2014年4月27日日曜日

Chew -超異色刑事コミック-

Tony ChuはCibopathic(造語)である。これは、食べたものの由来(どこで成長し、どんな肥料・殺虫剤を与えられ、どう収穫されたか、または、どこで産まれ、どう屠殺されたかなど)が頭に浮かんで分かってしまうという体質のことです。この設定を読んで、なるほど、グルメ刑事か!と思った人もいるのでは?いやいや、ところがそんなものではありません。では、その『Chew』の第1話のあらすじをお読みください。

-プロローグ-
調理場で料理を作っている男。男の顔は見えない。次々と材料を刻み、鍋に入れて行く。途中、包丁で指を切り材料に血が飛び散る。だが、男はそのまま料理を続け、その材料も鍋に投入される…。

Tony Chu登場。まず、彼のその特異な体質が説明される。それゆえ、彼はなぜか唯一食べてもイメージの浮かばないビート(甜菜)しか食べられない。コンビニのカウンターにビートの缶詰を並べるTony。「他の物は要らない。」そこに、大量の食料品を抱えた彼の相棒、John Colbyが現れる。
2人は閉店中を装い違法にチキン料理を提供していると思われるレストランを張り込み中だった。(この作品中では鳥インフルエンザの流行によりチキンの流通が禁止されている)そこに違法チキン取引や様々な不法行為に関わっているギャングD-Bearが現れる。店内に突入しギャングを確保しようと準備する2人を突如現れた巨漢が呼び止める。
男の名はMason Savoy。 F.D.A.(アメリカ食品医薬品局)の捜査官だった。なにやら妙に仰々しい話し方でMasonが言うには、どうもD-BearはF.D.A.の情報提供者なので手を出すな、ということ。
引き換えに、その店への合言葉を教えてもらい、2人は店内に入ってみる。 所詮はチキン取締りなんて警察の仕事じゃないさ、と出てきたチキン料理にかぶりつくJohn。Tonyも渋々チキンスープを注文し、口を付けてみると…。恐ろしい連続殺人の様子が、被害者の名前とともに次々とTonyの頭の中に浮かび上がってくる!そしてそれに加えて料理中に包丁で指を切るイメージ。このスープこそが冒頭プロローグで男が料理していたスープだった。そしてその男は…?

「この厨房に連続殺人犯がいるぞ!」

「殺人事件となれば警察の仕事だ!」銃を抜き、厨房に駆け込む二人。だが、即座にJohnの顔面に包丁が叩きつけられ、男が外に逃げ出して行く。「何をやってるんだ…奴を追え…!」Johnに促され続いて外に走り出たTonyは、路地裏に犯人を追いつめる。「もう逃げられないぞ。被害者全員の名前を言え!」だが、犯人は捕まるより自らの頸動脈を包丁で切り、死を選ぶ。「だが、俺にはそれを知る方法があるんだ!」そして、Tonyは死にゆく犯人の顔面に噛みつき、齧りはじめる…。
かくして、Tonyの特殊能力によって被害者全員の身元も判明し、事件は無事に解決する。しかし、その行動によって、Tonyは警察を辞めざるを得なくなる。そればかりか、逆に罪を追及される立場になるというピンチに。そこに、再び現れたのがF.D.A.のMason Savoy。彼は、Tonyのその特殊能力を買って、F.D.A.の捜査官としてスカウトするのだった。

という驚きの展開が第1話です。続くシリーズも、特異な設定の一点押しで結局最後は人情話かよ、なんてことにはならず、あくまでその特殊能力を切り札として持つ男が活躍する物語として、その設定をさらに上回る奇想天外なストーリーが展開して行きます。チキン取締りをめぐる疑惑を主軸に、 鶏肉と同じ味がする果物の謎や、そしてあの男が…?さらには、なにやら遠い星での出来事が関係するらしい、空に謎の巨大な火文字が浮かび上がるというSF的展開も?
そして個性的で魅力的なキャラクター達。前述の常に仰々しい口調で話し続ける、私のような英語未熟者泣かせのMason Savoy、F.D.A.の上司でTonyにいやがらせをすることしか頭にないApplebee、違法チキンにかかわったり、なにかと厄介者の兄弟でシェフのChow、大けがを負った相棒John Colbyも顔面半分サイボーグコップになってF.D.A.の捜査官として復活、そして、新聞のグルメ記事担当の女性記者で、読むと本当に料理を食べている気分になれるような文章が書けるというまさにTonyの理想の女性Ameliaとの恋の行方は?さらに、NASAに勤めるTonyの双子の妹(姉?)のToniや、いわくありげなTonyの娘のOliveも登場してきます。

作者は、ライターJohn LaymanとアートRob Guilloryのコンビ。John LaymanはDCコミック系のWildstormのエディターからライターに転身し、マーベルなどででいくつかの作品を手がけた後、イメージコミックでクリエイターオウンド作品発表し始めたそうで、代表作はこの『Chew』というところです。Rob Guilloryは以前のキャリアはいくつかのインディ系のコミックアンソロジーなどに作品を発表していて、メジャーなコミックの仕事としてはこの『Chew』が最初のものになるそうです。ユーモラスな展開を基調としながら緊張感のあるサスペンスやアクションがふんだんに盛り込まれたこの作品、このコンビの息は非常に合っていて、まさにこの絵のために書かれたストーリー、このストリーのための絵、という感じにいつも感心します。Rob Guilloryのアートは、とても個性的ですが、一方でアメリカのコミックやアニメーションの動きに関する一つの流れを継承している部分も感じられます。

この作品の発行元はイメージコミックで、2009年に始まったこのシリーズは翌2010年のアイズナー賞をBest New Series部門で受賞しています。現在最新が42話で、TPBも8巻まで発売されているのですが…もしすでにこの『Chew』をお読みの方がいれば薄々感づかれたのではないかと思いますが、私はこの作品まだTPB4巻の途中ぐらいまでしか読んでいません。読むのが遅い、ということもあるのですが、生来の貧乏性で、こんな面白いコミックを雑に読めるか!という感じで…。まあ、時間のあるお休みの日にニコニコ読んでいつかまた続報をかければいいかな、と。しかし、ここまで読んだ感想としては、間違いなく傑作です! 


最後に、イメージコミックについて少し。1992年にトッド・マクファーレンらによって、クリエイターオウンド作品の発行を目的として設立され、ヒット作『スポーン』を発行した、というのはあまりにも有名だったりします。現在のイメージコミックはというと、もちろん『スポーン』は看板作品の一つではありますが、むしろヒーロー物以外のクリエイターオウンドのエンターテインメント作品を数多く出版しているパブリッシャーという印象です。 最近のヒット作は、TVドラマ化され、日本でも翻訳の出ている『ウォーキング・デッド』や、コミックのみならずSFの方でも受賞があり注目の高まっている『Saga』(これも例の貧乏性でいまだに2話までしか…)など。本体のイメージコミックの他に、トッド・マクファーレン・プロダクション、『ウォーキング・デッド』のロバート・カークマンのSkybound、『Witchblade』『The Darkness』などのダークヒーロー物を多く出しているTop Cowなどのパブリッシャーを含めた複合体という感じです。その辺りのことも、作品を含めていずれ色々書いていければと思っています。イメージコミックでは、長いシリーズばかりでなくTPB1冊分ぐらいの手ごろな個性的な作品も多数出版されています。Comixologyや連動するイメージコミックのアプリショップではずいぶん多数の作品の第1話がフリーで読めるので、面白そうな作品を探してみてはいかがでしょうか。この『Chew』の第1話もフリーで読めますよ。

今、リンクを張るために『Chew』の公式ウェブサイトを見たら、どうやらアニメ映画化されるようなことが書いてありました。まだよく調べていませんが、とりあえずは期待して待とうと思います。


『Chew』公式ウェブサイト

Image Comics 


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