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2016年5月15日日曜日

Hellblazer -Jamie Delano編 第4回-

あれもこれもやらなくては、とバタバタしているうちにまた3か月ちょっとも空いてしまったのですが、なんとかこれで『Hellblazer』Jamie Delano編も最終回です。とりあえずは今回も全面的にネタバレとなりますが、なんでそんな感じになっているかは前の3回を読んでみてください。


【The Golden Child】

Jamie Delanoによる『Hellblazer』最終章ではFear MachineのMarj、Mercury親子など以前に登場したキャラクターが再登場します。が、親友Chasの登場は無いのはさびしいところ。Chasは続くガース・エニス編ではエニスのお気に入りキャラとして活躍(?)してくれます。

Fear Machine事件の解決後、Marj、Mercury親子はZedと別れ、キャンピングカーで旅を続けていた。ある夜、何か不穏なものが近付いて来る気配に怯え、MercuryはMarjを起こす。だが、そこに現れたのはコンスタンティンだった。Mercuryはコンスタンティンの中に不穏なものを感じ、彼を避ける。泥酔したコンスタンティンは取り留めもないことを口走りながら、Marjに救いを求める。キャンピングカーの外にコンスタンティンを避け、逃れていたMercuryだったが、彼の思考からは逃れられず、そして、Mercuryはコンスタンティンの中の"Dead-Boy Heart"を視る。(34号)
少年時代、コンスタンティンは一時期姉とともに叔母に預けられ、小さな村で暮らしていた。村には廃棄された石切り場があり、崖の下、その深い石切り場の縁の小屋に住む不気味な男を、子供たちはブギーマンと呼んでいた。ある日石切り場の傍で遊んでいたコンスタンティンは、年長の少年たちに、ブギーマンがため込んでいるポルノ雑誌を盗んで来たら仲間に入れてやるとそそのかされ、崖を降りてブギーマンの小屋に近付く。雑誌を掴んで逃げようとしたとき、少年たちが小屋に向かって石を投げはじめ、小屋から現れたブギーマンにコンスタンティンは追いかけられる羽目に陥る。森に逃げ込み茂みの中で息を殺しているうちに、近くの地面に何か埋められた跡があるのに気付く。そこに埋まっていたのは彼よりも小さいと思われる子供の頭蓋骨の無い骨だった。その骨の中に赤い石を見つけたコンスタンティンは、それを石化したその子供の心臓だと思い、"Dead-Boy Heart"として御守りとして持ち歩くようになる。だが、そのうちその石で虫を殺し始めるなど不気味な行動をとるようになったコンスタンティンは、それに毒されていると感じ、それを持っているのが恐ろしくなり、石切り場に捨てに行く。深い石切り場の底に沈めようと投げるが、"Dead-Boy Heart"は届かず、小屋の屋根に落ちる。だが、ブギーマンは現れない。コンスタンティンは"Dead-Boy Heart"が屋根を突き抜けブギーマンの頭に当たり、彼を殺してしまったと思う。怯えながら、誰にも見られないように、コンスタンティンは夕闇の中、叔母の家へ逃げ帰るのだった。(35号)
翌朝目覚めたコンスタンティンに、Mercuryは彼が様々なことに打ちのめされ、その恐怖が自分たちをも汚染させると糾弾する。そしてそれを克服するためには自分の死に直面することが必要だとして、彼を彼の内面の精神世界に連れて行く。迷宮の中を抜け一つのドアを開けたコンスタンティンは、自分が80歳を越え、死に直面した老人になっているのに気付く。水位が上昇し、海に没しかけているその世界で、コンスタンティンは住んでいるコミューンの厄介者になっていて、追放を受け入れ去って行く。犬にひかせた奇妙な荷車で門を出たコンスタンティンが、次に気付いた時には見慣れぬ見捨てられた建物の中にいた。そして犬の群れに追われ、橋から転落し、水中に沈み、死が近付いて来る。現実世界ではMarjがタロットでコンスタンティンの行く末を占い、かんばしくない結果に眉をひそめていた。その時外からMercuryの助けを呼ぶ声。精神世界に潜ったコンスタンティンを引き戻すことができず、彼が窒息しかけていたのだった。Marjの助けでなんとか目覚めたコンスタンティン。戻ってきた彼はいくらか穏やかな表情を取り戻していた。(36号)
32,33号がゲストライターの作品とDelano本人による本筋から外れた作品という感じで、少し間が空いてしまうのだけど、これは作画もこの3号同様のショーン・フィリップスによる31号からの続きとみるべきでしょう。父の死、Family Manとの対決で疲弊し、負の方向へ落ち込んだコンスタンティンの再生という展開。結構長くなってしまったのだけど、35号"Dead-Boy Heart"の子供の眼から見た曖昧で決着の見えない不安な話は個人的にかなり好きです。作画ショーン・フィリップスはやっぱり初期から素晴らしい。同じ大きさのコマが並ぶページでも、背景と人物の動きでページ全体に流れを作ったりなど様々なテクニックで見せてくれます。

続く2号は、Mercuryが主人公となるストーリー。
Martinは屠畜業者の息子だが、肉が嫌いで心根の優しい少年。暴君としてふるまう父親は意のままにならない息子に暴力をふるうが、母親もそんな彼を怖れどうすることもできないでいる。ある日、また父に殴られ家を逃げ出したMartinは、キャンピングカーが故障し立ち往生している間に野原に抜け出したMercuryと出会う。Mercuryは彼を母とコンスタンティンの元に連れ帰り、傷の手当てをするが、屠畜所に向かうトラックに乗った父親が通りかかり、凶暴な犬で脅しながら強引にMartinを連れ去る。一方、キャンピングカーの修理のためには離れた町まで部品を買いに行かなければならなくなる。帰りは翌朝になると言う母とコンスタンティンを送り出すと、MercuryはMartinが連れ去られた屠畜所へ向かう。そこでは父親が”教育のため”と称し、部下たちも使いMartinを豚の群れの中に放り込んでいた。(37号)
屠畜所内のMartinへの”教育”はエスカレートし、彼は逆さ吊りにされ豚の血や水を浴びせられる。物陰から様子を窺っていたMercuryも見つかり、凶暴な犬をけしかけられるが、逆に犬を手なずけ、Martinを救い、キャンピングカーに連れ帰る。一方、屠畜所ではMercuryに手なずけられた犬が部下の犬との闘犬にも負け、父親の怒りは頂点に達する。トラックでMercuryのキャンピングカーに向かい、豚の内臓や骨などの廃棄物をぶちまける。怒ったMartinは父親を殴打し始めるが、Mercuryはそれを止め、父親に「あなたが本当に怖がっているものは何か分かっている」と告げる。酒をあおりながら帰宅し、妻に鬱憤をぶちまけようとした父親だったが、自宅の肉貯蔵室でMercuryの能力により引き出された自らの本当の恐怖、豚の顔を持った母親の幻覚に出会う。翌朝町から戻り、キャンピングカーの惨状に仰天するMarjとコンスタンティン。なんとか車を修理し、走り出すと、道端のバス停でMartinの母親が放心したように座っているのを見つける。彼女は息子にしばらく妹の所に身を寄せるつもりだ、と告げる。そして夫については、冷蔵室で虚脱し凍死しかかっていたので病院に預けてきた、と。(38号)
Delanoによる『Hellblazer』の中でも一番のキャラである超能力少女Mercuryは、本人も気に入っていたようで一つ彼女を主人公にしたストーリーを書きたかったのでしょう。
作画は32号でゲストライターDick Foremanの作品を手がけたSteve Pugh。彼のバイオレンスでグロテスクな持ち味が活かされた作品です。

そして、残り2号がThe Golden Child本編となります。
コンスタンティンたちは新たなZedのコミューンを訪れる。そこは崖の上に焼け落ちた教会を臨む海岸だった。Marjと海岸を歩くうち、コンスタンティンは金色に輝く少年の姿を見つけ、追いかけるが岩の中に姿を消してしまう。Golden Boy。それはコンスタンティンが少年時代から追い続け、決してたどり着けないものだった。初めてそれを目にしたのはまだ幼いコンスタンティンが母の墓参に連れられて行った時の事。墓石の向こうで金色に輝き微笑む彼を見つけ、近寄るコンスタンティン。しかし、彼に近付いたとき、自分と対照的なその美しさにコンスタンティンは本能的に憎悪を抱く。それが反射するようにGolden Boyからも笑みが消え、その場を立ち去る。以来、Golden Boyはコンスタンティンにとって永遠に手の届かない憧れとなる。助けを求め、Zedの許へ向かうコンスタンティン。Zedは彼の前に並べたタロットカードを開く。現在の彼-吊るされた男。間にあるもの-塔。彼がなりたいと望むもの-魔術師。そして、Zedはコンスタンティンに彼の過去を見せる。病院で母の胎内から出され、この世に生を受けたコンスタンティン。だが、母は出産の際に死亡する。そしてその胎内には生まれる前に死亡したもう一人の兄弟がいた。父は、母を殺して生まれてきた彼を憎み、罵倒する。生まれてくることがなく、母の胎内で彼が殺してしまった兄弟がGolden Boyだった。そしてコンスタンティンはその非の打ち所のない美しいGolden Boyだったなら父に愛されると思いながら生きてきたのだった。コンスタンティンはコミューンの友人Errolからマジックマッシュルームを手に入れる。そして幻覚の中、岸壁に見つけた母の胎内への入り口に潜って行く。だんだんと狭くなる道を進み、服を脱ぎ棄て、水中に沈んで行くコンスタンティン…。そして彼は胎児に戻り、母の胎内でGolden Boyと出会う。彼への憎しみからGolden Boyのへその緒に絡み、殺害を謀る。しかし、輝きを増した彼の光の中へと飲まれて行く…。翌朝、コンスタンティンの入って行った岸壁の洞窟に探しに来たErrolは、彼の足跡が水中に消えているのを見つける。(39号)
それはGolden Boyがジョン・コンスタンティンとして生まれてきた世界。そして時間も過ぎ、この世界のジョン・コンスタンティンはすでに老人となっている。塔への落雷により、彼は死亡する。誰からも尊敬された賢人ジョン・コンスタンティンを悼み、多くの人が集まり、彼の人生が謳われる。そのさなか、彼は蘇生する。彼は夢を見たことを語り、それにより自分の本当の最期が近いことを知り、集まった人々に本当の別れを告げる。そして最後に一人残ったZedに、彼の負の部分として拒否し、見捨てた、産まれてこなかった兄弟Sickly Boyについて話す。彼はその償いを果たさなければならないと告げ、去って行く。
そして、二人のジョン・コンスタンティンはRavenscarと呼ばれる場所で出会う。魔術について、ジョン・コンスタンティンとは何なのかについて語り合いながら、彼らは母の胎内へと向かう。そして、マジック・サークルのもうひと巡りの中へ…。生と死の間の中へ…。
Errolからコンスタンティンが消えたことを聞いたZedはコミューンの人々とともに洞窟へと向かう。だがその入り口は積み重ねられた岩でふさがれ、そこから外へと向かう足跡をたどると、そこにはコンスタンティンの墓石が建てられていた。そして、そこに置かれていたタロットカードには”魔術師”の文字の上に”TRUMPS”と上書きされていた。(40号)
最後はかなり抽象的で、人それぞれに解釈が違うものかもしれません。二人のコンスタンティンのやり取りについては、あまり書くと自分でも無理に解釈を付けようとして混乱しそうなので省きました。実際、私もよくわかっているとは言えないのだけど、なるべく自分が解釈したものを入れないように流れを説明したつもりです。できれば自分で読んでもらうのが一番かと。神秘的なことが苦手だったり、面倒な人は、対決を余儀なくされてしまった二人のコンスタンティンが、二人の力を合わせることにより乗り切り、生き延びたコンスタンティンは誰にも告げずいずこかへ去って行った、という理解で大丈夫かと思います。最後のタロットカードの”TRUMPS”は奥の手というような意味だと思うのだけど、ちょっと自信が無いのでそのまま書きました。あと、Ravenscarという場所についても何か意味があるのかもしれないのだけど、自分の知識の範囲外なのでそのまま書きました。
作画は39号が引き続きSteve Pughで、40号は多くのカバー画とニール・ゲイマンの27号を描いたDave McKean。Pughの回も結構力作なのだけど、やっぱりMckeanのは圧巻で、ほとんどアートという作品です。


というわけでこれでやっとJamie Delanoによる『Hellblazer』全40号については終了です。長々とやってきたところなのですが、最後にまとめ的なことを書こうかと思うと第1回で書いた以上の事は特に思いつかなかったりもするのですが。なんとかこの結構読みにくかったりわかりにくかったりもしてしまう異色作家の独特の魅力を伝えようと思いがんばったのだけど、もしかしたら細かく長く書きすぎてかえってわかりにくいものになってしまったのではないかと少し心配しております。次回ガース・エニス編からは、ネタバレも最小限にしてもう少し全体の雰囲気が分かるような普通の書き方をして行くつもりです。ちなみに現在発行中の新編集版TPB5巻では前半は、このJamie Delanoによる『Hellblazer』最終章”Golden Child”、そして後半からはガース・エニスがライターを務めるシリーズが始まっています。DCでの現行シリーズの方は、またリランチで、今度は『Constantine: The Hellblazer』ということになってTPBも出ているようですが、内容については全く把握していません。とりあえずはもう同時進行で新しいのも読むしかないかとも思ってるのですが…。まだまだ長いシリーズで、とりあえずはひと段落というところだけど、続くガース・エニス編についてもまた気合を入れてなるべく早く始めるつもりでおりますです。


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