチモノクロのJaku Lynch。基本的には全ページカラーの2000ADでしばしばみられる白黒の作品は、イギリス作家に特に顕著な線へのこだわりだと思うのですが、その辺についてはイギリスのライターが起用され、アーティストもイギリスからの登用が多い『Hellblazer』を読んでて少し気付いた事だったりするので、詳しい考察はいずれそちらの方で。たぶんガース・エニス編になってからになると思うけど。本格的に軌道に乗り出した感じのこのシリーズも、多分今年のいずれかの時点で再登場になると思われます。

Strontium Dog/The Stix Fix
 John Wagner/Carlos Ezaquerra

2014年冬期以来の登場。前シーズンラストではStrontium DogことJohnny Alphaの決死の行動によりミュータント戦争は終結を迎えたが、彼の生死は不明、というところで終わっていたわけですが、もちろんStrontium Dogは生きていたのだ!
あの大爆発の中死亡したと思われていたJohnny Alpha。だが、彼は救出され、秘密裏に厳重な警戒の許政府施設内に収監されていた。ある日、彼の許を一人の軍関係者が訪れ、あるミッションを依頼する。戦争の後、彼同様に密かに収監されていた仲間の命と引き換えに。航行中の宇宙旅客機が何者かに襲撃され、乗員乗客は全て殺害される。だがその中でただ一人遺体の見つかっていない乗客がいた。Jim Jing Jong。NKDの首席。行方不明の彼に代わり国家の実権を握る甥のJim Jong Jingはこれを陰謀による誘拐と糾弾し、報復に核攻撃を仕掛けると脅迫を仕掛けている。早急にJim Jing Jongを見つけ出さねばならない。Johnnyは拘束されている仲間たちの解放を条件にこのミッションを引き受けるのだが…。
NKDのモデルは明らかに北の某国。同行してきた厄介な将軍に妨害されながら、Johnnyはこの犯行がStix族(全員同じEzaquerra面!)によるものと見抜くのだった。
ベテラン巨匠コンビによる代表作。今期から宇宙の賞金稼ぎstrontium DogのSF宇宙冒険譚に復帰というところでしょう。今回も私の敬愛する(2014年秋期Judge Dredd参照)Ezaquerra師匠の作画が味わい深い!これはこの画でこそ表現できる世界…あ、Mark HarrisonのStrontium Dogもいいかも…いやいや、これはEzaquerra師匠にしか描けない世界なのである!巨匠コンビによる息もピッタリで、Wagner老もEzaquerra師匠の画ならではの笑いがとれるポイントも確実に把握している。ちなみに今回の画像はいずれも師匠のものに非ず。(見つかりませんでした。)師匠の画をまだ見たことが無いという人はただちにCarlos Ezaquerraで画像検索して、師匠のドス黒グロダーク愉快なEzaquerraワールドを堪能しよう。先月にはImage Comicsからも過去のDC作品で絶版中だった師匠プラスガース・エニスという豪華コンビによる作品『Bloody Mary』も発売されております。Strontium Dog次シーズンは今年冬期に登場!

そして今回は最後に、前回冬期最後に予告したI. N. J. Culbardの単独作品について。Prog 1933に掲載されたTharg's Future Shocksの『The World According to Bob』という読み切り作品。ストーリーも作画もI. N. J. Culbardによるものです。
過去を消すため様々な情報を書き換え、新たな自分の身分証明を作り上げたBob。しかし、ねつ造したはずの自分、Bob Dariusはなぜか有名人になっており、理由もわからない敵対勢力も現れ、たちまち身を隠さざるを得なくなる。そして街角で「歴史は書き換えられている!お前らは嘘の中に生きているのだ!」と叫ぶ男と出会い、自分の状況を打ち明ける。世界は常に書き換えられており、新たに加わった情報はただちにその世界の中に組み込まれ改変されてしまうのだ。と、男は語る。そのシステムはどこにあるのだ?と尋ねるBob。そして、Bobはビッグ・ベンの内部に侵入し、その機構を破壊する。果たして世界の書き換えはストップされたのだろうか?
というフィリップ・K・ディックあたりを思わせる作品です。4ページの作品の説明でこの長さになってしまったぐらいなので、少しわかりにくいところもあるけど、Culbardの魅力的な画とともに私は結構好きな作品です。単独でも英SelfMadeHero社からラブクラフトのコミカライズ作品を発表し、アメリカでの新作は昨年のDark HorseからDan Abnettとの共作『Dark Age』など活躍中のCulbard。注目の『Brass Sun』第4シーズンは2015年秋期。早く読まねば…。

というわけでずいぶんと遅れていました2000AD 2015年春期もなんとか終了です。歴史もそれなりにあり、以前からの続きなどで少しわかりにくいところも多い2000ADゆえに、いささかのガイドにでもなればと思い、始めて、量的にでもいくらか形になって来たかと思いつつも、こんなに遅れていては仕方ない。なんとか今年秋の通算2000号までには追い付くぞ、ぐらいの気持ちで頑張らねばと思っております。次回夏期には、あの『Stickleback』のコンビ、Ian Edginton/D'Israeliによる新シリーズが開始!そして『Jaegir』登場!などのラインナップ!えーと、なんとか来月ぐらいにはやるつもりです。


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