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2019年6月23日日曜日

Jens Lapidus / Never Screw Up -ストックホルム三部作 第2弾!-

まだゾンビ・コミック特集が終わってないのだけど、これについては早く書かねばならないので、一回休んでこれやります。イェンス・ラピドゥス ストックホルム・トリロジー、『イージーマネー』に続く第2作『Never Screw Up』!なーんで早く書かなきゃなんないかと言うと、書かないと続きが読めないから!早く続き読みたいから!とにかくただの趣味だろうがこういうことやっててさ、このシリーズについては書きたいと思ってるんならさ、ちゃんと読んだところで感想書かないで次に進むのやなのよ。シリーズ物なんかの途中の巻は、その時点での作者の思惑やらひっかけやらがあって、たとえ発行されたリアルタイム的に読めなくても、ちゃんとそこでひっかかったりしながらその時点での感想を出して読むのが本に対しての正しい姿勢なのだ。とにかく次早く読みたいのでこれのことを早く書くっす!さあ盛大にひっかかったり騙されたりするぞっ!

米Vintage Crime/Black Lizard版
まず読んだ版について。私が読んだのは、その時はそっちの方が安かった英Pan Booksの英訳版。他にVintage Crime/Black Lizardからの英訳版があり、そちらのタイトルは『Never Fuck Up』でKindle版もプリント版も英Pan Books版よりお高い。Black Lizard版が英訳オリジナルで、その版権を取得してイギリスで発売されたのが私の読んだ英Pan Books版ということなんだと思う。翻訳は同じAstri von Arbin Ahlanderという方なので、基本的に内容は同じはず。どちらを買うかはお好み次第ってところです。Black Lizardに思い入れのある人もいるだろうが、まあ親会社の方針ではあるのだろうけど、アメリカ国内以外では電子書籍ディスカウントがなかったりと、どうも近年のBlack Lizardってちょっと私的にはうーん、というところあるんですよね。いや、私も思い入れないわけじゃないけどさ。

本編に入る前に前作『イージー・マネー』(講談社文庫より上下巻で刊行)のおさらい。こんな必読本当然読んどけよだが、ちょっと前で内容忘れちゃった人もいると思うので。そういう流れなので当然結末もネタバレしちゃいますので、未読の人はご注意、つーか今すぐ先に読むべし!
移民、地元勢力がひしめき合い、せめぎ合うスウェーデン、ストックホルムのアンダーグラウンドワールド。その中で群を抜くパワーを示す勢力が、ユーゴ系ギャング。そしてそのユーゴ系ギャングをめぐる3人の人物の運命が交錯する物語がこの『イージーマネー』である。
第一の男が、ヨハン・ウェストルンド、通称JW。地方出身の苦学生だが、上流階級の子弟とつるみ、自らもそこに属しているように装う上昇志向の強い青年。アルバイトとしてやっていた白タクの元締めを通じ、ドラッグディーラーの道に踏み込み、やがてストックホルム上流階級子弟へのドラッグの供給源として頭角を現して来る。さらに国外の口座を使ったマネーロンダリングに精通し、組織の中でも重要人物へとのし上がって行く。そんな彼には、ストックホルムの地で探し求めているものがもう一つあった。彼に先立ちストックホルムに移り住み、その後行方不明となった姉の行方。ストックホルムの暗黒を泳ぎ回るうちに、彼は思いがけぬ形で姉の足跡に遭遇する。
第二の男、ムラド・スロヴォヴィッチ。ユーゴ系ギャング組織の幹部。暴力の権化のような男で、常にその腕力で周囲を威圧する。元は同格であったラドヴァンが組織を引き継ぎボスとなって以来、徐々に関係が悪化し、遂には組織を追われ、敵対者となる。
第三の男、ホルヘ・サリーナス・バリオ。ユーゴ組織下のドラッグ・ディーラーだったが、裏切りに遭い罪を一手に負わされて、逮捕、投獄される。しかし、ユーゴ系ギャングへの復讐を誓い執念の脱獄を果たす。潜伏中、ムラドに発見され、重傷を負い森で倒れているところをJWに救われ、ドラッグ取引の経験と知識を見込まれ、JWの属する組織に引き込まれる。

この三者の物語は、時にねじれ、絡み合いながら最後に合流する。そしてその結末。JW、ムラドは刑務所へ、そしてホルヘのみが逮捕を逃れ、国外へと脱出する。

そして物語は三部作、第2部の『Never Screw Up』へ!

【Never Screw Up 】
まず最初にここんところははっきりしておこう。この第2部は、第1部の三者の物語の続きではない。この第2部には、新たな3人の主人公が登場し、第1部同様に3つの物語が語られる。

第一の男、Mahmud。アラブ系移民で、しばしの刑務所暮らしから仮釈放されて娑婆に戻ったばかり。だが、外の世界も彼にとっては安泰ではない。懲役の原因となったドラッグ取引の失敗から、ギャングBorn to Be Hatedに莫大な借金を負い、追い詰められている。金か生命か?なんとしても金を作らなければならない…。
第二の男、Niklas Brogren。数年間の中東での傭兵生活から、除隊し帰国したばかり。今のところは母親のアパートに居候し、まだ先の当てはない。訓練と戦場での経験から、20代にして銃器類と格闘術のエキスパートとなっている。そして彼には、彼を戦場へと向かわせたある秘密があった…。
第三の男、Thomas Andrén。ストックホルム南署の制服警官。年齢は30代半ばか後半か?相棒Ljunggrenと共にパトロール中、無線の指示により事件発生現場へと向かう。管轄内のアパートの共同の倉庫として使用されている地下室で男性の遺体が発見される。殺人事件。陰惨に血がまき散らされるように飛び散った地下室の遺体の顔は潰され、指は切断されている。腕には明らかにドラッグ中毒者のものと思われる注射痕。そしてこの殺人事件が彼のその後の運命を大きく変えて行くことになる…。

ストックホルム三部作第2部は、このように前作の事件ともユーゴ・ギャングとも無関係な三者の物語として始まる。だが、彼らの物語が暗黒へと進むにつれ、そこには必然的にその地のアンダーワールドの中心に構える一大勢力であるユーゴ・ギャングが関係してくる。
第一の男、Mahmud。地元のアラブ系コミュニティの愚連隊的友人たちの助力も得て、強盗まがいの手段も使いながら金策に走るが、どうしても要求された額に届かない。そこにユーゴ・ギャングが仕事を持ち掛けてくる。組織の采配で実行された現金強奪事件で裏切り、金を持ち逃げした男を探し出せ。男の名はWisam Jibril。同じアラブ系コミュニティに属するかつての知り合いだ。同胞をユーゴ・ギャングに売るのは気が咎めるが、背に腹は代えられない…。だが、そのユーゴ・ギャングへの協力は彼を更に困難な立場へと追い込んで行くことになる…。

第二の男、Niklas。母子家庭で育った彼は、少年時代を暴力的な母親の恋人に怯えて暮らし、そのトラウマが彼の人格に深刻な影響を与えている。その無力感から逃れるため、傭兵部隊に入隊し、自らを兵士として鍛え上げる。二度と奴に屈服しないために。そのトラウマは、彼の中に女性に暴力をふるう者への異常ともいえるほどの憎悪を醸成し、やがてそれは彼を女性に対する加虐者へのヴィジランテ行為へと駆り立てて行くこととなる。だが強迫観念によりもたらされたその行動は容易に一線を越え、彼をさらに深い狂気へと追い込んで行く…。

第三の男、Thomas。事件の後、事後確認のために元内務監察官の刑事Hägerströmに呼び出され、確認作業を行っているうちに奇妙なことに気付く。彼が報告書に書いたはずの事項が改竄されている?被害者の腕の注射痕。遺体検案報告書にも記述はなく、確認のためにHägerströmと死体安置所に向かうと、突然現れた上司に強硬に阻止される。警察上層部をも含むある力により被害者の身元が隠されている?決して清廉な警官でもない彼だったが、納得のいかぬものを感じ個人的に調査を進めているうち、罠にかかりパトロール警官の地位も失い閑職に追いやられる。だがその仕打ちは更に彼の妄執を燃やし、謎の死体の身元調査へとのめり込ませて行く。そんな時、彼の苦境に付け込んだユーゴ・ギャングから警備の仕事のオファーが舞い込んでくる…。

Niklasの引っ越し先のアパートの隣人がMahmudの妹。恋人に暴力を振るわれているところを助けたことがきっかけで、Mahmudと知り合うことになる。また、友人と入ったパブでNiklasは射撃練習場からの帰りのThomasと相棒に出会い、その場限りではあるが意気投合する。実はThomasの関わる殺人事件の起こった建物は、Niklasの母親が住むアパートなのだが、事件を通じての二人の接触はない。このように、時折の接触はあるが、三者の物語はほとんど交差しないままにそれぞれ進んで行く。

しかし、そんな中である一人の人物が三者の物語を本人たちの気付かない裏で結び付けて行く。
その男の名は、Claes Rantzell。
その名前はWisamを探すMahmudと事件を追うThomasの前に実体のないような会社の共同経営者として現れる。この人物は何か重大な手掛かりを持っているのではないか?だが、その住居を訪ねて行っても永らく留守にしている形跡が見られるだけ。 Claes Rantzell。
その名前だけが物語の背後を幽霊のように漂う。
そしてNiklas。彼の心を蝕む母親のかつての暴力的な恋人。その男こそがClaes Rantzellだった。
事件を追い、Claesを探すThomasは、やがてかつてスウェーデンを揺るがせたある事件へとたどり着く…。

Never Screw Up!このまま潰されてたまるか!奴らのいいようにされてたまるか!
ある者は状況に追いつめられ、またある者は自らの狂気に焼かれながら、ストックホルムの暗黒をあがき、這いまわる三者の物語は、前作同様最後に向かい縒り合され、凄惨な結末をむかえる。
衝撃のストックホルム・トリロジー第2部『Never Screw Up』!これ翻訳しなきゃダメだろう。アホか!

おわび。Mahmudだけフルネームが分からなくなってそのままでごめん。なんの他意もありません。大変分厚い本の中で見失った不始末です…。
ペーパーバックで約560ページ。前作が翻訳で500ページぐらいの文庫2分冊だったが、同じくらいで結構な大作。まあとにかく色々読みたいもん多すぎるんで、ちょいとロングスパンで構えて折り返し地点で一旦中断して別の本読んだりしようかぐらいの惰弱なことを考えとったが、読み始めたらもう止まらん。第1部の続きがどうだとかもう関係なく、こいつらの物語を行く末を見届けねば、の思いで読み続けた。それでもそれなりに時間はかかったが、結構かさばるやつあっちこっちに持ち歩いてひたすら読んでたよ。何度でも言うが、この三部作は未来へ続くノワール史の中でまた一つのマイルストーンとなる重要作である。今からでも遅くない!心を入れ替えただちに続く三部作すべてを翻訳刊行すべし!…つってもなあ…、コーダンシャって絶対に心を入れ替えたりしないと思わない?まー、諦めて何とか比較的敷居の低い英訳版を頑張って読むしかないっすよ。そしてこれはそれだけの価値のある作品である!必読!ただちに読むべし!

さて、この第2部第1部の三者の物語ではないと書いたが、実はその関連が無くなってしまったわけではない。刑務所内のムラドの様子はわずかだが伝聞として数回伝えられる。そしてワンシーンのみだが、逮捕を免れたホルヘが登場し、刑務所内のJWと手を組んだユーゴ・ギャングへの復讐が進行中であることをうかがわせる。続く最終作第3部では懲役中の連中も出所、または脱獄でもして表舞台に復帰し、ユーゴ・ギャングへ向けて動き始めることが予想される。だが、あくまで予想で浅知恵のそーゆーのって大抵は裏切られるがね。この第2部だっていつものように一切情報なしで読み始めて、プリズンものになるとか予想してたんだからね。さあとにかく第3部『Life Deluxe』だ!やっと読めるぞ!まー性懲りもなく予想しちゃうんだが、これまでの経緯から考え、第3部ではまた新たな三人の主人公によって物語が進められることになるんだろう。ううっそれすらも裏切られるかも?さて、衝撃のストックホルム三部作その最終作はどうなるのか?前作、前々作の登場人物たちはどのように動くのか?またしばらく先にはなると思いますが、このブログにて必ずやお伝えすることを約束しましょう。どうしても日本語で読みたい!という人は、どーせコーダンシャに言っても聞く耳持たんだろうから、他の出版社に嘆願してみよう!東京創元社よ、今こそこの続き残り2作とデストロイヤー・シリーズ完全版全150巻以上の出版に乗り出す時だ!

ここでストックホルムでひとネタ。個人的にストックホルムと聞くとなんかいまだにまず頭に浮かぶのがこれだったり。『The 2nd Orbit Stockholm - Log Island』。1996年にスウェーデンPlanet Rhythm Recordsよりリリースされたコンピレーション・アルバム。前年の『The Orbit』に続く第2作のコンピレーションで、アダム・ベイヤー、カリ・レケブッシュらが「俺たちゃスウェーデンのならず者だぜ」と名乗りを上げた初期のころの名盤である。『イージー・マネー』の時も、おー、ストックホルムと言えば、で引っ張り出してきて聴いてたが、今度もこれやらその他スウェーデンもの、ベイヤーの犬のやつとかよく聴いてたわけで、まあ個人的には冷酷非情なストーリーにバキバキのハード・ミニマルはかなりマッチするのだけど、所詮は聞く人を選ぶもんなのでおススメBGMとかまで言うつもりもない。で、なんでこれを出してきたかというと、このジャケットのストックホルムの地下鉄路線図。自分がストックホルムと言えば…、でこれが浮かんじゃうのもこのジャケットの「俺たちゃストックホルムだぜ」というメッセージに地下鉄路線図を使用するというデザインの秀逸さゆえである。ストックホルムで画像検索すれば観光写真が山ほど出てくるけど、個人的にかもしれないけど、この地下鉄路線図っていう方がはるかに奴らの街の存在を一発で伝えてくれた気がする。と、絶賛したデザインだが、これアナログ盤で、後に出たのだと思うCDでは同じ地下鉄路線図なのだけど濃紺一色になってていまいちパッとしない。察するところこの辺の連中がよくやらかしてた使っちゃいけない画像を勝手に使って怒られた変更ではないのかな、というオチもあったりするのですがね。ストックホルムというのは調べてみたところ東京の10分の1ぐらいのようで、この路線図ぐらいで山手線内側ぐらいなのかな、と思ったりするけど、救いようのないくらい地理に弱い奴の言うことなのであんまりあてにしないように。雰囲気っぽい目安ぐらいにね。『イージー・マネー』ではあまり登場しなかった地下鉄だが、この第2部『Never Screw Up』では登場人物たちが移動に使うシーンも結構ある。と言っても前半だけで後半になると移動は車が主になって登場してこなくなるのだけどね。
まあ、このジャケットを見せたくてちょっとやってみたけど、結局あれだな、ひと昔かふた昔前の翻訳ミステリの解説で「ぼくのストックホルム滞在記」誰だお前?で肝心の作品の内容にはほとんど触れてないがっかり解説みたいのが時々があったが、んまーそのくらいレベルかもね。実際ストックホルムなんて行ったことねーし。まあこのパートは飛ばしちゃってもいいっすよ。

あと映画の話。第1部『イージー・マネー』は、アメリカで映画がリメイクされるっていう触れ込みで翻訳が出たわけだが、そっちの方はまだのようで、進行状態も不明。だがこの三部作本国スウェーデンではすでに同じく三部作で映画化されています。そのうち『イージー・マネー』は日本でも字幕の入ったのがDVDで観ることができます。かなりストーリーは省略されてる感じだけど、なかなかにスピード感緊張感あふれるいい出来でした。で、この第2部『Never Screw Up』なんだが、米発売(公開?)版ではまずタイトルが変わっとる。『Easy Money II: Hard to Kill』。まあ『Never Fuck Up』がアメリカでの原作タイトルで、それじゃまずいんんで変更されたんだろうなというところなのだろうけど、なにか微妙にジャケットに登場してるシーンに違和感があり、少し調べてみたところ、内容もこの原作第2部とかなり違っている様子。と言ってもストーリーはまだあんまり知りたくないのでキャストからの推測なのだが、まずこの第2部には登場しない第1部のJW、ムラド、ホルヘの名前があり、その一方で第2部の方はMahmudの名前しか見当たらないというところ。そして第3部は原作と同じ『Life Deluxe』で、物語が同じ結末へと向かうとすると、場合によると三者が再登場すると思われる原作第3部のストーリーが部分的に映画版第2部に使われている可能性も考えられるので、これについては第3部を読了してから英語字幕版2部3部を続けて観て内容の違いを検証してみるみるつもりでいます。その辺の変更点などについても、第3部『Life Deluxe』の時に報告する予定であります。

最後に作者イェンス・ラピドゥスのストックホルム三部作以降の活動について少し。続いてまたスウェーデンを舞台にした犯罪小説のシリーズを現在までに4作発表。うち2作がVintage Crime/Black Lizardから英訳版刊行中。なのだが、シリーズらしいこの作品の第1作となる『VIP-rummet』が未訳。英訳タイトル『VIP-room』っていうのがついててWikiにも載ってるんだが現物は見つからない…。察するところ、Vintage Crime/Black Lizard少し前にもうダメなんじゃないかぐらいの苦境にあったようで、その第1作本国で発行の折、翻訳の意志はあったものの出版にこぎつけるまでの余力がなかったのではないか。遅れてでも出してくれるといいのだけど。シリーズだからねえ。続く第2作『Stockholm Delete』、第3作『Top Dog』はBlack Lizardから英訳版が出版され、この3作はシリーズ作品らしい。その次に2018年に『Advokaten』という作品が発表されているのだけど、こちらがシリーズの続きなのかは不明。実はまだ本国スウェーデンのWikiにしか書いてなくて、そっちでは作品をシリーズ分類とかしてないので。もちろんスウェーデン語とか読めないし。まあそっちのシリーズについてはこの三部作をコンプリート(映画版も含む!)してからなので、ここではとりあえずあるよー、ということだけお伝えしときます。ちなみにこの英訳版2冊もお手頃価格の英版があるのだけど、ここは苦境に負けず何とか刊行したBlack Lizardに敬意を払い画像はBlack Lizard版を使いました。発行は2017年とかになってるのだけど、最近まで見たことなかったので、ごく最近になってイギリス国外にも解禁になったのかもね。ラピドゥスには原作を手掛けたノワール・コミック『Gängkrig 145(英題"Gang War 145")』(2009)というのもあってかなり気になるのだけど、現在は入手困難の様子。何とかならんかね。


とまあこんなところで今回は終わりです。第3部『Life Deluxe』に続くというところで、今回書いてる途中で気付いて中途半端だった映画のことなどもそこで完結いたしますです。1冊だけだしすぐに書けるかと思ってたけど、意外と長くなってしまったな。まあ考えてみれば、3人のストーリーで考えようによっては小説3冊分だからな。その他またちょっとした用事で少し書けなくなったりと、なかなかうまくはいかんのですが、一方でその間も読んだ本はたまるばかり。アレやアレについても早く書かねばと思うばかりです。とりあえずこれとおんなじ理由で続きが読めなくなってるルッカQueen & Countryについては早く何とかしなければな。あとブルーウンWhite Trilogy残り2作についてはその辺のルールを破って続けてどっちも読んじゃいました。だってそろそろ大好きなジャック・テイラーさんにまた会いたいのだもの。すげー面白かったその2作についてはそのうち続けてやります。いやーやっぱりブルーウン最高っすよ。あと、まあ少し前にこれでもか、とやり切ったつもりの「21世紀ハードボイルド/ノワールベスト」ですが、終わってみるとあー、アレを忘れてたな、とかアレが出てたの気付かなかった!みたいなのまで出てきて、んまーいずれその辺まとめて追補でもやるかな、というところです。なんかすんません。とりあえず創元社さん『シスターズ・ブラザーズ』を忘れててごめんよ…。映画っつーことでやっと思い出したわ。色々とやらねばならんことは山積みですが、早く進める方策も思いつかず、とにかく頑張ろうと思考停止するばかりですが、とにかく頑張って続けて行きますので、またよろしくね。次からはまた怖いマンガ。こっちも早く片付けんとなあ。



■Stockholm Noir Trilogy
●Pan Books/Macmillan版

●Vintage Crime/Black Lizard版

■新シリーズ(英訳版)
●Vintage Crime/Black Lizard版

●Corvus版

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2019年5月25日土曜日

ゾンビ・コミック特集 第3回 Deadworld

ゾンビ・コミック特集 第3回は『Deadworld』!1987年より始まり、現在までに100号以上が出版されているアメリカ、インディー・コミック・シーンの中でもカルトとして名高い作品です。まあ、当方まだあんまり読めてないのだけど、その出だし辺りの感じと、紆余曲折を経た出版遍歴とシリーズの概略について語って行きます。なお、今回の情報に関してはほとんどウィキペディア頼み(Wikipedeia:Deadworld)なのだが本当に助かりました。ありがとうございます。多分日本ではあんまり知られていない伝説のインディー・カルト・コミック『Deadworld』の全貌!とくと見よ!

【Deadworld】
ホントにまだ序盤というところなのだけど、第10号までの大まかなストーリーを紹介。まあ話の方向性とかぐらいはおぼろげにでもつかめるんではないかと思います。

物語は既にゾンビが生き残っている人間より多くなり、そこら中を徘徊しているという状況から始まる。舞台はミシシッピ川の近くあたりの米南部。
主人公たちは、突然のゾンビ禍から逃れてきたティーンエイジャー。学校のスクールバスを使って逃げている。人数は7~8人ぐらい。ちょっと曖昧で申し訳ないのだが、作画Vince Lockeの画がキャラクターの判別がつきにくく、確認が困難…。まあ、話が進むうちに5人まで減るし…。メンバーは大体17~8歳ぐらいと思われるが、中に一人だけ年少の生意気な感じの少年Joeyがいる。

一体何が起こったのかもわからず、途方に暮れながら逃げている主人公たちなのだが、その途上、明らかに他とは違うバイクに乗り、言葉をしゃべるゾンビと遭遇する。"King Zombie"と呼ばれるこいつ(画像のゾンビ)との戦いが序盤の物語の軸となって行く。

King Zombieとの最初の遭遇からは逃れたものの行く当てもない主人公達。ガソリンや食料を求めて動き回るうちにミシシッピ川にたどり着き、そこに大型の遊覧船を発見する。川の中に浮かぶ陸とは隔てられた船なら安全と思い、遊覧船に乗り込み安堵する主人公達。だがKing Zombieは、そんな彼らを見逃さず、ゾンビの群れを率いて遊覧船を襲う。死体であるゾンビは呼吸の必要もないので、水中を歩いて目的の船に向かう。遊覧船は地獄と化し、主人公達はやっとのことで船から逃れる。

生命は助かったものの、移動と住居を兼ねていたスクールバスも失い、途方に暮れる主人公たちは、休んでいた森の中でDeakeと名乗る奇妙な男と出会う。恐怖に怯えた目で奇妙な話を始めるDeake。彼はある魔術師の弟子であり、その師匠が魔術により地獄の門を開いてしまったためにこのゾンビ禍は始まったのだという。荒唐無稽にしか聞こえないDeakeの話を一笑に付す主人公達。Deakeを加えた一行は、やがて人里離れた森の中に建つ一軒の家へとたどり着く。そこに暮らすのは深い信仰を持ち、世間と隔絶して暮らす家族だった。善良だが、信仰心により少し偏向した考えを持つ彼らは、外の世界にゾンビがあふれかえっていることすら知らない。だが、その平穏も長くは続かない。彼らの前に新たなモンスターを従えたKing Zombieが現れる。
ここで新たなモンスターGraken登場。人間型だがサイズは倍ぐらいで、目は無く大きな口を持ち腕が4本ある。ちょっと「バイオハザード」でリッカー出てきたときの感じ思い出したな。「バイオハザード」はみんなやった国民的ゲームだからわかるよね。あ、そういうのに「国民的」って使っちゃいけないのかな?そしてここで、このゾンビ禍の原因が明らかに。これも前回の『Zombie Tramp』同様に呪術/魔術系起源のゾンビである。

King Zombieの手からは逃れられたものの、Deakeは連れ去られ、再び地獄の門を開く儀式を行うよう強要される。グループの一人Danは儀式が完了される前にDeakeを亡き者としようと単身乗り込むが、失敗。ゾンビに取り囲まれ、あわやというところで強力な武器を携えた軍人風の男に助けられる。混乱に乗じてDeakeも逃亡し、儀式は中断され地獄の門が開くことは防がれた。

男は、Danの仲間たちと出会い、事情を聞き応援に駆け付けたとのこと。そこへ仲間たちも乗せられたヘリが到着し、彼らは軍人風の男たちの基地へと向かう。だが、男たちは救いの神ではなかった。機上で銃を突き付けられ、武装解除された後、基地に到着した彼らは、先に捕えられた多くの人たちとともに暗闇の倉庫へと押し込まれる…。


以上が10号ぐらいまでの展開です。ちょっとネタばらしすぎか、とも思うけど、日本完全未紹介の作品ゆえこのくらいは書いちゃった方が分かりやすいかと、勝手に判断しました。
アメリカを代表するゾンビ・コミック『ウォーキング・デッド』が始まったのが2003年。それを更に遡る1987年に開始されたのがこの『Deadworld』である。ロメロ以降ではホラー映画では定番人気のジャンルにはなっていたろうし、ゾンビが登場するゲームなども出てはいたころだろうが、前述の日本の国民的ゲーム「バイオハザード」第1作が1996年、「ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド」が1997年というのを見れば、これがいかに先駆的であったかも分かるものだろう。

『Deadworld』は1987年、80年代半ばからコミックを発行していたインディペンデント・パブリッシャーArrow Comicsから発行される。最初の7号のライターはStuart Kerr、作画はその後デスメタルバンドのジャケットも手掛けたりと、作品とともにカルト的存在となるVince Locke(ヴィンス・ロック)。インディペンデントの発行部数ゆえ規模は限られているだろうが、『Deadworld』は発売後すぐにカルト的な人気を得る。しかしながら、本体であるArrow Comicsがわずか9号を出した時点で力尽きる。そこでVince Lockeは『Deadworld』の版権を買い、それをCaliber Comicsに譲渡する形で、同社よりシリーズの刊行は続けられることとなる。Caliber Comicsは1989年にミシガン州でコミックや古書などを扱う書店チェーンを経営していたGary Reedにより立ち上げられ、『Deadworld』と同じくArrow Comicsの『The Realm』の2タイトルの版権を得て出版を始めたパブリッシャー。Gary Reedはその後、ライターとしても『Deadworld』に深く関わって行くことになります。

第1シリーズの『Deadworld』は92年に第26号をもって完結。その1年後、第2シリーズが始まり15号で完結する。90年代アメリカのインディペンデント・コミック・シーンはかの『Spawn』などでも知られるように激動の時代である。そしてGary Reed、Caliber Comicsもその渦中にあった。んだけど、私その辺の時代のことについてあんまり明るくないので、読んでもいまいちよくわからん。申し訳ない。コミックの出版から更に手を拡げ、おもちゃ、つーか日本的に言えばキャラクター・ビジネスとかいう方向だろうな、の企画販売というような方向で、結構成功もおさめたようだが、最終的には『Spawn』のトレーディング・カード・ゲームで失敗し、大損害を出してしまったということらしい。その頃何か流通方面でインディペンデントには逆風のような状況にもなったようで、コミックの出版も縮小し、遂にはCaliber Comicsも2000年頃に力尽きることとなる。

だが、『Deadworld』はまだ終わらなかった。しばしのブランクの後、2005年にはImage ComicsよりGary Reed、Vince Locke両名の手により新シリーズが開始。全6回のこれは『Requiem to the World』としてまとめられる。それが画像のやつ。通例は読んだやつを使うのだが、今回に限りカバーにKing Zombieの出てるこれの方が分かりやすいかと思いこっちを使いました。下のリストでちゃんと順番に並べっからさ。続いてImageからは『Deadworld: Frozen Over』というシリーズも発行される。次の『Deadworld: Bits and Pieces』はTransfuzion Publishingというところから。これはワンショットの短編などを集めたものらしい。そしてDesperado Comicsからも新しいショートストーリー集『Deadworld Chronicles』が発行。同じくDesperadoの2010年の『Deadworld: Slaughterhouse』はハードカバーのグラフィックノベルとしてリリース。ここで出てきたTransfuzion PublishingやDesperado Comicsというのはこの時期出てきたCaliber ComicsやImage Comicsなんかと関係の深い小パブリッシャーらしい。とりあえず、DesperadoはCaliber傘下として発足し、その後Imageに合流。Transfuzionについてはあんまり事情はよくわかんないんだけど、現在は復活したCaliberのインプリントとなっている。この時期のこの手のコミックのパブリッシャーって、ほら、日本のラノベのレーベルがどこの系列とか元はどことかごちゃごちゃしてるあの感じじゃないかなと思うのだけど。ちょっと最近全然そちら方面見てないので今の状況では誤った認識だったらごめん。いずれにしてもアメリカのコミックのその時期のことについてはもうちょっと色々調べて把握しとかんとね。

そして、次には『Deadworld』の版権はIDWへ。まずはその時点では絶版となっていた最初期のシリーズを『Deadworld Classics』として再編集し、出版。そしてGary Reedライターによるグラフィックノベル『Deadworld: The Last Siesta』を2012年に。また前述のImage系列の3シリーズ(『Requiem to the World』、『Deadworld: Frozen Over』、『Deadworld: Slaughterhouse』)をまとめた『Deadworld Omnibus』も出版される。更にIDWはこちらもGary Reedライターによる全5号のシリーズ『War of the Dead』を2012年に発行。こちらはベスト・ミニ・シリーズなどとして、様々な賞を受賞。現時点で最後になっているシリーズが、その後2014年に同じくIDWから出版された『Deadworld: Restoration』。全5号で『War of the Dead』に連なるストーリーらしい。

そして2015年、Gary ReedはCaliber Comicsを復活させる。オリジナル・シリーズを始め、他社から刊行されたシリーズもすべて、現在はこの新生Caliber Comicsからリリースされている。Gary Reedはその翌年2016年死去してしまうが、その後もCaliber Comicsは活動を続けている。おそらくは新体制での新シリーズも企画されていたと思われるが、このGary Reedの突然の死去と、またおそらくは近年アメリカのコミック業界に窺われる電子書籍バブルからの後退なども影響し、現在のところは滞っているのではないかと察せられる。しかし、これだけ長期に亘ってファンに愛され続けてきたシリーズである。いずれかはまた復活の時も必ず訪れるはずである。

いつもは最後の方に持ってくるシリーズの概要を、先に知ってもらった方が良いかと考え、今回は先に持ってったのでちょっともうまとめてしまったような感じになったしまったが、ここからが作品についての感想的なパート。と言っても後にライターとしても中心人物的になるGary Reedがまだ登場しない最初の10号あたりなので、とりあえずそっちは保留で、主にVince Lockeの方について。今回は新生Caliberの方に画像もありましたので、そっちを借りてきました。

こちら3枚は、いずれもVince Lockeによる最初期Arrow Comicsからの頃のものです。自分が読んだところのArrow Comicsの9号までは作画はすべてVince Locke。Caliber Comicsからになる10号で初めて別のアーティストが参加し、メインのストーリーの方はそちらのアーティストで、Lockeは後半、新しく始まったらしいストーリーラインの方を担当しています。本当に読んだのが序盤だけなので、シリーズのどのくらいの作画をLockeが担当したのかもよくわからないのですが、Arrow Comics後半の8、9号ではストーリーの方も担当したりもしています。また、前述のようにArrow Comics終了の際には自ら権利を買い取り、シリーズ存続のために尽力もしています。
Vince Lockeについては出身やら年齢やらの資料が見つからなかったので、不明と言うしかないところなのですが、とりあえずこの『Deadworld』によって世に出た人だというのは間違いないようです。ご覧のように執拗に線を重ねた独特の熱気のこもった画風。なんだが、上でも書いた通り、特に人がいっぺんに大勢出てくる序盤のあたりでは人物の判別が難しかったりもする。でもまあ、このタイプのホラー映画とかどうせ顔覚える前に死んじゃうメンバーもいるの普通だし、まあいいんじゃないの。すぐに5人ぐらいになっちゃって、そうなればさすがに誰が誰だかわかるからさ。実際のところ、やっぱりなんだかんだ言っても初期にはデッサン的な意味での画力という面では少し弱い部分もあっただろう。だが、キャラクターの見かけの統一性よりもシーン一つ一つでの表情に力点を置くような描き方や、何かを力ずくで可能な限り歪めようとするような描き込み、闇の色を描き分け、刻み込むように執拗に重ねられた線など、単にちょっと見にくいからなんてことで放り出せない魅力に満ちた作画である。10号前半で作画代わってて、え?Vinceじゃねえの?ってちょっとがっかりしたもの。(代わった人ごめん。)アメリカのコミックの80~90年代というのは何しろあのロブ・ライフェルドがスターだった時代だぞ。今見たってあんな全員悪人にしか見えねー画でなんで人気あったのか全く理解できないだろ。いや、まあなんか時々あれが見たくなるんだけど。怖いもの見たさか?まあとにかくこのくらいの画はきっと全然ありだったのだと理解せよ。あんまり説得力ない?

で、Vince Locke(ヴィンス・ロック)のもう一つの代表作と言えばこれ。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』である。実はLockeよりもライター、ジョン・ワグナーの話になりちょっと話がそれちゃうんだけど、これについては少し言いたいことがあったのでここでついでに書かせてもらう。なるべく手短めにすっからさ。大抵の人は知ってると思うが、これはデヴィッド・クローネンバーグ監督により映画化され、映画は日本でも大変高く評価された。で、それに合わせてこちらの原作コミックも翻訳されたのだが、当時どうも映画サイドから、映画で印象的だった家族との葛藤が描かれていない、などの批判的な見方をされ、そん時は私もうっかりそうかなあ、などと思ってしまったりしたのだが、今ならわかるその辺の見当違いの批判に対し、うっかり乗っちゃった自分への反省も含めてここで正しておきたいと思うのである。
まずこの映画には原作コミックから2つの大きな変更がある。一つはその家族との葛藤(1)で、もう一つは原作では主人公は親友の悪ガキに乗せられて一緒にギャングの金を奪おうとして失敗し、命からがら逃げて自分の出自を隠し生きてきた男であるのに対し、映画では元はギャングの一員だった男になっているところ(2)である。クローネンバーグは映画化に際し、原作は読んでいなかったと語っている。ならば、この変更は脚本段階のものとみるべきであろう。そして、ハリウッドの脚本家がなぜこういう変更をしたのかは容易に想像がつく。1).ファミリー要素の強化。2).スタイリッシュなアクション。毎度おなじみのやつやね。こうやって見れば、果たしてその脚本が映画に見られるような優れたものであったかは、かなり疑問になってくる。まあ、おそらくはクローネンバーグによる部分的な改変で、傑作に仕上がったってところだろう。その脚本段階での改変について、まず1).の方はあとで述べるが、何よりも問題なのは2).の方である。じつはこの安直な改変により、原作コミックの最も重要なテーマが損なわれてしまっているのである。
原作コミック『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の最も重要なテーマとは何か。それは、人間はその過去から絶対に逃げられない、ということである。それはこのコミックのライター、ジョン・ワグナーの作家としてのテーマであり、ワグナーは自己の経験としてそのことを誰よりも知っている人物なのである。それは80年代初頭に英国2000ADの「ジャッジ・ドレッド」で約半年間にわたって続けられた「The Apocalypse War」というシリーズでのことだ。2000ADのファンとしてこのことは何度もこのブログに書いてきているが、今一度説明しておこう。ドレッドの所属するMega-City Oneが敵対する東側Sov Unionの熾烈な侵略攻撃に追いつめられ、壊滅寸前となった時、ドレッドは最後の手段として精鋭を率い、Sov Unionのミサイル基地を攻撃奪取し、その核ミサイルを全てSov Unionの母国East Mega-City Oneに向けて発射し、地上から消滅させる。これは当時英国でかなり激しく批判されることとなる。いかにフィクションであるコミックでも、核攻撃により一つの国ほどの規模の都市を壊滅させるなどということが許されるのか?そしてワグナーはその十字架を背負うこととなる。30年の後、同「ジャッジ・ドレッド」でそろそろまたMega-City Oneに大きな事件を、という話が持ち上がった時、メインライターである彼が選択したのは、その30年前のSov Unionの生き残りが大規模な報復を仕掛けるというストーリーで、「Day Of Chaos」というそのシリーズでは、Cityの人口の8割が失われるという大惨事になる。そして近年にもドレッドと共にその作戦に参加した後、罪悪感から精神を病んでしまった男の悲惨な末路というような話も書いている。もはや40年近くの昔の過ちを非難するようなものはいないだろう。だが、非難されなければ罪が消えたなど思うのは子供の理屈だ。そしてジョン・ワグナーは、その場での謝罪でことを済ませ、あとは皆がそれを忘れてくれるこ望むような男ではない。これだけの年月が経っても、自らの手で傷を掘り起こし続け、その過去と対面し続ける男なのだ。とは言っても私もその30年以上に亘る年月のワグナーの作品がどんなものであったかは常に早く読まねばと思いつつ、まだほとんど読めてはいないのだが、日本でも翻訳が出たおかげで早めに読めたその一端が、この1997年の『ヒストリー・オブ・バイオレンス』なのである。
映画を観た人も多いだろうから、それほどストーリーを説明する必要もないだろうから、ざっといくと、上に書いたような過去を持つ主人公は、名前も変えとある田舎町でそこで出会った女性と結婚し、子供も生まれダイナーの店主として平和に暮らしていたが、ある日、自分の店に入った強盗を撃退したために一躍ヒーローに祭り上げられる。だが、それが報道で大きく取り上げられたため、彼の過去を知り、怨恨を抱き続ける者たちの知るところとなり、彼の現在の生活を脅かし始める。そして彼はその過去と決着をつけるため、ギャングの本拠地へと向かう。というところまでは映画のあらすじもほぼ同じ。だが、原作コミックでは映画では描かれなかった衝撃的なシーンが登場する。そして主人公は、彼が逃げてきたと思っていた過去が全く終わっておらず、そのまま続いていたことをあまりにも恐ろしい形で知ることとなる。このシーンが残虐すぎるのでカットされたと見る向きもあるようだが、私はこの物語を改変した者たちにそこまでの考えがあったとも思わない。ただ映画を売るための都合で変えられた設定とつじつまが合わないので切っただけのことだろう。彼らにこの作品へのきちんとしたリスペクトがあったなら、このまま表現できなくとも、何らかの形で残さなければ、この物語の根本的なテーマが崩れてしまうと考えたはずだからだ。これがアカデミーの脚色賞とった?だから何よ?この映画を持ち上げすぎる輩が賛美するラストシーンだって、脚本そのままに撮ったら、すべてが清算され我が家に帰った主人公が庭で息子と何の屈託もなくキャッチボールでもしてんのを奥さんがにこやかに見守る、なんてのだったところじゃねーの?
そして、家族との葛藤の方だが、別にそういうものもあっても良かったんじゃないかと思うが、過去を捨てて今は平穏に暮らしている主人公、という設定で始めた話で、そういうものを入れるということ自体に思いがいたらなかったのかもしれない。後知恵では何とも言えるよ。だが、もしワグナーが現在の家庭までかき乱して、主人公が帰る場所もなくしてしまうような話にしたくなかった、主人公が過去から解放されて救われる物語を書きたかった、と思ったとしても、私はそんなワグナーを責める気にはなれん。いずれにしてもこれはクローネンバーグの映画をコミカライズした作品などではない。こちらが先にありそれをもとに映画が作られたのだ。だから後からの映画ありきで、原作のコミックからそれが削られていて欠落しているかのような批判は、見当違いも甚だしい。例えば、日本で多くの人が読んでいるマンガが映画化され、その時に原作の重要な要素が改変されていれば、それがたとえ映画単体で見れば悪い出来でなかったとしても当然その読者から批判を受ける。そしてこの『ヒストリー・オブ・バイオレンス』の原作コミックにも当然読者はおり、それが原作の重要な要素が改変され映画化された時、当然批判の声が上がっただろう。クローネンバーグの、俺は原作は読んでない発言は、それを受けてのものなのだよ。
で、自分に関して言えば、やはり最初に読んだ時は読みが甘かった…。その頃はジョン・ワグナーのことをよく知らなかったなどというのは全く言い訳にならん。良い作品だと思ったからこそ、その後も手放さず(…まあ本棚の特等席にしまった結果後に積み上げた本に埋没し、永らく行方不明だったという毎度のやつだが…)持っていたわけだが、やはり映画の印象が強烈でそれには負けるかな、と思ってしまったところもある。何よりの反省点は、映画サイドのそういう流れに乗ってしまったところもあるかも、というところである。未熟ナリ…。ただなあ、そういう自分の反省点は置いといても、映画なんてところにはやいのやいのいう気すらも大して起こらんのよ。なんかさあ、もうそこら中映画言いたがりばっかでさあ、あ?映画の話なの?あー待って待ってじゃあオレ帰るからほらこれオレの分ねこれで足りるよね、って気分なのよ。今はとにかく時間もなくてろくに映画も観れんけど、いずれまたそんな余裕もできてきたなら、もう映画評論家も映画ファンの野良レビューも完全シャットアウトして、自分が面白そーって思った映画を勝手に楽しく観るでやんすよ。すべての映画言いたがりにさよならを言おう。だがもちろん、警官にさよならを言う方法はいまだに発見されていない。

結局のところそこそこ長くなってしまって、かなり話がそれた感じなんだけど、『Deadworld』に戻ろう。と言ってももう大して書くことも残ってないか。なんか最初に「全貌」とか大見得切ってみたものの、Wiki頼りに書いてみたシリーズの遍歴などを見るにつけ、結局まだほんの入り口ぐらいのところなんだよなあ、と改めて気付くのでした。なんかいくらかでもお役に立ったなら幸いですぐらいのもんかね。これからも続きを読んで行きたいシリーズでもあり、いつの日にかはもうちょっと詳しい本当の「全貌」を書ける日もやってくるかもしれません。そして現在は中断状態でも必ずやまた登場するだろうシリーズ続編を待ち、その先の展望を見守って行きたいものですね。

Caliber Comics


ゾンビ・コミック特集第3回は、インディペンデント系のパブリッシャーのゾンビ・コミックについて探って行きます。まあインディペンデント系の線引きも微妙なところなのかもしれないが。この辺なってくると更に活動実態不明だったり、もう活動停止してんのかもってところもあるけど、とにかく気になるのを見て行くことにしましょう。今回は画像の方はComixologyから。
まずはAlterna Comicsの『FUBAR』シリーズ。インディーながら、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー・グラフィックノベルにもなった作品。まあ画像を見ればわかる通り、ゾンビ好きなら放っとけない感じで、私も以前から気になってるのだけど、未だに手つかずでごめん。内容はテーマとか設定を決めたアンソロジー的なものらしい。それぞれ時代とかも違う感じのシリーズが5作か6作出ているようです。きちんと内容を把握しとらんので、曖昧で申し訳ない。他にComixologyのAlterna Comicsのところに『Attack of the Alterna Zombies』というのがあったので見てみたら、なんかAlterna-Verseのキャラクターがゾンビと戦うフリー・コミック・ブック・デイ用のやつでした。Alterna-Verseにどんなキャラクターがいるのかは不明。とにかくそれフリーなので今度読んでみる。内容不明ですが、ホラーSF系多目で面白そうなの結構あります。
続いてAsylum PressのSteve Mannion作『Fearless Dawn』。カバーにも出ているヒロインFearless Dawnちゃんがゾンビと戦うお色気ホラーコメディらしい。お色気って…。これもずっと読もうと思ってたのだけど、ちょっとここんとこ忘れてた。いかんなあ。こんなのこの私が読みたいやつに決まってるじゃないか!Asylum Pressは怖いのとエロいのに特化した大変頼もしいパブリッシャー。ちょっとここんところリリースが止まっちゃってるけど、またきっと復活するよね。Comixologyではフリーのサンプラーも読めます。
今回のゾンビ・コミック特集、まあなんだかんだ言ってもどれもほぼインディペンデント系と言っていいようなところからのものでやってきたのですが、さすがにこの辺で知ってるのも種切れになってきたので、ここからは一本釣りっぽくComixologyのジャンル-ゾンビから面白げなのをピックアップしてみたいと思います。
で、まず選んできたのがこれかよ…。『Chaos Campus: Sorority Girls vs. Zombies』というシリーズでなんだかんだ言っても40号ぐらい出てるロングラン・シリーズらしい。内容不明だがコメディとも書いてあります。楽しそうですね。発行はApprobation Comics。ホラー系らしいのを中心に10シリーズぐらいのコミックを出しているようです。『Chaos Campus: Extra Credit』というスピンオフらしきシリーズもあり。
次はそれほどふざけてないやつ。『Escape From The Dead』はGrind House Comicsという気合の入った名前のパブリッシャーから。2014年に4号まで出てるけど、ちゃんと終わってるのかは不明。SFのタグも付いてて結構面白そうだけど。Grind House Comicsからは他に『George C. Romero Presents: Mulligan』というシリーズが2016年に1号だけ出ています。とりあえずまだComixologyで販売中ということはまだ続ける意志もあると思われるので、頑張ってください。
格好よさげな女の子がゾンビと戦うやつ。『Katrina Hates the Dead』はWannabe Pressから2017年に5号まで発行。なんかプリント版ではハードカバー単行本も出てるようなので、これで完結なのかも。Wannabe Pressはきれいなウェブサイト(Wannabe Press)もあって、コミックというよりはアート系の感じのパブリッシャーにも見える。良く調べてみたら結構面白いところかも。いや、なんかついでっぽく雑に見ちゃってごめん。
そんでまたこんなのを選んでしまいました。『Lesbian Zombies from Outer Space』!レズビアンでゾンビでアウタースペースだよ!これは見逃せんだろう。いや、ゾンビのジャンルに入ってなかったので危うく見逃すとこだったが。こちらもコメディということ。1~4号のコレクションで3.99ドルと結構お買い得。中身はもうちょっとあっさりした画ですが。こんなのを出してる版元Big Things Productionsなんですが、他にはなんかソクラテスについての真面目な歴史コミックを?『ギャグマンガ日和』みたいなのではなさそうです。
次もこんなの。『Bitch With A Chainsaw』!Maggie XというシリーズのVol.1ということです。版元Grimmer & Grimmer Booksからはまだこれの第1号しか出てませんが、今年3月に始まったばかりなのでまだこれからです。『Chaos Campus』ぐらいのロングランになるかもよ。中身は、うーんと、かなりあっさりした画っすね。
何か聞いたことのあるやつを別の組み合わせにしてみた感じのタイトルの『Dawn of the Undead』は、300 Postsから2015年に第1号が出たきり。ワンショットなのかも不明。とりあえず「#1」ってことになってます。これに関しては中身の画の方が良さげです。そういうのもあるんだよ!
次はなんとまたVince Locke作画のやつを見つけたっすよ。『Arise』はSatyrn Studiosから2014年から16年までに3号が発行。Locke作画は最初の1号だけ。これで話終わってるのかも不明。Satyrn Studiosって検索してみたらなんか服とか帽子とか売ってるとこが出てきたけど…?いやロゴも同じだからここで間違いないんだけど、なんか事情が分かるかと思ってメニューのAboutってとこ見たらWordpressの説明が書いてあるし…?いやー、なんかわけわかんないのもあって楽しいよねえ。
『Zombie Commandos From Hell!/Rise Of The Blood Queen』!これも2014年に52ページの1号が出たっきりですが。発行はBloody Gore Comix!こんなイカス名前のパブリッシャー立ち上げたんだから、また頑張ってくれよな。あっ!検索してみたらちゃんとホームページ(Bloody Gore Comix)もあって結構頑張ってる!怖いよう!Zombie Commandos From Hellのサウンドトラックもあり!わー、デジタルで読めないのかなあ?
そろそろこの辺で、てことで最後が『Zombie Zero』。2016年からでスローペースだが、6号まで出てます。全7話ということのようなので、そろそろ完結なのかな?発行はCritical Entertainment。ホラー、SFらしきタイトル数シリーズを出していて、小さいながら頑張ってる様子です。ホームページ(Critical Entertainment)を見たら、今年のコミコンにも出るよ、とお知らせがありました。いいっすね。頑張ってください。いや作品の方も結構面白そうやん。画もいいし。

いやー、こうやって闇雲にあっちこっちひっくり返して、これ面白いかなー?って見て回るのって本当に楽しいよねえ。ほら、出鱈目だって結構収穫あるじゃん。『Chaos Campus』とか『Lesbian Zombies from Outer Space』とかさあ。そんなのばっかかよ!うーん、Bloody Gore Comix何とか読みたいなあ。別に投資とかしてるわけじゃないんだからパブリッシャーの大小なんて関係ないじゃん。コミックなんてアフターサービスの必要な商品でもないんだからさあ。買ったやつがパブリッシャーごとComixologyからも無くなっちゃった、みたいなことがあっても、今じゃ手に入んないレアなやつをゲットしたぜ、って思えないようじゃあコミック=マンガ読みじゃないぜ。以上3作でゾンビ・コミック特集も終了だが、この分なら第2回もまた面白いの並べてやれそうだね。なんか前回までので見落としてたのもあったりね。でかいところのも俺出版社のもゾンビ・コミック・クリエイターの皆さん頑張ってください。アイルビーバーック!
というわけで、ゾンビ・コミック特集全3回これにて終了なのですが、もう少し語りたいこともあるので、ホラー・コミックという括りでゾンビ・コミック特集番外編がもう少し続きます。んですが、ちょっと小説の方でも書かねばならんことがあるので、次回はお休み。その次からはまたこわいまんがの話しちゃうからね!

※下のリストについて:わかりやすいように最初に出版されたところで分類してありますが、現在はすべてCaliber Comicsから発売中。インディペンデントゆえ基本的には入手しやすいKindle版を選びましたが、一部未発売のものはTPB版。オリジナルシリーズはComixologyではIssueでは全部電子書籍化されています。Caliberのところの最後に並んでる説明なかったやつはミニ・シリーズ的なやつらしい。最後のその他に分類してある『Voices From the Deadworld』は『Deadworld』シリーズのキャラクターを中心とした解説書的なものらしい。Gary Reed本人による公式のやつ。あとぬりえ。


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ゾンビ・コミック特集 第1回 The Last Zombie: Dead New World

ゾンビ・コミック特集 第2回 Zombie Tramp



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2019年4月30日火曜日

ゾンビ・コミック特集 第2回 Zombie Tramp

やっと戻ってきましたゾンビ・コミック特集第2回です。長期に亘る中断、なんとも申し訳ない。ここから当分はコミックの方に専念いたします。
で、ゾンビ・コミック特集第2回に登場はAction Lab - Danger Zone発行Dan Mendoza作『Zombie Tramp』です。2014年より続くカートゥーンタッチの作画によるエログロゾンビ・コミックという異色作。アマゾンではアダルト指定になってて、トップ画像がもしかすると「警告 アダルト商品」とかになっちゃうとまずいので、今回はComixologyから借りてきました。Unlimitedマーク付き。ちなみにComixologyでは17+指定になっています。ではまずはあらすじから。

【Zombie Tramp】
主人公Janey Belleは、ハリウッドの高級コールガール。セレブとの仕事を終え、自宅に帰り翌朝目覚めると、大変なニュースが飛び込んでくる。
Tramp達コールガールの元締め、George Sumeroが逮捕された!
ただちに警察署に駆けつけ、George(オネエ)と面会するJaney。
「助けて、このままじゃアタシムショに送られちゃう。アタシみたいなのがそんなところでどんな目に遭うか…。」
「あたしにできることある?何でも言って!」
健気なJaneyに、Georgeは顔を伏せてためらいがちにつぶやく。
「保安官と一晩…。」

オマワリは虫唾が走るほど嫌いだ。だがGeorgeをこの苦境から救い出すためならやむを得ない…。
そしてその夜、Janeyは悪徳保安官Rudolfの家へと向かう。
「とっとと終わらせましょう。」
そう告げるTrampを、保安官は地下室へと連れて行く。
そこでJaneyが目にしたのは、ゾンビと化して鎖でつながれた保安官の息子Jasonだった!

Rudolf保安官の目的は、ゾンビとなった息子に美女という美食を与えることだった。その時、暴れるJasonの力に抗しきれず繋いでいた鎖が千切れる!Janeyに襲い掛かるJason!揉み合ううちに噛み傷を受けるJaney!保安官が暴走する息子の制御に躍起になっている隙にJaneyは逃走。だが、運転を誤り乗った車ごと川に落水し、意識を失う…。

そして、Janeyはゾンビとして目覚める。
路地裏をさ迷い、寄って来た男たちに襲い掛かり、餌食とした彼女は、そこで美貌のネクロマンサーXulaと遭遇する。

保安官の息子JasonをゾンビにしたのはXulaだった。
死んだ息子を生き返らせてくれ、という保安官の依頼で、ネクロマンサーXulaは呪術によりJasonを蘇らせる。だが、それが魂のないゾンビだと知った保安官は怒り、Xulaを投獄しようとする。護送中逃走した彼女は、死体安置所の遺体を蘇らせ、ゾンビ軍団を作り配下に従える。その逃走の最中、XulaはJaneyと出会ったのだった。

Xulaの隠れ家でJaneyは再び目覚める。Janeyの記憶と意識を持って。
「アンタは特別だ。魂が残ったゾンビだ。」

そしてZombie Tramp JaneyとネクロマンサーXulaの血みどろの復讐劇が幕を開く!


という感じの、アレだな、グラインドハウス感あふれるイカすゾンビホラーコミック。で、カートゥーンタッチとは言ってるけど、カバーだけではいまいちわからないのでは?と思うので、まず画の方を紹介。ちょっと探しては見たのだけど、少し前の作品だし画像の方は見つからなかったので、無許可にて。何とか画を見せたいという思いゆえなのですが、版権については気持ちの上では100%尊重しておりますので、やめろと言われるならただちに引っ込めます。

なんかボヤボヤでイリーガル感満載なのだが、何とかこれぐらいは見せないとわかんないよね。商業目的とかじゃないんで勘弁してください、つってもアフィリエイトくっつけてるからそうなっちゃうかなあ。まあこんな感じで、とりあえずはいくらかこの作品のイメージも具体的に伝わったんではないかというところで続けます。
まず、この作品のタイトルについて。『Zombie Tramp』のTrampというのは娼婦という意味。いや、実はこの使い方知らなくて、Trampというのを主人公の名前だと思い込んでいました。なんか本当にタイミングよくこれを書き始めたところで、たまたま他のところでそれが使われてるのを見て、もしやと思いもう一度見直してみて主人公の名前がTrampではなくてJaney Belleと気付いたという次第。Trampが浮浪者という意味で使われてるのは目にしてたんだけど、娼婦の方は多分そこで初めて見たんじゃないかと思う。ちょっとした勘違いがそのまま出てしまうところだったので、本当にタイミングよくて助かったっす。映画で『ゾンビ・ストリッパーズ』というのがあるけど、この作品は『ゾンビ・コールガール』みたいに思ってくれればいいんじゃないかと思います。うーん、コールガールっていうのもどうかと思うけど、多分日本的にはわかりやすいんじゃないかと思うのだけど…?以上、多分大して役に立たないだろう英語豆知識でした。マンガで得た知識もりっぱな知識にゃ!
この作品のゾンビ設定は、ネクロマンサーによる呪術で死から蘇らされたというもの。現在ではゾンビと言えば何らかのウィルスによるものというのが主流ですが、そっちの方の知識はあまりないのでちょっと曖昧なのだけど、多分ロメロ以前ぐらいのはこういう呪術によるゾンビというのが主だったんじゃないかと思う。この作品の主人公Janeyはゾンビに噛まれることによってゾンビになってしまうのですが、多分そういう設定は呪いが伝染するような理屈でウィルス型以前からあったのではないかと思われます。そしてこの作品でのゾンビは、まあ多くのゾンビ物のようにヨロヨロッと現れるのだけど、闘い始めればスピードもパワーも凄まじく、手刀一閃で相手の首を吹っ飛ばすような狂戦士となっています。基本設定的なものはこんなところでしょうか。
カートゥーンタッチの作画で、基本的には黒の太めのラインに部分的に赤・黄・空色の3色が使われるパートカラー。とりあえず画像の方にも3色揃っていてこんな感じの使われ方。結構スタイリッシュぐらいの感じはあるいい作画です。例えばゾンビと言うと、普通の生きている人間との違いを描き分けるために、肌の感じやらリアルな表現が必要とされ、カートゥーンタッチは向いていないように思われますが、シンプルな線でうまく表現されていて、やっぱ画に決まりやら原則なんて無いのだよな、と再認識させてくれます。

この作品はストーリーも画もDan Mendoza独りによる作品。で、ちょっと調べてみたのだけどあんまり情報は見つからず、というところだったんですが、2016年のニューヨークのコミコンにおけるインタビューの映像が見つかりました。

なんか名前で検索すると一緒にダニエル・メンドーザっていうボクサーの人が出てくるので、結構ガタイもいいしそっちの格闘系の人かと一瞬思っちゃったけど、よく見たら18世紀生まれの人じゃん!こんな映像あるわけねーだろ。で、このMendozaさん。ご覧のようにドラゴンボールのネックストラップつけてます。その先についてるのがゾンビの生首か、手榴弾か、どこかで見つけた7つのドラゴンボールのうちの一つか、それともコンベンションのパスかは確認できませんが、多分日本製のアニメとかマンガとかも割と好きなのではないかと思われます。
そしてこちらがMendozaさんによる他の作品『Dollface』のカバー。こっちになると『Zombie Tramp』よりも日本のアニメとかの影響が感じられますね。で、その辺からMangaとカートゥーンの関係みたいなのを考えるのだけど、例えばアメリカのオリジナルのMangaというのは、特に日本人から見ると、このカートゥーンをベースにしたものが多いように感じられます。そして日本のマンガとカートゥーンとの関係みたいなのを考えると、その根本である手塚治虫がディズニーのアニメーションなどからも深く影響を受けたことがよく知られています。だがな、ここでなんかよくある感じの、実は日本の漫画のルーツはアメリカのカートゥーンだったのです、みたいなまとめをしちゃうのはあまりにも単純。現代日本漫画の創成期にそういう影響があっても、その歴史から見ると割と短いスパンで、手塚治虫的カートゥーンに影響を受けたスタイルは、映画的な演出を意識した劇画などに取って代わられる。実際漫画の歴史というようなものを俯瞰すれば、主にはよりリアルな映画的演出や、そういう漫画の方向と相互作用する形で独自に進化する日本的アニメーション演出というようなものの影響で進化してきたものが現代の日本の漫画の姿なのではないかと思う。そんな風に日本の漫画はカートゥーンの影響を受けた手塚治虫のスタイルとはずいぶんかけ離れtものになっている。結局のところ、カートゥーン的なスタイルというのはどこか日本人の好みに合わなかったのではないか?もしかすると日本人の好みというのが、カートゥーンの曲線的・円的なものよりも、直線的・鋭角的な指向で、日本の漫画で特徴的なスピード線・集中線などの効果の進化はその表れなのかも、みたいな考察もできるのかもね。一方、アメリカで日本の漫画を読む人というのは、それが子供でも大人でもいいんだけど、最初はアニメから入る人が多いんじゃないだろうか。で、おそらくはアメリカのコミックという枠内で見れば、日本のアニメのキャラクターというのはカートゥーンに分類されるんだろう。そんな経緯を経て、日本のマンガから影響を受けた、カートゥーンをベースとしたMangaが作られるんではないか。それらManga製作者はカートゥーンというものもベースにあるわけで、それほど意識しなくてもそちらの手法も使用してくる。カートゥーン的な動きや構図やコマ運びなど。ところが、前述のように、日本のマンガというのは何かカートゥーン的な表現がなじまず、別の表現を模索して現在に至っている。で、そういう日本のマンガを読んできた日本の読者が、そういったカトゥーンベースのMangaを読むとかなり違和感があるというわけ。まあこんなのはなんかすごい発見をしたみたいに言うほどのことでもないんだろうけど、ちょっと以前から気になってるのはなんかこんな風に分析して見せて、これこれこういうわけで違ってるというのをなんか劣っている理由かのように言う人をよく見かけること。違っているものを見たら、それがなぜ違っているのか考えるのは重要だけど、それをただ否定するために使うなんてのは全く意味がなくただの無駄。何故違っているのかの意味は、そこからそれによって全く違うものが生み出される可能性だろう。自国の優れたクリエイターの仕事が、遠く離れた海外でも評価されていることをまるで自分自身の功績のように誇りながら、そこからアウトプットされてきたものに冷笑的なんて格好悪いにもほどがあるよ。物語世界で言えば直後に悲惨に殺されるて観客をスカッとさせるために出てきた憎まれ役のモブレベルだよ、お前。なんかオタクに属する輩が小集団内ででかい顔をするためによく使う「これはこんなもんなんだよね」的な言いきり論法みたいなのもほぼ死亡フラグだよね。日本人と違うカートゥーンベースのManga、いいじゃないか。なんか我々とは全く別の発想で作られた見たこともないマンガが出てくるんじゃないか、なんていう期待も持たせてくれるではないか。先の話の流れで手塚治虫のスタイルのマンガは廃れてしまったというようなことを書いたけど、そこは日本漫画の父、偉大なる手塚治虫である。表面的には見えなくとも日本のマンガの中には「手塚治虫」が延々と生き続けているのだ。そして、もしかしたらカートゥーンをベースに読む海外のマンガ読者には、例えば『ヒロアカ』の中の「手塚治虫」が我々よりもずっと見えているのかもしれんよ。同じようにマンガを愛する海外の同志がいかなるManga=マンガを創り出してくれるのか、大いに期待しようではないか。

こちらの『Zombie Tramp』Vol.1は、ちょっとなかなか情報が見つからなくて曖昧で申し訳ないのだが、とりあえず最初に発行されたのは2013年のようで、形式もこの1冊で完結するグラフィックノベルだったようです。インパクトのある作品で好評だったようで、翌年には同じくグラフィックノベルとしてVol.2が発行。そこからはDan Mendozaがライターとして作画は別のアーティストを起用という形も取りつつ、お馴染みの20数ページのIssue形式でのシリーズ化発行が始まったようです。そちらもTPBではVol.16、Issueでは60号に近づくロングラン人気シリーズとなっています。2015年には同じAction Labの人気シリーズ(らしい…こっちまで手が回ってなくてよくわからなくてごめん)Vampbladeとのコラボレーション・ミニ・シリーズ『Zombie Tramp vs. Vampblade』も出版。また、2017年にはこの最初の『Zombie Tramp』がフルカラーで『Zombie Tramp: Origins』として発行されています。一方Dan Mendozaは2017年より前述の新シリーズ『Dollface』を開始。現在16号まで、TPBは4巻なのかな?(Comixologyでは24号、TPB6巻までが出版予定としてリストに掲載中)そして、アメリカではおなじみのアレだ。アベンジャーズとかジャスティスリーグとかみたいなやつ。Zombie TrampとDollfaceにVampbladeが加わった『Danger Doll Squad』ってシリーズがこれも2017年開始で、もうTPB2巻まで出ております。なんか微妙に情報がなかなか見つからなかったりしてるけど、結構な人気シリーズだよな、こりゃ。この辺は電子版ではComixologyの他、Kindl版でも入手可能。なんかアマゾンのリスト作ってたら『Zombie Tramp: Year One』っていうのが出てきたんだけど、内容不明…。すまん。一応Kindleではメインシリーズの中に入っていたのでそこに入れときました。その他、Dan Mendozaさんは自身のウェブサイトでも自費出版のコミックやキャラクターグッズなども販売中です。抱き枕あり!
版元Action Labは2010年設立のコミック専門パブリッシャー。最初はホラー、バイオレンス方向で出版を始めたようだけど、その後オールエイジ向けに手を広げ、現在は『Zombie Tramp』などのアレな奴はAction Lab - Danger Zoneという形で分けて販売されています。ちなみに米でオールエイジといったら大抵は子供向けということね。そちらの方では2011年に始まった子供向けファンタジー『Princeless』あたりが結構人気なようでシリーズも沢山出ています。Comixologyにも割と初期のころから参入してて、気になって入手してたのもいくらかあるはずなんで、またいずれAction Lab作品について語る日も来るかと思います。もちろんDanger Zoneの方だけど。

Dan Mendozaホームページ
Action Lab Comics


ここからは第1回に続き、米コミックの色々なパブリッシャーのゾンビ・コミック出版状況を見て行きたいと思います。前回割と大手のところをやったので、今回は中堅どころという感じ。まあその区切りも微妙なところなのだけど。
前回はこんな感じかなぐらいだけど、とりあえず大きい順ぽく並べてみたのですが、この辺になるともうよくわからないので、適当な順番で行きます。で、最初がDynamite Entertainment。日本的にはガース・エニス『ザ・ボーイズ』が知られてるところかと思いますが、このDynamite、多くは版権ものを出版してるところです。看板ぐらいなのが『Red Sonja』。これは元々はロバート・E・ハワードの『コナン』で映画なのね。あと日本でも知ってる人も多い『Vampirella』の版権も持っていて、現在は新旧共にDynamiteから出版されています。その他、ザ・シャドウやドク・サベージ、グリーン・ホーネットやギャラクティカなどなど。まあDynamiteについてはそのうちもっと詳しくやるよ。絶対。それでDynamiteのゾンビ物と言うと、こちらも版権ものになるのだけど、あの『Army of Darkness』。日本的には『死霊のはらわたIII/キャプテン・スーパーマーケット』が分かりやすいか。オリジナルの映画のストーリーの後も物語は拡大し続け、VampirellaやRed Sonjaなんかとも共演します。アッシュさんの冒険がもっと見たい人は要チェック。こちらは最初Darkhorse Comicsから出版され、その後Dynamiteに移籍しシリーズが続いています。Dynamiteは結構このパターンが多い。あ、『ザ・ボーイズ』も結局それか。あ、今日Comixology開いたら「Get Ready for The Boys!」ってあったけど、『ザ・ボーイズ』のAmazonでやるって言ってたシリーズもうすぐ始まるの?わー観たいなあ。日本で観れるようになるのかなあ。
BOOM! Studios作品で日本で知られているのと言えば、まず『アドベンチャー・タイム』のコミカライズ版か。あとシリーズ2作目まで翻訳された『マウスガード』シリーズを出していたArchaiaは現在はBOOM!のインプリントになっています。『マウスガード』はもっとあるんだけどなあ。他に映画化され日本でも公開された『2 Guns』もBOOM!作品。続編『3 Guns』もあります。BOOM!近年のヒットと言えば『Lumberjanes』。これ結構日本で出る可能性もあるな、と思ってたのだけど最近もうアメコミバブルも終わっちゃって難しいのかなあ。ずっと読もうと思ってるのだけど、まだ手を付けてないので内容は不明。でも見るからに面白そうじゃん。その他、以前アンチヒーローでちょっと書いたマーク・ウェイド『Irredeemable』など、意欲的なオリジナル作品も多く、ホントはもっと色々書かなきゃなと思ってるBOOM! Studiosなんですが…。BOOM!のゾンビ物と言うと、映画『28日後』のコミカライズ版や、受賞歴もあるアンソロジー『Zombie Tales』などもありますが、ここでピックアップするのは『Fanboys vs. Zombies』。コミコン会場でゾンビアウトブレイクが発生!オタク達は生き残れるのか?という作品で、結構前に第1号だけ読んで続きはまだ状態なのですが、これ日本の学校を舞台にしたゾンビやらパニックホラーものと比較してみると面白いかも、と今思いつきました。とにかく早く続きを読もう。
順番的に言えばこの後にOni Press、Aspen Comics、Zenescopeあたりが続くんですが、残念ながらこの辺ゾンビ物が見当たらないようなので、簡単にパブリッシャーの説明だけ。
Oni pressは、まずは『スコット・ピルグリム』でおなじみのパブリッシャー。そして、グレッグ・ルッカがキャリアの初期からオリジナル作品を発表しているところ。『Whiteout』、『Queen & Country』、『Stumptown』などの作品があります。他に代表的なシリーズとしては『Wasteland』、『The Sixth Gun』など。
Aspen Comicsは『Witchblade』などで知られるアーティストMichael Turnerによって立ち上げられたパブリッシャー。主にMichael TurnerやTurner風のかっけー女性が主人公のシリーズを多数出版。代表的なシリーズは『Fathom』、『Soulfire』など。Michael Turnerちょっと苦手であんまり読んでなくてよくわかりません。ごめん。
そして画像のヤツがZenescope。本当よりもっと怖くてエロいグリム童話『Grimm Fairy Tales』を皮切りにその手の怖くてエロい色々を多数出版し続けるパブリッシャー。ワシがそういうの好きじゃないわけないじゃん!『Grimm Fairy Tales』の他にはヒット作『Wonderland』シリーズ(本当よりかなり怖くてエロい不思議の国のアリス)があって、初期の3部作は読んだのだけど、無理矢理話を捻じ曲げた第1作が好評で、更に無理矢理話を広げた3部作でなんか話がややこしくてうまく説明できん。しかもこの3部作に続き更に話を無理矢理広げていてもう何がどうなってるのかよくわからんシリーズが続いています。いつの日にかこれを解明するぐらい無駄なことをやりたいなあ。画像選ぶためにアマゾン検索してたらZenescopeからは怖くてエロいぬりえも発売中なのを見つけました!ちょっと欲しいなあ。アマゾンで洋書、Zenescopeで検索すると出てくるよ。
この後ぐらいにValiantやAfterShock Comicsなんかが続くかなと思うのだけど、こちらもゾンビ物はないし前に書いたので省略。
そんで、遂に出ましたAvatar!私の大変推している、というほどにはとても読めても書けてもいないのだけど…、とりあえずこれまでに3作品について書いたことのある、素晴らしいアレな作品を多数出版しているパブリッシャーです。Avatarでゾンビ物と言うと、以前に紹介したガース・エニスによる史上最悪のゾンビ『Crossed』シリーズ。これについてはいずれまた必ず続きをやるからね。そして他のAvatarを代表するゾンビ物と言うと、現代ゾンビの本家ともいえるジョージ・A・ロメロのライセンスも得た『Night of the Living Dead』シリーズ。こちらはロメロとともに映画『Night of the Living Dead』の脚本を共同執筆したJohn Russoがシナリオを担当したシリーズだとのこと。ちょっと最近ではもうBoundless Comicsのバッドガール物しか出なくなっちゃってるAvatarですが、まだいい作品ずいぶんあるのでまた書いて行きたいと思っています。必ずや!
今回はこんなところで、またもう少し小さいパブリッシャーについては次回第3回で探っていこうと思います。


なーんか思いのほか長くなってたり、時間がかかってたりで、やっとゾンビ・コミック特集第2回完了です。前の21世紀ハードボイルド/ノワールベストでかなり力尽きちゃって、それでも何とか1行だけでも書かねばと思って結局ホントに一日1行だけやっと書く日が続いちゃったりね。なんとかこのGWで体力的にも気力的にもペース的にも回復して頑張って行きたいと思う所存です。
でさ、途中で柄にもなく英語豆知識風に言ってた「Tramp」なんだけどさ。あれその後他のところで2回ぐらい見つけたわ…。多分今までも目にしていて、その都度知ってる方の「浮浪者」的意味に解釈してたんだろうな、と思う。たまたまちょっとそれだとうまく意味が通じないな、と思うところがあって辞書引き直してやっと気付いたというところなのだろうね。どうにも頼りない英語力で仕方無いんだが、なるべく間違いのないようには努力して行くです。まあ今回はギリギリ間に合ってよかったということで。あっちもこっちもポンコツなのだが、書かねばならんと思うことがある限り頑張って続けて行かねばなあ。では次回ゾンビ・コミック特集 第3回、連休中に仕上げるぞ、ぐらいの意気込みで頑張るであります。


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