Translate

2014年9月14日日曜日

Multiple Warheads - Brandon Grahamの奇妙な世界-

今回はBrandon Graham作、2013年Image Comics発行の『Multiple Warhead Alphabet to Infinity』についてです。このカバー画を見て、なんか面白そうだな、と思った人はそのまますぐにこの本を入手して読んでOKです。中身もこのカバー画通りPOPで愉快で派手なアクションも盛り沢山な、少し不思議な世界のアドベンチャー・コミックです。

それまで暮らしていたDead Cityに宇宙船が墜落してから、元器官密輸人のSexicaとボーイフレンドのエンジニアで狼男のNikoliは、愛車レーニンで旅を続けている。旅の目的地はImpossible City…。

器官ハンターのNuraは、首を切られた後再び頭部が再生した男の身体の入手を依頼され、残された生首を手掛かりに愛車のバイクに匂いをたどらせ探索の旅に出掛ける…。

この2つのストーリーが交互に展開して行きます。カバー画の2人がSexicaとNikoliです。こちらのパートはSexicaちゃんが歌をうたうタバコを吸いながら、狼の夢を見ながらうたた寝するNikoli君を隣に奇妙な風景の中、車を走らせ、イチャイチャしたり、奇妙なものを食べたり、奇妙なものにであったりという話。もう一方のパートは、青い髪で長身でかっこいいNura姐さんが、奇妙な土地をバイクで走り、奇妙な奴と戦ったり、奇妙なものを食べたりという話。他の登場人物も、妙なかぶりものをしていたり、明らかに人間じゃなかったり、宇宙人だったり。とても不思議な世界で、その成り立ちについてはあまり説明もないのですが、考えてみれば、『ドラゴンボール』や『ワンピース』といった日本のマンガもそんな感じだったりするので、日本の読者はすんなり入って楽しめるのではないでしょうか。私はそうでした。

このコミックには変わったものを食べたりするシーンが沢山登場し、それぞれに面白い説明が書きこんであるのも面白かったです。1ページ全部レストランのメニューというのもありました。ちなみに文中で出てくる”器官”なのですが、原文ではorganで、人間などの特殊能力を持った部位を集め、それを商売にしている組織があり、SexicaやNuraはそこと取引をする密売人、ハンターです。臓器よりも器官のほうが適当かなと思いそう表記しました。また、風変わりな習慣や宗教などもあったりするのですが、なにか「異世界を構築する」というよりも、作者が自分の考えた面白い世界に面白いものを置いてみる、という感じでとても楽しいコミックでした。

この『Multiple Warhead Alphabet to Infinity』はImage Comicsから2012年秋から2013年にかけて全4話で発行されたものですが、実はそれ以前からも他社で数作、同キャラクター、同設定で描かれていて、このTPB版にはそれらの作品も収録されています。順番は逆になってしまったのですが、巻頭には2007年にOni Pressから出た、それ以前の2人がDead Cityを出るまでのいきさつが描かれたワンショット、『Multiple Warheads Fall』(モノクロ作品)が収録され、巻末には2001年にポルノ・コミックとして描かれた、SexicaがNikoli誕生日プレゼントに入手した狼男の×××を移植したら狼男になってしまったという、最初の作品『Multiple Warheadsなどが収録されています。作者Brandon Grahamが長年温めていた世界を遂に自分の望む形で書けるようになったというところではないかな、と思います。

さて、この『Multiple Warhed Alphabet to Infinity』ですが全4話のはずですが、最後まで読むと…終わっていません!この続きの『Multipe Warhead Gohst Town(仮題?)』は一年後ぐらいに3~4話ぐらいで出るよ、ということ。これで全部だと思って読んでたらつづくかよ!というよりはまだこの続きが読めるのは嬉しいな、と思いました。たぶん、読んだ人はみな同じ感想なのではないでしょうか?

作者Brandon Grahamは1979年オレゴン生まれ。前述のように小さいパブリッシャーのポルノ・コミックのようなものから描き始め、徐々に注目を集め、2009年にTokyopop発行の『King City』がアイズナー賞にノミネート。代表作は『Multiple Warhead』、『King City』の他に、1990年のロブ・ライフェルド(!)作『Profet』 の近年のリバイバル作で、ライター(一部作画も)を務めています。(Image Comics刊)とにかく話も面白く、画も素晴らしいのですが、特に画は話が分からなくても見ているだけで楽しいので、Brandon Graham Multiple Warheadsで画像検索してみてください。彼の作品にはやはり日本のマンガの影響も多くみられるのですが、ことさら日本のマンガのようなものを描きたい、というよりはそういうマンガやアニメをアメコミと同様に見て育ち、身に付けた世代の作家なのではないかなと思います。今後の活躍が期待される、注目の作家です。


Brandon Graham オフィシャルサイト 

Image Comics

Oni Press

Tokyopop 

●Brandon Grahamの著作



'君のせいで猫も失くした'はamazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、 Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。

0 件のコメント:

コメントを投稿