2014年7月12日土曜日

THUGLIT Issue Two

注目のハードボイルド/ノワールアンソロジー『Thuglit』第2集を読みました。今回は短篇8本プラスTod Robinsonの『Hard Bounce』プレビューの第2回で124ページという内容になっています。

[1]Three-Large by Nik Korpon
  久しぶりに訪ねてきた息子は街のボスからの借金で追われていた。男は息子を助けるために、長年封印していた銃を取り出すが…。「父と子の物語」が皮肉な結末をむかえる。
[2]Pipe by Jen Conley
  少年はある朝、亡くした父のコートに鉄パイプと煙草を隠し、家を出る。彼をいじめの標的にする少年に報復するために…。
[3]Just Like Maria by Mike MacLean
  メキシコからの不法入国の手引きを生業とする男の許に、妙な白人が現れる。「この女が現れたら連絡して欲しい。礼はする。」だが、その女はまさにこれから彼が国境を越えさせようとしている女だった…。
[4]Monster by Marc E. Fitch
  精神科病棟に職員としてもぐりこみ、金回りのよさそうな患者を退院させ、その家に侵入し、盗み出した薬で商売をしている男。やや問題はありそうだが金になりそうな患者に目を付け、退院させ、田舎町の屋敷に忍び込むが…。
[5]Participatory Democracy by Katherine Tomlinson
  議員候補の選挙事務所で理想的な社会実現のためボランティアとして働く女性。だが、その一方で景気悪化のため失業し、離婚した彼女の生活は逼迫し、追いつめられて行く…。
[6]The Carriage Thieves by Justin Porter
  輸送馬車強盗を稼業とする二人組のアウトロー。前の仕事で余禄として手に入れた鉄を売ってみると意外な稼ぎになったことから、廃車になったバスを盗むことを思い付く。膠工場から盗み出した馬にひかせ走り始めるが本物のバスと勘違いした客が次々と乗り込んでくる…。
[7]The Name Between the Talons by Patrick J. Lambe
  彼は今、死にかけている。彼の胸からはカーキ色の制服にどんどん血が染み出している。地被いてくるサイレンの音は救いなのか、それとも…。そして彼は警官になった日から今日までの事を回想する…。悪徳警官ストーリー。
[8]Spelled With a K by Buster Willoughby
  フリーランスでローンの支払いが滞った品の回収を仕事としている男は、ある夜バーで知り合った謎の女に恋に陥る。だが、その時男はすでに街にはびこるカルト教団の罠に陥っていた…。

『Hard Bounce』プレビューは長編を一気に読むのを楽しみにしているのでスキップ。以上が『Thuglit』第2集の8篇のあらすじです。個人的に気に入っているのは、シンプルだけど語り口などが上手い[1]、少し静かで抒情的だったりもする[2]、『シスターズ・ブラザース』みたいな感じからコメディに崩れる[6]あたりです。[6]に関しては少し状況が分からなくて、調べてみて初めて昔ニューヨークとかで馬が引くバスがあったのを知りました。最後にもう一ネタあればウエストレイクか、というところ。[3]、[5]、[7]あたりはこの長さだと逆にもうひとひねり欲しいという感じかな。

『ナントカ講義』みたいなのに別に批判的なわけではないのだけど、な~んか昨今の国内のこのジャンルの状況を見ると、翻訳点数が減っているだけでなく、ビンテージものを鑑賞する感じだったり、「ミステリとして評価できる」形の良いものばかりが好まれたりみたいな、つまらない感じだなあと私のようなひねくれものは思ってしまうのですよね。やはり今本当に読まれるべきは、先月書いたAnthony Neil Smithだったり、この『Thuglit』なのではないかと強く思うのです。はっきり言って荒削りだったり中途半端だったり、すべてが良作というわけではありません。それでも今の時代に今の目線で書かれたこれらの作品こそが、本当に今読むべきハードボイルド/ノワールなのではないかと。というわけで今後もこの辺りの動きにはもっとも注意を払いつつ、世界のすみっこぐらしで小さな声で愛を叫んで行こうと思うのでした。

さて、この『Thuglit』ですが、3月に「ハードボイルド/ノワール系アンソロジーとインディー・パブリッシャー 」の項で書いた時点では10集だったのですが、その後”ビッグダディTHUG”ことTod Robinsonがまた張り切り、現在12集までが発行されています。価格はすべてほぼ1ドル!この荒野の1ドルアンソロジーに追いつこうというのは高望みにしても、なんとか書かれ、発行されるスピードにシンクロできるぐらいに読めるようになりたいなと努力を続ける毎日です。


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