2016年10月15日土曜日

グレッグ・ルッカ Queen & Countryシリーズ -第2回

ずいぶん間が空いてしまったのですが、グレッグ・ルッカ Queen & Countryの第2回です。前いつだったっけ?と見てみたら去年の12月…。まあ、私のブログなんてこんなんばっかりですが…ああ、あれもこれも早くやらなきゃ…。
しかし、このQueen & Countryに関してはちょっとだけ説得力のある言い訳があります。詳しくは後ほど書きますが、今回の『The Definitive Edition Vol.2』収録の作品を読んでいる途中で、ウィキペディアに書いてあった注意書きに従い、時系列的に前の『The Definitive Edition Vol.4』に収録のDeclassified Vol.1を読んだのです。で、やっぱり時系列的に前の話が収録されているこっちを先に読んどいたほうがいいだろうと考え、結局『Vol.4』の方を全部読んでから『Vol.2』を読み終わったというわけです。それなら『Vol.4』の方を先に書けばいいかな、とも考えたのだけど、そちらはタラ・チェイスの出てこない話ばかりなので、やっぱりそちらはとりあえず言及ぐらいに留め、主人公タラ・チェイスのストーリーを追っていった方がいいだろう、ということでこうなってしまいました。うむ!少なくとも自分は説得できた…。まあ、そんなわけですので、この先はもう少し早く進むと思うのでご期待ください。

それでは、第1回のThe Definitive Edition Vol.1に続き、今回はVol.2に収録の作品についてです。

●Operation Blackwall 作画 : Jason Shawn Alexander

本部長ポール・クロッカーが情報局合同会議のためアメリカ、ワシントンに出張中、SIS長官である"C"ことSir Willson Stanton DaviesからSIS特務課にミッションが依頼される。フランスでメディア関係のプロジェクトを進行中のイギリスの実業家Colin Beckが、娘Rachelのベッドシーンを盗撮したビデオにより、フランス側に有利になるよう事業を進めるよう脅迫されているということである。脅迫にはフランス情報部も関わっているらしい。そして、彼の娘Rachelはタラ・チェイスの学生時代からの親友でもある。政治の関わる行動を嫌うクロッカー不在ゆえ、代行であるマインダー1トム・ウォレスはミッションを受け、チェイスをフランスに派遣する。チェイスは脅迫のため雇われ、逃亡を準備していたRachelの恋人Andreを見つけるが…。

前回のOperation Crystal Ballの最後、ミッションを成功させ無事に帰還したマインダー3キタリングと微妙な関係にあったチェイスは、遂に一線を超えるのですが、やはりこの関係は仕事に支障をきたすと考えるチェイスは今回のストーリーの中でその関係を解消します。チェイスとキタリング、RachelとAndreの恋愛関係が交錯する一編です。
Jason Shawn Alexanderの作画はイラスト的といった感じの素晴らしいペン画です。作品の方はペンによる白黒ですが、ペイントによるカバーも素晴らしい。画家、イラストレーターという方が主な肩書のようですが、コミックも多く手掛けていて、Darkhorse、DCなどの他、最近のものではImage Comicsでストーリーも手掛けた『Empty Zone』があり、こちらは早く読んでみたいところです。

●Operation Storm Front 作画 : Carla Speed McNeil

ここでThe Definitive Edition Vol.4収録のDeclassified Vol.1の物語がストーリーに関わってきます。Declassified Vol.1は本部長ポール・クロッカーのマインダー時代の話で、時代は東西冷戦下、クロッカーはプラハである人物を西側に亡命させるというミッションに当たるのですが、任務は失敗に終わりその人物も殺害されます。このOperation Storm Frontでは、その人物の息子である実業家が誘拐され、その実業家とは面識すらないクロッカーですが、過去の苦い思いからなんとか彼を救いたいと考えることが話の一つの軸となって行きます。またDeclassified Vol.1では現在のクロッカーの上司であるSIS副長官ドナルド・ウェルドンもプラハの駐在員として登場します。現在はクロッカーと衝突の多いウェルドンですが、この時には上司の命令を無視し危機にあるクロッカーを助け、ただの官僚的というだけではないそれなりに気骨のある人物であることが示されます。

マインダー3キタリングが派遣中のベネズエラ、カラカスのホテルのベッドで死亡しているのが発見される。死因はくも膜下出血で、現地警察からも事件性はないとの報告が届く。
グルジアでロシアの実業家が誘拐される。当地で相次いでいる身代金目的の誘拐事件である。しかし、それがかつてプラハで自分が助けられなかった人物の息子であることに気付いたクロッカーは彼を救出すべく動こうとするが、副長官ウェルドンにSISの任務ではないと却下される。
一方、マインダー1ウォレスは、キタリングの抜けた穴を埋めるべくマインダー3候補を求め訓練所に赴き、Brian Buttlerを推薦される。マインダー3候補として任に就くButtler。一度はクロッカーの要請を却下したウェルドンだったが、上司"C"とも掛け合い誘拐事件の相次ぐ現地の治安調査の名目でグルジアへのマインダー派遣を認可する。そしてマインダー2チェイスと新人Buttlerがグルジアへと向かう。
現地警察へ赴き、あまり協力的ではない担当官と面談。そしてその夜、現地の駐在員との接触のためホテルを出た2人の乗る車が襲撃され、マインダー3候補Butllerは死亡、チェイスは一人現地に残される…。

関係解消後、ぎこちない間柄のままのキタリングの突然の死去は、チェイスの心に影を落とします。キタリングの死には不審なものが感じられるのですが、現在のところそれはそのままに置かれます。過去のクロッカーのミッションについては、会話の中で少し言及されるぐらいなので、やっぱりDeclassified Vol.1を読んでいないと分かりにくいかと思います。ウェルドンがなぜ今回に限ってクロッカーのために動いたのかも、過去の経緯を知らないと分かりにくいかも。
作画のCarla Speed McNeilは有名なWebコミック『Finder』の作者(現在はDarkhorseから発売中)。最近ではImage ComicsでAlex de Campiとの『No Mercy』でも作画を担当中。両作とも自分のいずれ読もうと思っているコミックリストに入ってるのではあるけど、ちょっとこの作品では気になる所が多かったり。ちょっと人物が寸詰まり気味なのと明るい表情のパターンが少なめな所でしょうか。主人公タラ・チェイスはあまり自分の心情を語る人ではないのでかなり表情などが重要だったりもするので。よく調べてみるとなかなか考えた人選ではあるのだけど、ちょっと今回はうまくいかなかったように思えます。

●Operation Dandelion 作画 : Mike Hawthorne

ここでまたDeclassified Vol.1の物語が関わってきます。ここまではSIS長官の"C"は前述のSir Willson Stanton Daviesという人だったのですが、ここで病気のため引退し、翻訳の出た小説版第1作にも登場するサー・フランシス・バークリーが代わってその任に就きます。実はこの人はDeclassified Vol.1ではプラハの現地駐在員の代表で、クロッカーのミッションが窮地に陥った時早々と本国に作戦失敗を連絡し、クロッカーを見捨てようとした人。その後KGBに暴力的に脅されたりして、クロッカーには若干の恨みも持っている人物です。

新人Buttlerがまだマインダー3候補の段階で死亡してしまったことにより、訓練所でも次の候補を見つけられず、SIS特務課はウォレス、チェイス2人の状態が続く。そんな中ウォレスは、そろそろ自分はマインダーを引退し、訓練所の教官となるつもりであることをチェイスに告げる。
SIS長官Sir Willson Stanton Daviesが病気により倒れ、次の長官はサー・フランシス・バークリーになるらしいとの噂が流れる。また、海外駐在員への予算も削られ、特務課の今後に暗雲が立ち込める。そんな中、キャリア官僚で各部門に発言力を持つWalter Secombeからクロッカーに会談の要請が来る。Secombeはクロッカーに自分の依頼を受けてくれたら予算面などで優遇を図ろうと申し出る。Secombeの依頼は、現在イギリスに滞在中の、ジンバブエの次期リーダーと目されるDaniel Mwamaについての調査だった。
ミッションを開始し、Mwamaに接近したチェイスとウォレスは、既に別部門の国内情報機関が動いていることに気付く。
そしてまた一方で、優秀な軍人ながらホモセクシュアルゆえに周囲との衝突が絶えず、SASを辞めることを決意したニック・プールが、上官の推薦によりマインダー3候補として就任してくる。

これまでのQueen & Countryシリーズの中でもひときわ人物の会話が中心となる少し難しかったりもする一編。ちなみにルッカは基本カコミによる解説・モノローグは使わず、情報は会話の中のものが主となるスタイルです。やっぱりこの作品もDeclassified Vol.1を読んでいないとクロッカーとフランシス・バークリーの関係とかよくわからないかも。
そのDeclassifiedの方ですが、とりあえずここまでの話ではVol.1だけ読んでおけば大丈夫です。Vol.2はトム・ウォレスの過去のミッション。Vol.3は今回から登場のニック・プールのSAS時代の話で、とりあえずのところメインのストーリーとは今のところ関係していません。前回まだあまりよくわかっていなくて「Declassified Vol.1~3は作戦行動のその後などを別のキャラクターが語るスピンオフらしい」などと書いてしまったのですが、以上のようにタラ・チェイス以外のキャラクターの過去の話というのが正しいところでした。すみません。ちなみにDeclassifiedについてはなぜかComixologyでもKindleでもデジタル版は未発売なのですが、MadefireというコミックのアプリショップではOni Press→Queen & Country内で全3作発売されています。…と思ったらこっちではあとのVol.7、Vol.8が未発売だったり。MadefireについてはiOS、Androidにはアプリがあります。本当はMadefireについてももっと詳しく書かなければと思っているのだが。なかなか至らなくてすみません。
作画Mike Hawthorneも自費出版によるコミック『Hysteria』で知られる人で、現在はマーベルのデッドプール物などを手掛けている人です。日本で出たのにもあるのかな。ちょっとカバーにはイマイチ感がありますが、個性的なシャープな線のそれほど悪くないアーティストです。この人については動きのある画が得意なようなのですが、前のCarla Speed McNeil同様作品内容的にちょっと本来の実力をうまく発揮できていない印象があり残念。


以上、『Queen & Country The Definitive Edition Vol.2』収録作品の内容でした。前回にも書いたのだけど、このQueen & Countryシリーズは連続したシリーズで、小説版も「キャラクターや設定をもとにして書かれた」というようなものではありません。作者グレッグ・ルッカの元々の意図もコミックから小説につながる作品を作るということだったのだろうと思います。グレッグ・ルッカは、アティカス・コディアック・シリーズを見てもわかるように、シリーズのエピソードごとにリセットされるタイプではなく、連続性にこだわりそれぞれの過去が主人公の上に積み重なって行くタイプの作品を作る作家です。タラ・チェイスはあまり自分の心情などを語るタイプのキャラクターではないと書きましたが、マインダー・チームへの信頼は篤く、メンバー間ではそれなりに率直な自分の考えを語る場面も見られるところも多くありました。そして、今回マインダー3キタリングを失い、マインダー1ウォレスも特務課を去ることになり、という様々な経緯を経た後、タラ・チェイスがマインダー1となっている小説版『A Gentleman's Game(『天使は容赦なく殺す』)』があるわけで、コミック版を呼んだ後にそちらを読むと少し違った印象のものになるのではないかと思います。自分もそちらを先に読んでしまったので、今回ストーリーの流れに合わせもう一度読んでみようと思っています。第3回『The Definitive Edition Vol.3』は『A Gentleman's Game』を間に挟む2つのエピソードが収録されていて、コミック版最終作Operation Red Pandaは『A Gentleman's Game』の直後から始まり、そのラストから小説版第2作『Private Wars』に続くということらしいです。次こそはあまり遅れないように頑張る所存であります。あ、あと第1回のOperation Morningstarの画像が変わってしまっていたのですぐに直しときます。たぶん後でアマゾンのリンクが変わってしまったのだと思うけど…。

ちょいと2000AD2000号に至るあたりで、自分的には結構頑張ってしまったもので少し気が抜けたというところで急に気温も下がり、少し体調を崩し気味で今回は遅れてしまいました。1週でできるぐらいの分量だったのだが。またここから気合を入れ直し頑張るものでありますです。次回はグレッグ・ルッカ特集!という感じで、引き続きルッカの、なんだかどこも出す気配がないのでJad Bellシリーズ第1作『Alpha』について書く予定でーす。ではまた。



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■The Definitive Edition(TPB)


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