Translate

2016年10月2日日曜日

2000AD 2000号達成!

今週水曜日(2016年9月28日)、イギリスの週刊コミック誌2000ADのProg 2000が発行!1977年の創刊から通巻2000号が遂に達成されました!英国コミックの偉大なるランドマークがここに刻まれたわけです!(主に受け売り)その40年に達せんとする歴史に対して、わずか3年ぐらいの読者歴の私でありますが、その偉大なる2000号についてできる限りの解説を試みようと思っております。
とりあえず2000号ということで、今回初めて見てくれる人もいるかと思いますので、前から見てくれてる人にはもう聞いた話になるとは思いますが、若干の解説を加えながら進めて行こうと思います。また、もう少しよく知りたいという人は、一応2013年秋からの3年分ほどの記事がありますので、リンクをたどってそちらをご覧ください。作品名についたリンクは一番最近の掲載のものになっています。

まず2000ADについてですが、通例1年を大体四半期に分け、常に掲載されているJudge Dreddを除き、4本の連載シリーズが入れ替わる形となっています。そして通常32ページがデジタル版では複数のカバーも含む大増56ページの今回の2000号はその秋期の最初の号となっているのですが、掲載作6本のうちJudge Dreddを含む5本は特別ストーリーのワンショットで、最後の『Conterfeit Girl』のみがこれから年末まで続くシリーズの第1回となっています。

Judge Dredd : By Private Contract
 John Wagner/Carlos Ezquerra
2000号記念号ももちろん巻頭はJudge Dreddから始まりますが、今号は特別の趣向で各作品の前に2000ADのコミック・レジェンドたちの手による1ページが挿入されています。その内容は、2000ADのドロイドたちによって作り出された作品はそれぞれに個別の宇宙を作り現実に存在している、と語る宇宙人編集長Tharg閣下がそれぞれの作品宇宙をめぐるというもの。そしてその最初はその正確なデッサン力とシャープで美しい描線で初期のDreddなどを描いた英国コミック・レジェンドのBrian Bolland。アラン・ムーアとの共作によるDC『バットマン:キリング・ジョーク』は日本版も出ているので、その素晴らしい画を見た人も多いと思います。
そして、本編の方は現在も2000ADで活躍中のコミック・レジェンドであり、Dreddの生みの親とも言えるJohn WagnerとCarlos Ezquerraのコンビ。日本ではクローネンバーグ監督による映画『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の原作コミックのライターあたりが一番有名なWagnerは連載開始当初から現在まで続く最も重要なライター。EzquerraはそもそものDreddのキャラクター・デザインをした人。
今回は特別ストーリーで、同コンビによる人気シリーズ『Strontium Dog』のキャラクターが登場しています。『Strontium Dog』はDreddよりさらに未来の世界で大戦争により産み出されたミュータントでその道を選ぶしかなかった宇宙の賞金稼ぎJohnny Alphaの活躍を描く宇宙冒険活劇コミック。1978年に短命に終わった2000ADの姉妹誌「Starlord」で始まり、その後2000ADに移り、他の作家の手にもより1990年まで続き一旦は終了していましたが、2000年から同コンビによるリバイバルが開始され、以来年1期ペースで現在も続いているシリーズです。DreddとStrontium Dogの共演は以前にもあったようで、二人は面識があるのですが、その辺についてはちょっとまだわかりません。
自分を探している人物がいるとのバーテン・ドロイドからの通報を受け、ある酒場に向かったDreddを待っていたのはJonny Alphaとミュータントの賞金稼ぎ仲間達だった。Alphaの言うところによるとDreddに時間を超えた賞金が懸けられてあらゆる時間帯に掲示されているということ。このままではタイム・ベルトを装着し時間をさかのぼり現れたAlpha達のように、あらゆる時間からそれぞれの手段で賞金稼ぎがDreddに襲い掛かる恐れがある。少なくともお前は信用できる、ということでDreddはAlpha達と同行することに同意する。未来へと渡り、捕獲されたように見せかけ相手が何者か探るという作戦だったが、作戦に参加し未来で待ち受けていたStixs族の二人が裏切り、Alpha達を気絶させDreddを連れ去る。そしてDreddを待ち受けていたのは、かつてMega-City Oneを恐怖に陥れたJudge Calのクローン達による私設法廷だった…。
Judge Calはかなり初期のJudge Dreddで半年にわたって掲載された「The Day the Law Died」というストーリーでJustice Departmentを乗っ取りMega-City Oneに恐怖政治を敷いた人物です(Complete Case File Vol. 2に収録)。ちなみにそのストーリーはスタローン主演の方の映画『ジャッジ・ドレッド』のベースにもなっています。最後にはDreddに倒されたJudge Calだったが密かにクローンが作られていてそれらが100年後ぐらいの世界でDreddに復讐を謀ったという話。また、登場するStixsは『Strontium Dog』でAlphaが遭遇した宇宙の辺境の全員同じ顔の無法者種族で、一番最近のシリーズでもAlpha達の作戦に参加しています。

Nemesis The Warlock : Tubular Hells
 Pat mills/Kevin O'neill
こちらのイントロページは、やはり英国コミック・レジェンドの一人Mick McMahonで、Pat Millsの代表作の一つ『Slaine』の世界が描かれています。Mick McMahonは美しいシャープな描線が特徴のBollandとは対照的な荒いが力強い線でまるで岩塊のような人物を描き初期からの2000ADで活躍したアーティストです。初期のDreddなどを見るとアーティストがBolland派とMcMahon派に分けられるようにも見える。現在はずいぶん絵柄が変わり、少しユーモアやシュールを含んだフォークロア的な画風になっているようです。McMahonによって描かれた初期の『Slaine』はMcMahobの代表作でもあり、2013年の『Slaine』30周年にも登場し、特別ストーリー1話を手掛けています。
『Slaine』の方をもう少し説明すると、先史時代の神と人間、剣と魔法とモンスターが入り乱れる世界を舞台に、戦士Slaineの闘いと遍歴を描いた、2000ADではJudge Dreddを例外として、最も長期にわたって続いている作品です。現在も年1期のペースで掲載が続いており、2014年からのSimon Davisによる素晴らしいアートのThe Brutania Chronicleが来年完結の予定です。巨匠Pat Millsについては作品の翻訳も含め、日本ではあまりにも知名度が低いようですが、2000Adの初代編集長でもあり、まさしく英国コミック界を代表する巨匠。代表作は今回登場の『Nemesis The Warlock』や『Slaine』の他、『ABC Warriors』、『Savage』など多数。このうち『ABC Warriors』と『Savage』についてはここ数年毎年1~3月期に交互に掲載され、1999年のVolgan戦争に始まるMills未来史の再構成を図っている模様。
『Nemesis The Warlock』についてはMillsの代表作の一つであることは知っているぐらいで私もこれが初見であまり説明できないのですが、1980年代に基本的には同コンビによって描かれた作品で、フリーダム・ファイターNemesisと宇宙の歪んだ宗教的支配者Torquemadaとの戦いが中心となるストーリーのようです。作画のKevin O'neillも2000AD初期からのコミック・レジェンドの一人で、アメリカDCなどの活躍も多く、アラン・ムーアとの『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』が翻訳があるので、日本的にはMillsよりもおなじみの人が多いかも。
今回のストーリーは、シリーズの最後にともに死亡したNemesisとTorquemadaが融合したまま宇宙の異空間を永遠に流されているというところから始まり、一時解放されたと思ったTorquemadaが過去の自分の肉体に戻ると、Nemesisが現れ再び永遠の流れに叩き込まれて行くというもののようです。キャラクターも特殊でいきなり見せられると何が何だかさっぱりわからなく見えるのですが、あとから出てくる襲撃者の方が主人公のNemesisです。名高い代表作が遂に復活かと思われましたが、今回は新しい展開というものではないワンショットということでした。しかし、前述のMills未来史においてABC Warriorsとも関係のあるNemesis The Warlockですので、そちらの流れでの復活は今後あるのかもしれません。

Rogue Trooper : Ghost of Nu Earth
 Gordon Rennie/Richard Elson
こちらのイントロページも2000AD初期から活躍を続けるDave Gibbons。90年代からは活躍の舞台をアメリカに移し、2000ADには久々の登場となります。こちらもアラン・ムーアとの『ウォッチメン』でその精密な画を見たことのある人も多いはず。2000ADでは通常一話5~6ページ程度という制約でどうしてもコマが小さくなりますが、彼の描く初期の『Rogue Trooper』でもその小さいコマの中でも迫力のある画を見られます。このページではTharg閣下が「いつまでたっても戦争を止めない地球人類に、その未来の姿を見せよう。」と語り、『Rogue Trooper』、『Bad Company』などの戦争コミックの様々な場面が描かれます。
『Rogue Trooper』は1981年から、2000AD初期から80年代まで活躍したライターGerry Finley-DayとDave Gibbonsにより始められたSF戦争コミックシリーズです。遠い未来の世界でSoutherとNortの二つの勢力の間でいつ終わるとも知れない戦争が続いており、その最大の戦場となった惑星Nu Earthは、双方により使われ続けた生物・化学兵器により防護服なしでは生存できない環境になっている。SoutherによりそんなNu Earthの環境でも防護服なしで行動できるよう遺伝子改造で作られたのがG.I.(Genetic Infantrymen)部隊。しかし、自国内の裏切り者によりNu Earthへ投入される降下地点をNortに襲撃され、部隊は全滅し、その中でただ一人生き残った男がRogue Trooperである。軍ではその人的資源を無駄にしないため、それぞれの兵士にはあらかじめその記憶を保存するチップがつけられており、亡くなった3人の戦友のチップをそれぞれヘルメット、背嚢、ライフルに備え付けられたソケットに装着し、彼らと会話しながらただ一人、軍のネットからも離脱し単独で裏切り者を追い続ける男Rogue Trooper。物語は80年代末に一旦は終結し、Rogue Trooperの死も描かれましたが、その後も時間をさかのぼる形で様々な作家の手により描かれ、2000年代前半には今回のGordon Rennieによるシリーズもあります。しかし、近年の最も大きな動きと言えば、そのGordon Rennieによるスピンオフ的作品『Jaegir』が2014年から開始されたことです。Nortの戦争犯罪捜査官である女性大佐Jaegirを主人公としたシリーズは、登場と同時に大変好評を博し、2000ADでも近年最大級のヒットとなっています。その状況で今回の2000号にRennieによるRogue Trooperの登場となったわけです。
Gordon Rennieは90年代から2000ADで活躍中のライターで、多くのDreddを手掛けている他、近年の代表作には『Absalom』、『Aquila』といった作品のある現在の2000ADの中心ライターのひとりです。作画のRichard Elsonはこの後登場のDan Abnettの2000ADでの代表作でもある『Kingdom』を現在描いているアーティストで、特に絵柄としては日本のマンガの影響を受けたタイプには見えないのだけど、技法や構図などに日本のものと共通点も多く、日本の読者にはこの号の中でも一番見やすい画ではないかと思います。
激しいNortからの攻撃にさらされながら拠点にこもり、増援を待つSoutherの兵士達。彼らの会話は兵士たちの間に伝わる様々なNu Earthのゴーストの話になってくる。そしてそれがすでに伝説となっているRogue Trooperの話になったとき、外で不審者として捕らえられ電子ゲートにより監禁されている謎の男が話に加わってくる。「俺はもっと恐ろしいNu Earthのゴーストを知ってるぜ。」一人の兵士が近寄ると、男は閉鎖されているはずの監房から手を伸ばし、兵士の銃を奪い取る。絶え間ない攻撃によるジェネレーターへのダメージによりゲートの出力も弱まっていたのだ。数時間後、Rogue Trooperがその拠点に現れると、兵士たちは全員殺害され、男の姿は無かった。その男こそが彼の追う裏切り者だったのだ。Rogue Trooperの追跡行は続く…。
これに先立つProg 1996~1999に全4回で『Jaegir』のミニシリーズが掲載され、前述のように秋期の始まりの号でもある今号に『Rogue Trooper』が掲載されるというのを聞き、またどこかで目にした噂を思い込みで勘違いもしたのか、この号から『Jaegir』のストーリーにつながる『Rogue Trooper』が始まるようなことを書いてしまったのですが、私の早とちりでした。とりあえずはこのようなワンショット。しかし、『Jaegir』にRogue Trooperが登場する日もそう遠くないものと思います。

Anderson, Psi-Division : A Dream of Death
 Alan Grant/David Roach
こちらのイントロページを描くのはRobin Smith。80年代に活躍したアーティストらしいのですが、ちょっとこの人についてはあまりよくわかりませんでした。こちらはJudge Dreddから広がった世界で、Dark JudgeやRobo-Hunter、Wakter、Andersonなどが描かれています。
Mega-City Oneの女性サイキック・ジャッジAndersonは、近年の映画『ジャッジ・ドレッド』にも登場していたので、知っている人も多いでしょう。初登場は1980年のJudge Dreddで、その後Dreddの宿敵となる、異次元の生が犯罪である世界でその世界の者を全て殺し尽したDeath Judgeが現れたときDreddの捜査に協力します。AndersonとJudge Deathとの因縁は深いのですが、少し長くなりすぎるので興味のある人は、2015年冬期のJudge Dredd/Dark Justice2015年夏期のDark Judges/Dream Of Deadworldについての解説の中で、私が読んだ範囲の初期エピソードについて書いてありますのでそちらを読んでみてください。現在は主に姉妹誌「Judge Dedd Megazine」に掲載されている単独シリーズを持っているAndersonですが、前述のJudge Dredd/Dark JusticeではDreddとともにDark Judge達と戦っています。また、この号に先立ち2000ADでも全7回のAndersonのシリーズが掲載されたのですが…、そちらについてはこれから書く2000AD 2016年夏期後編の方で。今月中には何とかします。
Alan Grantも2000AD初期から活躍するライターで、アメリカDCなどでの活躍も多く、そちらで名前を知っている人も多いかもしれません。初期Dreddの重要なエピソードも多く手掛け、Anderson, Psi-Divisionも多く書いているライターです。2000ADには少し久々の登場のようです。ちなみにAndersonは前述の初登場のエピソードがJohn Wagner/Brian Bollandによるものだったので、目次のクレジットはこの二人のものになっています。作画のDavid Roachは2000ADでは主に80年代に活躍したアーティストで、その後はイラストレーターや映画のストーリーボード・アーティストなどにも活躍の場を広げたようですが、この人についてもあまりよくわかりませんでした。この辺のあたりの人たちについての資料が今少し集めにくいところなのかも。白黒のイラスト的な作画は大変美しい。
任務から戻り、スリーピング・マシンで仮眠をとったAndersonをJudge Deathの悪夢が襲う。しかし夢であることが分かっていれば自らの夢をコントロールできるAndersonは、夢の中のJudge Deathをコテンパンに叩きのめし、数分後さわやかな気分で目覚めるのだった。
前述のようにAndersonと因縁の深いJudge Deathが登場するワン・ショット。スリーピング・マシンは忙しいジャッジが数分で充分な休息がとれるという装置で、初期のDreddから登場しています。

Sinister Dexter : Replica
 Dan Abnett/Mark Sexton
こちらのイントロページは主に90年代から2000ADで活躍中のアーティストColin McNeil。ここ1~2年では最も多くDreddを描いています。太く丸い線に影を効果的に使うアーティストで、今回は白黒ですが、雰囲気のあるカラーも上手い人。こちらは主に80~90年代の作品のキャラが登場しているようですが、まだその辺は手を付けられていないところで私にはほとんどわかりませんでした。早く制覇を目指したいところ。
Sinister Dexter』は1995年から続くDan Abnettの人気シリーズです。二人組のガン・シャークFinnigan SinisterとRamone Dexterが主人公のアクション・シリーズ。ほとんど現代のように見えますが、未来の人類が移住した他の惑星が舞台となるSFです。元々のキャラクターは映画『パルプ・フィクション』のジョン・トラボルタとサミュエル・L・ジャクソンがモデルになっているそうですが長期にわたる間にずいぶん変わっている感じ。ここ3年ほどは、自分たちが暗殺したはずだったが異次元並行世界の同一人物に入れ替わってしまい、放置しておくと世界のバランスが崩れる危険性のあるギャングのボスTanenbaumを追うストーリーが続いていましたが、昨年末に終了。Tanenbaumは倒したが、その時の爆発に巻き込まれ、今度は自分たちが並行世界に飛ばされてしまったという結末。元いた都市と全く同じだけど、誰も自分たちのことを知らない世界で再びガン・シャーク稼業を始めたというのが現在の状況です。
アメリカ、マーベルなどでの活躍も多く、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の原作者としてもクレジットされているDan Abnettですが、2000ADでもこの『Sinister Dexter』の他にも『Kingdom』、『Grey Area』などの現在進行中の人気シリーズを抱え、つい先ごろの夏期にも個性派アーティストI. N. J. Culbardとのコンビで地球上に居住不可能となった人類が軌道上に立ち上げた巨大人工衛星都市群が舞台の『Brink』を立ち上げ、それも確実に人気シリーズに加わって行くものと思われます。この『Sinister Dexter』の作画は常に交替し別のアーティストによって描かれるという形式をとっており、今回は日本でも翻訳が出たVertigoの『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でライター/アーティストとして作品の一つを手掛けていたMark Sextonを起用。今年冬期にJudge Dreddの全6回のエピソード『Ghosts』で2000ADには初登場しており、ストーリーボード・アーティストでもある画力を活かしたスピード感のある構図と素晴らしいペンのタッチを見せてくれました。2000ADでの今後の活躍も期待されるMark Sexton。そして7月に発売された増刊『2000AD Summer Special 2016』にも『Sinister Dexter』のワンショットが掲載されており、そちらでは2013年のコンテストの優勝者であり、最近手掛けた2000ADのDreddを描いたカバーがポスターにもなっている新進気鋭のアーティストTom Fosterが起用されています。
こちらの世界でも彼らの相棒となるのは愛車1958年型フォード・エドセルのレプリカ。その車に乗り、二人が今日訪れたのは墓地。かつて関わりのあったある女性の命日の墓参である。だがその墓の前には先客がいた。彼女の妹である。だが、この世界の彼女は2人のことを知るはずもない。昔のビジネス・パートナーと名乗り墓に花を手向けた後、彼らが乗り込む車を見たとき、彼女の頭にあるはずのない記憶がフラッシュバックする?
今回のこの作品もワン・ショットですが、近く再開されるであろうシリーズでその続きも描かれることでしょう。「かつて関わりのあったある女性」とか書きましたが、実は私もその辺の事情については今のところ全く分かっていません。好きな作品なのだけど、どうも過去のものがきちんとまとめられていない『Sinister Dexter』で、最近の「Judge Dredd Megazine」にも過去作がまとめて再録されていたりもしたようなのですが、いずれ完全版が刊行されるのを期待しています。今回ラストのフラッシュバックのコマが特別ゲストSimon Davis画伯によって描かれています。ちなみにSimon Davisによる『Sinister Dexter』ワンショットも2015年クリスマス特大号Prog 1961に掲載されています。

Conterfeit Girl
 Peter Milligan/Rufus Dayglo
こちらのパートは2000年代から活躍中のBoo Cook。シャープな線に独特のブラック・ユーモアテイストを含む画風のアーティストです。アメリカではImage comics『Elephantmen』のカバーなどでおなじみ。そちらで忙しいのか最近の2000ADではワンショット的なものしか見られないのですが、1999号のカバーはこの人によるものです。こちらは2000年代以降現代の2000ADの世界が描かれ、私の知っているキャラも多いです。後ろの方に書かれてる戦車人間は、自分がこれを始める前の2013年夏期Prog 1830-1832に掲載されたTharg's 3rillersの『Gunheadz』という作品のキャラだと思うのだけど、あれもCookさんの描いたやつだったのかな?かなり好きな作品なのでまた続きが描かれるとうれしいです。
いわゆるブリティッシュ・インベージョンの一人としてグラント・モリソン、ニール・ゲイマンなどと並び名高いPeter Milliganですが、昨年秋期、80年代の代表作『Bad Company』を復活させて久々に英2000ADに復帰。その際、亡くなったBrett Ewinsに代わってペンシラーを務めたRufus Daygloと、再び組んで始まったのがこの『Conterfeit Girl』です。ダークなサイバー・シティを舞台に、人々の身元を書き換えるのを商売とする女性が主人公のシリーズ。こちらはその第1回で、第1シーズンとなるのかが今年いっぱい続くことになると思われます。とても楽しみなこの新シリーズについては、2016年秋期の時にまた詳しく。


以上がイギリスが誇る週刊コミック誌2000ADの記念すべき2000号の内容でした。たぶん誇っていると思います…。1号だけなのですぐに書けると思っていたのだけど、思った以上に濃い内容であり、また2000号ということで初めて見た人もいるかもしれないし、そういう人にもわかるものを、などとも考えていたら結構大変な作業になってしまった。コミック関係はなるべく画像を入れるようにしようと思っているのですが、探す余裕がなくひたすら文字ばかりになってしまい少し読みにくかったらすみません。自分の感想としては、自分程度の読者歴で最近の作品から興味をもって少し過去のものを見たぐらいでもこのぐらいには何とか語れるように、現在の地点から過去40年の歴史を網羅した素晴らしい記念号だったと思います。もっと文字だけのページとか多くあるのかと思っていたのだけど、ひたすらすべてコミックで攻めたのも素晴らしい。2000ADはその歴史からも奥が深く、読めば読むほど面白くなってくるので、日本からでもデジタルで最新号が簡単に手に入るこの時代、もっと2000ADのファンが増えるといいなあと思います。ということで何とかやり遂げたよ。ご苦労さんオレ。


●関連記事

2000AD 2013年秋期 [Prog 1850-1861,2014]

2000AD 2014年冬期 [Prog 2014,1862-1873]

2000AD 2014年春期 [Prog1874-1887] (前編)

2000AD 2014年春期 [Prog 1874-1887] (後編)

2000AD 2014年夏期 [Prog 1888-1899]

2000AD 2014年秋期 [Prog 1900-1911, 2015]

2000AD 2015年冬期 [Prog 2015,1912-1923] (前編)

2000AD 2015年冬期 [Prog 2015,1912-1923] (後編)

2000AD 2015年春期 [Prog 1924-1936]

2000AD 2015年夏期 [Prog 1934-1949] (前編)

2000AD 2015年夏期 [Prog 1934-1949] (後編)

2000AD 2015年秋期 [Prog 1950-1961]

2000AD 2016年冬期 [Prog 1961-1972]

2000AD 2016年春期 [Prog 1973-1981]

2000AD 2016年夏期 [Prog 1978-1992] (前編)


'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

0 件のコメント:

コメントを投稿