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2022年8月11日木曜日

Ray Banks / Beast of Burden -Cal Innes四部作最終作!さらば、マンチェスターのアニキ!-

やっとここまでたどり着いた。2010年代ハードボイルド必読!最重要作ぐらいのことは言ってやるぜ!ハードボイルドの反逆児、Ray Banksによるマンチェスターのチンピラ探偵Cal Innes四部作最終作 『Beast of Burden』である!Cal Innesを読まずして21世紀のハードボイルドを語るなかれ!21世紀のマンチェスターに降臨した感涙必至の『傷だらけの天使』を読め!

さて、四部作最終作ということでまずはシリーズのこれまでを振り返るというところからなのだが、ちょっとネタバレなどに注意しながら書いてきたため、色々な人間関係などで抜けている部分も多いように思うので、 ここで捕捉しながらという感じで、改めてシリーズ3作目までを俯瞰して行こうと思います。その辺までの展開はややネタバレあり。
主人公Cal Innes。20代半ばから後半ぐらいのマンチェスターの私立探偵。刑務所から出所後、身元引受人となってくれたPauloのジムの一室を借り、自分の能力・性格を活かせる私立探偵を始める。英国マンチェスターでは アメリカのような免許などは必要ないようなので、私立探偵だと言えばそれで私立探偵。世の中警察にはあんまり行きたくない悩みを抱えている人は多いので、知り合い関係・口コミを通じて依頼はやってくる。
Innesが刑務所に入った理由は、第1作『Saturday's Child』で簡単には書かれているのだが、その時は重要性などいまいちわからなかったので詳しくは書かなかったのだけど、この第4作では結構重要な彼の兄に関わること なのでここで改めてきちんと書いとく。
彼の兄Declanはドラッグ中毒で自堕落な生活を送り、また流されやすい性格でもあり、街の顔役の息子であるMoと共に行動することも多かった。あるときDeclanがMoと共に深夜の倉庫に盗みに 入ることを知ったInnesは、彼を心配し同行する。だが強盗は失敗し、彼だけが現場に取り残され逮捕される。兄を護るため、主犯であるMoについても一切口をつぐんだまま、Innesは刑務所に収監されたという次第。 Declanはその後はMoとの関係を断ち、マンチェスターを離れドラッグ中毒からのリハビリに努めるのだが、この件でInnesは兄との間に溝を作り、またMoとの間には深い遺恨を残すこととなる。
主要キャラクターのうち、最もInnesに近く多く登場するのが彼の保護者であるPaulo。元ボクサーで自分のジムを持ち、刑務所や矯正施設から出てきた少年・青年の身元引受人となり、ボクシングを通じて彼らの 更生社会復帰に努める。ホモセクシュアルだが、Innesとの間にそういう関係はなく、また典型的な丹下段平タイプのオヤジなので、わざわざセリフをオネエ言葉に直して読む必要もない。
Innesと因縁が深くなにかと絡んでくるダーティーなDonkeyことDonkin刑事。第1作から登場するが、実はストーリーに深く関わってくるのは今回の第4作。

第1作『Saturday's Child』は、前述のMoの父親であるこの街の裏の顔役であるMorris Tiernanからの依頼で始まる。失踪した地下カジノのディーラーを捜せ。気の進まない仕事だったが、街のボスからの依頼を断るわけにもいかず、 Innesはしぶしぶ調査に乗り出す。だが調べを進めて行くうちに、Morrisの真の狙いはそのディーラーと一緒に逃げた女性、彼の娘でMoの腹違いの妹のAlisonであることが見えてくる。そもそもInnesとは因縁があり、また身内の問題に 外部の人間が関わるのが気に入らないという建前でInnesの捜査にちょっかいを出し、彼を追い続けるMoだったが、実はAlisonと関係を持っていて、彼女はMoの子供を妊娠してしまったことでパニックになり 逃げ出したというのが真相だった。最終的にはMoに横からさらわれる形になったが、Alisonを見つけ出したInnes。だがその過程で怪我を負い、以後鎮痛剤中毒になって行く。一方Moは今回の行動を父親Morrisから激しく非難され、 以後父親の後ろ盾を失ってしまうこととなる。

第2作『Sucker Punch』では、Innesは全作の事件の怪我と、あまりにひどい目に遭ったことからやる気をなくし、探偵業を廃業し、ボクシングジムでの雑用で日々を過ごしていた。父親の後ろ盾はなくしたもののMoは、仲間を引き連れ 街でドラッグを売りさばき、それが更生を目指しているジムの練習生に及ぶことがPauloの懸念となっている。そんなある日、Innesのそんな状態を心配するPauloは、米LAで開催される友人ジムオーナーの主催するボクシング トーナメントに参加するジムの期待のボクサーLiamの付き添いとしてInnesに同行するように持ち掛ける。かくしてアメリカの地を踏むマンチェスターのチンピラ探偵Cal Innes。元は路上強盗で逮捕収監された不良少年だったが、 現在はひたすらストイックにボクサーの道を進むLiamと、ヨレヨレで鎮痛剤中毒になりかかっているInnesでは気も合わず、最初は反発していたが、次第に彼を応援する気持ちが高まり、慣れない土地で奔走するInnes。 しかし、小さな掛け違い、見知らぬ土地で信用すべき人間を見誤ったことから事態は思いがけぬ方向へと混乱して行く。なんとか無事にLiamと共に帰国したInnesだったが、二人を待ち受けていたのはPauloのジムの 火災による消失という衝撃。練習生にドラッグを売りつけることに怒り殴り飛ばしたPauloへのMoによる報復の放火に間違いない。InnesはただちにMo達のたまり場となっているパブへ出向き、Moを徹底的に叩きのめす。 パブから出たInnesは、ずっと断り続けてきた以前からの仕事を引き受ける電話を掛ける。

そして第3作『No More Heroes』。前作のラストで探偵稼業に復帰かと思われたが、Innesが請け負うのは廃業前からやっていたマンチェスター界隈で多くの不動産を持ち貸し出しているDon Plummerからの店子への立ち退き状の配達。 結局いまだにきちんと調べてないけど、英国では家主が店子に立ち退きを要求するには、裁判関係の書類のように直接本人に手渡さなければならないらしい。法令で決まっているというよりも、後で届いていない、受け取っていないと 主張されたりすることを防ぐためなのかもしれないね。この仕事で、Innesには新しく相棒ができる。Innesと同じく前科者で、基本的に気のいいやつだが、その名もDaft Frankと、既に通り名に”マヌケ”が入っちゃってる筋金入り。 後半になってからの登場だが、このFrank、第4作でも登場し場を和ませてくれたりもするいいキャラである。Frankと共に立ち退き状をもって向かったある家で火災が発生し、Innesは燃える家の中に飛び込み、残っていた子供を救出する。 これが地元のマスコミに取り上げられ、Innesは一躍地元のヒーローに祭り上げられる。まもなく再建が完成するPauloのジムの宣伝にも役立てようとするInnes。だが、その一方でDon Plummerは防災設備も整わない劣悪物件で 儲ける悪徳家主として非難が集中する。そんな中、姿を隠しマスコミから逃げ回っているPlummerからInnesに電話がかかる。俺ははめられたんだ!あれは放火だ!お前探偵だろう!犯人を見つけて俺を助けてくれ! こうしてInnesは嫌々ながらも探偵稼業に復帰する。
このあとは、第4作へと続く部分もあるので少し詳しく。犯人までは書かないので知りたい人はちゃんと本編を読んでください。
Plummerへ火災の前に送られてきたという脅迫状を手掛かりに、Innesは移民排斥に強硬なグループを調べ始める。その過程で、学生の住居としての利用も多い悪徳家主Plummerに抗議する学生たちのグループとも出会う。 市長選挙も近付き政治的な緊張も高まる中、Innesは遂に放火犯人を突き止める。だがそれと同時に、その時点である事情により身動きが取れなくなっている犯人が次の標的のために準備した放火用の資材が積まれた車が、 今まさに移民排斥グループのデモ隊とパキスタン移民たちが衝突する街角に放置されていることに気付く。あれに流れ弾でも当たれば大変なことになる!
ああ、俺はヒーローなんて柄じゃない。ヒーローなんて沢山だ!心の中で叫びながらもInnesは一触即発の緊張の高まる街を走る!
だが、やっとたどり着いたInnesのその目の前で、車は爆発する!…
Innesは頭部を強打し、左半身に麻痺が残る大怪我を負う。しばしの入院治療後、Pauloに助けられながら杖を突いて退院するInnes。Pauloのジムはすっかり再建され、真新しい建物の中にはInnesの探偵事務所も用意されていた。 大丈夫だ、頑張ればすぐにリハビリで元に戻れるさ。鎮痛剤とも手を切って、これから探偵として頑張って行けよ。これからはみんなうまくいくさ。明るく励ますPaulo。だが、Innesの心中は暗澹たるものだった。 俺に本当にそんなことができると思ってるのか?俺はもうそんなことはごめんだ。俺はこれからどうすればいい…。

【Beast of Burden】

こうして主人公Innesが身体も不自由になり、精神的にもどん底になった状態で第4作『Beast of Burden』は始まる。
物語の冒頭で告げられるのは、Innesの兄Declanが自殺未遂で入院したこと。ドラッグ中毒から復帰するためリハビリに努めながら、その少し弱い性格から中毒に戻り、また一からリハビリを始めるを繰り返す過程で、 度々自殺未遂を繰り返してきたDeclan。
Innesは不自由な身体で夜、面会時間後に病院を訪れるが、兄は深い眠りにあり話すことはできなかった。この姿を見せてもDeclanも戸惑うだけだろう。Innesはそのまま病院を後にする。
そして一週間後。再び自殺を試みたDeclanは、今度は救うことができず、この世を去った。

本編は3部に分かれ、それぞれのパートの冒頭にこのDeclanの自殺、埋葬などを描いた短い章が挟まれる形になる。時系列的には本編の少し前というところだろう。本編と無関係ではないが直接的には繋がらず、 終わって行くCal Innesの物語と響き合う悲しいエピソードである。

Moは死んでいる。
本編はそんなInnesによる一人称のモノローグから始まる。Innesは地元の裏の顔役Morris Tiernanに呼び出され、彼の行きつけのパブの指定席で彼と向かい合って座っている。Moを探せ。それがMorrisから告げられた Innesへの依頼であり、命令だ。
Innesの宿敵であり、Morrisの息子であるMo Tiernanは、Pauloのジムに放火したことでInnesに叩きのめされ、しばらく町を離れていたようだ。そして更にこの一か月ほど、一切Moの消息は途絶えている。 Moはこの地元であるマンチェスターからそれほど離れていられる人間ではない。そして、奴の性格から言って、街に戻ったなら何らかの大騒ぎをして周囲に知らせずにはいられない男だ。 そんなMoがそれほど長い間消息不明なら、Moは死んだということだ。
だがInnesはそんなことは口にせず、ただ黙ってMorrisの前に座っている。今の俺を見ろ。俺に何があったか知ってるだろう。俺に人探しなんてできると思ってるのかい?
お前はAlisonを見つけた。お前ならMoを見つけられるはずだ。いくら払えばいいんだ?
Morrisの依頼を断ることなどできない。Innesは顔の左側だけのとっておきの笑顔を見せつけながら、Morrisに探偵料を告げる。

それから不自由な身体ゆえ立ち寄ったスターバックスで揉め事を起こすという、読んでいても痛々しい場面を挟み、InnesはPauloのジムLads Clubに戻る。事務の正面にはIC INVESTIGATIONSの看板も掲げられている。 Innesの「I」とFrank Collierの「C」。探偵事務所を立ち上げたものの、当面は一人で経営することが不可能なInnesのために、Pauloは相棒として前作から登場のFrankを連れてきた。看板にも使われている目玉マークの 入った名刺や、レターヘッド入りの便箋など、すべて経営が軌道に乗ってからの出世払いでPauloが用意してくれた。
事務所に戻ったInnesはFrankから留守中にDonkin刑事が訪ねてきたと聞かされる。用件は 不明なままでFrankやPauloをしばらく脅してInnesの行き先をしつこく尋ね、諦めて帰って行ったという。
これまでのシリーズでは多くのシーンで常にユーモアを含んだInnes/Banksの語りだったが、この最終作では全体的に重く沈んだトーンになる。その中でこのような事務所に戻りFrankやPauloと話すシーンは、いくらかの 温かみや安心を読む側にも与えてくれる。Frankは今回の物語の中で、ちょっとした事件を一つ独力で解決する。

FrankとPauloには告げないまま、InnesはMorrisに依頼されたMoの捜索を始める。第3作の最後でMoをぶちのめした彼のたまり場となっていたパブを訪れたInnesは、Moの仲間のひとりBazを見つける。MoとBaz、そしてもう一人 Rossieを含めた3人でいつも行動を共にしていた。
Moはお前に殴られた後、いつまでもこんなごみ溜めでお前らみたいなクズと遊んでられるか、俺はまともな仕事を見つけるぜ、と言って別れてそれっきりだ。Rossieも今じゃちゃんとした仕事に就いている。BazからMoが 住んでいたアパートの住所を聞き出す。だがたぶんもうそこにはいないぜ。

Innesは第1作『Saturday's Child』で捜し出したMorrisの娘Alisonに会いに行く。彼女は家族とは離れ、その後出産したMoとの間にできた息子と共に暮らしている。Moとは会っていないし、今どこにいるかなんて知らない。 AlisonはInnesを玄関口で追い返す。

そしてInnesはBazから聞き出したMoの住所へと向かう。マンチェスターのあちこちに残る、取り壊され見栄えの良いオフィスビルや高層住宅に建て替えられるのを待つばかりの廃墟寸前のアパート。動かぬ身体に苦労しながら 階段を6階まで上がる。ドアの前に着くと、中から恐ろしい腐敗臭が漂ってくる。鍵のかかっていないドアを手に持った杖で押し開け、Innesは室内に入る。
ベッドの上にMoの死体が横たわっていた。
既に腐敗の始まっている死体の様子からのショックが収まると、InnesはMoのこれまでの人生と哀れな死に様に少しばかり同情を感じる。
だがそれも、奴が自分と兄へもたらした数々の仕打ちを思い出すまでのことだ。お前のせいで…!
Innesは死んだMoの顔面へ手にした杖を打ち下ろす!
これは兄貴の分だ!
これは俺のムショ暮らしの分だ!
何度も繰り返し、InnesはMoの遺体へと杖を打ち付ける…。

この第4作では、第1作同様Innesともう一人別の人物の一人称による語りが、章ごとに変わる形で構成されている。そのもう一人の人物がDonkeyことDonkin刑事。先にこの人物について「ダーティーな刑事」と書いたが、 これは自分の職業的権限を個人的な利益のために悪用する悪徳警官というものと区別するため。Donkeyという男は、ある意味古いタイプというのか、あちこちに小者の犯罪者やドラッグ中毒者などを自分の 情報提供者として飼い、小さな犯罪に目を瞑りより大きな事件・犯罪者の解決逮捕を目指すという刑事である。
その方法は脅しと暴力によって自分に従わせるものであり、Donkeyパートの最初は、彼の準情報提供者ぐらいの元ドラッグの売人を陰湿に苛めるところから始まる。その語りの中で、実はInnesの兄Declanを 情報提供者として使っていたことが明らかにされる。もう既に情報提供者ではなくなり、リハビリに努めていても弟を前科者にまでしてしまった罪悪感から逃れられず、自分を破壊し続け遂に自殺を果たしてしまった 事から、このDonkeyこそがInnesの兄を追い詰めた仇というべき存在だった。
そして現在Donkeyは、弟Innesを自分の情報提供者とするために追い続けていたのだった。この街最大の大物犯罪者、Morris Tiernanを追い詰める手掛かりを手に入れるために。
だが彼は古いタイプの刑事であり、警察自体は時代の流れで様変わりしている。規則に従い清潔な刑事部屋の中で、彼はいつも厄介な鼻つまみ者だ。情報提供者への無意味で過剰な暴力行為が問題視され、その職に留まれるか さえ危なくなってきている。
そんな立場からの一発逆転のための足掛かりとして、DonkeyはInnesを追い続け、やがてMoの死が発覚すると、Innesが何らかの形で関わっているに違いないと睨み、執着の度合いを高めて行く。

Moの死を受けて、Innesは再びMorris Tiernanに呼び出される。
誰がMoを殺したのか知っているのか?
はっきりはしないがいくつか考えがある。
誰が殺ったかわかったらすぐに伝えろ。警察にじゃない。俺にだ。

Morrisの依頼でInnesはMoを殺した犯人を捜索し始める。だが、その中で彼は時々不可解な行動を取る。
そして、物語中盤過ぎのある時点で、彼は一人称のモノローグの中でこう告げる。

俺は誰がMoを殺したか知っている。

ここで彼の不可解な行動の理由がすべて明らかになる。そうだったのか、アニキ…。そして我々はこの汚れた街の気高きチンピラ探偵が、このどうやっても抜け出せそうに見えない行き止まりからなんとか脱出してくれることを祈りながら、涙目で物語の結末へ向かって読み進めて行くこととなる。


ああ、Ray Banksよ、ありがとう。オレはCal Innesアニキに会えて本当にラッキーだったよ。マジ泣きながら本を閉じるオレの感想はそれに尽きる…。 この四部作は、ハードボイルドファンならば必ず読まなければならない名作であり、2010年代ハードボイルドを代表する作品の一つであることを、私は確信をもって言える。

ここで、今回の冒頭からも言ってる「ハードボイルドの反逆児」という件について詳しく述べておこう。
というところでまずRay Banksがハードボイルドにどう反逆しているのかというところから始めようとして、まあいつものことながら日本のハードボイルド認識の出鱈目さに躓くわけなのだが。マンガやアニメで ハードボイルドっていえば、結局「ルパン三世」のかっこつけたやり取りぐらいしかストックが無いのが見え見えだったり。ハメット、チャンドラーとあとロスマクを数冊、自分の狭い犯人当てクイズミステリ認識の範囲内で読んで 「パロディ」ぐらいのつもりでやった「ハートボイルド」、「ソフトボイルド」みたいな激安便乗商法だったり。果ては「本格ミステリ」とやらのリアリティの皆無な探偵をベースに、「ワイズクラック」ってやつだと 思い込んでる薄っぺらい安いキザセリフを並べさせ、都合よく武道や格闘技経験があることにして腕っぷしが強い設定を加えて、ワンパターンのナゾトキストーリーの中をうろつかせてみたり。
結局のところ、犯人当てナゾトキクイズ小説の中にちょっと変わった探偵役が出てるぐらいが日本のハードボイルド認識なんやろね。
結局おなじみのところを最低ラインとして始めなきゃならない。まずは本格通俗とか、「ミステリとして」だか何だかの極端なロス・マクドナルド偏重、男の生き様マッチョ説教ホークがスーさんがハマちゃんが、 などを始めとする日本のクソハードボイルド定義の類いはすべて捨てろ!そんなもんから出てくる「反逆」ごっこなど、せいぜい曖昧な理解による「パロディ」気取りのインチキ便乗商法程度のものだ。
ほぼ一世紀近くになる歴史を持つハードボイルドとは、例えて言えば同じ稼業を受け継ぐ一族のようなものだろう。私立探偵、警察官などを主人公とした犯罪をテーマとした小説。ミステリ小説を起源とするものだが、 トリックやその解決などよりも、犯罪のリアリティ、その結果などにより社会の裏側の実相を描くことが重視される。共通した稼業内容はそのくらいで、その歴史の中で様々な方法論が試され、内容方向性も 多岐にわたり、到底単純な「定義」などでそれらを規定することなどできるはずもない。例えば家系図の頂点に位置するハメットのコンチネンタル・オプと、近年に位置するケン・ブルーウンのジャック・テイラーを 包含するシンプルな定義なんてものが作れると思ってんのかい?そして考えようによれば、そのありとあらゆる試行錯誤が積み重ねられてきた広大・広範囲のキャパの中には前述のようなイカサマ便乗商法レベルのものすら退屈な三流以下作品として取り込まれてしまうほどだ。ハードボイルドが伝統的に持つマチズモイメージを裏返した弱虫探偵や、パロディマッチョ探偵、LGBTQ探偵、ヒッピー探偵、老人探偵、etc…。幼稚な思い付きパロディなんてとっくに凌駕してんだよ。 そして、そんな膨大なハードボイルドジャンルの中にあってもなお異端であるキャラクターCal Innesで、正統な後継者として反逆を示すのがこのRay Banksなのだ!
Ray Banksは日本のバッタ屋などとは全く一線を画し、このジャンルを深く読み込み新たな自分の創作をもってジャンルに参画してきた作家である。だが、その作品はそのジャンルの中でも全く異色のものだった。 これがハードボイルドなのか?そうだ、文句があるか?これが俺のハードボイルドだ!こうしてRay Banksはハードボイルドに反逆する!

ここで、Ray Banksの反逆宣言ともいえる一編について紹介しよう。実はCal Innesシリーズにはいくつかの短編があり、主にウェブジンなどに発表されたもので、それらは今は亡きBlasted Heathでは 『Dirty Work』というタイトルで一冊にまとめられ単品でも販売されていた他、自分が持っている全作品収録のオムニバス版にも収録されていたのだが、残念ながら現在は入手することはできないようだ。収録作品と その内容については後述するが、ここではとりあえずその反逆宣言と言える最初の短編『The Monkey Man』について紹介する。全面的にネタバレあり。

ある強風の夜、Innesは知り合いのDennisから手を貸して欲しいと連絡を受け、人里離れた彼の住むコテージへ向かう。彼はTVの子供番組で人気のキャラクターBashful Peteを演じるタレントだ。メンタル面とアルコールに 問題を抱え、度々出て行ってしまう彼女Fionaを説得し、連れ戻すのに手を貸している。だが、今回はちょっと違うようだ。うろたえるDennisに促され、寝室を覗くと、ベッドには顔を半分潰され、半裸のどう見ても 14歳以上には見えない少女の遺体が横たわっていた…。
なんとかしてくれよ、Cal、このままじゃ俺のキャリアも人生もみんな終わりだ。縋りつくDennis。
さて、ここでInnesはどんな行動を取ったか?

 1).Dennisを手伝い死体を処分し、事件を隠蔽する。
 2).知り合いの警察関係者を呼び、騒ぎが大きくなりすぎないよう対策を立てつつも、正しい法の裁きを受けさせる。
 3).密室トリックを見抜き、真犯人を見つけ出し、断崖絶壁の上で自白させる。

答え。
 4).その場から逃げ出す。
こんなもん俺の手に負えるか!俺はムショ帰りでまともな仕事にもつけないからこんなことをやってるだけなんだ!そしてInnesは街を目指して車を走らせて行く。

どうだ、俺の書く探偵はこういう奴だ。知力も力もコネもなく、大して機転が利くわけでもなく、死体を見れば心底ビビり、手に負えない事件ならとっとと逃げだすムショ帰りのチンピラ探偵だ。これがハードボイルド じゃないと、どっかの高見から言いたい奴は勝手に言え!これが俺のハードボイルドだ!これは明らかにそういうメッセージだろう。
英国のインディペンドパブリッシャーから出版されたこのシリーズが、果たしてどのくらい読まれたのかは知らない。だが、電子書籍黎明期、このハードボイルドへの反逆は、確実に少なからぬ数の世界に散らばる ハードボイルドファンの心を掴んだはずだ。そして数多のハードボイルドを読み続け、それしか能のないハードボイルド馬鹿のオレも、何度でも繰り返す!ハードボイルドの反逆児Ray Banksによるマンチェスターの チンピラ探偵Cal Innes四部作は、ハードボイルドを愛するものなら必ず読まなければならない名作だ!

…とメチャ熱で語った後だとなーんか腰砕けっぽく見えるかもしれんが、少し視点を変えるとこのCal Innes四部作、その反逆性・異端性という輝きは一切薄れるものではないが、ハードボイルドの大きな海の中では やはり一つの流れに属して行くものかもしれない。例えば、ハメット、チャンドラー~スピレイン/マイク・ハマー~J・D・マクドナルド/トラヴィス・マッギーなどと続くハードボイルドの歴史の中で、それと同等の マイルストーンとなると思われる存在にケン・ブルーウンがいるが、これから先に続く歴史の中でそれほど明確なポジションをまだ指摘できないものの、仮に主人公である探偵が事件に深く関わり、場合によっては 当事者・被害者ともなってしまう傾向の作品群と見ると、このCal Innes四部作もそのケン・ブルーウンを軸とした流れの中に存在する作品と見えてくるのかもしれない。
そもそもハードボイルドが、『○○殺人事件』とやらを知力と理論とかで安全な高みから解決した後、次の『△△殺人事件』に同じような涼しい顔をして現れるナゾトキロボット探偵が登場する犯人当てクイズから、 リアルな人間を主人公とする小説へと進化した時点で、そこに至る道は決定付けられていたのかもしれない。そして今言っているそれも、単純にブルーウンの突発的な発明ではなく、その歴史の中で時々現れてきたものだろう。 古くはチャンドラー『長いお別れ』あたりでもそういった感じはあったし、適当に思い付く限りでも70~80年代のクラムリーなんかもそうだろう。そしてエルロイ。この傾向の中でも突出した超破滅型のロイド・ホプキンスを創造するが、 そこでシリーズキャラクターといった方向を見限るようにしてLA四部作などの群像劇によるクライムストーリーに転換して行くわけだが、例えばピート・ボンデュラントなどを一つのシリーズ・キャラクターの 展開という考えで見るとまた違った見方も出てくるように思える。なんかエルロイに関しては、最近になってようやくハードボイルド/ノワール史の中での位置付けがぼんやり見えた来た感じで、自分の中でも明確な重要度上がってきているのでこれから言及して行くこと増えると思う。そういった流れの中で出てくるのがブルーウン ジャック・テイラーなのだと思う。そしてこういった流れは常に誰が誰の影響を受けたというような単純な直線で結べるものでもなく、時代の風潮など様々なものによって次にそういうものが産み出されて行くことになるのだろう。この流れの中に更に線を繋げにくそうなランズデール ハプレナを加えてもいいわけだしさ。 こういった流れを見極めて行くには、常にそういった薄いつながりを手掛かりに曖昧な傾向を追って行くしかない。決して軽々にこじつけ的に組み立てた「定義」などに捕らわれないように。 こういった方向でさしあたって思い付くのは、相変わらずの放置中で申し訳ないJoe Clifford Jay PorterシリーズやJohnny Shaw Jimmy Veeder Fiascoシリーズ、あとDave White Jackson Donneなどもっと系統的に ちゃんと読んで行かなければ。その他にもまだ手付かずのシリーズも数多…。もちろんジャック・テイラーさんも早く続き読まなきゃなんないし、やっぱりそういった傾向のあるジェイムズ・リー・バーク ロビショーの 続きとかも読んでいかなくちゃ。日本じゃ8作止まりだけど(今じゃそれでも出た方か…。)23作まで出てるんだよ。そんなこんなで結局ワシ、「最優先で読まなきゃなんない本」がとっくに100冊超えてるかもしれないな…。 いや、確実に超えとる。

ここで先にちょっと書いたCal Innes短編集『Dirty Work』について収録作品など簡単に紹介しておきます。前述の通り現在では販売されておらず、また長編作の巻末に各個の作品が収録されていることもなさそうです。 主に第1作が刊行される以前にに、ウェブジンなどに発表されたものです。最後の「There Is A Light That Never Goes Out」のみ初出が書かれていなかったので、短編集としてまとめる時に 書き下ろしとして書かれたものかもしれません。長編第1作発行が2006年で、これらの短編は2002~2004年に発表されたものですが、最初の『The Monkey Man』の作中で、内容に関係ないMorris Tiernanについての言及も あるところから、長編第1作は構想中であったか、場合によっては既に完成していて売り込み先を探していたのではないかと思われます。

1).The Monkey Man:2002年
2).Donkey Work:2003年
InnesはDonkeyに呼び出され、あるドラッグディーラーの様子を探ってくるように命じられる。端下金の仕事だがPauloへの家賃の支払いのためには引き受けなければならない、と自分に言い聞かせ向かったInnesだったが…。 こちらの短編の中でもDonkeyがInnesの兄Declanをドラッグ中毒に付け込み情報屋に使っていたことが伝えられる。
3).Diamond Dogs:2003年
盗まれた犬を取り戻してくれ、と依頼されたInnes。教えられた住所に行ってみると数人の男たちが今まさにその犬を運び出すところで、尾行を続けたInnesは闘犬場にたどり着く…。冒頭のジムのシーンで第2作の Liamがチョイ役で登場するが、まだボクシングを始めたばかりでいかにも血の気の多いチンピラという感じ。
4).Walking After Midnight:2004年
Innesはある男から友人の娘の様子を探ってほしいと依頼される。その娘はどうやら良くない男に引っ掛かっているようだ。Innesはその娘を密かに監視し、件の男と出かけるのを尾行するが…。Innesの恋人Donnaが登場。 しかし、長編第1作の時点でもう出てこなかった気がするが…。
5).The Beat Goes On:2004年
Innesは詩の朗読会が行われるパブに以来の報告のために赴く。出て行った彼女を捜し出して欲しいというのがビートニク詩人グループのリーダーの男からの依頼だった。難なく彼女を見つけ出したInnesだったが、 彼女の意思は彼の元に戻るつもりはないというもの。その際に撮った彼女の写真を見せ、男は納得してInnesに探偵料を払ったかに見えたが…。
6).Love Will Tear Us Apart:2004年
夫が浮気をしているようなので調べて欲しい、という依頼を受け、あるホテルで行われるその夫が参加するビジネスセミナーに潜り込んだInnes。首尾よく正体を隠したままその男性と仲良くなり、ホテルのバーで 妻に対する不満などの長話をするまでに至ったが…。
7).God Put A Smile:2004年
教会の神父からの依頼。かつてInnes同様にPauloが身元引受人となりジムに通っていた少年George。しかし性格的にボクシングは向いていなく、教会で地域の子供たちに遊び場を提供するボランティアのバスの 運転手として働いていた。だが最近、彼が遊びに来た子供に性的いたずらをしているという噂が広まっている。神父からの依頼はその真偽を確かめて欲しいというものだった。しかしInnesが調査を始める間もなく、 教会には噂を聞き付けた親たちが詰めかけ、エキサイトした彼らは暴徒と化して行く…。
8).Take Down The Union Jack:2004年
マンチェスターで移民排斥を訴え、政界にも打って出ようとしているグループのリーダー、Jeffrey Briggsからの依頼。彼の20歳になる息子が行き先も告げず毎夜外出しているのだが、何か面倒ごとに巻き込まれている 気配もあり、探ってみて欲しいとのこと。息子を尾行したInnesは、彼が近くのスーパーの駐車場でアジア系の友人たちとつるみ、マリファナを吸いドラッグの売人に近づくのを目撃するが…。このJeffrey Briggsは、 長編第3作にもInnesと直接の接触はないが、移民排斥運動の政治的主導者として登場する。
9).There Is A Light That Never Goes Out
刑務所に入っていた頃のInnesの話。後にInnesの守護者であり最も重要な友人となるPauloとの出会いが描かれる。Innesの事情を聞きつけ、面会人としてやってきたPaulo。俺の話は聞いてるだろう?外に出たら 身元引受人になってやるから俺のところに来てみないか?なに、ボクシングをやれっていうんじゃない。お前の得意なことをやってみろよ。この話の中で、Innesはちょっとした揉め事を解決に導き、 そういう仕事が性にあっているのかもしれないな、と気付く。

長編第1作の事件の後、Innesは探偵を廃業してしまうので、いずれも時系列的にはそれ以前の話ということになるでしょう。本編ではあまり積極的には見られなかった 私立探偵Cal Innesの様々な活躍が見られるところですが、多くはこの探偵らしい苦い結末となっています。いずれもCal Innes/Ray Banksらしい印象深い物語で、現在販売されていないのは本当に 残念です。いつの日か再刊の機会があればと思います。
それにしてもこういったある意味普通のPIストーリーとして書かれていても充分魅力的なCal Innesのメインストーリーとして、敢えて主人公が様々な形で喪失して行く悲劇的な物語が創られたということは、 やはり現代のハードボイルドが、「安定」や「成熟」の末に安心して読めるお手軽な犯人当てナゾトキクイズになるのではなく、その真逆である前述のような方向に向かっている傾向があることを如実に 表してるんじゃないですかねえ。
しばらく前にこの作品『Beast of Burden』が出て四部作が完結した直後ぐらいの時のRay Banksへのインタビューを見つけて、ここでリンクを張ろうと思ってたのだだけど、今回探してみたらもう見つからなかった。 何らかの事情で消えてしまったのだと思う。その中で、Banksはかの英国ノワールの第一人者であるテッド・ルイスへのリスペクトも語っており、一方でルイスを「文学的」という方向で持ち上げるような動きには 憤りを表していたりするところがこの人らしくてやっぱ信頼できるな、と思ったりした。
作者Ray Banksの近況については、また不明というところ。ちょっと今のところ新作を発表する機会も意思もあまりないのかもしれない。しかし、これほどの才能がここで終わってしまうのは本当に惜しいと思うので、 いつの日にかまた復活してくれないものかと、切に願う。Ray Banksについての新しい情報があれば、なるべく早くお伝えするつもりだし、現在読める他の作品についてもなるべく早く読んで、詳細・感想などを 書いて行くつもりです。


近況報告的なやつですが、最近かのハードボイルド/ノワール世界遺産、リチャード・スターク パーカーシリーズを一から再読しております。その最大の目的は未訳で多分この先も翻訳の見込みはないだろう 残り4作を読む事なのですが、まあ日本のこのジャンルのファンの人なら誰でも知ってる重大な問題がこのシリーズの翻訳にはあります。それが角川から出版された3作。そのうち第7作『汚れた7人』は、 2008年に奇跡的に再刊されたのですが、それ以外の2作、第8作『カジノ島壊滅作戦』と第14作『死神が見ている』は超入手困難、一度も見たことありませんに長年なっています。多分70年代に初版出たきりなんじゃないかなあ。 まあ今となっては、再スタート以前の早川書房からのものも入手困難になっているところですが。もはやこれは手に入らない作品と諦め、そこは飛ばしてシリーズを読んでいた人がほとんどだと思いますが、 今は電子書籍によりお手軽に原書を入手して読む事が出来ます!そんで読みました。第8作『The Handle (邦訳題:カジノ島壊滅作戦)』!ではここで感想としてあまりにも当たり前のことを書きます。パーカーシリーズはすべて大傑作なので、再読でも 大変面白いが、初読のパーカーはもうメチャクチャに面白い!なんかあまりにも当たり前のことを言ってると思うでしょうが、私同様長年このような状況に置かれてきた同志諸君の中にはこれに心動かされた人も 必ずいるはずだ。いや最初はずっと読めなかったやつが読めるぞーぐらいのところで読み始めたわけですが、読み進めて行くと当然だが読んだことない奴では先がどうなるのかはわからない。これでどうなるんだ? 次は?と夢中になって読んでいるうちに、ああ、パーカーを初めて読んだ時はこれほど面白かったのか、とある種の感動をもって気付いたわけでした。
こういう素晴らしい本と出合うことで読書にはまったが、近年はもうしょうもないランキングぐらいしか手掛かりがなく、仕方ないからそこで本を探しても押し付けられるのは魅力に乏しい犯人当てクイズばかり。 もう今はこんなものしかないのだろうな、と読書への意欲さえ衰退していた同志難民諸君!今こそパーカーに帰還するときだ!日本の様々なクソ勢力によってスポイルされた読書の喜びをその手に取り戻すのだ!
パーカーシリーズはキャラクター、コンセプトに合わせ、全体的に簡潔正確と言った感じの短い文章で綴られているので読みやすく、洋書初心者の人にもお勧めです。で、未訳の4作の方ですが、Kindle版では 一作を除き英国版で出ていて、700円台か時期によれば2~3割ぐらい安い日本の文庫以下ぐらいの価格で入手できます。
そして私のような種類の者だと、パーカー読むとウェストレイクつながりで、そう言やあドートマンダーも未訳があったよなあ、と思い出してしまうもので、そこで調べてみると5作が未訳で残っていました。 途中飛ばされたのもあり。いや、パーカー好きな人はドートマンダーもれなく好きだよな。ちょっと知名度的には劣る感じもあるのだが、もし知らなかったなんて人がいるなら、第1作『ホットロック』から 必ず読むべし!こちらはすべて前述パーカーの安い方と同じぐらいの価格で入手可能です。
更に、こういうオタクは、そういやウェストレイクとジョー・ゴアズって仲良くて、上記の2シリーズとゴアズのDKAで、それぞれのキャラクターが同じ町にいてすれ違うみたいな遊びをやっていたよなあ、と思い出し、 ゴアズのDKA探偵事務所シリーズの未訳まで探してみたりするのですが、こちらは2作。ウェストレイクの2シリーズと同じぐらいかもう少し安目ぐらいで入手できます。あー、このコラボパーカーは確実だと 記憶してるのだけど、ドートマンダーの方いまいち自信がなく間違いだったらごめん。ところでDKAの短編なのだけど、昔新潮文庫から『ダン・カーニー探偵事務所』という確か日本独自でまとめた短編集が出てたんだけど、 実はその後に出たやつなのか一作だけ未収録で、それも含めた全短篇が『Stakeout on Page Street: And Other DKA Files』というタイトルで一冊にまとめられています。
あと、その流れで思い出してちょっとお詫びせねばというところなのですが、時々書いてるバリー・ギフォード『Sailor & Lula: The Complete Novels』の件です。なんかこのギフォードのシリーズほぼ未訳 みたいに書いたかもしれないけど実はほとんど翻訳されてましたね。『ワイルド・アット・ハート』の他に『セイラーズ・ホリデイ』というのが出ててそちらに『ワイルド~』以降のシリーズがまとめて収録されてます。 タイトルだけ見てシリーズ第2作の表題作だけなのかと思い込んでました。文春紛らわしいことすんなよと逆ギレ。ただ、こちらの『Sailor & Lula: The Complete Novels』には翻訳版に収録されていない 第7作『magination of the Heart』まで入っていますので、一応丸損にはならないかと。まあ自分的にはギフォードぐらいなら最初から原文で読みたいというところだったので、問題は無いんですが。 まあこれからは日本で出てそうなやつに関してはもうちょっとよく調べてから書くように努めます。今回はすみませんでした。
なんかついでのつもりが思いのほか長くなってしまったけど、この辺の未訳のものに関しては読んで余裕があればいずれちゃんと書いて行くつもりです。あと、グロフィールドについては忘れてないから。とりあえず 未訳のは無いけど、パーカーについて書く機会あったらちゃんと触れるからね。

今回Ray Banks作品について書くにあたり、何か他に情報は無いかと現在唯一関係があるように思われる、以前にも書いたNeo Textのホームページを見に行きました。結局Banksの情報はなかったのだけど、結構気になる 新刊などもあったので、内容不明のままだけどちょっと書いときます。
以前にEduardo Rissoがイラストを担当する『Hole』についてお知らせしたGerry Brownが、今度はBenjamin Marraとのコラボで新作『Walking The Edge』を発表。Benjamin Marraというのは今年の8周年で『Terror Assaulter (O.M.W.O.T.)』というヤバいコミックを紹介したあの人です。今見たらアダルト指定になってたけどあれ大丈夫かな?Gerry Brownという人については今のところ一切不明なのですが、これほどの大物と立て続けに タッグとなるとちょっと放っとけない感じなのでなるべく早く読んでみるつもりです。しかしRissoとかMarraのイラスト入って100円台ならまず迷わず買うわな。
こちらも正体不明ですが、最近連続して作品が出版されているMark Rogersという人。何か気になるMexico noirシリーズというのをやっている模様。現在までに4巻まで発行されています。立て続けに発行というところから どこか別のところでやっててそちらが潰れたとか、自費出版でやってたかというあたりが予想されます。どんな感じかはまだわからないけど、結構頑張ってる感じだし、やっぱウィンズロウのカルテル三部作以来 メキシコのそっち方面は熱いところなのでできれば押さえときたいというのもありますね。
こちらも見るからにヤバい系。Jack Quaidという人はこの他2作のNeo Textからのリリースの他、自費出版でSF、アクション系の作品を出しているようです。これについても内容・クオリティ一切不明でジャケ買い。 もしかしたら日本の50ページぐらい読んだらゴミ箱にぶち込みたくなるゲス本ぐらいかもしれないけど、まあそれならそれであっちのゲス本底辺方向を探るのも意味あるかと。そりゃぬるい犯人当てクイズ押し付けられてるより遥かに有意義でしょ。それにしてもイラストのブッチャー・ビリーって…。やっぱ『The Boys』のファンなのかなあ?
今回ピックアップしたものも含めて、全部かは確認していないけどNeo Text出版作品は100円台の超低価格です。まだ新興小パブリッシャーのNeo Textとしては、カバーや低価格に惹かれて寄ってくる変人バカを集めて 少しでも認知度を上げて行きたいと頑張っているところなのだと思います。つまり私のようなもんがど真ん中のターゲット!ここは思惑通りにまんまと引っ掛かり、日本でも読者を獲得できるよう騒ぐ方向で努力して行かなければと 思うところです。あー、例のスコットランド一派とか新しい方でもプッシュして行きたいやつは山積みなのだけど。こっちも頑張るのでNeo Text気になるやつあったら読んでやってくれや。

Neo Textホームページ

最後に戸梶圭太先生最新情報。何とか読み始めました。多元宇宙りんご町シリーズ!現在までに4巻までが絶賛発売中ですが、こちらはとりあえず2巻まで。
あの『ご近所探偵ともえ』シリーズの脳天気夫婦が、離婚して帰って来た!離婚してラブラブカップルに戻ろう、ぐらいの理由で離婚してみたともえとカッちゃんが相変わらずという感じのノリで、新天地りんご町を闊歩! 昭和からタイムスリップしてきた?時空婦人警官や、本当に資格があるのかもわからない自称民生委員などぶっ飛んだ仲間が次々登場!ぬるいあるあるギャグを毒臭靴下キックで蹴飛ばす、嫌だけどあるあるかもギャグ満載で やな感じにほっこりさせる?抱腹絶倒または腹部に物理パンチ喰らう感じのコメディシリーズ!戸梶画伯によるフルカラー美麗イラストも満載!絶対読もう!戸梶先生は続く5巻も鋭意執筆中とのことです。


なんとしてもこれだけはやらなければとこだわって来たRay Banks Cal Innes四部作もなんとか完成しました。ホッとしたかというところで、思い付きの近況を書いていたら、新旧共にやらなければならない案件が あっという間に山積みになってしまいました。なんか落ちものパズルで面クリアしたかと思ったところでどちゃっと落とされてきたみたい。なんとか時間あるうちに頑張っておかなければ、というとこです。ではまた。


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■Ray Banks
●Cal Innes四部作

●Farrell & Cobbシリーズ

■あのシリーズの入手困難&未訳
●リチャード・スターク/パーカー入手困難&未訳

●ドナルド・E・ウェストレイク/ジョン・ドートマンダー未訳

■Neo Textに注目せよ!

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