2014年2月14日金曜日

ZOMBO -2000ADのSFホラーコメディコミック-

まず、最初は昨年読んだ中でも一番気に入っているこのコミックから。ジャッジ・ドレッドでおなじみのイギリスの2000ADのSFホラーコメディ、『ZOMBO』です。2009年に始まり、現在第4シーズンまで(このことについては後程説明します)続いていて、昨年2冊目のTPBが出ました。アメリカのコミック情報サイトComics Allianceでも、昨年のベストの中にとりあげられていたので、見たことがある人もいるかと思います。Scriptは、昨年後半からマーベルの『マイティ・アヴェンジャーズ』のライターとして本格的にアメコミ進出が進んでいるAl Ewing、Artは、2000ADでは1993年から活躍しているヴェテランのHenry Flintのコンビによる作品です。

舞台は、普通に人が宇宙旅行をできるようになっている未来。衛星ステーションEpsilon-6に向かう乗客を乗せた宇宙船が故障し、謎の惑星に不時着する。乗客は無事だったが、宇宙船は航行不能。「必ず助けはきます!あなたたちの政府を信頼しましょう!」と連呼する なにやら大きなケースを護衛運搬中のメン・イン・ブラック風2人組。「救難信号出てるんだし心配ないよ。食べる物もあるようだし」と、近くにあった果物をもぎ取る乗客の一人。だが、口を付けた途端、逆に果物に吸い取られ男は即死!

「この惑星のものは敵意を持っています!ただちに安全な場所に避難しましょう!」

かくして一行は宇宙船の残骸から2艘のいかだを作り、川を下り始める。片方には大半の乗客が乗り、もう一方には2人組とケース、残り数人の乗客。そして予想通り、あっという間に大勢の方のいかだは謎の敵に襲われ全滅!恐怖に固まる生き残りの乗客の前でケースが開き、中からビキニパンツ一丁のマッチョ風ゾンビが現れる!

"Hullo.My Name's ZOMBO.Can I Eat You?"

宇宙に拡大を始めた人類は思いもかけない敵に遭遇する。惑星そのものが意識を持ち敵意を向けてくる、通称”デスワールド”。その世界は到着した人間たちを殺すだけではなく、ゾンビに変えて送り返しそこを汚染して領土を拡大し始めるのだった。この脅威に対抗すべく、人間とゾンビの遺伝子を組み合わせ、デスワールドの環境から攻撃されることなく、しかも人類に従順な秘密兵器として開発されたのがZOMBOだった。だが果たしてこのZOMBOは本当に人類に従順なのか?生き残った乗客たちの運命は?そして、この不時着にはさらに大きな秘密が隠されていたのだった…。

というのが序盤のあらすじです。この後はかなり悪質なモンティ・パイソン風ジョークと過激でスプラッタな描写に満ちたストーリーが展開して行きます。
 TPB1巻にはこの第1シーズンと、一人この惑星に残され暴れ続けるZOMBOの許に、チャリティー番組収録のため移動中のTVクルーが不時着するというクリスマス・スペシャルを挟み、そのTV中継を観た”デスチューブ”なるものにすさまじい死に様をアップし、高得点を得るのを死に甲斐(?)とするグル-プがその惑星に乗り込んでくるという第2シーズンが収録されており、その後の第4シーズンまでが2巻に収録されていると思います。(すみません、2巻はまだ未読です。)
イギリス2000ADでは、日本やアメリカと比べても作品が単行本としてまとめられることは稀で、実際ほぼ同時期に始まっているAl Ewingのもう一つのシリーズ『Damination Station』はまだ単行本化されていません。そんな中で、作品が一定量集まるといち早く単行本化される『ZOMBO』の本国での人気の高さもうかがわれるかと思います。

TPB1巻巻末のAl EwingとHenry Flintの対談によると、そもそもこのZOMBOというキャラクターを思い付いたのは、Henry Flintの方だそうです。「ゾンビ映画を観ていて、ゾンビでも人間でもある奴ならどちらからもやられないぞ、と思った」とのこと。えーと、Henryさんの正確な年齢はわからないのですが、94年から2000ADで描いていることから40歳前後ではないかと思うのですが…。
また、同対談によると、かなり有名人ネタがあるそうですが、そちらの方には詳しくないので私にはわかりませんでした。ちなみに昨年2000AD誌上で読んだ第4シーズンでは明らかにビートルズをモデルにしたバンドが登場し、それはさすがに理解できてかなり笑えました。
ScriptのAl Ewingは、2002年から2000ADで、ジャッジ・ドレッドなどの多くのScriptを手掛けてきて、2011年に同じ2000AD出身のガース・エニス原案の、Dynamite発行の『Jennifer Blood』でアメコミ進出を果たし、前述の通り現在は『マイティ・アヴェンジャーズ』のライターとして活躍しています。かなりタチの悪いギャグの遣い手である一方、でたらめに振り回されているように思いながら読み終わってみると、案外きちんと組み立てられたストーリーを読まされていたことに気付くような、巧みなライターだと思います。他に何冊か小説も手掛けていて、そのうちの『Tomes of the Dead: I, Zombie』を読んでみたところなかなか面白かったので、次回紹介してみるつもりです
ArtのHenry Flintは1994年から2000ADで活躍しているヴェテランで、太くて重い線を使うことにより作品全体に独特のリズムを作って読ませる、個性的な描き手だと思います。この『ZOMBO』では結構エッジの効いた線を使っているけど、他の『ジャッジ・ドレッド』などを見てみるともう少しなめらかな線を使っているような印象を受けました。

●2000ADについて
最初だし、あまりよく知らない人もいるかもしれないので、2000ADについて少し。2000ADはイギリスで1977年から発行されている週刊コミック誌(SFアンソロジーというそうです)で、1号実ページは32ページ。私はデジタルで読んでいるのでわかりませんがたぶんプリント版では他の広告なども入るのかな。同じく実寸もわからないのですが、TPBのサイズがB5の横幅を伸ばした形で、字の大きさから見てもたぶんそのサイズだと思います。編集者は宇宙人のTharg氏で、ハイテク宇宙船を変形させた倉庫でスクリプトドロイドとアートドロイドを使ってコミックを制作しているそうです。毎号巻頭はジャッジ・ドレッドで他に4本ぐらいの連載があり、どれも大体1回5~6ページぐらいという構成になっています。1つの連載の長さが3か月ぐらいで、春と秋に大きな改編があり、ジャッジ・ドレッド以外の連載がすべて入れ替わる、というTVのような形をとっているようなので、上記の第○シーズンという言い方が適当かなと思いました。 
長年アメコミよりも更に縁遠かったイギリスの2000ADですが、今はiTuneアプリからiPhoneでもiPadからでも発売日の水曜日に毎号読むことができます。1年ほど前に私が読み始めたころは、2000ADのみだったのですが、その後月刊のJudge Dredd Magazineも加わり、秋から冬にかけてJudge Dredd Complete Fileや他のグラフィックのベルも読めるようになって充実してきました。フリーの60ページほどのサンプルもあり、『ZOMBO』の第1回も読めるので、未見の方はダウンロードしてみてはいかがでしょうか。



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