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2016年6月15日水曜日

2000AD 2015年夏期 [Prog 1934-1949] 前編

今回はやっとの2000AD 2015年夏期なのですが、ここでお知らせ!あまりにも日々ぼんやり暮らしている私ゆえ、今年の秋には2000ADも2000号だなー、などと他人事として見ていたのですが、まあさすがに読み始めた頃よりは早く読めるようになってはいるし、今から頑張れば2000号までにオレも追いつけるんじゃね?と、つい先々月辺りやっとのことで気付いたのでした。そこから少し頑張り、現在は読む方だけは秋期も過ぎ、2016年内に到達しており、このままあと3か月ちょい、9月末の2000号発売の週末には「これがProg2000だ!」というのをお届けするべく努力中であります。そうなると、その前に2016年春期まではやっとかなきゃならなくなるので(Prog2000は秋期の開始号となるはずなので)今後しばらくはコミック方面は2000AD率が高くなりますことをご了承ください。でもせっかくやってるんだからちゃんと2000号はやらないとね!

では今回の2015年夏期のラインナップから。

 Judge Dredd
 Absalom [Prog1934-1942]
 Helium [prog1934-1945]
 Outlier [Prog1935-1944]
 Jaegir [Prog1937-1944]
 The Alienist [Prog1944-1949]
 Grey Area [Prog1945-1948]
 Dark Judges [Prog1946-1949]

ということになっていて、全16号と少し長めの今期はProg1945あたりを境に前半後半に分かれる感じになっています。そんなわけで、ちょっと急いでいるところではあるのだけど、今期は前編後編という形になります。
そして今期前半のトップ画像は、結構どれもいい作品ではあったのだけど、前年より続くRob Williams/Henry FlintによるTitanサーガ最終章の掲載されたJudge Dreddとなりました!ちなみに今期は昨年同様巨匠Pat Millsは夏休み!

Judge Dredd
 1. Blood Of Emeralds : Michael Carroll/Colin MacNeil (Part1-6)
 2. Enceladus - Old Life : Rob Williams/Henry Flint (Part1-8)
 3. Ghost Town : Ian Edginton/Dave Taylor (Part1-2)

1. ジャッジの一人であるFintan Joiceが自宅で襲撃される。襲撃者の目的はその時に届いた小包で、その中身はEmerald Iselのジャッジであった彼の父が銀行の貸金庫に預けていた様々な所持品だった。捜査に当たるドレッドは、JoyceとともにEmerald Iselへ向かい、そこでJoyceの父について調べるうちに、Emerald Iselに隠された秘密を暴き出す。
読み始めた時にはわからなかったのだけど、のちにお便りコーナーの読者からの指摘でEmerald IselがJudge Dreddの中でのアイルランドであることを知りました。言われてみれば、コミックなどでもよく見るアイルランドの感じなのだけど。こういうのが出てくるのもイギリスのコミックならではですね。Fintan Joyceについてのエピソードも、過去の2000ADかMEGAZINEにあったと書いてあったのですが、どちらだったか忘れてしまった…。作画は、主にJohn Wagnerとのコンビで最近のDreddをよく描いているColin MacNeil。
2. こちらは春期のEnceladus - New Lifeに続くTitanサーガの最終章。無人と思われていたEnceladusからの宇宙艇からEnceladus同様の極低温、吹雪が広がり始め、Mega-City oneへと襲い掛かる。その中にいたのは彼らがEnceladusで遭遇した異様な生命体へと姿を変えたTitanからの逃亡者達だった。氷でできた彼らの体に対抗できる武器も見つからず、Cityは危機に見舞われる。チーフ・ジャッジHersheyは重傷を負い、ドレッドも投下したナパームに背中を焼かれながら、最後の戦いに挑む。
最近のJudge Dreddの中でもHenry Flintの素晴らしい作画も併せてベストのシリーズではあるのだけど、最後はもうひとひねり欲しかったところ。まあ、1号あたりの掲載が5~7ページぐらいなので、2000ADの作品では最後の盛り上がりに欠ける印象がしばしばあるのですが。
逃亡者たちのリーダーである元女性ジャッジNixonと関係が深い『Low Life』(2014年末特大号Prog2015にワンショットが掲載。)の主人公Dirty Frankにドレッドは協力を求めます。そちらのシリーズは同じRob Williamsの作品で、Nixonはそちらに登場したキャラなのかもしれません。どちらにしてもTianに収容されたのがChaos Day以前になるので結構前のエピソードになると思います。終盤ドレッドがバイクも失い、万策尽きたところで馬が現れ、ドレッドの足となるのですが、またしてもお便りコーナーの読者の指摘によると、この馬はJudge Dredd MEGAZINEに掲載された話に登場した馬だそうです。こうやって説明不足のところを読者が補完してくれたりするので2000ADは隅々まで読まなければならんのです。
3. Chaos Day以後の立て直し途上でさらに大災害に見舞われ、人員不足を補うため退職、引退したジャッジや自警組織などの人員を補佐として登用するThe Ranger ProgrammeがJustice Departmentにより計画され、基本的には計画には反対の考えのドレッドが試験段階のチームの監督役を務めることとなる。予備訓練を終え、現場に出たチームはたちまち大きな危機に遭遇する。
2話構成ですが、それぞれ長めの12ページで、3話ぐらいの長さになるストーリー。ライターは『Brass Sun』などのIan Edgintonですが、この世界のジャッジの在り方を問うJohn Wagnerに迫る重さを感じさせる作品です。個性的なオリジナル作だけでなく、これからの2000AD、イギリスのコミックを背負って立つ作家の一人と言えるでしょう。作画のDave Taylorは1990年マーベルUKで描き始めたということなので結構なベテランで、バットマンなども含む多くの作品を手掛けているアーティスト。メビウスなどにも影響を受けたということで、、その辺を感じさせる線とカラーリングで、独特の世界を見せてくれます。

Absalom : Under A False Flag
 Gordon Rennie/Tiernen Trevallion

2013年末特大号にこの先の展開を思わせるワンショットが掲載され、すぐに始まるのかと思っていたら、結構経ってやっと再開された作品。以前よりは様子もわかってきたのでもう少しまともな解説ができます。なんだかそもそもが他のシリーズからのスピンオフということらしいのですが、2011~12年に掲載された後、しばらくの中断があっての再開となります。(単行本1冊あり)これは、主人公Harry Absalom警部補をリーダーとするロンドン警察悪魔課の暗黒の力との戦いを描いたシリーズ。悪魔課はわかりやすそうなので勝手につけた名称。そしてこのAbsalom、悪魔により愛する孫を地獄にさらわれ自らの体も致命的な癌に冒されるという目に遭いながらも、悪魔との戦いに一歩も退かず、常に不敵な笑みを浮かべながらところ構わず悪口雑言のワイズクラックをぶちまけ続けるという最高に格好いいジジイなのです。
今回のストーリーは、ロンドンの路上で起きた刺殺事件に端を発する。その被害者は服を残し体は炭化し、現場に儀式的な短剣が残されていた。殺害されたのは悪魔に取りつかれた人間とみて、Absalom以下悪魔課の出動となり捜査が始まる。遺留品の短剣から、この事件には教会が関わっていると睨むAbsalom。そしてその背景には教会により運営されていた孤児院での隠された過去の秘密があった。
以前のワンショットで登場した元同僚も出所、チームに加わり、新メンバーも加入で、今期は新たな展開に向けての序章という感じでした。ライターGordon Rennieは、あのローマの狂戦士『Aquila』など多くの作品を持つ、2000ADの中心ライターの一人です。今期は前半ではこれと『Jaegir』、後半には新シリーズと、大活躍。作画Tierren Trevallionはシンプルで割と均質な線に陰影で強弱を付け、ベタのグレイトーンとグラデーションで仕上げる素晴らしい独特のタッチ。この手法は日本の漫画家にも参考になる人は多いのではないかと思います。

Helium : Helium
 Ian Edgington/D'Israeli

あの『Stickleback』のコンビによる新シリーズ!だが、今期はカバー画像なし…。実は私も一番の注目で、2000ADでもかなり力を入れ、初回は増ページだったりもするのですが、色々なスケジュールなどの関係でそこまで手が回らなかったというところなのでしょう。絵の方を見たい人はHelium D'Israeliで検索してみるとよいかと。
今後もかなり期待されるシリーズでもあるので、設定も含め少し詳しく解説します。大規模な戦争の後の世界。地表の大気は毒に冒され、人々はそのガス帯の雲の上の高地で、少し文明の後退した生活を営んでいる。移動手段は複葉機、プロペラ船など。主人公はこの山上の町の女性巡査Hodge。亡くなった父の跡を継いでこの仕事に就いているが、実の子ではなく、赤ん坊の時近くの地で放置されているのを発見され、育てられた。色が白く、この土地とは別の出身と思われている。相棒も出自不明の機械仕掛けの体の大男。顔は人間に見えるのだけど普通の肌ではないらしい。プロペラ船が雲の下から攻撃され、難破するという事件が相次ぎ、不穏な事態が懸念されているある日、雲の下から見たこともないタンクに乗り、一人の男が山を登って現れる。男の話により、Hodgeはガス帯の下でも人々は生き残っていて都市が存在することを知る。そして両者の間の毒ガス帯は危険なミュータント達の世界となっていることも。その男は地表の都市の科学者で、毒ガスを除去する研究をしていたが、その過程で多くのミュータントを死なせてしまい、彼らに追われ逃げるうちにこの町にたどり着いたと語る。そして、男を追ったミュータント達が町に現れ、Hodgeは相棒、科学者とともにプロペラ機で脱出する。一旦は難を逃れたものの、次は地表の都市の軍の巨大プロペラ船に遭遇、捕獲される。そこでHodgeが、地表の政治的理由で暗殺された一族の生き残りであることが発覚し、彼女の抹殺命令が下される。かつての一族の味方であった将校の手助けにより、脱出したHodgeだったが、撃墜され、彼女と仲間の乗った機体はガス帯に消えてゆく。
結構長くなってしまったのだけど、他にも色々なキャラクターや、空中戦などの見せ場もあります。またしても2000ADの人気シリーズの一つとなって行くのが確実な新作!キャラクターにしても世界観にしても、本当にEdingtonは凄いなと思います。Vertigo『Hinterkind』なども早く読まねばと思っているのだが。『Stickleback』ではモノクロの版画のようなタッチを使っていたD'Israeliですが、今作ではシンプルな線にカラー。『Brass Sun』I. N. J. Cullbardを思わせるところもあるのだけど、D'Israeliならではの部分もあり、今後どうなって行くのかとても楽しみな作品です。

Outlier : Dark Symmetries
 T. C. Eglington/Karl Richardson

2014年春期に掲載されたシリーズの第2シーズン。設定なども良かったのだけど、タイトルになっている宇宙船Outlierの事件が終わってしまったので、単発のシリーズかと思っていたのですが、続きが始まり本格的にシリーズ化となりました。前回の際、省いてしまったのだけど、主人公のCarcerは過去に異星人Hurdeに捕えられ逃亡することができた数少ない人間の一人です。今回はそんなCarcerの過去が深く関わってきます。
Outlier事件の後、Carcerは精神を破綻し、施設に収容されていた。そんなCarcerの許を訪れたLuthra大佐は、自らの任務のため彼を連れ出す。そこは一切公表されないまま軍が密かに捕獲した事故で見捨てられたHurdeの宇宙船だった。だが、船に入るとCarcerの体はHurdeのシステムにリンクされ、宇宙船を回収するために動かし始める。そこにOutlier事件の復讐者Caulが肉体を再生され、サポートのために現れる。しかし、Caulの真の目的は別のところにあった。この船を使い、Outlier事件で共に捕獲された恋人を救うの計画に協力するようCarcerに求める。そしてその見返りとして、捕獲されているCarcerの両親も脱出させることを提案する。
SF作品が多い2000ADの中でも結構ハードSF寄りで、アレステア・レナルズとかコミックにしたらこんな感じではないかと思ったりします。T. C. EglingtonはDreddなどでいくらか名前を見ていたけど、今のところはこの『Outlier』が代表作になるようです。Karl Richardsonはちょっと劇画調といった雰囲気の画で、ドロドロした人間関係を描くのに合っている感じ。本格シリーズ化したこの第2シーズンでは、次シーズンへの続きを残す感じで終わっています。

というところで前編は終了、残り4作は次回後編で。どうも遅れが取り戻せず、週末で終わらず翌週平日まで引っ張ってしまっているところなのですが、先を考えるとあまり短く書けそうなのを挟んで調整するわけにもいかず、また予定しているのも長そうなのばかりで少しきついところなのですが、とりあえずは2000ADの遅れを取り戻すためにも週一を維持して行かなければ。前回おまけとかやんなきゃよかったかな~。何とか頑張ろう。ではまた来週に。


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