■ロノ・ウェイウェイオール/ワイリー・シリーズ(2作)

ロノ・ウェイウェイオール、ワイリー・シリーズは『鎮魂歌は歌わない』『人狩りは終わらない』の2作が文春文庫から。ワイリー・シリーズは三部作なのだが、翻訳は2作どまりという、毎度おなじみの始末…。ウェイウェイオールはその後、このブログではおなじみ、私の最も信頼するアメリカのハードボイルド/ノワール系パブリッシャーDown&Out Booksに移籍し、精力的に作品を発表し続けている。未訳の三部作第3作『Wiley's Refrain』もKindle版などで簡単に入手できます。更に!2017年には同Down&Out Booksよりワイリー・シリーズの前日譚に当たるらしい『Leon's Legacy』も出版されております。
■イェンス・ラピドゥス/イージーマネー

■トム・ボウマン/ドライ・ボーンズ

で、どんな話かというと、山奥のすんげーど田舎の人情派の駐在が、思いつきと手あたり次第で殺人事件を捜査し、微妙に謎を残したままなんとなく曖昧に解決するというもの。どうだいスゴイ面白そうだろう。ボックスのようなハリウッド風アウトドア派の追随を許さない本格カントリー・ノワールの大傑作である。いやまあ、ボックスとかはそういうものとして楽しめば良いのだけどさ。作品の感想のところに少し詳しく書いてあるが、その時期ちょっと気になり始めていたカントリー・ノワールにかなりはまるきっかけとなった作品。日本じゃさっぱり翻訳の出ないジャンルだが、いくつか結構いいのも読めてる。タイミングを外していまだに書けてないけど、ボウマンにも通じるアンチ・ヒロイズムっぷりがかなり印象的だったRusty Barnes『Ridgerunner』。おっと今調べてみたらこれホントに続きあんのかなあと思ってた続編出てるじゃん!ヤバい、早く書いて読まねば!あと私イチオシのAdam Howe君のランズデールをも継承する大爆笑カントリー・ノワールReggie Levineさんシリーズ!アンソロジーで見つけた短編などなど。カントリー・ノワールの巨匠ジェームズ・リー・バークのロビショー・シリーズの続きも読まねば。ちなみにボウマン、ヘンリー・ファレル・シリーズ第2作『Fateful Mornings』も2017年に出版されておる。今年こそは読みたいのだが。うむむ、ここまででいくつこれ言ってる?
トム・ボウマン/ドライ・ボーンズの感想
■C・B・マッケンジー/バッド・カントリー

とぶち上げたところなんだが、実は以前この本を読んだ時に書いた私の感想は全く役に立たない…。いや、ちゃんとリンク張って責任を持って恥をさらすけどさ。最近やっと気付いたけどさ、私、多くの場合あんまり楽しんで読んで感動した本についてまともにレビューする能力無いかも。なんかもうただホクホクしてヘラヘラしてるだけ。割と最近のマッキンティ、ショーン・ダフィ第1作なんかもそれだよな。それだけならまだいいが、あんまり言うこと見つからないんでなんか無理矢理ぐらいにひねり出した欠点とか書いたり。これじゃ常々罵倒している作品の欠点見つけて批評ができた気分になってるバカと大差ねえじゃん。ホントにごめん…。改めてここで敢えて言おう。このC・B・マッケンジー『バッド・カントリー』はジェームズ・クラムリー級の作家作品のデビュー作である!そう言やあ、昔矢作俊彦氏がクラムリーを評して「ブコウスキーの猿真似」と言ってるのを見て、そこまで言わなくてもいいじゃん、この先生ホントに口が悪いなあ、と思って事あったっけ。今はマッケンジーについてコーマック・マッカーシーの猿真似とか言えるハードボイルド読みいるのかい?まあ市井にはびこる「パクリ分類家」どもなら言ってみるかもしれないが、分類してそれで?パクリパクリばかり言っててそのうちパックマンになっちゃってもお母さん知りませんからねっ。そして、日本で、いや世界ででも一番尊敬するぐらいの作家が酷評しようが、ジェームズ・クラムリーが偉大なるハードボイルド作家であるという信念が一切揺るがん私が、サンシャイン池崎級のテンションで宣言する!C・B・マッケンジーは、マッカーシーの猿真似だろうが、ジェームズ・クラムリー級の21世紀ハードボイルド/ノワールの至宝である!あーん?そういうのはなんか権威筋みたいなのが指定して初めてそういうことになるとか思ってんじゃないの?そんなの関係ねえっ!オレが名作っつったらオレの名作で、アンタが言ったらアンタの名作なんだよ。名作なんて誰かが言ったから名作になってるんだよ。それを「読書のプロ」なんぞに任せといていいのかい?くだらねえ恰好つけのための自己顕示欲だらけの「批評」なんてウンザリだ!お前の思う作品を褒めろ!お前の名作を宣言しろ!
ついでなんだがここで、この本の帯に書かれていたスティーブン・キング絶賛について、いつか言っとかなきゃならんと思ってたので一言。確かちょうどこれ読んだ時期だったんじゃないかと思うけど、どっかでスティーブン・キングはやたらに沢山の本を褒めるがそれらがすべて優れた作品というわけではない、みたいなことがまるで定説のように書かれているのを見つけて、心底呆れた。あれ真に受けてた人いたのかい?元ネタとなる「あれ」とはまたぞろ「読書のプロ」のたわごとだ。ずいぶん昔、結構翻訳バブルぐらいだったころの座談会での発言。その頃やたらと帯にスティーブン・キング絶賛を掲げた翻訳書が出ていて、それのいくつかが気に入らなかった「読書のプロ」の一人が、キングをホメホメおじさんなどと揶揄したというもの。まあ、まずその時期各出版社がそういうのを見つけたらスティーブン・キング頼みで翻訳出版していたのが重なったんだろう、ってのは誰でもわかる常識で、発言が仮にもそんなところにいる人間がするとは思えないほど幼稚で愚劣、または座談会そのもののレベルが低すぎたのだろうということは置いておくとしてだ。日本と比べてどうか、てことはあまりわからないけど、自分が色々な作家の発言やレビューとか見ている限り、少なくともアメリカでは出版社が宣伝のために依頼したり本を送ったりするだけでなく、作家同士の互助精神が高く、少しでも名の出た作家は他の作家が売れるために積極的に協力してやろうとする傾向がある。そしてキングは若いころずいぶん苦労して作家になったという思いのある人だから、殊更多くの新しい作家に向けてエールを送っていたところもあるのだろう。一方そんなキングの読書傾向というと、よく知られているかのジム・トンプスンのファンであることなどからもわかるように、必ずしもスティーブン・キング的であるわけではないだけでなく、エンターテインメント性もそれほど高くないものであったりする。だが、彼を誰だと思ってる。世界的ベストセラー作家スティーブン・キングである。洋の東西を問わず、ベストセラーの読者というものはよりエンターテインメント性を求める傾向が高いものだろう。そんな読者がそんなキングが薦める本を読んだら、声の届かない遠い日本まで来なくても、お前が薦めたのに面白くなかった、と言う者も少なからず現れるだろうし、場合によっては幼稚で愚劣な輩に本の評価をする能力が低いのではないかと中傷されたり、ひどいものになれば出版社から金をもらってろくに読みもせずに誉めてるんじゃないかと言い出すやつも現れかねないだろう。だが、彼はそんなリスクも恐れず、自分が良いと思った本にエールを送り続ける。一人でも多くの優れた作家を世に出したいという想いで。スティーブン・キングというのはそういう男だ!で?アンタそんなスティーブン・キングと「読書のプロ」とどっちを信じるんだい?ちなみにオイラはキンちゃんのおススメの本を読んでがっかりしたことなんてただの一度もないぜ!またいい本絶賛してくれよなあ。期待してるよ!あ、でもくれぐれも目はお大事にね。
C・B・マッケンジー/バッド・カントリーの感想
■コーマック・マッカーシー /ノー・カントリー・フォー・オールド・メン (旧題:血と暴力の国)

マッカーシー『血と暴力の国』は本当に素晴らしい傑作で大好きなのだが、実はそれより遡る国境三部作はさらに好きだったりする。なんか寿命があと一年とか、あと一年で世界が滅亡とか言うことになったら、必ずそれまでに再読しておきたい三部作。というかそんな事態にならなくても再読しろよ…。実はマッカーシーの話のフリとして、文学系のノーマン・メイラー『タフガイは踊らない』やリチャード・ブローティガン『バビロンを夢見て』あたりを並べるところから入ろうと考えてみたのだけど、なんかそれらのとマッカーシーのこれはちょっと違う気がしてやめたわけ。それがなぜかと言うと、前者のがなんだかんだ言っても少し例外的な作品であるのに対し、マッカーシーのこれはその国境三部作ともつながる本来の作風の一つの展開という感じが強いからなのですよね。並べりゃいいってわけじゃねーからなあ。かといってブコウスキーやデニス・ジョンソンみたいなそのままノワールとかと地続きにできるタイプでもないわけで。ただその一方で思い付きで並べてみたものの中でも一番犯罪小説(カントリー・ノワールか?)として読みやすい文学作品でもあるのだよね。だが何か一貫したものがあるように見えるまたその一方で、マッカーシーという人はいきなりSF的なのを出してきたりとか、単純に日本の「純文学」的作者=作品的見方にうまくはまってくれない人であるのだよね。もちろんそーゆーとこも好きー!なのでマッカーシーはきちんと読み続けねばと思うし、国境三部作も再読せねばと思う。ただ私がそれ再読始めた途端に世界があと一年で終わることになってもワシのせいじゃないかんね。あと、マッカーシーみたいな作家の在り方っていうのは、文学とエンターテインメントの境目が薄くなってると言うよりは、もうどうでもよくなってるところの現れじゃないかと思ったりもするが、今忙しいしまた「純文学ノリといちゃもんをつける」先生をバカにしたくなってくるので、そのことはまた後で考えて先生にはもっとひどい悪口を言ってやろうっと。
■ハンナ ジェイミスン/ガール・セヴン



そしてたとえ日本に入ってこなかろうが脈々と書き続けられるブリティッシュ・ノワール。そしてその最前線を発見し、こんなものがあるなら黙っておれんと、今回のこれに匹敵する意味不明の使命感に駆られ、全45人の作家作品を2015-16年に全5回にわたって無理矢理紹介したのが傑作アンソロジー『True Brit Grit』なのである。やっぱり45人もいれば千差万別なのだけど、その中でもテッド・ルイスからの強い影響やリスペクトは目を惹いた気がする。自分が好きだから反応したということかもしれんけど。そんな英国ノワールの中でも注目は、まずはアンソロジーの編者の一人であり、英国ノワールの伝道者我らがPaul Brazill大将!どす黒い哄笑とバイオレンスに満ちた現代英国ノワールのお手本のような快作『Guns of Brixton』は必読!エグイ奴らが再登場の『Cold London Blues』は未読ナリ。ごめん。まだ全然読めてないのだが、Tony Black、Matt Philips、Julie Morriganなど注目作家はあまた。おっと自称英国からの自発的追放者Jason Michelも忘れるな。そしてスコットランドからはRay Banksによるマンチェスターのアニキ!チンピラ探偵Cal Innes!早く続きを読め!さらに映画化もされたDouglas Lindsayの史上最弱の連続殺人鬼バーニー・トムソン・シリーズ。これはユーモア・ミステリかな?優れた才能を輩出し続ける英国ノワールだが、実は彼らの道もまた険しい。前述の『True Brit Grit』について頑張って書いとるまさにそのさなか、英国ノワールここにありを世に知らしめたBest of British Crime Fiction Bookシリーズを発刊中のByker Booksが倒れ、英国ノワールを代表する作家のひとりAllan Guthrie率いる電子書籍黎明期を席捲した伝説のeブック専門パブリッシャーBlasted Heathも2017年に力尽きる。更に不運だったDouglas Lindsay氏はその後再販される予定だったパブリッシャーがまたしても経営困難に陥り、現在はバーニー・トムソン・シリーズを自身の個人出版社から出版している始末。だが英国ノワールの灯は消えず!2016年、毎月13日に13か月にわたり13作のノワール小説を発刊した伝説の(この業界伝説が数多く存在するのだ!)パブリッシャーNumber13 Pressが2018年Fahrenheit 13へと進化し新たな英国ノワールの牙城として聳え立つ!そしてWEBマガジン発のClose To The Bone(元Near To The Knuckle)ももう一つの極としてBrazill大将を始めとするヘビー級のパンチを繰り出し続けているのである。どうだい皆の衆、英国を無視してるんじゃあノワールファンとしちゃあモグリだぜ!さてその頃米国ノワールでは、というのはまた後程語ろうではないか。
ハンナ ジェイミスン/ガール・セヴンの感想
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