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2015年1月18日日曜日

The Long Midnight Of Barney Thomson -抱腹絶倒!連続殺人鬼コメディ!-

Barney Thomsonはスコットランド、グラスゴーに住む中年の理容師である。いつものように雨降りの陰鬱なグラスゴーの朝、Barneyは長年勤めている床屋に出勤する。

彼の勤める床屋には他に2人の若い理容師がいる。Wullie Hendersonはこの店の現在のオーナーの息子。妻帯者だが、女性にもてて話も上手くこの店の一番の人気の理容師である。Chris Porterは独身者で少しだらしなく遅刻も多いが、調子が良く人と話を合わせるのがうまい男。そして、Barneyは話下手で、しかもこの国の床屋では定番の話となるサッカーの話題にもあまり関心が無い。おまけに年長者ということもあり、店の客は若い二人に集中し、Barneyは店奥の一番悪い椅子を担当させられている。

今日も話のかみ合わないまま一人の客の散髪を終え、送り出したBarneyは順番待ちの客に声をかける。だが、席で待っている大勢の客はいずれも気まずそうにBarneyを拒否する。遂にBarneyの怒りは頂点に達する。

”俺はあの二人のために床屋としての技術まで不当に貶められている!こうなったら奴らを亡き者にするしかない!”

時を同じくし、グラスゴーには謎の連続殺人鬼が跋扈していた。被害者の身体の一部を切り取り家族に送り届けるという残忍な犯人の手掛かりはおろか、殺害された被害者の遺体すら見つかっていない。またしても何の成果もないまま記者会見に臨まなければならなくなったHoldall刑事部長は、つい”犯人についての重要な手がかりが見つかり逮捕は間近だ”と口から出まかせを並べてしまう…。

一方、Barneyは同僚二人の殺害を決意したものの、いざとなるとどうすればいいのか悩むばかり。気弱なBarneyには実際にはそんな度胸も行動力もないのだ。TVドラマ中毒の彼の妻はそんな彼の悩みには全く気付かずTV画面から目を離さず生返事をするばかり。長年のドミノ仲間の親友に思い切って打ち明けると、異常者を見る目で見返され、冗談だとごまかす。だが彼の過激な母親に職場での悩みをもらすと”そんな奴らは頭をぶち割ってやれ!”などとけしかけられる。

そしてまた床屋の一日が終わる。Chrisを先に帰し、Barneyと二人で店の片付けをするWullieは、気まずそうに父親からの申し出としてBarneyにクビを言い渡す。動揺しながらも平静を装い片付けを続けるBarneyだったが、手が震え床に水をこぼしてしまう。罪悪感から手助けに動いたWullieは、その水に足を滑らせ、Barneyが手に持った鋏の上に倒れ込む…。

自分の意思とは全く無関係に殺害計画が達成されてしまった…。だがこの死体をどうすればいいのだ!?


スコットランドのミステリ作家Douglas Lindsayの連続殺人鬼コメディBarney Thomsonシリーズ第1作、『The Long Midnight of Barney Thomson』です。いやはや本当に笑わせてくれた作品なのですが、いざとなるとなかなかその面白さを伝えるのは難しかったり。そこで今回はその一部を少し紹介してみることにしました。Barneyの過激な母親が登場するかなり笑えるシーンです。


 バーニーがフラットに足を踏み入れると、即座に腸をよじる悪臭が襲い掛かった。彼の頭にまず浮かんだグロテスクな想像 - 彼の母親は数日前に突然死し、その身体が腐り始めている!母親の腐った遺体に躓く予感に彼の身体は硬直した、がそんなはずはない。母親とは前夜話したばかりだ。いずれにしてもこのスコットランドの凍てついた3月の気候で、母親の攻殻化した身体がそんなに早く腐るはずがない。 
 キッチンに近付くにつれ悪臭は強まり、彼はここが臭いの元だと確信する。ペースを速めキッチンのドアへ突き進む!
 母親は大きな鍋の前に立ち、沸き立つ赤い液体をかき混ぜていた。エプロンを着け、頭にはヘア・カーラー。彼は臭いの元を探る。あの鍋か?それとも女性がホームパーマの際頭に突き立てる恐ろしげな代物か?いや、間違いない、あの鍋だ!
「母さん…な、なにをやってるんだい?」
 母親は玉の汗の浮かんだ上気した顔を上げ、振り向く。
「見りゃあわかるだろっ!ワインを作ってるんだよ!」
 彼はまだ僅かな理解ながら、新たな認識に目をみはる。たぶんそれですべて説明が付くのかもしれないが、彼には醸造の知識は全く無い。
「こ、これがワインの作り方なのかい…?」
 彼女はかき混ぜる手を止め、腰に手を当て、唇を引き結びバーニーに厳しい視線を向ける。彼女の小鼻が拡がる。彼にはお馴染みの40年間怖れ続けてきた姿に撤退の準備にかかる。
「ああ、よそ様がどうやって作ってるかは知らないが、これがあたしのワインの作り方なんだよっ!とっとと向こうに行ってすわってな!あたしもすぐに行くから!」
 居間でバーニーが脱力して座っていると、すぐに母親も現れソファに腰を下ろし煙草に火をつける。
「な、なんでワインなんて作ってるんだい?母さん…?」
 すべての疑問に答えがあるわけじゃないだろうと肩をすくめ、彼女は言った。
「マーマレードを作るのに十分な砂糖が無かったんだよ!」 


と、まあこんな感じです。力不足で面白さが伝わらなかったら申し訳ない。ちなみに間もずいぶん飛ばしてるし「翻訳」などという御大層なものではありませんが…。
ストーリーの方は序盤はややスローテンポだったりもしますが、その後は次々と巻き起こる予想外の展開に”連続殺人鬼”Barney Thomsonが翻弄されて行く様子は、本当に笑えて楽しませてくれました。果たしてグラスゴーに潜む真の連続殺人鬼とBarneyとにどんな接点がもたらされるかも見どころです。
この作品は以前一時期米Amazon.comのノワール部門にカテゴライズされていたことがあり、私はその時にこの本を知りました。当時は他にシリアルキラーとコメディにもカテゴライズされていて、どんな本だろうかと思っていてやっと読むことができたのですが、期待を裏切らない本当に面白い作品でした。私もこのブログ内ではノワールのラベルを付けていますが、実際にはノワールというよりも、かなりブラックですがイギリスのユーモア・ミステリとかに属する作品ではないかなと思っています。ノワールというと敬遠する人も楽しめる作品なのではないかな、と思います。

このBarney Thomsonシリーズは長編7冊と中編数冊、短編集1冊が出ており、その長編7冊をまとめたボックスセットも販売されています。このクオリティで7冊で(本日2015年1月18日時点で)1200円ちょっとというのはかなりお買い得ではないでしょうか?しかし!、なんとこの『The Long Midnight of Barney Thomson』1冊に関しては現在無料本となっています。ずいぶん長い間無料になっているので当分は無料だと思います。ちなみに、米Amazon.comでKindle本を見ているとアメリカ国内のみで無料というのが多くて悔しい思いをしていたのですが、イギリス発のこの本に関してはアメリカ以外の地域で無料というオプションになっているようです。

作者Douglas Lindsayは1964年スコットランドに産まれ、その後はベルギーなどにも住んだ後、現在はイギリスで奥さんと二人の子供とともに暮らしているそうです。1990年代からこのBarney Thomsonシリーズを執筆しているそうですが、最初の本がいつ出たのかはわかりませんでした。Barney Thomsonの他にはThomas Huttonというキャラクターのシリーズがあり、こちらは同じくグラスゴーを舞台としたダーティーな刑事もののようです。

版元はこのブログでは度々名前の挙がっているBlasted Hath。Anthoney Neil Smith、Annoymous 9といった注目のアメリカの作家の作品も出版されていますが、本国出身のこのDouglas LindsayやRay Banksこそが本命となります。私的にはとにかく出ている本は片っ端から全部読みたい注目のパブリッシャーの一つです。

そして、最後になりますがこの作品実は映画化が進行中です!舞台となるグラスゴー出身の俳優ロバート・カーライルの監督・主演で今年2015年公開となるそうです。やっぱり日本には映画ファンが多いのかこの映画に関する情報は日本語のページも見つかったりしました。スチール写真も出ていて、それを見るとロバート・カーライルという人はうっかり人を殺しかねない感じにも思えますが、それなりにしょぼくれた中年Barney Thomsonをうまく表現しているようです。私は読みながらずっと連続殺人鬼温水洋一ぐらいのをイメージしていたのですが。母親役のエマ・トンプソンについてはかなり期待できそうな感じです。この映画が日本でも公開になるのかはわからないのですが、もしそうなったらこの小説も翻訳という可能性もあるかもしれませんね。映画の方も観る機会があったらこちらでとりあげてみたいと思います。


Douglas Lindsay ホームページ

Blasted Heath       

■Douglas Lindsay : Barney Thomsonシリーズ
●長編

●DCI Jerichoシリーズ

●Pereira & Bainシリーズ

●DI Westphallシリーズ


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2015年1月11日日曜日

2000AD 2014年春期 [Prog1874-1887](後編)

というわけで、2000AD 2014年春期、後編となります。

Slain/The Brutania Chronicles : Book One A Simple Killing

 Pat Mills/Simon Davis
大御所Pat Millsの代表作のひとつ…って毎シーズン言っている気もしますが、まあとにかくイギリスの梶原一騎や小池一夫に当たると思われる人で、やたらと代表作が沢山あるのですが、その中でもこれは本命級の代表作です。前年2013年夏期には30周年の企画もありました。週替わりでこれまでSlaineを描いた代表的なアーティストが過去のストーリーを語りなおす、というもので、内容的にはよくわからなかったのですが、どれもヴィジュアル的には素晴らしいものでした。中でもProg1848のSimon Bisleyの回は必見です。アメリカでも現在はペンシラーとして活躍しているBisleyですが、これは時間や物理的制限を無視して本気でやればここまでできるんだぜ、と言わんばかりの圧倒的な作品で、コミックと絵画の境界でコミックとして成立するギリギリというようなすさまじい画を見せてくれました。機会があったらぜひご覧ください。


←こちらがProg1848、2000ADアプリショップから購入できます。表紙はSlaineですがBisleyではなくMick McMahonによるものです。ハードカバー版で発売中の『Sláine: Book of Scars』にも収録されています。

さて、それではこのSlaine、どういう話かというと、まあ毎度のことながら設定などはよくわかりません。その上私はどうもこのジャンルには不案内で上手く説明できるか自信は無いのですが…とりあえず少し頑張ってみます。まず、登場人物が裸に近い恰好でいることからコナン(名探偵に非ず)とかと同じような時代設定ではないかと思われます。超常的な魔術を操る怪人やクリーチャーなどと腕力のみで戦うという戦士のストーリーというものらしいです。などとくどくど書いてみましたが、まあこの手の話はコミックや映画などでビジュアル化すると一目瞭然であまり時代など説明は無かったりするものですね。主人公Slaineはコナンのような巨漢ではなくBisleyや今回のSimon Davisによる作画ではむしろオッサン臭のただよう感じの男ですが、かなりの戦士です。Slaine自身の背景についてはちょっとまだ把握できていません。

今回のストーリーは神の財宝を盗み出している盗賊団を追いある村にやって来たSlaineが、次第に魔術を使い人間をクリーチャーに改造する恐るべきカルト教団との対決に巻き込まれて行くというもの。今回はThe Brutania Chronicles : Book Oneで、教団との戦いに敗れたSlaineが捕獲されるところで次回に続くという形で終わっています。うーむ、やっぱりうまく説明できないのですが、ちょっと神話的だったり叙事詩的だったりもする作品なのです。今回のSimon Davisの作画も本当に素晴らしく、アートというべき仕事でした。なんとかうまく説明できないものかと長々と書いてみましたが、力不足ですみません。いずれにしても今期を代表する作品、2000AD、イギリスのコミックを代表する作品の一つでもあるこのSlaine、今後ももう少し深い解明に努めていこうと思っています。



Indigo Prime/Perfect Day

 John Smith/Lee Carter
こちらはすでに単行本も2冊出ている人気シリーズ…なのですが、初見でまたしてもあまり設定が分からないという作品です。パラレルワールドとその時空を管理する組織の登場するSFで、Indigo Primeというのがその組織の名前のようです。沢山のキャラクターが脇で動いていてその辺がさっぱりわからないのですが、メインのストーリーは割と明解なのでそちらの方で説明して行きます。
アル中から復帰したDannyと進化途中の人類の祖先と思われる容貌のUntherの2人のエージェントは、ナチスが第2次大戦で勝利した世界の協力者である老将校の依頼により出動する。余命の少ない彼の要請は人生の最後に遥か昔に亡くした娘とともに世界の歴史の様々な風景をこの目で見てみたいというものだった。
同行する娘というのはパーマンの留守番ロボットみたいなので指示された通りに姿を変えられるもの。半ば引き回されるように戸惑いながらあちこちを巡る老将校ですが、最後の目的地キリストが十字架にかけられる前夜のエルサレムに着いたとき、豹変し真の目的を露わにします。娘の姿をしていたロボットを監禁されていたキリストとすり替え、その身代わりは十字架にかけられた途端クトゥルー的モンスターに姿を変え、その後の世界の歴史はクトゥルー世界になってしまうという驚きのラスト!最後に"END"と書かれていたのでこれで終わりなのかな?と思っていたら、その後の2000ADのお便りコーナーで「続きを楽しみにしてまーす」という読者からのお便りにTharg閣下が「ドロイドを鋭意働かせておる!」と答えていたので続きがあるのかもしれません。なかなか面白そうなSFシリーズなのでまたの登場を期待したいと思います。

少し調べてみたところこのシリーズ主に90年代に描かれていて、しばらくのブランクを置いて2008年頃からまた始まってきているもののようです。ライターのJohn Smithは80年代からJudge Dreddなども多く手掛けるベテランでこのIndigo Primeシリーズが代表作のようです。作画のLee Carterはまたとても上手いアーティストで、CG時代のリアルでクリアな絵柄のひとつの見本のような画。なんとなくこの人のと日本のマンガの人物の画をよく見比べてみると、それぞれの国で表情などの表現で強調する部分の違い見たいのが見えてきそうだなとも思ったりもしました。



Grey Area/Nearer My God to Thee

 Dan Abnett/Mark Harrison
いやはやここにきてやっと話の少しわかるシリーズが冬期に引き続き登場です。地球のエイリアン受入れ地区の警備部隊の活躍を描くGrey Areaです。前期後半でほのめかされていた"地球人類への報復"が実行される今シーズン完結編となる全5話の作品。
Grey Areaに滞在するエイリアンの間で"神が降臨する"という噂が広まり始める。時を同じくして地球に巨大な宇宙船が接近。そして地球人の間でもその動きは徐々に広がり始め制御できなくなってくる。だがそれは実際には"神"の概念を放射しつつ惑星に降り立ち無抵抗の生物を捕食する危険なエイリアンだった。Bullietたちはひそかに強力な爆弾を積みこんだシップでその宇宙船に乗り込む…。
前期の宗教上の概念の違いから騒動が起こる話「All God's Children」が伏線になっています。最後は宇宙船の爆破には成功したが、Bullietたちの生死は?という感じでEND?と表記されていますが、またの登場はあることでしょう。

アメリカでの活躍も多いライターのDan Abnettですが、最近では映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で原作者のひとりにもクレジットされていましたね。作画は前期後半に引き続きMark Harrison。よく見ると女性陣が○○だったりするけど、シャープでエッジの効いた線と独特の空間を表現するカラーリングで私のとても好きなアーティストです。


というわけで前後編に渡りました2000AD 2014年春期もやっと終了です。新年最初の分というよりは去年晩秋ぐらいのがやっと片付いたという感じで、まあ本来ならこの辺で今年の抱負などを述べるところでしょうが、それは来月のブログ1周年あたりで語ってみようかと思います。どうせ何々が読みたいなあとか程度の話でしょうが…。
さて続く2000AD 2014年夏期ですが、待望の『Brass Sun』第3シーズンの登場となります!書くのが遅れているだけでもう半分以上は読んでいるので(とは言ってもまだ去年の夏の分か…)割と間をおかずお届けできると思います。と言うか他のコミックの事も色々書きたいので早く進めねば。というわけでなるべく頑張るという意思だけはありますので、またよろしく。



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2000AD 2014年冬期 [Prog2014,1862-1873]


2000AD 2014年春期 [Prog1874-1887](前編) 


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2015年1月3日土曜日

2000AD 2014年春期 [Prog1874-1887](前編)

あけましておめでとうございます…えー、あまり晴れ晴れと言える感じではありませんがとりあえず…。疲れと元来寒さに弱い体質から12月は体調を崩しながらヨレヨレでほとんどブログは休みになってしまい、延々と引っ張っているうちにとうとう年も開けてしまいました。2014年春期2000ADです。11月ごろから休みがちでいろいろ押してずいぶん遅れてしまっているのですが、自分的には週1冊ペースで遅れながらも順調には読めているので、なんとか次回で取り戻そうかと思いつつ…。
今期は早く終わったり途中から始まったりというのが色々あって、少し複雑になっていて、やたら長くなってしまいそうなので前後編2回に分けることにしました。今期のラインナップは以下の通りです。

 Judge Dredd
 Sinister Dexter [Prog1874-1879]
 Jaegir [Prog1874-1879]
 Outlier [Prog1874-1883]
 Slaine [Prog1874-1886]
 Indigo Prime [Prog1880-1887]
 Grey Area [Prog1884-1888]



Judge Dredd

 1. Mega-City Confidential : John Wagner/Colin Macnel(Part1-5)
 2. Shooters Night : John Wagner/John McCrea(Part1-4)
 3. Traumatown : Michael Carroll/Nick Percival(Part1-5)

1 Justice DepertmentのSection7に勤務するErikaは、その部署の仕事の社会的な問題性に疑問を抱き、悩み、遂にそのデータを持ち出し公開を図ろうとする。DreddらJudgeの手により事前に阻止されたかに見えたが、実はすでにマスコミの手に渡っており、別のCityからの衛星放送という形でMega-City Oneに公開される。その内容はChaos Dayの破壊から再開発された居住区の各部屋に隠しカメラがあらかじめ設置され住人たちの様子がモニターされているというものだった…。
2 あるクラブで起きた少年による無差別乱射事件の背景を調べるうち、DreddはChaos Dayによって精神科セラピーが中断された少年たちが危険人物によって組織、洗脳され、そのグループによる大規模な無差別殺人計画が謀られ、実行日が迫っていることに気付く…。
3 Mega-City Oneのセレブリティ襲撃事件の犯人を追いChaos Day以後まだ手が付けられていない地域に入ったDredd達。Dreddは犯人と思われる女性を発見し追跡するが、その姿を見たのは彼だけだった。同様の幻覚と思われる事態が続き、Dreddは病院での治療を指示される。だが治療を終えた後も幻覚は続き、今度は近くにいたテレパス能力を持つ女性Judgeにもその幻覚が見えるようになる。次第に恐ろしい幻覚がDreddを中心に拡がり、Cityをパニックに陥れて行く…。

1、2は久々のJohn WagnerによるJudge Dredd。といってもこのレポートを初めて半年で初めてなので、少なくとも半年以上ということになります。1はいかにもWagnerらしい問題作。この事件におけるDreddの立場は当初からこれが公になればかなりの問題を引き起こすと思いながら、この作品世界ではこれは違法行為ではなく、適正に運用されれば治安維持に有効であるということで肯定も否定もしておらず、公表された結果の事態を考え阻止に努めるというもの。Judge Dreddの産みの親のひとりでもあるJohn Wagnerは、最初からこの警察と判事を兼ねたJudgeにようr警察国家という設定の危うさに気付いており、度々このような問題提起をして、その中でDreddが何を考えどう行動するかを描くことで、ともすればロボットのようになってしまうこの主人公を立体的で魅力あるキャラクターに創造して行っているように思います。
3はNick Percivalの描線を使わないタイプのリアルでグロテスクな画がホラー風味を盛り上げる迫力のある作品でした。


Sinister Dexter/Gunshy

 Dan Abnet/Smudge
こちらの作品については2014年初めのProg2014にワンショットが掲載されていてそこで少し触れました。証人保護プログラムから脱走し、放置しておけばこの宇宙を破壊してしまう男Tanenbaumを倒しに向かうSinsterとDexterプラス2人の美女(Dexterの妻とSinisterの元証人保護プログラム担当官)は武器を調達し車のトランクに満載し目的地へ向かって旅を続ける途中の田舎町でカルトとギャングの2大勢力の抗争に巻き込まれてしまう。
Prog2014からまた作画が変わり、今度はモノクロの少し古い感じのアクション・コミック調ですが、今回の展開にはマッチした感じ。単行本として出ている過去作のカバー画などを見ても、この作品は回ごとに大きく絵柄の違うアーティストを起用して行くのが特徴のようです。今シーズンは6話ですが、次シーズンにも4話で登場しています。好きなシリーズなのでこうやって度々登場してくれるのは嬉しいところ。


Jaegir/Storigoi

 Gordon Rennie/Simon Colby
SFミリタリーアクションの新シリーズ。Nordlandの戦争犯罪捜査官Atalia Jaegir大尉は敵勢力Southerが使用した細菌兵器Strigoiにより理性を失った野獣と化した兵士の抹殺を指令される。その対象はかつての戦友で一度は関係を持った男だった。Jaegirは自らが幼少時代を過ごした居城に男の妻子を保護し、男の襲来を待ち受ける…。
Storigoiの感染の最終段階は食い止められたものの、その影響で登場人物の多くは身体の一部が変形していて、主人公のクールで寡黙な女性大尉Jaegirも顔の左側面にそのあとを残しているキャラクターです。主に回想による主人公Jaegirの内面とハードなアクションが交錯する今期一番の注目作。当初ミニシリーズとして企画されたようですが、公表を受けシリーズ化され、次シーズンにも登場しています。この作品は全6回が1冊にまとめられ、『Brass Sun』と同じ形式で発売されKindleと2000ADのデジタル/アプリショップでも販売され単体で読むことができます。ちなみにこの作品は2000ADに長く掲載されている『Rogue Trooper』の舞台となっているNu-Earthと世界を同じくするスピンオフ的な作品のようです。そういう事情でまたしても設定上少しわかりにくいところがあったのですが、『Rogue Trooper』に関しては昨年2000ADのアプリショップでセールがあって買い込んでおいたのでその辺についてもいずれ解明して行きたいと思っております。



Outlier

T. C. Eglington/Karl Richardson
こちらもJagairと同じく新シリーズ。私立探偵であるCarcerはある富豪の殺人事件の捜査を依頼される。記録映像には謎の黒い襲撃者の姿が残されていた。調査を進めるうち、事件の背景にはHurdeと呼ばれる人類より遥かに進化した異星人の難破船に救難艇が着く前に技術略奪のために乗り込んだ宇宙船Outlierが関係していることが浮かび上がってくる。Outlierの女船長は脱出の際、3人の乗組員を見捨てていた。Hurdeの捕獲された人間は例外なく興味の対象から実験体として扱われ究極の苦痛を与えられる。その実験の最中、Hurdeは強い復讐の憎悪に興味を持ち、一人の男の身体を生体兵器に改造し送り返して来る。次々と虐殺されて行く元の乗組員たち。船長は元の乗組員を集め、襲撃者を迎え撃つ計画を立てるのだが…。
ハードなSF復讐譚。同コンビによるJudge DreddのPreyという作品が2013年秋期に掲載されていました。なかなか迫力のある読ませる作品でした。これはこの全10回で完結の作品のようですが、主人公の私立探偵Carcerや同設定を使った続編が描かれることもあるかもしれません。


というところでなんとか前編終了です。残り作品、後編もすぐに書きますので、次回をお楽しみに…していただけると…。


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2000AD 2014年冬期 [Prog2014,1862-1873]



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2014年12月6日土曜日

you don't exist -ADR Books第1弾!-

このブログでは度々ひっぱり出してきてお馴染みの必読アンソロジー『All Due Respect』なのですが、ウェブジンのベスト選アンソロジーから定期刊行オリジナルアンソロジーへと進化したことは以前に書きました。そちらも早く読まねばと思いつつなかなか手が付けられないでいるうちに、All Due Respect Booksなどというものの刊行まで始めてしまいました。8月発行のこの作品を皮切りにすでに6冊が刊行され、All Due Respectのホームページでは代表のChris Rhatigan氏があれも出すぞ!これも出すぞ!と意気盛んです。私の英語読書力では到底追いつけない勢いですが、とにかく乗っておかねば!と、この第1弾『you don't exist』を読んでみました。

この『you don't exist』ですが、実は同一テーマの別の作家2人の2本の中編の競作という形になっています。そのテーマはというと、一人の男が旅行中、見知らぬ土地で明らかに犯罪にかかわると思われる大金を偶然手にしてしまい、それをいかに自分のものにするかと考えながら、孤立無援の中次第に強まって行く強迫観念にとらわれて行くというものです。

bleed the ghost empty/Pablo D'Stair

私はハイウェイを車で走っていた。もう何日もろくに眠っていない。いくつもの出口を示す知らない町の名が書かれた標識を通り過ぎる。だが、一向に出口など現れず、また新しい知らない町の名の標識が現れるばかりだ。どうなっているんだ?やっとさびれた小さなダイナーが付いたガソリンスタンドを見つけた。だが閉まっている。一体いつから閉まっているのかもわからない。ガソリンポンプには錠が掛かっている。自販機には見たこともない煙草が並んでいる。金を入れたら出てくるのかもわからない。待っていれば誰か来るのだろうか?だがもうガソリンも乏しい。このままではどこにも行けない。そして日が暮れて行く…。
…あそこに車が停まっている。いつから停まっているのか?中には人がいるようだ。灯りがついていて微かにラジオの音も聞こえてくる。何をしているのだ?なぜずっと停まっている?意を決して近付いてみる。道に迷った害のない旅行者を装って…。そして、車の中にあったのは男の死体と、その足元には現金の詰まったバッグだった…。

何とも、とにかくすさまじい作品でした。冒頭から延々と一人の男の語りで、なぜずっと車を走らせているのかもわからない。最初からある種の強迫観念にとらわれている語りで、むちゃくちゃに文章をつなげていくような文体で少し読むのに苦労しました。後半の方まで誰かと会話することもないので、名前もわからないし、その時に言っていることが本当なのかもわからない。現実と妄想の境も曖昧な感じ。米Amazon.comのレビューを見ていたらデヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』を引き合いに出している人がいて、なるほどと思いました。ちょっと文学寄りの圧倒的な読み応えのあるノワール作品でした。
作者Pablo D'Stairはノワール系では初登場のようですが、いくつかの著作のある作家で、Amazon Kindleでもいくつかの作品を見ることができました。いずれも文学寄りの作品のようですが、なかなか面白そうで余裕があったら読んでみたいところ。(なかなか無いのだが…。)作者紹介によると、イギリスの方で映画業界にも関わっているようです。実力のある作家なのは確かなので、このジャンルで今後活躍して行かなくてもいずれ作品を読んでみたくなる時が来るかも。


Pessimist/Chris Rhatigan

Pullmanはダラスのモンロー空港に降り立った。ダヴェンポートで行われるコンヴェンションの会議に出席するため、ニューヨークの都市開発コンサルタント会社から派遣されてきた。彼のこれまでの人生は常に今よりも少しでも良い収入を得られる仕事に付けるよう地道な努力を続ける毎日だった。気に入らない上司にこき使われる現在のアシスタントの仕事もそのワンステップだ。いつか来る日を夢見て…。だが、まだ大学の学資ローンすらも払い終える見込みが立っていない。空港で荷物を受け取り、明日のコンベンションに備えてモーテルにチェックインする。ベッドの上に投げ出したバッグを開けてみると、そこに入っていたのは見たこともない現金の束だった…。

とことん小市民的な主人公が、空港で荷物を間違えられ手にした明らかに犯罪にかかわると思われる大金をなんとか自分のものにしようと悪戦苦闘するストーリー。姿も見えない追手に追跡されているとの疑心暗鬼に捕われながら、金を小分けにしてあちこちの金融機関に預けようとしたり。前のPablo D'Stairの作品があまりに読みにくかったのでずいぶんスラスラ読めた印象があります。一方で前の作品がかなりすごかったので少し損をしているような感じもありますが、なかなかよくできた良質なノワール作品でした。
作者Chris Rhatiganは前述の通りこのAll Due RespectのWeb時代からの代表・パブリッシャーです。その立場からAll Due Respectでは作家としてあまり前に出ることはありませんが、他のアンソロジーに作品を発表していたり、今年9月にはBeat Up Pulpから中編『Waku Up, Time to Die』を出版したりもしています。その他にも彼の以前の中編『The Kind of Friends Who Murder Each Other』が彼自身のブログDeath by Killing経由でインディー系eBookショップSmashwordsからフリーでダウンロードできます。
このような作家兼編集者・パブリッシャーというのは今のこのジャンルで多く見られます。ThuglitのTodd Robinson、Blood & TacosのJohnny Shaw、PWGのAnthony Neil Smithなど。少し前に書いたTom PittもOut of the Gutterのエディターだったり、Chris氏の盟友でAll Due Respectからの作品集の出版も予定されているAlec CizakもアンソロジーPulp Modernのエディターだったりします。その辺も私がこのあたりの動きに注目し、期待する要因の一つで、これからも可能な限り頑張ってこの動きを追っかけて行きたいと思います。


というわけで、このAll Due Respect Books第1弾『you don't exist』、なかなか手応えのある作品で、今後のこのシリーズにもかなり期待を持たせてくれるものでした。All Due Respectではこの形の競作シリーズを今後も展開して行くようで、早くも再び代表Chris Rhatigan氏の参加した『Two Bullets Solve Everything』が発表されています。また、アンソロジー『All Due Respect』もIssue 4まで発行中。早くそちらも読まねば。この辺のムーブメントの中でも特に勢いのあるパブリッシャーの一つで今後も要注目です。 


All Due Respect

Death by Killing      

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ハードボイルド/ノワール系アンソロジーとインディー・パブリッシャー


■you don't exist

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