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2015年5月3日日曜日

Nailbiter -ハイスピード・サイコ・サスペンス・コミック!-

Image Comicsも現在はずいぶん勢いがあるようで、多くのシリーズが進行中で毎週沢山のタイトルが発売されているわけですが、私のように読むのが遅い者は気になるものがあってもアレとアレを読んだら読んでみようかななどと思っているうちにすぐにちょっと旧作となってしまったりするわけです。最新情報をお伝えするなどという柄ではないけど、どうせ読んでブログに書くなら早い方がいいよな、と思って少し順番を入れ替えてみたりしたのが今回の『Nailbiter』です。とは言っても気付かないうちにもう単行本2巻が出てたりしたのですが。

あの『American Vampire』やDC52の『Batman』のライターであるScott Snyderに「途中で死ぬようなことがあったら続きは俺に書かせろ!」と言わしめたこのシリーズ、まず私の心を鷲掴みにしたのは第1号のカバー絵でした。それがこちら!


うわっ、これはヤバイ!痛いっ!たいへんわかりやすく怖い!こんなのを見せられてはもう読むしかないでしょう。さて、ではNailbiterとはどんな話なのか?


連続殺人鬼"Nailbiter" Edward Charles Warrenが逮捕される…。

彼の犯行の手口は、男女を問わず爪を噛む癖のある者を誘拐監禁し、その爪が十分に伸びたところで骨に達するまでそれを噛み、そして殺害するという異常かつ残忍極まるものである。カリフォルニアだけで少なくとも46人がWarrenの手にかかっている。

そのNailbiterがついに逮捕される…。
SWATとともに突入したCarroll捜査官が見たものは薄ら笑いを浮かべながら被害者の爪を噛み続けるWarrenの姿だった。

そして3年後…。

軍情報部の捜査官Nicholas Finchの許にCarrollから電話がかかってくる。「遂にBukaroo連続殺人鬼達の秘密を掴んだ。お前の助けが要る、すぐに来てくれ。信用できるのはお前だけだ。」友人からのたっての頼みに不承不承腰を上げるFinch。

-オレゴン州Bukaroo-

雨の降りしきる中、FinchはBukarooに到着する。そこで彼がまず目にしたのは"The Murder Store"という連続殺人鬼の記念品を売る不気味な店だった。

Bukarooは”連続殺人鬼の町”。この町から16人もの陰惨な連続殺人鬼が産まれている。そして"Nailbiter" Edward Charles Warrenは、その最新のひとり。
店主Raleigh Woodsは不気味な笑みを浮かべながら語る。「こうなったらその悪名に払い戻しをしてもらうのさ。手始めはホラー・コンベンションの誘致だ。」その彼の祖父もこの町の連続殺人鬼にして最初のひとりBook Burnerだった。

Finchは店の前で少年2人に絡まれていた風変わりな少女Aliceを助け、町の女性保安官Craneと出会う。彼女も、この町に現れてから毎日のように顔を合わせていたCarrollの行方が今は分からないと告げる。Carrollの宿泊しているホテルの部屋を訪ねると何者かに荒らされたらしい形跡があった。

Carrollはどこに消えたのか?本格的に捜索を始めた彼らがまず訪れたのは、陪審員により無罪評決が出され、この町に戻って暮らしている"Nailbiter" Edward Charles Warrenの許だった…。


うむむ…。なかなかあらすじを書くのも難しい。結構ハイテンポで進む物語なのですがちょこまか行間を空ける書き方で逆の印象を与えたなら申し訳ない。実際にはストーリーの進行とともにキャラクターや状況の説明を織り交ぜて行くとても巧みな語り口なのですが。
まずこのたいへんインパクトのある事件・キャラクターですが、これってさらにリアルになる映画や、逆に映像の無い小説だと過度にグロテスクになり過ぎ、コミックならではのバランスでバランスで成立している、コミックゆえに作りえたストーリーだと思います。
物語はオレゴンの田舎町で色々といわくありげな住人が登場しながら、次々と異常な事件が起こってくるというちょっとツインピークスをも思わせる展開。しかしこの前の『Ferals』の時も「ツインピークスみたいな田舎町」とか書いてしまって少しこちらの引き出しが無さ過ぎか。すみません。一体なぜこの小さな町で連続殺人鬼が16人も現れたのか?という秘密が"Nailbiter"の謎とともに徐々に解き明かされて行くという展開になって行くようです。謎が謎を呼びながらハイテンポで進んで行くストーリーで、ミステリ小説のファンの人にも絶対おすすめですよ。

ライターのJoshua Williamsonは2007年デビューでまだライターとしても若手の方でしょう。Image Comicsから出てオリジナル作品を書きながらDC、マーベルにも順調にキャリアを進めているところなのかな。代表作としては、この『Nailbiter』の他に同Image Comicsの『Ghosted』など。Dark Horseの『Capten Midnight』、MonkeyBrain Comicsの『Mask and Mobsters』といった作品もあります。この作品に関しては、とにかくテンポよくストーリーを進めながら、折りたたまれたものを徐々に開いていくように少しずついろいろ見せてくる巧みな展開が冴えています。この人も注目していきたいライターですね。
作画のMike Hendersonはあの(というほどはよく知らないけど…)Joe Kubert School of Artの出身とか。Joshua Williamsonとは『Mask and Mobsters』に続いてのコンビとなります。彼もまだ若手でそれほど多くの作品はないようですが、ザクッとしたスピード感のある線を基調にしながら、見せ場では上の絵のようにそれまでの流れと見るものの視点をもを一気に凍らせる画を描けるいいアーティストです。

この作品は始まってちょうど1年で、現在までに11号、TPBは2巻まで発売されており、私はまだ1巻分5号までしか読んでいません。あの人にはいったい何があったの?とか、最後に出てきたあの人のあの話ってどういうことなの?などとかなり気になるのですが、とりあえずは続きは完結を待って読みたいなあ、と思っております。たぶん1年後ぐらいではないかと。それ以降も長く続くシリーズになりそうならその辺で一旦区切りまで読もうかなあなどという予定です。この先どう言った展開になって行くのか本当に楽しみにしているので、先を読んだ人がいても絶対に私には話さないでくださいね!

というところで話はまた最初に戻るのだけど、ここのところのImage Comicsもずいぶん勢いがあるようで、どんどん出てくる気になるシリーズは早く読んでさわりの部分だけでも書いていきたいなあと思っております。とりあえずの私の注目作は、タイトルからして心惹かれる『Southern Bastards』や気鋭の女流作家の最新作『Bitch Planet』といったあたりで、この辺についてはなるべく早く読んでこのブログにも登場してくる予定です。とか言っている一方で、グラント・モリソン+Darick Robertsonなどという組み合わせでもったいなくてなかなか手を付けられないでいるうちに、もうちょっと旧作になってしまった『Happy!』なんかも早く何とかしたいな、と色々悩ましいところですがなんとか頑張りますのでまたよろしく。

Joshua Williamsonホームページ


●Nailbiter



●Ghosted


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2015年4月26日日曜日

The St. Paul Conspiracy -刑事McRyanシリーズ第2作-

以前時系列的には最初の作品となる中編『First Case』を読んでの感想で、ちょっと自分的にも中途半端で歯切れの悪い感じになってしまって、なるべく早く長編の方を読む、と言っていたRoger Stelljesの刑事McRyanシリーズ第1長編『The St. Paul Conspiracy』をやっと読みました。時系列的には2番目になりますが、書かれたのはこちらが先で、Roger Stelljesのデビュー作です。

では前回の繰り返しになりますが、まずはMcRyanのキャラクターから紹介しましょう。

Michael McKenzie "Mac" McRyanは、ミネソタ州セント・ポール警察の殺人課の刑事である。彼の家系は代々の警察官一家。亡くなった彼の父親も、有能な殺人課の刑事だった。彼自身は、ハイスクール時代のホッケー選手としての活躍が認められミネソタ大学に進学しさらにロースクールへ、と弁護士への道を進む。同じく弁護士を目指す大学時代の恋人とも結婚、大手弁護士事務所への就職も決まったある日、やはり警察官になっていた2人のいとこの殉職の悲報が届く。Macは自分の進むべき道に気付き、弁護士への道を捨て、故郷セント・ポールに戻り警察官への道を進み始める。

…と、前回の文章を丸々コピーですが、その後、弁護士という成功の道を捨て警察官になったことに不満を持つ妻とは離婚することになり、その経緯は『First Case』の中で描かれます。セント・ポールはミネソタ州の政治の中心地であり、今作からはそちらも大きく関わってくるようになります。


ハロウィンの夜、TVの人気女性レポーターが自宅で絞殺される。翌朝発見者のハウスキーパーの通報を受け、McRyanは現場へ急行する。折りしもセント・ポール市内では連続レイプ絞殺魔による犯行が続いており、犯人逮捕にこぎつけられない警察への行政、マスコミからの圧力は高まっていた。なんとか実績を挙げたいと願う市警察上層部は、まだ若手ながらその能力を大きく評価するMcRyanに事件を担当させることを決定する。

捜査を始めたMcRyanはすぐに殺害されたレポーターClaire Danelsが、上院議員Mason Johnsonと関係を持っていたことを知る。死亡推定時間のまさにその時、彼がClaireの住居から出てくるところも目撃されていた。政治絡みに拡大して行く事件に、地方検事局などの思惑も複雑に絡み始める。だが、すべての証拠がJonson上院議員を指す中、McRyanは微かな違和感を感じ始めていた…。

そんなMcRyanたちの捜査を影から覗ういくつかの目があった。謎の”ボス”の指示で動くコードネーム”毒蛇”ら数人のグループ。実はすべての犯行は彼らの手によるものだった。彼らの目的は何か?そして、その背後でいかなる陰謀が進行しているのか?


まず、私はこの本を楽しく読んで、キャラクターなども結構気に入っているということは最初に書いておきます。どうもちょっと否定的なことを書いたり、否定的ととられかねないような文が続いたりしますので。
まずは少し気になったことから始めると、あらすじ紹介の中でネタバレに見えるようなことを書いてしまっていると思った人もいるかもしれませんが、実はこの作品、まず冒頭で謎の”毒蛇”がClaireを殺害する犯行の様子から書かれていて読者にはあらかじめこの事件が上院議員の手によるものではないことが示されているのですよね。こういう主人公の視点と別に謎の犯人の視点が交互に出てくるという手法はよく見られるのですが、これが効果的なのは主人公、あるいはメインのストーリーがその犯人を素性・所在は分からないままでもきちんと追っている場合や、あるいは最初はまったく関係ないように見えて次第につながりが見えてきてどこでその流れが主人公のストーリーと交錯するのか、と思わせる場合などがあると思うのですが、この作品ではそれがうまく作用していないように思われます。この作品では、その後も度々”毒蛇”が暗躍するのですが、かなり後半になるまで捜査当局はそのような存在がいることに全く気付かないという状態で進み、それが逆にサスペンスを削ぐような形になってしまっています。ストーリー自体の欠陥というよりは、その手法を選択してしまったゆえの結果で、そこは少し残念に思いました。
それからこれはそれほどの欠点というほどのものではないのですが、暗躍する”毒蛇”はずっとあるものを捜索しているという状況が続くのですが、作者Roger Stelljesは多分長年のミステリー小説・ドラマなどのファンなのでしょうが、サービスとしてのルールに忠実で、その隠し場所は割と最初の方から示されていたりするのですが、あまり引っ張られるとしまいには「志村!うしろ!」みたいな気分になってきてしまいます。まあこの辺はデビュー作ゆえの愛嬌と見るべきでしょうね。

そんなわけで序盤辺りは少し乗りにくい感じはあるのですが、中盤もう一つの事件連続レイプ絞殺魔をMcRyanを中心とする刑事たちが追いつめてゆく辺りはかなり読みごたえがありました。また、終盤の映画やTVドラマを思わせるような追撃シーンはスピード感もあり迫力満点でした。全体的にはとても楽しく読めた小説でした。

このシリーズ、感想の中でもちょっとその方向で書いていたように、ハードボイルドといっても「チャンドラーの衣鉢を継ぐ」などというよりは、TVとかで見た刑事探偵ものみたいなのを書きたいなあという方向の作品だと思います。でも私はそういうのが悪いとは全然思わなくて、そういう観念的なことは団塊世代の気難しがり屋先生あたりがどっかで勝手に踏ん張っていればいいので、こっちとしてはむしろコジャックやジム・ロックフォードやナッシュ・ブリッジスや工藤俊作の衣鉢を継ぐシリーズがどんどん出てきて楽しませてくれるといいなと思うのですよね。この小説はTVドラマのように、悪い奴らがすべて綺麗に一掃されて終わります。最後にかっこいいMcRyanのテーマみたいなのが流れるのを思い浮かべながら読み終わるのがいいですね。

この作品は米Amazonのkindle Storeでハードボイルド・ジャンルでも販売されていたので私はハードボイルドとして書きましたが、まあ日本では今はそちらの方が受けが良くてジョー・ネスボのハリー・ホーレあたりでもそのレッテルで出ているわけだし警察小説ということになるでしょう。このMcRyanはボッシュや鮫島のように警察内に敵だらけということはなく、上層部から現場の刑事までみな一丸となって捜査に挑み、今後もパートナーの老Dick Lichを始めとする同僚刑事の面々との楽しいやり取りが続いていくことでしょう。また、この作品から登場する女性検事補Sallyとの恋の行方も楽しみ。と、お約束で書きましたが、まあそういうことに縁のない私ですので本音を言えばそんな場面まで辞書を引きながら読むのはかったるいのでどうでもいいです。この作品中でも少しほのめかされていたようですが、名刑事であったMcRyanの父の死の真相についてもこれから書かれてくると予想されます。あと、弁護士である別れた元奥さんも今後敵として再登場するのではないでしょうか。などと今後の展開もいろいろと楽しみなシリーズです。

ミネソタ州在住の作者Roger Stelljesは、その後も本業の弁護士を続けながら昨年7月にはシリーズ第5作『Fatally Bound』をきちんと発表しました。えらいなあ。現在は引き続き次作を執筆中とのことです。前にも書いたけどこのシリーズを読み始めようと思うなら、中編『First Case』とこの『The St. Paul Conspiracy』、次の『Deadly Stillwater』がセットになった『First Deadly Conspiracy Box Set』がお得ですよ。

Roger Stelljes公式ホームページ


●関連記事

First Case -警察ハードボイルドMcRyanシリーズ-

●McRyanシリーズ



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2015年4月19日日曜日

Valiant その3 -Archer & Armstrong-

その2をやったのがいつだろうと見てみたら去年の10月…。なんとか続けようという意思だけはあるので気長に見守ってやってください。しかしなんとかもう少し頑張らなければ…。

というわけでValiantその3はこちら『Archer & Armstrong』となります。新生Valiantから2012年5月にまず『X-O Manowar』がリリースされ、6月に『Harbinger』、7月に『Bloodshot』、そして続いて8月に4番目の作品として出たのがこの『Archer & Armstrong』です。


少年は今日、生まれ育ち、自分を鍛えてくれた施設から旅立つ。父、母、そして兄弟たちに祝福されて。少年の名はArcher。彼は、産まれてから今日まで信じてきた教義のために、そして自分を育ててくれた教団のために、ある栄光ある任務を果たすために旅立つのだ。その任務とはある男の暗殺…。

初めて見る大都会に戸惑いながら探索を始めるArcher。出立前に手渡された”聖なる遺物”が指示された地区に入るにつれ輝きを増し、ある酒場へと彼を導く。混雑した店内に入ると、遺物はさらに輝きを増し、ある方向に向かって光を伸ばす。その先にいる人物を標的と見做し、襲い掛かるArcher。店内はたちまち混乱に。優れた身体能力で戦うArcherだったが多勢に無勢。その時、店内にいた巨漢が加勢に入る。騒ぎが収まり再びArcherが遺物を出してみると、実は光が指していたのはその巨漢。彼こそが標的の男、Armstrongだったのだ。

今こそ聖なる任務を果たすとき、と勇んで戦いに臨むArcher。だが、その時店内にガスが放り込まれ、2人はともに意識を失いマスクをかぶった謎の集団に連れ去られる…。

Archerが目を覚ますと、そこは謎の建物の中の一室、壁に鎖で縛られたArmstrongとともに監禁されていた。室外に脱出したArcherが見たものは異様な獣の仮面をかぶった者たちによるセレモニー。そして、彼らとTV画面を通じて話す両親の姿だった…。

Armstrongは、遥かな太古、強大な力を得られるが世界のバランスを崩す危険な装置Boonの発動を阻止しようとして、それに巻き込まれ、不死人となった男だった。以来彼は、その力を得ようとする様々なものの手からBoonを守りながら、1万年以上の時を生きてきている。そして、今また、Archerを育てた危険なカルト教団がその力に手を伸ばしてきている…。

自分を育ててきた教団の真実を知り、絶望するArcher。ただ生贄にされる時を待つばかりとなっていたその時、まばゆく光る天使が現れ、彼に告げる。「Armstrongを助けるのだ!」再び力を取り戻すArcher。そこに自力で脱出したArmstrongも現れる…。

こうしてこの奇妙な二人組の冒険が始まる!


1万年以上を生きる不死者ではあるのだけど、見た目も中身もいい加減な太鼓腹の酔っ払い親爺であるArmstrongとひたすら生真面目な少年Archerという非常にわかりやすくボケとツッコミを配した形のコメディタッチのストーリー。ライターを務めるのはFred Van Lente。2005年にRyan DunlaveyとともにEvil Twin Comicsを立ち上げ、代表作でもあるノンフィクションコミックAction Philosopherを発表するとともに、同年頃からマーベルでライターとして仕事を始め、数多くの作品を手掛けています。映画化された『Cowboys & Aliens』の作者でもあります。要注目ライターのひとりであり、できれば少し他の作品も読んでから望みたかったところもあるのですが、ちょっとそこまでの余力がありませんでした。それ程片手間では済まなくてある程度腰を据えて読まねばぐらいのライターでもあるわけで。いずれまた他の作品について書くときも遠からず来ると思いますので。しかし後でも出てくるのだけど今回は色々足りないところも多かったりするのですが、とにかくあとから補完するつもりででもやらないとさっぱり前に進まないものなので。とりあえず、この作品に関しては、コメディタッチを基調としながらも時には少し複雑だったりもするストーリーを非常にテンポよく読ませる並々ならぬ実力を感じさせるライターです。最近の仕事はValiantとDark Horseが中心のようで、David LaphamとかスゥイアジンスキーとかもあるしDark Horseももっと頑張って読まなければ。
立ち上げ時の作画はClayton Henry。ジャマイカ生まれのアメリカ育ちで2000年頃から主にマーベルで活躍してきたアーティストのようです。正確なデッサンときれいなラインで迫力のある動きを描きつつ、細かい動作や表情なども丁寧に描く実力のあるアーティストです。ちょっと下世話な話になってしまうけど、こうやって新生立ち上げ時からValiantが実力のあるライター、アーティストをガンガン起用して来るのを見ていると、やっぱり今のアメコミって映画やらデジタルやらで結構バブルなのかな、と改めて実感したり。それでこういうのも必然的にいずれは収束するのかなあ、なんて思ってしまったりもするけど、まあとりあえずは今そういう時に色々なものを読めることを幸いと思っていればいいかな。それまで生きてるかもわかんないですしね。

この主人公のひとりArmstrongには弟がいます。というか実は3兄弟です。第1号の冒頭、Armstrongが不死でなかった太古の昔、死んでしまった末弟のGiladを生き返らせるために長兄のIvarがBoonを起動させ…というところからこの物語は始まります。そしてこの弟Giladもまた生き返って不死者となっており、それが『Eternai Warrior』の主人公なのです。そんなわけでその2で次はArcher & ArmstrongとEternal Warriorでやりま~す、などとうっかり書いてしまったのですが、実はまだその本編の方を読んでいません。というのは私がこのValiantの色々なシリーズを横並びにモタモタ読んでいてまだ『Eternal Warrior』が発行される時点まで辿り着いていないからなのです。だってそれぞれのつながりとか結構あるからちゃんと横並びに読まないとねえ。もっと早く読めよ、という話ですが…。
さて、そのEternal Warrior/Giladですが、この『Archer & Armstrong』5号からの第2シリーズで自身のシリーズより一足先に登場します。兄Armstrongとは正反対の生真面目、剛直、一本気な性格で、会った途端見つけたぞこの野郎!と兄弟喧嘩になります。不死者同士の兄弟喧嘩なのでほぼ普通の殺し合いレベルになってしまうのですが。その後は彼らのまた一つの目的であるGeomancerを守りながらカルト教団Nullとの対決に共闘するという展開になります。先の横並び問題で、この『Archer & Armstrong』は今のところ他の作品のラインからは少し離れているようなのですが、この展開の中でArcherが『Bloodshot』『Harbinger』と因縁の深いプロジェクト・ライジング・スピリットとも関係があるらしいことがちらっとほのめかされたりもします。

ここで旧『Archer & Armstrong』の話となるのですが、実はまだそちらも読んでいません…。というのは、実はこちらでも同じく横並び問題が発生してしまいまして…。旧『Archer & Armstrong』と『Eternal Warrior』は同時に始まっているのですが、それがUnityというイベントの中で、先行する『X-O Manowar』『Harbinger』『Shadowman』あたりと繋がっているという事情なのです。まあ、Unity自体はComixologyでも出ていないのもあるので現時点ではちゃんと読むのは困難なのですが、どうせ繋がるならここで横並びにしておこうかと。そんなわけで先行作品を読むのが遅れているのでちょっとまだ手を付けられないということになっております。申し訳ない。
ただ、後から出た前日譚0号はあまり関係ないのでそれだけは読んでみたのですが、それによると、Archerは牧師夫妻の息子として生まれた信心深い生真面目な少年だったのですが、ある日両親の堕落した悪魔的な秘密を知ってしまい、そのことにより両親の手を逃れ、海を渡ってチベットで修業を積み優れた戦闘能力を身に付け帰ってくるのですが、両親はすでに投獄されており目的を失って街をさまよっているときArmstrongとカルト教団の戦いに巻き込まれる、という形で二人が出会うという設定になっています。少し見た限りでは、旧Armstrongは現在のものより少し毒がある感じのキャラクターに見えます。

というわけで今回は何かと欠落の多いことになってしまったのですが、それよりもまずの反省点はこれほど間が空いてしまったことで、とにかく何よりどんどん先へ進めて行くことを考えるべきだと思っております。しかし、その他にも少しまとめて整理してみると自分で見落としていたことも多くて、3兄弟で下の2人が不死者になったのなら長兄Ivarはどうなったの?と今更気付いたり。あっ、最近始まった『Ivar, Timewalker』っていうのがそれなのかな?その1で少し解説してからずいぶん時間が経ち、現行Valiantもずいぶん様変わりしているようなのですが、今の時点では私もよくわかっていなくて、なんとか追っかけながら説明していければいいな、と思っています。今月からはJeff Lemireによる『Bloodshot : Reborn』も始まっていて、しかしJeff Lemireと言えばマーベルのHawkeyeも始まったようだしどこまで大物になるのだろう、早くきちんと追っかけなければ、などと今回は宿題ばかりがたまって行く感じになってしまいました。なんにしても次はなるべく間を空けず早くやって行くつもりです。次回その4は『Shadowman』!いろいろ頑張って行こうという気持ちを込めて、今回はこの言葉で締めようと思います。

つづく!



Fred Van Lente >>writer at large

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Valiant その1 -X-O ManowarとHarbinger-

Valiant その2 -Bloodshot-


●Archer & Armstrong


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2015年4月12日日曜日

The Drifter Detective -流れ者探偵登場!-

Beat To a Pulpから何か読もうと思って、同名のアンソロジーにしようかとも思ったのですが、あまり定期的に出ているようではないので、いくつか出ているこちらのシリーズにしました。Garnett Elliott作The Drifter Detectiveシリーズです。短篇のシリーズなので、第1作『The Drifter Detective』と第2作『Hell Up in Houston』を続けて読んでみました。合わせて100ページぐらいになります。

ではそのThe Drifter Detective 流れ者探偵とは何者なのか?

第2次大戦から帰還したJack Laramieは、私立探偵免許を取ったものの大きい街ではすでにでかい探偵社が仕切っていて商売の余地が無い。そこでポンコツのデソトで時には寝床ともなる空の厩車を引き、あちこちで仕事を見つけながら自分に合った街を探して渡り歩いている。

という男。さて、言われてみればありそうで無かったこの流れ者探偵、どんな活躍を見せてくれるのか?

The Drifter Detective : 2013年
田舎の農場主の問題を解決し、いくらかの報酬を得て、さて、もっと割のいい仕事はないものかと次の町へ向かうJack。だがいくらも進まないうちにポンコツのデソトが音を上げる。今度のはちょっと深刻でしばらくはこの人口3ケタの小さな町で足止めを食いそうだ。よそ者を胡散臭い目で見る連中を気にしながら町の酒場に座っていると、何やら一癖ありそうな保安官が現れる。Jackが探偵だと聞いて仕事の話を持ちかけてくる。石油を掘り当てて富豪となった大農場主が先住民相手の酒の密売にも手を拡げているらしいので調べてほしいとの話だ。早速張り込みを始めたJackだったが、よくよく話を聞くと近くに居留地も無くどうにも怪しい話に見えてくる。そのうち、農場主の身持ちの悪い若い女房も町に現れて…。

Hell Up In Houston : 2013年
依頼された家出娘を見つけてみると、どうも話が違う。金を突っ返してやろうかと依頼主の許へ戻る道すがら、またしてもデソトがいうことを聞かなくなる。今度は場所が悪い。ヒューストンだ。この街を仕切るLameauxからは今度ここで商売をしてるのを見つけたら命はないと言い渡されている。しかし、頼みのデソトが動けるようになるまではここに足止めだ。ホテルに部屋を取り眠っていると部屋に入り込んだ妙な男に起こされた。Frank Grogan、このホテルの探偵。Jackが探偵だと聞きつけ、休みを取りたいので1週間代わりにこのホテルの探偵を務めてくれないか、と持ちかけてくる。ホテルの探偵なんて世界一のんきで簡単な仕事だ、などと調子のいいことを並べる男。車の修理代も困っていたところ。引き受けたJackだったが、たちまちあちこちから厄介な問題が起こり始める…。


時代は第2次大戦後、朝鮮戦争の前のようなので1940年代後半と思われます。舞台は南部。レビューでジム・トンプスンを思わせる、というのもあるのですが、まさにそんな感じで、『ポップ1280』とかの狂気の方向よりも、『ゲッタウェイ』や『グリフターズ』や短篇あたりの腹の読めないしたたかな悪党が渡り合うような感じのノワール色の強いハードボイルド。ちょっと1人称っぽいノリであらすじを書いてしまいましたが、実際には3人称なのですが、常に主人公Jack Laramieの視点に沿って書かれている形です。現在第5作まで出ていて、最初に短篇のシリーズと書きましたが、この先は100~120ページぐらいに増えていき、中編のシリーズと言った方が妥当なのかもしれません。いずれはもう少しボリュームのある長編も書かれることもあるのかも。主人公Jack Laramieが愛車(?)デソトで引いている厩車は時々そこで寝る以外使い道は無いように見えるのですが、今後その由来なども明らかになって行くのでしょうか。なんにしても今後も楽しみに注目していきたいシリーズです。


作者Garnett Elliottはアリゾナ在住で、Beat To a Pulpからこのシリーズの他にSF作品も出版しているほか、『Thuglit』『Blood & Tacos』などのアンソロジーやウェブジンなどに多数の作品を発表している作家です。作家以外には退役軍人のPTSDセラピストという顔もあるそうです。見た目もなかなかタフな感じ。
毎度おなじみ『All Due Respect』にも「disability, inc.」という作品が掲載されています。悪徳精神科医のおかげで懲役を免れている犯罪者たちが、その医者からある仕事を頼まれるが…。The Drifter Detectiveシリーズとも共通する、ユーモアを含みながらかなりダークな感じの語り口のノワールです。

さて、このThe Drifter Detectiveシリーズ現在のところ5作出ているのですが

 1. The Drifter Detective : 2013
 2. Hell Up in Houston : 2013
 3. The Girls of Bunker Pines : 2014
 4. Wide Spot in the Road : 2014
 5. Dinero Del Mar : 2014

このうち第4作Wide Spot in the Roadを1990年に文春文庫からジョー・ハニバルシリーズ『燃える季節』の翻訳があるウェイン・D・ダンディーが手掛けています。ウェイン・D・ダンディーもBeat To a Pulpから作品を発表していて、現在は主にウェスタンを書いているようです。こちらの方もいずれは読んでみたいと思っています。ジョー・ハニバル物も続きが読みたいのだけど、こちらは現在Kindle版はアメリカ国内のみの販売となっています。なんとかならないかなあ。

Beat To a Pulpは現在も続くウェブジン発のパブリッシャーです。同名アンソロジーの他に主にハードボイルド/ノワールとウェスタンを出していますが、それ以外にもSF、ホラーなどもっと広くPulpというジャンルでの出版活動を考えているパブリッシャーです。まだそれほど出版点数は多くありませんが、最近でもAll Due RespectのChiris Rhatiganの作品や、Eric Beetnerのタイトル通り7分冊で発表された後1冊にまとめられた『The Year I Died Seven Times』など、気を引かれる作品の並ぶ今後の活躍が期待される要注目のパブリッシャーの一つです。

Beat To a Pulp



●The Drifter Detectiveシリーズ


●Garnett Elliottの著作


●Beat To a Pulp




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2015年4月5日日曜日

Ferals -David Laphamの超バイオレンス・ホラー・コミック!-

なんか結構前から予告だけしていたDavid Lapham、やっとの登場となりました。Avatar Pressからの18禁指定ハードバイオレンス・ウェアウルフ・ホラー『Ferals』です。
全18話からなるこの作品、6話ずつの3部構成になっており、まずはそれに沿って順にあらすじを紹介して行きます。

【第1部】
 ミネソタ州レイクカウンティの人口482人の小さな町サイプレスで陰惨な殺人事件が起こる。保安官補Dale Chesnuttの友人Markのトレーラーハウスが現場で、血だらけの室内には彼のものと思われる片腕だけが残されていた。後にMarkは近くの山上で身体をズタズタに引き裂かれ腸を引きずり出されたうえ、性器を口に押し込まれるという凄惨な姿で発見される。
陰惨かつ不可解な事件に苛立つChesnuttは、その夜町のバーで奇妙な北欧系の美女に出会う。女の名はGerda。急速に彼女に魅かれて行くChesnuttはバーのトイレで彼女に求められるまま暴力的に交わる。

その夜、Chesnuttは、更にMarkの別れた妻Jackieの許で一夜を過ごす。翌朝、外からの物音に庭に出たJackieに巨大な獣人が襲い掛かる。遅れてChesnuttが駆け付けた時にはすでにJackieはMark同様四肢を引きちぎられてこと切れていた。続いてChesnuttに襲い掛かる獣人。Chesnuttは一撃のもとに打ちのめされる。しかし、騒ぎを聞きつけ銃を手に駆けつけた隣人により獣人は追い払われChesnuttは一命を取り留める。

重傷を負いヘリで移送された先の病院で目覚めたChesnuttは、謎の美女Gerdaも同様の手口で殺害されていたことを知る。そしてその容疑が自分に向けられていることも。自分で事件を解決し、復讐を果たすためChesnuttは病院を抜け出す。
町に戻り、自力で捜査を始めたChesnuttだったが、やがて逮捕され町の留置場に拘留される。そこに再び獣人が現れ、保安官事務所に襲い掛かる。混乱の中、獣人をやり過ごし逃亡するChesnutt。山中を逃げながら、彼は自分の身体が変化していることに気付く。あれほどの重症が早くも治癒し始め、手の爪が堅く鋭く伸び始めている。まるで凶器のように。自分に何が起こったのか?
執拗に追撃する獣人を遂にChesnuttは返り討ちにする。そして、一連の事件の手掛かりと、更なる復讐を求め、彼はGerdaが口にした町、Bergenに向かう…。

一方、獣人の出現で混乱の最中にある町に、2人のFBI捜査官が現れる。まっすぐ遺体安置所へ向かった彼らはGerdaの遺体から子宮を摘出し、いずこかへ向けて送り出す…。


最初の舞台となるChesnuttが保安官補を務める町は、ツイン・ピークスみたいな田舎町です。ちょっと第1部に関してはほとんどネタバレになってしまうのですが、先に進めるためにストーリーの展開とともに明らかになる色々な設定をここで解説してしまいます。
GerdaがやってきたBergenという町は北欧からの血統の子孫である狼人間の一族が隠れ住む町でした。Gerdaはその中で問題を起こし、逃亡してChesnuttの住む町に現れたのでした。彼ら狼人間たちは基本的には遺伝で受け継がれて行きますが、希少な種族のためもう一つ血族を増やす方法を持っています。それは一族の女性と性交すると感染という形で相手を狼人間に変える能力です。Gerdaは一族からの追手がかかることを予期していたので自分を守るための人間を求めていて、最初に選んだのがその結果獣人に惨殺されたMarkだったのです。そしてGerdaが次に選んだのがChesnuttで、こうして彼は狼人間に変化しながら事態に巻き込まれて行くことになります。
追手の獣人ですが、これは一族の人間がその獣人の血を飲むことで変身した姿なのですが、この変身は不可逆で、一旦獣人に変わったら元の姿に戻ることはできず、強力な力は得られますが人間性を失ったモンスターと化します。
狼人間に変化した者は常人に比べ力も強くなり凶暴性が増すのですが、この主人公Dale Chesnuttは元々ちょっとヤバイ性格の人で、それが更に凶暴化しBergenに乗り込んでいって町の一族と対決します。結果またしても危機に陥るのですが、秘かに捜査を進めていた2人のFBIが現れ、救出されます。

【第2部】
 FBIに救出されたChesnuttだったが、その結果半ば強制的に、米国内に他にも多く存在する狼人間たちの秘密捜査に協力させられることになる。そして彼は女性捜査官Piaと夫婦を装いワシントン州Green Georgeという狼人間の街へ送り込まれる。山中で彼は獣人軍団を従え、町の住民からも怖れられるある種カリスマ性を持つ人物Rikkardと出会う。Rikkardの暴走が、隠れ住むことで存続してきた一族の存亡にかかわると危惧する町の住民たち。しかし、事態は軍隊を伴った政府の介入へと発展する…。


【第3部】
 軍隊によって封鎖されたGreen George。連れ出された狼人間による恐ろしい人体実験が始まる。事態の拡大に政府はGreen Georgeの住民をカルト・テロリストとして始末しようと動き始める。一方で一族の存亡のため、狼人間の長であるViggoが暗躍し始める。そして、近隣の町に獣人の大軍団が襲い掛かる…。



版元のAvatar Pressは、そもそもはいわゆるバッド・ガール物のコミックを多く出版していたところですが、近年一切の編集サイドの規制を行わないという方針で実力派のライター、アラン・ムーア、ウォーレン・エリス、ガース・エニスなどを呼び寄せ、その作品で頭角を現してきたパブリッシャーです。そしてその中の一人がこのDavid Laphamです。

David Laphamは1990年代初頭から旧Valiant Comicsでペンシラーとしてキャリアを始めます。その後もJim ShooterのDefiant Comicsで仕事をつづけた後、自らのパブリッシャーEl Capitan Comicsを立ち上げ、代表作でありアイズナー賞も受賞した『Stray Bullets』などの自作を自費出版し始めます。しかし、『Stray Bullets』は2005年にIssue 40を持って一旦中断。そして同年頃からマーベル、DCなどでライターとして活躍し始めます。…まあ誰もが考える理由としては、金が無くなったというところでしょうが…。そして、2011年から2013年にかけてAvatar Pressから出版されたのが、この『Ferals』です。

そのような経緯でAvatar Pressから18禁として出版されたということで、内容的にはバイオレンスとセックスの嵐ではありますが、そこはポルノというわけではないので、エロ描写的には日本の大人向け劇画誌ぐらいのものです。作画のGabriel Andradeの画がちょっと劇画調にも見えることもあり、日本のバイオレンス・コミックの金字塔、梶原一騎原作による『カラテ地獄変』あたりをイメージしてもらうのが分かりやすいかと…え、旧くてイメージできない?ゴア描写に関してはかなり過激で、人体を骨ごと引き裂き、内臓を引きずり出すという凄まじい描写が繰り返されます。今どきの日本のマンガ誌ではまず無理な表現です。しかし、見どころはそちらばかりではなく、物語の展開・拡大につれ登場してくる様々な人物の思惑・憎悪が交錯して行くストーリーは、大人向けコミックとして読み応えのある作品に仕上がっています。

まだほかの作品を読んでいないので、とりあえずはこの作品に限っての話になりますが、David Laphamの特徴的な手法として、文字情報に極力ナレーションなどの使用を避け、セリフによって進めて行くというものがあり、これによりこの作品はかなりリーダビリティの高いものになっています。まだほんの冒頭ぐらいしか読んでいないのですが、代表作『Stray Bullets』でも同様の手法が使われているようです。また『Hell Boy』のマイク・ミニョーラのライターとしての近作、『Baltimore』を読んでいて、例えば場面転換の風景のみのコマでライターならばナレーションを入れた方が流れが良くなると考えるようなところを画のみで進めるといったような同様の手法を感じました。やはり両者に共通するペンシラー、アーティスト出身ならではの考え方ではないかなと思います。ただ、一方でそういう経験のないロバート・カークマンも『Walking Dead』で同様の手法を使っているので、もしかするとアメリカのコミックの中でもう少し広がっている考え方なのかもしれません。翻訳のある『Walking Dead』はそのまま日本のマンガと比較すると文字情報が多く感じられますが、英語で読むと他のコミックに比べてかなり早く読めます。しかし実際にはカークマンのコミックは『Invincible』も含めてずいぶんセリフが多くて長いのですが。これが近年の傾向なのかはわかりませんが、私の注目するライターには作画も手掛けた作品から入ってきた人が多いようなので、今後はこの辺にも注意しながら読んでいこうと思っています。

さて、その後最近のDavid Laphamについてですが、2014年に『Stray Bullets』がImage Comicsから発売されることとなり、残りのIssue 41を完成させシリーズを完結させた後、続いて『Stray Bullets:Killers』を全10話、更に今年からは『Stray Bullets:Sunshine & Roses』を開始と、現在はこの作品に注力している様子です。私もやはりDavid Laphamはこれを読まなければ始まらないと思い、やっとで読み始めたところですが、トランクに死体を積んだギャングの車が深夜の路上でパンクするという冒頭からかなり期待できる作品に間違いありません。David laphamの作画に関しても、人物の姿勢や構図からもキャラクターを表現するというような、画の方でもただならぬ実力を感じさせるものです。私的にはすでに例の「もったいないのでおろそかには読めない作品」に指定されてしまったので時間はかかると思われますが、なるべく早く中間報告でもお届けするつもりです。
その他の最近の注目作としては、Dark Horseから昨年『Juice Squeezers』という作画も担当した4話+1のミニシリーズが出ています。ホラー系なのかなと思っていたら最近のDark Horseのデジタル・ショップであったキッズ・コミック・セールに入っていたりもしました。Dark Horseからは他にもギレルモ・デル・トロ/チャック・ホーガンの『Strain』のコミカラゼーションの脚色も手掛けていて、これなんかは原作と読み比べてみると面白いかなと思っていたりもします。

ところでこの『Ferals』なのですが、じつはまだ完結していません。第3部終盤になり話は拡大し盛り上がって行くのですが、Rikardoは姿を消したままだし、Viggoは陰で動くばかりであまり出てこないし、これで終わるのだろうかと思っていると案の定、最後に”To Be Continued in 2014 in Ferals : Unleashed #1”の文字が現れました。2014年とありますが、しかし現在に至るまでまだ続編は描かれていません。David Laphamの方では2014年から『Stray Bullets』が動き始めてしまったので、今はこちらの方に割く余裕が無いのでしょう。しかしここまで持ってきた話なので、いずれまた必ず続きが描かれるだろうと期待しております。それともまたLapham氏がお金に困るのを期待した方がいいのかな?


David Laphamオフィシャルサイト

Avatar Press


●Ferals



●その他のDavid Laphamの作品




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2015年3月29日日曜日

THUGLIT Issue Three

数あるハードボイルド/ノワール系アンソロジーの中でもとにかくこれだけでも読まねばと思っている『Thuglit』なのですが、やっと3冊目か…。なんとかもっと努力せねば。今回は短篇8本プラスTod Robinsonの『Hard Bounce』プレビューの第3回で約140ページ。ちょっとずつページが増えてる感じですね。

[1]The First Day of Hell Week by J. D. Hibbitts
 やっと刑務所から出所したWyatt。2度と中には戻りたくない。まともな暮らしをしようと思う。だが、迎えに来た父親は明らかに盗難車と思われる車に妙な女を乗せて現れる。当然のように息子に元の犯罪者生活を続けさせようとする父親の様子にWyattの苛立ちは募ってくる…。
[2]Redemption by Terrence McCauley
 1980年の夏、交通事故で父を亡くし、当時10歳の少女だった”私”は母とともにニューヨーク郊外に住む祖母の家に滞在していた。毎日家を訪れる母の恋人Charlie。夜毎暴力的にふるまわれても母は彼から離れることができない。祖母は彼の持ってくる酒と煙草で上機嫌。”私”の話を聞いてくれるのは隣人である武骨な老人Mr. Andersonだけだった…。
[3]Red-Eyed Richard by Paul Heatley
 ”赤目”Richardは引退したギャング。母親の死以来溝ができている娘の許に身を寄せているが、あてつけるように夜毎様々な男を引き込む娘の様子にいたたまれず、夜になると行きつけのバーで酔いつぶれている。長年の奉公に報い毎月の心付けを送ってくれていたボスが亡くなった。後を継いだ次のボスである息子はそんな余計なしがらみを断ち切りたいと考え、行きずりのチンピラの犯行に見せかけ”赤目”を始末しようと企む…。
[4]Doing The Job by Hector Acosta
 かつては栄光の時もあったが、今は落ちぶれて人気女子レスラーの引き立て役としてリングに上がる盛りを過ぎたプロレスラーが主人公。唯一自分を慕う若手で実力はあるのだが今ひとつ伸び悩み、リングではゲイ役として不遇をかこっているレスラーから他団体への移籍を持ちかけられる。だが、その条件とは団体が保持しているチャンピオンベルトを盗み出すことだった…。
[5]In The Neighborhood by Ed Kurtz
 いつものバーにいつもの顔が集まり始める。多くは失業中の中年男。仕事があったとしても誇れるようなものじゃない。中の一人が言う。あのベトナムの将軍が男の頭を撃ち抜いている写真を知ってるだろう。あのモールにあるピザ屋の主人のベトナム人がその将軍だ。仲間は連れ立ってそのピザ屋を見に出掛ける。自分たちの住んでいる落ちぶれた地域と対照的な町の明るい顔の側。そして事態は後戻りできない方向に転がり始める…。
[6]Peek-a-Boo by John Hodgkins
 あの女優に間違いない!場末のダイナーで不器用に働く老ウェイトレスは彼が昔に観た映画の主演女優だった。幼い頃、母と何度も観た映画。だがその母とも今は疎遠になっている。父と同じようにギャンブルで破滅して行く彼とは…。
[7]Lucky For Me by Rob Brunet
 バーでこんないい女に巡り合えるとは俺はツイてる。俺のポケットには大金が入っている。だがこれは賭けの胴元に巻き上げられる金だ。早く逃げ出さなければ。このツキが俺から逃げる前に…。
[8]Wakey Wake by Nathan Pettigrew
 Rolandの父が殺された。地元ではちょっとした顔だったやくざ。いつかはこうなる運命だったのだろう。そして、父の葬式には色々な奴らが集まってくる…。

第2集ではやっぱり今ひとつの作品もあるけど…というトーンでしたが、今回第3集はなかなかの粒ぞろいという感じでした。今回一番のビッグネームはSnubnose Pressやホラー方面でもいくつかの著作のある[5]Ed Kurtz。負け犬たちの行き場のない怒りが場違いな暴走をするちょっとニューシネマあたりを思わせるノワール。他にも今回は負け犬特集かというくらい次から次へと後の無い奴らが登場し、私のようなルーザーの心を打つのでした。猫も失くしたしね。屈折した父と娘の愛憎が余韻を残す[3]、元本職のプロレスラーによる[4]、失敗に首まで浸かっているいることを自覚しながら微かな望みを横目で追い続ける[6][7]辺りは特にお気に入り。
現在第16集が刊行中のこのアンソロジー。今年1月から突然の値上げで、1号約2ドルとなりました。何かホームページの方でコメントがあるかと行ってみましたが、予想通りIssue12以降はまだ更新がありませんでした。こっちもちゃんとやれよー。しかしながら出版の方の勢いは衰えず、また差を大きく開かれて、私の読むスピードでは到底追いつけないな、と思いつつ、また知らない作家のいい作品に出会えるのを楽しみに次もなるべく早く読みたいなと思うのでした。

ブログ1周年を迎え、やる気は上がったものの、いろいろ忙しかったり週末用事が重なったりで思うように書けなかったこの3月でした。一時期は肝心の読書時間も削られてしまう始末でしたがなんとか持ち直してきた、と思いたいところ。なんとか来月からは一新し毎週更新を目指して行きたいと思いますので、またよろしく。頑張るのだよ。


●関連記事

ハードボイルド/ノワール系アンソロジーとインディー・パブリッシャー

THUGLIT Issue Two

●Thuglit


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2015年3月21日土曜日

2000AD 2014年夏期 [Prog1888-1899]

前回がずいぶん遅れてしまったので春期から割とすぐになりました、2000AD夏期です。今期のラインナップは以下の通りです。

 Judge Dredd
 Brass Sun [Prog1888-1899]
 Aquila [Prog1890-1899]
 Black Shuck [Prog1891-1899]
 Sinister Dexter [Prog1889-1892]
 Jaegir [Prog1893-1898]


またかと言われそうですが、今期のトップ画像は私的には待望の『Brass Sun』であります。これ本当に好きなんですよねえ。そして今期の特徴としてはもはやお馴染みになってしまった「巨匠Pat Millsの代表作の一つ」がありません。Mills先生夏休みです。あと、今期はほとんど一度は登場した作品なので比較的楽に進められるのではないかと。



Judge Dredd

 1. The Heart Is a Lonely Klegg Hunter : Rob Williams/Chris Weston (Part1-2)
 2. Student Bodies : John Wagner/Boo Cook (Part1-2)
 3. A Night In Sylvia Plath : John Wagner/Colin Macneil (Part1-2)
 4. Cascade : Michael Carroll/Paul Marshall (Part1-6)

今期のJudge Dreddは前半が各2話からなる軽めのストーリーで、後半が全6話のCascadeという構成になっています。そのうち、1と3は昔のキャラが再登場するコメディ・タッチの話です。
1はかつて事件解決に協力した功績によりMega-City Oneでの居住を許可されている見かけは2足歩行の巨大な鰐のように恐ろしげだが心は優しく少女小説のファンの宇宙人Kleggが賞金を懸けられハンターたちに追い回されるという話。KleggというのはJudge Dreddのかなり初期の「The Day the Low Died」(Complete Case File 2に収録)から登場する宇宙の傭兵種族で基本的にはかなり獰猛です。
3は金に困ったセールスマンがMega-City Oneで怖れられるJudge Deathの変装で押し込み強盗を働くというのがメインのストーリーです。この回にはJudge Dreddの初期からDreddに仕えていたロボットのWalterが登場します。Rが発音できず全部Wになっている舌足らずで喋りまくる(例:Dredd→Dwedd)大変キュートなキャラクターで、初期の少しを読み始めたばかりで間がスッポリ抜けている読者の私は、どこかの時点で悲しい別れがあるのだろうかと気になっていたのですが、健在で何よりです。しかしかなりの久しぶりのようでポンコツ化していて自分のことを認識できずに訳の分からないことを昔ながらの様子で喋りまくるWalterにDreddも思わず苦笑するシーンもあります。画像の中段がWalterで現在は手前のMrs. Gudersonという老婦人の世話をしていて、この人もかなりボケてぶっ飛んだキャラクターです。どうも本物のJudge Deathとも関わりがあるようなのですがその辺はよくわかりませんでした。Judge Deathは私が今読んでるComplete Case File 3の後半で初登場するようなので、いずれWalterともどももう少し詳しく書くつもりです。
2は大学に進学した姿は醜いが生真面目で向学心の高いミュータントの青年が行方不明になるという事件をDreddが調査するうちに学友会のいじめが関わっているらしいことが浮かび上がってくる。その中心人物であった学生が逃走しようとして大事故に遭い、一方でミュータントは発見された時には死亡し、その学生の脳はミュータントの身体に移植されその後の人生はその姿で生きなくてはならなくなる、というJohn Wagnerによるちょっと教訓的な話。
4は冒頭、現代に近い時代の地球から飛び立った女性宇宙飛行士がDreddの時代のMega-City Oneに帰還するというところから始まり、現代の眼から警察国家になっているMega-City Oneについて批判的考察を与える、という展開なのかと思っていたら一転し、実はその女性宇宙飛行士は地球のJudgeとよく似た体制ではあるがさらに強力な法による厳しい統制で宇宙の多くの種族を支配するLowlordsの支配下にあり、旧時代の衛星兵器を操作し、Mega-City Oneを脅威に陥れるという話。6話構成でこの年の『Judge Dredd』という視点で見ても結構な大作ではあったのですが、ちょっと絵の方の問題で迫力不足に終わってしまった感じ。Paul Marshallはよく見るアーティストで画が下手というほどではないのですが、決め画となると大抵は真正面の画を使ってしまうというような凡庸な描き手だったりもするので、ストーリーのポテンシャルまで画を持っていけなかったかなあ、という感じで少し残念な結果になってしまった印象です。絵の良し悪しは単純にデッサン力などで決められるものではないけど、どういう形でもストーリーに見合った表現力は要求されるものだと思います。

Brass Sun/Floating World

 Ian Edginton/I. N. J. Culbard
待望の第3シーズン!これまでのストーリーについてはBrass Sun Issue One -英SF-クロックパンク・コミック-と2000AD 2013年秋期 [Prog1850-1861,2014] をお読みください。と、やっとこういうやり方が使えるようになってきたよ。かつての動乱後荒廃した地面の無い世界Floating Worldに到着後、捕獲され後に女船長Ar>ielとともに脱出したWrenたち。あ、Arielは前に勢いで女海賊などと書いてしまいましたが、この星の通商ギルドから追放されている有能だがちょっとやくざな女船長というところでした。それから6か月、Wrenちゃんの髪形も変わった。彼女らの飛行艇は再びギルドの有力者Peiによって捕獲される。PeiはArielに彼女の船以外が生還したことのない危険地帯から伝説のGaseous Crayを持ち帰ることと引き換えに彼女のギルドでの地位を復活させるという話を持ちかける。拒否すればその場で全員殺されるだけなのだが…。Gaseouse Clayとは大災害の時のガスが長期間と特殊な環境下で粘土状に変化したもので万能薬になると言われるもの。Peiは死に瀕している自分の愛娘を救うためにそれを求めていたのだった。前シーズンに発見した「祖父の本」を脳にインストールしたことにより新たな知識と能力を得たWrenはそのPeiの娘の中にこの世界を救うための鍵の一つがあることに気付く。そして、Wrenたちは新たな危険な冒険に乗り出す!
今回、Wrenが襲われたクリーチャーの毒により生命の危機に陥り、そのさなかで意識内の世界でカート・ヴォネガットの姿を借りて現れた「祖父の本」の中のこの奇妙な世界の創造者と出会い、元は地球が属する宇宙だったこの世界がこのように姿を変えた秘密の一端を明かされます。また、ずっと役立たずだった男(名前を忘れた…)が後半意外な活躍をし、そのうえ船長Arielともいつの間にか深い仲になっており、シーズン最後にはWrenとSeptimusは二人と別れ新たな惑星へ向かう、という展開で次シーズンへ。
この作品2000AD誌上でずいぶん人気も高いようで、四半期間の最初の号は大抵はJudge Dreddかいくつかの作品を並べたものだったりするのが今期Prog1888のカバーは上の『Brass Sun』単独のものになっています。またこの作品から始まった連載5~6回分30ページぐらいをまとめてアメコミ風のIssueのような形で単独で出すという方式も成功を収めたようで、この先いくつかの作品もこの形で単行本に先行して出される予定になっているようです。また、ちょっと不確定な情報で申し訳ないのですが、少し前に2000ADのAPPストア内で、この『Brass Sun』のIssue Oneがフリーになっていて、私はKindle版を買っていたのでダウンロードしておいたのですが、入手してしまうと値段のボタンが変わってしまうので、期間限定だったのか今でもフリーなのかちょっとわかりません。気になる人は2000ADAPPストア内の2000AD Specials内を見てみてください。2000ADAPPは最近Android版も出たようですね。


Aquila/Carnifex

 Gordon Rennie/Leigh Gallager
超自然的な力により意味も分からず死から蘇らされ、不死身の肉体を与えられた狂戦士が登場するローマを舞台としたハードコア・バイオレンス・コミック!こちらもこれまでのストーリーは2000AD 2013年秋期 [Prog1850-1861,2014] の方を参照してください。前シーズンの最後で皇帝ネロに捕獲されたAquilaは、ネロが神となるために7つの宗教の僧侶の首を集めるように命じられ、ローマのあちこちの神殿で殺戮を繰り広げる。一方ローマの神官Triscusはネロの意図を察知し動乱を怖れローマ脱出を図るが皇帝の命により叶わず残るキリスト教の僧侶を助けネロの意図を挫くよう試みる。容易にTriscusたちを追いつめたAquilaだったが、自己の存在理由を見いだせない彼を唯一導く空の黒鳥がその僧侶を生かしておくように告げるのを感じ、秘かにTrisucusと協力する行動をとり始める…。
自分がなぜ生かされているのかという理由を見いだせないまま善も悪もなく目の前に立ちふさがるものが兵士であろうが恐るべきモンスターであろうがひたすら凄まじい戦いを続けるAquilaのキャラクター、そして既存の歴史の陰で様々な魔物が暗躍するダークなストーリーが素晴らしい。今期もう一人の主役であるTrisucusですが、神官で水の流れなどから予知ができるような人なのですが、あまり威厳などはなく、現代劇にすれば右往左往するばかりの所轄刑事ぐらいのポジションで、そういうキャラクターの配置もなかなかうまいなと思ったりします。私的にも結構気に入っているシリーズなのですが、まだ単行本化もなくどのくらい続いているのかもわからなかったのですが、近々『Brass Sun』と同様にIssueの形でまとめられ始めることが告知されていて、いずれは過去のストーリーも読んでみたいなと思っています。前シーズンから続いたローマ編が決着を見て、次はどういう展開になるのか楽しみにしています。この作品の作画のLeigh Gallagerは前述のPaul Marshallと少し似たタッチの画を描く人ですが、バトルシーンなどの迫力はかなりのものでちょっと腕の違うアーティストだなと思います。

Black Shuck

 Leah Moore, John Reppion/Steve Yeowell
こちらは今期唯一の新シリーズです。中世あたりの時代だと思うけど、とにかく北欧を舞台としたダークファンタジー。王Ivarの治める領土の海岸に一人の男が流れ着く。意識を取り戻した男はBlack Shuckと名乗り、王Ivarの息子であると告げる。半信半疑の王。その時、領土に恐るべき獣人の群れが襲い掛かる。軍隊とともに一際勇猛に戦い獣人を撃退したBlack Shuckは王の息子として認められる。だが、王とその領土には秘密があった。領土を見下ろす山の上の古代の王の墳墓に隠された財宝に手を付けたため、その呪いにより領土は夜毎に獣人たちの襲撃にさらされていたのだった。呪いを解くために山上の墳墓へ一人向かうBlack Shuck。だが、その彼にも隠された秘密があった…。
王と言っても族長ぐらいの感じで、領土も村ぐらいの規模。あまりこういうファンタジー的なものは小説などでも読んでいなかったりするのですが、画で見ると大変わかりやすい。きっと考証などもちゃんとしているのだろうと思われます。ですが、今期の中でこれだけは私的には最後まであまり乗れなかった感じです。Steve Yeowellの画に関してはちょっと色々な意味でメリハリが足りない感じ。日本のマンガを読みなれている眼から見ると、日本でとくに発達している集中線、スピード線などの強調技法が使われない英米のコミックではこういう絵が余計に単調に感じられてしまう。なんだか最近知ったところでは、このSteve Yoewellという人グラント・モリスンとともにあの『Zenith』を描いた人のようですが。ただ、画の責任ばかりではなく、あらすじぐらいにまで分解してみると、ストーリーの方も構成や語り方でもう少し面白くできたのではないかなあとも思ったりもします。とりあえず、ストーリーは一応完結し、続きが描かれるのかは不明です。


Sinister Dexter/Congo

 Dan Abnett/Jake Lynch
今回は2000ADでのカバー絵はナシ。前期からも続いてのお馴染みのシリーズです。この宇宙を崩壊させる危険のある人物Tanenbaumの行方を探す一行は宇宙最大の通販企業Congoの配送センターに潜入し、その顧客データに用意したプログラムを走らせ、Tanenbaumの居所を探ろうと試みる。だがそのデータベースにはすでに何者かの手によりそのプログラムに対抗するプログラムが仕込まれていた。センターから脱出し、隠れ家に戻った彼らの元にその当人からの招待メールが届く。そこで彼らが出会ったのは現在証人保護プログラム中のかつての犯罪者たちのグループだった…。
SinisterとDexterが狙うTanenbaumはギャングのボスで、彼らによって暗殺されたのですが、別次元の同一人物がそこに入れ替わりそれを放置しておくとバランスが崩れこの宇宙が崩壊してしまう危険があるということ。私が読み始めてからやっとその辺の説明があって話が分かりました。とりあえずラストでTanenbaumの居所を掴み、今シーズンは終了で、続きはしばらく先の次シーズンということになります。毎回作画の変わるこのシリーズ、今回も交代しているのですが、前期と割と似たモノクロの少し古い感じのタッチ。逆にこういう絵を描ける人材が良くそれ程いるものだなとと思ったりします。

Jaegir/Circe

 Gordon Rennie/Simon Colby
前シーズンから始まったクールな女性戦争犯罪捜査官Atalia Jaegirが主人公のSFミリタリー・アクション。Jaegirとそのチームは、自ら集めた元犯罪者などで組織された舞台を率いるMabuse大佐の許へ捜索中の犯罪者の情報を得るため訪れる。引き換えにMabuseは自分の部下の部隊が被害に遭っている謎の薬物についての情報を求めるのだが…。
このシリーズ説明が少なかったり少し難解でもしかしたらちょっと間違っていたらすみません。ミリタリー物の会話とかって少し難解ですよね。前期に書いた通りこのシリーズは『Rogue Trooper』という作品のスピンオフというようなもので、今回はそのRogue Trooperが物語に大きく関わってきます。『Rogue Trooper』は1981年から2000AD誌上で長く続いているシリーズです。NortsとSouthersの二つの勢力が戦争を続ける未来世界のストーリーで、その戦場となっているのがNu-Earthと呼ばれる惑星。長く続けられている戦争で双方から容赦なく投入され続けた化学兵器、生物兵器により、兵士は防護服とマスクなしでは行動できなくなっている。そんな環境に合わせSouthersが遺伝子操作により開発した兵士がRogue Trooperと彼の所属する部隊である。だが、その部隊はNu-Earth上陸のまさにその時Nortsの待ち伏せに遭い、集中攻撃により壊滅し、Rogue Trooperはただ一人の生き残りとなる。そして、彼は謎の”任務”のため、味方であるSouthers側の部隊ネットともリンクを断ち、ただ一人Nu-Earth上で作戦行動を続ける。というちょっと小池一夫の孤独な復讐者あたりをも思わせるキャラクターが主人公のシリーズです。まだ最初の数話を読んだぐらいなのですが、ある程度進んで来たらいずれもう少し詳しく書いてみたいと思っています。Nortsに所属するJaegirはNu-Earthの戦場でかつてRogue Trooperと敵として遭遇したことがあり、防護服無しで俊敏に行動し、仲間の兵士のマスクやエアチューブを次々と破壊して行くRogue Trooperの獰猛な戦いぶりは恐るべき恐怖として刻み込まれ彼女のトラウマとなっています。そして自らは肉体を失い脳だけとなっていて必要なときは保存してある兵士たちの死体に接続し行動するMabuse大佐が、秘かに上陸時に壊滅した部隊のRogue Trooperと同じ青い肌を持つ遺伝子改造兵士の死体を保存していて…という展開。また、他にも断片的に語られるJaegirの家族にまつわる過去も気になるところなのですが、ちょっとこちらの方は私も上手くまとめ切れていません。何分情報が多くて説明の少なかったりするシリーズなので。Jaegirは名門軍人一家の出身のようで、察するところ、長く続いているRogue TrooperのSouthers側の敵であるNortsはお馴染みのドイツ軍的設定になっているように思われます。前期、6回のミニシリーズとして描かれtが、反響が大きく本格シリーズ化が始まったこの作品。今回は先に続く大きなストーリーの序章というところでしょう。この先の展開が楽しみなシリーズです。

その他に、2000ADでは連載の合間に色々な読み切りの短篇が掲載されていて、今期その中に今年冬期に『Ulysses Sweet』が今ひとつだったガイ・アダムスがTharg's 3rillersという3回完結の短篇シリーズのライターとして再登場していました。『Voodoo Planet』というグロテスクなSFホラーで今回はなかなか良かったです。単にセリフやモノローグが多いというだけでなく、まず言葉先行で話を作ってしまうという異ジャンルからのライターが陥りがちな欠点も改善されたようで、アメリカ(?)のWebコミックAce Weekly(ちょっとまだ実態を把握してません。すみません)にも作品を発表したりとコミック制作進出にも意欲的なガイ・アダムス氏の今後の活動にも注目してみたいところです。今年冬期の2000ADには『Ulysses Sweet』のもうないと思っていた続編も掲載されているようなので、また様子を報告できるかと。半年後…かな?

ということで2000AD2014年夏期でしたが、簡単に行くかと思いきや思い入れの多い作品も多くて結局結構長くなってしまいました。次回秋期には『Brass Sun』のIan Edgintonのもう一つの進行中のシリーズ『Stickleback』が登場し、Pat Millsも復帰するほか、色々と注目作も登場します。なるべく早く報告できるよう頑張りますです。



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2000AD 2013年秋期 [Prog1850-1861,2014] 

Brass Sun Issue One -英SF-クロックパンク・コミック-

2000AD 2014年冬期 [Prog2014,1862-1873]


2000AD 2014年春期 [Prog1874-1887](前編)

2000AD 2014年春期 [Prog1874-1887](後編)


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