いや、これについては本当に申し訳ないとしか言いようがない。少なくても5年…、いや7~8年ぐらい前に書いておかなきゃならん作品だった。
2010年代に出版された作品の中でも重要作という認識は常にあり、読むからには絶対に書かねばならんと思いつつ、モタモタ進めるうちに、あ~あれの続き書かなきゃならんからまた後回し見たいのが積み重なり、延々と遅れるうちに、 なるべく新しい作品について書いて行かなければという思いから、これは少し古いものになってしまったかもしれないなどという気持ちも薄く被ったり、ということまで重なり延々と後回しになっていてしまった。
ただ、この作品については読むからには絶対に書かねばならんという思いが常にあり、それゆえにあんまり書けない時期、読んでも書けないかもしれないようなときにはなかなか手が出なかったというのも、これほどまでに遅れてしまった要因の一つ。 …いや、結局全てお前のせいじゃん…。重ね重ね申し訳ない…。
2010年代、アメリカのAmazon.comで、インディークライム作品を検索すれば、Anthony Neil SmithのBilly Lafitteシリーズや、Ray BanksのCal Innsなどと並び、必ずぐらいにおススメに挙がってきていたのがこのMoses McGuireシリーズ。 それらとも完全に並ぶ、2010年代ハードボイルド/ノワール最重要作、Moses McGuireトリロジー!本当に遅ればせながら、ここから始まります!
【Beautiful, Naked & Dead】
この世にあんたの生命がかかってるステンレススティールの銃身のガンオイルほど冷たい味の物はない。
俺のスナブノーズのスミス・アンド・ウェッソン.38口径のハンマーを押し戻し、発射位置にクリックする。トリガーへの3ポンドの圧力はハンマーを雷管に落とし、4.5グレインの無煙火薬を発火させる。爆発の結果は、158グレインの鉛を秒速1085フィートで 銃身から発射させ、俺の口蓋を掘り起こし、脳を通過し頭蓋骨の後ろから飛び出させる。まあ、かなり複雑な工学過程に見えるが、単に一つの命が終わるだけの、このとき俺がやろうとしている単純極まりない作業だ。馬鹿め。俺がやるべき全ては、 充分長くうろつき回り、みんなが列を作ってその仕事をやりに来るようにすることだっていうのに。
2ポンドの力を加えた時、電話が鳴る。ただの悪いニュースの追加あたりがありそうな話だ。だが、クソくらえだ、後でいつだろうが自分を殺すことはできる。あるいはビールを飲むか、ボーリングに行くか、何だろうとみんなが自分を殺す時 以外にすることを。
「もしもし?」
「Mo?…今忙しい?」
それはKellyからだった。クラブXtasyのウェイトレス。俺が金欠の時に用心棒をやってるストリップバー。この2年はいつもそうだが。彼女はおそらくは俺の唯一の本当の友人だ。
「どうした?」
「ちょっと複雑なの。あなたが私にとって、この世界全体でただ一人信用できる人だから、わかるよね、Mo?」
「奴らが…、彼女を…、私の妹を捕まえようとしてて…。えっと…私はあなたが思ってるような人間じゃないのよ…Mo」
「奴らって誰なんだ、Kell?」
「奴らは…わかるでしょ…ややこしいのよ。私のこと嫌いにならないでね、Mo。私は…ただ…つまり…。まずいことになって、私たちじゃどうにもならなくなって。でも、あなたを傷つけたくはないのよ。ただ、妹が…」
「どこにいるんだ、Kell?家か?」
「クラブにいるわ…、Mo…、月曜だから…。でも奴らは…、奴らからは隠れられないのよ…、関係ない、わかる?」
「一杯飲んで落ち着け。15分でそっちに行く」
一人称語りの主人公が、拳銃を加えて自殺を試みてるという何とも物騒な感じで物語は始まる。
用心棒を努めるストリップバーのウェイトレスKellyからの助けを求める電話により、主人公Mosesはとりあえず一時的にでもこの世に引き戻され、愛車76年型ノートン・コマンドに跨りバーへ向かう。
Kellyはクラブで唯一性的サービスを行わないウェイトレスで、Mosesにとっても性交渉を伴わない唯一の純粋な友人だ。
クラブに着いたMosesは、オーナーのMannyの甥であるバーテンのTurajに、Kellyはどこだと尋ねる。
あいつはシフトの途中で出てっちまった。服さえ着替えないままな。
折り合いの悪いTrujの言い草に腹を立て少しもめるが、電話じゃ15分と言ったが結局1時間ほど過ぎてしまってる。追い掛けて話しを聞くか?
とりあえずはどうしようもなくビールを出させてカウンターに座るMoses。
ぼんやり店内を眺めていると、プライベート・ラップ・ダンス用個室からアルメニア人のチンピラの二人組MuttとJeffが出てくる。
この店のオーナーはイラン人で、アルメニア系のシマは別にある。この店で連中がデカい顔をする権利などない。
通りすがりにダンサーに度を過ぎたちょっかいを出すのを見て立ち上がりかけるMosesだったが、Trujにあいつら悪い奴じゃないから、と止められる。
そして、二人が出てきた個室から中にいるはずのダンサーが戻らないのも気になり、Mosesはそこに向かう。
部屋の中にはダンサーPiperが意気消沈した様子で座っていた。
「何があった?」
「畜生…、あの鉛筆チンポ野郎、週に100ドル出せって…、さもなきゃ…」
「奴らにいくら渡した?」
「200ドル…、あいつらラップダンス代すら払わなかった…」
直ちに二人を追って外に出るMoses。アルメニア人たちは彼らの10年物のBMW 740iに向かって歩いていた。痩せた小男と連れのマッスル野郎。
駆け寄ったMosesは、大男にタックルをかまし、髪を掴んでBMWのフードに叩きつける。鼻の潰れる音。
頭を引き上げ、もう一度叩きつける。力の抜けた男を側道に転がす。
その間に、小男はポケットから銃を取り出し、Mosesの顔に突きつける。グロック9mm。
「アタマ吹っ飛ばすぞ、この野郎!」
「やってみろよ、頼むわ。引き金引きなよ。目と目の間のここだ」額を指さしMosesは言う。
躊躇って横目で相棒を窺ったスキが命取りになる。Mosesは小男の銃を持った腕を押し上げ、そして男を走って来たモンテ・カルロめがけて放り出す。
何処かの骨が折れる音の混ざった重い衝突音。小男は宙を飛び放り出される。有り難いことにここはL.A.だ、車はそのまま走り去る。
小男を路地に引き摺り戻し、その過程でグロックを取り上げる。苦痛にわめく男を黙らせるため、頭を地面に叩きつける。
そこで体勢を立て直した大男が歩み寄って来る。報復する気満々の目がMosesの手のグロックにとまり、足を止める。
この9mm弾だけで奴を止めるのは無理だろう。ここは駆け引きだ。「何をやるにしろ、オマワリが来て、この銃と血とこいつについて説明しなきゃならんことになる前に片付けた方がいいぞ」
大男は少し考えた後、Mosesの前を過ぎ、小男を回収しBMWのバックシートに積み込む。
大男がかがんだスキに男のポケットから財布を抜き出す。免許証と金を抜き取った後、財布をフロントシートに投げ込む。
「ウチの女の子にちょっかい出そうなんてまた考えてみろ。必ず見つけ出すからな」
BMWは大男の運転で走り去る。それを見送りながらMosesは思う。近頃の若い奴はどうなってんだ?俺があの年の頃はこんなオヤジにいいようにされはしなかったぞ。
店に戻ったMosesは、アルメニア人たちの200ドルをステージでダンス中のPiperに渡す。
Kellyのことが気になりながらも、ステージから降りたPiperの誘いを断り切れず、個室でラップダンスのサービスを受けてしまうMoses。
店に戻り、Kellyの番号に掛けるが、相変わらず通じない。
バーに行き、明らかにアルメニア人たちと通じていたTrujを脅し、店のルールではご法度になっているKellyの住所を聞き出す。
聞き出した住所のKellyのアパートに行ってみる。カーテンの隙間からのぞく詮索好きな目を気にしながら、階段を上りドアをノックする。
応答はない。Kellyは不在のようだ。
Kellyから話を聞いていた、飼っている犬をよく連れて行くドッグ・パークへ行ってみる。
ここにもKellyの姿はない。
諦めて家に帰り、マッカランを注ぐ。
Kellyのことが頭から離れない。自分が心配するほどのことではないのだろう。そう言い聞かせる。
もう一度Kellyの番号に電話する。やはり応答はない。
Mosesは再びノートンに乗り、彼女のアパートへと向かう。
Kellyのアパートには依然灯りはなかった。ノックの後、スチールのカードを使い鍵を開け、中に入る。きちんと片付いた、いかにも彼女らしい部屋。
そしてベッドルームのドアを開け、持ってきたマグライトで中を照らす。
最初に目に入ったのは、ベッドの上の足。彼女は裸でベッドの上に手足を拡げ、穏やかに眠っているように見えた。彼女の頭の後ろが赤く血に染まっていることに気付くまでは。
信じられず、彼女がまだそこから見返してくることを望みながら、顔を照らす。後ろの壁が目に入る。飛び散った血、髪の毛、骨の欠片、脳髄。
顔には撃たれた跡はない。殺人者は、彼女に拳銃を咥えさせ撃った。喉から入った弾丸は後頭部に抜けた。
彼女の身体を照らしてみる。千切れかけた乳首。乳房、腹には煙草を押し付けたいくつもの跡。
膝から崩れ落ち、床に座り込むMosesの目から涙が溢れ出す。
身動きもできずその場に座っていたMosesは、やがてバスルームからの音に気付く。
ドアを開けてみると、Kellyの飼っていたストロベリーブロンドの子犬が飛び出してくる。
やっと解放され、一時は喜ぶが、彼女の飼い主の様子に気付き、うなだれベッドわきに垂れた動かなくなった彼女の手を悲しげに舐める…。
アパートの中の自分の指紋が残っていそうなところを拭き、子犬を連れて部屋を出るMoses。
酒屋の外にあった公衆電話から、偽名で警察にKellyの死を通報する。
バイクを運転するため、子犬をレーザージャケットの胸に入れる際、首につけられたタグから犬の名前がAngelと知る。
家に帰り、古い寝袋を使ってAngelの寝床を作る。
3~4杯のスコッチを飲んで横になるが眠れず、ベッドに上がって来たAngelの寝息を聞きながらやっと眠りに落ち、翌朝悪夢にうなされ目覚める。
昨日のドッグパークに行き、Kellyの友人を見つけ、Angelを引き取ってもらうよう頼むが、不審がられるばかりで諦め、家に帰り子犬を置いて、クラブに行く。
クラブには既に警察が聞き込みにやってきていた。警察はMosesを怪しいと睨み詰問するが、その場は引き下がる。
だが翌朝、自宅で叩き起こされたMosesは、手錠を掛けられ警察署へと連れて行かれる。今度は暴力事件で服役したMosesの前科と、Kellyのアパートでの目撃証言を持って。
しかしそれ以上の容疑を固める証拠もなく、少々の尋問の後、Mosesは釈放される。
翌週、Kellyの葬儀が行われ、縁者も見つからないKellyの遺灰は、最も近い人間としてMosesに渡される。
そしてKellyの捜査は打ち切られる。身寄りもないストリップバーのウェイトレスに、それ以上警察の人員が割かれることはない。
そして9日が過ぎる。打ちひしがれスコッチを呷り続けた。だがもう病み疲れていることに病み疲れた。
俺には二つの選択肢がある。気力を起こし、今度こそ自分を殺すか、Kellyを殺した奴らを見つけ、報いを受けさせるかだ。俺の魂の麻痺は、沸き上がる怒りにより除かれる。目には目を、歯には歯をだ。
怒りは俺の心に張られた蜘蛛の巣を吹き飛ばす。誰かがKellyが被った代償を払わせなければならない。警官が奴らを見つけられないなら、俺がやる。
最後のKellyとの話に出て来た"妹"。手がかりとしては、それが考えられる。
犯行現場だったKellyのアパートを調べてみるが、収穫は無し。だがクラブの彼女のロッカーを探るとポストカードが見つかる。
ネバダの合法風俗店Cock's Roostからのポストカード。やっと落ち着ける場所を見つけたと喜ぶ文面に、Cassの名。
Mosesはネバダへと向かい旅立つ。そしてそれはMosesを果ても見えない暴力の嵐の中へと導いて行くこととなる…。
主人公Moses McGuireの生い立ち、それまでの人生については、三分の一ぐらいまで進んだあたりで、やっと語られる。
カリフォルニア州アルタデナ荒んだ街に生まれ、6歳の時暴力的な父親は家族を捨てて去り、来る日も来る日もテレビ伝道師を眺める狂った母親にも放置され、兄Lukeと二人で自分達の生活を支えながら育つ。
16歳の時、その兄も彼を捨てて去り、兄の出生証明と古い免許証で年齢を偽り、海兵隊に志願入隊する。
そしてレバノンに派遣。そこで、間違った作戦のため、避難中の民間人を射殺してしまう。
罪悪感から酒に溺れ、不名誉除隊を待つばかりの身になったころ、故郷に置き去りにして来た母親の死亡通知が届く。
だが、彼が感じたのは罪悪感でなく、解放されたという気分だけだった。
荒れた少年時代からの繋がりで、いくらかの組織犯罪への伝手もある。現在あの辺はどうなってて、引っかき回すことになっても大丈夫かとの確認ぐらいのものだが。詳しくは語られてはいないが、暴力事件での前科もある。
最初から望みもなかったような人生の末に辿り着いた底辺で、いつでも命を投げ捨てたいような気持で崖っぷちを彷徨うように生きる。だが、同じように底辺で生きる店の女たちには、仕事に留まらない気持ちで守りたいと願う。
実は冒頭でぶちのめしたアルメニア人二人組とも、後には同じような世界で生きる人間としてのつながりも生まれたりもする。
序盤から愛車76年型ノートン・コマンドで走り回り、移動手段がバイクの主人公って結構珍しいよな、と思っていたのだけど、Kellyの妹を捜し州外に足を延ばすことになると、割とあっさり売っちゃって四輪に乗り換えたり。 そんなにこだわりなかったのかな…?
苦労の末見つけ出したKellyの妹もまた、同じ犯人により命を狙われており、そこからは彼女の命を守る旅へと物語はシフトして行く。
警察が見捨てる世界での事件は、殺害犯人と殺害理由の特定では解決しない。自分たちの生命が蹂躙されないための解決は、相手を潰す以外にはない。
正義のエクスキューズすら持たない暴力による解決は、この時代へのハードボイルドからの一つの解答か。
2010年代ハードボイルドの最もヘヴィーな部分を代表するMoses McGuireトリロジー第1作!
Moses McGuireトリロジー。トリロジーなんで、どういう形かわからんけど3作で終わります。やはりより主人公そのものが事件に関わる部分が深くなっているような現代のハードボイルドは、短命で終わる傾向にあるのか。
そう考えると、いつ人生終っても全然不思議じゃないジャック・テイラーさんのシリーズが、意外とロングランなのも不思議なのかも。いや、もう一回りぐらいして考えれば、人生なんてそうそう綺麗に終われるもんじゃなく、 色んなもん引き摺りながら延々と続いてしまうのだよ、ってことかもしれんね。
いずれにしても、開始時点でもうそうやって続いてきた自分の人生を投げ捨てようと思ってるような主人公の物語が、どう続いて行くのか要注目ですな。今度はちゃんと追って行くから。
作者Josh Stallingsは、1958年L.A.生まれの現在66歳。アマゾンのページに掲載されている作者紹介によると、元犯罪者、タクシー運転手、クラブの用心棒などの仕事(一部?)を転々とした後、脚本、編集などで映画製作に携わり、トレイラー編集者として 多くの受賞歴もあるとのこと。米露合作映画『The Ice Runner』で、脚本と編集を担当。作家Tad Williamsと脚本を共同執筆し、監督した映画『Kinda Cute for a White-Boy』は、サバンナ国際映画祭で最優秀作品賞を受賞した。その他に、ロボコップの 脚本家などで知られるエドワード・ノイマイヤーとゲーム『Ground Zero: Texas』のシナリオを共同執筆した、というような経歴あり。
2011年のこの『Beautiful, Naked & Dead』がデビュー作となる。版元Heist Publishingというのが正体不明なんだが、もしかするとStallingsの個人出版社かも。そしてMoses McGuireシリーズが、『Out There Bad』(2011)、『One More Body』(2013)と続き、 同2013年には今や伝説となっちゃったSnabnose Pressより自伝小説らしい『All The Wild Children』を出版。残念ながら現在は絶版なのだが…。いや、私は持ってるんでいつか読むが自慢するが。続いて2015年にはHeist Publishingより 『Young Americans』。2021年にはAgora Booksより『Tricky』を出版しているが、これプリント版のみでやや入手困難かも。
寡作なのか、他の仕事もあるせいか、出版運に恵まれないか、やや作品数の少ないJosh Stallingsなのだが、一方で複数の作家が日替わりで記事を書く「Criminal Minds」というサイトのメンバーでもある。
やや最近の注目記事で「10 Books Every Crime Writer Needs to Read, or a Quick Guide to Hard Boiled, by Josh Stallings」というのが あったので、最後にそれを紹介しておこう。
■10 Books Every Crime Writer Needs to Read, or a Quick Guide to Hard Boiled, by Josh Stallings
リーダーからの質問に答えるという形式のこのサイトの記事で、全ての犯罪小説作家が読むべきと思うクラシック作品を教えて欲しい、というのに応えて書かれたもの。複数のジャンルで、全10作品を選んでいる。
Hard-boiled
#1 The Big Sleep, by Raymond Chandler (1939)
『大いなる眠り』(レイモンド・チャンドラー)
#2 Cotton Comes to Harlem, by Chester Himes (1969)
『ロールスロイスに銀の銃』(チェスター・ハイムズ)
#3 Devil in a Red Dress, by Walter Mosley (1990)
『ブルー・ドレスの女』(ウォルター・モズリイ)
#4 Dancing Bear, by James Crumley (1983)
『ダンシング・ベア』(ジェイムズ・クラムリー)
Country Noir
#5 Tomato Red, by Daniel Woodrell (1998)
#6 No Country for Old Men, by Cormac McCarthy (2005)
『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』(コーマック・マッカーシー)
Latin American Hard-Boiled
#7 An Easy Thing, by Paco Ignacio Taibo II (1977)
『三つの迷宮』(パコ・イグナシオ・タイボ二世)
#8 Death in the Andes, by Mario Vargas Llosa (1993)
『アンデスのリトゥーマ』(マリオ・バルガス・リョサ)
#9 Dark Echoes of the Past, by Ramón Díaz Eterovic (1990)
Epic Crime Fiction
#10 Cartel trilogy by Don Winslow (2005-2019)
カルテル・トリロジー(ドン・ウィンズロウ)
The Power of the Dog『犬の力』、The Cartel『ザ・カルテル』、The Border『ザ・ボーダー』
それぞれの作品についてStallingsのコメントが付いているが、そちらについてはリンク先のオリジナルの方を見てね。
つーわけで、うん、現在のハードボイルドってとこから考え俯瞰した、見事なクラシックラインナップやね。さすが。
『ダンシング・ベア』について、世界は腐って卑しい場所ではあるが、それでもなお救う価値があるというメッセージに打たれたというコメントがあるが、大いに同意する。これまでに書かれた最高のハードボイルドだってところにも。 ああ、クラムリー全作読み返そうっと!
ハイムズに関しては、自分は結構読むの遅れたのだが、ハードボイルドの歴史の中で絶対になしでは語れない作家だと思う。モズリイ、なんだかんだであんまり読めてないのは反省。最新Mulhollandで再開以前までのシリーズは、1000円以下ぐらいで 入手できるようになってるみたいだし、未訳のところから継続して読まねば。
時々言ってる読書のプロの下劣座談会で「ミステリとして」踏みにじられた名作パコ・イグナシオ・タイボ二世『三つの迷宮』が入ってるが、もう気持ち悪い見るのもヤダで翻訳ミステリみたいなところいくら無視しても、こういう過去の 負の遺産が現れることにはホントうんざりだわ。
楽しい前向きな話題に戻せば、Ramón Díaz Eterovicの私立探偵Herediaシリーズ全然知らなかったんで、ホント嬉しい!英訳電子書籍版2作しかないんだけど、なるべく早く読んで書くですよ!あと、ダニエル・ウッドレルもなんだかんだ言って ほぼ未訳なんだよな。とにかく来年ぐらいウッドレル作品読み始めるを目標に。あとマリオ・バルガス・リョサも!
最後のEpic Crime Fictionってとこ、ウィンズロウのカルテル三部作はまだ最近の作品だが、これ間違いなく必読のクラシックになる作品だからね。それはそれとして前文的なStallingsのコメントとして、ここには『ゴッド・ファーザー』が 入るべきなんだけど、映画は何度も見たけどオリジナルの小説読んでないからな、って書いてあって、実は自分もそうだと気付いた。ここにそれが入るべきかという意見にも賛成だけど、多分今後も原作は読まないな…。いや、大して意味ないんだけど、 なんとなくわかんない?
なんだか他人の作ったものに対して勝手にしゃべり過ぎたかとも思うのだけど、色々気付かされたり頷くことも多い素晴らしいリストでした。リンク元の方もよく読むべし。こういうものが見つかれば、今後もなるべく多く紹介して行ければと思います。
なかなか新作が出ない感じのJosh Stallingsなんだが、こういう形でも作家というところにいる限りは、いつかまたすごい作品を出してくれるものと期待する。まあ、まずはMoses McGuire三部作をちゃんとやり遂げなければな。
結構コツコツ頑張ってたつもりなんだが、気付けばもう12月か。長年ぐらいのスパンでこれは絶対すごいやつだと思ってたMoses McGuireを、やっと紹介できたけど、まだまだ読むべき書くべき作品は山積みナリ。まーとりあえずはできるだけ 頑張ってみます。死なない程度とかに。なんかそのライン思ったより低いかもしれんとか思う今日この頃だが…。
■Josh Stallings著作リスト
●Moses McGuireトリロジー
- Beautiful, Naked & Dead (2011)
- Out There Bad (2011)
- One More Body (2013)
長編
- All The Wild Children (2013)
- Young Americans (2015)
- Tricky (2021)
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