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2015年1月11日日曜日

2000AD 2014年春期 [Prog1874-1887](後編)

というわけで、2000AD 2014年春期、後編となります。

Slain/The Brutania Chronicles : Book One A Simple Killing

 Pat Mills/Simon Davis
大御所Pat Millsの代表作のひとつ…って毎シーズン言っている気もしますが、まあとにかくイギリスの梶原一騎や小池一夫に当たると思われる人で、やたらと代表作が沢山あるのですが、その中でもこれは本命級の代表作です。前年2013年夏期には30周年の企画もありました。週替わりでこれまでSlaineを描いた代表的なアーティストが過去のストーリーを語りなおす、というもので、内容的にはよくわからなかったのですが、どれもヴィジュアル的には素晴らしいものでした。中でもProg1848のSimon Bisleyの回は必見です。アメリカでも現在はペンシラーとして活躍しているBisleyですが、これは時間や物理的制限を無視して本気でやればここまでできるんだぜ、と言わんばかりの圧倒的な作品で、コミックと絵画の境界でコミックとして成立するギリギリというようなすさまじい画を見せてくれました。機会があったらぜひご覧ください。


←こちらがProg1848、2000ADアプリショップから購入できます。表紙はSlaineですがBisleyではなくMick McMahonによるものです。ハードカバー版で発売中の『Sláine: Book of Scars』にも収録されています。

さて、それではこのSlaine、どういう話かというと、まあ毎度のことながら設定などはよくわかりません。その上私はどうもこのジャンルには不案内で上手く説明できるか自信は無いのですが…とりあえず少し頑張ってみます。まず、登場人物が裸に近い恰好でいることからコナン(名探偵に非ず)とかと同じような時代設定ではないかと思われます。超常的な魔術を操る怪人やクリーチャーなどと腕力のみで戦うという戦士のストーリーというものらしいです。などとくどくど書いてみましたが、まあこの手の話はコミックや映画などでビジュアル化すると一目瞭然であまり時代など説明は無かったりするものですね。主人公Slaineはコナンのような巨漢ではなくBisleyや今回のSimon Davisによる作画ではむしろオッサン臭のただよう感じの男ですが、かなりの戦士です。Slaine自身の背景についてはちょっとまだ把握できていません。

今回のストーリーは神の財宝を盗み出している盗賊団を追いある村にやって来たSlaineが、次第に魔術を使い人間をクリーチャーに改造する恐るべきカルト教団との対決に巻き込まれて行くというもの。今回はThe Brutania Chronicles : Book Oneで、教団との戦いに敗れたSlaineが捕獲されるところで次回に続くという形で終わっています。うーむ、やっぱりうまく説明できないのですが、ちょっと神話的だったり叙事詩的だったりもする作品なのです。今回のSimon Davisの作画も本当に素晴らしく、アートというべき仕事でした。なんとかうまく説明できないものかと長々と書いてみましたが、力不足ですみません。いずれにしても今期を代表する作品、2000AD、イギリスのコミックを代表する作品の一つでもあるこのSlaine、今後ももう少し深い解明に努めていこうと思っています。



Indigo Prime/Perfect Day

 John Smith/Lee Carter
こちらはすでに単行本も2冊出ている人気シリーズ…なのですが、初見でまたしてもあまり設定が分からないという作品です。パラレルワールドとその時空を管理する組織の登場するSFで、Indigo Primeというのがその組織の名前のようです。沢山のキャラクターが脇で動いていてその辺がさっぱりわからないのですが、メインのストーリーは割と明解なのでそちらの方で説明して行きます。
アル中から復帰したDannyと進化途中の人類の祖先と思われる容貌のUntherの2人のエージェントは、ナチスが第2次大戦で勝利した世界の協力者である老将校の依頼により出動する。余命の少ない彼の要請は人生の最後に遥か昔に亡くした娘とともに世界の歴史の様々な風景をこの目で見てみたいというものだった。
同行する娘というのはパーマンの留守番ロボットみたいなので指示された通りに姿を変えられるもの。半ば引き回されるように戸惑いながらあちこちを巡る老将校ですが、最後の目的地キリストが十字架にかけられる前夜のエルサレムに着いたとき、豹変し真の目的を露わにします。娘の姿をしていたロボットを監禁されていたキリストとすり替え、その身代わりは十字架にかけられた途端クトゥルー的モンスターに姿を変え、その後の世界の歴史はクトゥルー世界になってしまうという驚きのラスト!最後に"END"と書かれていたのでこれで終わりなのかな?と思っていたら、その後の2000ADのお便りコーナーで「続きを楽しみにしてまーす」という読者からのお便りにTharg閣下が「ドロイドを鋭意働かせておる!」と答えていたので続きがあるのかもしれません。なかなか面白そうなSFシリーズなのでまたの登場を期待したいと思います。

少し調べてみたところこのシリーズ主に90年代に描かれていて、しばらくのブランクを置いて2008年頃からまた始まってきているもののようです。ライターのJohn Smithは80年代からJudge Dreddなども多く手掛けるベテランでこのIndigo Primeシリーズが代表作のようです。作画のLee Carterはまたとても上手いアーティストで、CG時代のリアルでクリアな絵柄のひとつの見本のような画。なんとなくこの人のと日本のマンガの人物の画をよく見比べてみると、それぞれの国で表情などの表現で強調する部分の違い見たいのが見えてきそうだなとも思ったりもしました。



Grey Area/Nearer My God to Thee

 Dan Abnett/Mark Harrison
いやはやここにきてやっと話の少しわかるシリーズが冬期に引き続き登場です。地球のエイリアン受入れ地区の警備部隊の活躍を描くGrey Areaです。前期後半でほのめかされていた"地球人類への報復"が実行される今シーズン完結編となる全5話の作品。
Grey Areaに滞在するエイリアンの間で"神が降臨する"という噂が広まり始める。時を同じくして地球に巨大な宇宙船が接近。そして地球人の間でもその動きは徐々に広がり始め制御できなくなってくる。だがそれは実際には"神"の概念を放射しつつ惑星に降り立ち無抵抗の生物を捕食する危険なエイリアンだった。Bullietたちはひそかに強力な爆弾を積みこんだシップでその宇宙船に乗り込む…。
前期の宗教上の概念の違いから騒動が起こる話「All God's Children」が伏線になっています。最後は宇宙船の爆破には成功したが、Bullietたちの生死は?という感じでEND?と表記されていますが、またの登場はあることでしょう。

アメリカでの活躍も多いライターのDan Abnettですが、最近では映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で原作者のひとりにもクレジットされていましたね。作画は前期後半に引き続きMark Harrison。よく見ると女性陣が○○だったりするけど、シャープでエッジの効いた線と独特の空間を表現するカラーリングで私のとても好きなアーティストです。


というわけで前後編に渡りました2000AD 2014年春期もやっと終了です。新年最初の分というよりは去年晩秋ぐらいのがやっと片付いたという感じで、まあ本来ならこの辺で今年の抱負などを述べるところでしょうが、それは来月のブログ1周年あたりで語ってみようかと思います。どうせ何々が読みたいなあとか程度の話でしょうが…。
さて続く2000AD 2014年夏期ですが、待望の『Brass Sun』第3シーズンの登場となります!書くのが遅れているだけでもう半分以上は読んでいるので(とは言ってもまだ去年の夏の分か…)割と間をおかずお届けできると思います。と言うか他のコミックの事も色々書きたいので早く進めねば。というわけでなるべく頑張るという意思だけはありますので、またよろしく。



●関連記事

2000AD 2013年秋期 [Prog1850-1861,2014] 

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