Grant Wamackという作家は日本にはほぼ知られていないのでは、という以前に自分も最近まで知らなかった。きっかけとしては、近年のスコットランドを中心とした新進ノワールの発信地の一つである、作家Stephen J. Golds(日本在住らしい)主催の ウェブジンPUNK NOIR MAGAZINEに、Grant Wamackのインタビューが掲載されているというのを聞きつけて。
ここにインタビューが掲載されるというのは、それなりに注目すべき作家なのだろうと思い、まずアマゾンで出てる本を調べ始めたところ、この『Black Gypsies』がKindle Unlimitedで出ているのを発見。詳細を見たところ、ジョーダン・ハーパーと こっち界隈じゃ作家/レビュアーとしてかなり信用できるScott Adlerbergからの賛辞が掲載されており、100ページほどの中編と手頃でもあったため、とりあえずこれから読んでみたという次第。
割と新しい作家なのかなと思っていたのだけど、2010年代半ばごろに中編作品が2作出ていて、そこからしばらくは出版運に恵まれなかったが、2020年代に入り新たなベースを得て、注目が集まり始めている作家のようです。
黒人作家で、シカゴの黒人社会を描いた作品であるこの『Black Gypsies』も登場人物は基本的にすべて黒人、というあたりは先に言っといた方が混乱少ないかと思う。
前述のインタビューなどについては、後ほどにという感じで、まずここから『Black Gypsies』です。
【Black Gypsies】
1. Tatted Like a Biker Boy Marcusが最初のタトゥーを入れた日、誰かが店に銃弾を撃ち込んできた。
物語はシカゴのうらぶれたタトゥーショップから始まる。店主Reginald "Jazz" Harrisは、この店を20年やっている。周囲のシカゴの街は様々な出来事で様変わりしてきたが、この店は主に黒人相手に変わらず続いて来た。
Marcusの腕に彫られているのは、日本のアネモネを背景にした"JACKBOY"の文字。
店のテレビのフットボール中継に、店内の客やReginaldが一喜一憂し、ついついタトゥーガンを強く押し付けすぎたり。
店内で流れていた曲をMarcusが気に入った様子なのに気を良くしたReginaldが、今度CDを持ってきてやると言うと、ストリーミングで聞くから曲名リストだけ教えてくれりゃいいよ、そもそも俺CDプレイヤー持ってねえし、と応えられ 近頃の若い奴はでイラっとしたり。
店内のソファに座っていたLukeが、今の試合で500ドル儲けたぞ、と言って立ち上がり店を出て行く。
そしてReginaidがタトゥーに集中を戻し、Marcusが次に流れて来たリル・ダークに頷き始めた時、外で銃声が響く。
弾丸が店に飛び込み、ガラスが割れる。タトゥーガンを放り出し、床に伏せるReginald。Murcusもその隣に続く。
そしてそこから窓の外を見つめながら、これ以上弾が飛んでこないことを祈る。マスタード・イエローと青の車が猛スピードで走り去る。誰かが通りの向こうで叫ぶ。
そして二人は、自分が撃たれていないことを確かめながら、ゆっくりと起き上がる。
母親も心配してるだろう、帰った方がいいんじゃないか?と言うReginaldに、もうほとんどできてるんだろ、完成させてくれ、と答えるMarcus。
そして20分後、完成したタトゥーを誇らしげに見るMarcus。
「トラブルに巻き込まれるんじゃないぞ。ここらの連中の誰かを失うのはもう沢山だ。お前は家族なんだぞ」今日の出来事から改めてMarcusに言い聞かせるReginald。
「わかってるさ、俺は大丈夫だよ」とTシャツを直して出口に向かうMarcus。
Reginaldは、こいつが21まで生き延びて欲しいと願う。それがシカゴで長生きする最初のチェックポイントだ。
そして外の通りに出て行くMarcus。すれ違った誰かが、泣きながら言う。
「Lukeが撃たれた」
2. A Crossroad of Sort 家に帰ったMarcusは、早速タトゥーを母親に見つかり、小言を喰らう。
部屋に戻りウトウトしていると、相棒のGordoから連絡が来る。「仕事だぜ、兄弟」
「5時に外に出てる」返信し、出かけるMarcus。
仕事の後、帰りの地下鉄でMarcusはうっかり眠ってしまい降りる駅を乗り越してしまう。
一駅先で降り、公園を横切って帰ろうとしたMarcusは、違う地区のがギャング団と遭遇してしまう。
必死に路地裏を逃げ回り、近くの家の裏庭に潜り込んだところで見つかり、あわやというところで住民の通報でやって来た警官により助けられる。
3. Crooked Country Gordoは深夜の1時にコール・オブ・デューティーをやってるところに、Marcusからの電話を受ける。
警察につかまっちまった、保釈金を持ってきてくれよ。
相棒のピンチに、Gordoは警察署に駆け付け、500ドルを窓口の警官に渡す。
領収書をくれよ。そんなもんはねえよ。待合室でおとなしく待ってろ。
やがて出て来たMarcusを車に乗せ、家まで送り届けてやる。
「俺は出て行かなきゃな。お袋はストレスになってしょうがねえ」
「俺んとこに来いってずっと言ってるじゃねえか」
「そうじゃなくてさ、俺たちは州を出るんだ。どっか西、カリフォルニアとかよ。盗める車も山ほどあるはずだぜ」
「夢見てりゃあ、そのうちに叶うさ」
まあ100ページほどの中編だし、このくらいで。
主人公である19歳の不良少年以上犯罪常習者未満という感じのMarcusを中心に、相棒Gordoや、他の仲間、敵対するギャングなど、時に視点を変えながら、犯罪が日常のシカゴの黒人街が描かれて行く。
Marcusが相棒のCordoとやってる「仕事」については、Amazonの商品ページのあらすじ説明でも言及されてるんで、隠すこともないんだが2章でそこが描かれず飛ばす感じで帰りの電車のシーンになってたんで、とりあえずそのまま書いてここでも言及しないどく。
最初はエピソードの端々に見える主人公たちよりワンランク上という感じの犯罪の断片みたいなものから、『エディ・コイルの友人たち』みたいになるのかな、とも思ったのだが、なんとなくつなげればつながるけど、あくまでも彼らが生きている 生活圏での背景的なものにとどまっている感じ。
1章の最後あたりのタトゥーショップのReginaldの警句や、3章最後の二人のやり取りあたりでこの作品のテーマ/メッセージはぼんやり見えてくる。そして終盤二人はある出来事からワンランク上の敵との対決という危機に直面することとなる。 クライマックスというべき最後から2番目の章が、ある形でこのテーマと直結するところなど、かなりの作者の実力を感じさせる。
タイトルの『Black Gypsies』は、Marcusが作中で出会い付き合うようになる同年代の女性に関係することなのだが、まあ短い作品でそこまで書くのもなんかと思うので、読んでみてのお楽しみということで。
作中、多くの登場人物の会話に出てくる「nigga」という単語。通常「黒んぼ」みたいな蔑称で使われるものだが、彼ら黒人同士の間では、palというような呼びかけから、People、guysというような感じまで幅広い意味の使われ方をする。そこら中で ヒップホップ/ラップミュージックが鳴り響き、niggaと呼びかけ合う新しいストリートを描いたクライム作品。新しいもんを求める人なら押さえとくべき秀作であるよ。
そして件のPUNK NOIR MAGAZINEのインタビュー (PUNK NOIR MAGAZINE / A Punk Noir Interview with Grant Wamack)から作者Grant Wamackについて 探って行こう。
高校時代ははアーティスト志望で、コミックの仕事をしたいと思っていたそう。だが当時(2006年ごろ)には、スーパーヒーロー以外のものがあまりなく、自分の目指すものとは違うと思い自身の創作意欲を詩やショートフィクション、ラップミュージックなどへ傾けて行ったということ。
ジャンルとしては、クライム、ホラーといった傾向のものだが、現在はワイアード・ホラーという分野にに最も惹かれているそうである。
実際のところ、現在まで出版されている彼のの中編・長編小説作品で、クライムジャンルのものはこれだけで、他はホラージャンルに属するもの。昨年出版された中編『Bullet Tooth』と短篇集『The Hum of the World』はホラージャンルの ビザーロ・フィクションから選出されるワンダーランド・ブック・アワードにノミネートされ、ファイナリストは逃したものの、短篇集の方は選考外となってしまった中の注目すべき作品としてピックアップされた数作の中の一つに挙げられている。
最近感銘を受けた本として、Stephen Graham Jonesの『Mongrels』を挙げ、好きなノワール小説としてトンプスン『キラー・インサイド・ミー』を挙げるGrant Wamackにとっては、ジャンルの垣根など極めて低いものなのだろう。ちなみに 好きなインディーノベル3作の中に前回のAnthony Neil Smith『Slow Bear』を入れていたり。生死関わらず、一緒に飲んでみたい作家とか、いい質問ですね。
前述の中編『Bullet Tooth』は、フレディやジェイソンのようなタイプのオリジナルのホラーキャラクターがシカゴに現れる話のようだが、この『Black Gypsies』のストリートにそういう殺人鬼を乗せたような作品かもと期待される。 とりあえずはなるべく早い機会にこれから読んでみたいところ。現在最新作は不思議の国のアリスと映画ミッドサマーを組み合わせたようなシュールなホラー『The Frolicking』。今後は『Bullet Tooth2』も予定されているとのこと。 いかなるジャンルにせよ、これからの活躍が期待されるGrant Wamackに注目すべし!
ここでPUNK NOIR MAGAZINEについても少し。同じくスコットランドのJohn BowieのBristol Noirと共に2017年に登場し、 当方なども新スコットランド一派の登場か?と期待したんだが、どうもそれほど地域的な感じの大きなムーブメントとはならなかったようだが、両サイトともワールドワイドな新たなノワールの発信地としてのウェブジンとしては 継続機能し続けている様子。あんまりちゃんと見てられなくて申し訳ないんだが…。
例えばJohn Bowie/Bristol Noir編集の2冊のアンソロジー『TAINTED HEARTS & DIRTY HELLHOUNDS: Bristol Noir Anthology 1』と 『SAVAGE MINDS & RAGING BULLS: Bristol Noir Anthology 2』。Stephen J. Golds編集のアンソロジー『Gone』(いつの間にかKindle版が絶版に…)などを見れば その成果は窺えるものだろう。
PUNK NOIR MAGAZINEのStephen J. Goldsについては、現在そちらのPUNK NOIR PRESSから出版されているThe Dead, The Dying & The Goneシリーズなどの作品がある。
そのうち、シリーズとは知らんまま最初の『Say Goodbye When I’m Gone』をしばらく前に読んでるんだが、あんまり書けない時期でJohn Bowieなどと共に、期待の新しいスコットランドノワール作家みたいな感じでやれればとか思ってるうちに…、 となってしまって申し訳ない…。
1960年代のハワイが舞台の、全てを失い亡き妻のアンティークショップを経営するアイルランド系老ギャングと、日本から騙されて連れてこられた娼婦、朝鮮戦争で人間性を破壊された韓国系ギャング、三者の運命が交錯するアツいノワール。 日本的には、騙される女の子パートの60年代貧乏ダウナー昭和白黒ムービー的なところがちょっときつい人もいるかもとかは思ったかも。長く日本に住んでいるらしいGolds氏らしく、きちんと書かれているのは確かだが。
なんとかシリーズって形で、今後もっとちゃんと書けるように努力しますので。
その他、PUNK NOIR MAGAZINEでは、エディターの一人である、なんかそれぞれバラバラの出版社からになっているようだがデビュー作からのPigsトリロジーを完結させ、自身のUrban Pigs Pressも立ち上げている James Jenkinsにも注目。なるべく早くなんか読めるといいのだけど。
Grant Wamack著作リスト
●中編/長編
- Notes from the Guts of a Hippo (2013)
- A Lightbulb's Lament (2014)
- Black Gypsies (2022)
- God's Leftovers (2022)
- Bullet Tooth (2023)
- The Frolicking (2024)
●短篇集
- The Hum of the World (2023)
ワンダーランド・ブック・アワードについて
というわけで、また出てきてしまったワンダーランド・ブック・アワード。なんだか長年にわたりぐらいで、ちょくちょく目にしながらも手が回らず、また今度扱いしてきたビザーロ・フィクションと言う奴なのだが、多分逃れられない運命なのよ と諦め、ここらで腰を据えてちゃんと取り組んでみることにした。
なんかワンダーランド・ブック・アワードとかどこかでやってくれてないのかよ、と少々調べてみたんだが見つからないので、また一からという感じで始めてみる。日本語カタカナ表記にしてみたけど、昭和とかだったら不思議の国文学賞とか 訳されていたのかもね。ビザーロ・フィクションという表記に関しては、正しい発音はビザロだとか、ビザーローだとかいう人出てきそうな気もするが、知ったことか。とりあえず現時点の日本では、こういうところに目を向けるような人、 限りなく減っているんだろうしね。
ワンダーランド・ブック・アワードというのは、年間に発表されたビザーロ・フィクションの中から選ばれた作品に与えられる賞であり、2008年よりオレゴン州ポートランドで毎年開かれているBizarroConの場で発表され、授賞式が行われている、らしい。
で、ここはまずビザーロ・フィクションというところから始めてみる。
まずビザーロ・フィクションの定義というようなものをWikipedia/Bizarro fictionから引用してみると、「破壊的で、奇妙、滑稽な作品を創り上げるため、不条理、風刺、グロテスクといった 要素に加え、ポップシュルレアリスムやジャンルフィクションの定型などを使用する現代文学のジャンル」ということ。
こちらは2005年にEraserhead Pressなどのパブリッシャーを中心に、ジャンルを明確に立ち上げるために提唱されたものらしい。遡ればナボコフや、バロウズといった作家作品にも当てはめられるものだが、ここで一旦明確に定義し、ジャンルとして作って 行こうという感じだったのだろう。
まあ定義やら説明だけではよくわからんと思うので、とりあえず自分が知ってる範囲でのサンプルになりそうなアンソロジーを二つ紹介しておく。 どちらもジャンル立ち上げ時に中心的存在であったEraserhead Pressからのもの。ちなみにEraserhead Pressは、スプラッタパンクアワード初期あたりにはかなり多くの作品を出していたDeadite Pressと同じ出版社で、Eraserhead Pressの方が本体らしい。
ひとつは『The Best Bizarro Fiction of the Decade』(2013)、もう一つは『In Heaven, Everything Is Fine: Fiction Inspired by David Lynch』(2013)。後者はデイヴィッド・リンチからインスパイアされた作品のアンソロジーで、有名なデビュー長編映画の タイトルを会社名としてるパブリッシャーらしいところ。
実は双方とも最初の2~3作ぐらいしか読めてないのだけど、印象で言えば前者がシュールで悪夢的な寓話、後者がデイヴィッド・リンチ的なシュールで悪夢的な寓話という感じ。…いや、ごめんだけど、それくらいしか思いつかない…。
『The Best Bizarro Fiction of the Decade』はランズデールやStephen Graham Jonesといった作家の作品も入った560ページとかのアンソロジー。こちらはKindle Unlimitedなので、ちょっとどんなもんか見てみるのにいいかと思う。ダリ風の グロいカバーが素敵。それにしてもStephen Graham Jonesぐらいそろそろなんとか読んで書かないと…。
『In Heaven, Everything Is Fine: Fiction Inspired by David Lynch』の方は、定義説明とか読んでデイヴィッド・リンチみたいなのかなと思った人にはお勧めかも。こちらは前者のようなビッグネームとかはないのだが、あまり広くはない ジャンル内では知られた作家が揃っている様子。最初の話が映画のセットのようなダイナーの中である事情で身動き取れなくなる人達の話。2番目が囚人の一人が行方不明になりごまかすために人形を作った看守の話。3番目が都市を取り巻く壁が 住民に深刻な影響を及ぼすためそれを防ぐために内側に新しい壁を作り続ける話。どう?面白そうでしょ。
ただまあ、10年位前に出たものなので、もしかすると今時のものとはちょっと変わってるかもしれないけど。ジャンルなんてその中の作家たちの新しいアイデアでどんどん変わって行くものだからね。定義なんてものは作家たちがそれをぶち壊して広げて 行くためにあるようなものだよ。
あと、ビザーロ・フィクションというジャンルに於いて、短編作品は重要なところではあるが、中編・長編作品になると色々手法とかも変わって来るのではと思うのだが、そっちの方にはまだ手を付けてなくてサンプル的なものも出せなくて申し訳ない。
ではここから改めてワンダーランド・ブック・アワード。前述のようにオレゴン州ポートランドで毎年開かれているBizarroConで発表されているのだが、なぜそこでかと言うと、ビザーロ・フィクションを中心となって提唱したEraserhead Pressの 地元だという理由。
部門はシンプルに短篇集部門(Best Short Story Collection)と、長編/中編部門(Best Novel/Novella)の2部門。色々調べてみたところで、大抵短篇集部門が上に書かれているのがこのアワードの特徴かもしれない。
以下これまでの受賞作一覧なのだが、こういう場合、例えば2023年出版の作品が、2024年に受賞するわけで、どちらを表記するかケースバイケースであったりして少しややこしく、引用元のWikipedia/Bizarro fictionでは前者の出版年で書かれているのだが、 当方では後者の受賞年の方がわかりやすいかと考えそちらで表記した。
結構多くて後でアマゾンのリンクを作るのが面倒なので、そちらで入手できるものについてはこちらのテキストリンクのみとさせてもらった。この辺のものについては電子書籍版がなくプリント版のみというのも結構多いので注意。あと、出版社については、 現行アマゾンに記載されているものとなります。
短篇集部門
受賞年 | 作品名 | 著者名 | 出版社 |
---|---|---|---|
2023 | The Last 5 Minutes of the Human Race | Michael Allen Rose & Jim Agpalza | Madness Heart Press |
2022 | Don't Push the Button | John Skipp | CLASH Books |
2021 | Don't F[Bleep]k with the Coloureds | Andre Duza | Deadite Press |
2020 | To Wallow in Ash & Other Sorrows | Sam Richard | Weirdpunk Books |
2019 | Nightmares in Ecstasy | Brendan Vidito | CLASH Books |
2018 | Angel Meat | Laura Lee Bahr | Fungasm Press |
2017 | Berzerkoids | Emma Alice Johnson | Bizarro Pulp Press |
2016 | The Pulse between Dimensions and the Desert | Rios de la Luz | Ladybox Books |
2015 | I'll Fuck Anything That Moves and Stephen Hawking | Violet Levoit | Eraserhead Press |
2014 | Time Pimp | Garrett Cook | Eraserhead Press |
2013 | All-Monster Action! | Cody Goodfellow | Eraserhead Press |
2012 | We Live Inside You | Jeremy Robert Johnson | Eraserhead Press |
2011 | Lost in Cat Brain Land | Cameron Pierce | Eraserhead Press |
2010 | Silent Weapons for Quiet Wars | Cody Goodfellow | Eraserhead Press |
2009 | Rampaging Fuckers of Everything on the Crazy Shitting Planet of the Vomit Atmosphere | Mykle Hansen | Eraserhead Press |
2008 | 13 Thorns | Gina Ranalli | Afterbirth Books |
長編/中編部門
受賞年 | 作品名 | 著者名 | 出版社 |
---|---|---|---|
2023 | One Hand to Hold, One Hand to Carve | M. Shaw | Tenebrous Press |
2022 | Jurassichrist | Michael Allen Rose | Perpetual Motion Machine Publishing |
2021 | The Loop | Jeremy Robert Johnson | Titan Books |
2020 | Unamerica | Cody Goodfellow | King Shot Press |
2019 | Coyote Songs | Gabino Iglesias | Mulholland Books |
2018 | Sip | Brian Allen Carr | Soho Press |
2017 | I Will Rot Without You | Danger Slater | Fungasm Press |
2016 | Skullcrack City | Jeremy Robert Johnson | Coevolution Press |
2015 | Dungeons & Drag Queens | Emma Alice Johnson | Eraserhead Press |
2014 | Motherfucking Sharks | Brian Allen Carr | Lazy Fascist Press |
2013 | Space Walrus | Kevin L. Donihe | Eraserhead Press |
2012 | Haunt | Laura Lee Bahr | Fungasm Press |
2011 | By the Time We Leave Here, We'll Be Friends | J David Osborne | Broken River Books |
2010 | Warrior Wolf Women of the Wastelands | Carlton Mellick III | Eraserhead Press |
2009 | House of Houses | Kevin L. Donihe | Eraserhead Press |
2008 | Dr. Identity | D. Harlan Wilson | Raw Dog Screaming Press |
以上、これまでの受賞作品一覧。もう日本のアマゾンからは見られなくなってるぐらいのもんもあるんじゃないかと思っていたけど、一応全部見つかったな。まあ過去のプリント版のみとかは事実上の絶版ではあるけど。
作者と作品という形でわかるものはほぼないけど、初期はEraserhead Pressが多かったものから、現在多くのパブリッシャーが出てきている感じとかはわかるが、そのくらいか。とりあえずあとは何とか少しずつでも読んで探って行くしかないか。 まあ何とか追い続けていれば、なかなか読めなくても徐々に輪郭ぐらいは見えてくるんじゃないかと。
当方ノワール/ハードボイルド/クライムというあたりが専門だが、これまでもお伝えしてきたように、主にカントリーノワールといった方向ではアメリカ現代文学、ドナルド・レイ・ポロックやコーマック・マッカーシー、Larry Brownといったあたりで 境界を接し、その境は曖昧になってきている。そして今回のビザーロフィクションというのもまた別サイドでその境界が重なり合っているものなのだろう。そもそもその双方が隣り合って、重なってる部分も多いもんだし。
なんか今更だが、デイヴィッド・リンチ出したんだから『ブルー・ベルベット』や『マルホランド・ドライヴ』とか例に出せばわかりやすかったのかもと気付いたり。
尖鋭的な作家は常にその境界を目指し、突破し、曖昧にさせて行く。ひとつのジャンルの未来を見るためには、その隣り合った境界の向こう側がどうなっているかにも視線を拡げる必要があるのだ。
とまあまとめてみたけど、実際にはそっちの方も面白そうだから是非読んでみたいが8割なんだけどね。
さてここまでに昨年までのワンダーランド・ブック・アワードの一覧を作りとりあえずのまとめを作って来たわけだが、そこで今年のワンダーランド・ブック・アワード!本年米オレゴン州アストリアで開催されるBizarroConにて11月9日に発表となる! …もたもたしてるうちに結局過ぎちゃったじゃないか…。ちなみにオレゴン州アストリアでの開催は初らしい。
そんなわけで、次回はその2024年ワンダーランド・ブック・アワードについて。まあ各部門受賞作の作家作品の概要と、ファイナリスト、最終候補作一覧ぐらいしかできんと思うけど。ホントはもっと余裕があって次の記事書き始めといて 発表があったら2~3日で書いてアップとかの予定だったのだけどね…。
■ダフィ最新作発売日決定!
前回終ってすぐぐらいだったかな?なんか一日外出の予定があって、帰って疲れてゴロゴロしてたらXにマッキンティからの告知が出てた。ショーン・ダフィ・シリーズ第8作『Hang On St. Christopher』が来年2025年3月4日に発売決定! とりあえず現在出ているのはオーディオ版のみの予約受付。
と思ってたら、あれ?マッキンティの出してる画像日本のアマゾンのと全然違うじゃん?ハードカバーやKindleまで書いてあるし???
そんなわけで米Amazon.comのBooksでマッキンティを検索してみたところ、やっぱりアメリカじゃ全部あって既に予約注文も受け付けている上に、過去作のKindle版も出版されている。
アメリカ限定なのかい?と思ってイギリス、フランスのアマゾンも見てみたところ、その両国では発売予定の第8作についてはオーディオ版、ハードカバー版の予約注文が開始されており、過去作Kindle版については第7作『The Detective Up Late』以外は 既に販売されているという状況。んーまあ、日本なんてミステリ超後進国は果てしなく後回しにされてんのかね…。
アメリカのKindle版予約注文受付開始を見て、日本も開始が遅れてるだけで来年3月4日にKindle版手に入るのかも、と一旦はワクワクしたのだが、イギリス、フランスで第7作のKindle版も遅らされている状況を見ると、その可能性は低いのかも…。 結局あと一年ぐらい待たされてやっとペーパーバック版出てみたいなことになんのかな…、とちょっとショボン状態です。まだわかんないけどね。
ちなみに過去作のKindle版については、先週見たぐらいではアメリカでも「もうすぐ出るよ」ぐらいの状態で予約受付してて一昨日見たら出てたぐらいなので、日本でもそのうち買えるようになるとは思いますが。
だが、マッキンティ/ダフィについては更に気になる情報あり!『God’s Away on Business: Sean Duffy, Year 1』(こちらもトム・ウェイツの曲からのタイトル)なる中編作品が、そちらに先立つ来年2月4日に発売予定!こちらは第7作『The Detective Up Late』 の時に書いた序章「Sean duffy, Year Zero」の後、キャリックファーガスのCIDに着任したばかりのダフィの最初の二週間を描いたという内容らしい。
こちらについてはアメリカでもまだ画像もなくオーディオ版のみの予約受付開始なのだが、第8作の3月4日より1か月前に急いでねじ込んだ感じから、そちらにも関係する先に読んどいたほうがいい作品なのかとも思われる。まさかオーディオ版のみ とかいうことはないと思うけど…。
以上、いつどんな形で読めんのかまだ不透明ですが、とにかくダフィ第8作他発売予定出ましたという話。前にマッキンティがノンシリーズ作品新作の方が先に出るみたいな話してたんだけど、そっちについてはまだのようです。それにしても 来年3月4日Kindleで入手できるかも、となって一旦は未読の『The Island』どこで読もうかとなったんだが、予定通り来年前半のどっかぐらいで良さそうかもな。日本の翻訳ミステリなんてものにもっと早く見切り付けとけば、もっと早く 読んだのにと思うばかりっすよ…。もう今更出ても絶対読まんしな。
いずれにしても、来年2025年は、どっかの時点でマッキンティ/ダフィ祭りになる!…はず?
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