2017年6月19日月曜日

Adrian McKinty / Dead I Well May Be -Dead Trilogy第1作!これがAdrian McKintyだ!-

前回はヒーローだアンチ・ヒーローだと延々と試行錯誤の迷宮をさまよっていたおかげもあり、何とか間に合い、予告通り今回はAdrian McKinty作品。彼の長編小説第2作にしてDead Trilogy第1作、2003年発行の『Dead I Well May Be』であります。
えーっと、まず最初に言っときます。前々回もちょっと言ってたことだけど、もし「Adrian McKintyという作家は島田荘司やカーに影響を受けたらしいと聞いたのであるが」みたいな感じでたまたま検索してここにたどり着いちゃった人がいるなら、この小説は読む必要ないです。あと多分この文章も読まない方がいいです、ってことでさいなら。

ちゃんと警告したかんね。

よし、ではもうそういう類いの人は追っ払ったと信じ、いつものペースで行こう。まだ読んでるならお行儀良く書いてるうちに帰った方がいいよ。これは本当に素晴らしい作品である。間違っても「カーや島田荘司とは似ても似つかない作品で落胆した」だの「ミステリーと思って読んだらミステリーではなかった」みたいな狭量な思い込みによる駄感想が一言たりともつけられていい作家・作品ではないのだ!ああ、アイルランドよ。ケン・ブルーウン、ガース・エニスに続き、何が何でもすべての作品を読まねばならぬという作家を生み出してしまったのか。はっきり言っておくが私はいわゆる「本格」みたいなのが好きな人と敵対するつもりなどない。自分と同じように好きなジャンルのものを楽しく読んでいる人として基本的には尊重しているし、自分がたまたまそういうものを読んだ時にも単純にハードボイルド・ノワール好きの観点のみで批判するようなことは絶対にしない。だがそっちサイドの低レベルな部分では「自分の方がむつかしい謎解きクイズを読んでいるので頭がいい」と思い込んで自分の位置すら把握できてないままの上から目線のつもりでこのようなことをやってくる輩が大変多いのだ。この作品を見れば、McKintyという人がそういうジャンルにも目を向け、論評できるくらいの大変幅広い読書経験と見識を持った作家だということはすぐにわかる。だがそんなことにも目を向けず、形式ばかりにこだわり、暴力を扱っている作品なら見下して批判できると思っているような低レベルのやつはMcKinty作品に近寄る資格すらない!うぐー、いかん、最初から荒れすぎだ…。なるべく控えようとは思っているのですが、今回はまたあっちこっち罵倒し始める危険性あり。いや、とにかく何とかまずこの作品の素晴らしさをきちんと伝えなければ。その後は知らん!何とかそこまでは可能な限りまともに書くつもりなので、そこまででも読んでやってくださいな。本当に素晴らしいAdrian McKinty作、Dead Trilogy第1作『Dead I Well May Be』であります!


【あらすじ】

1990年代初頭、アイルランド、ベルファストではテロの嵐が収まらない。爆破事件で一帯の窓ガラスが全部吹き飛び、俺にも日雇いの仕事が転がり込んできた。ちょいと懐も暖かくなり、テロ直後の現場でガラスの片付け作業をする俺たちの写真が新聞の一面を飾った。だが、それがまずかった…。翌日、担当官が家を訪れ、規定違反で俺の失業手当が打ち切られることを告げてきた。もうベルファストで暮らしていける見込みはない。以前から打診されていた件、アメリカでのDarkey Whiteの仕事を引き受けるしかない。気は進まないが…。

主人公Michael Forsytheの一人称で語られる本作、プロローグで語られるこのような経緯で、彼はアメリカに渡り、ニューヨーク、ハーレムのアイルランド系ギャングのボスDarkey Whiteの下で働くこととなる。
そして、その8か月後から物語は始まる。

ボスDarkeyの下には参謀Sunshine、その命令下、Scotchy、Fergal、Andyとともにチームを組み、Michaelはみかじめ料や借金の取り立てといった仕事をしてゆく。理由も不明なまま、Andyを病院送りにしたShovelにけじめをつけ、Dermotとのごたごたが銃撃戦に転じ…。そんな中でMichealは次第に頭角を現して行く。そして、ボスの女であるBridgetとの秘密の情事…。そしてある日、彼らのチームはDarkeyの配下Big Bobとともにメキシコへと派遣されるのだが…。

とまあ、今回はこのくらいに。単発作品ならもう少し書くべきだが、これは三部作の第1作ということで、続きは多分最後まで第2作の時に容赦なくネタバレすることになると思います。
これは復讐の物語である。その理由などは明らかにされないまま、序盤のうちから所々で「俺は後にこいつののどにドライバーを突き立てることになる」という形でその後の暗い運命が暗示されて行く。まああまりにも内容が曖昧になっているので、全体で300ページぐらいの作品で、説明した辺りまでで100ページぐらいで、その後80ページぐらいに渡りそこに至る地獄が描かれ、そののちが復讐物語となって行くぐらいの説明はしておこう。全体的な話の進みは早い方ではない。しかし!そこらのろくに感想も書けないくせに高飛車に作文先生気取りで何か言ったつもりになってる輩が言うような「無駄な記述」なんてものはこの作品には一切ない!冒頭から、そのどこで息継ぎをしているのかも判別できないように低くうなり続けるような独特の文体にやられる。そしてその文をand、andとつなげて行く様は、まだ俺が話してるだろうが、と言わんばかり。どんなにぶちのめされても立ち上がって行く主人公Michael Forsytheによって語られるこの作品自体が、決してお前らの言うとおりになんか動かねえんだよ、と言わんばかりに、読者が安易に望むようなお手軽でテンポの良い、なんて感じには話は進まず、彼が目にして語るべきだと思ったものに我々読者は延々と耳を傾けて行かなければならない。まだ俺が話してるんだよ。更に重ねて言うが、この小説に「無駄な記述」などというものは一切ない。主人公であり、語り手であるMichaelが目にし、交わした会話で彼が意味があると思って語っていることには当然この小説にとって意味があることなのである。そしてそれは伏線などというせせこましいテクニック的なものとも一切関係ない。そうして語られ続けて行くうちに、語り手の感情が最も深くなるいくつかの場面では、いつの間にか(まさしくいつの間にかと思えるような流れで)その語りが現在時制となり美しい情景が描写されて行くのである。安っぽい仲間と、友情とも言えないような他愛ないやり取りを交わしながらニューヨークのアンダーグラウンドを練り歩き、時にはともに死線を超え、そして地獄を抜け、そしてその果てに容赦のない復讐が遂行される。そして、その最後には"incant"などというあまりにも深く美しい単語が読む者の胸の真ん中にまっすぐと打ち込まれてくるのだ。これこそが読むべき小説だ。いくら絶賛しても足りん。2003年発行から14年かよ…。でもとにかくやっとこの作家、この作品にたどり着けて本当に良かったよ。日本で翻訳が出なかろうが、他に誰も読まなかろうが、この作家、この作品が私にとって魂を揺さぶる存在であるには関係ない。私はこれからAdrian McKintyを読み続けて行くのだ。ざまーみろっ!

そしてこの物語はさらに続く。3年後の2006年に発表された第2作『The Dead Yard』。この物語がどう続けられて行くのかはまだわからない。だが一つ想像できるのは、またしてもこちらが予想したり期待したりしたようには絶対に動いてくれないだろうということである。なーんだか読むって言っちゃった3部作やら言ってないけど早く読みたい3部作やらも山積みなのだけど、なるべく早くその第2作を手に取り、またとにかくMichael Forsythe=Adrian McKintyの語りにひたすら耳を傾けて行こうと思うばかりであります。

さてと、まだまだ到底足りない気もするが、とりあえずネタバレしない範疇でこの作品について言いたいことはある程度語れたのではないかと思います。それではここからは罵倒のコーナーです。今回はもしこのような作品が翻訳された際には、そこらで安穏として反論もされないと思っている気取り屋からこのような作品に必ず寄せられるであろうお決まりの表現、「よくある」「ありきたり」問題についてとことん罵りのめしてやる所存であります。
一体いつ頃にそれが始まったのかは不明だし、結構長い間に渡りそんな言い方してりゃ利口に見えると思ってる猿真似マニュアル馬鹿の気取り屋どもによって受け継がれてきたようにも思える。長い間目にしててもそれほど気にしてはいなかったのだろうが、数年前ぐらいだったかそれにぶつかってしまった。まだ翻訳にも期待していたころで、わーやっとこういうのが久しぶりに出たか、と大変楽しく読み終わって他人の感想を見てみたところ、いきなり「よくある話」とぶった斬り。何を考えてんだこの野郎!こちとら散々そういうのを探しててホント久しぶりに出会えたっていうのに!どこにこういうのがそんなによく転がってるってゆーんだよっ!と大変憤慨したものである。そんで気にし始めるとまあホントにあっちこっちでこういうこと言い散らかしてる奴がいるわけですね。そんでしばらくしてやっと言ってる意味に気が付いた。こいつらはこういう作品がよくあると言ってるのじゃないわけね。要するに、現実の警察官が退職まで一度もお目にかからないような不可能犯罪でもなく、国際的謀略でも、大掛かりな金融犯罪でも、政界の暗部に迫ったものでもなく、常習的な犯罪者や犯罪組織が起こす犯罪事件を描いたものを、「よくある」と言ってるわけね。…馬鹿じゃないの?ホントに呆れたよ。
このチープ極まりない気取り屋の常套句のルーツがどこにあるのかは不明で、もしかしたらミステリ方面ですらなく、映画方面なのかもしれない。なーんだか「ありきたりのギャング映画だが、女優○○が美しかった。」とか言って昭和のテレビ映画解説者ぐらいのことを言ってるつもりになってるひょっとこ野郎を見かけたこともあるし。おなじみ○○の一つ覚え「マーク・グリー二ーとくらべれば」みたいなのを罵った後に、どうせ言ってるの子供なんだから言いすぎちまったかな、と自分の大人げなさを数秒反省するときもあるが(あくまでも数秒)、こーゆーのやってるのって明らかにいい歳じゃない。テンプレートに書き込んだ感想で利口ぶれるもんじゃないぐらいわからなくて、何の人生経験なのか。これがどのくらい根の深いもんなのかはわからんが、こんな頭の悪い常套句にいつまでも自分の心から愛するジャンルがコケにされるのを見過ごしてはおれんのだ!今後は「読書のプロ」辺りがこんな言葉を平気で使ってるのを見かけでもしたら、名指しでとことん罵倒してやるぐらいの気持ちで長年放置され続けてきた「よくある」「ありきたり」馬鹿どもに戦いを挑んで行くつもりでいるので覚悟しやがれ。どっかのロクデナシが始めたいい加減なレッテル貼って安心する前に悪い頭でも一生懸命使ってきちんと自分の頭で考えた言葉で語りやがれ!「プロだろうが。」(私の心から愛する映画の一つ『野獣死すべし』の佐藤慶のセリフより。仲代達矢版もこの倍ぐらいの長文かけるぐらい好き。)
にゃんだかさ、色々考えてると一旦はAdrian McKinty翻訳出るといいなあ、とか言っちゃったけど、どうせ出てもろくなことになんないのかな、出ない方がいいんじゃないのかな、ぐらいの気がしてきちゃったよ。でもさあ、これでMcKintyに初めて出会えて、こんな優れた作家がいたのか、と感動できる人だってまだ沢山いるはずなのだよね。だからやっぱり何とか1作だけでも翻訳されないかなあ、と思うわけです。そうしたらさあ、もう後は今は電子書籍もあって手に入りやすいんだから原文で直で読めばいいわけ。もー日本の出版社なんて全部つぶれちゃっても全然困んないよ。やれやれ。
またしてもあまりにも素晴らしい作品を読んでしまったため、随分と荒れてしまいました。お騒がせしましたが、今回は一旦はこの辺で。まあ最後にもう一度言いますが、Adrian McKinty作品は必読!これこそが読むべき作家、作品である!

Adrian McKintyホームページ


【その他おしらせの類】
まずは皆さん今年のアンソニー賞のノミネート作品をご覧になったでしょうか?まだの人はCrimespree Magazineのウェブサイトのこちらでも。なんとペーパーバック・オリジナル部門にあの今は亡き280 StepsからのEric Beetnerの『Leadfoot』が!いや素晴らしい。出版社が無くなったっていい本はいいんだよ。作品は出版社じゃなくて作家に属するのだ!と言わんばかりのアメリカのミステリを愛する人たちの心意気。どっかの国じゃあ年末のランキングが出版社や本屋のためにだけあると思ってる(まあ実際そうなんだろうが)「読書のプロ」先生が『ポップ1280』を1位にしたのはまずかったね、なんて苦笑いしてたらしいよ。情けなくって笑う気にもなれないよね。いや、今回はもうやんないから…。しかしかくいう私もいまだになかなかEric Beetnerさんの作品にまでもたどり着けないという情けない始末。何とか頑張って早くBeetnerさんの本も読むっす。オイラもまず『Leadfoot』からやっちゃおうかな。
そして280 Stepsと時を同じくしてBlasted Heathが没した後作品が絶版となっていたDouglas LindsayのBarney Thomsonシリーズも復活しました!…のですが…、こちらLindsayさんの個人出版社であるLong Midnight Publishingからのリリースという形になっています。なんだか最近のLindsayさんのブログ(Douglas Lindsay.com-The State of Things)を読むともう一つのパブリッシャーFreight Booksも経営困難に陥っているそうで、なかなか思うように過去の作品も出版できず、ということでこのような形に踏み切ったということのようです。本当にいい作家なのに。うまくいかないなあ。とにかくはまたこの大変楽しいシリーズ(まだ1作しか読んどらんが確信はある!)が読めるようになっておりますので、未読の人は是非に。価格も1巻100円ぐらいと大変お得!わーこれが100円で読めるなんて!Unlimitedもあるよ。私もこの大変優れた作家を少しでも応援すべく、今後はシリーズの続きも他のシリーズもどんどん読んで推して行くつもりでおります。ホントだって!
そしてPolis Booksからはこちらの作品『Shallow Grave』。 Alex SeguraとDave Whiteによる、それぞれのシリーズキャラクター、Pete FernandezとJackson Donneが登場する合作中編が現在無料で読めます。Polis Booksからは他にもAlex SeguraとRob Hartによる合作短編『Bad Beat』も出ていてこちらは122円で販売中。今回新しいのが出てPolis Books Twistってシリーズになっているようです。Polisのこの辺のシリーズは日本でもこういうのを待ってて読んだら気に入る人が絶対に多いはずなのでまだ手を出していない人はこのチャンスに入手すべし!

とまあ、今回はこんなところでしょうか。また著しく遅れてしまったのですが、今回は歯を抜きました。歯を抜くのは凄く痛くてかわいそうなので、ブログとかは少し休んでも良いという決まりになっています。なんか色々無理がたたったのかこの週末はジンマシン出てほとんど寝てたりなかなかうまくいかんよ。トホホ…。しかしまあ、体調悪かったりするのは仕方ないにしても、前回は延々とグダグダと書いていたり、なんかその間にずいぶん書かなきゃならないものも溜まってきているので、ちょっと今後はなるべく効率よく多くのものを書ける方向で考えないとな、とか思っておりますです。今回も色々余計なことを書きすぎたので、中飛ばしちゃった感じでもお付き合いくださった人はありがとうございました。なんか頑張るっスよ。ではまた。


●Adrian McKinty
■Dead Trilogy


■Sean Duffyシリーズ




●Douglas Lindsay
■Barney Thomsonシリーズ





■DCI Jerichoシリーズ


■DS Huttonシリーズ



●Polis Books Twistシリーズ



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